10. 不動産の譲渡所得

10. 不動産の譲渡所得
譲渡所得金額の計算
譲渡所得金額=総収入金額 − (取得費
譲渡益
+
譲渡費用)
譲渡価格
不明の場合 or
概算取得費
よりも低い場合
取得に要した金額
−
減価償却累計額
+
その後の設備費・改良費
総収入金額×5%
とできる
(概算取得費)
※ 相続開始の翌日から相続税申告期限の翌日以後
3年以内に譲渡した場合
購入代金
登録免許税
不動産取得税
印紙代
借入利子
仲介手数料
相続税 など
※
譲渡時仲介手数料
立退料
取り壊し費用など
修繕費 ×
固定資産税 ×
引越し費用 ×
1
短期譲渡所得と長期譲渡所得
・ 分離課税
・ 短期譲渡所得: 所有期間が5年以下の場合
→ 税率39% (所得税30%+住民税9%)
長期譲渡所得: 所有期間が5年超の場合 → 税率20%(15%+5%)
基準 譲渡した年の1月1日
P149 (例)
購入時: H17年4月
譲渡: H22年9月
5年後は?
H22年4月のはず
H22年1月
比較
譲渡した年の1月1日は?
H22年1月 < H22年4月
取得日と譲渡日 (P31)
取得日
短期
・ 他からの購入の場合
「引渡し日」 「契約の効力発生日」
納税者による選択
・ 相続、遺贈の場合 → 贈与者の取得日
譲渡日
相手への「引渡し日」
「契約の効力発生日」
2
納税者による選択
11.居住用財産の譲渡の特例 (参考問題:P178、 2010年1月実技 第4問)
(復習)
Point
・
・
・
・
譲渡益が生じる場合か、譲渡損の場合か?
買換えが必要な場合か?
譲渡損のケースでは、住宅ローンがあるかどうか?
所有期間の要件があるか?
共通の要件:
・ 自己の居住用財産であること
・ 配偶者や親族などへの譲渡ではないこと
・ 3年に1回のみの適用であること
・ 居住の用に供さなくなった日の3年後の12月31日までの譲渡
・ 確定申告が必要
譲渡価格
購入
4000万
(取得費+譲渡費用)
売却
8000万なら
譲渡益
居住用
3000万なら
譲渡損
① 3000万の特別控除
② 軽減税率
③ 買換え特例
④ 買換えの損益通算
と繰越控除
3
⑤ 譲渡損失の損益通算と
繰越控除
譲渡益が生じる場合
例1
Aさんは、現在居住中の自宅を売却予定。自宅の取得費は3750万円、売却時の
仲介手数料は250万円である。この自宅は取得後、すでに15年が経過している。
① Aさんが8000万円で売却できた場合の課税譲渡所得は?
② そのときの税額(所得税+住民税)はいくらか?
① 居住用財産の3000万円特別控除
居住用財産の譲渡で、一定の要件を満たす場合
譲渡所得=譲渡価格 −(取得費+譲渡費用)− 3000万(特別控除)
・ 所有期間は問わない
・ 確定申告が必要
・ 譲渡後、新住宅を住宅ローンを組んで購入しても住宅ローン控除は×
例1
① 8000万−(3750万+250万) −3000万=
1000万
4
② 居住用財産の軽減税率
3000万特別控除との併用可
所有期間が10年超 → 軽減税率14%(10%+4%)が適用可
例1
② 1000万 × 14% = 140万 → 長期譲渡所得の税額
・ ① の3000万円特別控除との併用可
・ 3000万円控除後の譲渡益が6000万超の場合には、軽減されない
(→ 20%)
(例) 3000万控除後の譲渡益が1億円の場合
6000万まで → 14%
残りの4000万 → 20%
注意
もし、居住用ではなくて、事業用ビルの譲渡なら・・・
→ 軽減税率の適用はなし → 20% (15%+5%)
譲渡益
購入
売却
3750万
(取得費)
居住用
8000万
(譲渡費用250万)
4000万
① 特別控除 3000万あり
② 所有期間が10年超なら
→ 軽減税率もあり
5
③ 特定居住用財産の買換え特例
譲渡益
購入
3000万特別控除
軽減税率の特例との併用不可
課税なし
4000万
売却
3750万
(取得費)
居住用
(譲渡費用250万) 10年以上居住
10年超 所有
2億円以下
譲渡資産
買換え
8000万
譲渡価額
選択適用
になる
将来売却
購入
購入価額
1億のケース
6000万の
ケース 敷地
居住用
50㎡以上
500㎡以下
買換資産
(取得費)3750万
例1−2
(取得日) 買換え日
③ Aさんが8000万円で住宅を売却後、買換え特例を選択して
③−1 1億で新たな住宅を購入する場合
③−2 6000万円で新たな住宅を購入する場合 にはどうなるか?
