インドルピーの現状と今後の見通しについて

ご参考資料(情報提供資料)
投資家の皆様へ
2013 年 9 月 9 日
アムンディ・ジャパン株式会社
「インドルピーの現状と今後の見通しについて」
2013 年 5 月下旬の米国の QE3(量的緩和第 3 弾)後退懸念に端を発した新興国通貨安の流
れを受け、インドルピー(以下、ルピー)も 8 月 28 日に対米ドルでは 1 米ドル=68.85 ルピーと過
去最安値まで下落しました。その後は、インド準備銀行(中央銀行、以下、RBI)の新総裁に指名
されたラグラム・ラジャン氏の政策手腕への期待などからルピーは反発し、1 米ドル=65.27 ル
ピー(9 月 6 日現在)に上昇しました。以下、「インドルピーの現状と今後の見通し」について、ア
ムンディ・ジャパンの見解をお伝えします。
<要約>
•
米国の QE3 後退懸念から新興国通貨全般が下落し、大きな経常収支赤字と財政赤字を抱え
るルピーは 8 月末には1ルピー=1.48 円となり、前月末比-8.11%急落しました。
•
しかし、RBI 新総裁にラグラム・ラジャン氏が 9 月 4 日就任し、その政策手腕への期待などか
らルピーは反発し、1ルピー=1.52 円(9 月 6 日現在)に上昇しました。50 歳と若いラジャン新
総裁には、今年就任した黒田日銀総裁、カーニー英国銀行総裁と並んで世界の金融界の注
目が集まっています。
•
ルピーの底入れには、米国の QE3 後退の帰すうが見え始める事に加え、景気悪化を容認し
ながらも、財政・金融政策の引き締めに踏み込むというインド当局の姿勢が望まれます。
<ラジャン新総裁の手腕> 効果的な金融政策に期待
今までのインド経済の展開を振り返ると、自国通貨安と燃料や肥料などの輸入価格上昇のスパイ
ラル的な悪化パターンは、恒常的に経常赤字を悪化させ、高騰した食料への補助金の増額などが
財政赤字の肥大化も促してしまう悪い連鎖を招いてしまいました。5 月中旬以降の新興国通貨全般
の下落局面においても、残念ながらこれまでのルピー防衛策は場当たり的で不十分だったと言わ
ざるを得ないようです。
最終ページの「当資料のご利用にあたっての注意事項等」をご覧ください。
1
ルピー安の下落になかなか歯止めがかからない中、RBI 新総裁にラグラム・ラジャン氏が 9 月 4
日就任しましたが、その手腕に期待が高まっています。ラジャン氏は、全米屈指の名門校である
MIT(マサチューセッツ工科大学)で博士号を取得後、IMF(国際通貨基金)の最年少チーフ・エコノミ
ストなどを務めましたが、それ以上に 2005 年のワイオミング州ジャクソンホールでの金融危機に警
鐘を鳴らした演説が有名です。その後、リーマンショックが起こり、ラジャン氏の意見の妥当性が認
められるとともに名声も高まりました。また当時、元米財務長官のローレンス・サマーズ氏(当時は
ハーバード大学学長)はその考えを強く否定しましたが、ラジャン氏は当時の模様を「飢えかけたラ
イオンの集まりに迷い込んだ初期のキリスト教徒のような心地がした」と振り返ったと伝えられてい
ます。皮肉なことに、サマーズ氏は次期 FRB 議長の有力候補となっており、サマーズ氏がその職に
就くとなれば、近い将来、「因縁の対決」といった場面が見られるかもしれません。ラジャン氏はその
信念の強さ故にインドの経済政策にも批判的でしたが、優秀さと人柄の良さも広く知られており、
2008 年にシン首相の経済顧問、2012 年からは財務省経済担当主席顧問を務めました。新総裁に
就任したラジャン氏は、早速、低迷するルピー相場の下支えのためのいくつかの策と、金融市場・
銀行セクターの自由化の方針を表明しました。
1.
銀行のヘッジコストを助成し、外国からより多額の資金を呼び込むとともに、輸出業者と輸入
業者が為替リスクをヘッジしやすくする策を検討。
2.
