投資関連法制度改正状況

投資関連法制度改正状況
1.総論
投資関連の法制度、特に各業種に共通の横断的な制度の改正面においては、2つの大きな
トピックがあった。一つは、外国資本が利用可能な M&A 法制の整備・進展であり、もう一
つは、香港企業による投資に一定の優遇ないし WTO 加盟約束に基づく規制緩和の先取りを
認めた中国(大陸)と香港との取り決めである CEPA(「大陸と香港の経済貿易関係緊密化
協定」
)
の締結である
(2003 年 6 月 29 日締結。
同年 9 月 29 日に 6 つの付属文書に正式調印)
。
このうち、CEPA については、投資制度という観点からはむしろ個別の業種毎の規制緩和・
優遇の問題という要素が強いこともあり、
詳細は本報告書の他稿に譲ることとし、
ここでは、
前者の M&A 法制の整備について重点的に紹介したい。
このほか、こうした投資関連法制度の整備に関連する事項として、地方間の外資政策・外
資導入制度の差異についての問題点を概観する。
なお、上記以外の横断的な投資制度の動きとしては、例えば、
「外商投資ハイテク技術製品
目録」
(2003 年 6 月 2 日公布)によりハイテク部門による外資優遇が強化されたこと、
「外
国投資家の投資による投資性会社の設立・運営に関する規定」(2003 年 6 月 10 日公布、同 7
月 10 日施行)及びこれに先立つ「外国投資家の投資による投資性会社の設立・運営に関する
暫定規定及びその補助規定の改正に関する決定」
(2003 年 3 月 7 日公布、同 4 月 6 日施行)
等によって投資性会社の経営範囲等の一定の拡大が認められたことなどがトピックとして挙
げられる。主要な動きについては、後記の「投資関連法制度改正状況(中央)
・
(地方)
」の表
をご参照いただきたい。
2.M&A 法制の整備・進展
(1)M&A 関連の新しい法令
2002 年の終わりから 2003 年にかけて、外国企業・外国資本が利用可能な M&A、つまり
企業の買収・合併に関して、非常に重要な法令が 4 つ続けて制定された。
まず、
「上場会社買収管理規定」
(2002 年 12 月 1 日施行。以下「上場会社買収規定」とい
う)と「外国投資家に上場会社の国有株及び法人株を譲渡することに関する問題についての
通知」
(2002 年 11 月 1 日施行。以下「国有株等譲渡通知」という)が、外国企業が上場会
社を買収する際の規定として制定された。
さらに、
「外資利用による国有企業再編暫定規定」
(2003 年 1 月 1 日施行。以下「国有企
業再編規定」という)と「外国投資者による国内企業買収暫定規定」
(2003 年 4 月 12 日施
行。以下「国内企業買収規定」という)が、外国企業が国有会社を買収する際の規定として
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制定された。
このうち、上場会社買収規定は、中国の上場会社の買収についての一般的な規定であり、
外国資本ないし外国企業特有の規定ではない。しかし、他の3つの規定は、いずれも外国資
本ないし外国企業による中国企業をターゲット(買収等の対象企業)とする M&A を念頭に
おいた規定である。
特に、国内企業買収規定は、外国資本ないし外国企業による中国国内企業の M&A に関す
る最初の包括的・総合的な規定であり、実務的にも非常に重要な位置づけの法令と言える(い
ずれも、後記にて詳述)
。
(2)新しい投資形態としての M&A
従来の中国投資は、新たに子会社を立ち上げるケースがほとんどであった。すなわち、合
弁・合作・独資のいわゆる三資企業、あるいは外商投資株式会社の形式で新たに子会社を設
立する方法が主流であった。
ところが、国際的な投資方法としては、新規に会社を設立する方法(いわゆるグリーンフ
ィールド・インベストメント。中国でも同様に「緑地投資」と呼ばれる)だけでなく、既存
の会社を買収する M&A も重要な手法となっている。
中国でも M&A による投資が着目され始め、上記の各法令が公布される前から既に実例は
あった。例として、いすゞによる北京旅行車の株式 25%の取得(1995 年)
、コダックによる
中国フィルムメーカーの資産買収(1998 年)
