第4回「ハンガリー旅の思い出」2007年コンテスト作品 羽生さんの作品 “ハンガリーのクリスマスを味わう気ままな独り旅” 再び・・・・。 1.旅のチャンスはあまりにも突然に 2004年12月のペーチへ小旅行を含めたクリスマスのブダペスト滞在を最後に、もうしばらくはハンガ リー行きも難しくなるかも・・・・と諦めていた。 昨年晩秋11月中旬のある日。職場の愛すべき上司から「年末に休み取っていいよ」とのひと声!!思 わず「もしやハンガリー行けちゃうかも!?」と口走ったところ。「せっかくだから行っておいで、仕事は大丈 夫。遠慮しないで年休の計画たてなよ」すばらしいあと押し。何とありがたき上司!半分涙目で御礼を繰り 返しつつも、頭の中では素早く旅の計画が組み立てられていくのでした。またハンガリーへ行けるなん て・・・・!嬉しすぎる。 2.出発までの紆余曲折 ハンガリーの旅はこれで5回目。今回行けばやはりまたしばらくは行けない状況になるだろうと思い、今 回は壮大に「人生初・日本以外の場所での年越し」を体験しようと意気込むもののシルベステルのホテル 代は倒れそうなほどお高く、しかもこれぞと思う日程の飛行機はすでに満席。結局は前回同様、「クリスマ スを味わう旅」に落ち着くことになりました。飛行機の席を先に確保し、次にホテルの予約。今回もブダペ ストにじっくり滞在して、大好きなドナウ川の景観を思う存分堪能しようと考え、ドナウビューをブダ側・ペス ト側それぞれから楽しめる、有名な二つのホテルに的を絞りました。ハンガリー情報なんでもござれ!の 政観さんから教えていただいた“冬のキャンペーン”を使って、ブダ側のホテルは予約出来ました。ところ がペスト側のホテルは冬のキャンペーンの情報がホームページになく、予約センターに電話をして調べて もらったり、ホテルクーポン利用の場合との費用の比較など、下調べに想像以上の時間を遣ってしまいま した。 ホテルクーポン利用に決めて予約が完了したのは、出発のわずか6日前!その上、ドナウの景観堪能 の他にも、ブダペストで行きたい場所、小さな遠足で行きたい場所など数多くあり、滞在中のすごし方を吟 味する時間が殆ど捻出できないまま、前泊日を迎えてしまったのでした。 前泊日、通常勤務を終えて帰宅してからスーツケースに荷物を手当たり次第放り込み、フラフラになりな がら空港隣接のホテルにやっとすべり込んだ・・・・と思えば、荷物の詰め直しより先にやおら年賀状を書 き始める私。我ながらなんとも情けない姿・・・。真夜中にスーツケースと機内持ち込み荷物の仕上げをし て就寝したのは午前3時半・・・。羽田行きの飛行機は午前7時50分発。さあ今回の旅は成功するので しょうか。頭の中にブラームスのハンガリー舞曲第1番が重々しく流れていきます・・・。 3.ブダペストへの長い長い旅 睡眠2時間でボンヤリした状態のまま、千歳-羽田-成田-フランクフルトと乗り継ぎを繰り返し、出発 から時差抜きで考えるとほぼ24時間後に、ようやくブダの丘のホテルにたどり着きました。 今回の“初めて”は、羽田-成田のバス移動とフランクフルトでの乗り換え。怖れていた荒天に見舞われ ることもなく、順調に乗換えが進み、フランクフルトに無事到着できました。途中、羽田では、成田行きのバ スに乗るために、ターンテーブルから引きずり降ろしたスーツケースを全力で転がしてバス乗り場まで激 走し、乗るや否や発車するもたちまち渋滞で進まなくなるバス。重々しく頭に流れるハンガリー舞曲第1番 がいつしか子守歌となって居眠りに落ちるうち快走を始め、予定時間通りに成田到着で驚いたこと、成田 空港内の郵便局で年賀状を投函してから、自宅郵便物の局留め手続きをする自分に、成田まで来て何を やっているのやらとまた情けなくなったこと、フランクフルトまでの飛行機に空席が思いのほか多く、席を3 つ独占してゆったり過ごせて、ブダペストでの過ごし方を大まかながらも計画できて安心したこと。