うつ病・ううつ状態(既存 治療で十分な 効果が認認めめられない場合に

日本標準商品分類番号
87 1179
市販直後調査
薬価 基 準 収載
平成25年6月∼平成25年12月
対象:うつ病・うつ状態(既存治療で十分な
効果が認められない場合に限る)
適正使用
ガ イド
うつ
う
つ病
病・うつ状態
・う
うつ状態(既存治
(既存治療で十分な
治 療で十分な
効果が
効果
効
果 が認
が認
認め
め ら れない場
れない
ない場
場 合 に限る)
に限
限る)に
限る
、
効果が認められない場合に限る)
に、
エビリファイを
エビリ
エ
ビリ
リファイを
適正に使用して頂くために。
適正に使
適正
適
正に使
正
に 使 用し て頂くた
ため に。
監修
国際医療福祉 大学医療福祉学部 教 授
上島 国利 先 生
うつ病・うつ状態*の患者にエビリファイを投与する際の
注意点のうち特に重要な点について, 以下に記載します。
詳細については本冊子の該当する項を確認してください。
*既存治療で十分な効果が認められない場合に限る。
1 本剤は,
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)又はセロトニン・
ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)等による適切な治療を行っ
ても,十分な効果が認められない患者が投与の対象となります。
( 国内
臨床試験はSSRI又はSNRIを承認された用法・用量で8週間投与して
も十 分な効果が認められないことが前方視的に確認された患者を対
象として実施されました。)▶▶▶p.9
2 本剤は,
SSRI又はSNRI等と併用して投与します。▶▶▶p.19
用法・用量は
3 本剤の有効性は3mg/日で十分に示されていることから,
「3mgを1日1回経口投与する。なお,年齢,症状により適宜増減するが,
増量幅は1日量として3mgとし,1日量は15mgを超えないこと。」と
なっています。▶▶▶p.19
4 本剤は錐体外路症状のリスクを有するため,
アカシジア
(国内第Ⅲ相試験の
3mg/日群で14.2 %,
3∼15mg/日群で36.6 %に認められました)
,
長期
投与時には遅発性ジスキネジアの発現に注意が必要です。▶▶▶p.5
5 本剤は体重増加のリスク(国内長 期投与試 験では40.9%の患者に7
%以上の体重増加が認められています)を有するため,本剤投与中はモ
ニタリングを実施する等注意が必要です。▶▶▶p.7
6 本剤投与時には, 自殺関連事象の発 現に注意が必要です。▶▶▶p.8
INDEX
1
はじめに
p.3
2
エビリファイの
効能・効果と用法・用量
p.4
3
安全性に関する注意事項
p.4
4
エビリファイの投与対象と
なる患者に関して
p.9
5
臨床的位置付け/
国内外第III相試験及び長期投与試験の成績
p.10
6
用法・用量に関する注意事項
p.19
7
本剤の維持投与に関して
p.20
8
薬物相互作用
p.21
9
その他
p.22
1
はじめに
エビリファイの有効成分であるアリピプラゾールは1987年に大塚製薬により,キノリノンを骨格と
する種々の誘導体のひとつとして合成された,新しいタイプの抗精神病薬です。
アリピプラゾールは既存の抗精神病薬とは異なり,ドパミンD 2 受容体部分アゴニスト作用を有する
ことから,ドパミン作動性神経伝達が過剰活動状態の場合には,ドパミンD 2 受容体のアンタゴニス
トとして作用し,ドパミン作動性神経伝達が低下している場合には,ドパミンD 2 受容体のアゴニスト
として作用することが基礎試験で確認されています。
わが国では統合失調症の患者を対象とした臨床試験を1990年11月より開始し有用性が確認され
たことから,
「 統合失調症」の効能・効果で2006年1月に製造販売承認を取得し,2012年1月に「双
極性障害における躁症状の改善」の効能・効果が追加されました。
さらに,抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害剤又はセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み
阻害剤)による適切な治療を行っても反応不十分であった患者を対象としたエビリファイの上乗せ療
法の臨床試験を行い有効性・安全性が確認されたことから,新たに「うつ病・うつ状態(既存治療で十
分な効果が認められない場合に限る)」の効能・効果が追加されました。
しかしながら,本剤は過去の治療において,選択的セロトニン再取り込み阻害剤又はセロトニン・ノル
アドレナリン再取り込み阻害剤等による適切な治療を行っても,十分な効果の認められない患者に
対する使用となること,他の適応症とは用法・用量が異なることなどから,使用に際しては十分な注
意が必要です。
本冊子はうつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)の患者に対して本剤
を投与する際の注意点について解説したものです。本剤をご使用いただく前には,添付文書に加えて
本冊子をご精読の上,安全確保にご留意いただけますようお願いいたします。
3
2
エビリファイの効能・効果と用法・用量
エビリファイの効能・効果及び用法・用量について説明します。効能・効果は「統合失調症」と「双極性障害にお
ける躁症状の改善」,及び「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)」となります。
また,
下表のとおり,
効能・効果によって用法・用量が異なります。
本剤を使用する際は,
医薬品情報(添付文書等)
を必ずご参照ください。
効能・効果
開始用量
推奨用量
最大用量
うつ病・うつ状態(既存治療で十分な
効果が認められない場合に限る)
3mg/日
3mg/日
15mg/日
統合失調症
6∼12mg/日
6∼24mg/日
(維持用量)
30mg/日
双極性障害における躁症状の改善
24mg/日
12∼24mg/日
(通常用量)
30mg/日
3
安全性に関する注意事項
エビリファイは効能・効果によって副作用発現割合等が異なります。
「統合失調症」,
「双極性障害における躁症状の改善」,及び「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認めら
れない場合に限る)」について,国内臨床試験で発現した副作用の発現割合ならびに主な副作用について表1
に掲載します。
表1 適応症毎の副作用発現割合と主な副作用
(うつ病・うつ状態,双極性障害,
