新井胃腸科診療所 広報誌 平成27年11月号 新井胃腸科診療所 だより 発行者 岸川一郎 前橋市昭和町1-16-10 TEL 027-231-2083 新井胃腸科診療所ホームページ 診療所の基本方針 http://arai-ichouka.or.jp 1 私たちは、患者さんが納得のいく医療サービスを提供するため、努力します。 ア ザ レ ア 2 私たちは、全力のチームプレイで、正確な医療業務を遂行します。 3 私たちは、適法・適正な保険診療の実践を、厳守します。 大腸の病気とその検査方法について 理事長・診療所長 岸川 一郎 大腸の病気のうち、なんと言っても恐ろしいのは、「大腸がん」であることは、誰しもが知って いることです。 もちろん、「がん」以外にも、命を脅かす幾多の病気が、大腸にはあります。 現状、大腸の病気、とりわけ「大腸がん」を発見する検査法には、いろいろなものがあります。 以下、無症状の人と何らかの症状を有する人の、2パターンに分けて、説明します。 ① 無症状の人 一般的に行われている、大腸の病気の「スクリーニング」検査は、「便潜血反応検査」 です。 口から肛門までの消化管は、血流の多い場所がその大半を占めてます。 「がん」も含めて、 多くの病気が、ごく微量から大量と幅広く、出血する傾向があります。 この病気に起因する 出血を、消化管からの最終排泄物である便から、検出してみるという検査方法が、「便潜血 反応検査」です。 現在、「便潜血反応検査」は、「大腸がん検診」の一次スクリーニングとして、 広く行われています。 運悪く、「大腸がん検診」の「便潜血反応検査」で「陽性」であった場合、 まずは、大腸の精密検査へと進んでいきます。しかし、前述した内容から判るように、病気の 可能性のある場所は、消化管全体、場合によっては、鼻や呼吸器であることもゼロではないと 言えます。 現在の、「大腸がん検診」の「便潜血反応検査」は、「二日法」を採用しています。 今までの研究から、検診のコスト・パフォーマンスを考慮すると、二日にわたって便を取って 調べる、という方法がとられています。 便通の状況は、個人差がありますので、一回目の 採便から、すぐに翌日便が出ない人は、次に便が出た日の便で結構です。病気によっては、 常時出血しているのではなく、出血する日としない日がある場合があります。 したがって、一日目と、また別の、ランダム(適当)に選んだ日の便を取ってしまうと、確率論 から、「陽性」の確率は下がってしまいます。ですから、排便のある「連続した二日間」の採便を、 心がけて下さい。 ② 何らかの症状のある人 「大腸がん検診」の、対象とはなりません。 保険証を利用した、普通の「保険診療」を、 受けて下さい。 「保険診療」で、まず、医師の診察を受けてください。 その結果、医師の判断により、必要が あれば適切な検査を、勧められることになります。 大腸の病気の診断のための、代表的な 検査を列記すると、以下の如くです。 1) 直腸診・肛門鏡検査 患者さんの肛門に、医師が、その指や肛門鏡という道具を入れて、異常の有無を チェックするものです。 せいぜい肛門から約10cmくらい奥までの直腸のみが チェックされます。 直腸診は、どの科の医師であっても実施できる診察方法ですが、 私のような「消化器外科医」以外は、その実施に比較的消極的です。 この診察は 医師の専門科目により、経験数に極端な差があります。 腹水の存在や がんの腹腔内転移の有無など、直腸の薄い壁を隔てて、腹腔内の状態を 、 直接に極めて近い条件で、うかがい知れる、唯一の診察手段です。 2) 便の検査 血の混じる反応だけでなく、虫卵等の有無・消化機能の評価・細菌の検査・一部の ウイルスの検査など、病状に応じ、いろいろな検査があります。 3) 注腸造影検査 大腸の全体像を、レントゲン写真上に映し出す検査です。 進行大腸がんの診断・ 憩室の発見・癒着部位のチェックなどに、威力を発揮します。 4) 大腸内視鏡検査 ファイバースコープで、直接、大腸の内腔から覗いて、病気の有無を調べたり、組織を 摘まんで取ってきて、検査したりするものです。 ダイレクト・メソッドと言われ、この 検査さえやれば、手っ取り早いと、一般の人は認識しているようですが、実は、そう ではありません。 現在最新の大腸内視鏡をもってしても、大腸内腔の約30%が 死角となり、観察できません。 5) 腹部CT検査 もっぱら、患者さんの状態が極端に悪いときや、緊急時の検査として、スクリーニング 目的で、行われる検査です。 診断がつき、手術前の検査としても行われます。 最近、一部の医療機関では、「CT コロノグラフィー」という検査が可能になりましたが、 この検査は、検査設備が高額である・仰向けとうつ伏せの二回、全腹のCTによる、 フル・スキャンが必要であり、被爆量が多すぎる・検査結果を正確に評価、診断できる 医師がごく少数しかいない、など、問題点が多く、一部の進行大腸がんの切除範囲 決定目的に利用することがあるくらいです。 縷々、述べましたが、皆さんの参考になるかと思います。 以上
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