フランク フルトでの乗り換え待ちの間、携帯電話をセッティングして、メールのお試し送受信が成功し、初めてのハ ンガリー旅行の際には考えもしなかった技術の進歩に感激したこと、などなど今回の旅ならではの出来事 を味わって着ました。 いよいよブダペスト行き飛行機の搭乗ゲートが決まり、案内標識に従って向かうのは、何故かターミナル の端の方のようです。かなり歩いてようやくセキュリティチェックを受けると下りエスカレーターがあり、その 先に寂しげな1階の待合室が・・・。もしや、バスに乗せられる?!――――大当たり。バスを降りると目の 前に、懐かしのマレーヴの機体。ようやくハンガリーのすぐ近くまでやって来たことを実感でき、心が震え るような嬉しさを覚えました。ハンガリー人のCAさんにヨーエシュテート!とご挨拶して、微笑を返していた だいた時、今回の旅が決まってからこの時まで、漫然と続いてきた疲れがすべて吹き飛ぶような思いでし た。JALとのコードシェア便のためか、離陸前のアナウンスに日本語(それも文法が少しだけ違っている) が聞こえて、ちょっと吹いてしまったところへ流れるようなハンガリー語のアナウンスが聞こえ、なんだか涙 が出そうになってしまったのでした。 出発が少々遅れ、軽食のサンドイッチをいただいた後は、両目が勝手に閉じていきます。この時点で札 幌出発から実質22時間。しかも出発前夜の睡眠2時間では、どうしても睡魔には抗えません。とうとう眠っ てしまって、上空からブダペストの街明かりを見ながらの着陸はかなわず残念でしたが、CAさんにヴィス ラータ!とお別れした後は、秘蔵“到着したらまずやることリスト”を握りしめ、入国手続き、両替、スーツ ケース受け取りと破損チェック、エアポートミニバスチケット入手、とリスト通りに進みます。しかし相当頭が ボンヤリしていて、ミニバスのカウンターで「行き先はブダの丘のホテルまで、帰りはペスト側のドナウ横 のホテルから」と伝えるのに一苦労あり、おまけにチケット代はしっかり往復分の旅金を取られているでは ありませんか!(確か、ブダの丘のあのホテル宿泊ならば、ミニバスは往路分無料であった筈・・・)英語も ハンガリー語も前回の旅から全く進歩していないこともあってカウンターでの抗議を諦め、ドライバーが呼 びに来たのでミニバスに乗ってしまいました。なんだかすっきりしない感じです。 空港を離れ、市街地にどんどん近づいてゆく道中、暖かくオレンジ色にくすむ明かりに「本当にまたブダ ペストに来られたんだ」と感激し、涙があふれそうになりつつも、ますます威力を増す睡魔の力に、思わず 首がガクン・・・・極限でした。 ブダの丘のホテルの前でミニバスを降りたのは23時30分、ここで本日最後の仕事、チェックインが待っ ています。遅い時間でドアマンの姿もなく、へとへとな私には重過ぎる荷物を引きずってドアを開ける と・・・!!フロントマンが私に名前で呼びかけてくれました。まさか名前を呼ばれるとは思っていなかった ので、この時ばかりは驚きと嬉しさで目もパッチリになりました。外国に独りでたどり着き、名前を呼ばれる というのは何ともいえず嬉しいものですね・・・・。 チェックインの手続きをするうち、後ろにベルマン登場。きっと荷物を運びますと言ってくれていたので しょうが、眠さのピークでもうろう状態、立っているのがやっとの私には、ゆっくり話しかけてくれる英語も充 分に理解できませんでした。ごめんなさい。やっとの思いで着いた部屋は本当に素晴らしい眺望で、ベル マンもいい部屋で良かったと言ってくれたようです。少し目が覚めてベルマンにお礼を言い、独りになる と、望み通りの美しい夜景に目を凝らして、しばし見とれ続けました。くさり橋の写真を撮ろうとしたところ、 不意にライトアップが落ち、日付が変わったことを知りました。そのあとはもう、ベッドに倒れこみ、すぐに 眠りに入ってしまいました。 漁夫の砦からのくさり橋 ふわりとライトがともった瞬間・橋げたが緑色に輝くのはほんの少しの間だけ・日が暮れないうちの微妙な光加減が美しい! 4.