1 2001 年 3 月 31 日作成,6 月 14 日改訂 コア生理学 1 章 正解と解説 正解と解説 1 .答 A [ Ⅱ A 1, C ] 両方とも輸送は電気化学的勾配に従って("下向き輸送")行われ, 代謝エネルギーを必要としない.他の糖による抑制や飽和は担体依存性の輸送に特徴的で ある;すなわち促通拡散では飽和は起こりガラクトースによって抑制されるが,単純拡散 では起こらない. 2 .答 D [ Ⅳ D 1 a, b, 2b ] 活動電位の立ち上がり相では細胞は脱分極する;すなわち マイナスが小さくなる.脱分極は内向電流(これはプラスの電荷の細胞内への移動と定義 される)によって起こる.神経や多くの筋細胞では,この内向電流は Na+ によって運ばれる. 3 .答 D [ Ⅳ B ] 膜は K+ に対してのみ透過性があるので,K+ はその濃度勾配に従って溶 液 A から溶液 B へ移動し,Cl- は溶液 A にとどまる.拡散電位が発生し,溶液 A は溶液 B に 対してマイナスとなる.拡散電位の発生には,ごくわずかのイオンの移動しか関与しない ので溶液全体で濃度の変化は生じない. 4 .答 B [ Ⅴ B 1-6 ] アセチルコリン(ACh)は,小胞内に貯蔵され,運動神経の活動電 位がシナプス前終末の Ca2+チャネルを開くと放出される.ACh はシナプス間隙を拡散し筋 終板の Na+ と K+ を通すチャネルを開き,筋終板を脱分極させる( このチャネルの開閉により 活動電位が発生する事はない).筋終板の脱分極は近接する筋細胞に局所電流を発生し,筋 細胞を閾値まで脱分極して活動電位を発生する. 5 .答 C [ Ⅵ A, B 1-4 ; Ⅶ B 1-4 ] 細胞内 Ca2+濃度の上昇は,骨格筋,平滑筋の興奮 収縮連関に共通してみられる現象である.骨格筋では,Ca2+はトロポニン C に結合し,連 結橋サイクルを開始させる.平滑筋では Ca2+はカルモジュリンと結合する.カルシウムカルモジュリン複合体はミオシン軽鎖キナーゼを活性化し,それによりミオシンがリン酸 化されて筋収縮が起こる.筋節の横紋構造,トロポニンの存在は骨格筋に特徴的であり, 平滑筋にはみられない.自発的に起こる脱分極やギャップジャンクションは単元平滑筋に 特徴的であり骨格筋にはみられない. 6. 答 E [ Ⅵ B 6 ] 筋線維の頻回刺激により,Ca2+は筋小胞体( SR )へ再取り込みされ るより速く筋小胞体( SR )から放出される.従って,単収縮後とは異なり細胞内 Ca2+濃 度は静止状態に戻らない.細胞内 Ca2+濃度が上昇すると,より多くの連結橋が形成され, その結果張力が増強する(強縮).活動電位が発生している間,細胞内 Na+ 濃度,K+ 濃度は 2 変わらない.わずかの Na+ ,K+ の細胞内流入や細胞外流出はおこるが,全体としての濃度は 変化しない.アデノシン3リン酸( ATP)レベルに変化があるとすれば,強縮の間低下する. 7 .答 D [ Ⅳ B ] 膜には Ca2+に対する透過性があり,Cl- に対する透過性はない.膜を介 して,これら2つのイオンに対する濃度勾配は存在するが,Ca2+のみが濃度勾配に従って 移動する.Ca2+は溶液 A から溶液 B へ移動し,溶液 A にマイナスの電荷が残る.この電位 の大きさは ECa2+ = 2.3 RT/zF logCA /CB = 60mV/ 2log10mM/1mM = 30mV log10= 30mV.と, ネルンストの式の電気化学的平衡により計算される.電位の符号は,直観的方法により決 められる.すなわち Ca2+は溶液 A から溶液 B へ移動するので,溶液 A にはマイナスの電位 が発生する( 30mV).この電位が発生すると正味の Ca2+の移動は止まる.すなわち,化学 的な駆動力は電気的な駆動力と確実にバランスがとれることになる. (Ca2+濃度が両方の溶 液で等しくならないことに注意しなさい.) 8 .答 B [ Ⅴ B 8 ] 重症筋無力症は筋終板のアセチルコリン( ACh )受容体の減少を特 徴とする.アセチルコリンエステラーゼ( AchE )阻害剤は神経筋接合部での ACh の分解 を阻止する.従って,筋終板でのアセチルコリンレベルは高くなり,受容体の欠損を部分 的に補うことになる. 9 .答 D [ Ⅲ B 2 d ] 患者の赤血球( RBCs )の溶血は水が RBCs に流入し RBCs が膨張し て破裂することによる.細胞外液が低張尿素溶液によって細胞内液に対して低張(浸透圧 が低い)になると,水は RBCs 内へ流入する.定義から,等張液では細胞膜を介して両側で 浸透圧が等しいため,水は細胞内へ流入したり,細胞外へ流出したりしない.高張のマニ トール液は RBCs を縮小させる. 10 .答 E [ Ⅳ D 3 a ] 絶対不応期に刺激が与えられているので活動電位は発生しない. Na+チャネルの不活化ゲートは脱分極により閉鎖され,この状態は膜が再分極するまで続く. 不活化ゲートが閉鎖している限り Na+チャネルは開くことができず,さらに活動電位を発生 することはできない. 11 .答 B [Ⅱ A ] 流束は膜を介する濃度差に比例する.すなわち,J = -PA(CA -CB ).最初 の状態では,CA - CB = 10mM - 5mM = 5mM である.尿素濃度が,溶液 A で2倍になると,濃 度差は,20mM - 5mM = 15mM,すなわち,最初の濃度差の3倍になる.従って流束も 3 倍に なる.式の前につけたマイナスの符号は,高濃度から低濃度を引き算するときは,つけな くてよい. 12 .答 D [Ⅳ B 3 a,b ] ネルンストの式は,単一イオンの平衡電位を計算するときに用い 3 られる.ネルンストの式を適用するに当たり,膜は今問題とするイオンに対してのみ透過 性があると仮定する.ENa +=2.3RT/zFlogCe/Ci=60mVlog140/14=60mVlog10=60mV.符号は無視 されていること,対数計算を簡便化するため高い方の濃度を分子に入れていることに注意 60mVであるかは直観的方法を使って決めなさい.すなわち Na+ は しなさい.ENa +が 60mV か その濃度勾配に従って細胞外から細胞内液へ移動し,その結果細胞内がプラスになる. 13. 答 E [Ⅳ D 2 d ] 過分極後電位は K+ 透過性が最大になる時に対応し,膜電位は,K+ 平 衡電位に最も近い値をとる.この電位では K+ 濃度は電気化学的平衡状態に最も近い値をと る.濃度勾配に従って K+ を細胞外へ移動させる力は,電位勾配に従って細胞内へ移動させ る力と拮抗する. 14 .答 A [Ⅳ D 2 b(1)-(3)] (膜が脱分極し閾値に達すると)神経の活動電位の立 + ち上がり相は,Na チャネルの開放に依って生じる.Na+ チャネルが開くと,Na+ はその濃度 勾配に従って細胞内へ流入し,膜電位は,Na+ の平衡電位に近くなる. 15 .答 D [Ⅳ D 2 c ] 再分極に関与する過程は K+チャネルの開放である.K+ に対する透過 性は高くなり膜電位は K+ の細胞外への流出により K+平衡電位に近くなる. 16 .答 D [ Ⅳ D 4 b ] ミエリンは神経線維を絶縁し,伝導速度を速くする.活動電位は 絶縁が途切れているランヴィエ絞輪でのみ発生する.Na+ -K+ ポンプは,直接には活動電位の 形成・伝導には影響しない.神経線維直径が短くなると神経線維の内部抵抗が上昇し,伝導 速度は低下する. 17 .答 D [ Ⅲ A, B 4 ] 溶液 A は濃度 1mM のスクロース,尿素の両方を含むのに対して, 溶液 B は 1mM のスクロースのみを含む.溶液 A の容量オスモル濃度は2mOsm/L であり,溶 液 B では,1mOsm/L である.従って溶液 A は浸透圧が高く,溶液 B に対して高浸透圧となる. 実際には溶液 A,溶液 B では,実効的浸透圧は等しい(2 つの溶液は等張である).という のは,ここで,実効的な溶質分子はスクロースだけであり,その濃度は両液で等しいから である.尿素は反発係数が0であるので,実効的な溶質分子ではない. 18 .答 B [Ⅴ C 4 b(3)] ドーパミン作動性ニューロンはパーキンソン病患者で障害され ている(原文では D2 受容体がパーキンソン病で欠乏しているとあるが,このような選択性 はない).精神分裂病は D2 受容体レベルの増加が関与する.重症筋無力症およびクラーレ中 毒には神経伝達物質がアセチルコリン(ACh)である神経筋接合部が関与する. 19 .答 B [ Ⅱ A 4 a-c ] 油・水分配係数が上昇すると,脂質二重層への溶解性が上昇し 4 透過性が上がる.分子半径が長くなったり,膜が厚くなると透過性が低下する.溶質分子 の濃度差は透過性には影響を与えない. 20 .答 A [ Ⅳ D 2 b(2),(3), d, 3a] Na+ チャネルの完全な阻害は活動電位の発生を 阻害する.活動電位の立ち上がり相は Na+ が Na+ チャネルを通って細胞内へ流入することに よって起こるため,Na+ チャネルが阻害されると消失する.絶対不応期は Na+ チャネルがどれ だけ利用できるかに依存するため Na+ チャネルが阻害されると長くなる.過分極性の後電位 は K+ に対する透過性の上昇によって起こる.Na+ 平衡電位はネルンストの式から計算でき, 理論的に計算された Na+ の電気化学的平衡状態における電位である( Na+ チャネルが開い ているか,閉じているかには依存しない). 21 .答 D [ Ⅴ B 5 ] アセチルコリン( ACh )の筋終板の受容体への結合によりチャネル が開いて膜を介して,Na+ および K+ が通過する.イオンの電気化学的勾配に従って,Na+ は 細胞内へ流入し,K+ は細胞内から流出する.静止膜電位は両イオンでの平衡電位の中間値 の電位レベルへ脱分極する. 22 .答 D [ V C 2b ] 抑制性後シナプス電位はシナプス後膜を過分極し,シナプス後膜を 閾値から遠ざける.Cl- チャネルが開くと,膜電位は Cl- 平衡電位( −90mV )に近づき過分 極する.Ca2+チャネルが開くと膜電位は Ca2+の平衡電位に近づき脱分極する. Na+ - K+アデノシン 3 リン酸分解酵素(ATPase)は細胞内 Na+ 濃 23 .答 C [ Ⅱ D 2a ] 度を上昇させる.細胞内 Na+ 濃度上昇は,Na+ 濃度勾配を低下させ,Na+ -Ca2+交換輸送を抑 制し細胞内 Ca2+濃度を上昇させる.細胞内 Na+ 濃度が上昇すると Na+ -ブドウ糖共輸送が抑 制される. 24 .答 B [ Ⅵ B 1−4 ] 筋細胞膜での活動電位発生の時間経過は次のとおりである.T 小 管の脱分極;筋小胞体(SR)からの Ca2+の放出;Ca2+とトロポニン C との結合;連結橋の 形成;アデノシン3リン酸(ATP)の分解. 25 .答 C [ Ⅲ A ] 容量モル濃度は粒子の濃度である(容量モル濃度=g×C).2 つの溶液 で容量モル濃度が高い溶液を高浸透圧液という.1mM の塩化カルシウム溶液(容量モル濃度 =3mOsm/L)は 1mM 塩化ナトリウム溶液に対して高浸透圧(重量モル濃度=2mOsm/L)にな る.1mM ブドウ糖,1.5mM ブドウ糖,1mM スクロ−ス溶液は1mM 塩化ナトリウム溶液 に対して低浸透圧であるが,1mM 塩化カリウムは等浸透圧となる. 26 .答 A [ Ⅵ A 3 ] 興奮収縮連関において常に興奮は収縮に先行する.興奮とは筋細胞 5 の電気的活性化であり,筋細胞膜の活動電位(脱分極)により始まり T 小管へ広がる.T 小 管の脱分極は近傍の筋小胞体( SR )からの Ca2+の放出を生じ,これに続いて細胞内 Ca2+ 濃度の上昇,Ca2+とトロポニン C との結合,収縮が起こる. 27 .答 C [ V C 2 a−b ] γ-アミノ酪酸(GABA)は抑制性の神経伝達物質である.ノルエ ピネフリン,グルタミン酸,セロトニン,ヒスタミンは興奮性の神経伝達物質である. 28 .答 E [ Ⅱ D 2 ] 二次性能動輸送(共輸送)である小腸上皮細胞からのブドウ糖の吸 収過程を除いて,ここに上げられた全ての過程は一次性能動輸送の例である[従ってアデノ シン3リン酸を直接使用する]. 二次性能動輸送は Na+ 濃度の濃度勾配をエネルギ−源とし て利用,従って( Na+ 濃度勾配を維持するために)間接的に ATP を利用している. 29 .答 A [ Ⅱ A 1, C 1 ] “下向き輸送”で起こるのはたった 2 つのタイプ,すなわち 単純拡散と促通拡散のみである.D-,L-両異性体間に立体特異性がなければ,その輸送は 担体に依存しない輸送であり,単純拡散とみなしてよい. 30 .答 D [ Ⅱ D 2 a, E 1 ] “通常”の Na+ 濃度勾配では, Na+ 濃度は細胞内より細胞 外で高い( Na+ - K+ポンプで維持される ).2 つの輸送タイプ(すなわち共輸送と対向輸送) がこの Na+ 濃度勾配からエネルギ−を供給されている.この問題ではブドウ糖は Na+ と同じ 方向に移動するので,これは共輸送である. 31. 答 A [ Ⅱ A 1 ] 脱分極は神経線維膜の Na+ チャネルを開放し,Na+ は細胞内へ濃度勾 配に従って流入する.この過程は純粋に受動的である. K+の細胞外から細胞内への輸送は電気化学的勾配に逆らって 32 .答 C [ Ⅱ D 1, 2 a ] 起こり,一次性能動輸送の1つの例である.担体は Na+ - K+ポンプである.これはジギタリ スのような強心配糖体によって阻害される. 2 章 正解と解説 1.答C [ III F 1 c, 3 c] 運動の協調 ( synergy ) は小脳の機能である.小脳の障害は運動失 調,協調運動不能,運動の拙劣,運動開始の遅れ,速い交互運動不能を生ずる.運動前野と運 動野は運動の計画と遂行を行う. 基底核に含まれる黒質の障害は振戦,鉛管様固縮と筋緊張異 常を生ずる ( パーキンソン病). 2.答 J [ I C 1 a ; 表 2-2 ] プラゾシンは,α1受容体のうち,血管平滑筋に存在し, 心筋に 6 はないα1受容体の選択的拮抗薬である. この様なα1受容体の抑制は皮膚血管や内臓血管床 を拡張し, 全体の末梢血管抵抗を減少させ, 血圧を下げる. 3.答 B [ I C 2 b ; 表 2-3 ] 勃起は副交感神経ムスカリン性受容体による反応である. 細気管 支の拡張,射精,胃腸括約筋の収縮や心筋の収縮性の増加は全て交感神経性のαまたはβ受 容体反応による. 4.答A [ II F 1 b ; 表 2-4 ] C線維 (遅い痛み感覚) は最も細い神経線維で,伝導速度も最も 遅い. 5.答A [ II C 2 c (2) ; 表 2-6 ] 2種類の光受容器のうち,杆体は弱い光により感受性があり,暗 所視では錐体よりも重要である.杆体は錐体よりも遅れて暗順応する.杆体は中心窩には存在せ ず,錐体は主に色覚に関係する. 6.答A [ II D 4 ] 音の周波数は,基底膜に沿った特性の違いにより, コルチ器官で情報化され る. 基底膜の基部は幅が狭く,堅いので,その上に乗っている有毛細胞は高周波数音により刺激 される.基底膜の頂上部は幅が広く,弾性に富むので,低周波数音により活性化される. 7.E [ I A, B ; 表 2-1 ; 図 2-1] 交感神経性節前神経は脊髄の T1-L3から出るので,胸腰髄 由来である.さらに交感神経系は傍脊柱鎖 ( 効果器官ではなく ) にある神経節でシナプスする ので節前線維が短かく, 節後神経がノルエピネフリン ( エピネフリンではなく ) を放出するとい う特徴がある.交感神経系と副交感神経系の共通の特徴は節前神経がアセチルコリンを放出し, 節後神経が効果器官にシナプスすることである. 8.答D [ II G 1 b ] 9.答A [ Ⅲ E 2 ] 鼓索神経 [第Ⅶ脳神経] は味覚を伝え,舌の前2/3を神経支配する. 脊髄の横断は”脊髄ショック”を生じ,障害部位より下部の全ての反射が消 失する.脊髄内での局所回路によるこれらの反射は時間とともに回復し,さらに亢進してくる.固有 知覚は永久に ( 一時的というよりは ) 回復しない,というのは感覚神経線維が切断されるからで ある. 障害部位より上位の神経線維は正常である. 10.答B [ Ⅲ B 3 a (1) ] 核袋線維は筋紡錘を構成する錘内線維の一つである. これは筋長 の動的変化を検出し, Ia 群線維に情報伝達し,γ-運動ニューロン線維により支配されている. もう一つの錘内線維である核鎖線維は筋長の静的変化を検出する. 11.答B [ II C 5 b (2) ] 複雑型細胞は適切な角度で動く光の棒または明暗の辺縁に反応する. 7 単純型細胞は静止する光の棒に,超複雑型細胞は直線,曲線,角度に反応する.双極細胞と神 経節細胞は網膜にあり,視覚皮質にはない. 12.答E [ I C 1 d ; 表 2-2 ] 上気道の抵抗が増加する病気である喘息は細気管支拡張をもたら す薬物 ( 例えばβ2作動薬 ) の投与により治療される.β2作動薬にはイソプロテレノール,アル ブテノール,エピネフリンや弱い作用のものとしてはノルエピネフリンなどがある. プロプラノールの ようなβ2拮抗薬は細気管支を収縮させるので絶対的に禁忌である. 13.答A [ I C 1 a ] アドレナリン性α1受容体はイノシトール 1,4,5-3リン酸の産生を刺激するこ とにより生理作用を発揮し,引き続いて細胞内 Ca2+濃度の上昇を起こす.β1とβ2の両方の受容 体はアデニル酸シクラーゼを活性化し,サイクリック AMP の産生を増やす.α2受容体はアデニル 酸シクラーゼを抑制し,サイクリック AMP の産生を押さえる.ムスカリンとニコチン受容体はコリン作 動性である. 14.答B [ Ⅲ E 3 a, b ] 除脳硬直は反射性の筋紡錘活動増強により生ずる. Ia 群求心線維 の刺激はこの反射を亢進しても,減少はしない.