講演内容 - 新潟市民病院

2013年五大がんに関する市民公開講座
大腸癌の早期発見早期治療
を目指して
新潟市民病院 消化器内科
杉村 一仁 2013/6/14
2013年五大がんに関する市民公開講座 新潟市民病院消化器内科 杉村一仁
がん年齢調整死亡率 年次推移 1958~2009年
2013年五大がんに関する市民公開講座 新潟市民病院消化器内科 杉村一仁
ポリープ 様々な形態
定義: ポリープとは管腔臓器の内腔に突出する限局性隆起である。その
組織型とは関係なく形態に対して与えられる名称であるが、狭義には良性
の上皮性腫瘍(大腸腺腫)に対してのみ用いられる。
Ip
Isp
IIa
IIc
Is
2013年五大がんに関する市民公開講座 新潟市民病院消化器内科 杉村一仁
良性と悪性
腺腫(良性)
粘膜層
粘膜下層
筋層
漿膜層
がん(悪性)
大腸癌
(粘膜下層浸潤)
m癌
(粘膜内癌)
内視鏡切除
粘膜下層
筋層
漿膜層
2013年五大がんに関する市民公開講座 新潟市民病院消化器内科 杉村一仁
ポリープの大きさと担癌率
大きさ 0-5mm
担癌率
1%
腺腫
内視鏡切除
6-10mm
10%
11-20mm
50%
腺腫
内視鏡切除
腺腫・粘膜内がん
内視鏡切除
21以上mm
80%
粘膜下層がん
腹腔鏡下手術
2013年五大がんに関する市民公開講座 新潟市民病院消化器内科 杉村一仁
検診「がん」 と 有症状「がん」の違い
新潟市医師会 大腸がん検診検討委員会
早期癌割合 m
sm
5生率
検診がん
有症状がん
50.3%
1.1%*
15.7%
19.2%*
95.9%
69.9%**
*竹政伊知郎 他; 癌と化学療法; 第25巻; 1514, 1998
**佐原雅基 他: 和歌山医学; vol55; 116, 2004
2013年五大がんに関する市民公開講座 新潟市民病院消化器内科 杉村一仁
大腸検査法のいろいろ1 大腸内視鏡
大腸内視鏡(カメラ)
■ 前処置
前日 寝る前に下剤をのむ
当日 朝から洗腸液 (2L)を2時間
以上かけて飲む。
排便がきれいになったら検査。
■ 内視鏡を肛門から挿入。
検査時間 10分~40分程度
■ 費用 (3割負担)
観察のみ:
約6千円
腫瘍切除(2cm以内) 約1万5千円
腫瘍切除(2cm以上) 約2万1千円
2013年五大がんに関する市民公開講座 新潟市民病院消化器内科 杉村一仁
大腸検査法のいろいろ2 注腸法
注腸(バリウム)
■ 前処置
前日
検査食を買って食べる(3食)
(自費 1575円)
午後8時に洗腸液 150ml
寝る前に下剤
当日
水をコップ1杯飲む
検査前 排便用の坐薬
■ バリウムを肛門から挿入。
検査時間 20分程度
■ 費用 (3割負担)
約5千円
2013年五大がんに関する市民公開講座 新潟市民病院消化器内科 杉村一仁
大腸検査法のいろいろ3 便潜血法
便潜血 (免疫法)
■ 前処置 : 不要
■ 2日間 採便する
(便の表面をこする)
■ 費用: 1000円~1500円
2013年五大がんに関する市民公開講座 新潟市民病院消化器内科 杉村一仁
実施体制別 大腸癌検診の推奨レベル
大腸癌検診の推奨レベル
検診体制
対策型検診
任意型検診
概要
集団全体の死亡率を下げる
ために対策として行う
個人の死亡率を下げるために個人
の判断で行う
対象
集団
個人
老人保健法による集団検診
職域検診
人間ドック
便潜血(免疫)
推奨A
推奨A
全大腸内視鏡
×
推奨C
注腸
×
×
具体例
2013年五大がんに関する市民公開講座 新潟市民病院消化器内科 杉村一仁
新潟市大腸がん検診実施要項 (抜粋)
目的
大腸がんの早期発見と早期治療を促進するため、大腸がん検診(以下
「検診」という。)を実施し、市民の健康の保持増進に寄与することを目的
とする。
対象
40歳以上の市民で、職場などで受診の機会のないもの。
