太陽シール パック

~飽くなき顧客の満足追及~
企業情報
今回ご紹介する企業は、日本で初めて紙製のドラム
缶「ファイバードラム」の製造・販売を行った太陽シ
ールパック株式会社です。
同社はファイバードラムを製造し、販売を始めた
1955 年から現在まで国内シェアトップを走り続けて
名
称 太陽シールパック株式会社
所在地 和歌山県和歌山市築港 4 丁目
19 番地
設
立 1955 年
代表者
糟谷 雅隆
います。業界トップを走り続ける秘訣を糟谷社長にお
従業員
100 名 資本金 20 百万円
伺いしました。
H
http://www.taiyosealpack.co.jp/
●
P
日本で初めてファイバードラムを製造するに
至った経緯を教えてください。
当社は 1955(昭和 30)年に祖父が創業いたしました。祖父は
元々兵庫県出身で、縁あって和歌山市議会議員を1期務め、2期
目に立候補したものの落選。その後何か事業をしようと考えてい
た時、援助物資としてアメリカから輸入された粉ミルクの容器に
ファイバードラムが使用されていることを目撃。当時の日本で化
学品や医薬品の輸出用包装に使われていたのは、殆どが木箱やベ
ニヤ製の樽でした。「ファイバードラムは梱包の簡便さ・分別の
しやすさにおいて、とても新しく機能的な容器だ!」と感じた祖
父は「将来的には資源の節約が重要視される世の中になる。その
時、ファイバードラムが既存の包装資材にとって代わる」と着目し、
国産化を行うために会社を設立しました。
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創業に関して、何か問題等はなかったのでしょうか。
もちろん色々な問題があり、製品化までは並々ならぬ苦労があった
と聞いています。日本初の国産化であったため、ノウハウも無ければ、
製造するための機械、材料も無い、完全に 0 からのスタートだったの
です。祖父は製造機械を自作し、1 からファイバードラムに適した紙
太陽シールパック㈱
代表取締役
糟谷
雅隆
氏
や接着剤などの開発に取り掛かりました。試行錯誤の結果、無事製品化に成功した後は、和歌
山の地場産業である化学産業と需要がマッチし、順調に業績を伸ばしていきました。
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ファイバードラムとはどんなものですか。
一言で言えば「省スペース&分別リサイクルが容易」な紙製の
ドラム缶です。主に粉体状の化学品や医薬品の輸出に使われてい
ます。ファイバードラムは包装資材業界の中でもかなりニッチな
製品ですが、鉄のドラム缶に比べサイズや仕様等の自由度が高い
製品となっています。「水分を含むと固まる薬品」を入れるため
に防水防湿性を高めたものや、「金属に触れると変質する薬品」
を入れるために金属部品を極力減らしたものなど特殊な薬品に
対応した製品が特徴的です。その他、試作品を入れるための少量
サイズのもの、大量の薬品を運ぶための大容量サイズのものなども生産しており、求められる
製品の仕様は多岐に渡っています。
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現在に至るまで業界トップシェアを誇っている秘訣とは。
前述しましたが、ファイバードラムは包装資材業界の中でもかなりニッチな製品で、サイズ
や仕様等の自由度が高いため、お客様の要望に応じた製品を提供できます。しかし、お客様に
直接ニーズをお聞きし、社内で試行錯誤しながらサンプルを作成し、お客様のご意見をうかが
いながら修正、製品化するのはかなり労力を使うこともしばしばですが、これもお客様のため
との信念のもと、誠意をこめて製品開発を行ってきました。この姿勢を貫いてきたことが、お
客様の信頼を得てきた大きな理由だと思います。
その甲斐もあり、当社は平成 23 年度科学技術分野の文部科学大臣表彰を受賞する運びとな
りました。
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受賞のきっかけとなったものは。
当社が開発した、ファイバードラムを進化させた「Aドラム」とい
う製品です。この製品は、従来のファイバードラムでは補強のため胴
部に鉄製の補強リングを付けていましたが、胴部を全て紙製にするこ
とで、更に環境に配慮し、且つリサイクル性も向上をしながら、従来
のファイバードラムと同等の強度を維持した優れものとなっていま
す。この「A ドラム」の開発が評価され、
「ファイバードラムの筒状
