中国関係ご担当部署等にご回付願います

* 中国関係ご担当部署等にご回付願います *
No.59 2012 年 新緑号
<巻頭言~中国首脳交代の行方~>
昨年、中国は中国共産党成立 90 周年を祝い、胡錦涛主席は長文に亘る重要演説を 170 年前の鴉片戦争
(=阿片戦争)以来の屈辱に満ちた歴史から説き起こし、中国共産党指導による栄光の歴史を謳い上げ
た。革命により築き上げた政権の正統性は、1949 年 10 月1日、共産党成立後 28 年にして中華人民共和
国を成立させたその時点及びその後の何代かは、銃を持って起ち上がった人々の正統性がそのまま執政
権者の正統性を担保していた訳であるが、鄧小平と言う類稀な指導者の最後の指名を受けた胡錦涛主席
の下台(退場)により、革命経験を持たない第 5 世代が大勢となった今、13 億の人民を統治する権力の
継承はいかなる担保により為されるのか、誠に興味深い。英国「フィナンシャルタイムズ」とこれを引用した香港
「明報」を元に「中央政治局常務委員」9 名の顔ぶれを列挙して見る(敬称略)
。先ず、現在、副主席の
習近平の主席昇格及び李克強副総理の総理昇格は動かないだろうとは衆目の一致するところである。残
る 7 人に付いては、現副総理の王岐山、張徳江、現中央組織部長の李源潮、現中央宣伝部長の劉雲山、
現上海市党委書記の兪正声、広東省党委書記の汪洋、そして、重慶市党委書記の薄熙来と言った顔触れ
が取沙汰されている。但し、薄熙来に付いては、重慶の‘打黒’
(暴力団の壊滅)に功のあった王立軍副
市長を解任、同副市長の在成都米国領事館への駆け込み事件から、その眼が無くなったとし、
‘維穏’
(安
定維持)の重要性から現公安部長の孟建柱の大抜擢を予測する向きもあるようである。ともあれ、個人
の血脈ではなく、
(権力継承の道筋は black box であっても)
‘党’と言う組織で権力継承を行う方式は、
約 5000 年の王朝政治の歴史を有する中国では画期的であり、これを過ぎてこそ初めて直接選挙の道筋が
見えて来るのではないか。前述した胡錦涛主席の重要演説で、所得格差の元凶である「反腐敗闘争の情
勢は依然として緊迫しており、任務は依然として極めて困難である」としながらも「中国共産党成立 100
年の時(2021 年)までに高い水準の小康社会を打ち立て、新中国成立 100 年の時(2049 年)までに調和
のとれた社会主義の現代国家を築き上げること」と述べている。最初の、2021 年と言えば、2013 年に権
力が移行する新指導部の任期の範囲内である。論語で言う「貧しきを憂えず、等しからざるを憂う」を
意識したものであろうが、これは、同じく論語・泰伯の「任重而道遠」
(任重くして道遠し)と言うべき
か、新指導部の責任は重い。
(文:会長 弁護士 髙井 伸夫)
< 東京春秋:アジアにおける宇宙開発について>
2012 年 2 月 14 日、中国の宇宙開発を担う国営企業「中国宇宙科学技術集団」が今後 4~5 年の間、ロケット
や人工衛星を平均して毎年 20 回打ち上げる方針を示しました。また、3 月 13 日には、中国の国家国防科学技術
工業局が、2013 年に月周回衛星を打ち上げ、無人探査機の月面着陸を実施する計画を明らかにしました。前号
の〈巻頭言〉でも紹介しましたように、中国は、2011 年 11 月に宇宙ドッキングを成功させ、2020 年頃を目処に
有人宇宙ステーションの建設を計画するなど、宇宙開発分野における成長はめざましいものがあります。
一方、日本は、2010 年 6 月、小惑星探査機「はやぶさ」が、60 億キロにも及ぶ長い旅を終え、小惑星「イト
カワ」の微粒子を持ち帰り地球に帰還したことが話題となりましたが、宇宙開発分野に関して中国の後塵を拝し
ているともいえる状況にあります。そのような状況のなか、日本政府は、日本の宇宙開発利用を強化するため内
閣府に「宇宙戦略室」を設置するほか、宇宙航空研究開発機構(JAXA)設置法も改正して民間にも技術を解放す
る方針を、2012 年 2 月 14 日に示しました。また、同法から「平和目的に限る」という規定を削除し、国の安全
保障という観点での防衛利用も可能とするそうです。
今後ますます激しくなることが予想されるアジアの宇宙開発競争が、日本や中国を中心としたアジアの軍拡競
争に転じないよう切に願います。日中共同事業としてアジアにおける宇宙開発ができないものだろうか。
(文:東京中国室 弁護士 五十嵐 充)
1
< 最近の法令から >
11 1.
