B型肝炎について

6 月のいずお健康教室のご報告
新生児に対する垂直感染の予防や拡散アナログという治療薬の開発によって克服されつつあっ
たと思われてきた B 型肝炎ウイルスですが最近は新しい抗リウマチ剤や、抗がん剤の登場で再活
性化の恐ろしさが新聞などで取り上げられたり、東京などの都市部を中心に新たな性感染症とし
て密かに広がる気配があったりしています。こうした流れのなか肝臓病専門医の集まりである日
本肝臓学会では今年 4 月に新しいガイドラインを刷新し、それに基づいた日常診療を呼びかけて
います。その中で新たに提唱されたポイントの一つが B 型肝炎ウイルスのさらに細かい下位のタ
消化器内科
類であるゲノタイプに分かれており、ゲノタイプによって病態が異なることが知られています。
まつもと たかゆき
松本
隆之
イプに配慮した治療という考え方です。B 型肝炎ウイルスには現在 A から l までの 9 つの下位分
医師
また、ゲノタイプは地域によっても分布が偏っており日本ではほとんどがゲノタイプ C(約 85%)と B(10 数%)でしめられてい
ます。また、北九州から近畿にかけてはゲノタイプ C が圧倒的に多いのに対して東北や沖縄では比較的ゲノタイプ B の人が多
いことも明らかとなっています。ゲノタイプ B は一般に自己の免疫によってウイルスが沈静化しやすく、慢性化しにくいと言
われています。また、インターフェロン治療に対する反応性もよく、特に若い人などで治療を開始するときにはインターフェ
ロン療法も選択枝として考慮することが提唱されています。というのも B 型肝炎治療のもう一つの柱である拡散アナログと総
称されるお薬はウイルスを抑える力は強いものの長期間、服用を続けなければならず中止の明らかな基準もまだ明確になって
いません。こうしたことから B 型肝炎の治療に当たってはやはり一度専門医療機関に相談することをおすすめいたします。ま
た最近は性行為感染症として次第に感染がふえつつあるゲノタイプ A(元はアフリカ、欧米に多かった型)も慢性化、発がんの
リスクが高く注意が必要です。
最後に B 型肝炎について一度診療窓口をたたいてみることをおすすめするセルフチェックのリストを挙げてみましょう。
① 1985 年以前に生まれたかた。
② 1972 年以前に輸血を受けたかた。
③ 長期にわたって血液透析をうけているかた。
④ 大きな手術を受けたことがあるかた。
⑤ 以前に肝機能障害を指摘されたがその後放置されているかた。
⑥ ピアスや入れ墨をされたかた。
⑦ 不特定多数と性交渉をもったかた。
これらのひとのすべてがウイルスに感染しているわけではありませんし、これらに該当しないから絶対に安全というわけ
ではありませんが気になる項目があれば最寄りの医療機関に相談されることをおすすめします。