米国商標制度についての10講 米国商標制度についての10講 第2回

米国商標制度についての10講
第2回 「商標をどう取るか?」
皆様こんにちは、Ladas & Parry LLPの奥山です。
前回のお話で、アメリカの商標には他国にはないものが結構あるというお話をしま
した。「これがうちのトレードマーク!」「誰にも真似されたくないから、これを
商標として登録出来る?」というチャレンジングなご相談、是非お待ちしておりま
す。
さて10回を目途にと始めた今回が第2回目のお話ですが、前回、商標を定義しま
したので、今回は、どう商標権を取得・確立するかについてのお話をさせてくださ
い。では、早速始めましょう。
「商標を取得したい?」「だったら
「商標を取得したい?」「だったら使いなさい!」
だったら使いなさい!」
さて、次なる問題は、その「商標権が取れるの?」というご質問に答えて行く
ことです。どうやったら、商標権は確固たる権利になるのでしょうか?これも、
アメリカは他国と少し違っています。連邦登録には、Principal Register(主登
録)とSupplemental Register(補助登録:Principalに入れる資格が出来たら、
入れてあげます的な登録簿)の二つがあります。当然目指すは「Principal
Register」でありますので、私たちが通常「商標登録をしましょう」と申し上
げたとき、お客様が「商標登録できますか?」と訊かれるとき、私たちは、こ
の「Principal Register」のことを言っています。どうしたら、この「Principal
Register(なんかカッコいいですね)」に登録出来るのか?ちなみに、第一回
目に、商標として機能するさまざまな「物」を見てきました。今回は、「次に
権利としてどう確立するか?」これが大きな問題になります。そして、もう二
つの問題、「権利を獲得するために『使用する(使う)』と言うことは一体ど
ういうことなのか?」「どうするとその権利はなくなってしまうのか?」そん
なことをお話していきたいと思います。
権利の取得は
権利の取得はどうする?
米国特許商標庁(USPTO)のPrincipal Register(主登録簿)または、各州の
レジスター(Register:登録簿)に登録することが必要で、そのどちらかに登
録して初めてそのマークは「商標権」になる!というのは、実は間違いなので
す。マークは、物品の販売・サービス・流通など、生活の現場(米国の商標法
では、「in commerce」で使われて初めて権利になるのです。では、USPTO(あ
るいは各州の商標登録簿)への登録は一体何になるの?全く無駄なの?「そう
ですね。無駄です!」って言ったら、私ども商標弁護士の商売がほとんど成り
立たなくなります。だから言っているわけではないのですが、「州の登録や、
USPTOへの登録は、Additional Rights(別の権利、しかも強い権利)をマーク
のオーナーに与えてくれるのですよ!」って、皆さんに申し上げています。で
も、本来の商標権の権利の根源は、「使用」の中にあるのがアメリカのシステ
ムなのです。
ですから、アメリカの商標を良く見ると、決してすべての商標が登録されてい
るわけではなくて、使われていることのみで、権利となっているマークはいく
らもあるのです。これを「コモンロー・ライト」と言います。この「コモンロ
ー」上の権利を気軽に無視していると、後々痛いしっぺ返しを食うことになり
ますので、注意が必要です。私がお客様にアドバイスをさせていただくときに、
「コモンロー・ライト」の抵触が、大きな侵害にならないか?その視点を忘れ
ずにチェックし、徹底的な調査をした方が良いと思われる場合は、しっかりと
アドバイスをさせて頂きます。
「コモンロー・ライト」が取得を目指している商標に関して存在する場合、じ
ゃあ「万事休す!」なのでしょうか?決して、そんなことはありません。しか
しながら、この話を始めますと、話がどんどんと脇道にそれてしまいますので、
今日の本筋のお話、「商標をどう取るか?」に話を戻したいと思います。
「商業においての(in commerce)」での「使用」とは何か?という、本題に戻
りましょう。
真正な商業における使用
ランハム法では、45条に「商業における使用」を定義しているのですが、この
文言には二つの要素が含まれています。その二つとは、「倫理」的な要素と、
純粋な「商業」の要素の2つです。
「倫理的な意味での使用」
ランナム法の原文を見るとこう書いてあります。商業における使用は、「bona
fide use in the ordinary course of trade and not made merely to reserve a
right in a mark.(通常の商流における真正なもので、単に商標に権利を保持す
るためだけのものではあっては)」ならない。
さあ、一応、「bona fide」を「真正な」と訳しましたが、一体何を持って「真
正な」と言うのでしょうか?これは登録申請をする際にも問題になりますし、
異議申し立てをしたり、受けたりするときにも、申立人が自身の使用を証明す
る際に苦心する部分です。あまり売る気のない製品をウェブサイトに載せてい
るのは、「真正な」使用なのでしょうか?「これらは我々の商標です!」と宣
言するだけのウェブサイトは、果たして使用になるのでしょうか?教科書的に
は、「会社の商業的な目的への達成を促進するように企画される本物の商取引
においてマークを使うこと」を「真正なる使用」と呼ぶと言われています。何
か釈然としないのですが、「登録には使用が必要」と先ほど申し上げましたよ
うに、まず、登録申請する段階では、必ずしも使用している必要がないので、
話を少し先に進めたいと思います。
次の疑問は「商業的な要素」とはという疑問です。
「商業的な要素」とは?