統合失調症の順にソートをかけて発現率が5%以上のものを提示)
うつ病・うつ状態
既存治療で十 分な効果が
認められない場合に限る
統合失調症
双極性障害における
躁症状の改善
安全性 解析対 象例数
467 例
743 例
192 例
全 副 作用
68.5%
60.8%
75.0%
アカシジ ア
28.1%
11.7%
30.2%
体重増加
10.1%
3.0%
9.4%
振戦
9.4%
10.5%
16.7%
傾眠
9.0%
3.1%
12.5%
不眠
7.3%
27.1%
9.9%
A LT(GP T )上 昇 *
7.1%
7.0%
3.6%
便秘
5.6%
4.7%
4.2%
*ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ
4
■注意すべき事項
リスク・ベネフィットの観点からうつ病・うつ状態の患者で特に注意すべきと考えられる副作用と臨床試験に
おける発現状況及び試験中に実施された対応について説明します。
以下に,国内で実施された短期投与試験(6週間投与)及び長期投与試験(52週間投与)それぞれでの副作用
発現状況を示します。短期投与試験では,アリピプラゾール3∼15mg/日群での副作用発現割合は68.0%
(194例中132例),アリピプラゾール3mg/日群での副作用発現割合は56.3%(197例中111例)でした。長
期投与試験では,
副作用の発現割合は74.2%(155例中115例)
でした。
国内短期投与試験
プラセボ群
(195例)
3mg/日群
(197例)
3∼15mg/日群
(194例)
国内長期
投与試験
(155例)
35.9%(70例)
56.3%(111例)
68.0%(132例)
74.2%(115例)
1. 錐体外路症状
国内短期投与試験(6週間投与)におけるアリピプラゾール3∼15mg/日群での錐体外路症状の発現割合は
43.3%
(194例中84例)
で,
アカシジア,
振戦,
流涎過多,
ジストニーの順に多くみられました。
国内長期投与試験(52週間投与)
における錐体外路症状の発現割合は38.7%
(155例中60例)
でした。
国内短期投与試験及び国内長期投与試験で発現した錐体外路症状関連副作用の発現割合を表2に示しました。
表2 錐体外路症状関連副作用の発現割合(各群いずれか1%以上のもの)
国内短期投与試験
国内長期投与試験
(155例)
3mg/日群
(197例)
3∼15mg/日群
(194例)
錐体外路症状副作用発現割合
23.4%(46例)
43.3%(84例)
38.7%(60例)
アカシジア
14.2%(28例)
36.6%(71例)
27.1%(42例)
振戦
5.1%(10例)
9.8%(19例)
9.0%(14例)
ジストニー
2.0%(4例)
3.1%(6例)
4.5%(7例)
ジスキネジー
2.5%(5例)
1.0%(2例)
5.2%(8例)
0%
2.1%(4例)
1.9%(3例)
流涎過多
1.0%(2例)
4.1%(8例)
2.6%(4例)
嚥下障害
0%
0.5%(1例)
2.6%(4例)
2.5%(5例)
1.0%(2例)
1.9%(3例)
筋骨格硬直
0%
0%
1.9%(3例)
落ち着きのなさ
0%
0%
1.9%(3例)
パーキンソニズム
筋固縮
*発現した事象のうち,治験責任医師等が
「錐体外路症状」
と判断した事象を「錐体外路症状関連事象」
として集計した
5
① アカシジア
国内短期投与試験(6週間投与)において,アリピプラゾール3∼15mg/日群でのアカシジアの発現割合は
36.6%(194例中71例)でした。アカシジアの処置は投与中止が0.5%(1例),減量が10.8%(21例),抗コ
リン性パーキンソン病治療薬の使用が16.5%(32例)でした。
国内長期投与試験
(52週間投与)
におけるアカシジアの発現割合は27.1%
(155例中42例)
でした。
処置は投与
中止が0.6%
(1例)
,
減量が14.2%
(22例)
,抗コリン性パーキンソン病治療薬の使用が18.1%
(28例)
でした。
発現頻度に関しては,
統合失調症と異なる傾向が見られます。
発現時期に関しては,
投与初期の発症頻度が
高いことから,
投与初期のアカシジアの発現に特にご注意ください。
② 振戦
国内短期投与試験(6週間投与)において,アリピプラゾール3∼15mg/日群での振戦の発現割合は9.8%
(194例中19例)でした。振戦の処置は投与中止が0.5%(1例),減量が0.5%(1例),抗コリン性パーキンソ
ン病治療薬の使用が2.1%(4例)
でした。
国内長期投与試験(52週間投与)における振戦の発現割合は9.0%(155例中14例)でした。処置は投与中
止が0.6%
(1例)
,減量が3.9%
(6例)
,抗コリン性パーキンソン病治療薬の使用が5.2%
(8例)でした。
③ 遅発性ジスキネジア
国内短期投与試験及び国内長期投与試験では遅発性ジスキネジアの発現は認められなかったものの,
遅発性
ジスキネジアは,注意が必要な抗精神病薬の副作用の一つとして知られています。遅発性ジスキネジアの治
療方法は確立していませんが,
患者の状態に応じて減量あるいは投与中止,
他の薬剤への変更等の処置が必
要です。
発症時期は投薬後,数ヵ月から数年とされ,時には抗精神病薬の減量ないし休薬後に出現し,その一部は非
可逆的です。
発症機序としては,ドパミンD2受容体の持続的な遮断が続いた結果,ドパミンD2受容体の感受性の亢進が
起こり発症すると考えられています。ドパミン系を中心とした種々の神経伝達物質が関与しているとも考え
られています。
6
2. 体重増加
国内短期投与試験(6週間投与)におけるアリピプラゾール3∼15mg/日群での副作用としての体重増加の発
現割合は5.7%(194例中11例)であり,投与中止又は減量に至った事象はありませんでした。国内長期投与試
験(52週間投与)における副作用としての体重増加の発現割合は18.7%(155例中29例)であり,投与中止又
は減量に至った事象はありませんでした。
また,国内短期投与試験(6週間投与)及び国内長期投与試験(52週間投与)を併合しアリピプラゾール投与例
での体重の推移について図1に,7%以上の体重増加が認められた被験者の割合の経時的推移を図2に示しま
した。体重の増加は,治験開始1∼2ヵ月後から認められ,投与30週後くらいまで増加傾向にありましたが,そ
の後大きな変化なく推移しました。7%以上体重増加が認められた被験者の割合も同様に,投与30週後くら
いまでは増加傾向にありましたが,その後大きな変化はありませんでした。
図1 大うつ病性障害患者対象国内試験併合での体重変化量の推移
10.0
8.0