ルピー建ての貿易決済を促進し、オーバーナイトの金利スワップといった新たな金融商品も導
入、インドの銀行の支店新設に関する規制緩和などの金融・市場自由化について言及。新規
に開業する銀行免許についても積極的に付与する方針。
3.
銀行に保有義務がある政府証券についても、徐々に持ち高減少を進めることを認め、銀行が
融資に回す資金が確保されることを目指す。
4.
インフレ指標を卸売物価指数から消費者物価指数に移行させる可能性とともに、消費者物価
指数に連動するインフレ連動債を発行することを示唆。
これらの策が迅速に打ち出された一方、次回の金融政策会合を当初予定の 9 月 18 日から 20 日
へ先送りすることも発表されました。18 日に FOMC(米連邦公開市場委員会)の結論が出そろいま
すが、20 日であれば、その内容を踏まえて、より効果的な金融政策の模索が可能になります。
「私が打ち出した措置のいくつかは人気を集めないだろうが、中央銀行の統治は有権者の票や
フェイスブックの『いいね』などを得るのが目的ではない。私はいかなる批判があろうと正しいことを
やっていきたい。もっともそうした批判から学ぶべき点があるかどうかは検討する」と、ラジャン新総
裁は話したそうです。信念の強さも含め、一国の中央銀行の総裁として世界が注目するに値する
資質を有していると思われます。
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2
インドルピーの推移 (過去 1 年)
インドルピーの推移 (過去 5 年)
期間: 2012 年 9 月 7 日~2013 年 9 月 6 日、日次
(円)
期間: 2008 年 9 月 8 日~2013 年 9 月 6 日、日次
(ルピー)
1.9
(円)
50
(ルピー)
2.7
40
ルピー高
ルピー高
ルピー安
ルピー安
1.7
57
2.2
1.5
64
1.7
71
1.2
2008/9/8
対円(左軸)
1.3
2012/9/7
2012/12/7
60
対米ドル(右軸)
2013/3/7
対円(左軸)
2013/6/7
2013/9/6
50
対米ドル(右軸)
70
2009/9/8
2010/9/8
2011/9/8
2012/9/8
2013/9/6
出所: ブルームバーグのデータを基にアムンディ・ジャパン株式会社作成。 米ドルは縦軸反転
S&P/BSE SENSEX インド指数の推移 (過去 1 年)
S&P/BSE SENSEX インド指数の推移 (過去 5 年)
期間: 2012 年 9 月 7 日~2013 年 9 月 6 日、日次
21,000
期間: 2008 年 9 月 8 日~2013 年 9 月 6 日、日次
(ポイント)
22,000
(ポイント)
19,000
20,000
16,000
19,000
13,000
18,000
10,000
17,000
2012/9/7
2012/12/7
2013/3/7
2013/6/7
7,000
2008/9/8
2013/9/6
2009/9/8
2010/9/8
2011/9/8
2012/9/8
2013/9/6
出所: ブルームバーグのデータを基にアムンディ・ジャパン株式会社作成。
<今後の見通し> 対外資金調達と通貨防衛のための財政・金融政策は引き締めへ
最終的にインド政府は、2014 年 4、5 月に予定されている総選挙を控え、また、成長率がさらに低
下するリスクも高まっているにもかかわらず、歳出削減や金融政策引き締めに踏み切り、経済成長
をある程度犠牲にしながらも、ルピー安阻止に動かざるを得ない状況になりつつあるようです。
経常赤字と財政赤字を抱えるインドは、海外からの資本流入を確保することが極めて重要です。
そのためにもラジャン新総裁が発表した通貨防衛策に加え、外貨準備高や金資産の取り崩し、二
国間通貨スワップ協定の活用、政府証券の発行、IMF とのクレジットラインの締結などの追加措置
を取る可能性が高まっています。
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9 月 5、6 日にロシアのサンクトペテルブルクで開催された主要 20 カ国・地域(G20)首脳会議(サ
ミット)では、QE3 後退の新興国への影響や、シリアへの対応が焦点となりましたが、シリアへの米
国の関与については声明文には盛り込まれず、ひとまず問題は先送りとなったようですが、米国の
QE3 後退が新興国に与える影響については、一定の配慮が促される事が確認されました。
今回の G20 サミットでは、金融政策に関しては、各国の経済情勢に基づいて行われるべきとの基