「商業における(in commerce)」の中での商業って?一体何を指すのか?これ
が、真正なる使用の意味合いと相まって、なんとも分かりにくい世界を作り出
しているのが米国の商標登録の世界なのですが、悔んでばかりも居られません
ので、出来るだけ解剖していきましょう。
「商業」とは、何なのか?米国法で「商業(commerce)」というと、こんな定
義がされます。「all commerce that may lawfully be regulated by Congress.」
「えっ!」「定義したはずのcommerceと言う言葉がその定義の中に使われてい
るの?」は、多分正しい反応です。私もここで躓きました。実は、連邦法の一
部である商標法の成り立ちにかかわる部分の話になるのですが、ランナム法は、
連邦の商標に関する法律ですので、はじめから「州内の商業」を相手にしてい
ません。これは「州際間のビジネスを規制するのが連邦法」の役割という役割
分担を反映しているとも言えます。
ということで、商業は必ず少なくとも州際間でなくてはならないことは分かり
ました。もちろん、国際間であれば、なお「可」であることは言を待ちません。
州際間の商業であればオーケーか?これが次なる疑問です。ランナム法では、
「商標」は、GoodsにAffixed(添付)されていなければならなくて、なおかつ、
(州際間)商業において、Sold(販売)か、Transported(運搬)されていなけ
ればならないとされています。これを読んだ方は、これはどうなの?あれはど
うなの?と、クエスチョンマークのオンパレード状態になると思います。サー
ビスマークの出現はランナム法の制定後になりますので仕方ないとしても、州
際間を運搬していれば、販売していなくても良い?となると、疑問は膨らむば
かりです。
法律の限界と言うか、法律の不備というか、現代の「商業活動」の現実に法律
が合わなくなってきていることは、間違いなさそうです。ということで、疑問
を膨らますだけ膨らませておいて、誠に申し訳ないのですが、先に進みたいと
思います。
しかし、一つだけ言えるのは、「商業」は、「州際間でなければいけない」と
いうことです。USPTO(米国特許商標庁)は、今でも、州内だけの商業にしか
使われて居ない商標の登録を認めない姿勢を崩していません。例外的に州内だ
けの商業であっても州際間の商業に大きな影響を与える場合は、連邦登録を認
めると少しだけ緩めては居ますが。。。この意味合いは、また、いつかお話し
することになると思います。
使用しないと登録できない!
