平成25 年2月24 日 園 だ より 佛教大学附属幼稚園 ひみつのポケット 園長 藤堂俊英 冬が去って春がもどって来る。一陽来復。そんな言葉を陽ざしに感じる3月を迎えます。 この時節になると時々ですが、ポケットの中から半世紀も前のある思い出を取り出します。 それは小学校6年生の3学期のことです。音楽の筆記試験に「春は名のみの風の寒さや」で始ま り、「春と聞かねば知らでありしを、聞けば急かるる胸の思いを」で終わる唱歌『早春賦』の歌 詞の意味を書きなさいという問題が出ました。返却された答案の点数は 99 点。私のところへ来 たかったに違いないあの1点は何処へ行ってしまったのだろう。そんな思い出がまだポケットの 中に入っているのです。 この前の月曜日、子どもたちにポケットの話をしようと思い、初めに「お腹のところにポケッ トを持っている動物さんはなあに?」と聞いたところ、すぐに「カンガルーさん」「赤ちゃんが 入っているの」という答えが年少さんから返って来ました。カンガルーのお母さんのポケットは 大切な赤ちゃんを入れるために、私たちのポケットはハンカチとかティッシュペーパーとか、大 人の人は財布とか車の免許証とか携帯電話とか大事なものを入れるためにあるんだねと話した 後、次に引用する田中たみ子さんの「僕の心のなかのポケット」のような話をしました。 ぼくは 心のなかに だあれも知らない ひみつのポケット もっているよ かあさんの うれしい ことば おばあちゃんが ほめてくれた ことば 先生が ほめてくれた ことば たいせつに入れてあるの ぼくは どうしていいか わからなくなるとき 心のポケットから それを出してくるんだ そのことばに助けられるんだ ぼくは どうしようもなく 落ちこんだとき 先生に ほめてもらった ことばも 思い出してるんだ 元気が出てくるよ 一口にポケットと言っても、内ポケット、外ポケットなどいろいろあります。子どもたちの心 の中の秘密のポケットには、困った時やつらい時、取り出して元気がもらえる言葉が入っている ように願わずにおれません。ポケットに入れた手がぬくもりを感じるように、子どもたちの秘密 のポケットにもぬくもりを感じる言葉をそっと入れてあげたいものです。
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