後根の切断はこの反射を遮断する.α-,γ-運動 ニューロンの刺激は筋肉を直接刺激することになる. 15.答C [ II B 4 ] 運動野での体部位局在再現は最も複雑な運動を行う部位 例えば,指先, 手,顔,が最も広い領域を占める. 16.答D [ II E 1 a , 2 a , b ] 半規管は角加速度または回転を検出する.右の半規管の有毛細 胞は,右回転が加わった場合に興奮 ( 脱分極 ) する.このような回転は不動毛を動毛の側へ曲 げ,この偏位が有毛細胞の脱分極を起こす.エレベータでの上昇は直線加速度を検出する卵形 嚢を刺激する. 17.答D [ II A 4 c ] 受容器電位は受容器細胞の膜電位を閾値へ近づけたり ( 脱分極 ), 遠ざけたりする ( 過分極 ) ような段階的な電位である. 膜電位が閾値に達すると, ( 全か無 かの法則に従う ) 活動電位が発生するが, 18.答A [ Ⅲ E 3 ] 身体の回転運動中に起こる急速眼球運動は眼振である. これは身体 の回転と同じ方向に起こる. 19.答D [ V B ; 表 2-8 ] 受容器電位は活動電位ではない. 回転の後, 回転後眼振が反対方向に起こる. 脳脊髄液 ( CSF ) は脳内の間質液と同じ成分である.すなわち,血 漿の限外濾過液とよく似た成分で,蛋白質濃度は低い,なぜなら大きな分子量の蛋白質は血液脳関門を通過できないからである. 他にも, 脳脊髄液と血液の成分の間には違いが認められ,こ 8 れは脈絡叢内の輸送分子により作られるが,脳脊髄液中の蛋白質低濃度が最も顕著な違いであ る. 20.答D [ I C 1 c, d ; 表 2-2 ] 自律神経作動薬のうちβ1とβ2アドレナリン受容体作動薬のみ がアデニル酸シクラーゼを刺激することにより作用する. ノルエピネフリンはβ1作動薬である. アトロピンはムスカリン性アセチルコリン作動薬である. クロニジンはα2アドレナリン作動薬である. クラーレはニコチン性アセチルコリン拮抗薬である.フェントラミンはα1アドレナリン受容体作動薬 である. プロプラノロールはβ1とβ2アドレナリン受容体拮抗薬である. 21.答B [ Ⅱ C 4] 光受容機構には次のような段階がある. 光が 11-cis 型レチナールをオ ール trans 型レチナールに変換する. この変換過程ではメタロドプシン が中間産物として産生さ れる.メタロドプシン は興奮性の G 蛋白 ( トランスデューシン ) を活性化し, トランスデューシ ンはホスホジエステラーゼを活性化する. ホスホジエステラーゼはサイクリック GMP を分解し,細 胞内のサイクリックGMP 濃度が減少し,光受容細胞の Na+イオンチャネルを閉じ,膜電位を過分極 する.光受容器細胞の過分極は神経伝達物質の放出を抑制する. もし,伝達物質が興奮性作用 をもつなら, 双極細胞は過分極する ( 抑制される ). もし伝達物質が抑制性作用をもつなら, 双極細胞は脱分極する ( 興奮される ). 22.答C [ VI C 1 ] * Ⅱ C 5 の訳者注を参照. 病原物質は貪食細胞からインターロイキン-1 ( IL-1 ) を放出させる. IL-1 はプロスタグランジンの産生を増やすように作用し, 視床下部の設定体温値を上昇させる. 視床 下部が,もし体温は低すぎると判断すると ( なぜなら中心体温が新しい設定体温値よりも低い場 合), 発熱機構が働き出し,ふるえ, 血管収縮, 血流を表皮静脈叢から迂回させるなどが起こ る. 23.答A [ Ⅱ F 1 a , b ] 第Ⅰ脳神経は嗅覚上皮を神経支配している. その軸索はC線維 である. 篩骨板骨折は繊細な嗅覚神経を切断し,嗅覚を障害する ( 無嗅覚症 ) ; しかしなが らアンモニアの刺激臭を検知する能力は残っている. 嗅覚受容器細胞は,真のニューロンである のに,未分化幹細胞から分化して入れ替わり続ける細胞である点が特徴的である. 24.答B [ I C 1 c ] より増加する. 心拍数は洞房結節内のβ1受容体に対するノルエピネフリンの刺激作用に 心臓には収縮力を制御する交感神経性のβ1受容体もある. 25.答E [ I C 2 a ; 図 2-1 ] 副交感神経節前線維は副腎髄質のクロマフィン細胞のニコチン 性受容体上にシナプスし, エピネフリン ( 一部ノルエピネフリンも ) を循環血液中に放出する. 26.答E [ I C 2 a ] 神経筋接合部のニコチン性受容体はアセチルコリン (ACh) に対するシナ 9 プス後受容体のみならず,アセチルコリンにより開く Na+と K+イオンチャネルでもあり, 筋肉終板 を脱分極し, 27.答E [ I C 終板電位を発生させる. 2a ] ヘキサメトニウムはニコチン受容体拮抗剤であるが,自律神経節のニコ チン受容体にのみ作用する ( 神経筋接合部では作用しない ). このような薬理学的作用の違 いはこれらの2カ所のニコチン受容体はよく似ているが同一ではないことを意味している. 28.答D [ I C 2 b ] アトロピンはアセチルコリン (ACh) のムスカリン受容体の特異的拮抗剤で ある. アトロピンはムスカリン受容体により仲介される全てのアセチルコリンの作用に拮抗すると考 えられる. すなわち,アトロピンは胃腸運動を抑制し,膀胱の緊張低下,細気管支平滑筋の弛緩, 心拍数の増加を起こす. 29.答C [ I C 1 d ] 血管平滑筋のβ2受容体は血管拡張を起こす. 血管平滑筋のα受容体 は血管収縮を起こす.β2受容体はα受容体よりもエピネフリンに対して感受性が高いので,低濃 度のエピネフリンでは血管拡張を, 30.答A [ Ⅱ C 3 a] 高濃度では血管収縮を起こす. 左眼球からの視神経を切断すると,左目の視力を失う. なぜなら,視 神経の障害部位は視交叉の前であるから. 31.答C [ Ⅱ C 3 c ] 左耳側部視野と右鼻側部視野からの線維は一緒になって右視索を形 成する. 32.答B [Ⅱ C 3 b ] 33.答B [ III H 1 ] 両側耳側視野からの視神経は視交叉で交叉する. 運動前野 ( 6野 ) は運動が起こる前にその運動に対する計画作りに関 与する.補足運動野は運動のイメージ遂行に関係する. 34.答E [ Ⅲ F 3 b ] 小脳皮質からの小脳核へのプルキンエ細胞出力は抑制性である. こ の出力は運動を修飾し,”ハエを捕まえる” 様な協調運動に関係する. 35.答C [ III C 3 ] 屈曲逃避反射は多シナプス反射で, 熱いストーブを触ったり, 鋲を踏ん だりしたときに働く. 痛み刺激を受けた側は, 屈曲 ( 逃避運動 ) し, 反対側は姿勢を保つ ために伸展する. 36.答A [ III C 1 ] 伸展反射は筋肉の伸展に対する単シナプス反応である. この反射は,伸 展を受けた筋肉 ( 同名筋 ) を収縮させ, 長さを短縮する反応である. 10 37.答D [ Ⅲ B 1 b ] Ib 群線維はゴルジ腱器官からの求心性線維で,筋肉の張力の増加を 検出する. ゴルジ腱反射 ( 逆伸展反射 ) は同名筋を弛緩させることにより,増加した張力を代 償することになる. 38.答A [ Ⅲ B 2 a ] 錘外線維は多数の筋細胞から成り, α-運動ニューロンにより支配さ れている. 39.答C [ Ⅲ B 3 b ] Ia 群求心線維は筋紡錘の錘内線維を支配している. 錘内線維が伸展 を受けると Ia 群線維が発火し, 3 章 伸展反射が起こり, 筋肉を元の筋長へと戻すことになる. 正解と解説 1 . 答 D[Ⅱ C,D ] 半径が 50 %減少すると,抵抗は 24倍になる(R = 8ηl/(r4).血 流量は抵抗に逆比例(Q = ΔP/R)するので,血流量は元の 1/16 になる. 2 . 答 B[Ⅸ A;表 3-4 ] 臥位から立位に体位変換すると血液が下肢の静脈に貯留し, 静脈還流量,心拍出量が減少し,動脈血圧が低下する.この変化が圧受容器により感知さ れ,反射性に交感神経活動が増加し,副交感神経活動が減少する.この結果,心拍数,心 収縮性,総末梢血管抵抗が増加する.心拍数,心収縮性共に増加するので,心拍出量は元 のレベル近くにまで回復する. 3 . 答 E[Ⅱ G,H,I] 静脈側(中心静脈,右心房,腎静脈等)の血圧は動脈側の血圧 より低い.また,肺動脈を含む右心系の血圧 (血管内圧) は左心系の血圧より低い.体循 環系では,脈波反射の影響により,大動脈に比べ下流の動脈の方がわずかに血圧が高い. 4 . 答 B[Ⅲ A] P 波が存在しないということは,心房が脱分極していないということ であり,ペースメーカーは洞房結節にはない.QRS 群と T 波が正常であるので,心室の脱分 極,再分極過程は正常である.房室結節にペースメーカーが存在するとこのような変化が 起こる.もし,ペースメーカーがヒス束あるいはプルキンエシステムに存在すれば,心室 は異常な過程により興奮することになり,QRS 群は異常な波形になる.心室筋はペースメー カーにはなれない. 5 . 答 C[ Ⅳ G 3] 駆出率が増加するということは,収縮末期容量のうちより多くの 部分が1回拍出量として駆出されるということを意味する.この時,収縮末期容量は減少 する.心拍出量,脈圧,1回拍出量,収縮期血圧は増加する. 11 6.答D[ V G ] 期外収縮は正常収縮より早く起こるため,心室充満が短く不十分で あり,1回拍出量が少なく,脈圧が小さくなる. 7 . 答 A[Ⅳ C 1 a (2) ] 期外収縮後には収縮性が増加するため,脈圧が大きくなる. 期外収縮時には多くの Ca2+が細胞内に流入する.トロポニン C と結合できる細胞内 Ca2+ の量により心筋収縮性が決まる. 8 . 答 A [Ⅳ D 5 a] 収縮性が増加すると,収縮末期容量(あるいは圧)が一定であれ ば,心拍出量が増加する.心拍出量と静脈還流量は等しいので,心拍出曲線と静脈還流曲 線の交点(平衡点)で動作している.収縮性が増加すると(陽性変力作用),心拍出曲線が 上にシフトし,新たな平衡点が生まれる. 9 . 答 B [Ⅳ E 1 a] 等容性収縮期は大動脈弁が開く前の収縮期である.心室圧は増加 するが,弁が閉じているため,血液が駆出されず,容量は変化しない. 1 0 . 答 C [Ⅳ 1 c] 血液が駆出され,心室圧が大動脈圧以下に低下すれば,大動脈弁 が閉鎖する. 1 1 . 答 A[V B] 第 I 心音は房室弁閉鎖により起こる.房室弁閉鎖に先立ち,心室充満 が起こる(4→1).房室弁閉鎖後等容性収縮が起こり,心室圧が上昇する(1→2). 1 2 . 答 C [Ⅳ E 1,G 1,2] 1回拍出量とは1回の収縮により心室から拍出される血 液量であり,圧‐容量曲線において 2→3 に相当する.2 の時点の心室容量(拡張末期容量) は 140 mL,3 の時点の心室容量(収縮末期容量)は 65 mL であるので,その差 75 mL が1 回拍出量である.心拍出量=1回拍出量×心拍数であるので,75 mL×70 beats/min=5250 mL/min(5.25 L/min). 13.答D[Ⅶ C 1 ] Starling の式により濾過圧が計算できる. 濾過圧=(Pc - Pi) - (πp – πi) = (30 - (-2)) - (25 - 2) mmHg = 32 mmHg - 23 mmHg = +9 mmHg. 濾過圧が正であるので,毛細血管から組織への水の濾過が起こる. 14.答C[Ⅶ C 1] Kf は毛細血管の濾過係数であり,透過性を表す. 12 濾過量=Kf ×濾過圧 =0.5 mL/min/mmHg×9mmHg = 4.5 mL/min 1 5 . 答 C[Ⅱ D 2 a,b] レイノルズ数が増加すれば乱流になる.レイノルズ数を増加 させる因子としては,血液粘性(ヘマトクリット値)の低下と血流速度の増加である.血 管の狭窄は断面積を減少させ,血流速度を増加させ(血流速度=血流量/断面積),レイノ ルズ数を増加させて,乱流を発生させる. 1 6 . 答 D [Ⅸ A] 臥位から立位に体位変換した時には,血液が下肢に貯留し,静脈還 流量が減少し,心拍出量が減少して,動脈血圧が低下する.圧受容器反射が正常であれば, 動脈血圧の低下に応答し,交感神経活動が増加,副交感神経活動が減少する.交感神経活 動増加は,心拍数増加,心収縮性増加,総末梢血管抵抗増加を引き起こし,低下した動脈 血圧を元に戻すように働く.交感神経切除術を受けたヒトでは,圧受容器反射性交感神経 活動増加が起こらず,動脈血圧は回復しない(起立性低血圧). 1 7 . 答 D[Ⅲ A] 心電図の PQ 部分と ST 部分は電位ゼロである.PQ 間隔は P 波(心房 脱分極)と PQ 部分(房室結節での伝導)からなり,この時期には心室は脱分極していない. ST 部分では全ての心室が脱分極している. 1 8 . 答 C[I A] 左→右の心室でシャントがあれば,左心室から大動脈へ駆出されるべ き血液が右心室へ流入し,肺動脈へと流れていく.従って,肺動脈血流量(右心室拍出量) の方が大動脈血流量(左心室拍出量)より多くなる.胎児では肺動脈血流量はゼロである が,成人では両心室の拍出量は等しい.陽性変力作用を有する薬剤は,収縮性,拍出量に おいて左右心室に対し同等の作用をもつ.右心不全では肺動脈血流量が減少するが,結局 は大動脈血流量も同程度減少する. 1 9 . 答 C [Ⅳ F 2 a] 循環血液量が増加すると,平均循環充満圧が増加し,静脈還流 曲線が右にシフトする.心拍出曲線と静脈還流曲線は新しい平衡点で交叉し,心拍出量と 静脈還流量が増加する. 2 0 . 答 D[Ⅲ E 1 b] 2つの P 波のうち1つしか房室結節を通過して伝導されないと いうことであり,房室結節の伝導速度が低下していることが推測される. 2 1 . 答 A[Ⅵ A 1 a-d] 動脈血圧が低下すると,頸動脈洞圧受容器(および大動脈弓) の伸展度が低下し,頸動脈洞神経活動(および大動脈神経活動)が減少する.圧受容器反 13 射を介し交感神経活動は増加し,副交感神経活動は減少し,低下した動脈血圧を元に戻す ように働く.静脈を支配する交感神経活動が増加すると,静脈は収縮し,コンプライアン スが低下し,平均循環充満圧が増加する. 2 2 . 答 B[Ⅶ C 4 c ;表 3-2] リンパ系の輸送能力を超えて,毛細血管から水が濾過さ れると浮腫が発生する.Pc 増加,Πp 減少により濾過量が増加する.細動脈収縮は Pc を減 少させて,濾過量を減少させる.脱水では血液濃縮が起こり,血漿蛋白濃度が増加し,(p が増加して,濾過量が減少する.静脈圧が増加すると,Pc が増加し,濾過量が増加する. 2 3 . 答 A[V E] 第Ⅱ心音は大動脈弁,肺動脈弁閉鎖に対応して聴取される.吸気時に は,大動脈弁閉鎖が肺動脈弁閉鎖にわずかに先行するので,第Ⅱ心音が分裂する. 2 4 . 答 C [Ⅸ B 2] 運動時には,代謝性物質が運動筋に蓄積し,細動脈血管抵抗が減 少し,運動筋の血流量が増加する.骨格筋量は多いので,骨格筋の血管抵抗は総末梢血管 抵抗の大きな部分を占める.従って,運動時には,交感神経活動増加により他の血管の抵 抗が増加するにも関わらず,総末梢血管抵抗は減少する. 2 5 . 答 A[Ⅴ A-G] 心電図の QRS 群は心室の脱分極を表し,その直後に心室収縮が起 こる.QRS 群に続いて血液が左心室から大動脈に駆出されるので,大動脈圧が急激に上昇す る.大動脈圧はピーク値に達し,大動脈から分枝の動脈へと血液が流入するに伴い,大動 脈圧は低下する.この時,大動脈弁閉鎖により,大動脈圧波形上に切痕が現れる.血液が 大動脈から流出している間中大動脈圧は減少し続ける. 2 6 .答 D[Ⅴ A-G] 心房収縮(P 波)に伴い心室容量はわずかに増加する.その後,等 容性収縮期(QRS 群)に容量は変化せず,駆出期(QRS 群の後)には大きく減少する. 2 7 . 答 C[Ⅱ C] 細動脈血管抵抗が増加すると,総末梢血管抵抗が増加する.動脈血圧 =心拍出量×総末梢血管抵抗であるので,動脈血圧が増加する.細動脈が収縮すると,Pc が減少し,毛細血管からの濾過量は減少する.心臓の後負荷は増加する. 2 8 . 答 D [Ⅳ J ] O2消費量,肺動脈血 O2濃度,肺静脈血 O2濃度を測定すれば,Fick の原理により心拍出量を測定することができる.肺動脈 O2濃度は体循環系の混合静脈血 O2 濃度で代用,肺静脈 O2濃度は末梢動脈血 O2濃度で代用する事ができる.この計算に心拍数 は必要ない.心拍出量=500 mL/min/(0.24 mL O 2/mL − 0.16 mL O 2/mL)=6250 mL/min (6.25 L/min). 14 2 9 . 答 B[Ⅲ B 1 a,c,d,2 a] 心房筋,心室筋,プルキンエ線維の活動電位の0相 は内向き Na+電流に起因するが,洞房結節の0相は内向き Ca2+電流に起因する.心室筋の プラトー部分(第2相)は緩徐な内向き Ca2+電流に起因する.全ての再分極部分(第3相) は外向き K+電流に起因する. 3 0 . 答 C[Ⅳ F 3 a(1)] 心筋収縮性が増加すると,心拍出曲線は上方にシフトし,1 回拍出量,心拍出量が増加する.循環血液量増加と平均循環充満圧増加は静脈還流曲線を 右にシフトさせる.陰性変力作用薬剤は心筋収縮性を減少させ,心拍出曲線を下方にシフ トさせる. 31.答B[Ⅳ F 3] 拡張末期容量と右心房圧は相関する. 3 2 . 答 E [Ⅱ A 2,3,F] 循環系の圧減少は血管抵抗に相関する(圧差=血流量×血 管抵抗).すなわち,血管抵抗が大きいほど,圧降下も大きい.最も大きな血管抵抗を有す る部位は細動脈である.流域面積および断面積総和が最大の部位は毛細血管である.血流 速度最低の部位も毛細血管である. 3 3 . 答 D[Ⅱ G 3] 脈圧とは収縮期(最大)血圧と拡張期(最低)血圧の差であり,左 心室から拍出される血液量(1回拍出量)に相関する.