(大腸疾患で受療中、他疾患で入院中のものは除く)
方法
・検診項目は、問診および便潜血検査とする。
・採便回数は2日法とする。
2日のうち1日でも陽性とされたものは、原則として「全大腸内視鏡検査」
にて精密検査。ただし実施困難な事情がある場合に限っては「S状結腸
内視鏡+注腸」を推奨。注腸の単独実施は推奨できない。
費用
60歳以上
40歳~59歳
無料
1,300円 (新潟市国民健康保険加入者 650円)
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大腸癌検診 年齢・性別受診者数 (H20年度)
新潟市医師会 大腸がん検診検討委員会
受診者数(人)
8000
6000
男性
女性
4000
2000
0
40-
45-
50-
55-
60-
65-
年齢階級
70-
75-
80-
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年齢別 大腸がん発見率
(がん/全大腸がん検診受診者)
新潟市医師会 大腸がん検診検討委員会
年齢別 大腸がん発見率
%
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
40-
45-
50-
55-
60-
65-
70-
新潟市大腸がん検診 H9~H17の総計
75-
80-
歳
月岡 恵: 大腸がん検診
2013年五大がんに関する市民公開講座 新潟市民病院消化器内科 杉村一仁
国際的な立場からがん予防の提言
● 個人にとって、「食事と疾病」の有用情報を吟味することは極めて困難
世界がん研究基金 (World Cancer Research Fund)
アメリカがん研究財団 (American Institute for Cancer Research)
1997年 4500編の疫学研究を検討 「食物・栄養とがん予防-国際的視点から」
がん予防には、野菜や果物の摂取がきわめて重要
2007年 7000編の疫学研究を検討し、改訂版が上梓
「食物・栄養・運動とがん予防-国際的視点から」
2013年五大がんに関する市民公開講座 新潟市民病院消化器内科 杉村一仁
がん予防のための推奨事項
(2007年世界がん研究基金)
1 肥満
やせにならない範囲で、できるだけ体重を減らす
2 運動
毎日30分以上の運動をする(早歩きのような中等度の運動)
3 体重増につながる食物と飲料
高カロリーの食品を控えめにし、糖分を加えた飲料を避ける
(ファーストフードやソフトドリンクなど)
4 植物性食品
いろいろな野菜、果物、全粒穀類、豆類を食べる
(野菜と果物は1日400グラム以上)
5 動物性食品
肉類(牛・豚・羊など、鶏肉は除く)を控えめにし、
加工肉(ハム・ベーコン・ソーセージなど)を避ける(肉類は週500グ
ラム未満)
6 アルコール飲料
アルコール飲料を飲むなら、男性は1日2杯、女性は1杯までにする
(1杯はアルコール10~15グラムに相当)
7 食品の保存・加工・調理法
塩分の多い食品を控えめにする
8 サプリメント
がん予防の目的でサプリメントを使わない
9 特別な集団への推奨1
生後6カ月までは母乳のみで育てるようにする
(母親の乳がん予防と小児の肥満予防)
10 特別な集団への推奨2
治療後のがん体験者は、がん予防のための上記の推奨にならう
+1 喫煙
禁煙を忘れずに
2013年五大がんに関する市民公開講座 新潟市民病院消化器内科 杉村一仁
大腸がんの予防
#1 もっとも有効で簡便な方法は、便潜血反応による大腸がん
検診を一度でも受けること。毎年ならすばらしい。
#2 食事や生活習慣で、劇的に予防効果のでる因子は無い。
#3 植物性食品を主体とした全体食(ホールフードダイエット)を
中心にして、食べ過ぎず、飲み過ぎず、適度に運動するこ
とが重要である。
健康に王道無し ・ 中庸が重要