変化量
6.0
4.0
(kg)
2.0
0.0
0
10
20
30
40
50
-2.0
アリピプラゾール投与期間(週)
体重の変化量は,
平均値±標準偏差で示した
図2 大うつ病性障害患者対象国内試験併合での7%以上の体重の増加が認められた被験者の割合
60.0
50.0
40.0
(%) 30.0
20.0
10.0
0.0
0
10
20
30
40
50
アリピプラゾール投与期間(週)
本剤投与中は,体重の推移等の経過を慎重に観察するとともに,体重の変動があらわれた場合には,糖尿
病の発症・増悪,悪性腫瘍の発生等の合併症の影響も考えられるため,体重の変動の原因精査などを実施
し,必要に応じて適切な処置を行ってください。
7
3. 自殺
自殺・自殺企図関連副作用の発現割合は,国内短期投与試験(6週間投与)のアリピプラゾール3∼15mg/日
群で0%(194例中0例),アリピプラゾール3mg/日群で0.5%(197例中1例),国内長期投与試験(52週間投
与)
で0%(155例中0例)
でした。
① うつ症状を呈する患者は希死念慮があり,自殺企図のおそれがあるので,このような患者は投与開始早期
並びに投与量を変更する際には患者の状態及び病態の変化を注意深く観察すること。
② 不安,焦燥,興奮,パニック発作,不眠,易刺激性,敵意,攻撃性,衝動性,アカシジア/精神運動不穏等があら
われることが報告されている。また,因果関係は明らかではないが,これらの症状・行動を来した症例にお
いて,基礎疾患の悪化又は自殺念慮,自殺企図,他害行為が報告されている。患者の状態及び病態の変化
を注意深く観察するとともに,これらの症状の増悪が観察された場合には,服薬量を増量せず,徐々に減
量し,
中止するなど適切な処置を行うこと。
③ 自殺目的での過量服用を防ぐため,自殺傾向が認められる患者に処方する場合には,1回分の処方日数を
最小限にとどめること。
④ 家族等に自殺念慮や自殺企図,興奮,攻撃性,易刺激性等の行動の変化及び基礎疾患悪化があらわれるリ
スク等について十分説明を行い,
医師と緊密に連絡を取り合うよう指導すること。
抗うつ剤の投与により,24歳以下の患者で,自殺念慮,自殺企図のリスクが増加するとの報告があるため,
本剤を投与する場合には,
リスクとベネフィットを考慮してください。
4. その他
本 剤を含む 非定 型 抗 精 神 病 薬 で 発 現割 合の高い,もしくは臨 床 上 重 大 な有 害 事 象・副 作用について記
載します。
代謝系への影響
非定型抗精神病薬は,
耐糖能障害や脂質代謝異常のリスクを有している。
一部の薬剤
では糖尿病およびそのリスクのある患者には禁忌となっている。
本剤を含むこれら非
定型抗精神病薬を投与する際は,
血糖値,
血清脂質等のモニタリングを実施する等注
意すること。
プロラクチン値への
影響
一般的に抗精神病薬の副作用として,
血清プロラクチン値の上昇があり,
無月経や乳
汁分泌,
性欲減退等の性機能障害を生じると言われている。
本剤はそのリスクが少な
いため,
他の抗精神病薬を既に投与しているなど血清プロラクチン濃度が高い場合に
本剤を投与すると,
血清プロラクチン濃度が低下し月経が再開することがあるので,
月
経過多,
貧血,
子宮内膜症などの発現に十分注意すること。
悪性症候群
無動緘黙,
強度の筋強剛,
嚥下困難,
頻脈,
血圧の変動,
発汗等が発現し,
それにひきつ
づき発熱がみられる場合は,
投与を中止し,
体冷却,
水分補給等の全身管理とともに適
切な処置を行うこと。
本症発症時には,
白血球の増加や血清CK
(CPK)
の上昇がみら
れることが多く,
また,
ミオグロビン尿を伴う腎機能低下がみられることがある。
なお,
高熱が持続し,
意識障害,
呼吸困難,
循環虚脱,
脱水症状,
急性腎不全へと移行し,
死亡
することがある。
8
4
エビリファイの投与対象となる患者に関して
本剤は選択的セロトニン再取り込み阻害剤(以下SSRI)又はセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤
(以下SNRI)で効果が不十分であった患者を対象として,SSRI又はSNRI併用下での補助療法として有効性
が検証されたことから,
「他の抗うつ薬への変更」及び「リチウムによる抗うつ効果増強療法」と並び,第一選択
薬であるSSRI又はSNRIで効果が不十分であった場合の治療選択肢の一つとして位置づけられています1。
国内で実施した第III相試験では,大うつ病性障害患者を対象に,スクリーニング期には,抗うつ薬による反応不
十分についてレトロスペクティブに確認を行い,SSRI又はSNRIによる反応不十分については,SSRI又は
SNRIを8週間単独投与しプロスペクティブに下記の基準を設け確認を行いました。
① SSRI又はSNRIによる単剤治療で,
治療開始時のHAM-D17項目合計スコアが18点以上で,
治療開始8週
時点が14点以上
② SSRI又はSNRIによる単剤治療開始前から,
治療開始8週時点までのHAM-D17項目合計スコアの減少率
が50%未満
③ SSRI又はSNRIによる単剤治療で,
治療開始8週時点でのCGI-Iのスコアが3
(軽度改善)
∼7
(重度悪化)
本剤の効能・効果は
「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)
」
です。
エビリファイは過去の治療において,SSRI又はSNRI等による治療を行っても,十分な効果の得られない場合
に使用すること,となっています。
本剤を使用する場合には,第一選択薬であるSSRI又はSNRI等を十分量,十分期間投与しても効果が不
十分な場合にご使用ください。
※必要十分量,必要十分期間については,
5) 臨床的位置づけをご覧ください。
9
1 Lam, R.W. et al.: J. Affect. Disord.,117(S26-43), 2009 Copyright © 2009 Elsevier
5-1
臨床的位置づけ
うつ病治療に関するガイドラインから,本剤を含む非定型抗精神病薬の治療の位置づけについて説明します。
1.米国精神医学会
(American Psychiatric Association)ガイドライン20102
本ガイドラインにおいて,本剤を含む非定型抗精神病薬による増強療法は,第一選択薬で効果が不十分で
あった場合の薬物治療選択肢の一つとして位置付けられており,非定型抗精神病薬による増強療法を選択
する場合は,リスク・ベネフィットを考慮した上で選択すること,
とされています。