この姿勢は今でも変わらないのですが、ランハム法が制定されて、戦後新しい
商標登録のシステムが始まった時から、「アメリカの商標登録は使用されて初
めて有効になる」というルールが貫かれて居ます。「使用なしに登録なし。」
一見面倒臭い例外がない良いルールのようでしたが、産業界にしてみると、製
品の発売にたくさんのお金を使い、使用を始めて、そして、商標登録申請をし
てみたら。。。びっくり!登録が取得できずに困ってしまった。。。などと言
うことがたくさん起こったのでした。
こうした問題を回避するために創案されたのが、Intent-To-Use (使用する意図
がある)をベースにした申請を認めるシステムです。これが、1989年に導入され
て、散々お金を使った挙句に商標権が確保できないといった問題は無くなりま
した。この改正が行われる前には、「Token Use:名目使用(とりあえず、法
律を充足するために一度だけ州際間の輸送
輸送をして証拠を残すこと)」と呼ばれ
輸送
る実態のない「使用」が横行して、ランナム法の本意にそぐわない状況があっ
たことがIntent-To-Useをベースにした申請を作り出す契機になりました。
Intent-To-Use Applicationは、これが認められても、実際の「使用」が始まり、
「使用宣言」を「証拠」とともに提出するまで、登録にはなりません。
運搬も使用の内?
運搬も使用の内?
ランナム法では、物品の「運搬」「運送」も「販売」と同義であると定めてい
ます。これは、前述申し上げた通りです。そこで、Intent-To-Use Application
のくだりで申し上げました、「Token Use:名目使用」のような一回形だけの
出荷を州際間で行うと言うことが横行したわけです。そこで、法のもとで規定
されている「Transportation:運搬・運送」も「真正な」ものでなければなら
ないのです。
では、何を想定して、「運搬・運送」を使用の一環と考えたのでしょうか?立
法の精神は、サンプルなどの配布も商業活動の重要な一部であるというところ
に立っています。サンプルを配ることは、まだ、「販売」ではありませんが、
「販売」を喚起する重要な手段であり、サンプルの配布などが始まって居れば、
つまり、それに付随する「運搬・運送」があれば、「使用」が始まっていると
認めましょうというのが、法の精神になります。
いわゆる、見込み客へのサンプル配布は立派な使用になるということが出来る
わけです。この場合、運送の指示を出しているのは、商標のオーナーかその代
理人であり、運搬物の受領者は、見込み顧客である、あるいは、別の商品を常々
買っている顧客であるということが重要な要素になるのです。
次にサービスマークのお話を少ししましょう。
州際間のサービスマーク
先ほどUSPTOは、「今でも、州内だけの商業
商業にしか使われて居ない商標の登録
商業
を認めない姿勢を崩していません」と申し上げました。ところが、サービスマ
ークに関して言うと、実は、USPTOは意外と柔軟な姿勢を持っています。
例えば、Scientific Research Service(科学的な研究サービス)というビジネス
を考えてみましょう。会社をNY州に設立して、商標をサービスマークとして
登録しました。あるいは、レストランを開業して、レストランの名前をサービ
スマークとして登録しました。このような場合、州外から来る観光客にサーブ
することが可能性として高いとか、全国的に配布される科学雑誌に広告を載せ
たり、Research Service Providerとして業界誌に載ったりすることが「広告」
活動になるという理由で、サービスマークの州際間取引のバーは、非常に低い
のです。
サービスマークの使用は、実際に営業して、サービスマークを表示して広告を
出したりする限り、登録の大きな障害にならないと言う理解をして頂いて良い
です。実際に複数の州に居られる顧客をお持ちであるという事実があれば、な
おさら良いことは言を待ちません。
マークの顕著性が登録を早める?!
商標権確立のベースは「使用」だ!と、言っておきながら、今更、こんなこと
を申し上げるのも気がひけるのですが、「登録」されやすさを考えると、顕著
性(英語で直訳すればDistinctivenessなのですが、Fanciful Mark(造語に依る
マーク)に代表される「独特さ」とでも言うのでしょうか)も重要な要素です。
もちろん、これは決して絶対的な基準ではありません。しかし、そのマールを
見て、「あっ、これこれ!」と消費者が一片の疑問を持たずに数多くの商品が
並んでいる棚から間違いなく手にするようなマークは、USPTOが「商標登録を
与えるべき」という結論に達する時間を相当短くしてくれることは間違いない
でしょう。
この話はまた後日ゆっくりしたいと思いますが、例を挙げると、私の大好きな
アイスクリーム。近所のスーパーのアイスクリームの冷凍庫は、6つから8つ
くらいの巨大な冷凍庫がすべてアイスクリームというのが、アメリカのスーパ
ーでの普通の光景ですので、愛してやまないBrandを探すのは大変です。とこ
R (「ハーゲ
ろが、500グラム入り位の大きなパッケージに、HAAGEN-DAZS○
ンダッツ」) と大書してあれば、探すのは簡単。次の「大好きなフレーバー探
し」に即座に移れるわけです。
ところが、ワインに欠かせないCheeseを選ぶときに、数十から100種類以上あ
りそうな巨大なチーズセクションの前に立ちつくすこと、、、15分、、、今
晩飲むスペイン産の赤に合うチーズはどれか、、、で悩む日々が続いていたの
R というチーズに出会って、それから、迷わず
でした。そんな時に、Baby Brie○
R というブランドは、アメリカ
に買えるようになったのですが、このBaby Brie○
での販売は1983年に始まったのですが、4回商標登録にトライしましたが
認められませんでした。最終的に5回目の挑戦で商標登録を達成したのは、販
売開始から20年後の2003年になってからでした。
なぜ?こんなに苦労したのでしょうか?