加齢時のように動脈コンプライア ンスが減少すると,脈圧は増加する. 3 4 . 答 B [Ⅲ B 2 c] 洞房結節の第4相脱分極は,この部位のペースメーカー特性に + 関連しており,Na コンダクタンス増加による内向き Na+電流(If )に起因する. 3 5 . 答 A[ Ⅲ E 2,3;表 3-1] プロプラノロールはβ‐アドレナリン拮抗剤であり, β1 ,β2 受容体を介する交感神経作用を遮断する.洞房結節を支配する交感神経はβ1 受容 体を介し,心拍数を増加させる.プロプラノロールはこれを遮断し,心拍数を減少させる. 駆出率は心室収縮性に相関し,β1 受容体刺激により増加する.従って,プロプラノロール は心収縮性,駆出率,1回拍出量を減少させる.内臓血管と皮膚血管の抵抗はα1 受容体を 介して調節される. 3 6 . 答 A [ IV A 3 ] ギャップ結合は心筋細胞間の境界板に存在し,抵抗が低いのでこ の部を通して電流が広がる. 3 7 . 答 C[Ⅳ B 6] 心筋収縮性は細胞内 Ca2+ 量に依存する.細胞内 Ca2+ 量は活動電位第 2相に細胞内に流入する Ca2+ 量と筋小胞体に取り込まれ放出される Ca2+ により調節されてい 15 る.Ca2+ はトロポニンCと結合し,アクチン‐ミオシン間の抑制を解除し,収縮(短縮)を 引き起こす. 3 8 . 答 B[Ⅷ B 2 a] ヒスタミンは細動脈を拡張,静脈を収縮させ,Pc を増加させて, 毛細血管濾過量を増加させる.アセチルコリン (ACh) はムスカリン受容体を遮断する(ム スカリン受容体は血管平滑筋には存在しない). 3 9 . 答 C[Ⅷ C,D,E 2 ,F] 脳血流量は CO2 濃度により自己調節されている.代謝量増 加(あるいは還流圧低下)により CO2 濃度が増加すると,脳血管が拡張する.心臓および運 動時骨格筋の血流も代謝性に調節されている.しかし,血管拡張物質として最も重要な代 謝性因子は心臓ではアデノシンと低酸素,骨格筋ではアデノシン,乳酸,K+ である.皮膚血 流調節においては,代謝性因子より交感神経の方が重要である. 4 0 . 答 D [Ⅰ A] 左右心室の拍出量は等しい.右室から拍出された血液は肺で酸素化 された後,左室から体循環系へ拍出される. 4 1 . 答 C[Ⅲ C] 洞房結節での遅れ(PQ 間隔)があることにより,心室が完全に充満 される.もし,完全に充満される前に心室が収縮すると,1回拍出量は減少する. 4 2 . 答 A [Ⅷ C-F] 皮膚血流は主に交感神経により調節されている.冠血流と脳血流 は主に局所代謝性因子により調節されている.骨格筋血流は,安静時は交感神経,運動時 は局所代謝性因子により調節されている. 4 3 . 答 E [Ⅸ B] 運動に先行し,予測制御的に交感神経活動が増加し,心拍数,心収 縮性が増加する.骨格筋活動のポンプ作用により静脈還流量が増加し,心拍出量が増加す る(Frank-Starling の心臓法則).1回拍出量増加により,脈圧が増加する.交感神経活動 が増加するにも関わらず,活動筋が代謝性因子(乳酸,K+,アデノシン)により拡張する ため,総末梢血管抵抗は減少する.この骨格筋血管拡張により,より多くの O2が骨格筋に 供給される. 4 4 . 答 D [Ⅳ C] 陰性変力作用は心筋収縮性を低下させる.心筋収縮性とは,一定の 筋長において発生することができる張力の大きさである.心筋収縮性を低下させる要因は 細胞内 Ca2+量を減少させる.心拍数が増加すると各活動電位の第2相により多くの Ca2+ が細胞内に流入し,細胞内 Ca2+量が増加する.交感神経活動増加とノルアドレナリンも同 様に Ca2+流入を増加させ,筋小胞体の Ca2+貯蔵量を増加させる.強心配糖体は Na+-K+ ATPase を抑制し,細胞内 Na+を増加させ,Na+-Ca2+交換輸送を介する Ca2+流入を増加させ 16 る.アセチルコリンは心房に対する陰性変力作用がある. 4 5 .答 A[Ⅵ C 4; Ⅸ C] 腎灌流圧低下に応答し,アンギオテンシン I,アンギオテ ンシンⅡ,アルドステロン濃度が増加する.心房の受容器により,循環血液量減少が感知 されると,抗利尿ホルモン(ADH)が分泌される.ここにあげたホルモンの内 Na+再吸収を 促すのはアルドステロンだけである.心房性ナトリウム利尿ペプチドは,心房圧上昇に応 答して分泌され,Na+排泄を促す. 4 6 .答 D[Ⅳ I] 心臓が発生する張力により心筋の O2消費量が決定する.大動脈圧(後 負荷)増加,心拍数あるいは1回拍出量増加(心拍出量増加),心拡大(張力=内圧×半径) により張力が増加する.活動電位発生中の Na+流入は受動的な過程であり,細胞内外の Na+ の電気化学的勾配により流入量が決まる.ただし,細胞内外の Na+勾配は Na+-K+ ATPase による能動的な過程である. 4 7 . 答 D[Ⅶ B 1,2] O2,CO2,CO は脂溶性であるので,拡散により毛細血管内皮細 胞膜を通過する.ブドウ糖は水溶性であるので,内皮細胞膜は通過できず,細胞間隙や細 孔を通過する. 4 8 . 答 E[Ⅲ B 1 e] 第4相は静止膜電位である.この時期 K+のコンダクタンスは最 も高いので,膜電位は K+の平衡電位に近い値をとる. 4 9 . 答 C [Ⅲ B 1 c] 第2相は心室筋の活動電位のプラトー部分である.この時期 2+ Ca のコンダクタンスが一過性に増加しており,この時流入した Ca2+が引き金となり,筋 小胞体から Ca2+が放出される. 50.答E[Ⅲ B 1 e] 5 1 .答 A[Ⅷ E 第4相は拡張期にあたる. 1;表 3-1] 細動脈平滑筋に存在し,平滑筋収縮を引き起こすのはα 受容体である(伝達物質はノルアドレナリン).β2受容体も骨格筋の細動脈平滑筋に存在 するが,血管拡張を引き起こす. 5 2 . 答 D[Ⅲ E 2 a;表 3-1] アセチルコリン(ACh)は洞房結節のムスカリン受容体を 介して,徐脈を起こす. 5 3 . 答 D[V A-G] 心室収縮期の急速血液駆出期の直後に大動脈圧は最高値になる.す なわち,最高値の時期は減速駆出期の初期にあたる. 17 54.答E[V E] 等容性心室弛緩期に心室容量は最低になる. 5 5 . 答 E[V E] 左心房圧が左心室圧より高くなると僧帽弁が開く.すなわち,心室充 満が始まる直前(等容性心室弛緩期の末期)に開く. 4章 正解と解説 1.答E [ I A 4, 5, B, 2,3,5] 残気量はスパイロメーターで測定できない.したがって 残気量を含んだ肺気量または肺キャパシティはスパイロメーターでは測定できない.残気 量を含んだ気体量は機能的残気量と全肺キャパシティである.肺活量は残気量を含まない ので,スパイロメーターで測定できる.生理学的死腔量はスパイロメーターでは測定でき ない.その算出には動脈血の Pco2 と呼気の CO2 の測定が必要である. 2 .答 B [Ⅱ D 2] 新生児の呼吸困難症候群は未熟の肺における,必要量のサーファクタ ントが不足していることにより起こる.サーファクタントは妊娠 24 週から 35 週に現れる. サーファクタントの欠乏により小さい肺胞の表面張力は高くなりすぎる.小さい肺胞の圧 力が強すぎると( P = 2T r )小さい肺胞はより大きい肺胞に向かって崩壊する.より大き い肺胞,崩壊した肺胞と換気量/血流量 (V/Q) の不適合が起こり,ガス交換が減少すると低 酸素血とチアノーシスが起こる.サーファクタントの欠乏は肺のコンプライアンスを減少 させ,肺の拡張を困難にし,呼吸の仕事量が増加するので,呼吸困難(息切れ)が起こる.レ シチン:スフィンゴエミリン比が 2:1 より大きくなるとサーファクタントは成熟したレベ ルとなる. 3 .答 B [Ⅳ C] 肺の血流量は局所では肺胞気の Po2 によって調節される.酸素欠乏は肺 の血管を収縮させ,役に立っていない肺の換気されない部位の血流量を他の部位に向ける. 冠状循環では,低酸素血は血管を拡張させる.大脳,筋および皮膚の循環は Po2 により直接 には調節されない. 4.答 D [Ⅷ B 2a] 低酸素血は末梢化学受容器を刺激し換気量を増加させるので患者の 動脈血の Pco2 は正常値の 40mmHg より低くなる.過換気は患者から過剰の CO2 を排泄さ せ呼吸性のアルカローシスを起こさせる.閉塞性肺疾患,例えば気管支喘息では,努力性 の呼気量(FEV1)および努力性 ( 時間 ) 肺活量 (FVC) は減少するが,FEV1 の減少が著し い.従って FEV1/FVC 比は減少する.病気に冒された部位の少ない換気量は換気量/血流量 (V/Q)比を減少させ,低酸素血を起こす.気道の大きな抵抗を補うため,多い肺気量の位置 で呼吸するため,患者の残気量(RV)は増加する. 18 5 .答 C [Ⅱ E 3 a (2)] 気管支喘息の気道障害の原因は細気管支の収縮である.β 2-アド レナリン作動性の刺激(β2-アドレナリン作動薬)は細気管支を拡張させる. 6 .答 E [Ⅱ F 2] 吸息中の胸膜腔内圧は安静呼息位での状態より,さらに陰圧の程度 が大きくなる.呼息中の胸膜腔内圧は,安静時呼息位におけるより小さい陰圧に戻る.吸 息中は,肺胞内圧が大気圧より低くなり( 横隔膜と外肋間筋の収縮による ) 空気は肺内に 流れ込む,もし肺胞内圧が大気圧より低くなければ空気は肺内に流れ込まない.吸息終了 時の肺気量は機能的残気量(FRC)と 1 回呼吸気量(TV)を加えた量となる. 7 .D [Ⅸ B ; 表 4-8] 高地では大気圧が減少するので肺胞気の Po2 は低下する.その結 果,動脈血の Po2 は低下し( <100mmHg),低酸素血が起こり,末梢化学受容器に影響を及 ぼして過換気が起こる.過換気は呼吸性アルカローシスをもたらす.2,3-ジホスフォグリセ レート ( DPG ) レベルは適応的に増加する.2,3-ジホスホグリセレートはヘモグロビンと 結合し,ヘモグロビン‐酸素解離曲線を右方に移動させ,組織での酸素の遊離を促進する. 低酸素に反応して,肺血管は収縮し,肺の動脈圧の上昇と右心室の肥大(左心室は肥大しな い)をもたらす. 8 .G [ⅠA 3 ; 図 4-1] 予備呼気量 ( ERV ) は肺活量 ( VC ) から残気量 ( RV ) を引い たものである.[深吸気量は 1 回呼吸気量(TV)と予備吸気量を含む]. 訳注 問題文で 最大呼気量(深呼気量)が 3.5L・・・・は誤り.2.5L に訂正. 9 .C [Ⅵ B] 肺での血流量の分布は,動脈の静水圧に及ぼす重力の効果によって影響され る.血流量は動脈の静水圧が,最大になっている底部で最も多い.動脈と静脈の圧差が血 液を押し流す. 10 .D [Ⅱ C 2 ; 図 4-3] 習慣として,気道内圧が大気圧と等しいとき,ゼロの圧と呼ば れている.この平衡状態では,大気圧と肺胞内圧の差がないので,気流はない.そして肺 の気体量は機能的残気量 ( FRC ) である.どの曲線でも勾配はコンプライアンスであり抵 抗ではない.勾配が急峻なほど圧の変化に対する体積の変化が大きく,コンプライアンス は大きい.肺のみあるいは胸郭のみのコンプライアンスは両者を合わせた系のコンプライ アンスより大きい(単独の勾配は両者を合せた系の勾配より大きい.これはコンプライアン スが大きいことを示す).気道内圧がゼロ(平衡状態)の時,胸郭の拡張しようとする傾向と 肺の縮小しようとする傾向は逆方向になっていて,胸腔内圧は陰圧になっている. 11 .C [Ⅱ E 4] 実際には,中等度の大きさの気管支は,気管分岐に沿って最大の抵抗を 19 もっている部位である.肺胞は小さい半径をもっているので,最も大きい抵抗をもつよう に思われるが,肺胞は,平列に配列しているので,抵抗は小さくなる.実際,小さい気道 における初期の抵抗の変化は“沈黙を守り”,抵抗への全体としての寄与が小さいので検出 できない. 12 .D [Ⅶ B 2 ] 左肺の肺胞気 Po2 は吸入された空気の Po2 と等しい.なぜなら,左肺の 血流がないので,肺胞気と肺の毛細血管内の血液とのガス交換がないからである.したが って酸素は毛細血管内の血液に加わらない.左肺の換気量/血流量(V/Q)比は無限大となる (ゼロになったり,正常の右肺より小さくなることはない)なぜなら Q(分母)がゼロであるか らである.もちろん左肺ではガス交換がないので,体循環の動脈血の Po2 は低くなる.右肺 の肺胞の Po2 は影響を受けない. 13 .C [Ⅳ C 1 ; 図 4-7] 激しい運動は骨格筋の温度を上昇させ pH を低下させる.両者の 効果はヘモグロビン-酸素解離曲線を右方に移動させ,運動している筋の大きい酸素必要量 を満たすため組織での酸素の遊離がより起こりやすくなる. 2,3-ジホスホグリセレート ( DPG )は成人ヘモグロビンのβ鎖と結合し,酸素に対する親和性を低下させて,曲線を右 方に移行させる.胎児ヘモグロビンではβ鎖が 2,3-DPG と結合しないγ鎖に置き換えられ ているので曲線は左方に移行する.一酸化炭素(CO)は残っている酸素に対する結合部位の 親和性を高めて,曲線を左方に移行させる. 14 .A [Ⅳ C 1 ; 図 4-7] ヘモグロビン-酸素解離曲線の右方への移動はヘモグロビンの酸素 に対する親和性の減少を表している.どのような値の Po2 でも酸素飽和度は減少し P50 は増 加する( 曲線のヘモグロビンが 50%飽和したところの Po2 を読む).そして組織での酸素の 遊離が促進される.ヘモグロビンの酸素運搬キャパシティはヘモグロビン濃度により決定 され,曲線 A から曲線 B への移行には影響されない. 15 . D [Ⅴ B] 静脈血では CO2 は炭酸脱水酵素によって触媒され H2O と結合し弱酸 H2CO3 を生成する.生じた H+は,H+に対する有効な緩衝作用(pK が血液 pH と 1.0 以内である) をもつ還元ヘモグロビンで緩衝され,静脈血の pH は動脈血の pH よりほんのわずかだけ低 い.酸化ヘモグロビンは還元ヘモグロビンより緩衝力は弱い. 16 .B [Ⅵ A] 体循環と肺循環の血流量 ( 分時心拍出量 ) はほとんど等しい.体循環は肺 で 2%バイパス ( 側路として流れる)するので,肺循環の血流量は体循環の血流量よりわず かに少ない.肺循環は体循環と比べて低圧,低抵抗と特徴付けられる.血流量は 2 つの循 環系でほぼ等しい(血流量=圧/抵抗) 20 17 .D [ⅠA 5 b, 6 b] 肺胞換気量は 1 回呼吸気量と死腔量の差に呼吸回数を乗じた値であ る.1 回呼吸気量と呼吸回数は与えられているが,死腔量は計算により求められる.死腔量 は,1 回呼吸気量に動脈血の Pco2 と呼気の Pco2 の差を乗じ動脈血の Pco2 で除して算出さ れる.したがって,死腔量=0.45L×(41−35) / 41≒ 0.066L ,肺胞換気量の算出は次のよ うになる:(0.45L−0.066L ) / 回×16 回 / 分 ≒ 6.14L / 分 18 .B [Ⅶ C ; 図 4-10, 表 4-5] 肺の換気量と血流量は均一には分布していない.両者は肺 尖部で最小,底部で最大となる.しかし,換気量の差は血流量の差ほど大きくはないので 換気量/血流量 ( V/Q ) 比は肺尖部では大きく底部では小さい.その結果,ガス交換は肺尖 部では効率が高く,底部では効率が低い.それゆえ肺尖部を通過する血液は高い Po2 と低い Pco2 をもっている. 19 .E [Ⅷ B 2 ] 低酸素血は頚動脈小体および大動脈小体の末梢化学受容器に対する直接 効果により呼吸を刺激する.中枢性 ( 延髄 ) 化学受容器は CO2 (またはH+) により刺激さ れる.J受容器と肺の伸展受容器は化学受容器ではない.横隔神経は横隔膜を刺激する. その活動は脳幹の呼吸中枢の出力により決定される. 20 .A [Ⅸ A] 運動中は換気量は増加した酸素消費量と二酸化炭素産生量に見合って増加 する.この調和した増加は,動脈血の平均値での Po2 および Pco2 の変化なしに行われる. 静脈の Pco2 は,運動している筋で,余分の CO2 が産生されるので高くなる.CO2 は換気量 の増加している肺で呼出されるので,動脈血の Pco2 は高くならない.肺の血流量(分時心拍 出量)は運動中は何倍にも増加する. 21 .B [Ⅶ B 1 ] もし肺の一部で換気が行われない場合,その部位でのガス交換は行われ ない.その部を流れる肺の毛細血管内の血液は肺胞気の Po2 と平衡しない.血液の Po2 は混 合静脈血の Po2 と等しくなる. 22 .A [Ⅴ B ; 図 4-9 ] 組織で産生された二酸化炭素は赤血球 ( RBCs ) 内で水と反応して H+と HCO3-となる.H+は RBCs 内で還元ヘモグロビンにより緩衝され,赤血球は酸性化さ れる.HCO3-は Cl-と交換されて RBCs 内から血漿に入り,血漿中を肺まで運搬される.少 量の CO2 は(HCO3-ではない)直接ヘモグロビンと結合する(カルバミノヘモグロビン) 23 .E [ⅠB 2 ] 正常の呼吸では,吸入された空気量が呼出された呼気量となり,この量が 1 回呼吸気量(TV)となる.1 回呼吸気量が呼出された後に,肺に残っている気体量が機能的 残気量である. 21 24 .D [Ⅰ A 4 ] 最大呼息を行うとき呼出される気体量は 1 回呼吸気量 ( TV ) に予備呼気 量 ( ERV ) を加えた量となる.肺に残った気体量は残気量 ( RV ) である. 22 5 章 正解と解説 1. 答 D [Ⅴ B 4 b] 遠位部でのカリウム分泌は管腔側膜を横切るカリウムイオンの受動 的拡散に対する駆動力を減少させる因子によって抑制される.アルカローシス, 高カリウ ム食, 高アルドステロン症は全て遠位尿細管細胞の細胞内カリウム濃度を上げ,カリウム 分泌を促進する.