本資料は、ケース「O 社の化粧品市場進出」の課題を解説するものです

本資料は、ケース「O 社の化粧品市場進出」の課題を解説するものです。別に用意する「リ
ーディング・アサインメント」と教科書をよく読み込んだ上で活用してください。
「O 社の化粧品市場進出」ケース課題
東洋学園大学
井原久光
本資料は、ケース「O 社の化粧品市場進出」の課題を解説するものです。詳しくは、教科書(井原
久光著『ケースで学ぶマーケティング』ミネルヴァ書房)に掲載されていますが、本資料の文中に
紹介されている図表の中で、図表が掲載されていないものもあります。御了承ください。
まず、課題を理解するために教科書(井原久光著『ケースで学ぶマーケティング』ミネ
ルヴァ書房)114 ページにある図表8−2を見てください。参考までにここに再出してお
きます。
この図は、以下の3つの課題を解決するために必要な、戦略立案の大きなプロセスを示
しています。
(1)環境分析=市場環境や競合他社の動向を分析する
(2)目標の設定=ターゲットユーザーを絞り基本戦略のコンセプトを作る
(3)手段の選択・組み合わせ=個別戦略を作る
上記の3つの課題は9つの具体的な課題になります。
1
Copyright © Hisamitsu Ihara
本資料は、ケース「O 社の化粧品市場進出」の課題を解説するものです。別に用意する「リ
ーディング・アサインメント」と教科書をよく読み込んだ上で活用してください。
第1課題(環境分析)
①市場環境を整理する
環境分析とは、外部状況(周囲の情勢)を適切に把握することで、マクロ分析とミクロ
分析があります。本来なら、マクロ分析として政治・経済・法律・文化・社会など、大き
な環境全体の動勢を把握する必要がありますが、このケースでは、主としてミクロ分析に
あたる市場動向や業界動向をまとめてあります。
ケーススタディの中に、市場全体の動向を述べた所があります。歴史的な変遷や最近の
動向などです。ただし、書かれたものを文字通りに書き写すのではなく、全体的な市場動
向についてはこのケーススタディに書かれていないことも付け加えて下さい。このケース
が書かれた後に、通販やインターネット販売などが盛んになりました。そうしたケース外
の情報も加えて、皆さんの知っている化粧品市場に関する知識をここで整理してみて下さ
い。
②競合他社の動向を整理する
競合他社の動向はケーススタディにも書かれていますので、それをまず抜き書きしてみ
ても構いませんが、自分の知識も積極的に動員して下さい。参考までに、S社とは「資生
堂」のことで、K社とは「カネボウ」を念頭に置いて下さい。資料2の具体的な数字は実
際のものと多少異なりますが、M社は「マックスファクター」でKK社は「小林コーセー」
を想定して結構です。P社は「ポーラー化粧品」です。その他の化粧品メーカーも自分で
知っているものを加えてみて下さい。
③自社の強みや弱みを整理する
自社とは言うまでもなくO社のことです。皆さんはO社の社員ですから、O社の強みと
弱みをよく知っているはずです。テキストにもはっきり書かれていますが、具体的には「花
王」を念頭に置いてみても結構です。その場合、現実の花王はすでに「ソフィーナ」で化
粧品市場進出を達成しているわけですから、
「ソフィーナ」をもっていない花王を想定して
下さい。むしろ「ライオン」や「P&G」などの他のを考えた方が良いかも知れません。
いずれにしてもシャンプーやハブラシ、紙おむつなどを売るトイレタリー市場で大きな
シェアをもつ日本の代表的企業の強みと弱みをここで整理してみて下さい。
この①市場環境の整理と②競合他社動向と③自社能力分析が第一の課題です。
第2課題(目標設定=戦略の構築)
この第2課題がこのケーススタディの中心です。ユニークでしっかりした目標を設定し
て下さい。この目標設定がしっかりしていれば、このケーススタディは半分以上できたよ
うなものです。なぜなら、第3課題(手段の選択・組み合わせ)は第2の課題(目標)の
2
Copyright © Hisamitsu Ihara
本資料は、ケース「O 社の化粧品市場進出」の課題を解説するものです。別に用意する「リ
ーディング・アサインメント」と教科書をよく読み込んだ上で活用してください。
具体化ですので自ずと分かってくるものだからです。この第2の課題は、そのような戦略
全体の基礎づくりと言う意味で、「戦略の構築」とも呼ばれます。
よく、第3の課題は広告宣伝など具体的で取り組み易いので第3の課題から始めてしま
うチームがありますが、製品は地味な割に、広告は派手なタレントを起用することするな
ど、チグハグになってしまうことがあります。それは第2の課題のところで「誰に」「何を
売り物にするか」ということを十分討議していなかったからで、ターゲットユーザーと基
