講演「正確に学ぶ放射線・人体への影響」

講演「正確に学ぶ放射線・人体への影響」
2011年3月21日
講師・齋藤紀医師(わたり病院)
1.はじめに
ご紹介いただきました斎藤です。今、基本的には、福島県全体は福島市を含めてごくごく
少ない程度ですが汚染されていて、私たちはいまその中にいるということです。被曝してい
るんですね。そういう意味では、被曝してないままの我々が、被曝するということを避けて
いる状況ではないということなんですね。その上で、今日も放送で話しましたが、原爆被爆
者の被曝線量と発ガン率をいいました。原子爆弾被爆者は、まさに60年前に、桁違いの線
量を受けました。今回はマイクロシーベルトです。ヒロシマ・ナガサキの人たちは、ミリシ
ーベルトからシーベルトの単位です。ミリシーベルト位までは頭の換算ができていたのです
けれど、マイクロシーベルトはまったく使わなかった桁なんです。だからここに来てこの1
週間ばかり、マイクロシーベルトというのに頭を切り替えるのにとっても苦労しました。と
いうことは、3桁や4桁の違いを乗り越えて被爆者は生き抜いてきたということなんです。
もちろんそこには生きるという意志があったから生き抜いてきたんですけど、もっと冷静に
考えると、医学的問題、身体がそれに耐えられるのかということを考えながら、彼らは多く
のなくなった方をかかえて半世紀生き延びてきたんです。我々はマイクロシーベルトの事態
です。ですからヒロシマ・ナガサキの被爆者から見たならば論外の桁です。何を右往左往して
いるのかという気持ちがあるのかもしれません。
私は、今放送終わってきてスタッフと雑談した中で、今日示した数字は被爆者がこの半世
紀の中で死をとして蓄積したデータなんです。ある意味で言うと。そのデータをやっと被爆
者以外の国民のために活用している、
あるいは活用しようとしているんで
す。そういった意味では、ヒロシマ・
ナガサキの被爆者と連帯ができつつあ
る。あの数字は死亡率なので、つまり、
他界された死者との連帯が思いもよら
なかった形でここにあります。また、
鼓舞することになっている。そういう
基本的なところを我々はつかんで対処
しないとならないと思うんです。我々
だけが、恐れおののいて右往左往して
るわけにはいきません。もう半世紀前
に日本国民の一部が桁の違う体験をし
てきてこの半世紀生きてきているとい
うことを深くとらえて、いろいろ考え
てゆきたいと思います。
2.細胞と放射線
それで、右の図を見てください。ちょっとむずかしいですけれどもわかるように言います。
Booz という人が1988年につくった図です。これは何かというと、放射線が我々の体に入
ってきたときに、放射線によるダメージ、は細胞レベルではどういうことなのかということ
ですね。このグラフの中に○がいっぱいありますね。○のなかに黒ポチがあります。この黒
ポチは、細胞1個の○のなかに、放射性物質がダメージを与えたという意味です。つまり放
射線を浴びるというのは、弾丸が細胞にあたったという、ヒットセオリー、標的理論という
考え方です。このヒットセオリーはもう古いんですけれども、放射線の被害を理解する時に
とっても都合のよいことなので今日ここにお示ししました。左の細胞群と右の細胞群、細胞
の中に入った黒ポチが密度の濃い被害がありますね。右のほうにあるのは、たくさんの放射
線を浴びた時に、そこにある細胞が、1個の細胞の中に1つの弾丸だけじゃなくて2つも3
つも入っている状態です。つまり、線量が多いと細胞1個あたりに入ってくる弾丸が多いと
いうことです。左のほうはその弾丸が少なく細胞1個に1個の弾丸になってしまって、さら
には細胞1個の中に弾丸が入っていない細胞もある。ある意味で薄められてくるということ
もいえます。これが被曝線量が多い、少ないということを、我々の細胞の側から見た理解で
す。まず一番下の横軸は、吸収線量、グレイと書いてありますけれども、これは今はシーベ
ルトと考えていいです。その中に、10の0乗がありますがこれを1と考えてください。1
0のマイナス2乗は0.01となります。10のマイナス4乗は0.0001です。そして、
その10のマイナス2乗とマイナス4乗の間は、10のマイナス3乗となります。これは0.