ブダペストで出会った人々、出来事いろいろ <絵描きのエリカさん> 穏やかな朝の漁夫の砦でドナウの流れとペストの街並 みに見とれていると、「おはようございます、ブダペストの 絵はいかがですか?」と上手な日本語で話しかけたひとり の女性。毛糸の帽子にダウンのロングコートで重装備、手 には沢山の水彩画。―――――初めてのブダペストの旅 で、ツアーガイドさんが確か「観光スポットの物売りや写真 撮影屋には気をつけるように」と言っていたけれど、好み で安価なら記念いいかも・・・と思い。「ヨーレッゲルト、ヨー ルベセールニ ヤパヌール」と応じてみました。途端に彼女 に笑顔がはじけ「ハンガリー語、わかりますか?」と日本語 で。身振りつきで、「イゲン、デ チャク エジ キチト、ナジョ ン、ナジョン ネヘーズ マジャルル」と返す私。 漁夫の砦にて:絵描きのエリカさん 二人同時に笑って「上手です、よくわかります」「ケセネム、ありがとう。セレトネク ネーズニ(と絵をさし)」 見せてもらうと、ブダペストの名所あちこちを淡いトーンで描いたものに手造りの台紙を乗せて、かわいら しい仕上がり。 どの絵も素敵です。「ミンデンキ セープ!」とほめると嬉しそうな彼女、「どれでも好きなの、どうそ。3枚 で1000円、8ユーロ、2000フォリントね」と本当に日本語が上手です。3枚選んで1000円渡し、ついで にお願いして写真を撮ってもらいました。ふたりで一緒に撮ろうとミニ三脚を出す私を見るや、彼女は近く にいた若い女性観光客にスペイン語(?)で話しかけてカメラを預け、素早く私と並んで1枚撮ってもらいま した。 いったい何か国語を話せるのかは聞けませんでしたが、世界のあちこちから来る観光客相手に作品を 見てもらい、買ってもらうためには、とにかく前向きのコミュニケーションをとることが必要で、それを笑顔で 楽しんでいる彼女、エリカさんがとても輝いて見え、私も頑張ろうと思ったひと時でした。美しい漁夫の砦が さらに忘れられない場所になりました。またブダペストで彼女の絵を見たいと願っています。 <交通機関の人々> BKVの7日間チケットを買いに寄った、メトロ窓口の女性、ゲデレーのお城に行くため往復チケットをお願 いしたHEV窓口の初老の女性、スロバキア国境の街、コマーロム行きのチケットを買った、MAV東駅窓口 の気さくな男性、ホテルチェンジの際に呼んでもらったタクシーのドライバー、空港へ向かうミニバスのドラ イバー、そしてマレーヴのカウンターの親切な若い男性・・・皆さん言葉の出来ない東洋人に暖かく辛抱強 く接して下さいました。必要なことをメモ帳に大書し、見せながら話せば何とか伝わること。日本ではただ 普通に話せば伝わって当たり前ですが、日本語がほぼ通じないところで、自分で出来る方法で「伝えて、 伝わる」ことの嬉しさ、感動は、私にとって本当に大切なものです。 ウルシュ・ヴェゼールテレからゲデレー行きのHEV電車と思い込んで乗ったのは、実は枝分かれしてチェ メルへ行く電車で、それに気づいたのは車掌さんが検札に来て首を横に振った時でした。ひきつる私に車 掌さんはハンガリー語で懸命に説明してくれるのですが、私には全く理解できません。逆に車掌さんには 私の連発する英単語が殆どわからない様子。地図と身振りとハンガリー語のやり取りで、折り返す電車に 乗ったまま分岐点の駅まで行って、ゲデレー行きに乗り換えてよいことがかろうじて理解できました。車掌 さんは乗り換えの駅が近づくと私に合図し、一緒に降りて乗り換え電車のホームまで連れていってくれた のでした。心からケセネムとまだ若い車掌さんに告げ、ゲデレーのお城に行くことが出来ました。過密ダイ ヤの日本の交通機関で外国人が同じように困っていたら、同じような対応が果たしてできるでしょうか。こ こでもハンガリー人の暖かさに感激しました。 ゲデレー行きと早合点して乗り込んだHEV電車 行き先、よく見ればチェメルになっているに コマローム帰りに乗ったMAVの最新車両のド派手なシート模様 日本にはこんなのないのでは 逆に少しばかり悲しかったのはMAVの車掌さん。