、フランスのビベンディによる上海の水道会社
の株式 50%の取得(2002 年)などが挙げられる。
本年、上記各法令が公布された後も(特に、国内企業買収規定公布後)、多くの例が報道
されている。特に、国内企業買収規定公布後の最初の外資による M&A 事例として紹介され
たソニー(厳密にはその中国持株会社)による成都のマルチメディアシステム等のメーカー
の株式取得(2003 年 6 月)は、関係者の注目を集めた(なお、このソニーによる中国国内
企業買収をはじめ、現時点の中国における最新の M&A の実例については、
「ジェトロセンサ
ー」誌 2003 年 12 月号の特集「中国・外資交え、M&A 始動」に詳しい)
。
(3)M&A のメリットとデメリット
では、外国企業にとって、中国における M&A のメリットとデメリットは何か。
メリットのひとつとして、比較的迅速に投資ができるという点が挙げられる。既にある企
業を買収するのだから、手っ取り早いということである。もう一つは、中国で事業を行うた
めに必要なライセンスが手に入り易いことである。例えば、電気・水道・ガス等の公共事業
は、新たに免許を取るのが大変だが、免許のある企業を買ってしまえばその手間が省ける。
また、国有企業の中には、収益性が高かったり、販売網・営業力・ブランド・信用などの価
値ある無形の資産を持つところも少なくなく、M&A は、これらを言わば「生け捕り」にす
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るための手法であるとも言えるのである。更に、近時は、中国政府が言わば国策として外国
企業による M&A を活用して中国の国有企業の再建を図っているとも言える状況であり、こ
うした時流に乗ることにより、よりスムーズに中国での事業展開への進出が実現するという
面も期待できる可能性がある。
次にデメリットだが、目利きができなければ、高い買い物をして失敗する可能性があると
いう点が指摘される。例えば、価格算定(ないしは資産評価基準)が不透明でよく分からな
い場合がある。
あるいは、
国有企業には隠れた不良債務や不良資産がある場合も考えられる。
更に、欲しいものだけではなく不要なものも買収の対象になることがある。資産だけ欲しい
場合でも、従業員を継続雇用することが条件になることもある。また、上記のように関連法
令はある程度出揃ったとは言え、制度・実務が未成熟であることも否めず、このため、
(少な
くとも当面は)許認可等のプロセスに混乱等が見られることも懸念される。
(4)中国における M&A 法制の仕組み
以下、M&A に関する新しい法制の具体的な内容を、上記の4つの法令を中心に検討する。
① 国内企業買収規定
これは、もっとも適用範囲が広く、実務的に非常に重要な規定である。
この規定は、対外貿易経済合作部(行政機構改革により 2003 年 3 月 10 日から、商務部)
、
国家税務総局、国家工商行政管理総局、国家外貨管理局という 4 つの部門が共同で制定した
ものである。重要なポイントは以下の点である。
i)買収の手法
持分買収と資産買収が規定されている(2条)
。
持分買収には、持分を直接買い取る方法と、増資を引き受ける方法の2通りがある。
資産買収にも2通りある。外国投資者が中国の現地法人を設立し、その現地法人が受け皿
となって中国の国内企業の資産を買収する方法が通常である。これとは順序を逆にして、外
国投資者が先に中国企業の資産を買い取った上で、その資産を現物出資して中国の現地法人
を設立する方法も規定された。
ii)債権債務の処理
既に存在している企業を買収するのであるから、その対象企業の既存の債権債務をどうい
うふうに処理するかということが実務上問題となる。この規定は 2 つの原則を定めた。
持分買収の場合には、買収後の外商投資企業が債権債務を承継する(7条1項)。すなわ
ち、対象企業の持分が買収され、企業の性格が国内企業から外商投資企業に変更されたとし
ても、企業としては同一の法人であるから、債権債務は移転しないことになる。
これに対して、資産買収の場合には、債権債務はもとの国内企業にそのまま残る(7条2
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項)