サイアザイド系利尿剤は遠位尿細管での流量を増加させて管腔液のカリ ウム濃度を下げるので,カリウム分泌に対する駆動力は上昇する.スピロノラクトンはア ルドステロン拮抗剤なので,遠位部でのカリウム分泌を減少させる. 2. 答 D [I C 2 a, Ⅶ C; 図 5-15; 表 5-6] 蒸留水を飲水後,被験者 A は細胞内液量も 細胞外液量も増えて血漿浸透圧は低下し,抗利尿ホルモン分泌は抑制され,正の自由水ク リアランス(CH 2O )を示し,尿流量を増加させて希釈尿を生成する.同量の生理食塩水を摂取 した被験者 B は,細胞外液量のみ増えて血漿浸透圧は変わらない.被験者 B の抗利尿ホ ルモン分泌は抑制されないので,被験者 B は高張尿と尿流量の低下と被験者 A より低い正 の自由水クリアランスを示す. 3. 答 A [Ⅸ D 1 a -c; 表 5-8,表 5-9] 代謝性アシドーシスで呼吸性代償 ( 過換気 ) が 伴う場合,血液 pH の酸性化に, 血中 HCO3−の減少 PCO2の低下が随伴する.下痢症は腸管 からの HCO3- の喪失を引き起こし,代謝性アシドーシスを発症させる. 4. 答 D [Ⅸ D 1 a-c; 表 5-8 ,表 5-9] - 3 動脈血 HCO3- の減少は下痢による腸管からの HCO の喪失が原因であり,HCO3- による過剰の H+ を緩衝した結果ではない.この患者は代謝 性アシドーシスに対する呼吸性代償として過換気状態にある.この患者の低カリウム血症 は細胞内 H+ と細胞外 H+ の交換輸送の結果からくるものではない.なぜならば患者の細胞 外 H+ は上昇しており,これは逆方向への交換輸送を起こすからである.患者の循環血中ア ルドステロンは細胞外液量の低下により増えると思われるが,これは遠位尿細管からのカ リウム分泌の増加と低カリウム血症を引き起こす. 5. 答 C [Ⅱ C 4,5] 糸球体濾過は,糸球体毛細血管を横切る限外濾過圧が 0 になると止 ってしまう.すなわち,濾過を起こす力(47 mmHg) が濾過に拮抗する力(10 mmHg + 37 mmHg) とが等しくなる時である. 6. 答 D [Ⅸ D 1 a-b ] 動脈血二酸化炭素分圧 PCO2 の減少は管腔内分泌に対する細胞の 水素イオン供給を減らすことによって,濾過された HCO3- の再吸収を低下させる.濾過さ れた HCO3- の再吸収は濾過負荷量のほぼ 100 % に達し,刷子縁膜での炭酸脱水酵素が濾過 された HCO3- を CO2に正常に変換し続けることを必要とするこの過程は尿をほとんど酸性 化せず,滴定酸やアンモニウムイオンとしての正味の酸排泄にも関連していない. 23 7. 答 B [Ⅱ C 1 ] この問題に答えるには,糸球体濾過量(GFR = 150 mg/mL x 1 ml/min / 1 mg/mL = 150 mL/min) と物質 X のクリアランス(Cx = 100 mg/mL x 1 mL/min / 2 mg/mL = 50 mL/min)を計算せよ.X のクリアランスはイヌリンクリアランス(または GFR)より小さ いので,正味の X の再吸収が起こってないといけない.クリアランス値のみのデータでは, X の分泌も存在するかは決定できない.GFR は再吸収される物質では測定できないために, GFR 測定には X は不適当である. 8. 答 A [Ⅸ C 2] 蛋白質とリン脂質の異化による量と摂取された不揮発酸を加えた量で ある一日の固定酸の全生成は,正常の酸-塩基平衡を保つためには,滴定酸とアンモニウム イオンを足した H+分泌の総量に一致しなければならない. 9. 答 C [I B 1 a ] マニトールは細胞外液量に対するマーカー(指標)物質である.細 胞外液量 = マニトール量/ マニトール濃度 = (1 g - 0.2 g) /0.08 g/L = 10 L となる. 10. 答 D [Ⅲ B ; 図 5-5] 血漿ブドウ糖濃度と糸球体濾過量(GFR)との積がブドウ糖の 最大輸送量(Tm) を上回った場合,ブドウ糖のキャリヤーは飽和に達し,もはやブドウ糖の 再吸収量はブドウ糖の糸球体濾過量と一致しなくなり,この差は尿中に排泄される.血漿 ブドウ糖濃度が増加すれば,ブドウ糖の排泄は増加する.血漿ブドウ糖濃度と GFR との積 がブドウ糖の最大輸送量(Tm) を上回った場合,腎静脈血中ブドウ糖濃度は腎動脈血中ブド ウ糖濃度より低くなる.なぜならばブドウ糖は尿中に排泄され,もはや血中に戻って来な いからである.濾過されたブドウ糖が全て再吸収される時は,血漿ブドウ糖濃度と GFR と の積がブドウ糖の最大輸送量(Tm) より低い ( または閾値より低い ) 場合であり,ブドウ 糖のクリアランスは0となるが,血漿ブドウ糖濃度と GFR との積がブドウ糖の最大輸送量 (Tm) より高い場合には,ブドウ糖のクリアランスは0より大きくなる. 11. 答 D [Ⅶ D; 表 5-6] 浸透圧 1000 mOsm/L の高張尿を排泄している人は,負の自由水 クリアランス(-CH 2O )[CH2O = V-Cosm]を示す.その他の A-C では,正の自由水クリアラン ス(CH 2O )となる.なぜならば,飲水, 中枢性尿崩症, または腎性尿崩症により抗利尿ホルモ ン(antidiuretic hormone; ADH)が抑制され,低張尿が産生されているからである. 1 2 . 答 A [Ⅸ B 3] Henderson-Hasselbalch の式は HA/A- 比を計算するのに使えるので, pH = pK + logA- / HA 7.4 = 5.4 + logA- / HA 2.0 = logA- / HA 100 = A- / HA または HA / A- = 1/100 となる. 24 13. 答 A [Ⅱ C 3, Ⅳ C 1 d (2)] 濾過比の増加は,腎血漿流量(renal plasma flow; RPF) のより多くの部分が,糸球体毛細血管から濾過された事を意味する.この増加は,血液の 蛋白質濃度と血液膠質浸透圧の上昇を引き起こす.血液は尿細管周囲毛細血管血液の供給 源となる.尿細管周囲毛細血管内の膠質浸透圧の上昇は,近位尿細管での選択性再吸収の ための駆動力となる.細胞外液量 ( extracellular fluid volume; ECF volume) の膨張, 尿 細管周囲毛細血管内蛋白の減少, 尿細管周囲毛細血管内静水圧の増加はすべて,近位部で の再吸収を抑制する.酸素の欠乏もまた,側基底膜の Na+ - K+ pump を止める事により再吸 収を抑制する. 14. 答 E [I B 2 b-d] 間質液量は細胞外液量と血漿量との差を求めることで,間接的に 測定される.細胞外に限局するイヌリン( 巨大フルクトースポリマー)は細胞外液量の指 標物質である.放射性アルブミンは血漿量の指標物質である. 15. 答 D [Ⅲ C ; 図 5-6] 血漿パラアミノ馬尿酸(PAH)濃度と糸球体濾過量(GFR)と の積が PAH 分泌に対する最大輸送量(Tm) を下回ると,腎静脈血中の PAH 濃度は 0 に近づく. なぜならば,濾過と分泌量を足した量は実際全て,腎血漿から除去されたものである.だ から腎臓に入ったほとんどの PAH は尿中に排泄されるので,PAH の腎静脈血中濃度は腎動脈 血中濃度より低くなる.PAH は濾過も分泌も行われるが,イヌリンは濾過されるだけなので, PAH のクリアランスはイヌリンクリアランスよりも大きい. 16. 答 E [Ⅶ D; 図 5-13,図 5-14] 水摂取を制限された人は,血漿浸透圧の上昇と循 環血液中の抗利尿ホルモン ADH 濃度の上昇がある.これらの影響は集合管での水再吸収率 を増加させ負の自由水クリアランス(-CH 2O )を引き起こす.近位尿細管における(管腔液浸 透圧 / 血漿浸透圧)比は ADH によって影響されない. 17. 答 C [Ⅱ C 4; 表 5-3] 輸入細動脈の拡張は,腎血管抵抗の低下により腎血漿流量 (RPF)を増加させ,糸球体毛細血管静水圧の上昇により糸球体濾過量 GFR 増加させる.輸 出細動脈の拡張は,RPF を増加させるが,GFR は低下させる.輸出細動脈の収縮は,腎血管 抵抗の上昇により RPF を減少させ,GFR を増加させる.高蛋白血症は糸球体毛細血管内膠質 浸透圧の上昇により,尿管結石はボーマン腔静水圧の上昇により,濾過を妨害し GFR を低 下させる. 18. 答 B [Ⅸ D 4; 表 5-8] まず,酸-塩基平衡障害がある事が診断されなければならな い.血液 pH のアルカリ化 , P CO2低下, HCO3- 減少は呼吸性アルカローシスで起きる.呼吸 性アルカローシスにおいて,水素イオン濃度は低下し,血漿蛋白質の負に帯電した部位に 25 結合するごく一部の水素イオンは減少する.この結果,より多くの Ca2+ が血漿蛋白質に結 合し,血中イオン化カルシウム濃度は減少する.原発性呼吸性障害に対する呼吸性の代償 は存在し,この患者はこれが過換気状態にあり呼吸性アルカローシスの原因となっている. 適切な腎性代償は,重炭酸イオンの再吸収を低下させ,これが動脈血中の重炭酸イオン濃 度の低下と血液 pH の低下(正常に近づく)の原因となるであろう. 19. 答 C [Ⅶ B, D 4; 表 5-6] 常の皮質乳頭間浸透圧勾配, 両者とも高張尿, 負の自由水クリアランス(-CH2O), 正 循環血中抗利尿ホルモン ADH 濃度の上昇を示す.水分摂取制 限を受けた健康成人の血漿浸透圧は高く,抗利尿ホルモン不適切分泌症候群 SIADH の患者 では,不適切な(過剰な)水再吸収による血液の希釈により血漿浸透圧は低くなる. 20. 答 B [表 5-11] サイアザイド系利尿剤は遠位尿細管におけるユニークな作用をも つ,すなわちカルシウム再吸収の促進である.このため,カルシウム排泄の低下とカルシ ウムクリアランスの低下を引き起こす.副甲状腺ホルモン PTH はカルシウム再吸収を促進 するので,PTH 欠乏はカルシウムクリアランスの上昇の原因となる.フロセミドは太いヘン レの上行脚でのナトリウム再吸収を抑制し,細胞外液量 の増加は近位尿細管でのナトリウ ム再吸収を抑制する.これらの部位では,カルシウム再吸収はナトリウム再吸収と連結し ているので,カルシウムクリアランスは上昇する.太いヘンレの上行脚でのカルシウム再 吸収において,マグネシウムはカルシウムと拮抗するので,高マグネシウム血症はカルシ ウムクリアランスの増加の原因となる. 21. 答 D [Ⅸ D 2; 表 5-8] − い.HCO3 まず,酸-塩基平衡障害がある事が診断されなければならな 増加と PCO2 上昇を伴った 血液 pH アルカリ化は,呼吸性代償を伴った代謝性ア ルカローシスである.低血圧と皮膚緊張低下は細胞外液量 の減少を示唆している.血中水 素イオン濃度 の減少は細胞内水素イオンが細胞外カリウムイオン交換的に細胞を出てい きやすい原因となるであろう.適切な呼吸性の代償は低換気でありこれが PCO2 上昇を起こ す.尿中への水素イオン排泄は減少し滴定酸の排泄は減少する.細胞外液量の減少による 二次性の血中アルドステロン濃度の上昇により,遠位尿細管からのカリウム分泌は増加す る. 2 2 . 答 B [I A 1, 2] カリウムは重要な細胞内陽イオンである. 23. 答 B [Ⅶ B; 図 5-13] 患者の血漿浸透圧と尿浸透圧を同時に考えると,これらは水 分制限によって起きている.下垂体後葉からの抗利尿ホルモン ADH の分泌亢進により,血 漿浸透圧は正常上限まで上がっている.抗利尿ホルモンが分泌されると,次には ADH は集 合管に作用し水再吸収の促進と高張尿を生成する.抗利尿ホルモン不適切分泌症候群 SIADH 26 でも高張尿が生成されるが,血漿浸透圧は過度の水分保持により正常より低くなる.中枢 性および腎性尿崩症と多量の水分摂取は,全て低張尿を示す. 24. 答 C [Ⅱ B 2,3] 有効腎血漿流量 (effective RPF ) は,パラアミノ馬尿酸 PAH クリ アランス[ × V / P CPAH = U PAH PAH = 600 mL/min ] より計算で求められる.腎血流量 (RBF) = RPF / (1−ヘマトクリット) = 1091 mL/min. 25. 答 A [Ⅲ D] パラアミノ馬尿酸 PAH は,濾過も分泌もされるので,種々の物質のうち で最も高いクリアランスをもっている.イヌリンは濾過されるのみである.その他の物質 は濾過され,その後再吸収されるので,これらのクリアランス値はイヌリンクリアランス より低くなる. 26. 答 D [I C 2 f; 表 5-2] 発汗した後その体液喪失を全て水分摂取により補充した場 合,この女性は正味水分喪失を伴わない正味の塩分喪失を示す.このため彼女の細胞外液 と血漿の浸透圧は低下し,その結果水は細胞外液から細胞内液へと移動する.細胞内浸透 圧もこの水の移動により低下する.この女性が発汗による水分喪失を全て飲水により補充 しているので総水分量は変わらない.水の細胞外液から細胞内液への移動と,赤血球の容 積増加を起こす水の赤血球内への移動の結果,ヘマトクリット値は増加する. 27. 答 A [表 5-4] 運動はカリウムイオンを細胞から血液へ移動させ高カリウム血症を 起こす.血漿浸透圧の低下インシュリン, β-刺激薬, アルカローシスは,カリウムイオン の血液から細胞へ移動をさせ低カリウム血症を起こす. 28. 答 E [表 5-9] 代謝性アルカローシスの原因の一つは,高アルドステロン症である; 血中アルドステロンレベルの上昇は,遠位尿細管での水素イオン分泌の促進と新しく合成 された重炭酸イオン再吸収の促進を引き起こす.下痢は消化管からの重炭酸イオンの喪失 を起こし,アセタゾールアミド投与は尿中への重炭酸イオンの喪失を起こすので,両方と も高塩素イオン血症性の代謝性アシドーシスを起こす.エチレングリコール摂取およびサ リチル酸中毒は,アニオンギャップ増加を伴う代謝性アシドーシスを引き起こす. 29. 答 A [Ⅵ B; 表 5-7] 副甲状腺ホルモン PTH は尿細管において,アデニル酸シクラ ーゼを刺激してサイクリック AMP を産生させる.このホルモンの主な作用は,近位尿細管 でのリン酸の再吸収の抑制と遠位尿細管でのカルシウムイオンの再吸収の促進と活性化ビ タミン D3 (1,25-dihydroxycholecalciferol) 産生の促進である.PTH は腎臓でのカリウム 調節には影響しない. 27 30. 答 D [Ⅸ D 3; 表 5-8 ,表 5-9] 既往歴は呼吸性アシドーシスの原因となる慢性閉塞 性呼吸疾患 COPD を強く示唆する. COPD のために,換気量は少なく二酸化炭素は蓄積して いる.質量作用により血液水素イオン濃度と重炭酸イオン濃度は増加する.血液重炭酸イ オン濃度は,呼吸性アシドーシスに対する腎性代償によってさらに増加する(高い PCO2によ って刺激された腎臓での HCO3−再吸収の促進のため). 31. 答 B ( P CO2 ) [Ⅸ D 4; 表 5-8] 呼吸性アルカローシスでの動脈血の値は,二酸化炭素分圧 低値(アルカローシスの主原因)と,質量作用による血液水素イオン濃度と重炭酸 イオン濃度の減少を示す.慢性呼吸性アルカローシスに対する腎性代償によって,血液重 炭酸イオン濃度はさらに減少する(腎での HCO3− 再吸収の低下のため). 32. 答 E [Ⅸ D 1 ; 表 5-8 ,表 5-9] 慢性腎不全で通常量の蛋白を摂取している患者で は,蛋白質異化により固定酸が産生されている.腎機能の低下は,固定酸排泄のための十 分なアンモニアイオンを生成できないので,結果として代謝性アシドーシス(呼吸性代償を 伴う)を招く. 33. 答 E [Ⅸ D 1; 表 5-8 ,表 5-9] 治療を受けていない糖尿病患者では,代謝性アシ ドーシスの原因となる固定酸であるケト酸が産生される.腎臓での適応性アンモニア生成 の増加が代謝性アシドーシスに,反応して起こるためこの患者では増加している. 34. 答 A [Ⅸ D 2; 表 5-8 ,表 5-9] 嘔吐の既往(他の情報はない)は,胃からの H+の喪 失とそれによる代謝性アルカローシス(代償性呼吸を伴う)を示唆している. 35. 答 E [Ⅴ B 4] カリウムイオンは遠位尿細管終末部と集合管で分泌される.この分 泌は食餌性カリウムイオンに影響されるので,高カリウム食を摂取している人は,もとも と濾過された量以上のカリウムイオン量を尿中に排泄できる.他のすべてのネフロンの部 位では,管腔液中のカリウムイオン量は濾過されたカリウムイオンの量と同じ(部位 A)か, 濾過された量より少ない.(なぜなら近位尿細管とヘンレ脚でカリウムイオンは再吸収され るため) 36. 答 D [Ⅶ B 3; 図 5-15] 水分制限をうけている人は,循環血液中の抗利尿ホルモン ADH 濃度は高い.抗利尿ホルモンの状態に関係なく,近位尿細管を通して管腔液浸透圧 / 血 漿浸透圧比は 1.0 である.抗利尿状態では,大きな皮質乳頭間浸透圧勾配と管腔液が平衡 しているため,部位 C での管腔液浸透圧 / 血漿浸透圧比は 1.0 を越える.部位 E では 集合管からの水再吸収と皮質乳頭浸間透圧勾配との平衡により,部位 E での管腔液浸透圧 / 血漿浸透圧比は 1.0 を越える.太いヘンレの上行脚では水を伴わない NaCl の再吸収が 28 行われるので,部位 D では 管腔液は希釈され,管腔液浸透圧 / 血漿浸透圧比は 1.0 を 下回る. 37. 答 E [Ⅳ A 2] イヌリンは一度濾過されると再吸収も分泌もされないので,管腔液 中のイヌリン濃度は管腔液中に残っている水の量を反映する.抗利尿状態では,水はネフ ロンを通して再吸収されている(太いヘンレの上行脚と皮質希釈部を除いて).従って水が 再吸収されるのでネフロンを通過するにつれて管腔液中のイヌリン濃度は次第に上昇し, 最終尿で一番高くなる. 