001です。 ここが、1ミリシーベルトということになります。1ミリシーベルトを境にし
て、弾丸が細胞1個の中にたくさん入るのか、あるいは細胞1個の中にせいぜい1個だけか、
あるいは弾丸が入らない細胞もでてくるという状態が、この1ミリシーベルトを境にして生
じます。左側にくれば薄くなる、右側に来れば濃くなるという関係にあるわけです。そして
同時に、ずーと上の方に行きますと、ヒットされる細胞(%)というのがあります。つまり、
弾丸を受ける細胞が1ミリシーベルトで、右にいきますとすべての細胞が弾丸1個は必ず受
ける、100%ということです。多くなればこの細胞に2個になったり3個になったり弾丸
が入る。つまり、逆に左にいくにしたがって弾丸を受けない細胞がでてくるということです
ね。こういう関係の図です。
3.急性障害と晩発性障害
急性障害
・・・
細胞がまとまってたくさん死滅した場合
数日から数週間で発症する。
放射線障害
例)白血球減少
晩発性障害
・・・
細胞がいきたまま変異を生じた場合
数年後以降の病気の発症を高める。
例)がん
-1-
次は放射線障害を2つに分けて、急性障害と晩発性障害と書きました。私たちがこの間の
報道の中で、すぐには被害がでないとかという報道がずーとおこなわれてきています。すぐ
には身体に影響がでないというのはこの急性障害のことをいっているのです。しかし、晩発
性の障害とあわせてはなかなか報道がされていません。専門家もあまりふれていません。被
害はこの両方を示さないと片手落ちということになります。急性障害の説明の中に私が書い
たのは、細胞がまとまってたくさん死滅した場合だと書きました。つまり、放射線の線量が
ひじょうに高いために、そこにある細胞がゴソッと壊される。ゴソッと壊されるというイメ
ージは、細胞の中に弾丸がたくさん打ち込まれた時、その時に修復できなくて、ぶちこまれ
た細胞が、ことごとく死滅した、そういう細胞がたくさんある。つまり、まとまってゴソッ
と壊された時です。まとまってゴソッというのがとても大事なことなんです。例えば放射線
を浴びますと、骨髄というところに、放射線があたります。そこには血液をつくるもともと
の細胞がたくさんあります。だけどもそれがまとまってドバッと弾丸がきたわけじゃなく、
ポチポチときたから、1個、2個死んでもまた修復して、あるいは次の細胞が死んだ細胞を
捨て置いてどんどん生まれているわけです。つまり、まとまってゴソッと来る状態がない限
りは、われわれは白血球が下がっているとか、貧血がくるとかいうことは一切おこらないで
す。まとまってゴソッと壊すような状態でないと、急性障害は絶対おこらないわけです。そ
ういう意味で急性障害をおこす線量というものに、一定の限界の線量があります。一定の線
量以上になった時に、初めてゴソッと細胞が死ぬ。それ以下ではポチポチ死んだとしても、
白血球が下がったり、吐き気がしたり下痢がしたり、あるいは時にはヒロシマ・ナガサキの被
爆者が経験した脱毛ということはおきませんということです。で、その線量はどこかという
ことですが、一般に明確になっているのは500ミリシーベルトです。この1週間の中で最
も高い数値が示されたのは、400ミリシーベルトということがありました。あれは4号炉
が火災にあって、その直後か翌日かちょっと時間がたって、3号炉で400ミリシーベルト
というのが流れました。テレビにでた専門家も、急性症状がおこるレベルですといっていま
した。500ミリとか400ミリとか300ミリとか、何百ミリというのは急性症状をおこ
すレベルです。逆に白血球が下がったという時は、500ミリシーベルトを受けていると我
々は判断するんです。これを生物学的な線量評価といいます。白血球の数から線量を割り出
すということです。戻りますけれどもそのように一定の線量を超えたときに初めて急性障害
という症状がおこるということです。つまり、マイクロシーベルトではそのようなことがお
きる可能性はかなり低いと思います。実際にはおきないと思ってけっこうです。ですから急
性症状は今、頭の外においてかまいません。
次は晩発性障害です。これは様相を異にします。晩発性障害というのは名前のとおり、遅
れて発症する障害です。数週間のレベルで障害がおこるということではなくて、1年後とか
2年後とか年単位で経過した後におこるのです。ヒロシマ・ナガサキの人たちが研究の対象