コマーロムを通ると思しき全く発車時間の同じ、違う ホームの2本の列車・・・。買ったばかりの改訂版MAV時刻表のどこにも同じ時刻に列車が2本発車すると は書いていず、ソンバトヘイ行き5番ホームでいいのか、9番ホームのジュール行きが正しいのかわかり ません。まずは5番ホームの車掌さんに、コマーロムで停車するか尋ねると、何と「わからない、インフォー メーションでお聞き」とどういうことでしょう!あなたが乗っている列車でしょうに・・・。この車掌さんにも英単 語は通じません。インチキハンガリー語で尋ねてもコマーロムと書いたメモを見せても、イゲンでもネムで もなく、ひたすらインフォルマーツィオと繰り返すのみ。発車時刻が迫ってきたので、インフォーメーションま で爆走し、窓口の年配男性に時刻表と“コマーロムに行きたい、何番ホームですか?”と大書したメモを見 せると、答えてくれているものの、なかなか聞き取れず、何度か聞き返すうちにようやく「キレンツ」とわか りお礼もそこそこに9番ホームを目指してまた爆走。何とか発車に間に合いました。 ----東駅も国際列車の発車駅だった筈。でもやはりハンガリー語をよく話せない私が悪かったのでしょう か。それとも単に運が悪かったのでしょうか・・・。ジュール行き列車の車掌さんにコマーロムに着く時教え てください、とお願いしたのに、結局は来てもらえず、自分で駅名表示板を見て降りたという落ちもつき、 “人に頼らず自己責任”とういう言葉が頭をかすめて生きました。 まあ、そういうこともありますよね。 <ブダの丘のホテルの人々> 素晴らしい眺望が私の心をぐっとつかまえて、この ホテルに泊まるのは3度目となりました。フロントマ ン、ベルマンに見覚えあるお顔が何人かいらして、 懐かしい気持ちになったと同時に、是非とも再会した かったのが、前回滞在中にパーチ一泊小旅行の実 現を助けてくださった、コンシェルジュのサボーさん。 チェックアウトする日の朝、ついにカウンターで発 見。「2年前のクリスマス。ここであなたが助けてくれ て、楽しい時間を過ごせて嬉しかったです。いろいろ ありがとう」・・・とインチキ英語で伝えると「私のこと 覚えていてくれてとても嬉しいですよ」とにこにこお 返事して記念撮影にも応じて下さいました。 ブダの丘のホテルロビーにて コンシェルジェのサボーさんと 他のスタッフも私にとってはフレンドリーな感じの 方が多く、ターンダウンに来てくださった若い女性の ふたり組も、さわやかな笑顔でクリスマスのオーナメ ントを「アヤーンデーク!」と渡してくださったり、外で 夜景を撮影して戻ると「ホジヴァン?」と声をかけてく ださるベルマン。電話が苦手なので得意のメモ書き 持参で“あと2時間後にチェックアウトします。荷物を 運びに来てください”とお願いに参上したところ、力 強くうなずいて何故かすぐに来てくださったベルマン (慌てて「ごめんなさい、2時間後にもう一度お願い いします」と必死に謝る私に、怒るそぶりもなくネム 夕暮れの王宮:ライトアップ前の素敵なシルエット ヴァイ、ノープロブレム・・・と笑顔で戻ってくださいま 朝、昼、夕方、夜、いろいろな姿を見せて着売れる王宮。いつ した・・・ごめんなさい!!!)。 見ても飽きません。いつまでも見ていたくなります。 荷物をタクシーに積み込んで「ヨーウタトゥ!」と車が離れるまで手を振って見送って下さったベルマン、 ドアマン、・・・・。それぞれの仕事といえばそれまでですが、何となく暖かな印象があって、また今度ブダペ ストに来れるなら、必ずここに泊めてもらおう、と改めて決意するような、私の大切な場所になりました。 ペスト側からのくさり橋 ほんのり点灯した直後 橋と同時に漁夫のとりでも少しずつまばゆくなる <ショッピングモール“ARKAD”にあるカフェレストラ ンのウェートレス> 電車待ちが長く、とても寒かったゲデレーからの帰 途、ウルシュ・ヴェゼールテレの大きなショッピング モールで夕食をとることにしました。