「船舶頓税暫定条例」
(国務院常務委)
(国務院令第 610 号)及び「車両船舶税法実施条例」
(国務院令
611 号)
(2011 年 12 月 5 日公布、2012 年 1 月 1 日施行)
2.
「放射性廃棄物安全管理条例」
(国務院常務委)
(国務院令 612 号)
(2011 年 12 月 20 日公布、2012 年 3
月 1 日施行)
3.
「入札応札法実施条例」
(国務院常務委)
(国務院令第 613 号)
(2011 年 12 月 20 日公布、2012 年 2 月 1
日施行)
4.
「宝籤管理条例実施細則」
(財政部、民生部、体育総局)
(2011 年第 67 号)
(2012 年 1 月 18 日公布、3
月 1 日施行)
5.
「タクシー運転者従業資格管理暫定規定」
(交通運輸部)
(2011 年第 13 号)
(2011 年 12 月 26 日公布、2012
年 4 月 1 日施行)
6.
「農業部規範性文書管理規定」
(農業部)
(2012 年第 1 号)
(2012 年 1 月 12 日公布、2 月 15 日施行)
< 2011年度人民法院十大典型事案-中国法院網―>
1.薬家鑫:事故発生後の死傷者轢殺事案-轢き逃げ事故の後、更に念の為轢殺した事件(西安市)
2.河南省:
‘痩肉精’事案-食肉の赤みを増す為に危険な薬物を使用、食品安全を脅かした事件
3.騰訊 QQ の 360 を提訴した不正競争事案-プライバシー保護機のソフト盗用による賠償事件(北京市)
4.河南省:天橋道路使用料事案の再審-公安車両を装い、使用料を詐欺した事件
5.許邁永の収賄と職権乱用事案-元副市長の職権乱用による巨額の収賄事件(杭州市)
6.
‘株価操作’汪建中に 7 年の懲役刑事案-証券市場罪による初めての断罪事件(北京市)
7.浙江省:銀泰公司の違法資金集め詐欺事案-違法な資金集めによる詐欺罪
8.雲南省:環境訴訟事案-養豚の廃水による地下水汚染に関わる環境汚染訴訟事件
9.倉央嘉作の詩歌が知財権紛争となった事案-無許可使用の歌詞の作詞者を特定した事件(北京市)
10 .浙江省金華市の呉俊東の追越し人身事故事案-人身事故発生者が救助を行った後、賠償要求された
事件。民事事件、刑事事件を問わず、何れの事件も現代中国の内包する今日的問題を含んでいることか
ら、専門弁護士が典型的事案として詳細な解説を加えている。
< 北京春秋:北京での交通事故その4>
交通警察の事故証明を取得したあと、病院に行きました。中国では病院にランクがあり、診療の値段も
違いますし、質も異なるといわれています。北京大学近くに所在する第 1 ランクの病院に行き、流暢な英
語を話す医師から全治 6 週間との診断を受けました。骨には異常がないが、左足と左手手指の捻挫がひど
いとのこと。骨折がないことに安堵しつつ病院をあとにし、いよいよ示談交渉となりました。賠償の話に
なると、付き添っていた加害者(米国人留学生)との間に、微妙な空気が流れます。
私は、迷いながらも加害者が 25 歳の留学生である点に十分配慮した金額を提示したところ、彼は友人
の中国人弁護士を呼ぶと言い出しました。私は数万円程度の話で弁護士対応することを面倒に感じました
が成り行き上やむをえません。1 時間後に来た中国人弁護士は、当初あまり態度がよろしくなく、壊れた
自転車代と医療費のみ弁償すると言っただけでした。