。資産だけ買収されたのであるから、債権債務が移転しないことは当然のことだが、中国
では今までは明文の規定が必ずしも明確でなかった領域であるので、その限りでは意味のあ
る規定と言える。資産買収の場合には、売り手の債務弁済能力に直接影響するので、債権者
保護手続をしなければならない。債権者保護手続は日本とほぼ同様で、債権者への通知と公
告及び債権者の要求に基づいて債務を弁済するか、あるいは担保を提供することが規定され
ている(7条4項)
。
iii)資産評価
資産評価は売り手と買い手の利害が直接対立する点である。中国側は高く売りたいと思っ
ているのに対し、外国側は赤字の国有企業の場合にその企業の価値はゼロに近いので出来る
だけ低く評価して安い値段で買いたいと思っているわけである。今回は、資産評価は国際的
な評価方法を採用しなければならないと規定している(8条1項)
。具体的にこれが何を指す
かについては明確に規定していないが、時価評価等が利用できることが明定されたことは注
目に値する。
一方で鑑定評価結果よりも著しく低い値段での譲渡を禁止することによって、資本が外国
に流出されることも止めようとしている(8条3項)
。
iv)対価支払い時期
原則として、
買収後の営業許可証発行日から 3 ヶ月以内に対価を支払わなければならない。
ただし、特殊な事情がある場合には認可を得て、最長 1 年以内に支払うことも可能になる(9
条1項)
。これは中国で外商投資企業を新規に設立する場合の出資金の支払時期(出資額によ
り異なるが3年以上の分割も可)よりも、短かく設定されている。
支払い手段としては、現金以外に株式やその他の人民元資産を利用できることになってい
る(9条5項)
。
v)独占の防止
中国では、統一的な法令としての独占禁止法はまだ制定されていない。競争政策による買
収規制もなかった。ところが、今回の規定では、外資がからむ買収についてのみ、独占禁止
法の制定に先立って一種の競争法的規制と言える手続が導入された。
具体的には、買収後の市場シェアが25%を越える場合などには、買収者側は自ら報告義
務があるし(19条1項)
、あるいは国内の競争会社や業界団体の申立により(19条2項)、
独占を構成するかについて、
また買収を認可するかについての審査手続が行われる
(20条)
。
一方で、広い例外事由も規定されている。例えば、赤字企業を再編すること、先進的な技
術と管理を導入することなどが免除事由として書かれている(22条)
。
vi)外資比率
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中国の合弁企業法には、合弁企業における外資比率は一般的に 25%を下回ってはならない
という規定があるため、外資比率が 25%未満となる場合の取り扱いについては、これまで
種々の混乱があった。今回の規定では、近時の法令の流れに従い、外資比率が 25%未満でも
これは外商投資企業であることには変わりなく、現行の外商投資企業の認可及び登記の手続
に従わなければならないことを明確に規定するとともに、外商投資企業の認可証書や営業許
可証の中で外資 25%未満であることを明記すると規定した(5条)
。
iiv)準拠法
買収の準拠法は中国法であることを規定した(13条、16条)
。これは、中外合弁の場合
における合弁契約の準拠法が中国法であることを強制されていることと軌を一にするもので
ある反面、外資系企業(外商投資企業)の持分(株式)の買収のための契約においては必ず
しも中国法を準拠法とすることが要求されていないこととの間ではずれが見られる。
②国有企業再編規定
これは、国有企業を対象にした買収等に適用される規定である。例外として金融企業と上
場会社を対象とする場合は適用を受けないことになっている(2 条)
。
この規定は、国家経済貿易委員会(行政機構改革により 2003 年 3 月 10 日から、国有資産
監督管理委員会)
、財政部、国家工商行政管理総局、国家外貨管理局という 4 つの部門が共
同で制定したものである。以下の点が重要である。
i)国有企業の再編を目的とする政策的規定
この規定は、一般的抽象的な規定が多く、外資利用による国有企業再編を目的とした政策
的な規定の色彩が強いといえる。
ii)国有企業買収の方法