本原則を確認しながらも、「世界経済の回復は依然弱く、新興国市場の混乱といった金融市場の動
揺も拡がっているが、その背景には先進国の金融調整への思惑がある」と事実上、FRB の金融政
策の正常化の動きに一定の警戒感が表明されました。新興国は FRB の QE3 後退を容認しつつも、
金融政策の変更については慎重かつ十分な連携の必要性を強調しました。しかし、新興国の通貨
安に関しては、自助努力の方針にとどまり、具体策は示されませんでした。
しかし、G20 サミットそのものではなく、BRICS 諸国による CRP(Currency Reserve Pool=外貨準
備基金) が、中国 410 億米ドル、ロシア、インド、ブラジルが各 180 億米ドル、南アフリカが 50 億米
ドルと総額 1 千億米ドルで創設されることになりました。これらの国々で互いに外貨準備を融通しあ
える枠組みの創設はルピーも含め新興国通貨の安定化に貢献すると思われます。
また、9 月 6 日には、日本とインド政府が日印通貨スワップ枠を 150 億米ドルから一気に 500 億米
ドルに引き上げることに合意しました。通貨スワップ枠の増額はルピーの売り圧力にさらされている
インド政府にとっては即効性のある通貨安定策となります。
当面の先行きについては、これらの措置により新興国通貨全般に安心感が広がり、急落したル
ピーも落ち着きを取り戻す展開が期待されます。
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当資料に関してご留意いただきたい事項
投資信託に係るリスクについて
投資信託は、値動きのある有価証券に投資しますので、基準価額は変動します。当該
資産の市場における取引価格の変動や為替の変動等を要因として、基準価額の下落に
より損失が生じ、投資元金を割り込むことがあります。したがって、元金が保証されている
ものではありません。
また、投資信託は、個別の投資信託ごとに投資対象資産の種類や投資制限、取引市
場、投資対象国等が異なることから、リスクの内容や性質が異なりますので、お申込みの
際は投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
投資信託に係る費用について
投資信託では、一般的に以下のような手数料がかかります。手数料率はファンドによっ
て異なり、下記以外の手数料がかかること、または、一部の手数料がかからない場合も
あるため、詳細は各ファンドの販売会社へお問い合わせいただくか、各ファンドの投資信
託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
投資信託の購入時:申込手数料
投資信託の換金時:換金(解約)手数料、信託財産留保額
投資信託の保有時:運用管理費用(信託報酬)、監査費用
運用管理費用(信託報酬)、監査費用は、信託財産の中から日々控除され、間接的に
投資者の負担となります。その他に有価証券売買時の売買委託手数料、外貨建資産の
保管費用、信託財産における租税費用等が実費としてかかります。また、他の投資信託
へ投資する投資信託の場合には、当該投資信託において上記の費用がかかることがあ
ります。
<ご注意>
上記に記載しているリスクや費用につきましては、一般的な投資信託を想定しておりま
す。投資信託に係るリスクや費用は、それぞれの投資信託により異なりますので、お申
込みの際には、事前に投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
アムンディ・ジャパン株式会社
金融商品取引業者:関東財務局長(金商)第350号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会
【当資料のご利用にあたっての注意事項等】
当資料は、アムンディ・ジャパン株式会社(以下、弊社)が投資家の皆さまに情報提供を行う目的で作成
したものであり、投資勧誘を目的に作成されたものではありません。当資料は法令に基づく開示資料で
はありません。当資料の作成にあたり、弊社は情報の正確性等について細心の注意を払っております
が、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に記載した弊社の見通し、予測、予想
意見等(以下、見通し等)は、当資料作成日現在のものであり、今後予告なしに変更されることがありま
す。また当資料に記載した弊社の見通し等は将来の景気や株価等の動きを保証するものではありませ
ん。
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