38. 答 A [Ⅳ C 1 a] ブドウ糖は近位尿細管起始部で大部分ナトリウム-ブドウ糖共輸送 体により再吸収される.管腔液中のブドウ糖濃度は,まだすべての物質の再吸収が起こっ ていないボーマン腔で最も高い. 39. 答 C [Ⅳ A 2] 一度濾過されるとイヌリンは再吸収も分泌もされない.だから,尿 細管の各部でも最終尿でも,濾過されたイヌリンの 100 % が管腔液中に残っている. 40. 答 A [Ⅳ C 1 a] アラニンはブドウ糖と同様に,近位尿細管起始部でナトリウム-ア ミノ酸共輸送体により再吸収される.だから,近位尿細管を通過するにつれアラニンが血 中に再吸収されるので,管腔液中に残っている濾過されたアラニンのパーセントは急速に 減っていく. 41. 答 D [Ⅲ C; Ⅳ A 3] パラアミノ馬尿酸 PAH は,濾過された後,近位尿細管で分泌 される有機酸である.この分泌過程は管腔液中に PAH を排泄する; だからボーマン腔の量 より近位尿細管終末部の量の方が多くなる. 6章 1. 答 D 正解と解説 [Ⅲ A; 図 6-3] 徐波は胃腸平滑筋の静止膜電位の振動である.徐波は膜電位を閾 値の方向へあるいは閾値にまで高めるが,それ自体は活動電位ではない.もし徐波によっ て膜電位が閾値に達すると,そのときは活動電位が起こり収縮が生じる. 2. 答 A [Ⅳ B 1; 表 6-3] 胃壁細胞は HCl と内因子を分泌する.主細胞はペプシノーゲン を分泌する. 3. 答 B [Ⅴ D 4 c] コレラ毒素は腸陰窩細胞のアデニル酸シクラーゼを活性化させて環状 アデノシン一リン酸(cAMP)を増加させる.陰窩細胞では cAMP は Cl- 分泌チャネルを活性化 29 させて Cl- の一次性分泌を生じ,ひきつづいて Na+と H2O が分泌される. 4. 答 D [Ⅱ A 2] 2つのホルモンは C 末端に 5 個の同一のアミノ酸をもっている.コレシ ストキニン(CCK)の生物学的活性は C 末端 7 個のアミノ酸にあり,ガストリンの生物学的活 性はC末端 4 個のアミノ酸に関係がある.CCK ヘプタペプチドは共通の 5 個のアミノ酸をも っているので,論理的に CCK はガストリン様性質をもつはずである.G 細胞はガストリンを 分泌する.I 細胞は CCK を分泌する.セクレチン族にはグルカゴンが含まれる. 5. 答 D [V A-C ; 表 6-4] 果糖は Na+依存性共輸送により吸収されない唯一のモノサッカ ライドである;促通拡散により輸送される.アミノ酸,ジペプチド,ならびにトリペプチ ドは Na+依存性共輸送体により吸収されるが,オリゴペプチド(よりおおきなペプチド単位) はそうではない.トリグリセリドはさらに消化されないと吸収されない.脂肪酸のような 脂質消化の産物は単純拡散により吸収される. 6. 答 C [Ⅳ D 4] 回腸切除は,正常では胆汁酸を腸の管腔から輸送して肝臓に再循環させ る小腸の部位を除去することになる.その(胆汁の輸送・再循環の)過程が胆汁酸の貯蔵を 維持しているので,便の中に失われた胆汁酸を補うためにのみ胆汁酸の新合成が必要であ る.回腸切除とともに便の中に胆汁酸のほとんどが排泄され,肝臓の貯蔵が有意に消失す る.胆汁酸は腸管腔内のミセル形成に必要であり,脂質消化の産物を溶解し吸収できるよ うにする.乳状脂粒は腸上皮細胞の中でつくられ,リンパ管に輸送される. 7. 答 A [Ⅱ A 2 a; 表 6-1].コレシストキニン(CCK)は胃の内容物排出を阻害する.それゆ えに消化活動が活発な間は食物が胃から腸へ送られるのを遅くする. CCK は膵臓の外分泌 機能,HCO3- 分泌ならびに消化酵素の分泌の両方を刺激する.さらに,胆嚢の収縮を引き 起こし,オッディ活約筋を弛緩させて,胆嚢から小腸へ胆汁を送ることを刺激する. 8. 答 C [Ⅲ C 1] 胃の口側部位の「受け入れ弛緩」は食物が食道から胃へ入るとき起こる. この副交感神経性(迷走・迷走神経)反射は迷走神経切断術により消失する. 9. 答 D [Ⅲ D 2] 蠕動は[中枢神経系(CNS)ではなく]腸壁神経系によって調節された収縮活 動であり,腸内容物を前方へと進める.通常,充分に混合,消化,そして吸収が行われた 後に起こる.食塊を前へ進めるために,平滑筋は食塊の後では収縮し,同時に前では弛緩 しなければならない. 10. 答 E [Ⅱ A 1 d; V C 3 b] Zollinger-Ellison(ゾーリンガー・エリソン)症候群(ガス トリン腫瘍)は膵臓の非β細胞の腫瘍である.腫瘍はガストリンを分泌し,ついで循環して 30 胃の壁細胞に至り,増加した H+分泌,消化性潰瘍,ならびに壁細胞の成長(ガストリンの栄 養効果)を引き起こす.腫瘍は膵臓のβ細胞に影響を与えないので,インスリン濃度は影響 されない.脂肪の吸収は減少する(増加ではない).というのは,増加した H+分泌は腸管腔 の pH を減少させて膵臓のリパーゼを不活性化するからである. 11. 答 F [Ⅴ E 1 ; 表 6-4] ミセルは腸管腔の水溶液の中で脂溶性栄養素を水溶化する機 構を与え,その栄養素は運ばれて腸上皮細胞に接触,吸収されることとなる.グリセロー ルは脂質消化の生成物の一つであり,水溶性でミセルに含まれない.ビタミン B12 は水溶性 である;それゆえ,その吸収はミセルを必要としない.ビタミン D は脂溶性であるので, 他の食事性脂質と同じ方法で吸収される.胆汁酸はミセルの主要な成分であるが,回腸で 特異的 Na+依存性共輸送体によって吸収される.ガラクトースとロイシンは Na+依存性共輸 送によって吸収される. 12. 答 A [Ⅲ E 3] 体から便を排泄するためには内ならびに外肛門活約筋は共に弛緩しなけ ればならない.直腸平滑筋は収縮し,腹腔内圧は声門を閉じて呼気によって上昇する(バル サルバ操作).消化ならびに吸収の間分節運動の収縮は小腸で顕著である. 13. 答 A [Ⅳ A 2 a ; 表 6-2] 唾液は低張性ならびに(血漿に比較して)高 HCO3- 濃度,さら にα-アミラーゼと舌リパーゼ(蛋白分解酵素ではない)の存在により特徴づけられる.高 HCO3- 濃度は導管細胞による唾液への HCO3- 分泌によって達成される ( HCO3- の再吸収によ るのではない).唾液産生の調節は副交感神経性であり,迷走神経切断術により消失する. 14. 答 B [Ⅳ B 3 b, d (1), 6] シメチジンは壁細胞における H2受容体の可逆的阻害剤で あり H+分泌を阻止する.環状アデノシン一リン酸(cAMP)[ヒスタミンに対する第 2 伝達物質] の濃度は増加でなく減少すると推測される.シメチジンは H+を分泌するアセチルコリンの 作用も阻止する.オメプラゾールは H+, K +-アデノシン三リン酸分解酵素(ATPase)を直接阻 止する. 15. 答 D [Ⅱ A 2, 3 ; 表 6-2] 膵分泌の主な陰イオンは HCO3−であり(血漿よりも高い濃 度であり),Cl- 濃度は血漿よりも低い.膵分泌は十二指腸に脂肪酸があると刺激される. (ガ ストリンではなく)セクレチンが膵臓の HCO3−分泌を刺激し,コレシストキニン(CCK)は膵臓 の酵素分泌を刺激する.膵臓の分泌は常に等張性であり,分泌速度とは無関係である. 16. 答 B [V A, B ; 表 6-4] 単糖類のみ腸の上皮細胞により吸収される.ショ糖のような 二糖類は吸収される前に単糖類に消化されなければならない.一方,蛋白質は加水分解さ れてアミノ酸,ジペプチド,あるいはトリペプチドになり,これら 3 つの形はすべて吸収 31 のために腸の細胞へ輸送される. 17. 答 D [Ⅱ C 1] 血管作動性腸ペプチド(VIP)は胃腸(GI)のニューロクリン(神経分泌)で あり,胃腸の平滑筋の弛緩をおこす.例えば,VIP は食物塊が近づいた食道下部活約筋の弛 緩反応を引き起こさせ,食物塊が胃に送られるようにする. ガストリンの主な生理的作用は H+分泌を増加させることであ 18. 答 B [Ⅱ A 1 ; 表 6-1] る.H+分泌は胃内容物の pH を減少させる.つぎに,減少した pH はガストリンがさらに分 泌されることを抑制する.これは負のフィードバックの古典的な一例である. 19. 答 A [Ⅱ A セクレチンは胃の内容物(特に H+ならびに脂肪酸)が十二指腸 3 ; 表 6-1] に送られるときに放出される.十二指腸の pH が低いとセクレチンの分泌が起こる.ついで, セクレチンは膵液の分泌を引き起こし,膵液は HCO3−を高濃度に含むので,十二指腸管腔内 の H+を中和する. 20. 答 E [Ⅱ A 4 ; 表 6-1] 胃抑制性ペプチド(GIP)は三大栄養素−脂肪,蛋白質,炭水化 物に反応して放出される唯一の胃腸ホルモンである.経口ブドウ糖は GIP を放出させ,つ ぎに膵内分泌腺からインスリンの放出を引き起こす.この GIP の作用はなぜ経口ブドウ糖 が静脈注射のブドウ糖よりもインスリン放出に効果があるのかを説明する. 21. 答 B [Ⅳ B 1 ; 表 6-3; 図 6-7] 内因子は胃底部の壁細胞から分泌される(HCl も同様). それは回腸でビタミン B12 とともに吸収される. 22. 答 E [V D 2] K+は小腸で再吸収され,結腸で分泌される.その分泌機構は腎臓の遠位 尿細管のものに似ている(アルドステロンで刺激され;分泌速度に依存する). 23. 答 A [Ⅱ A 1 b ; 表 6-3; 図 6-7].ガストリンは胃幽門洞の G 細胞から分泌される.HCl と内因子は胃底部から分泌される. 7章 正解と解説 1.答 B [ Ⅹ E 3 ; 図 7-20] 曲線 A は基礎体温の変化を示す.体温の上昇は月経周期 の黄体(分泌)期における血漿プロゲステロンレベルの上昇の結果起こる.プロゲステロンは 視床下部の体温調節中枢のセットポイント(設定点)を上昇させる. 2 .答C [ Ⅹ E 3;図 7-20] プロゲステロンは月経周期の黄体期に分泌される. 3 .答D [ Ⅹ A ,E 1;図 7-20] 曲線は血液のエストラジオールレベルを示す.C点で示 32 されたエストラジオール濃度の上昇の源はアロマターゼを高濃度に含み,テストステロン をエストラジオールに転換する卵巣の顆粒膜細胞に由来する. 4 .答C [ Ⅹ E 3 ;図 7-20] 曲線は血液のエストラジオールレベルを示す.月経周期の 黄体期では,エストラジオールは黄体に由来する.黄体は子宮が受精卵を受け入れる準備 をする. 5 . 答 E [ Ⅹ E 2;図 7-20] 点Eは月経周期の中期において,排卵を起こす黄体形成ホ ルモン(LH)のサージを示す.LH サージは発達しつつある卵胞から分泌されるエストロゲン レベルの上昇に起因する.増加したエストロゲンはポジティブフィードバックによって下 垂体前葉の LH と卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を刺激する. 6 . 答 D [ Ⅶ B 3 b] 血液の Ca2+濃度の低下と血液リン酸濃度の上昇は副甲状腺機能低 下時に見られる.副甲状腺ホルモン(PTH)の欠乏は骨の吸収の減少,腎臓での Ca2+の再吸 収の減少,腎でのリン酸の再吸収を増加させる(尿へのリン酸排泄量が減少する).患者は外 来性 PTH と反応して,尿への環状アデノシン 1 リン酸(cAMP)の排泄量が増加する.PTH 受容体とアデニル酸シクラーゼを結合させる G 蛋白は正常である.したがって偽副甲状腺 機能低下症は除外される.ビタミン D 中毒は高カルシウム血を起こすが,低カルシウム血 を起こすことはない.ビタミンD欠乏は低カルシウム血と低リン酸血を起こす. 7 . 答 A [ Ⅱ E;表 7-2] 甲状腺ホルモンはヨウ素を含むアミノ酸であり,標的組織に ステロイドホルモンと同じ機構で作用し,新しい蛋白質の合成を誘導する.抗利尿ホルモ ン(ADH)の集合管(V2 受容体)に対する作用は環状アデノシン 1 リン酸によって仲介される. しかし ADH の他の作用(血管平滑筋,V1 受容体)はイノシトール 1,4,5-3 リン酸(IP3)により 仲介される.副甲状腺ホルモン(PTH),β1 作動薬とグルカゴンはすべて cAMP 作用機構に よって作用する. 8 . 答 C [ Ⅲ B 4 a (1) , c (2)] ブロモクリプチンはドーパミン作動薬である.下垂体 前葉のプロラクチンの分泌は,視床下部からのドーパミンの分泌により,緊張性の抑制を 受けている.ドーパミン作動薬はドーパミンと同様に作用し,下垂体前葉のプロラクチン の分泌を抑制する. 9 .答 E [ Ⅲ B ;表 7-1] 甲状腺刺激ホルモン ( TSH ) は下垂体前葉から分泌される.ド ーパミン,成長ホルモン放出ホルモン ( GHRH ),ソマトスタチン,性腺刺激ホルモン放出 ホルモン( GnRH ) はすべて視床下部で分泌されている.オキシトシンは下垂体後葉から分 泌され,テストステロンは精巣から分泌される. 10 .答A [ Ⅸ B 2, 3 ] インヒビンは,セルトリー細胞が卵胞刺激ホルモンにより刺激さ れるとき,セルトリー細胞で産生される.インヒビンは下垂体前葉に対するネガティブフ ィードバックにより,それ以上の FSH の分泌を抑制する.ライディッヒ細胞はテストステ ロンを合成する.テストステロンは卵巣で芳香化される. 11 .答A [ Ⅲ B 1,2;図 7-6 ] プロオピオメラノコルチン ( POMC ) は,下垂体前葉中の 副腎皮質刺激ホルモン ( ACTH ) ,β-エンドルフィン,α-リポトロピンとβ-リポトロピ ンの [そして中葉のメラニン細胞刺激ホルモン ( MSH ) の ] もとになる物質である.卵胞 刺激ホルモン ( FSH ) はこのファミリーに属していない.FSH は甲状腺刺激ホルモン ( TSH ) と黄体刺激ホルモン ( LH ) のファミリーに属している.MSH は POMC と ACTH の成分となっており,メラニンの形成を刺激する.コルチゾールとデヒドロエピア 33 ンドステロンは副腎皮質で産生される. 12 .答D [ Ⅲ B 3 a ] 成長ホルモンは脈動的に分泌され , 睡眠中は大量に分泌される ( 睡眠の 3 段階と 4 段階 ) 成長ホルモンの分泌は睡眠,ストレス,思春期,飢餓,低血糖 のとき増加する.ソマトメジンは成長ホルモンがその標的組織に作用するときに,産生さ れる.ソマトメジンは下垂体前葉からの成長ホルモンの分泌を直接的および間接的 ( ソマ トスタチンの放出を促進することによって ) に抑制する. 13 .答A [ Ⅴ A 1;図 7-11 ] アルドステロンはコルチコステロンをアルドステロンに転 換させる酵素 ( アルドステロンシンターゼ ) を含む副腎皮質の球状帯で産生される.コル チゾールは束状帯で産生される.アンドロステネジオンとデヒドロエピアンドロステロン は網状帯で産生される.テストステロンは精巣で産生されるが,副腎皮質では産生されな い. 14 . 答 D [ Ⅹ F 5 ] 妊娠中は循環血中の高いエストロゲンレベルがプロラクチンの分泌 を刺激するが,乳腺に及ぼすプロラクチンの作用はプロゲステロンとエストロゲンによっ て抑制される.分娩後にプロゲステロンとエストロゲンのレベルは劇的に減少する.プロ ラクチンは乳腺の受容体と相互作用を起こし,乳汁分泌は,乳首の吸飲が開始されると続 けて起こる. 15 .答B [ Ⅶ B 2 ] 副甲状腺ホルモン ( PTH ) は腎臓遠位尿細管における Ca2+の再吸収 と 1α-ヒドロキシラーゼを刺激する.PTH は腎臓の近位尿細管でのリン酸の再吸収を抑制 し ( 刺激しない ) 尿中の環状アデノシン 1 リン酸 ( cAMP ) を増加させる.PTH の受容 体は基底側の膜にあり,管腔側の膜にはない. 16 .答C [ Ⅴ A 5 b ] この女性は原発性の副腎皮質刺激ホルモン( ACTH )の上昇の標 準的( 古典的 ) な症状 ( クッシング病 ) をもっている.ACTH の上昇は糖質コルチコイ ドとアンドロゲンの過剰産生を起こす.薬理学的用量の糖質コルチコイドの投与は同様の 症状を起こすが,循環血中の ACTH レベルは,視床下部[副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモ ン( CRH )]および下垂体前葉 ( ACTH ) レベルのネガティブフィードバックによる抑制を 受けて,減少する.アジソン病は原発性の副腎皮質の機能低下により起こる.アジソン病 の患者は ACTH は高いレベルであるが ( ネガティブフィードバックによる抑制がないた め ) 症状は糖質コルチコイドの欠乏によるものであって,過剰によるものではない.下垂 体切除は ACTH の源を除く.クロム親和性細胞腫 ( 褐色細胞腫,副腎髄質腫瘍,副腎髄質 腫瘍 ) はカテコールアミンを分泌する副腎髄質の腫瘍である. 17 .答E [ Ⅶ C 1 ] Ca2+の欠乏 ( 低 Ca2+食または低カルシウム血 ) は 1α-ヒドロキシ ラーゼを活性化して,ビタミン D をその活性型,1,25-ジヒドロコレカルシフェロールへの 転換を触媒する.副甲状腺ホルモン ( PTH ) の増加および低リン酸血もまたこの酵素を刺 激する.慢性腎不全は,病変のある腎組織がビタミン D の活性型を産生できないために起 こる骨軟化症を含む骨疾患の発症に関与している. 18 .答A [ Ⅴ A 2 a (3);表 7-6;図 7-13 ] アジソン病は原発性の副腎皮質機能低下によ り起こる.その結果起こるコルチゾールの産生低下は視床下部と下垂体前葉に及ぼすネガ ティブフィードバックによる抑制を減少させる.これら 2 つの状態は副腎皮質刺激ホルモ ン( ACTH ) の分泌を増加させる.