持分買収、資産買収以外に、デットエクイティスワップの一種ととれる方法を規定してい
る。赤字の国有企業を再編する際の有力な方法として特に言及したと考えられるが(国内に
おけるこれまでの国有企業再編では、この手法がしばしば活用されてきたようである)
、詳細
な規定はなく、具体的な方法は不明である。
再編に関する情報を公開して、外国投資家を広く募らなければならないという規定もある。
これも国有企業再編という政策目的が非常に明確な点である。国内企業の買収規定にはこう
いった規定はない。
他方、資産売却による再編の場合は、公開株競争方式を優先的に用いなければならないと
いう規定もある。両者の関係であるが、角度が違うため、一般法特別法の関係ではなく、両
方とも重畳的に適用される。両方の規定に特に矛盾はない。
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③上場会社買収規定及び国有株等譲渡通知
i)規定の整備
これらの法令の制定により、中国の上場会社の買収の方法が法的にかなり明らかになった。
今後、実際の運用がどう展開していくかが注目される。
国有企業の上場会社だけでなく、
私営企業の上場会社や外商投資企業の上場会社もあるが、
これらの規定は上場会社全般について適用がある。ただし、これらの規定は、株式買収につ
いての規定であり、資産買収については規定されていない。
ii)上場会社買収規則
これには、協議買収、TOB などに関する一般規定が含まれている。買収側が中国企業か外
国企業かを問わず、また、買収対象会社が国有企業かどうかを問わずに、この買収管理規則
が適用される。
iii)国有株等譲渡通知
この規定は、国有株・法人株の外国投資家への譲渡のみに適用される。
なお、国有株、法人株は何かということだが、これは中国の法令の中でも混乱された使わ
れ方をされている用語であり、明確に説明するのは難しく、ここでは深く立ち入らないが、
要はいずれも国家ないし法人等が保有する株式会社の株式であり、流通が制限されているも
のということである。
国有株と法人株の譲渡については、中央政府の審査認可を経なければならない。つまり、
地方には認可権限はない。また、外国投資家が国有株・法人株を譲り受けるときは、公開競
争価格方式を採用することが要求される。
外国投資家が実際に上場会社を買収するときには、次の三点に注意する必要がある。まず、
買収された上場会社は、外資比率にかかわらず、外商投資企業の優遇措置、例えば所得税の
免除または減少を受けることは出来ない。次に、国有株・法人株を譲り受ける外国投資家の
資格判断基準が曖昧なため、その審査認可の面では透明度を欠く恐れがある。最後に、外国
投資家は上場会社を買収した後 12 か月間は譲り受けた国有株・法人株を第三者に譲渡する
ことはできない。
④その他
上記で紹介した 4 つの法令は、合併については触れていない。合併については、1997 年
に制定された「外商投資企業の合併及び分割に関する規定」が適用される。また、外商投資
企業の持分を買収する場合には、1997 年に制定された「外商投資企業投資家の持分変更につ
いての若干の規定」が基本的に適用されることになる。
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(5)まとめ
中国における M&A の方式は、単純化すれば、①対象企業(ターゲット)は何か(国有企
業か、上場企業か、外資系企業か等)
、及び②手法は何か(株式ないし持分の買収か、資産の
買収か、合併か等)
、という二つの軸の組み合わせによって分析することができる。上記の各
法令の具体的内容の紹介も、基本的にこの視点を念頭において行った。
ただ、M&A の方式は、英米を中心に高度に発達した多くのバリエーションが存在する(例
えば、いわゆる逆買収や MBO、株式の交換等)
。こうしたさまざまな方式が中国においてど
のように(あるいはどの程度)実現・採用することができるのか、今後の実務の展開が非常
に注目されるところである。
3.地方による外資政策・制度の差異
(1)総論
次に、地方間の外資政策・外資導入制度の差異にまつわる問題点について概観したい。
実際に中国における外資投資関連の実務に携わる方の多くが実体験ないし見聞されてい