たまたま見つけ たカジュアルな雰囲気のレストラン、黙って座るのも 何なので、通りがかりの背の高いブロンドが印象的 なウェートレスに声をかけました。 今回の旅の食のテーマは、“グヤーシュとホルト バージパラチンタ”です。注文を取りに来てくれた彼 女に、ミネラルウォーターも合わせてオーダーし、ま ず最初にテオドラウォーターが、次にグヤーシュが 運ばれてきました。 ウルシュ・ヴェゼールテレの大きなショッピングモー ル”ARKAD"にて クリスマスの装飾がまぶしい!! 大きなスープボウルになみなみと入った具だくさん なグヤーシュが私の胃袋にほぼおさまる頃、彼女が 私に何か話しかけてきます。悲しいかなそのハンガ リー語がわからず、何度か「テシェーク???」と聞 きなおすと、どうやらホルトバージパラチンタは来た かと確認してくれていたようです。「ネム」と答えるべ きところ思わず日本語で「マダ」と言ってしまったもの の、彼女は察してくれた様子で「OK!」と足早に奥へ 去っていきました。 ARKADのレストランでオーダーした大きなボウルのグヤー シュ。たくさんの具が中に沈んでいる。 ようやく登場のパラチンタ、かなりのボリュームでし たが、湯気がソースから上がり非常においしそうで す。彼女に心からナジョンセーペンケセネム!とお 礼を言ってしっかり味わっていただきました。サワー クリームとパプリカが絶妙に効いて思った以上にお いしく大満足でした。 少し食休みをしてから支払いをしようと彼女に来て もらうと、コーヒーやデザートを勧めてきます。すごく おいしくて満腹になったのでもう食べられない、と身 ぶりつきで伝えると、彼女が“ダメ!コーヒーを飲ま ないと帰れないの”と横目でにらんできます。 それならコーヒー一杯だけ・・・と申し出ると、“あは は、ジョークジョーク、お支払いOKよ!”と彼女が楽 しそうに笑い出しました。 ボリューム満点のホルトバージパラチンタソースでかくれている けれど2個あって、1個の大きさは携帯電話よりかなり大きい それならコーヒー一杯だけ・・・と申し出ると、“あはは、ジョークジョーク、お支払いOKよ!”と彼女が楽し そうに笑い出しました。英単語とハンガリー単語、そして身ぶりでのやりとりでしたが、彼女のお茶目っぷり がとてもかわいくて楽しくて、私もつられて大笑いになり、ナジョン テッツィク ケセネム・・とチップをはずん で、小さな金銀の折り鶴を広げて渡して揚げました。鶴を見るなりキャーッ!とでも言いたげな感激の表 情で、“私に?”と尋ねてきます。“もちろん!これは日本の幸せのシンボルの鳥でツルと言うんですよ”と 教えたところ、ポケットから仕事用に伝票を出して1枚ちぎり“ツルとここに書いて!”と出したので、 TSURU-CRANEと書いてあげました。おいしかったよ、楽しかったよ、ありがとうと何度もお礼を言って握手 もして手を振り合ってお別れしました。 メトロに乗ってしまってから、彼女と一緒に写真撮っておけばよかった。お名前教えてもらえばよかっ た・・。と残念でたまらなくなる私でした。まさかハンガリーの人のジョークで大笑いできる場面があろうと は・・・。 この小さな交流も、本当に思い出に残るものとなりました。 ブダペストの街のウォッチング:王宮そばのフォークアートのイ ブダペストの街のウォッチング:ブダの丘の住宅街にて。逆さに ベントにて。普通のマトリョーシカ、有名人のマトリョーシカ。ハ 張られた”POLICE"のテープ。ここで何があったか知りたい。 ンガリーのお土産だっけ? 5.ハンガリーのクリスマス。 前回のクリスマスの旅で、とにかくクリスマス期間はどこもかしこも閉まりまくっている、ということを学習 した筈の私でしたので、今回は“郷に入れば郷に従え”とばかりに、あまり出歩かず静かに過ごそうと、決 めていました。24日はブダの丘をゆっくり散歩して夕暮れのドナウライトアップを撮影し、夜はテレビで ローマ法王ベネディクト16世のクリスマスミサ中継を終了までずっと観て、25日はホテルチェンジと川沿 いの散歩、暖かい部屋から王宮のライトアップをひたすら眺め。