副腎皮質過形成あるいは外来性糖質コルチコイドを投与 された患者は ACTH 分泌に対するネガティブフィードバックによる抑制が増強される. 34 19 .答H [ Ⅳ B 2;表 7-5 ] グレーヴス病(バセドウ病甲状腺機能亢進症)は,甲状腺刺激 ホルモン( TSH ) 受容体に対する,循環血液中の抗体により甲状腺が過剰に刺激されること によって起こる.[ちょうど TSH が作用にするようにトリヨードサイロニン ( T3 ) とサイ ロキシン ( T4 ) の産生と分泌が増加する].それゆえ,グレーヴス病の徴候と症状は,甲状 腺機能亢進状態と同じであり,循環血液中の甲状腺ホルモンレベルの上昇を反映している. 熱産生量の増加,体重の減少,酸素消費量の増加,分時心拍出量の増加,眼球突出(膨張し た眼,下垂できない瞼)と甲状腺の肥大 ( 甲状腺腫 ) がある.TSH レベルは T3 レベルの上 昇による下垂体前葉に対するネガティブフィードバック効果の結果低下する ( 増加でな い). 20 .答B [ Ⅲ C 2 ] 乳首の吸引と子宮頸部の拡大はオキシトシン分泌に対する生理的刺 激である.乳汁の排泄(射出)はオキシトシンの作用によるのであって,乳汁の分泌の結果で はない.プロラクチンの分泌もまた,乳首の吸引によって刺激される.しかし,プロラク チンは直接にはオキシトシンの分泌を起こさない.細胞外液量の減少と高浸透圧は他の下 垂体後葉ホルモン,抗利尿ホルモン(ADH)の分泌に対する刺激となる. 21 .答E [ 表 7-2 ] 性腺刺激ホルモン放出ホルモン ( GnRH ) は,下垂体前葉の細胞に対 してイノシトール 1,4,5-3 リン酸 ( IP3 ) - Ca2+ 機構により作用して,卵胞刺激ホルモン ( FSH )と黄体形成ホルモン ( LH ) の分泌を起こさせるペプチドホルモンである.1,25-ジ ヒドロキシコレカルシフェロールとプロゲステロンは,新しい蛋白の合成を誘導して作用 するコレステロールのステロイドホルモン誘導体である.インスリンは標的細胞にチロシ ンキナーゼ機構により作用する. 副甲状腺ホルモン ( PTH ) はその標的細胞アデニル酸シ クラーゼ環状アデノシン-1 リン酸 ( cAMP ) 機構により作用する. 22 .答D [ Ⅵ C 3;表 7-7 ] インスリンの投与前には,女性は高血糖,糖尿,代謝性アシ ドーシスと代償性の過換気があった.インスリンの注射は血糖値を低下(細胞へのブドウ糖 の取り込みの増加,尿への糖排泄量の減少(血糖値の低下による二次的効果),血液 K+の低 下 ( K+ の細胞への移行 )と代謝性アシドーシスの改善を起こす.代謝性アシドーシスの改 善は血液の pH を上昇させ,代償性の過換気を減じる. 23 .答G [ Ⅹ F 3 ] 妊娠の第 2,第 3 の各3ヵ月間に,胎児の副腎はデヒドロエピアンド ロステロン-硫酸 ( DHEA-S ) を合成する.この物質は胎児の肝臓で水酸化され,胎盤に送 られ,胎盤で芳香化されエストロゲンとなる.最初の3ヵ月間で,黄体はエストロゲンと プロゲステロンの供給源となる. 2 4 . 答 A [ Ⅴ A 2 b ] 血液量の減少は,レニン分泌を刺激する(腎臓の灌流圧が低下 するため).そしてレニン-アンギオテンシン-アルドステロンのカスケードが始まる.アン ギオテンシン変換酵素(ACE)の抑制剤はアンギオテンシンⅡの産生を減少させて,カスケー ドを阻止する.体液の高浸透圧は抗利尿ホルモン( ADH ) [アルドステロンではない]の分泌 を刺激する.高カリウム血 ( 低カリウム血ではない ) は直接副腎皮質からのアルドステロ ン分泌を刺激する. 25 .答B [ Ⅳ A 8;図 7-9 ] サイロキシン ( T4 ) は標的組織のレベルでヨージナーゼ の作用により脱ヨウ素され最も生物学的に活性の強いトリヨードサイロニンが産生される. T4 の代謝産物のひとつは逆 T3 ( rT3 ) で,これは不活性である. 26 .答D [ Ⅳ B 2;表 7-5] グレーヴス病 ( バセドウ病,甲状腺機能亢進症 ) では,甲 状腺は,甲状腺刺激性免疫グロブリン[甲状腺の甲状腺刺激ホルモン ( TSH ) 受容体の抗 35 体]による刺激の結果,大量の甲状腺ホルモンを産生し分泌する.循環血液中の高い甲状 腺ホルモンレベルによって,下垂体前葉の TSH 分泌は止められる(ネガティブフィードバッ ク). 27 .答E [ Ⅳ A 2 ] ヨウ素イオン ( I- ) が有機化される ( 甲状腺ホルモンに入る ) た めには,酸化されて I2 になる必要がある.I2 は甲状腺濾胞細胞膜のペルオキシダーゼによ り生成される.プロピルチオウラシルはペルオキシダーゼを抑制し,そのため甲状腺ホル モンの合成を停止させる. 28 .答 A [ Ⅴ A 2 a (2) ] コレステロールのプレグネノロンへの転換はコレステロール デスモラーゼにより触媒される.ステロイドホルモンに対する生合成のこの段階は副腎皮 質刺激ホルモン ( ACTH ) により刺激される. 29 .答C [ 図 7-12 ] 17-ヒドロキシプレグネノロンのデヒドロエピアンドステロンへの転 換( 同様に 17-ヒドロキシプロゲステロンのアンドロステネジオンへの転換 ) も 17,20-リ アーゼにより触媒される.もしこの過程が抑制されるとアンドロゲンの合成は停止する. 30 .答D [ Ⅹ A ] アロマターゼは卵巣の顆粒膜細胞中に高濃度に存在している.隣接し ている卵胞膜細胞は主としてテストステロンを産生し,テストステロンは芳香化されてエ ストラジオールを合成するために顆粒膜細胞まで運ばれる. 31 .答E [ Ⅸ A ] アンドロゲンの標的組織の一部は 5α-レダクターゼを含んでおり,こ の酵素はテストステロンをこれらの細胞内で活性型のジヒドロテストステロンに転換させ る. 32 .答C [ Ⅵ D;表 7-8 ] ソマトスタチンはランゲルハンス島のδ細胞から分泌され, α細胞(グルカゴン)とβ細胞(インスリン)の分泌を局所的(パラクリン)に抑制するように作 用する. 33 .答A [ Ⅵ C 2 ] 標的組織のインスリン受容体は四量体である.2 つのβサブユニッ トはチロシンキナーゼ活性を持ち,インスリンで刺激されると自己リン酸化される. 34 .答B [ 表 7-9,表 7-10 ] グルカゴンの分泌は他の膵臓ホルモンのインスリンおよび ソマトスタチンにより抑制される.インスリンの分泌もまたソマトスタチンにより抑制さ れるが,グルカゴンによって刺激される.膵臓のリパーゼは膵臓の内分泌腺ではなく,外 分泌腺から分泌される酵素である. 総合問題 正解と解説 1 .答 D [2 章ⅠC,表 2-2] 副腎髄質腫瘍 ( クロム親和細胞腫 ) から分泌されるエピネフ リンの循環血液中のレベル上昇はα-アドレナリンおよびβ-アドレナリン受容体を刺激す る.その結果心拍数と心筋の収縮性が増加し,分時心拍出量は増加する.細動脈は収縮し, 皮膚血流量は減少して,冷たくじっとりした皮膚になるため,全末梢抵抗(TPR)は増加する. 分時心拍出量と TPR の増加はともに,血圧を上昇させる.3-メトキシ-4-ヒドロキシマンデ ル酸 ( VMA ) はノルエピネフリンとエピネフリンの代謝産物である.副腎髄質腫瘍では尿 への VMA の排泄量が増加する. 36 2 .答 D [2 章Ⅰ,表 2-2] 治療は,カテコールアミンのα-刺激およびβ-刺激効果をブロッ ク( 遮断 ) するようになされる.フェントラミンはα1 作動薬である.プロプラノロールは β-阻害薬である.イソプロテレノールはβ1 とβ2 作動薬である.フェニレフリンはα1 作動 薬である. 3 .答 C [ 7 章 Ⅰ D ,Ⅹ E 2 ] 月経中期での下垂体前葉からの卵胞刺激ホルモン ( FSH ) と黄体形成ホルモン ( LH ) の分泌に対するエストロゲンの効果は,生理学的システムの数 少ないポジティブフィードバックの例である.月経中期では上昇したエストロゲンレベル は FSH と LH の分泌増加を起こす.減少した動脈血の PO 2 は末梢化学受容器を介して呼吸 頻度を増加させる.血糖値の上昇は,インスリンの分泌を刺激する.血漿 [ Ca2+ ]の減少は 副甲状腺ホルモン ( PTH ) の分泌を増加させる.血圧低下は ( 圧受容器を介して ) 頚動 脈洞神経の発火速度を減少させ,結局,心臓と血管への交感神経の出力を増加させ,血圧 は正常値に戻る. 4 .答 B [ 3 章 Ⅳ F 3 a,図 3-8,図 3-12 ] 心臓の拍出曲線の下方への移行は,減少し た心筋の収縮性(陰性変力作用)と一致する.右心房圧または拡張期末の体積に対する収縮力 は減少する.ジギタリスは陽性変力作用を有し,心臓の拍出曲線を上方に移動させる.全 末梢抵抗 ( TPR ) の変化は分時心拍出量および静脈還流量を変化させる. 5 .答 A [ 4 章 Ⅳ A 2,C;図 4-7] 胎児ヘモグロビン ( HbF ) は成人ヘモグロビンより 酸素に対する親和性が大きい.ヘモグロビンの酸素解離曲線は左方に移行する.一酸化炭 素中毒は左方への移行を起こすが一酸化炭素は酸素結合部分を占有するので全酸素運搬能 を減少させる ( 酸素飽和度の減少 ).pH の低下,温度の上昇と 2,3-ジホスホグリセレート ( DPG ) の増加は全て,解離曲線を右方に移行させる. 6.答 A [ 4 章 Ⅳ C 2 ] 酸素解離曲線の左方への移行はヘモグロビンの酸素に対する 親和性が増加していることを表す.したがって PO 2 のあるレベルに対して%飽和度は増加し P50 は減少する ( PO 2 の 50%飽和のところを読む ).組織への酸素の放出能力は減少する ( なぜならヘモグロビンの酸素に対する高い親和性のため ).酸素の運搬能力はヘモグロビ ン濃度により決定され,曲線 A から曲線 B への移行には影響を受けない. 7 .答 B [ 5 章 Ⅶ D;表 5-6 ] 陰性の自由水クリアランスをもつヒトは,定義により血 液より高い浸透圧の尿を排泄する ( CH2O =V−Cosm ).夜通しの絶水の後では血漿の浸透 圧は高くなる.この浸透圧の上昇は,視床下部を介して,下垂体後葉から抗利尿ホルモン ( ADH )の放出を刺激する.この ADH は腎臓の集合管まで循環し,水の再吸収を起こし, その結果,高張尿が排泄させる.大量の飲水は ADH の分泌を抑制し,希釈尿を排泄させ, 37 陽性 CH2O となる.リチウムは集合管細胞に対する ADH の反応を阻害して,腎性尿崩症を 起こし,希釈尿を排泄させ,陽性 CH2O となる.選択肢 D では,算出された CH2O の値はゼ ロである.選択肢 E では算出された CH2O の値は正となる. 8 .答 C [ 4 章 Ⅴ B ;図 4-9] 組織で産生された二酸化炭素は静脈血に入り,赤血球 ( RBCs )中で炭酸脱水酵素の存在下で水と反応し H2CO3 を形成する.H2CO3 は H+と HCO3に解離する.H+は赤血球中に残り還元ヘモグロビンにより緩衝される.HCO3- は Cl- と交換 されて血漿中に入る.こうして二酸化炭素は静脈中を HCO3- の形で肺まで運ばれる.肺で は逆反応が起こり,再生された二酸化炭素は排泄される. 9 .答 D [7 章 Ⅹ E 2 ] 月経は,月経の周期の長さにかかわらず,排卵後 14 日後に起こる. したがって月経周期が 35 日の場合,排卵は 21 日目に起こる.月経周期が 28 日の場合だけ, 排卵は月経周期の中間で起こる. 10 .答 B [ 6 章 Ⅱ B 1;7 章 Ⅲ B 3 a (1),Ⅵ D ] ソマトスタチンの作用は多様であ る.ソマトスタチンは,下垂体前葉からの成長ホルモンの分泌を抑制するために,視床下 部から分泌される.ソマトスタチンは胃腸(GI)管から分泌され GI ホルモンの分泌を抑制す る.ソマトスタチンはまた,膵内分泌のδ細胞から分泌され,傍分泌機構により,β細胞 とα細胞からのインスリンとグルカゴンの分泌をそれぞれ抑制する.プロラクチンの分泌 は異なった視床下部ホルモンのドーパミンにより抑制される. 11 .答 D [ 1 章 Ⅱ ] H+‐K+ 輸送は胃の壁細胞の管腔側膜の H+‐K+‐アデノシントリホ スファターゼ ( ATPase ) を介して起こり,これは,ATP により直接エネルギーを与えられ た一次能動輸送過程である.Na+‐ブドウ糖と Na+‐アラニン輸送は二次能動輸送で直接に は ATP を使わない共輸送(シンポート)の例である.ブドウ糖の筋細胞での取り込みは促進 拡散により起こる.Na+‐Ca2+交換は逆輸送(アンティポート)の例で,二次能動輸送の過程 である. 12 .答 C [ 5 章 Ⅶ D 3;表 5-6 ] この患者の多尿に対する最も適切な説明は高カルシウ ム血である.強い高カルシウム血では,Ca2+は腎臓の内部髄質と乳頭に蓄積し,アデニル 酸シクラーゼを抑制し水透過性に対する ADH の効果を阻止する.ADH の効果がないので, 尿を濃縮することができない.そして患者は希釈された大量の尿を排泄する.患者の多飲 は多尿の二次的なものである.そしてこれは,血漿の高浸透圧によって起こる.心理的原 因による飲水も,また多尿を起こす.しかし,血漿の浸透圧は正常より低く,決して正常 より高くはない. 38 13 .答 A [ 5 章 Ⅵ C ] サイアザイド利尿薬は腎臓の遠位尿細管で Ca2+の再吸収を増加さ せるので,強い高カルシウム血の患者には禁忌である.一方,ループ利尿薬は Ca2+と Na+ の再吸収を抑制し,カルシウム排泄量を増加させる.輸液により体液が元の状態に戻され るときには,ループ利尿薬は効果的に早く血漿[Ca2+]を低下させる.カルシトニン,ミトラ マイシン,エチドロネート 2 ナトリウムは骨の吸収を抑制し,その結果血漿[Ca2+]を低下 させる. 14 .答 B [ 7 章 表 7-2 ] オキシトシンは乳腺の筋上皮細胞をイノシトール 1,4,5-トリホス フェート(IP3)- Ca2+機構で収縮させる.ソマトメジン[インスリン様成長因子( IGF )]は,イ ンスリンと同様に,標的細胞にチロシンキナーゼを活性化させることによって作用する. 抗利尿ホルモン ( ADH ) は腎臓の集合管の V2 受容体に環状アデノシンモノホスフェート ( cAMP ) 機構で作用する(血管平滑筋に対しては V1 受容体に IP3 機構で作用する).副腎皮 質刺激ホルモン ( ACTH ) もまた cAMP 機構を介して作用する.甲状腺ホルモンは新しい 蛋白の合成[例えば,Na+‐K+‐アデノシントリホスファターゼ(ATPase)]をステロイドホ ルモンの機構で誘導する. 15 .答 E [1 章 Ⅵ B;Ⅶ B;表 1-3] 咽頭は骨格筋よりなり,小腸平滑筋は単位平滑筋よ りなる.平滑筋と骨格筋の差は Ca2+より始まる収縮機構にある.平滑筋では Ca2+はカルモ ジュリンと結合し,骨格筋では Ca2+はトロポニン C と結合する.平滑筋も骨格筋も活動電 位によって興奮し,収縮する.緩徐な波は平滑筋にあって,骨格筋にはない.平滑筋も骨 格筋も重要な興奮(活動電位)と収縮の連鎖には細胞内[Ca2+]の増加が必要である.そして 両者とも収縮中にアデノシン 3 リン酸(ATP)を消費する. 16 .答 B [ 5 章 Ⅸ D;表 5-9 ] 動脈血の値と身体的所見は代謝性アシドーシス,低カ リウム血と体位変換性低血圧と一致している.下痢は胃腸 ( GI ) 管からの HCO3- と K+の 損失と関連しており,検査結果と一致している.低血圧は細胞外液(ECF)量の減少を伴う. 嘔吐は代謝性アルカローシスと低カリウム血を起こす.ループ利尿薬またはサイアザイド 利尿薬による治療は,体液量の減少と低カリウム血を起こすが,代謝性アシドーシスでは なく代謝性アルカローシスを起こす. 17 .答 D [ 6 章 Ⅴ B 1 c ] ペプシノーゲンは胃の主細胞から分泌され,胃の低い pH ( 胃 の壁細胞から分泌される HCl により低くなる ) によって活性化されて,ペプシンとなる. リパーゼは低い pH によって不活性化される. 18 .答 B [ 5 章 Ⅱ C 6;表 5-3 ] 糸球体濾過量は糸球体毛細血管壁を横切るスターリング の平衡によって決定される.輸出細動脈の収縮は糸球体毛細血管の血液の静水圧を増加さ 39 せて ( 血液は糸球体毛細血管からの流出を制限されるから)濾過を起こしやすくする.輸入 細動脈の収縮は逆の効果を及ぼし,糸球体毛細血管の血液の静水圧を低下させ濾過を抑え る.尿管の収縮は尿細管内液の静水圧を増加させて,濾過を妨げる.血漿蛋白濃度の増加 は,糸球体毛細血管内の血漿膠質浸透圧を増加させて濾過を妨げる.イヌリンは血管内に 注入して GFR を測定するために使われるがスターリングの力は変えない. 19 .答 B [ 6 章 Ⅴ C 1, 2 ] 最初に,脂肪の吸収には食物中の脂質が十二指腸で膵液のリ パーゼで,脂肪酸,モノグリセリド,コレステロールまで分解される必要がある.第二に 脂肪の吸収には胆嚢から小腸に放出される胆汁酸の存在が必要である.これらの胆汁酸は, 脂質の消化産物の周囲にミセルを形成し,小腸細胞の吸収表面に供給する.胆汁酸は回腸 から肝臓に再循環するので,脂肪分解は糜汁が回腸の終末に到達する前に完成する. 20 .答 A [ 7 章 Ⅸ A;図 7-17 ] テストステロンはいくつかの標的組織でさらに活性の強 い物質 ( ジヒドロテストステロン ) に変換される.トリヨードサイロニン ( T3 ) は甲状腺 ホルモンの活性型である.逆トリヨードサイロニン ( rT3 ) は T3 の不活性型である.アン ギオテンシンⅠはアンギオテンシン変換酵素 ( ACE ) によって活性型のアンギオテンシン Ⅱに変換される.アルドステロンは副腎皮質の球状帯から分泌された後に変化しない. 21 .