これに対し、私からは、比較的重傷で通院も必要であること、加害者の 100%の過失を認めた調書があ
ることなどを中心に反論し、3 時間程度のやり取りのあと、私の当初の提示額で決着がつきました。しか
し、今思えば、加害者が呼んだ中国人弁護士の顔を立てて、数パーセントでも減額すれば、同じような話
を 3 時間もぐずぐずと繰り返さずともすぐに話は付いたと思います。中国人との交渉では、形だけでも良
いので相手の面子を立てた形を作ることがとても大切なのですが、当時はそのような知恵もなく、ひたす
ら同じ話の繰り返しになったことは苦い思い出です。この時に我が身をもって学んだことは、今では仕事
でとても役に立っています。
(文:北京代表処 首席代表 弁護士 萩原 大吾 )
2
〈閑話休題~50 年前毛沢東は 2012 年の中国を如何に予言し
たか~〉
本年1月、中国の「新華網」
(新華ネット)に掲題の記事が掲載された。以下これを引用してみたい。
同文章は、1962 年 1 月 30 日の《毛沢東:拡大中央工作会議上の講話》の第 4 部分の抜粋として始まる。
毛沢東は、1960 年のエドガー・スノウ(注:
「中国の赤い星」の作者)との会話を披瀝する。彼に対し、
‘我々
は政治、軍事、階級闘争には一定の経験も、方針も、政策も知っているが、社会主義経済建設はやったこ
とが無い’と言うと、彼は‘
(建国後)もう 11 年も経っているのだから、中国建設の長期計画に付いて述
べて欲しい’と言うので‘分からない’と答えると、彼は‘とても慎重ですね’と言うので、
‘慎重なので
はない、分からないものは分からないし、経験が無いのだ’と答えたと言う。更に、1961 年のバーナード・
モンゴメリー将軍(注:英国の陸軍元帥、エル・アラメイン戦役とノルマンディ上陸作戦の指揮官)との会話を紹介する。曰
く、同将軍は‘今後 50 年が過ぎたら、壮大な国家になり、他国を侵略できる程になるでしょうね’と言っ
た。これに対し、
‘我々はマルクス・レーニン主義者で、且つ我が国は社会主義国家であり、資本主義国家ではない。
従而、100 年、1 万年経っても他人を侵略することは有り得ない。強大な社会主義経済建設には、中国は
50 年では無理、100 年、イヤ更に長い時間がかかるだろう。貴国の資本主義の発展は既に数百年になる。17
世紀以降から現在まででも既に 360 数年になる。我国で強大な社会主義建設を達するには、自分の予測で
は 100 年以上掛かるだろうと思う’と答えたと披露した上で、
‘我が国は、今後 50 年乃至 100 年前後で強
大な社会主義経済を建設しようではないか’と呼び掛ける。1958 年、
「大躍進政策」を発動、
「土法高炉」
による大量の鉄増産運動或いは「人民公社」を組織したが、これは失敗に帰したことが明らかになった時
期であった。この演説の 4 年後には「文化大革命」が発動され、10 年に亘り国中を混乱に陥れ、1976 年1
月に亡くなった周恩来の後を追うように、同年 9 月に世を去る。この 2 年後の 1978 年、3 度目の復活を遂
げた鄧小平が「改革・開放政策」へと舵を切り、今日の繁栄へと導くのである。毛沢東が予想した‘50 年
後’は、鄧小平という稀有な指導者により、資本主義社会に頼られるまでの国家に変貌した。その意味で
は、正にバーナード・モンゴメリー将軍の予言が当たったと言えるのだが、毛沢東は果たして今の中国をどんな感慨
で見ているのだろうか?