るように、中国においては、地方によって外資政策、特に外資優遇政策に差異が存在するこ
とがある。例えば、生産型の外資系企業が通常享受する企業所得税の優遇であるいわゆる「2
免3減」について、一部の地域ではそれ以上の減免が与えられていることがあることなどで
ある。
こうした地方による外資政策ないし外資制度の差異については、大きく以下の3つに分類
することが可能である。
・中央の法令を敷衍・具体化している場合
・中央が認めた地方毎の特別の優遇策である場合
・地方政府が勝手に行っている優遇策である場合
一口に地方毎の外資政策と言っても、それがこれらのいずれに当たるかによって、その意
味合いはかなり異なってくる。以下、各場合について概観する。
(2)中央の法令の敷衍・具体化
例えば、前記の外資による M&A に関して、上海市は、
「外資が上海市国有企業を買収す
ることに関する若干意見の実施細則」
(2003 年8月4日公布、同日施行)を制定し、中央の
規定する国有企業の買収に関する法令よりも更に詳細な手続等に関する規定を置いている
(このほか、天津市などにも同様の M&A に関する規定がある)
。また、同じく上海市や北京
市等では、国際的な多国籍企業の地域統括本部の誘致に関するいくつかの規定を置くなども
している。
こうした規定は、基本的には、中央の法令に反するものではなく単にこれを敷衍ないし具
体化したものであるとの位置づけが可能である。
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(3)中央が認めた特別の優遇策(中西部優遇策等)
中国政府は、一定の地方ないし地域について、外資導入に関する特別の優遇政策を実施し
ている。
最も範囲が広く且つ近時の実務において重要であるのは、いわゆる「中西部」に対する優
遇政策である。沿海部ないし東部等の地域に比べて、中部ないし西部といった内陸部の地域
は、経済的にかなり遅れをとっており、外資の導入によるこうした地域の経済の梃入れは政
府の重要な政策課題とされている。
例えば、中西部地域にとって有利な産業ないしプロジェクトについては、一定の要件のも
とに、通常よりも広く輸入関税と増値税が免除されるなどしている。また、やはり一定の条
件のもと、外資による投資領域と外資企業の設立条件、持株比率の制限が緩和されている。
更に、中西部地域に設立した国家奨励類外商投資企業は、現行の税収優遇政策期間満期後
3 年間は、法人税が 15%に減額される。また、東部地域で事業活動を行う外資企業の中西部
地域への再投資を奨励する為、こうした再投資によって間接的な外資比率が 25%を超える企
業についても外国企業と同じ待遇を享受できることとされている。このほかにも、資金調達
面や、経営管理請負等についても一定の優遇が認められている。
こうした中西部に対する優遇策のほか、例えば、従来からの経済特区その他の特定地域に
おける外資導入の優遇政策も、こうした「中央が認めた特別の優遇策」というカテゴリーに
位置づけることが可能と言える。
(4)地方が勝手に行っている優遇
上記の他の2つのカテゴリーと大きく意味合いを異にしているのが、地方政府が中央の法
令を言わば逸脱して勝手に当該地域において、特別の優遇策を実施している場合である。
例えば、一部の地方において、中央から特別の優遇政策の実施を認められているわけでは
ないにもかかわらず、いわゆる「2 免 3 減」が終了した後も、一定期間、企業所得税につい
て特別の還付を行うことにより実質的に2免3減の優遇を延長しているケースなどである。
こうした「地方による勝手な優遇策」は、上記(3)の中央が認めている場合と、必ずしもす
ぐに区別しにくいことがあるかも知れない。しかし、(3)の場合と異なり、地方政府が勝手に
行った優遇政策の場合、例えば中央政府によってこうした「不適法な優遇政策」がストップ
されてしまうリスクも存在するので、注意が必要である。中央政府(例えば商務部)の担当
者は、公の席において、こうした「地方の勝手な優遇政策」の存在を問題視する発言をしば
しば行っており、このような「優遇取消」のリスクは顕在化の可能性も十分あり得るものと
理解する必要がある。
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