「Brie」というのは、チーズの種類で一般名称です。「Baby」は、そのパッケ
ージが小さいことから、その商品を説明しているに過ぎません。確かに多分初
めてこのサイズのBrie Cheeseを売り出したのかもしれないのですが、残念なこ
とに「BabyサイズのBrie Cheeseですよ!」という「説明的な(Descriptiveな)」
商標であったことが、商標登録を取得できなかった原因でした。しかしながら、
この会社は、かたくなにこのサイズの、このパッケージの商品を作り続け、競
合のMini Brieとか出てきても負けないで販売し続けたことが、20年後に商標
R は今でも私の好みのチーズになって居
登録を達成した理由でした。Baby Brie○
ます。Whole Cheeseなのに、2-4人くらいで十分に食べきれるサイズであると
いうのが大きな理由です。
R のように、本来「顕著性(Distinctiveness)に欠ける」商標は、商
Baby Brie○
標申請を却下されるか、審査の末に、審査官から「Supplemental Registerなら
入れておいて上げますよ」というオファーが来ます。Principal Registerでは無
いものの、商業使用を継続して続けることによって、Distinctiveness(顕著性)
を確保できるであろうと思われる商標は、Supplemental Registerに登録されま
す。
では、実際にどのような商標が登録されているのでしょうか?
アメリカのGazette(商標公報)は、毎週火曜日に発行されますので、登録にな
った商標も同じ日に発表されます。ちなみにこれを書いております、4月の第
4週目の火曜日は、3回目の火曜日で19日です。この日の商標登録になった
商標の3210個を見てみますと、このうち約210個がSupplemental
Registerへの登録です。毎週の発表を見ているわけではありませんので、これ
が代表的な数なのかは疑問ですが、それほど多くないことはお分かり頂けると
思います。では、どのような商標がSupplemental Registerとして登録されたの
かを見ると、例えば、THE WEDDING PARTIES(Reg.# 3,949,421)という
商標が登録されています。41類ですので、サービスマークです。ギフト・レ
ジストリー(アメリカでは結婚するカップルは欲しいものを登録して、プレゼ
ントする親戚や友人はカップルが登録した欲しいもののリストから買うことで
結婚プレゼントとする習慣があります)とか、家の家具とか調度品のあつらえ
方とかを教えるワークショップをするサービスのマークと言うことです。まさ
に、これから結婚を控えたカップルにウェディング・パーティの準備をその他
もろもろを教えてあげるサービスということで、上手にサービスの記述から、
ウェディング・パーティーという言葉を除いたので、登録の可能性は出てきた
のでしょうが、やはり、非常に一般的な言葉を使ったマークであり、顕著性が
現時点では見られないことからPrincipal Registerへの登録は今回見送られた
ようです。
この他、今週Supplemental Registerに登録された商標には、Front of Sink(こ
れも商品が台所用のまな板ということで、シンクの前に如何にもありそうです
し、説明的でかつ顕著性はないという判断だったのかもしれません. Reg.#
3,949,424)とか、Mind Controller(脳波でコントロールすると言うビデオゲ
ームのインプット装置。Reg.# 3,949,433)などのように、はっきりと似ている
ものは確かにないけど、どう考えても顕著性に欠けるという商標がやはり多い
ようです。ちなみにSupplemental Registerも商標登録の一種ですので、使用さ
れていることが前提条件になります。Intent-To-Use Applicationで、登録の許
可を得ただけではこのSupplemental Registerに登録されることはありません。
誰も確かなことが言えないのが残念なのですが、良く言われるのは、もともと
顕著性が乏しい商標は使い始めてから最低でも5年を経過しないと顕著性を獲
R のよ
得できないというのが、一つの定説になって居ます。ただし、Baby Brie○
うに、発売年、3年目、6年目、10年目に挑戦してもダメだった例がありま
すので、一概には言えないと言うのが正解かもしれません。
商標権の喪失:どうすると権利を失うか?