1.譲渡価格 < 購入価格
=
8000万
1億
差額分のみ課税
譲渡の際の譲渡益については、
将来の売却時まで 課税繰り延べ
③−1 の場合 : 譲渡益4000万の課税はゼロ (買換え時の譲渡は
6
→ 将来の売却時に課税 なかったとみなす)
差額に対しては所得税
2.譲渡価格 > 購入価格
③−2 の場合: 8000万(譲渡価格) > 6000万(購入価格)
2000万(収入)については課税
※ 実際の課税額は、この収入金額に対してではなく、
譲渡資産の一部の取得費を差し引いた「譲渡益」×税率分になる
収入金額=8000万−6000万=2000万
取得費+譲渡費用=4000万×2000万 =1000万
8000万
譲渡益=2000万−1000万=1000万
よって、税額=1000万×20%=200万
・ 譲渡者本人が10年以上居住、所有期間10年以上であること
・ 新たな居住用財産を買い換える場合に適用
(床面積50㎡以上、土地は500㎡以下の場合)
・ 3000万の特別控除、軽減税率との併用は不可
・ 新たに住宅ローンを組んで購入する場合でも、住宅ローン控除は×
・ 確定申告が必要
7
住宅ローン控除との併用○、所得税・住民税に適用
親族への譲渡は×、確定申告必要
譲渡損失が生じる場合
青色か白色申告かは問わない
④ 居住用財産の買換えによる譲渡損失の損益通算および繰越控除
例2
Bさんは、4000万円で購入して20年間所有していた現在のマンションを
2000万円で売却して、住宅ローンにより5000万の新しいマンションに
買い換えた。
Bさんの給与所得が600万であるとき、譲渡損失は?
譲渡損
購入
購入
売却
4000万
居住用
5年超
2000万
住宅ローンは残っていなくてもよい
取得の翌年末
までに居住
2000万
買換え
5000万
居住用
50㎡以上
10年以上の
住宅ローンあり
譲渡年: 譲渡損失2000万
損益通算 600万−2000万=−1400万 → 所得0 (所得要件なし)
1年後: 繰越控除 600万−1400万=−800万 →所得0
所得要件
8
2年後: 繰越控除 600万−800万=−200万 →所得0
3000万
3年後: 繰越控除 600万−200万=400万 → 所得400万(所得税)
以下
翌3年間繰越可
・ 所有期間が5年超であること
・
・ 買換えの居住用財産について、10年以上の住宅ローンがあること
(譲渡する財産については、ローンが残っている必要はない)
・ 各年の合計所得が3000万以下である年のみ
(損益通算の譲渡年は所得要件は問わない)
・ 確定申告が必要
住宅ローン
控除も
適用可
譲渡した年の譲渡損失を損益通算し、
翌年以降3年間、繰越し可能
⑤ 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除
買換え要件なし
例3
Bさんは所有期間が20年である現在のマンションを2000万円で
譲渡して、譲渡後は新たにマンションを購入せずに、賃貸マンションに
移り住む予定である。
現在のマンションの取得時の取得費用は4000万円であり、このマンション
には、現在も住宅ローン残高が2500万円残っている。
Bさんの年間の給与所得を600万とするとき、損益通算、繰越控除が
みとめられる金額はいくらか?