本ガイドラインでは,軽症から中等症のうつ病急性期の薬物治療の第一選択薬として,SSRI,SNRI,ミル
タザピン,bupropion (本邦未承認)を挙げています。これらの第一選択薬で4∼8週間治療しても反応が不
十分であった場合に,治療方法の変更を考慮すべきとされています。
第一選択薬で効果が不十分であった場合の薬物治療選択肢としては,
「 第一選択薬の最高用量までの増
量」,
「他の抗うつ薬への変更」,
「抗うつ薬の併用療法又は増強療法」の3つが挙げられています。このうち,
第一選択薬で副作用の問題がなく,かつ最高用量まで増量されていなかった場合には「第一選択薬の最高
用量までの増量」が第一選択肢とされており,それでも十分な反応が得られなかった場合,又は,副作用等
の問題で最高用量まで増量できなかった場合に,
「他の抗うつ薬への変更」や「抗うつ薬の併用療法又は増
強療法」を選択することになります。
「抗うつ薬の併用療法又は増強療法」のうち,抗うつ薬の増強療法とし
て,リチウム,非定型抗精神病薬等が挙げられています。非定型抗精神病薬による抗うつ薬の増強療法は,
2種類以上の抗うつ薬でも反応しなかった場合にも寛解率や反応率の改善がみられること,抗うつ効果発
現が早いことなどが挙げられている一方で,体重増加,耐糖能異常,高脂血症,高プロラクチン血症,性機能
障害,遅発性ジスキネジア,悪性症候群,QT延長などの副作用の問題も挙げられています。非定型抗精神病
薬による増強療法を選択する際は,リスク・ベネフィットを考慮すべきとされています。
2 Gelenberg, A.J. et al.: Practice guideline for the treatment of patients with major depressive disorder, Third edition, 2010
Copyright © 2010 American Psychiatric Association
10
2. CANMAT: カナダ気分・不安治療ネットワークガイドライン 1
カナダの 大 学 や ヘ ルスケアの 組 織 が 中 心 となって 設 立 さ れ た 組 織 が 作 成した ガイドライン で す 。
CANMATガイドラインでは,最初の抗うつ薬で反応しない,あるいは十分な反応を示さなかった場合に,第
一選択として優越性のエビデンスがある薬剤への切り替え(エスシタロプラム等のSSRI/SNRI)とともに
他剤の追加として,レベル1としてアリピプラゾール,オランザピン(本邦適応外)の追加が,レベル2としてリ
スペリドン
(本邦適応外)の追加が推奨されています。
レベル1:十分なサンプルサイズがある少なくとも2件のRandomized Controlled Trial
(RCT)
,
望ましくは
プラセボ対照試験が存在する,
および/またはメタアナリシスにより信頼区間が狭いもの。
レベル2:十分なサンプルサイズがある少なくとも1件のRCTが存在する,
および/またはメタアナリシスによ
り信頼区間が広いもの。
CANMAT(2009)のうつ病治療ガイドライン
最初の抗うつ薬で反応なし,
あるいは十分な反応を示さなかった場合
第一選択薬
・優越性を示すエビデンスがある薬剤への切替
(レベル 1: エスシタロプラム, セルトラリン. venlafaxine, レベル2: デュロキセチン, ミルナシプラン, ミルタザピン)
・他剤の追加
(レベル 1: アリピプラゾール, リチウム*,オランザピン*, レベル 2: リスペリドン*)
第二選択薬
・他剤の追加
(レベル 2: bupropion, ミルタザピン/ミアンセリン, クエチアピン*, トリヨードチロニン, レベル 3: 他の抗うつ薬)
・副作用の制限があるが,優越性を示すエビデンスがある薬剤への切替
(レベル 2: アミトリプチリン, クロミプラミン, MAO阻害薬*)
第三選択薬
・他剤の追加
(レベル 2: buspirone,モダフィニル*, 精神刺激薬*,
ziprasidone)
*:本邦適応外
下線:本邦未承認
第三選択薬は推奨度は高くなく,
精神刺激薬は他のガイドラインでは推奨されていない。
日本うつ病学会からも治療ガイドラインが発出されており,
詳細は
「http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/mood_disorder/img/120726.pdf」
を参照してください。
非定型抗精神病薬である本剤の臨床的位置付けとしては,ガイドライン等に記載されているように第一選択
薬で効果が不十分であった場合の薬物治療の選択肢の一つであり,単剤での使用ではなく,第一選択薬に上
乗せして使用するものであるといえます。
このことから,本剤をうつ病・うつ状態に使用する場合は,第一選択薬を可能な限り最高用量まで増量し,十
分な期間治療した場合でも効果不十分であった患者を選択すべきと考えられます。更に,本剤の有害事象発現
に対して十分にモニターできる患者を選択すべきであると考えます。
11
1 Lam, R.W. et al.: J. Affect. Disord.,117(S26-43), 2009 Copyright © 2009 Elsevier
5-2
国内外第III相試験及び長期投与試験の成績
● 国内で実施した臨床試験
国内第III相試験
対
象: SSRI又はSNRIで反応が不十分な大うつ病性障害患者(20歳以上65歳未満)
試験デザイン: 試験は,
「スクリーニング期」
「SSRI/SNRI治療期」
「プラセボ対照二重盲検期」の3つの期
より構成されました
(図3)
。
プラセボ対照二重盲検期は、
「アリピプラゾール3∼15mg/日群」
「アリピプラゾール3mg/日群」
「プラセボ群」
の3群を設定し,
投与期間は6週間でした。
図3 試験デザイン
スクリーニング期
(1∼28日間)
SSRI/SNRI
治療期
(8週間)
プラセボ対照二重盲検期
(6週間)
15mg/日
12mg/日
9mg/日
6mg/日
3mg/日
SSRI又はSNRI
●アリピプラゾール3∼15mg/日群
前治療薬
漸減
プラセボ
3mg/日
SSRI又はSNRI
SSRI又はSNRI
●アリピプラゾール3mg/日群
プラセボ
SSRI又はSNRI
●プラセボ群
0
1∼28日
0
投
与
8
1
2
3
4
5
9
10
11
12
13
6
14 (週)
量 : アリピプラゾール3∼15mg/日群は、開始用量は3mg/日で,症状に応じ1週間ごとに
3mgずつ増量する3∼15mg/日の可変用量*としました。
アリピプラゾール3mg/日群は,
アリピプラゾール3mg/日の固定用量としました。