になったのはこの晩発性障害の調査なんです。この半世紀、40年以上かかっていまなお被
爆者の死亡率のサーベイがおこなわれています。つまり、何十年という長さをもった障害の
あらわれ方が晩発性障害です。我々がそのことを前向きに受け止めるならばそこは十分たた
かえる時間があるということなんです。変な言い方なんですが時間的に余裕があるというこ
-2-
とです。その時間的余裕のあるたたかいというのは平たく言えば、被曝したリスクを発症さ
せないたたかいです。健康をまもるたたかいといってもいいと思います。
それで晩発性障害というのは、そういう何百ミリシーベルトというところから、数十ミリ
シーベルトとか、ミリシーベルトとかいう桁のところで生じます。マイクロシーベルトのと
ころに下がってきたとしても必ずしもリスクとはなりませんが、それをずーと持続して受け
続けるならば、やがてミリシーベルトになっていくわけですから、問題があるということな
んですね。
で、晩発性障害は低い線量が問題になるんですが、低い線量では細胞を殺さないというこ
となんです。その細胞を殺さないかわりに、その細胞の性格を変える、要するに細胞の変容
をおこす、聞き慣れた言葉では細胞の突然変異をごくごくわずかにおこす。
晩発性の障害は、突然変異の蓄積が条件になりますので発症するのはずーっと後ということ
です。何となくイメージを分かっていただけると思います。
4.被曝線量とリスク
●
原爆被爆者の場合
1000ミリSv
→
がん発症率が47%増加
今回の被曝線量でそのまま推計した場合
10マイクロSv
●
→
0.00047%
今回、どの程度影響が残るか不明
すべての方に影響を与えるものではない
汚染の規模、被曝線量が重大
その上で、晩発性障害といっても、今われわれが語っているマイクロシーベルトのレベル
でどの程度、晩発性障害のリスクがあるのかということになりますね。横軸にずーっと線量、
縦軸にがんの死亡率というグラフをつくって、そうしますと原点から右肩上がりのこういう
曲線が引けるんです。何シーベルトの時に死亡率がどの位、そういうふうに見るんですね。。
ここに1000ミリシーベルトをずーっと上げていくとこの曲線にぶつかります。ぶつかっ
たところを縦軸に行きますとここに危険率といいますか、一般の人の何倍かという数値が出
てきます。1.47倍です。47%増加ということです。これを今回のマイクロシーベルト
まで少なくしていくとどうなるかですね。1000ミリシーベルトで47%ですから、この
100分の1、10ミリシーベルトの時は0.47%増加するということになります。その
1000分の1、10マイクロシーベルトで0.00047% です。やっとここでわれわれ
のレベルの線量まできました。そうしますとここで2つのことが分かります。0.0004
7%が意味することは何かということを言いますと、もうおわかりのように10マイクロシ
ーベルトを受けた福島市民が30万人としますと30万人すべてががんになるということで
-3-
はないということです。0.000何%の増加しかしないということですから、ここに放射
線の障害の特徴の1つがあります。おしなべて全員同じように発症させるんではなくて、確
率的にごく限られた率で発症させるということです。つまり、みんなに同じようにがんが発
生するんじゃなくて、宝くじ理論になるんですけれどもね。当たる人と当たらない人がいま
すよ。しかし、当たるか当たらないかは線量が高くなるにつれて当たる確率が上がりますよ。
今回問題となる放射性核種ということにたどり着きました。放射性核種というのは難しい
ですけれども、物質と思って下さい。核種というのは平べったくいうと放射線を出す元素の
種類ということです。
5.放射性核種
今回問題となる放射性核種
放射性核種
臓器分布
物理学的半減期
生物学的半減期
希ガス
クリプトン
ほとんどなし
呼気から体外へ
キセノン
ヨウ素
甲状腺
セシウム
全身
8日間
30年間
8日間
50∼100日間
かなり前の段階で減圧のためにバルブを開ける作業がありました。それで中の気体を外に
出すことによって減圧をはかりました。当然このクリプトン、キセノンが外に漏れる可能性
があったんです。この上からの順序は、この1週間の順序になっているんです。
それからヨウ素とセシウムは冷却水の中に入っているものと考えていいです。従って冷却