9
譲渡損
売却
購入
4000万
2000万
居住用
5年超
住宅ローン残高
2500万
2000万
少ないほう
他の所得と
損益通算
住宅ローン返済に
充当しても、なお残る
オーバーローン残高
500万
損益通算可能な額
・ 譲渡損失= 取得費4000万−譲渡価格2000万=−2000万
・ 譲渡資産の住宅ローン残高−譲渡価格=2500万−2000万
=500万 少
(オーバーローン)
少ない方の額
損益通算および繰越控除できる限度額
この例ではオーバーローンの500万円のみが損益通算の対象
よって、損益通算後は 600万−500万=100万
譲渡年の所得
(給与所得)
所得税
もし、損益通算によっても損失が残れば、翌3年まで繰越控除できる
10
・
・
・
・
所有期間が5年超であること
住宅ローン残高が残っている財産の譲渡であること
合計所得が3000万以下の年であること
確定申告が必要
買換えである必要はなし
譲渡損失は、住宅ローン残高−譲渡価格を上限として、
損益通算後の譲渡損失を翌3年間繰越控除することが可能
11
参考問題1 (問題集P347、H21年9月学科 問題49)
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例」(以下「本特例」という)
に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、各選択肢において、
適用を受けるための必要とされる他の要件等はすべて満たしているものとする。
1. 譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下の居住用財産を譲渡した
場合、本特例の適用を受けることはできない。
2. 居住用財産を配偶者に譲渡した場合であっても、本特例の適用を受けること
ができる。
3. 本特例の適用を受けた翌年に、他の居住用財産を譲渡した場合であっても、
その譲渡について本特例の適用を受けることができる。
4. 本特例と「居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例」は、重複して
適用を受けることができる。
12
12.その他の不動産の譲渡の特例
「特定の居住用財産の買換えの特例」との相違に注意
取得時期
特定居住用財産の
買換えの特例
固定資産の
交換の特例
取得費
その他(効果など)
譲渡資産の取得時を
引き継がない
(買換え時が取得時)
譲渡資産の
取得費
譲渡資産の
価額のほうが
高い場合に、
差額部分のみ
譲渡とみなす
譲渡資産の取得時を
引き継ぐ
譲渡資産の
取得費
譲渡資産の
価額のほうが
高い場合に、
差額部分のみ
譲渡とみなす
価額差は高いほうからみて20%以内
土地と建物の交換は×
特定事業用資産の
買換えの特例
先行取得も○
面積要件あり
譲渡資産の取得時を
引き継がない
(買換え時が取得時)
譲渡資産の
取得費
※
譲渡資産の価額の
ほうが低かった場合
でも80%分まで
しか課税の繰り延べ
13
なし
※
他の2つの特例の場合
→ 譲渡価額 8000万 < 買換え資産の取得価額10,000万
譲渡はなかったものとみなされて、
現時点での課税はなし
将来の売却時まで繰り延べ
特定事業用資産の買換えの場合
→ 譲渡価額8000万 < 買換え資産の取得価額 10,000万
80%の6400万のみが譲渡がなかったとみなされる
残りの1600万(8000万−6400万)は収入金額(譲渡益)
とみなして課税あり (→P160の計算)
14
(出所) きんざい「FP技能検定2級教本6 不動産」
10−11年版 P174∼P191
P165の比較表
13. 土地の有効活用
自己建設方式
有効活用に関するすべてを土地所有者自身がおこなう。
土地の権利移転なし
事業資金の調達は土地所有者
建設会社
建物
引渡し
建設
請負契約
賃貸
テナント
土地所有者
資金借入
金融機関
元利金支払
賃料
(10−11年度版)
事業受託方式
転貸
テナント
賃料
一括賃貸
建物
引渡し
建設
請負契約
ディベロッパー(事業者、土地開発業者)が一切の業務を請け負う。
土地の権利移転なし
建設
土地所有者
資金借入 資金調達は土地所有者
元利金
支払
事業受託者
賃料
金融機関
資金調達の調整
15
土地受託方式
土地所有者が土地を信託銀行に信託として預けて、信託銀行が管理や運営
をおこない、その運用成果を信託配当として受益者(土地所有者)に配分する
信託終了後は土地の権利は
金融機関
土地所有者に戻る
資金調達