(文:中国室 顧問 千葉 勝茂)
< 上海春秋:上海交通小学 >
私が上海に赴任してはや 1 ヶ月以上が過ぎようとしています。色々と驚くことばかりですが、いつま
でも慣れないのは、歩行者の脇を猛スピードで通り過ぎていく電動モーターのついた自転車やスクータ
ーです。
中国においては、電動「自転車」は、
「最高時速 20 キロ以下、車重 40 キロ以下」と規定されているは
ずですが、明らかにそのスピードを超過する自転車(又はスクーター)が行き交っています。
この電動自転車又はスクーターの厄介なところは、音がでないところです。歩道だからと安心して夜
道をふらふらしようものなら、すぐ脇を猛スピードで二輪車が駆け抜けていき、冷や汗をかくことにな
ります。
種類も多彩で、スクーターや自転車型の他に、三輪車やリヤカーを引いたものなどがあり、そのよう
な音を立てない電動の乗り物が自由自在に行き交っています。そういった交差点の様子や、個人商店の
自転車屋の店先に充電用の大きなコンセントがつけられている様子をみると、電動の二輪の乗物という
分野では中国に先を越されてしまっているのではないかと尐し危惧を覚えます。
とにかく上海出張などで来られて、地元の方の多い方面に行かれる際は、進路変更時の後方確認を歩
行中でもお忘れなく!
(文:上海代表処 首席代表 弁護士
東城 聡)
3
<都市住民と農村住民人口逆転>
本年 2 月 22 日付けで公表された国家統計局の「2011 年国民経済と社会発展統計公報」によれば、大陸
総人口は 13 億 4735 万人、2010 年比では+644 万人とある。興味を引くのは、都市人口が 6 億 9079 万人、
農村人口が 6 億 5656 万人と、都市人口が農村人口を逆転し、初めて 51.3%に達したことである。2010 年
11 月に実施された国勢調査では、都市人口比率が 49.7%であったから、僅か 1 年で都市人口が 1.6%増加
したことになる。現在、中国には 20 万人以下を含め‘都市’としてカウントされる数が 655 都市あるが、そ
の内 100 万人以上の都市は 122 都市である。2009 年時点で、世界には 50 万人以上の都市が 961 都市であ
ったが、その内中国の都市が 236 都市を占めており、1980 年には僅か 51 都市に過ぎなかったことから見
ると、都市化スピードは世界一と言われる由縁である。この動向に関する中国国内の議論は喧しい。或る経
済学者は、
世界各国では 1 人当たり GDP が 3000 ㌦台の時に平均都市化率は 55%に達しており、
中国が 4000
㌦を超えた現在、明らかに低水準である、更に一層都市化率を高め、現在の輸出主導型の GDP 構成を内需
主導型に転換する起爆剤とすべきであると主張する。一方、或るエコノミストは、急速な都市化は、大都市病と
スラム街の出現により、治安の悪化も懸念され、都市化の急速な進行は良いことばかりではない、と警鐘を
鳴らしている。前述の国家統計局統計では、登録住所を離れた、所謂、農民工人口が 2 億 7100 万人と記
載されている。食糧生産確保の為、120 ㎢を標榜する中国政府にとり急速な都市化が何をもたらすのか、
今後も注意深く見守る必要があろう。
(文:中国室 顧問 千葉 勝茂)
< 李茂生の日本考現学:第十四回 ~虎の尾を踏む~>
最近、名古屋市の河村たかし市長が、こともあろうに南京市政府代表団に南京虐殺事件の存在を否定
する発言を行った。あまつさえ、愛知県大村秀章知事の忠告にもかかわらず、重ねて不存在を主張し、
陳謝を拒否したという。当該代表団の困惑はいかばかりであったかと同情を禁じ得ない。同代表団は、
暫く中国に帰国できなかったと聞けば尚更である。南京虐殺事件が、中国側の主張にもかかわらず未だ
議論が尽きぬ案件であることは誰しも知っていることであり、故にこそ日中双方の学者が共同研究を進
めているのである。それをよそに、個人的発言としても、余りに無神経と言わざるを得ない。今年は日
中国交回復 40 周年、記念すべき年の多数の行事の遂行に暗雲を投げかけかねず、同市長の罪はいかにも
重い。龍には’逆鱗‘と言われる急所がある。同市長はその逆鱗に触れ、虎の尾を踏んでしまった(履
虎尾-「易経」-履卦)のである。昨年の東日本大震災で日本国民の民度の高さは、世界で、勿論中国
でも大いに称賛を受けていたのに、この一言で帳消しになりかねないことは誠に残念である。論語に曰
く、
「過而不改、是謂過矣」
(過ちて改めざる、これを過ちと謂う)とある。げに、口は災いの元である。
発 行 髙井・岡芹法律事務所
中国室
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