答 A [ 7章 ⅢB] 正常の月経は下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン ( FSH ) と黄体形成ホルモン分泌に依存している.絶水に反応する尿の濃縮は下垂体後葉からの抗 利尿ホルモン ( ADH ) の分泌に依存している.カテコールアミンは,ストレスに反応して 副腎髄質から分泌されるが,下垂体前葉ホルモンは関与していない.下垂体前葉ホルモン は直接には膵臓のβ細胞に対するブドウ糖の効果と副甲状腺の主細胞に対する Ca2+の効果 には関与していない. 22 .答 B [ 5 章 Ⅲ B ] 曲線 X,Y と Z はブドウ糖の濾過,ブドウ糖の排泄およびブドウ 糖の再吸収を示している.血漿[ブドウ糖]が 200mg/dL 以下では,ブドウ糖の再吸収の担 体は飽和していないので濾過されたブドウ糖は全て再吸収され,尿中に排泄されない. 23 .答 D [ 2 章 Ⅲ C 1;図 2-9 ] 膝蓋腱が伸展されると,四頭筋もまた伸展される.こ の動きは筋中で平行に配置されている筋紡錘の Ia 求心性線維を活性化する.その結果α運動ニューロンのプール(集合)は活性化され四頭筋は反射により収縮し,安静時の長さに戻 る. 24 .答 A [ 2 章 Ⅵ C ] 化膿性連鎖球菌はマクロファージ中のインターロイキン-Ⅰ ( IL-1 ) の産生増加を起こす.IL-1 は前視床下部に作用してプロスタグランジンの産生を増加させ, 40 プロスタグランジンが視床下部の体温調節の設定温度を上昇させる.視床下部は中枢温を 新しい設定温度より低いと解釈して体温を上昇させる(発熱)種々の熱産生機構を活性化す る.この機構には寒冷ふるえと皮膚血管の収縮が含まれる. 25 .答 C [ 2 章 Ⅵ C 2 ] アスピリンはシクロオキシゲナーゼを抑えることによって,プロ スタグランジンの産生を抑制し,視床下部の設定温度をもとの値まで低下させる.アスピ リンの投与後は,視床下部は体温を設定温度より低いと解釈して発汗や皮膚血管の拡張な どの体熱放散機構を活性化する.この血管の拡張は,血液を短絡して皮膚表面に移動させ る.熱がこれらの機構により身体より放散されると体温は下降する. 26 .答 E [2 章 Ⅱ A 4;図 2-2 ] 感覚受容器 ( 例えばパチニ小体 ) の受容器ポテンシャル は活動電位ではないので常同的な大きさと形または活動電位の全か無かの性質をもってい ない.そればかりか受容器ポテンシャルは刺激の大きさによって大きさが変化する等級の あるポテンシャルである.過分極している受容器ポテンシャルは膜電位を閾値から遠ざけ て,活動電位を起こりにくくする.脱分極しているポテンシャルは膜電位を閾値に近づけ, 活動電位を起こりやすくする. 27 .答 B [ 3 章 Ⅶ C ] 駆動力は毛細血管を横切るスターリングの力から算出できる.正 味の圧= ( Pc‐Pi ) − ( πc−πi ) である.したがって正味の圧= ( 32mmHg−2 mmHg ) −27 mmHg=3 mmHg となる.正味の圧が正となっているから濾過が行われる. 28 .答 A [ 3 章 Ⅶ C;表 3-2 ] 細動脈の収縮は毛細血管の静水圧を減少させ,その結果 毛細血管壁を横切る正味の圧 ( スターリングの力 ) は減少する.濾過,浮腫傾向は減少す る.静脈の収縮と立位は静脈の静水圧を上昇させ,濾過と浮腫を起こす傾向が生じる.ネ フローゼ症候群では尿中に血漿蛋白質が排泄され,毛細血管の血液の膠質浸透圧が減少し, 濾過量が増え,浮腫が起こる.炎症は小動脈を拡張させ,局所の浮腫を起こす. 29 .答 C [ 3 章 Ⅲ A ] R 波がなく,変形した QRS があるので,活性化 ( 興奮 ) は洞房 ( SA )結節では始まっていない.もし心拍が房室 ( AV ) 結節の興奮で生じているとすれば, QRS 複合は心室は正常の順序で活性化されるので,正常の形をしている.したがって,心 拍はヒス‐プルキンエ系の興奮で生じている.変形した QRS 複合の形は心室の不適当な活 性化の順序を反映している.心室筋はペースメーカーの性質をもっていない. 30 .答 B [ 3 章 Ⅸ B;表 3-5 ] 中等度の運動は,心臓と血管の交感神経の出力を増加さ せる.心臓に対する交感神経の効果は心拍数と心筋の収縮性の増加を起こす.心筋の収縮 性の増加は駆出量の増加を起こす.脈圧は駆出量の増加の結果,増加する.静脈還流量は 41 筋活動のため増加する.この増加した静脈還流はフランク‐スターリング機構によってさ らに駆出量を増加させる.全血管抵抗(TPR)は,交感神経による血管への刺激のため,増加 していることが推察される.しかし,運動している筋中に生じた局所の代謝産物は局所の 血管を拡張させ,交感神経の血管収縮効果を上回る.その結果 TPR は減少する.動脈血の PO 2 は,中等度の運動中は酸素消費量が増加しても低下しない. 31 .答 D [ 3 章 Ⅸ C;表 3-6;図 3-18] 事故で起こる血液の損失 ( 出血 ) は動脈血圧の 低下をもたらす.動脈血圧の低下は,頚動脈の圧受容器によって検出され,頚動脈洞神経 の発火の割合が減少する.圧受容器の反応の結果,心臓と血管への交感神経の出力は増加 し,心臓への副交感神経の出力は減少する.これらの変化は,ともに心拍数の増加,心筋 の収縮性の増加,全末梢血管抵抗 ( TPR ) の増加 ( 動脈血圧の回復を行うために ) を起こ す. 32 .答 B [3 章 Ⅸ C;表 3-6;図 3-18;5 章 Ⅳ C 3 b (1) ] 血液量の減少は腎臓の灌流圧 を低下させ,レニン分泌の増加,循環血のアンギオテンシンⅡの増加,アルドステロン分 泌の増加,腎臓の尿細管での Na+の再吸収量の増加と K+分泌量の増加といったカスケード ( 連鎖反応 ) を開始させる. 33 .答 D [ 4 章 Ⅰ A,B ] 残気量は最大呼息あるいは肺活量 ( キャパシティ,VC ) を呼 出した後に肺の中に存在する気体量である.したがって,残気量は1回換気量 ( TV ),VC, 予備吸気量 ( IRV ) または吸気キャパシティ ( LC ) には含まれていない.機能的残気量 ( キャパシティ,FRC)は正常換気量を呼出した後に肺に残っている気体量であり,したが って残気量を含んでいる. 34 .答 D [ 3 章 Ⅷ C−F,表 3-3 ] 肺循環と冠状循環は Po2 により調節される.しかし, 根本的な差異は,低酸素は冠状循環では血管を拡張させるが,肺循環では血管を収縮させ るところにある.脳と筋の循環は主として局所の代謝産物により調節されている.そして 皮膚循環は主として,交感神経の支配により ( 体温の調節のために ) 調節される. 35 .答 D [ 3 章 Ⅵ D ] 左から右への心臓のシャント ( 短絡 ) があるヒトでは,左心室の 動脈血が右心室の静脈血と混合される.そのため,肺動脈の Po2 は正常値より高くなり,体 循環の動脈血は正常の Po2 の値,100mmHg,をもっていると推定される.気管支喘息の発 作中は Po2,は気流に対する抵抗の増加のため,低下する.高地では,動脈血の Po 2 は,吸 気の Po2 が低いために低下する.右から左への心臓のシャントのあるヒトでは動脈血の Po2 は,血液が右心室から左心室へ,酸素化あるいは動脈血化されることなく,短絡するため に低下する.肺線維症では,肺胞膜を横切る酸素の拡散量は減少する. 42 36 .答 A [ 6 章 Ⅱ A 2 a ] 十二指腸の切除は,胃腸 ( GI ホルモンであるコレシストキニ ン( CCK ) )とセクレチンの分泌場所を取り除くことになる.CCK は胆嚢の収縮を刺激する ( それゆえ胆汁酸は小腸に排泄される ) 働きがあるので,脂質の吸収量は減少する.CCK はまた,胃内容の十二指腸への移行を抑制するので,十二指腸の切除は胃内容の排出を促 進させる ( 胃内容排出時間の短縮 ). 37 .答 B [ 6 章 Ⅴ A 2 b ] 単糖類 ( ブドウ糖,ガラクトース,果糖 ) は吸収可能な 糖質の形である.ブドウ糖とガラクトースは Na +依存性の共輸送により吸収される.果糖 は促進拡散により吸収される.ジペプチドと水溶性のビタミンは十二指腸で Na +依存性の 共輸送によって吸収され,胆汁酸は回腸で Na+依存性共輸送で吸収される(脂肪酸は肝臓へ リサイクルされる).コレステロールは小腸細胞膜を横切って単純な拡散によってミセルか ら吸収される. 38 .答 E [ 3 章 Ⅲ B;図 3-4, 図 3-5 ] 図示されている活動電位は安定した静止膜電位 と 300msec にも達する長いプラトー相をもつた左心室筋に特有なものである.骨格筋の活 動電位はずっと短い( 数 msec ).平滑筋の活動電位は変動する基礎電位の上に乗っている ( 緩徐電位 ).心臓の洞房 ( SA ) 細胞は安定した静止膜電位を持たず,自発的に脱分極 ( ペ ースメーカー活動)する.心臓の心房筋細胞はもっと短いプラトー相と全体にもっと短い持 続時間をもっている. 39 .答 B [ 3 章 Ⅲ B 1 a ] 0 相の脱分極は内向電流 ( 正の電荷が細胞内へ動くと定義 される ) によって起こる.心室筋の活動電位の 0 相は,心室筋細胞膜の Na+チャネルが開 き Na+が細胞内に動き,膜電位の脱分極は Na+の平衡電位 ( 約+65mV ) に近づく,洞房 ( SA )細胞では 0 相は Ca2+の内向電流によって起こる. 40 .答 D [ 3 章 Ⅲ B 1 c ] プラトー相は定義により,膜電位が安定している期間で, 内向きと外向き電流が等しく,両者が平衡している.2 相では Ca2+チャネルが開いた結果 外向きでなく内向きの Ca2+電流がある.この相では,細胞は他の活動電位の開始に対して 不応である.2 相は相対不応期 ( プラトーより長い ) ではなく絶対不応期に相当する.心 拍数が増加するとき,心室の活動電位の持続時間は,主として 2 相の持続時間の短縮によ り減少する. 41 .答 E [ 3 章 Ⅲ A 4;図 3-3 ] 図示された活動電位は心筋の脱分極と再分極を表してい る.それゆえ,心電図上ではそれは,脱分極 ( Q 波と共に始まる ) と再分極 ( T 波の完成 ) の期間に相当している.この期間は QT 間隔と定義される. 43 42 .答 C [ 2 章 Ⅱ C 4;図 2-5 ] 光が,光受容細胞に当たると次のことを起こす;11-cis ロドプシンの全 trans ロドプシンへの変換;トランスデューシンと呼ばれる G 蛋白の活性 化;環状グアノシンモノホスフェート(cGMP)の 5’-GMP への変換を触媒するホスホジエス テラーゼを活性化し,cGMP を減少させる;cGMP レベルの低下による Na+チャネルの閉 鎖;光受容器の過分極;興奮性または抑制性神経伝達物質の放出が起こる. 43 .答 C [ 4 章 Ⅶ C;表 4-5 ] 立位のヒトでは換気量と血液の灌流量は肺の尖端部より 低部の方が多い.しかし,血液の灌流量の局所差は換気量の局所差より大きい.換気量/灌 流量 ( 血流量 ) ( V/Q ) 比は肺の低部より尖端部の方が大きい.大きい V/Q 比はガス交換 の効率を高めるので,肺の毛細血管中の血液の Po2 は肺の低部より尖端部の方が高い. 44 .答 B [ 5 章 Ⅲ D ] ブドウ糖は正常の血液濃度では,濾過され,完全に再吸収される ので,記載されている物質では最も低い腎クリアランスをもっている.Na+もまた大量に再 吸収され,濾過された Na+のほんの一部だけが排泄される.K +は再吸収されるが,分泌も される.クレアチニンは濾過されるだけで,全く再吸収されない.パラアミノ馬尿酸 ( PAH ) は濾過され,分泌もされる.それ故 PAH は,記載された物質のうちでは最も高い腎クリア ランスをもつ. 45 .答 E [ 4 章 Ⅸ A , B;5 章 Ⅸ D ] 慢性閉塞性の肺疾患 ( COPD ) では換気量の減少 が起こる.激しい運動は運動している筋に安静時より多くの酸素を供給するために換気量 を増加させる.高地に登る場合や貧血では低酸素血となり,したがって,末梢化学受容器 が刺激されて過換気を起こす.糖尿病のケトアシドーシスの呼吸性の代償は過換気である. 46 .答 B [ 3 章 Ⅲ E;Ⅵ B ] V1 作動薬は抗利尿ホルモン ( ADH ) の血管収縮効果を刺 激する.サララシンはアンギオテンシン変換酵素 ( ACE ) の抑制薬で,血管収縮作用物質 であるアンギオテンシンⅡの産生を抑制する.スピロノラクトンは,アルドステロンの拮 抗薬で,アルドステロンの腎臓の遠位尿細管における Na+の再吸収効果を阻止し,その結 果細胞外液量を減少させ,血圧を低下させる.フェノキシベンザミンはα効果のブロッカ ー ( 阻害薬 ) でα-アドレナリン刺激による血管収縮効果を 抑制する.アセチルコリン ( ACh ) は内皮細胞由来弛緩因子 ( EDRF ) の産生を介して,血管平滑筋の弛緩による血管 拡張を起こし,血圧を低下させる. 47 .答 B [ 3 章 Ⅵ B ] 本態性高血圧の患者では腎臓の灌流圧の上昇の結果,レニンの分 泌が減少している.うっ血性の心不全や出血によるショックの患者では血管内液量の減少 による腎臓の灌流圧の低下がレニンの分泌を増加させ,アンギオテンシンⅡの生成とアル 44 ドステロンの分泌が増加するので高血圧となる. 48 .答 D [ 5 章 Ⅸ D 4;表 5-9 ] 血液の測定値はヒステリーによる過換気によって起こる 急性呼吸性アルカローシスと一致している.ふるえと無感覚はアルカローシスに対して二 次的に起こる血漿のイオン化された [ Ca2+ ] 減少の症状である.[H+ ] の減少のため,より 少ない H+が血漿蛋白の陰性に荷電された部位に結合し,より多くの Ca2+が血漿蛋白に結合 する. 49 .答 A [ 5 章 Ⅸ D 1;表 5-9 ] 血液の測定値は糖尿病のケトアシドーシスのときに起こ る代謝性アシドーシスに一致している.過換気は代謝性アシドーシスに対する呼吸性の代 償である.尿への NH 4+の排泄量の増加は慢性アシドーシスのときに起こる適応的な NH 3 ( アンモニア ) 合成の増加を反映している.慢性腎不全による二次的代謝性アシドーシス のある患者では NH 4+の排泄量は減少する ( 病的な腎臓の組織のため ). 50 .答 E [ 5 章 Ⅸ D 1;表 5-9 ] 血液の測定値は代謝性アシドーシス ( 算出された pH= 7.34 )と一致している.炭酸脱水酵素の抑制薬の処置は HCO3‐ の排泄量の増加により代謝 性アシドーシスを起こす. 51 .答 F [ 5 章 Ⅸ D 2;表 5-9 ] 血液の測定値と嘔吐の病歴は代謝性アルカローシスと一 致する.換気量の減少は代謝性アルカローシスの呼吸性の代償である.低カリウム血は胃 からの K+の損失と体液量の減少の二次的高アルドステロニズム ( その結果尿への K+の排 泄量が増加する ) の結果により起こる. 52 .答 B [ 5 章 Ⅸ D 1;表 5-9 ] 血液の測定値は呼吸性の代償のある代謝性アシドーシス と一致している.尿への NH 4+の排泄量が減少しているのは,おそらく慢性腎不全が原因で あると思われる. 53 .答 C [ 5 章 Ⅸ D 3;表 5-9 ] 血液の測定値は腎臓によって代償された呼吸性アシドー シスと一致する.腎臓による代償は HCO3- の再吸収量の増加(H+の分泌量の増加を伴ってい る)と血漿[HCO3- ]の増加を含んでいる. 54 .答 C [ 2 章 Ⅰ C 1 d ] アルブテロールはアドレナリンβ2 作動薬である.β 2 受容体が 活性化されると,気管支は拡張を起こす. 55 .答 A [ 2 章 Ⅰ C 1 a ] 血管の平滑筋のアドレナリンα1 受容体が活性化されると,血 管は収縮を起こし,全末梢抵抗 ( TPR ) は増加する. 45 56 .答 D [ 2 章 Ⅰ C 2 b ] アトロピンはコリン作動性ムスカリン受容体をブロック ( 遮 断 )する.唾液の産生は副交感神経系の刺激により増加するので,アトロピンの処置は唾液 分泌を減少させ,口内の乾燥を起こす. 57 .答 E [ 2 章 Ⅰ C 2 a ] アセチルコリン ( ACh ) に対するニコチン受容体は,神経筋 接合部の運動終末板,自律神経節,副腎髄質にある. 58 .答 C [ 5 章 Ⅳ C 2 ] Na+‐K+‐2Cl‐ 共輸送はフロセミドのようなループ利尿薬によ って抑制される.太い上行脚細胞の管腔側細胞膜にある機構である. 59 .答 D [ 5 章 Ⅸ C 1 ] 前部近位尿細管細胞の管腔側細胞膜の Na+‐H+交換輸送は H+ を管腔内に運ぶ.この H+は次に,濾過された HCO3- と結合して H2CO3 を形成する.H2CO3 は CO2 をH2O に解離し,近位尿細管の細胞に移動する.細胞内で CO2 と H2O は H2CO3 になり,さらに H+と HCO3- に分解する.HCO3- ( もとは濾過された HCO3- ) は血液中に再 吸収され,H+は再び,Na+‐H +交換輸送の過程により,さらに濾過された HCO3- の再吸収 を助けるために使われる. 60 .答 E [ 1 章 Ⅱ D ] 一次能動輸送は,アデノシン‐3 リン酸 ( ATP ) の形での代謝エ ネルギー例えば Na+‐K-ポンプ ( Na +,‐K+‐ATPase ) の直接的な供給を必要とする.他 の例では胃の壁細胞の H+,K+‐ATPase と筋小胞体の Ca2+‐ATPase である.Na+チャネ ルは電気化学的勾配による単純拡散で Na+ を輸送させるので,代謝性エネルギーを必要と しない.共輸送(シンポート)と交換輸送(アンティポート)は二次能動輸送の過程であり,細 胞膜を横切って存在する Na+勾配に由来するエネルギーを使う. 61 .