信託
信託銀行
土地所有者
(委託者・受益者)
元利支払
賃貸
(受託者)
受益権
信託配当
信託財産
テナント
賃料
(土地や建物)
建設請負
契約
代金支払
建設会社
定期借地権方式 (→P115)
土地の所有権の移動なし
事業資金は不要(資金調達の必要なし)
16
建設協力金方式
建物に入居するテナントから建築費相当額を借り受けて、そのテナントが
要求する建物を建てて賃貸する方式。
ロードサイド店舗(車両の通行量が多い幹線道路沿い)などで利用。
共同開発方式
小さすぎる土地や規模・形状などの制約から単独での利用が難しい土地を
隣接地と併合して一体的に利用する方法。
等価交換方式
土地所有者: 土地
ディベロッパー: 建物の建設費
それぞれの出資割合に応じて
土地建物を所有する
土地の所有権は一部手放すことになる
事業資金は必要なし
建物
ディベロッパー
建設費
(事業者負担)
土地
土地所有者
(建設の資金は必要なし)
共同開発
総事業費
出資割合 土地所有者
で分ける
の取り分
土地評価額
17
完成後
全部譲渡方式
ディベロッパー
①すべて譲渡
土地
土地所有者
② 完成後、
出資割合に応じて
土地付建物として取得
土地付建物
(新規取得)
取得費10億
譲渡価額100億
譲渡益90億
買換え(交換)
等価交換方式に
関係する租税特別措置法
買換えの特例により
譲渡時の課税なし(または軽減)
(課税繰り延べ)
譲渡資産(土地)の
取得費を引き継ぐ
立体買い換え(中高層共同住宅)
→ 個人の場合100%繰り延べ
取得費10億
減価償却費が 少
不動産所得 多
事業用資産の買い換え
→ 個人も法人も80%繰り延べ
(譲渡益90億×20%=18億には課税)
18
部分譲渡方式
ディベロッパー
譲渡した土地に見合う分の
建物を交換してもらう
①一部のみ
譲渡
建物
土地所有者
土地
建物のみの
新規取得
※1 取得した建物を賃貸する場合
・ 賃料収入になる
・ 相続税評価額の引下げ効果がある
「貸家建付地」としての評価額
マンション
(例) 敷地の自用地評価額 8000万
借地権割合60%
借家権割合30%
賃貸割合100% の場合
貸家建付地の
評価額は?
8000万×
(1−0.6×0.3×1.0)
=6560万 19
※2 等価交換方式における土地所有者の取得する建物の床面積
(P166、 配布資料の参考問題(H21年9月実技 第4問))
出資割合に応じた所有分の決め方
① 原価積上方式
建物建設費
床面積3000㎡
9億
土地評価額 3億
この金額の比率で床面積全体を
按分する
2250㎡
ディベロッパー: 9/12
×3000㎡= 750㎡
土地所有者:
3/12
②市場性比較方式
床面積3000㎡
ディベロッパーの建設費用 8億円
粗利益 20%
販売可能単価 50万円 (1㎡あたり)
売上高
8億÷0.8
=10億
100%
?
粗利益20%
建設費80%
→8億円
1㎡あたり50万円で
10億売り上げるには、
床面積は何㎡必要か?
→ 10億÷50万=2000㎡
(ディベロッパーの
取り分の面積)
土地所有者
へ還元する
面積は?
1000㎡
20
参考問題2 (H20年1月学科)
不動産の有効活用手法の一つである等価交換方式に関する次の記述のうち、最も
不適切なものはどれか。ただし、土地の所有者は個人とする。
1. 土地所有者は、建築費等の資金負担なしで建物を取得することもできる。
2. 土地を共有、建物を区分所有とした場合、土地所有者は取得した区分所有建物
の専有部分を賃貸することができる。
3. 土地所有者が取得した建物を賃貸した場合、相続財産の評価における貸家の
評価、貸家建付地の評価は適用されない。
4. 土地所有者は、租税特別措置法における各種買換えの特例の適用を受けること
により、譲渡所得に対する課税を繰り延べることができる。
21
14. 不動産の証券化
損益収支(税法上の利益)と資金収支(キャッシュフロー)
キャッシュフローは実際の現金の流れ
→ 借入金の元金返済部分はキャッシュの −
減価償却費は実際にはキャッシュの流出はないが
必要経費になるので損益収支では費用処理されている
不動産
所得
損益収支
資金収支
元金部分はマイナスしない、減価償却費はマイナス
元金部分もマイナス、減価償却費はマイナスしない
(例) (問題集P222、H20年9月学科 問題50より改題)
家賃収入 4,800万
借入金利子 1,400万
元本返済額 1,400万
その他経費 1,500万
現金収支
500万
減価償却費 1,200万
不動産所得は?