水が何らかの形で外に出るようになれば、あるいは水蒸気爆発ということで冷却水が水蒸気
となって外に出る可能性があれば、ヨウ素とセシウムはそこで出てくるということになりま
す。だから、同時に起きたのかどうかは別にしてもだいたいこの順序で出てくる。この希ガ
スは語感から分かりますように100%空気中に出ます。
キセノン、クリプトンは我々の呼吸の中に入ってくる可能性がつねに高いけれども、体の
中に入った場合、沈着するかどうかっていうのが次の問題です。
キセノン、クリプトンは沈着はほとんどしません。体の中に入って血液を循環して、やが
て呼気として出て行く。だからまわりの環境がクリーンになったらば、つまり続けてキセノ
ン、クリプトンがどんどん入ってくる状態がストップしたら、キセノン、クリプトンは我々
の体から呼気として出て行きます。だからこれはあまり心配ない。
問題はヨウ素です。ヨウ素は甲状腺に集中的に向かいます。
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甲状腺はのどのところにあります。ここが腫れて甲状腺機能亢進症という病気になる方も
そんなにめずらしくありません。
甲状腺ホルモンは我々を元気にさせるホルモンです。あるいは小さな子どもを成長させる
ために必要なホルモン、新生児が成長するために決定的に大事なホルモン、体の元気さを担
保しているホルモンです。したがって小さい子ほどその材料が行きやすい。ヨードがいきや
すい。放射性ヨードが甲状腺に入りますと8日間で半分、放射能の力が落ちます。物理学的
半減期といいます。また生物学的半減期というのは人間の体から出ていくスピードというこ
とです。
セシウムはすみやかに体全体の臓器に分布します。特別にどこかにいくのではなくまんべ
んなく分布します。しかもやっかいなことに半減期は30年です。30年たたないと半分に
なってくれません。しかし幸いなことに人間の体に入ったセシウムが人間の体から出ていく
には30年かからないんです。
せいぜい100日です。主に尿から排泄されます。何度もいいますように、次に入ってく
るものがない場合です。環境がきれいになった場合です。ですから放射線を出すところがス
トップしたならば、出て行くことだけを考えればいいわけです。多く見積もって100日で
す。100日たつと2分の1になるということです。300日で8分の1。1年は365日
ありますから1年たつ頃はおおよそ10分の1に減っていると理解してください。
セシウムの種類によっては
70日であったり、50日であったりということがあるんで
すね。その時はもっと早くでていくということになります。もちろん、最初に体に入ったヨ
ウ素の量とセシウムの量に規定されるわけです。どのくらい一年後に残っているか。最初に
入る量が多ければ10分の1であっても量は多くなります。
一昨日民医連の会議で話してきたんですけれども、福島県の原発をどうとらえるか。民医
連職員も放射線こわいんです。支援に入るかどうかもこわいんです。けれども、現在そのリ
スクは進行形で問題はありますが、そのことよりももう医療支援、生活支援にギアチェンジ
すべきだということを口をすっぱくしていってきました。放射線の問題は軽視できませんけ
れども、生活支援に、そっちのたたかいにギアチェンジするべきだと思います。何度も言い
ますように、リスクはわかりません。明日またどこか爆発するかもしれない。その時はその
時、体制も考え方も含めて組み直さなければならない。しかし、もう切りかえるべきだと思
っています。
最後に原乳です。これもとてもデリケートな問題です。私が今日言ったことが明日には違
っているということもありますが。
6.水道水
水道水について、ベクレルという単位が初めて出てきました。これは放射線の力です。シ
ーベルトというのは、人間の体に傷害を与える力の目安です。ベクレルはシーベルトとはイ
コールではありませんが、換算に考えることができます。摂取した場合の規制限度が得られ
ています。
福島市の方木田の水道水は、17日の0時は11ベクレル/キログラムとあります。水道
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水を1キログラムとってきたときに、そこから出ている放射線が11ベクレルだということ
ですね。18日の午前2時は170ベクレルになっています。19日の8時は33ベクレル。