答 A [ 1 章 Ⅳ D 2 b ] 活動電位が上向いている間に脱分極によって Na+チャネルが開 く.Na+チャネルが開くとき,Na+は神経細胞内に入り,電気化学的勾配は減少し,膜電位 を Na+の平衡電位に近づけ神経細胞はさらに脱分極する. 62 .答 O [ 7 章 Ⅸ A;図 7-17 ] テストステロンは標的細胞内で 5α-レダクターゼの作用 によって,活性型のジヒドロテストステロンに変換される.この酵素の欠乏は男性二次性 徴と副生殖器(前立腺,副睾丸,性嚢)の発達を妨げる. 63 .答 M [ 7 章 Ⅶ B 2, 3 b ] 副甲状腺ホルモン ( PTH ) の欠乏 ( 副甲状腺機能低下 ) は骨の吸収の減少,腎臓での Ca2+の再吸収の減少,腎臓でのリン酸再吸収量の増加とビタ ミン D の活性型(1,25-ジヒドロキシコレカルシフェロール)産生量の減少を起こす.これら 46 の効果はあいまって血漿(血清)[Ca2+]を減少させ,血漿[リン酸]を増加させる. 64 .答 A [ 7 章 Ⅴ A 2 a (2);図 7-12] 副腎皮質では,副腎皮質刺激ホルモン( ACTH ) はコレステロールデスモラーゼを刺激し,コレステロールのプレグネノロンへの転換を触 媒し,それによって全てのステロイドホルモン生合成の過程を開始させる. 65 .答 J [ 7 章 表 7-2 ] チロシンキナーゼ活性をもっているホルモン受容体はインスリン およびインスリン様成長因子 ( IGF ) の受容体を含んでいる.インスリン受容体のβサブ ユニットはチロシンキナーゼの活性をもつ.そしてインスリンにより活性化されるとき, 受容体は自己リン酸化される.リン酸化された受容体は細胞内の蛋白をリン酸化する.こ の過程は最終的にインスリンの生理的作用を起こす. 66 .答 D [ 7 章 Ⅲ B 4 a, c (2) ] 下垂体前葉でのプロラクチンの分泌は視床下部で分泌 されるドーパミンによって緊張性に抑制される.もしこの抑制が中断される ( 例えば視床 下部‐下垂体路の中断 ) とプロラクチンの分泌は増加して,乳汁漏出が起こる.ドーパミ ン作動薬のブロモクリプトンはドーパミンによる緊張性の抑制を促進しプロラクチンの分 泌を抑制する. 67 .答 A [ 7 章 Ⅲ B 2;図 7-6 ] 下垂体前葉中では,プロオピオメラノコルチン ( POMC ) は副腎皮質刺激ホルモン ( ACTH ),β-リポトロピンとβ-エンドルフィンの前駆物質であ る. 68 .答 N [ 7 章 Ⅲ B 3 a (1) ] ソマトスタチンは視床下部で分泌され,下垂体前葉からの 成長ホルモンの分泌を抑制する.特に,成長ホルモン分泌のフィードバック抑制の多くは, ソマトスタチン ( 抑制ホルモン ) の分泌を刺激することにより起こる.成長ホルモンとソ マトメジンは視床下部からのソマトスタチンの分泌を刺激する. 69 .答 B [ 5 章 Ⅶ C;表 5-6 ] 標的器官 ( 腎臓 ) に抗利尿ホルモン ( ADH ) に対する 抵抗がある場合は腎( 臓 )性尿崩症と呼ばれる.この疾患は,リチウム中毒(集合管細胞の Gs 蛋白を抑制する)または高カルシウム血(アデニル酸シクラーゼを抑制する)により起こる. その結果は,尿の濃縮不能,多尿,血漿浸透圧の上昇(尿での自由水を失うことにより起こ る)である. 70 .答 K [ 7 章 Ⅲ C 2 a (1), (2) ] オキシトシンは,子宮頸部の拡張と授乳に反応して下 垂体後葉から分泌される. 47 71 .答 G [ 7 章 Ⅹ A ] テストステロンは卵巣のテーカ(卵胞膜)細胞内でコレステロール から合成され,卵巣の顆粒膜細胞へ拡散し,そこでアロマターゼの作用によってエストラ ジオールに変換される.卵胞刺激ホルモン ( FSH ) は酵素のアロマターゼを刺激してエス トラジオールの産生量を増加させる. 72 .答 B [ 7 章 Ⅲ C 1 b ] 抗利尿ホルモン ( ADH ) はイノシトール 1,4,5-トリホスフェ ート( IP3 ) と Ca2+のセカンドメッセンジャー機構により V1 受容体を活性化させて,血管 平滑筋の収縮を起こす.出血または細胞外液量の減少は下垂体後葉からの ADH の分泌を 体液量の受容器を介して刺激する.その結果,上昇した ADH レベルは集合管 ( V2 受容 体 )での水の再吸収を増加させ,血管収縮(V1 受容体)を起こして,血圧の維持を助ける. 73 .答 I [7 章 Ⅹ F 2;図 7-21 ] 妊娠の最初の3ヵ月間は,胎盤はヒトの絨毛ゴナドロ ピン( HCG ) を産生し,黄体のエストロゲンとプロゲステロンの産生を刺激する.HCG レ ベルの最大値は妊娠 9 週で,その後減少する.HCG が減少するとき,胎盤が,妊娠の残り の期間,ステロイド合成に対する責任を負っていると推定される. 74 .答 B [ 3 章 Ⅴ A;図 3-15 ] 心房は電気的活性化 ( P 波 ) の後に収縮する.心房の収 縮はある程度心室の充実に貢献し,心室の収縮前に完成しなければならない. 75 .答 E [3 章 Ⅴ;図 3-15] 心房は P 波の間に脱分極し,その後再分極する.心室は QRS 複合の間に脱分極し,T 波の間に再分極する.心房および心室は両者とも T 波が完成した とき完全に再分極している. 76 .答 C [ 3 章 Ⅴ;図 3-15] 僧帽弁は心室の活性化 ( R 波 ) のピークの時閉鎖する.そ して左心室が収縮するとき,左心室は血液を大動脈に駆出するが,左心室内の血液は左心 房には戻らない.心室の収縮前には僧帽弁は開いており,心室は血液を充満することがで きる. 7 7 .答 C [ 3 章 Ⅴ;図 3-15 ] 78 .答 B [ 3 章 Ⅲ C ] 大動脈内圧は左心室が収縮する直前が最も低い. 短い PR 間隔は心室が心房から血液を充たす時間が短縮している ことを示している.その結果,駆出量と脈圧は減少する ( 脈圧は動脈中に駆出される血液 量,すなわち駆出量によって決定される). 79 .答 A [ 5 章 Ⅲ C ] パラアミノ馬尿酸 ( PAH ) は糸球体毛細血管を横切って濾過さ れ,後部近位尿細管の細胞から分泌される.PAH の濾過された量と分泌された量の合計は, 48 その排泄量と等しい.それゆえ,尿細管液中の PAH の最も少ない量は分泌部位より前の糸 球体濾過液中に見出される. 80 .答 E [ 5 章 Ⅲ C;Ⅳ A 2 ] クレアチニンは,イヌリンと同様の特性をもつ糸球体濾 過のマーカーである.尿細管液中のクレアチニン濃度はネフロンに沿った水の再吸収の指 示物質となる.クレアチニン濃度は水が吸収されると上昇する.絶水 ( 抗利尿状態中 ) の ヒトでは,水は集合管を含むネフロンの至る所で再吸収され,クレアチニンの濃度は排泄 された尿で最も高い. 81 .答 A [ 5 章 Ⅸ C 1 a ] HCO3- は濾過され,前部近位尿細管で大量に再吸収される. HCO3- の再吸収が水の再吸収を上回ると,近位尿細管液の[HCO3- ]は減少する.それゆえ [HCO3- ]の最も高い濃度は,糸球体濾過液中で見出される. 82 .答 E [ 5 章 Ⅴ B ] K+は濾過され,近位尿細管とヘンレ係蹄で再吸収される.非常に K+の少ない食物を摂取しているヒトでは,遠位尿細管は K+を再吸収し続けるため,尿細管 液中に存在する K+の量は最後の尿で最も低くなる.K+を多く含んだ食物を摂取したヒトで は K+は遠位尿細管で分泌され,吸収されない. 83 .答 A [ 5 章 Ⅱ C 4 b ] 糸球体濾過液では,尿細管液は血漿に非常に似ている.糸球体 濾過液の組成は血漿蛋白質を含んでいないことを除けば,実際上は血漿のそれと同じであ る.血漿蛋白質は分子が大きく,糸球体の毛細血管を横切って通過することができない. 尿細管液がボーマン嚢の場所を通過すると,尿細管の内面にある細胞によって大きく修飾 される. 84 .答 B [ 5 章 Ⅳ C 1 ] 近位尿細管は糸球体濾過液の約 2 / 3 を等張的に再吸収する.そ れゆえ,糸球体濾過液の 1 / 3 が近位尿細管の終わりの部位で残っている. 85 .答 D [ 5 章 Ⅶ B, C ] 絶水 ( 抗利尿状態 ) や水負荷の条件で,ヘンレ係蹄の太い, 上行脚は水の再吸収なしの食塩の再吸収 (この部分の水の不透過性のため ) という基本的 な機能を行う.こうしてヘンレ係蹄を去る液は,もし最終の尿 ( 排泄される尿 ) が血漿よ り高濃度になっている場合でも,血漿と比べて薄くなっている. 86 .答 B [ 3 章 Ⅱ C, D] 血管の半径の減少はポアズイユの法則 ( 抵抗は半径の4乗に 反比例する ) に述べられているように,抵抗を増加させる.したがって,もし半径が 1/2 まで減少すると抵抗は 24,すなわち 16倍に増加する. 49 87 .答 A [ 3 章 Ⅱ C, D ] 動脈中の血流量は圧差に比例し,抵抗に逆比例する ( Q = ΔP/R). 半径が 1/2 に減少すると抵抗は 16 倍となり,血流量は 1/16 に減少する. 88 .答 D [ 3 章 Ⅱ E ] 動脈のキャパシタンスの減少は,動脈中の一定の血液量に対して, 圧力を増加させる動脈中に駆出される一定の駆出量に対して,最大血圧と脈圧が大きくな る. 89 .答 G [ 3 章 Ⅴ;図 3-15 ] 心拍数が増加すると,心室の収縮と次の収縮の間の時間 ( 心 室が血液の再補充に対する ) は短くなる.大部分の心室の血液充満は“減少した”相に起 こる.この相は心拍数の増加により最も減少しやすい. 90 .答 A [ 3 章 Ⅴ;図 3-15 ] P 波は心房の電気的活性化 ( 脱分極 ) を表わす.心房の収 縮より,いつも電気的活性化が先に起こる. 91 .答 C [ 3 章 Ⅴ;図 3-15 ] 心室の急速駆出期の間,心室が収縮するため,心室内圧は 最高値に達する.大動脈弁は左心室内圧が大動脈圧より高くなったとき開き,血液は,大 動脈中に駆出される. 92 .答 E [ 3 章 Ⅴ;図 3-15 ] 大動脈弁と肺動脈弁の閉鎖により第二心音が発生する.こ れらの弁の閉鎖は心室の駆出期の終わりと心室の弛緩の始まりに相当する. 93 .答 B [ 3 章 Ⅴ;図 3-15] 心室は等容性収縮中,収縮し続けるので,心室内圧は上昇す る.全ての弁は閉鎖しているので,収縮は等容性である.左心室内圧が上昇して大動脈弁 が開くまでは血液は大動脈中に駆出されない. 94 .答 B [ 5 章 Ⅶ C;表 5-6 ] 血漿浸透圧が高く,希釈尿を排泄していて,頭部外傷病歴 があることは,中枢性の尿崩症であることを示唆している.腎臓が外から与えられた抗利 尿ホルモン ( ADH ) [1-デアミノ-8-D-アルギニンバゾプレッシン ( dDAVP ) ]に反応する ことは尿濃縮能の欠陥がある腎(臓)性尿崩症を除外する. 95 .答 E [ 5 章 Ⅶ D 4 ] 自由水クリアランスの値 ( CH2O )が負になることは“自由水” (太い上行脚と前部遠位尿再管の希釈部で作られる ) が集合管で再吸収されたことを示し ている.CH2Oが負であることは循環血液中の抗利尿ホルモン ( ADH ) レベルが高いことと 一致している.血漿が非常に希釈されているときに,ADH レベルが高い理由は ADH が“不 適当に”肺の腫瘍から分泌されているからである. 96 .答 C [ 5 章 Ⅶ C ] リチウムは抗利尿ホルモン ( ADH ) をアデニル酸シクラーゼと連 50 結する G 蛋白を抑制する.その結果,尿を濃縮できなくなる.ADH に対する標的組織に欠 陥があれば ( 腎性尿崩症 ),鼻のスプレーにより外から与えられた ADH はこの病態を矯 正しない. 97 .答 D [ 5 章 Ⅶ A 1;表 5-6;図 5-13 ] 記述されているのは正常なヒトの絶水状態で ある.血漿の浸透圧は不感蒸泄が飲水により補われてないので,正常値より少し高い.血 漿浸透圧の上昇は ( 前視床下部の浸透圧受容器を介して ) 下垂体後葉から抗利尿ホルモ ン ( ADH ) の放出を刺激する.そして ADH は腎臓へ循環し,尿を濃縮するために集合管 からの水の再吸収を刺激する. 98 .答 D [ 5 章 Ⅳ C 3 b (1);表 5-11 ] スピロノラクトンはアルドステロンの拮抗薬とし て作用し,遠位尿細管の Na+の再吸収と K+の分泌を抑制する. 99 .答 A [ 5 章 Ⅸ C 1;表 5-9,表 5-11] 炭酸脱水酵素の抑制薬であるアセタゾールアミ ドは高地に登るときに起こる呼吸性アルカローシスの治療に用いられる.この薬は,腎臓 の近位尿細管で濾過された HCO3- の再吸収を抑制し,アルカリ尿が排泄され,軽度の代謝 性アシドーシスを起こす. 100 .答 B [ 5 章 Ⅳ C 3 a,Ⅵ C 2;表 5-11 ] サイアザイド系利尿薬は前部遠位尿細 管 ( 皮質希釈部分 ) に作用して Na+の再吸収を抑制する.これらの薬は,同時に Ca2+の再 吸収を促進するので,Na+の尿への排泄が増加するが Ca2+の尿への排泄量は減少する.K+ の排泄量は,遠位尿細管で K+を分泌する部位の流量が増加するので増加する. 101 .答 B [ 6 章 Ⅴ E 1 c;表 6-3] 胃の壁細胞は内因子を分泌する.この因子は小腸での ビタミン B12 の吸収に必要である. 102 .答 A [ 6 章 Ⅳ A 2-4 a] 唾液は,唾液排出管の内面にある細胞が HCO3- を分泌する ので高い [HCO3- ]をもっている.排出管の細胞は比較的水の透過性が低く,分泌 ( K+ と HCO3- )より溶質 ( Na + と Cl- ) の吸収の方が多いため,唾液は低張液となる.迷走神経の 刺激は唾液の産生量を増加させる.迷走神経切断(またはアトロピン)は唾液分泌を抑制し口 腔の乾燥を起こす. 103 .答 C [ 6 章 Ⅱ A 3 a;Ⅳ C 1 ] セクレチンは膵液の酵素 (すなわちリパーゼ,コレ ステロールエステルデスモラーゼ,膵ホスホリパーゼ A2 ) の分泌を刺激する.これらの酵 素は摂取された脂質を吸収できる形に変換するのに必要である. 51 104 .答 B [ 6 章 Ⅱ A 1 c;Ⅳ B 4 a ] 胃内容物の pH が低いときは,胃の幽門洞の G 細胞からのガストリンの分泌が抑制される.ガストリンの分泌が抑制されるとき,壁細胞 からのさらなる胃の HCl 分泌は抑制される.膵液の分泌は十二指腸内容物の低い pH によ り刺激される. 105 .答 C [ 3 章 Ⅵ C 4 ] 心房性ナトリウム利尿ペプチド ( ANP ) は細胞外液量の増加に 反応して,心房から分泌され,ついで腎臓に作用して,Na+と水の排泄量の増加を起こす. 106 .答 E [ 5 章 Ⅵ B ] 副甲状腺ホルモンは腎臓の近位尿細胞の細胞内でアデニル酸シク ラーゼを活性し,環状アデノシンモノホスフェート ( cAMP ) を産生する.蛋白キナーゼの 活性化により,cAMP は近位尿細管の Na+‐リン酸共輸送の抑制を起こし,リン酸の再吸 収を抑制する. 107 .答 A [ 7 章 Ⅲ C 1 b ] 抗利尿ホルモン ( ADH ) は腎臓の集合管 ( V2 受容体 ) の水 の再吸収増加を起こすだけでなく,血管平滑筋 ( V1 受容体 ) の収縮も起こす. 108 .答 A [ 7 章 Ⅴ A 2 b;図 7-12 ] アンギオテンシンⅡは,コルチコステロンのアル ドステロンへの変換を触媒するアルドステロンシンターゼ(合成酵素)を刺激して,アル ドステロンの産生を増加させる. 109 .答 D [ 7 章 Ⅴ A 1 ;図 7-12 ] 17,20-リアーゼは糖質コルチコイドのデヒドロエピ アンドロステロンやアンドロステネジオンなどの男性ホルモン作用のある物質への変換を 触媒する.これらの男性ホルモン作用のある物質は副腎皮質と精巣ライディヒ細胞におけ るテストステロンの前駆物質である. 110 .答 B [ 7 章 Ⅹ A ] アロマターゼは卵巣の顆粒膜細胞内でテストステロンのエストラ ジオールへの変換を触媒する.エストラジオールは女性の二次性徴の発達のために必要で ある. 111 .答 E [ 7 章 Ⅸ A ] 5α-レダクターゼはテストステロンのジヒドロテストステロンへ の変換を触媒する.ジヒドロテストステロンはいくつかの男性副性器 ( 例えば前立腺 ) で の活性のあるアンドロゲンである. 112 .答 B [ 7 章 Ⅳ A 2 ] I- が酸化されて I2 となる反応は,ペルオキシダーゼによって触 媒されプロピルチオウラシルによって抑制される.プロピルチオウラシルは甲状腺機能亢 進症の治療に用いることができる.ペルオキシダーゼにより触媒され,プロピルチオウラ 52 シルで抑制される経路の後の段階はチロシンのヨード化,DIT と DIT の結合および DIT と MIT の結合である. 113 .答 D [ 7 章 Ⅳ A 4 ] ジヨードチロシン ( DIT ) 2 分子の結合は甲状腺ホルモン ( T4 ) を生成する.DIT とモノヨードチロシン ( MIT ) の結合はトリヨードサイロニン ( T3 ) を 産生する. 114 .答 A [ 7 章 Ⅳ A 1 ] 甲状腺の濾胞での I- の能動輸送ポンプ(“トラップ”)はチオウラ シルとパークロレート(過塩素酸塩)により抑制される.これらの陰イオンは I- の甲状腺ホ ルモンへの移行を阻止する.放射能のある I- は,このポンプで運送されるので甲状腺を破壊 するのに使われる. 115 .答 E [ 7 章 Ⅳ A 8;図 7-9] 5’-ヨージナーゼは,甲状腺ホルモンに対する標的組織 内でのサイロキシン( T4 ) のトリヨードサイロニン ( T3 ) への変換 [ 活性段階 ]を触媒す る.
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