4,800−1,400−1,500−1,200
=700万
22
DCF法による採算判定
(P112∼P113の数値例)
DCF法: 将来のキャッシュフローを現在価値に割引いて評価
毎年の賃貸による純収益
+
保有期間終了後の復帰価格(売却価格−売却費用)
1200万円の純収益が得られる投資不動産
3年間貸して、3年後に2億円で売却、
割引率5%のとき、この不動産の価格は?
r
投資家の
期待収益率
1年
2年
1200万
(1+r)
1200×
複利現価率
3年
1200万
1200万
2億
1200
1200
1200
2億
+
+
+
=2億547.6万円
(1.05)3
1.05
(1.05)2
3
(1.05)
各期の純収益の
現在価値合計
+
復帰価格の
現在価値
23
①NPV法(正味現在価値法)
DCF法で求めた評価額から投資予定額をひいて、プラスなら投資価値あり
マイナスなら投資価値なし
この数値例において、この不動産の投資予定額が2億500万円であると
するとき、NPV法で判断すると、投資すべきかどうか?
NPV(正味現在価値)= 2億547.6万円−2億500万=47.6万>0
DCF法による評価額
投資予定額
②IRR法(内部収益率法)
投資価値あり
NPV法: 投資家の期待収益率がr=5%である場合に
現在価値合計を計算して、投資予定額と比較
IRR法:
投資予定額をちょうど回収できるようなNPV=0となる
割引率r(=予測収益率、内部収益率)はどれくらいかを求める
これと、投資家の期待収益率5%とを比較
投資回収できるだけの収益率>期待収益率
→ 投資価値あり
=
(内部収益率)
<
→ 投資価値なし
24
(参考) 定式化すると、
投資予定額
1200
1200
1200
2億
+
=2億500万円
+
+
(1+r)3
3
(1+r) (1+r)2
(1+r)
これを満たすrは?
(内部収益率)
③DSCR(借入金償還余裕率)
各期の純収益
借入金元利返済額
>1 → 純収益>借入金元利返済額
「返済に余裕がある」
<1 → 借入金を返済できない
つまりDSCRが大きいほど、返済に余裕があると判断
不動産投資の利回り
年間総収入
一般的に用いられるもの → 総収入利回り= 自己資金+借入金
年間総収入−(諸経費)−借入金利
自己資本
投資収益率>借入金利 → 借入金を利用することで
レバレッジ効果が働く
自己資本利回り=
25
※ P171の数値例
借入金併用型投資によるレバレッジ効果
不動産価格 1億円
収益率 10%
A. 全額自己資金の場合
不動産 自己資金
10000 10000
10%
収益
1000万
自己資本利回り
= 1000万
10000万
= 10%
条件
投資収益率>借入金利
B. 金利5%で借入金5000万と
自己資金5000万を併用した場合
10%
借入金
不動産 5000
10000 自己資金
5000
5%
収益
1000万
金利
250万
自己資本利回り
= 1000万−250万
5000万
=
15%
借入金を併用することで
自己資金に対する収益率
が上昇する (レバレッジ効果)
26
参考問題3 (H21年5月学科)
不動産投資の分析手法に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. IRR法(内部収益率法)は、不動産投資の内部収益率と投資家の期待する
収益率(期待収益率)とを比較して、投資の適否を判定する方法である。
2. NPV法(正味現在価値法)は、DCF法によって求めた投資不動産の収益価格
と実際の投資(予定)額の現在価値とを比較して、投資の適否を判定する
方法である。
3. 借入金併用型の不動産投資で、レバレッジ効果が働いて自己資金に対する
投資収益率の向上が期待できるのは、総投下資本に対する収益率が
借入金の返済利率を下回っている場合である。
4. 不動産投資のDSCR(借入金償還余裕率)は、投資不動産からの年間の
純収益(元利金返済前キャッシュフロー)を年間の借入金に係る元利金返済額
で割った率であり、この率が大きいほど、借入金に係る元利金返済に余裕が
あると判断することができる。
27
不動産の証券化
不動産のままでは多額の資金が必要になり、流動性が低い
証券化することで、少額投資が可能になり、流動性が高くなる
(参考) 一般的な証券化のスキーム
証券化とその関連業務のみを行なう「特定目的会社(SPC)」が
設立されて、資産譲渡や証券発行が行われる
資産譲渡