20日の9時は17ベクレルに減っています。つまり18日をピークとして水道水のベクレ
ルの数値はずっと下がってきているということです。そう考えますと、例えば福島市の空中
の線量が16日に20マイクロシーベルトで一番高いじゃないかと言われています。終日で
した。そうすると本当かどうかは別として16日のあの放射線の程度が、18日に反映した
のかなということでもうなずけるんです。空中のシーベルトが20マイクロシーベルトあた
りをピークとしてもっと下がってきています。それと合うものとするならば、2日遅れで水
道水に反映しているということも考えられなくもない。その上で漸減してきていますから、
その傾向がそういう方向にいってほしいなという一つの期待感を抱かせます。
その上で飲料水の接取ですけれども、本当にそういう相関が成り立つとするならば、我々
はここにいて、今12、3マイクロシーベルトくらいで心配いりません。それを反映してい
る水のレベルも、少なくともあわてる必要はありません。
次は原乳。牛乳が汚染された経路がはっきりわからないので、つまり牛乳生成の行程がわ
からないままに話をせざるを得ないんです。例えば、牛乳をとってきてどこかにおいてあっ
たと、1日か2日。そこに入ったのかもしれないんです。あるいはもっと常識的な理屈的な
ことを言えば牛が汚染された草を食べて、それが牛の体に入ってきて、それがお乳として濃
縮されてそれが原乳になったのかということが通常は考えられます。これがどういう経路の
中で入ったかわかりません。チェルノブイリの出来事がありました。あそこで舞い上がった
多くは放射性ヨウ素とセシウムです。それがヨーロッパ大陸を覆うとともに、ロシアの極東
をぬけてアメリカにくるわけですね。1986年と87年のアメリカの子どもの甲状腺機能
低下症の変化率をみたデータがあるんです。これはちゃんと学会誌に掲載されました。そう
しますと、同時にミルク中のベクレル、ミルク中の放射性ヨードを同時に横軸にとりまして、
縦軸にアメリカの子どもの、新生児だったか乳児だったか、子どもの甲状腺機能低下症の発
生率をみるんです。そうするとこういうカーブが描けるんです。このカーブは、ここにある
点はどこの州かということなんです。つまりここにもっともミルク中のヨウ素が高い、しか
も発生率が高い、ここの郡がどこかといったらば、アメリカに雲が入ってきた入り口です。
北西部です。北西部の諸州がもっとも高いです。一番低いのが南東です。北西が一番高くて、
南東が一番低いんです。あきらかに雲の経路とミルク中の放射性ヨードの濃さとそれから病
気の発生率というのが見事に一致するわけです。ただ、その時チェルノブイリは桁違いでし
たから放射性ヨードの量が。桁違いなんです。ここで類推する必要はないんですが、本質的
なものとしてミルクというものは牛が草を食べて濃縮して赤ちゃんにたどりつく。赤ちゃん
のそういう病気をおこす可能性はあるんです。
ある村がペットボトルを配布したということが、けしてあわててパニックになってという
ことではないという面がありうるんです。マイクロシーベルトのレベルで、空気中のマイク
ロシーベルトのピークと水のベクレルが相関するとすれば、牛乳に関しても基本的に同じこ
とです。
あの時一番汚染されていた草を食べた原乳がそうだというならば、放射性ヨードの空気中
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の漸減具合が決定的に大事になってきます。少なくても行政の指導が出荷差し止めとなって
いるかぎりは、我々はそこを根拠とするしかないんです。そういう出荷差し止めということ
においては、安心してどんどん飲んでくれとはならない。やっぱり控えましょうとなるんで
す。これは農家の大打撃です。畜産の大打撃になりますよね。ほうれん草が違うのは、上か
ら飛んできているものです。基本的にはきちんと洗えば線量は少なくなるので食べてもいい
です。ただ、赤ちゃんに、今の時期は杞憂なんだけれども控えようかということがあってい
いかなという気がするんです。ですからこれも情報公開です。今日から明日、あさってとど
ういう数字になっていくのかということが大事だなという感じです。
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