そして26日にMAVでコマーロムへの遠足 と、少し足を延ばしてみたのでした。何とはなしに26日になれば幾分世の中も動きが出るのでは・・・?と 大いなる誤解をしてしまっておりました。 実際にコマーロムに着いてみると、列車から降りた多勢の人々は、おそらくクリスマス休暇関連の移動 だったらしく、街中に人影はまばら、TESCOを始めあらゆるお店は閉まり、ツアーインフォームもお休 み・・・といういつかどこかで見たような状況でした。もちろん、橋を渡って入国したスロバキアのコマールノ も同様で、ひっそりと静まり返った商店街を東洋人が独り、トボトボ歩いている少々あやしげな風景になり ました。 前回の旅の学習効果はなかった、というか懲りなかった、というか、どうにもトホホな遠足でしたが、お天 気が良くて美しき青きドナウを渡ってクリスマスの雰囲気満点な国境の街並みを見ることが出来やはり良 かった!としておきましょう。 MAVコマローム駅:すぐ向こうにドナウ川、国境の橋。橋の向こ う側がスロヴァキアのコマールノ 静かなコマーロムの街: この道をまっすぐ進んで橋を渡ればスロヴァキア ブダペストの街のウォッチング: ブダペストの街のウォッチング:デアークテール、仲通の婦人洋 西洋美術館の展示がちょうどゴッホ展。入場待ちの列が長くて 品店前にて。「ラインダンス」という言葉が浮かぶ 壮観!! ビックリ! 6.今回の旅をふり返って これまでのハンガリーの旅では何かしら新しい発見があり、感心したり驚いたりして、次の旅ではどんな 出来事が待っているだろうとわくわくしていました。今回もやはり、これまでとは違った新しいことにふれ、 人の暖かさやさしさに感謝感激する場面をたくさん体験できました。ハンガリーのことを思う時、必ずわくわ くします。そして美しく格調高いハンガリー国歌が聴こえる気がします。 しかし、EU加盟後のハンガリーは何か確実に変わってきているような印象も受けました。どんどん上がっ ていく物価、訪れる度に違っているメトロのチケットの値段。そして。「100≒50フォリント」の単純な計算 が出来なくなったこと。美しく整備される観光資源とは裏腹に、列車の窓の外に見えるごみの不法投棄、 建物への落書き、空ろな表情がやるせないホームレスの人達、誰彼となく近寄り手を差し出してくる物乞 いの人、など今まであまり認識できなかったブダペスト、ハンガリーの姿にもわずかながらふれたように思 います。美しい景観が印象に残り、何度でも訪れたいと願う気持ちには変わりありませんが、ただ美しい ばかりではない、もっと違ったハンガリーの側面にも近づいてみたいと感じるようになってきました。 そのためにも、もっと英語なり、ハンガリー語なり理解できるようにならなければいけないでしょうし、ハン ガリーの人々に積極的に接していけるようになりたいと思います。実際に、それらは私にとってはまだ難し いことかも知れません。視野を拡げていくためにも、今後もたくさんのハンガリー情報にふれる努力をし、 さまざまな姿のハンガリーを知ってもっと好きになりたいと思う今日この頃です。 政観さんには本当にお世話になりました。また、ハンガリーで私に接して下さったたくさんの方々への感 謝の思いを忘れることなく、そして私の大切な上司にも感謝して、またいつの日かたくさん発見ができる旅 に出たいと願っています。 皆さんありがとうございました。次回またお目にかかりましょう。 ブダペストの街のウォッチング ブダの丘の住宅街にて 王宮そばのフォークアートのイベントにて コマーロムの住宅街にて このようにゴミ袋ロールのついたゴミ箱が 一見ハンガリーの刺しゅうのクロス。しか 屋根から落ちそうなサンタクロース。夜は あちこちに備えられている。ちゃんとふた し裏のラベルを見ると・・・どうやらハンガ おそらく木がライトアップになる。 付き リー製ではないらしい・・?? 2007年10月
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