*:CGI-Iの評価が3∼7で忍容性に問題ないと治験責任・分担医師が判断した場合に、1回につき3mg/日の増量
併用抗うつ薬: SSRI(パロキセチン、フルボキサミン、セルトラリン)又はSNRI(ミルナシプラン、デュロキ
セチン)のうち1剤を併用し,用量は各薬剤の承認用量の範囲内としました。ただし,SSRI
又はSNRIの用法・用量は,SSRI/SNRI治療期で使用したSSRI又はSNRIの最終用法・用
量を固定して継続投与し,
併用中の用法・用量及び薬剤の変更は行わないこととしました。
12
試 験 結 果 : 最終評価時におけるMADRS合計点のベースラインからの変化量を表3に,主な有害事象
を表4に,併用したSSRI又はSNRIの投与状況を表5に示しました。
最終評価時におけるMADRS合計点のベースライン(SSRI/SNRI治療期終了時)からの
変化量は、アリピプラゾール3∼15mg/日群及びアリピプラゾール3mg/日群の両群で,プ
ラセボ群に対し統計学的な有意差が認められました(アリピプラゾール3∼15mg/日群
p = 0.006,アリピプラゾール3mg/日群 p < 0.001,ベースライン値で調整した共分散
分析
(3∼15mg/日群,3mg/日群の順による閉検定手順))
。
表3
最終評価時におけるMADRS合計点のベースライン
(SSRI/SNRI治療期終了時)
からの変化量
(FAS,
LOCF)
MADRS合計点
投与群
例数
ベースライン
最終評価時
プラセボ群との対比較 a)
群間差
ベースライン
p値
からの変化量 [95%信頼区間]
プラセボ群
195
25.5 ± 7.4
18.1 ± 9.8
−7.4 ± 8.1
アリピプラゾール
3∼15mg/日群
194
25.3 ± 7.3
15.8 ± 9.4
−9.6 ± 7.5
−2.2
[−3.7,
−0.6] 0.006
アリピプラゾール
3mg/日群
197
25.2 ± 7.2
14.8 ± 9.3
−10.4 ± 8.3
−3.1
[−4.6,
−1.5] < 0.001
(平均値 ± 標準偏差,a) ベースライン値で調整した共分散分析
(3∼15 mg/日群、3 mg/日群の順による閉検定手順))
表4 主な有害事象
(アリピプラゾールが投与されたいずれかの群で発現割合5%以上,
かつプラセボ群の2倍以上の発現)
プラセボ群 アリピプラゾール アリピプラゾール
(n = 195) 3∼15mg/日群
3mg/日群
(n = 197)
(n = 194)
例数(%)
例数(%)
例数(%)
117
(60.0)
151
(77.8)
141
(71.6)
アカシジア
8
(4.1)
71
(36.6)
28
(14.2)
振戦
5(2.6)
20(10.3)
14
(7.1)
便秘
4
(2.1)
15
(7.7)
7
(3.6)
口渇
3(1.5)
13
(6.7)
10(5.1)
アラニン・アミノトランスフェラーゼ増加
3(1.5)
13
(6.7)
14
(7.1)
体重増加
1
(0.5)
12
(6.2)
8
(4.1)
不眠症
3(1.5)
10(5.2)
8
(4.1)
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加
1
(0.5)
8(4.1)
10(5.1)
0
6
(3.1)
10(5.1)
有害事象
血中クレアチンホスホキナーゼ増加
13
表5 併用抗うつ薬の投与状況
アリピプラゾール
投与群
プラセボ
3∼15mg
3mg
例数
(%)
1日平均投与量
(mg)
例数
(%)
1日平均投与量
(mg)
例数
(%)
1日平均投与量
(mg)
パロキセチン
41(21.0)
36.39
25
(12.9)
38.12
47
(23.9)
36.39
フルボキサミン
46(23.6)
134.49
36
(18.6)
131.44
35(17.8)
138.28
セルトラリン
69(35.4)
95.68
88
(45.4)
92.69
68(34.5)
93.36
ミルナシプラン
24
(12.3)
102.11
27
(13.9)
95.71
24
(12.2)
97.52
デュロキセチン
15
(7.7)
55.71
18
(9.3)
55.18
23
(11.7)
55.40
併用した
SSRI/SNRI
国内長期投与試験
象: 国内第III相試験からの移行例(20歳以上65歳未満),及びSSRI又はSNRIで反応が不十
対
分な65歳以上の大うつ病性障害患者(新規例)
試験デザイン: 非盲検非対照試験
投
与
量 : 開始用量は3mg/日で,症状に応じ1週間ごとに3mgずつ増量する3∼15mg/日の可変
用量*としました。
*:CGI-Iの評価が3∼7で忍容性に問題ないと治験責任・分担医師が判断した場合に,
1回につき3mg/日の増量
併用抗うつ薬: SSRI(パロキセチン,フルボキサミン,セルトラリン)又はSNRI(ミルナシプラン,デュロ
キセチン)のうち1剤を併用し,用量は各薬剤の承認用量の範囲内としました。なお,移行
例は,国内第III相試験で使用していた薬剤の最終の用法・用量を固定の上継続投与し,新
規例は,治験開始前から使用していた薬剤の最終の用法・用量を固定の上継続投与しまし
た。また,治験責任医師等の判断により,承認用量の範囲内で用量の増減は可能とするが,
治験薬と同じ週の用量変更は行わないこととしました。
投 与 期 間 : 52週間
試 験 結 果 : MADRS合計点の推移を表6に,主な有害事象を表7に,併用したSSRI又はSNRIの投与
状況を表8に示しました。
表6 MADRS合計点の推移(OC)
アリピプラゾール
ベースライン
6週
12週
24週
52週
投与例
全体
(移行例と新規例) 18.2 ± 9.6(155) 12.6 ± 8.7(144) 12.3 ± 9.7(136) 11.6 ± 9.3(108) 8.8 ± 8.3(84)
移行例(20歳以上65歳未満) 16.4 ± 8.9(122) 13.0 ± 8.8(118) 12.6 ± 9.9(113) 11.6 ± 9.4(95)
9.1 ± 8.6(74)
新規例(65歳以上)
7.3 ± 6.2(10)
24.8 ± 9.3(33)
10.9 ± 7.9(26)
10.7 ± 8.5(23)
11.3 ± 9.4(13)
(平均値 ± 標準偏差)
14
表7 主な有害事象
(全体で発現割合5%以上のもの)
全体(移 行 例と新規例)
(n=155)
移行例
(n=122)
新規例
(n=33)
例数(%)
例数(%)
例数(%)
有害事象
140(90.3)
111(91.0)
29(87.9)
鼻咽頭 炎