さあ、権利取得のお話をずっとしましたので、ここで、最初に申し上げた2つ
目のテーマ「どうするとその権利はなくなってしまうのか?」に移りたいと思
います。
それは、「使う」だけではなく、「正しく使い」「正しく使われる」ことが求
められるということです。自分自身だけではなく、他の人にも「正しく使われ
る」ことが必要になるのです。
さあ、何だか禅問答のようになって来ました。
戦前、エスカレーターの業界では、Otis社が「Escalator」という商標名でエス
カレーターを販売していました。当時NYを本拠にしていたPeelleと言う会社は、
「Motorstair」と自社製品を呼んでいて、Westinghouseは「Electric Stairway」
と呼び、Haughton Elevatorという会社は、「Moving Stairs」と名付けていま
した。
ところが、最初のエスカレーターを製造販売したOtis社が、「Escalator」とい
う商標を保持していたのではなく、Escalatorという商標権はCharles
Seeburgerさんという発明家が取得し、後にOtis社にAssignしたのでした。彼は、
Otis社と組んで、1899年に最初の商業販売したEscalatorを生み出すのです
が、商標には実に無頓着であったようです。Otis社もOtis社で、譲渡を受けて
からも商品名の重要さに対して無頓着だった帰来があります。
Otis社製品が市場に浸透して、「Escalator」という商品名が、どんどんと一般
大衆に浸透し、誰も「Motorstair」とか「Electric Stairway」とか、「Moving
Stairs」とか呼ばなくなったころ、ライバルであったHaughton Elevatorが、
「Escalator」商標の取り消しを求める申し立てをして、その後の長い戦いの末、
特許商標庁の長官裁定に依り、商標 “ESCALATOR” (Reg. No. 34,724, issued
May 29, 1900)は、正式にキャンセルになってしまったのです。
Otis社は、当時の広告で、「Otis elevators Otis escalators」とescalatorに対し
R を挿入するでもなく、escalator
て大文字で始めるでもなく、商標登録を示す○
を極めて説明的に「Otisのescalatorと」一般名称として使っていたことが、決
定の大きな要因になりました。Haughton Elevator Company v. Seeburger, 85
U.S.P.Q. (BNA) 80
R 」をして、自ら、一般名詞の
ここでの重要なレッスンは、正しくMarking「○
ように使わないことを徹底すること、そして、他の人に一般名詞のように使わ
れることにはっきり抗議していくことが必要と言うことです。
これは、「コピー取ってきてくれる!」と頼む代わりに「ゼロックスして、こ
れ!」と頼むことを全世界のXEROX社の皆さんが嫌っていて、「XEROXは、
どこどこXEROXと米XEROXの登録商標です」と広告する度に書いていること
R としなければですね。富士ゼロック
からも分かります。おっと、私もXEROX○
スのAさん、Wさん!
そのほかの例には、クリネックス(Kleenex)のティシューや、Band-Aid(バ
ンドエイド)もかなり一般化の危ないところまで来ていましたが、「○○は私ど
もA社の登録商標です!」という宣伝で、なんとか一般化をまぬがれているよ
うです。
一方、すっかり一般化してしまった物として,バイエルン製薬のアスピリン
(Aspirin)やヘロイン(Heroin:ヘロインを開発したのはバイエルン製薬だっ
たんだ!)、おもちゃのヨーヨー(Yo-yo)などがあります。
誰かに勝手に一般名詞として使われないように!という視点も大切な商標管理
の視点なのです。
商標を放棄する、あるいは
標を放棄する、あるいは放棄
あるいは放棄してしまうこととは?