本体の製造方法の開発」について科学技術賞(技術部門)を受賞しま
した。
この製品を開発した背景には、リサイクルに向けた社会的な流れが
くるとの動きを予見した、当社の先見の明によるものがあります。当
社は「循環型社会形成推進基本法」が成立する 1 年前の 1999 年に
ISO14001 の認証を取得し、先んじて「省資源で環境に優しい製品」の開発に取り掛かってい
ました。そして開発された「Aドラム」は、業界の先駆け的な存在である当社の、長年培って
きた実績と信頼を活用し、
「一見成熟した業界に新たな風を吹かせる新商品」として、そして高
付加価値の製品であることを強く全面に押し出す、つまり品質で勝負するというメーカーの立
場を鮮明にすることにこだわりを表した商品となっています。
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要望に応えるのは大変ではないですか。
大変ではありますが、当社はお客様の要望には必ず応え、お客様の満足を第一とするスタン
スを基本方針としています。お客様の細やかな要望に最大限に応えるには、営業部門はお客様
のニーズをうまく拾い上げ、技術部門に余すことなく伝えなければなりません。大変難しいと
ころですが、過去からの実績やノウハウを駆使し、要望に合わせた最適な包装資材を提案させ
ていただいております。場合によっては、包装物のスペシャリストである包装管理士(※)の資
格を持った営業社員及び技術部門が一体となり、新包装資材の開発も視野に入れて対応させて
いただいています。
(※)包装管理士・・・日本包装技術協会が認定する民間資格。包装廃棄物リサイクルや環境問題、アク
セシブル(ユニバーサル)デザイン等に対応する、包装物流のスペシャリスト。
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御社独自の取組みなどがあれば教えてください。
当社では毎年社長が「経営方針書」を作成し、従業員への経営方針発表に使用、配付してい
ます。その経営方針書に付随して、3年前からスケジュール欄に仕事の ToDo リストや会社の
休日、また珍しいと自負しているのは、社員の誕生日なども載せています。つまり、この経営
方針書があれば、業務の漏れ防止から誕生日をきっかけとした社員間のコミュニケーションま
で網羅できるという、オールインワンな 1 冊となっております。この経営方針書を配付以降、
今まで話すきっかけのなかった社員同士での会話も生まれています。
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今後の御社の展望を教えてください。
当社は今年で創業 60 周年にあたる記念すべき年を迎え、本社・和歌山工場を新設移転する
予定です。これを弾みとして、今まで築き上げてきた多くのお客様という財産を大切にしつ
つ、今後もファイバードラムに関しては継続して製品開発力を上げていくとともに、お客様
の品質についての多様な要求にお答えし、納期を 1 日でも短縮し、もっと多くのお客様のお
役にたてるようになりたいです。そして産業用包装資材分野では、
「太陽シールパックに相談
すれば必ず何とかしてくれる」と信頼頂けるようになるよう頑張ります。
< 取材後記 >
話を伺っている中で、社長が何度も仰った「お客様第一主義」。お客様の要望に応えた製
品を作る、高い品質を維持する、顧客が必要な時にすぐに提供する。ある意味当たり前なこ
とですが、その当たり前を突き詰めていくことで他社との差別化が図られ、会社経営の一番
の武器となっています。
「尽道楽生」という企業理念は2代目社長が作った造語だそうです。これを現在
では、
「人生や仕事には様々な道(進むべき方向、手段の意)があり、お客様の役に
立つこと、喜んでいただけることをよく考え、たくさんの選択肢から当社が進むべ
き道を定め、できることをやりつくすことで、お客様も会社も社員も楽しく心安ら
かに生きていくこと」との解釈をし、社内で浸透を図っています。社長様への取材
や工場を見学させて頂くなかで、社員の皆さんの製品に対する妥協を感じさせない
強い姿勢と、連帯感が感じることができました。
創業 60 周年を迎え、更なるお客様満足度 No.1 を目指し、あくなき向上心でお客様の要
望に応えていくその姿は、職種は違えど我々の目指すべき姿でないかと、改めて背筋を正そ
うとの思いが芽生えました。
(和歌山財務事務所 財務課
課員)
掲載している情報は、平成 27 年 5 月時点のものです。