47(30.3)
42(34.4)
5(15.2)
アカシジア
42(27.1)
34(27.9)
8(24.2)
体重増加
41(26.5)
39(32.0)
2(6.1)
傾眠
19(12.3)
14(11.5)
5(15.2)
振戦
14(9.0)
12(9.8)
2(6.1)
便秘
13(8.4)
7(5.7)
6(18.2)
血中トリグリセリド増加
12(7.7)
11(9.0)
1(3.0)
下痢
11(7.1)
9(7.4)
2(6.1)
不眠症
10(6.5)
6(4.9)
4(12.1)
大うつ病
10(6.5)
9(7.4)
1(3.0)
ジスキネジー
9(5.8)
7(5.7)
2(6.1)
アラニン・アミノトランスフェラーゼ増加
9(5.8)
9(7.4)
0(0.0)
頭痛
8(5.2)
6(4.9)
2(6.1)
悪心
8(5.2)
7(5.7)
1(3.0)
倦怠 感
8(5.2)
6(4.9)
2(6.1)
移行例:20歳以上65歳未満 新規例:65歳以上
表8 併用抗うつ薬の投与状況
全体(移 行 例と新規例)
併用した
SSRI/SNRI
移行例
新規例
例数
(%)
1日平均投与量
(mg)
例数
(%)
1日平均投与量
(mg)
例数
(%)
1日平均投与量
(mg)
パロキセチン
43(27.7)
32.00
29
(23.8)
34.37
14
(42.4)
27.11
フルボキサミン
33
(21.3)
119.82
28(23.0)
127.15
5
(15.2)
78.77
セルトラリン
59
(38.1)
89.28
54(44.3)
91.76
5
(15.2)
62.50
ミルナシプラン
18(11.6)
92.79
11
(9.0)
100.16
7
(21.2)
81.22
デュロキセチン
2
(1.3)
48.88
0
2
(6.1)
48.88
●海外で実施した臨床試験
海外第III相試験
対
象: SSRI又はSNRIで反応が不十分な大うつ病性障害患者(18∼65歳)
試験デザイン: 試験は,
「スクリーニング期」
「SSRI/SNRI治療期」
「プラセボ対照二重盲検期」の3つの期
より構成されました
(図4)
。
プラセボ対照二重盲検期は,
「アリピプラゾール群」
「プラセボ群」の2群を設定し,投与期
間は6週間でした。
15
図4 試験デザイン
スクリーニング期
SSRI/SNRI治療期
プラセボ対照二重盲検期
アリピプラゾール+
SSRI/SNRI(6週間)
反応不十分
プラセボ+
SSRI/SNRI(6週間)
スクリーニング
(7∼28日間)
SSRI/SNRI+
単盲検プラセボ(8週間)
SSRI/SNRI継続治療期
単盲検プラセボ+
SSRI/SNRI(6週間)
反応
週
0
8
14
0
投
与
6週
量 : 開始用量は5mg/日で、2∼15mg/日の可変用量(治験責任医師等が必要と判断した場合
に1週間ごとに5mg/日ずつ増量)としました。ただし、エスシタロプラム,セルトラリン,ベ
ンラファキシン徐放性製剤を併用した場合の最高用量は20mg/日としました。
併用抗うつ薬: 以下のSSRI又はSNRIのうち1剤を併用しました。
エスシタロプラム(10∼20mg/日),フルオキセチン(20∼40mg/日),パロキセチン
(20∼40mg/日)又はパロキセチン徐放性製剤(25∼50mg/日),セルトラリン(50∼
150mg/日),ベンラファキシン徐放性製剤
(37.5∼225mg/日)
SSRI/SNRI治療期で使用したSSRI又はSNRIの最終用法及び用量を固定して継続投与
試 験 結 果 : 最終評価時におけるMADRS合計点のベースライン
(SSRI/SNRI治療期終了時)
からの変化量
を表9に,
主な有害事象を表10に,
併用したSSRI又はSNRIの投与状況を表11に示しました。
表9 最終評価時におけるMADRS合計点のベースライン
(SSRI/SNRI治療期終了時)
からの変化量
(FAS,LOCF)
MADRS合計点
試 験 番号
CN138-139
CN138-163
CN138-165
投与群
例数
ベースライン
ベースライン
からの変化量
プラセボ群
172
25.65
−5.77
アリピプラゾール群
181
25.88
−8.78
プラセボ群
184
26.55
−5.65
アリピプラゾール群
185
24.59
−8.49
プラセボ群
169
26.72
−6.39
アリピプラゾール群
174
26.22
−10.12
プラセボ群との対比較 a)
群間差
[95%信頼区間]
p値
−3.01
< 0.001
[−4.66,
−1.37]
−2.84
[−4.53,
−1.15]
0.001
−3.73
< 0.001
[−5.44,
−2.02]
(平均値,a) ベースライン値で調整した共分散分析)
注意: エビリファイの承認されているうつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)の用法・用量は「通常,成人にはアリピプラゾールとして3mg を
1 日1 回経口投与する。なお,年齢,症状により適宜増減するが,増量幅は1 日量として3mg とし,1日量は15mg を超えないこと。
」
です。
16
表10 主な有害事象
(アリピプラゾール群で発現率5%以上,
かつプラセボ群の2倍以上の発現)
プラセボ群
アリピプラゾール群
(n = 538)
(n = 547)
例数(%)
例数(%)
352(65.4)
450(82.3)
アカシジア
22
(4.1)
124
(22.7)
落ち着きのなさ
12
(2.2)
68(12.4)
疲労
23
(4.3)
47
(8.6)
不眠症
17(3.2)
45(8.2)
霧視
8
(1.5)
34
(6.2)
傾眠
14
(2.6)
32(5.9)
有害事象
安全性の集計は海外短期試験の統合データで実施
表11 併用抗うつ薬の投与状況
プラセボ
投与群
併用したSSRI/SNRI
エスシタロプラム
アリピプラゾール
例数
(%)
1日平均投与量
(mg)
例数
(%)
1日平均投与量
(mg)
151
(28.7)
19.6
175
(32.3)
19.8
76(14.4)
39.2
84(15.5)
38.6
パロキセチン
47
(8.9)
46.0
44
(8.1)
48.3
セルトラリン
104(19.8)
146.6
90(16.6)
143.3
ベンラファキシン
148(28.1)
212.8
149
(27.5)
216.4
フルオキセチン
海外長期投与試験
象: 海外第III相試験からの移行例,及びSSRI又はSNRIで反応が不十分な大うつ病性障害患