本コンセプトがはっきりしていなかったからです。
④ターゲットユーザーの設定
どんな製品もターゲットユーザー(標的となる顧客層)をもっているものです。あらゆ
る年齢にあう化粧品というのも一つの考え方ですが、そのような「皆にうける商品」は結
局「誰も買わない商品」になりがちです。特に化粧品は特定の消費者を念頭に置かなけれ
ばしっかりした商品づくりも販売戦略も立ちません。この課題はグループ全体でしっかり
討議して下さい。
ターゲットユーザーを決定する上では、テキストの図表8−4「マーケットセグメンテ
ーションの基準」も参考にして下さい。化粧品のターゲットユーザーは、性別や年齢だけ
で区分できるものではありません。所得や職業など人口統計(デモグラフィック)的な基
準だけでなく、ライフスタイルなどの心理(サイコグラフィック)的な区分けもあること
を忘れないで下さい。
⑤基本戦略のコンセプト作り
基本戦略のコンセプトは、このケーススタディの「中心中の中心」です。どのような化
粧品にするかは「コンセプト作り」にかかっています。アイデアを出し合って充分討議し
て下さい。コンセプトとは商品づくりの哲学です。
「こんな化粧品にしたい」と言うことを
簡単なスローガンにしてみて下さい。たとえば、「討議の枠組み」で述べた「使い捨て化粧
品」と言うのは立派なコンセプトです。逆に「使い捨てをやめる→地球環境に優しい化粧
品」と言うのも一つの哲学です。
ここでは、化粧品はどのようなニーズ(必要性)やウォンツ(欲求)によって買われる
のかを深く追及して見て下さい。化粧品なんてと思っている男性も真剣に考えてみて下さ
い。実際に、化粧品メーカーでも下着メーカーでも男性が毎日「仕事として」熱心に取り
組んでいるのです。
もちろん、ケースはクルマやビールを対象にしても良かったのですが、
男性中心の製品にすると女性の参加が積極的に得られないケースがありましたので化粧品
にしました。むしろ、男性が化粧品を考えることで大胆な発想ができるようです。
それから、深く追及することと議論を発散させることは別です。コンセプトがダラダラ
と長い文章になって「これもあれも」になってしまうチームもあります。コンパクトな表
現で「こんな化粧品です」と言えるように議論を煮詰めていって下さい。
3
Copyright © Hisamitsu Ihara
本資料は、ケース「O 社の化粧品市場進出」の課題を解説するものです。別に用意する「リ
ーディング・アサインメント」と教科書をよく読み込んだ上で活用してください。
第3課題(手段の選択・組み合わせ)
マーケティング・ミックスについてテキストの図表8−5にある通りですが、ここでは
マッカーシーの4P を使います。ポイントは以下の通りです。
⑥製品戦略…どのような内容の化粧品を発売するのか考えて下さい。
製品の種類
(たとえば、基礎化粧品ならば乳液なのかクレンジング・フォームなのか)
製品の内容
(たとえば、機能は何か。液体なのかジェルなのか。香や色はどうするか)
製品のパッケージ
(容器の大きさデザインはどうするか)
製品のネーミング
(全体のブランドと品目の名前)
この製品戦略ではイメージスケッチなどパワーポイントをフルに活用してどのような
製品にしたいのか上手に伝えて下さい。
⑦価格戦略…具体的な販売価格を製品ごとに決めて下さい。
競合他社の値段が分からないと言って不平を言うチームもありますが、このケーススタ
ディは変動しやすい値段表はあえて省いてあります。感覚的でかまいませんから、
「消費税
込みで 3,300 円」のように具体的に表現して下さい。
発表をリアルにすることが大切です。
消費者向けばかりでなく販売店向けの仕切り価格も考えて下さい。
⑧流通戦略…販売経路(チャネル)を決定して下さい。
たとえば、デパート、スーパー、コンビニ、美容室・理髪店、生協、通信販売、訪問販
売などです。他にもユニークな販売経路があれば積極的に発表して下さい。S社やK社と
立ち向かうためには既存の販売ルートでは十分でないことは明らかです。
⑨販売促進(プロモーション)戦略…広告やキャンペーンの方法、顧客や販売店向けのイ
ンセンティブ(販売奨励金や粗品の提供)、美容部員の養成、懸賞クイズ、消費者会員組織
(メンバー制やメンバーカード)などです。
皆さんはO社のマーケティング・スタッフです。皆さんの考え次第で、製品戦略(たと
えば、どのような形状の化粧品になるのか)も違ってくる訳ですし、価格戦略(いくらで
売るか)も変わる訳です。流通戦略(どのルートで売るか)もプロモーション戦略(たと
えば、どのタレントを使って広告を打つか)さえ左右できるのです。ユニークで楽しい企
画を大いに歓迎します。積極的に討議に参加して下さい。
4
Copyright © Hisamitsu Ihara