放棄してしまうこととは?
次に行きましょう。商標を意図的にではないにせよ、「放棄」したものとみな
されてしまう場合があります。ランナム法では、「3年連続使わなければ放棄
したものと看做される」とされています。これは商標権の侵害をめぐる戦いの
中で持ちだされることもあれば、キャンセルを求める手続きで提起されること
もあります。一番多いのは、Intent-To-Use Applicationで登録の許可が出たに
も拘らず、許可が出た日から3年以内に、「使用宣言」を証拠とともに提出で
きない場合に放棄となる例が一番多くなっています。
放棄のベースである、3年間の不使用、あるいは3年間使用を再開する意図が
見れないことは、ケースバイケースで判断されるので、登録商標のオーナーで
ある貴方は、「あー、3年間使っていない!もう駄目だ!」とすぐに思わない
でください。状況に依っては、間に合うケースがありますので、ご相談を頂け
ればと思います。いろんな場合がありますので、ここではこれくらいにしてお
きます。
逆に放棄された商標を自分のものにできるの?
原則的に、ひとたび放棄が確定すれば、その商標は別の方によって使われるこ
とも登録されることも可能です。しかしながら、放棄された商標がとりわけ顕
著で、有名で、一般大衆が、「はい、これ!」とすぐ認識できるような商標だ
った場合、明確に、慎重に、オーナーが変わったことを周知しないといけませ
ん。今後、これまでとは別の会社がこの商品やサービスを提供していきます!
と、明確に周知することが求められるのです。これをしっかりやらないと、取
得した商標の使用を政府や裁判所から止められる可能性があることを考慮して
放棄された商標を取得すべきだと肝に銘じておいてください。
商標のライセンス・譲渡
商標のライセンス・譲渡にはクオリティコント
・譲渡にはクオリティコントロールが欠かせない!
にはクオリティコントロールが欠かせない!
本日の最後の話題です。
私は食べることが大好きで、おかげさまでこんな体型なのですが、えっ、「こ
んなって?どんな?」、まあ、それは、どうでもよいことなので、この際、放
ってきますが、日米をうろうろしていて見つけるとつい食べたくなってしまう
食べ物にFried Chickenがあります。そうです。KFCとか、そういう類です。
(アメリカにはもっとおいしくて、もっと体に悪い奴があります!あっ、また、
脱線した!)
ほとんどのKFCは、フランチャイズであり、どこのKFCに行っても、同じ
クオリティのチキンが食べれるというのがお約束です。その大切な「お約束
(Goodwill)」が込められているのが、商標「KFC」「Kentucky
Fried Chicken」なわけです。すなわち、ライセンス先にしっか
りとしたクオリティコントロールを実施するというのが商標のライセンシング
や譲渡の前提になっているのです。
これをどうでしょう?KFCの商標のオーナー、多分、カーネルサンダースさ
んの息子さんか、お孫さんが、「なんかKFCも飽きたから売っちゃおう!カ
ーネルおじさんのレシピはあげないけどね!」とKFCの看板・商標だけを、
別の不味いチキン屋さんに売りに出すとします。まあ、こんなことはあり得な
いのですけどね。仮にそうするとしてです。そして、KFCの名前と商標だけ
をこの不味いチキン屋さんが受け継ぎ、そうですね、勝手にABChicke
nとでも呼びましょうか。そのABCが受け継いだKFCの看板にABCのレ
ストランがすべて掛け替えて、KFCのカーネルおじさんが作り出したあの味
を受け継ぐことなくABCの不味い味のままチキンを売ったらどうでしょう
か?
このような場合、KFCの商標はある意味で、「放棄」されたと同様になるの
です。それは、KFCと言う看板とGoodwillが切り離されたことで、クオリティ
コントロールを放棄し、失敗し、結果として、商標の価値が無くなってしまっ
たのです。
今回も随分と長くなってしまいました。最後まで読了頂きありがとうございました。
次回から、2回に分けて(多分)、「商標権の侵害」についてお話したいと思って
います。ご意見ご感想がおありでしたら、是非お聞かせ頂きたく存じます。
奥山 英二
Of Counsel
Ladas & Parry LLP
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