原資産
保有者
代金
オリジネーター
貸付債権や
住宅ローン
不動産などが
証券化の対象となる
特定目的
会社
(SPC)
証券発行
配当
代金
借入
投資家
投資家
金融機関
これらから得られる
収益をもとにする
28
SPCへ
500
譲渡
オリジネーター
資産
(不動産)
負債
600
1000
自己資本
400
SPC
代金 500
負債を返済
資産 特定社債
500 優先出資
証券発行
配当
投資家
購入代金
オフバランス化
資産
500
負債100
自己資本
400
バランスシートの
スリム化
投資法人が発行する「投資口」
を引き受ける (通常の株式に該当)
不動産投資信託 (J−REIT)
営利社団法人の投資法人を設立して、投資法人が投資家から集めた
資金や借り入れた資金を不動産に投資し、賃料収入(インカムゲイン)や
売却益(キャピタルゲイン)などの運用益を投資家に分配する
不動産は運用途中での少額換金が困難
→ ほとんどはクローズドエンド型
(投資家からの解約請求があっても払戻し×)
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会社(投資法人)型不動産投資信託
資産保管会社
運用
投資
投資家
投資家の受け取る分配金
→ 配当所得
ただし、配当控除は×
賃料がもとになっている
→ 分配金は相対的に
安定
二重課税なし
オフィスビルや
ショッピングセンター
投資家
投資口
(証券)
分配金
資産運用委託
不動産等
投資
・
・
・
投資信託
委託業者
資産保管
投資法人
委託
(出所) きんざい「FP技能検定2級教本6 不動産」
P201、図表4より
借入
金融機関
・ 不動産の専門家が複数の物件に投資して運用 → リスク分散効果あり
・ 一般の上場株式よりも値動きは小さい
・ 運用収益の90%以上を配当として分配する場合、投資法人は法人税が免除される
・ 計画的に借り入れて、出資額以上の金額を不動産に投資している → レバレッジ効果
・ 売買方法や課税関係は、上場株式の場合とほぼ同じ。
配当課税:7%+3% の源泉徴収
売却益: 7%+3%、譲渡損失の繰越し控除(3年)
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参考問題4 (問題集P224、H21年1月学科 問題50)
国内に上場されている不動産投資信託(以下「J−REIT」という)に関する
次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. J−REITの投資法人は、配当可能所得のうちの一定割合を超える額を
分配金として投資家に支払うことを要件の一つとして、分配金を損金に
算入することが認められる。
2. 居住者である個人投資家がJ−REITの投資口を保有期間5年以下で
売却して得た所得に対しては、原則として、他の所得と分離して30%の
税率による所得税が課せられる。
3. 居住者である個人投資家がJ−REITから受けた配当金による所得は、
税務上はその個人投資家の不動産所得となる。
4. J−REITはすべてオープンエンド型なので、投資家は、投資法人に
対して解約請求をすれば投資口の払戻しを受けることができる。
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参考問題5 (問題集P469、H22年1月学科 問題50)
国内に上場されている不動産投資信託(以下「J−REIT」という)に関する
次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. J−REITを購入した個人投資家が受け取る分配金による所得は、
税務上、不動産所得となる。
2. J−REITの投資法人は、投資家からの出資金で集めた資金の範囲内で
不動産へ投資を行うこととされており、金融機関等からの借入れによる
資金調達をすることは認められていない。
3. J−REITへの投資は、現物不動産への投資と比較すると、一般に、
少額からの投資が可能で、流動性も高く、管理の負担が小さい。
4. J−REITへ投資した投資家は、投資法人に対して解約請求すれば
投資口の払戻しを受けることができる。
参考問題解答
(問題1) 4
(問題2) 3
(問題3) 3
(問題4) 1
(問題5) 3
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