対
者(新規例)
(18歳以上)
試験デザイン: 非盲検非対照試験
投
与
量 : 開始用量は5mg/日で,2∼15mg/日の可変用量(治験責任医師等が必要と判断した場
合に1週間ごとに5mg/日ずつ増量)としました。ただし,エスシタロプラム,セルトラリン,
ベンラファキシン徐放性製剤、ミルタザピン,デュロキセチンを併用した場合の最高用量
は30mg/日としました。
併用抗うつ薬: 以下のSSRI又はSNRI又は他の抗うつ薬のうち1剤を併用しました。
ベンラファキシン徐放性製剤,エスシタロプラム,パロキセチン,パロキセチン徐放性製剤
(CR),フルオキセチン,セルトラリン,ミルタザピン,ブプロピオン1日2回徐放性製剤
(SR),ブプロピオン1日1回徐放性製剤(XL),ブプロピオン,デュロキセチン(用量は,
Physician’
s Desk Referenceの大うつ病性障害に対する推奨用量の範囲内)
移行例は,先行試験で使用したSSRI又はSNRIの最終用法及び用量を固定して継続投
与。新規例は,治験開始前に使用していたSSRI、SNRI又はその他の抗うつ薬を継続投与。
新規例,
移行例ともに用量調節は可能としたが,
薬剤変更は不可としました。
17
注意: エビリファイの承認されているうつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)の用法・用量は「通常,成人にはアリピプラゾールとして3mg を
1 日1 回経口投与する。なお,年齢,症状により適宜増減するが,増量幅は1 日量として3mg とし,1日量は15mg を超えないこと。」
です。
投 与 期 間 : 52週間
試 験 結 果 : 主な有害事象を表12に,併用したSSRI又はSNRIの投与状況を表13に示しました。な
お,本試験は長期の安全性を評価することが主な目的であったため,MADRSによる評価
は行っていません。
ベンラファキシン徐放性製剤,フルオキセチン,ブプロピオン1日2回徐放性製剤,ブプロピオン1日1回徐放性
製剤,ブプロピオンは本邦未承認。
表12 主な有害事象
(全体での発現割合が10%以上の事象)
移行例
全体(移 行 例と新規例)
(n=994)
例数(%)
アリピプラゾール
(n=274)
例数(%)
プラセボ
(n=429)
例数(%)
新規例
(n=291)
例数(%)
有害事象
889
(89.4)
219
(79.9)
395
(92.1)
275
(94.5)
アカシジア
207
(20.8)
34
(12.4)
108
(25.2)
65
(22.3)
体重増加
161
(16.2)
30
(10.9)
80
(18.6)
51
(17.5)
疲労
157
(15.8)
22
(8.0)
66
(15.4)
69
(23.7)
傾眠
123
(12.4)
20
(7.3)
49
(11.4)
54
(18.6)
落ち着きのなさ
117
(11.8)
19
(6.9)
62
(14.5)
36
(12.4)
不眠症
104
(10.5)
11
(4.0)
47
(11.0)
46
(15.8)
頭痛
100
(10.1)
7
(2.6)
48
(11.2)
45
(15.5)
表13 併用抗うつ薬の投与状況
移行例
新規例
全体
併用した
S S R I /S N R I
プラセボ
アリピプラゾール
例数
(%)
1日平均
投与量
(mg)
パロキセチンCR
61(6.3)
41.45
パロキセチン
29
(3.0)
33.56
1日平均
投与量
(mg)
例数
(%)
1日平均
投与量
(mg)
例数
(%)
1日平均
投与量
(mg)
20
(7.5)
43.94
31(7.3)
43.81
10
(3.5)
29.14
2
(0.7)
41.66
0
27
(9.5)
32.96
例数
(%)
76
(18.0)
148.68
39(13.7)
117.60
19.00
125
(29.6)
18.87
64
(22.5)
16.03
37(13.9)
40.21
65(15.4)
36.03
41
(14.4)
39.25
72
(27.0)
211.55
48
(16.8)
163.16
セルトラリン
168
(17.2) 140.47
53
(19.9) 145.53
エスシタロプラム
272
(27.9) 18.24
83
(31.1)
フルオキセチン
143
(14.7) 38.02
ベンラファキシン
246
(25.2) 199.02
126
(29.8) 205.52
35
(12.3) 334.85
ブプロピオンXL
35(3.6)
334.85
ブプロピオンSR
11(1.1)
325.80
11
(3.9)
325.80
デュロキセチン
7(0.7)
59.56
7(2.5)
59.56
ミルタザピン
3(0.3)
33.68
3
(1.1)
33.68
18
6
用法・用量に関する注意事項
本剤の用法・用量は,
「通常,
成人にはアリピプラゾールとして3mgを1日1回経口投与する。
なお,
年齢,
症状によ
り適宜増減するが,
増量幅は1日量として3mg とし,
1日量は15mgを超えないこと。
」
です。
用法・用量に関連する使用上の注意として「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限
る)の場合,本剤はSSRI又はSNRI等と併用すること」
を設定しています。
以下の点をご注意ください。
① 国内外における本剤の臨床試験ではSSRI又はSNRI1剤と本剤の併用による有効性及び安全性が確認
されています。よって,
うつ病・うつ状態に対して本剤単独投与での有効性は確認されていません。
② さらには,SSRI又はSNRI2剤以上と本剤を併用したとき(SSRI又はSNRI1剤と本剤を併用中にSSRI又
はSNRIを上乗せする場合も含む)
の有効性及び安全性は確認されていません。
③ 三環系及び四環系抗うつ薬については,国内外臨床試験において本剤と併用した経験はなく,NaSSA
(ミルタザピン)については,国内臨床試験開始時に本邦未承認であり,国内臨床試験において併用した
経験はありません
(海外臨床試験においてもミルタザピンについては3例の投与経験のみでした)。
※国内第Ⅲ相臨床試験で本剤と併用されたSSRIはパロキセチン,フルボキサミン,セルトラリン,SNRIはミ
ルナシプラン,デュロキセチンでした。
19
7
本剤の維持投与に関して
本剤を抗うつ薬の併用療法として投与し,症状改善後の維持投与についてのエビデンス,注意すべき点につい
て以下に示します。
① 本 剤 の 維 持 投 与 の 有 効 性を 積 極 的に 支 持 するデータは 現 時点 で 国 内 外 の いずれにお いても 得ら
れていません 。
② 大うつ 病 性 障 害 患 者に 対 する 非 定 型 抗 精 神 病 薬 の 維 持 療 法に 対して 実 施 され た 試 験 成 績 は 限ら
れており,海外診療ガイドライン2 では「第二世代抗 精神病薬による増強療 法で効果があった場合に,
増 強 療 法をいつまで継 続すべきかについては明 確にはなっていない。」と記 載されています。
③ 本剤の長期投与時には,体重増加,遅発性ジスキネジア等のリスクが想定されます。
①∼③を踏まえ,治療 継続の必要性を判断するため,患者を定期的に再評価する必要があります。
2 Gelenberg, A.J. et al.: Practice guideline for the treatment of patients with major depressive disorder, Third edition, 2010
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薬物相互作用
薬物相互作用に関する注意喚起の一環として,
代謝酵素の分子種等相互作用に関連する事項を記載しています。
本剤の代謝に関与する肝薬物代謝酵素の分子種は主としてCYP3A4及びCYP2D6であると考えられています。
国内の健康成人を対象とした試験において,
CYP2D6の阻害作用を有するパロキセチン20mg/日とアリピプ
ラゾール3mg/日の併用により,アリピプラゾールのC m a x 及びAUCはそれぞれ39%及び140%増加し,
CYP2D6及びCYP3A4の阻害作用を有するフルボキサミンマレイン酸塩100mgとアリピプラゾール3mg
(表14)
。
の併用により,
アリピプラゾールのCmax及びAUCはそれぞれ39%及び63%増加しました
表14 アリピプラゾール単独投与時に対するSSRI併用投与時におけるアリピプラゾール薬物動態パラメータの幾何平均値の比及びその
90%信頼区間
(国内相互作用試験)
幾何平均値の比
アリピプラゾール
薬物動態パラメータ
a
点推定値
90%信頼区間
Cmax
(ng/mL)
1.39
(1.13,1.73)
AUC ∞
(ng·h/mL)
2.4
(1.98,2,90)
Cmax
(ng/mL)
1.39
(1.14,1.69)
AUC ∞
(ng·h/mL)
1.63
(1.33,2,00)
パロキセチン併用群
フルボキサミン併用群
a
:SSRI(パロキセチン又はフルボキサミン)併用投与/アリピプラゾール単独投与
また,海外の健康成人を対象とした試験において,CYP2C19及びCYP3A4の基質であるエスシタロプラム
(10mg/日)
とアリピプラゾール
(10mg/日)
の併用によるエスシタロプラムのCmax及びAUCの変化は8%以下で
した
(表15)
。
表15 エスシタロプラム単独投与時に対するアリピプラゾール併用投与時におけるエスシタロプラム薬物動態パラメータの幾何平均値の
比及びその 90%信頼区間
(海外相互作用試験)
エスシタロプラム
薬物動態パラメータ
Cmax
(ng/mL)
AUCτ
(ng·h/mL)
幾何平均値の比
a
点推定値
90%信頼区間
1.04
(0.99,1.09)
1.07
(1.04,1.11)
a
:アリピプラゾール併用投与/エスシタロプラム単独投与
さらに,国内の大うつ病性障害患者を対象とした短期投与試験及び長期投与試験の2試験において,SSRI又
はSNRI(パロキセチン,フルボキサミン,セルトラリン,ミルナシプラン,デュロキセチン)を併用した際のアリ
ピプラゾールの血漿中濃度は表16及び表17のとおりでした。
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表16 アリピプラゾールとSSRI又はSNRI併用時の用量補正血漿中アリピプラゾール濃度
(国内短期投与試験)
投与後時間
時期
血漿中薬物濃度 /用量(ng/mL/mg)
SSRI/SNRI
例数
6時間以上
6時間未満
6週後
6週後
a
算術平均値
標準偏差
21.38
9.971
39 (2)
17.99
10.66
98 (6)
12.02
7.153
パロキセチン
47 (2)
フルボキサミン
セルトラリン
ミルナシプラン
27 (0)
12.10
7.155
デュロキセチン
23 (0)
18.06
8.455
パロキセチン
14 (1)
24.32
13.89
フルボキサミン
19 (1)
24.32
13.17
セルトラリン
28 (0)
16.91
6.760
ミルナシプラン
5 (0)
20.82
5.026
デュロキセチン
10 (0)
15.60
7.135
a
:( )内は値が定量下限(0.100 ng/mL)未満の例数
表17 アリピプラゾールとSSRI又はSNRI併用時の用量補正血漿中アリピプラゾール濃度
(国内長期投与試験)
投与後時間
時期
血漿中薬物濃度 /用量(ng/mL/mg)
SSRI/SNRI
例数
6時間以上
52週後
52週後
算術平均値
標準偏差
パロキセチン
14 (1)
25.45
18.19
フルボキサミン
7 (2)
11.94
10.83
16 (2)
10.31
6.718
ミルナシプラン
6 (1)
15.25
13.55
デュロキセチン
1 (0)
23.20
NC
パロキセチン
3 (0)
24.10
16.61
フルボキサミン
8 (0)
22.77
7.848
セルトラリン
8 (0)
17.63
7.459
ミルナシプラン
2 (1)
0.1015
NC
デュロキセチン
0 (0)
NC
NC
セルトラリン
6時間未満
a
a
:( )内は値が定量下限(0.100ng/mL)未満の例数
NC:算出不可
本剤の用法・用量は,併用するSSRI又はSNRI間で変わりませんが,パロキセチン等のCYP2D6 及び/又は
CYP3A4阻害作用を有する抗うつ薬では本剤の作用が増強するおそれがあるので,併用時には注意してくだ
さい(本剤を減量するなど考慮してください)
。
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その他
本冊子に記載されている内容以外にも,本剤を使用する際の注意事項がございます。医薬品情報(添付文書
等),
「使用上の注意解説書」もあわせてご精読いただきますようお願いいたします。
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2013年6月作成
AB1306101
(8733)DP