商事仲裁にとっての朗報 - Vietnam Laws

vietnam legal update
August 2010
商事仲裁にとっての朗報
商事仲裁に関する2010年6月17日付法律第54-2010-QH12号(以
下、「法律第54号」)
仲裁に関する包括的な法規制をベトナムが初導入してから7年後、長期にわたる
協議および起案過程を経て、待ち望まれていた(元々は2009年後半成立を目指し
ていた)法律第54号が2010年6月17日に国会を通過しました。2011年1月1日に
発効する法律第54号は、商事仲裁に関する2003年2月25日付条例第08/2003/PLUBTVQH11号(以下、「旧条例」)に取って代わることになります。
より幅広い適用範囲
旧条例の下では、仲裁廷は懸案の紛争が旧条例において定義された語である狭義
の「商事活動」に関する場合の仲裁をすることしか認められませんでした。対照
的に、法律第54号は商事活動から生じる紛争を引き続き対象としていますが、限
定された定義は何ら規定されていません。よって、利益を生むいかなる活動をも
対象とする商業法に基づくはるかに広い定義が適用されることになりそうです。
さらに、法律第54号はまた、少なくとも当事者の一方が商事活動に従事している
場合の紛争、または仲裁により解決されるべきと同法が規定するその他いかなる
紛争にも適用されます。
仲裁人の国籍
旧条例の下では、外国籍の仲裁人は「外国の要素」が絡む紛争においてしか任命
され得ませんでした。重要なことに、これは、この条項適用上ベトナム企業とし
てみなされていた外資系合弁会社または100%の外国所有会社がベトナムで仲裁
を行う場合に、外国籍の仲裁人を選ぶことができないことを意味しました。その
うえ、例え外国籍の仲裁人が任命されたとしても、実際には、どのような紛争に
関しても仲裁人三人のうち二人が依然としてベトナム人となる傾向があるという
事実により外国籍の仲裁人の影響は薄められると見られていたでしょう。
しかし、法律第 54 号の下では、仲裁人はベトナム国民に限定されません。実
際、法律第54号で規定された条件と資格を満たすいかなる仲裁人も、仲裁センタ
ーの仲裁人名簿への登録を認められ、当事者、仲裁センターまたはベトナムの法
廷によって紛争を仲裁するために任命されることが出来ます。
さらに、法律第54号は外国仲裁機関の支店と代表事務所の両方の設立および運営
につき明示的に規定しています。前者は法に従って仲裁手続を行うことが出来る
のに対し、後者は、他の代表事務所と同様、広報活動に制限され、仲裁を行うこ
とは出来ません。
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第三の仲裁人または議長の任命
「アドホック」仲裁(特定の仲裁機関の規則に従うのではなく、当事者同士が手順と手続きにつき合意した
仲裁)にとって、当事者が第三の仲裁人に同意できないか、または任命された仲裁人が議長の任命に同意で
きない場合、良く知られた国際仲裁センターなどの中立的な第三者に指命権を委任することは、国際的には
一般的な習慣です。
しかしながら、旧条例の下では、このような委任は不可能でした。当事者は、このような任命を権限のある
省の裁判所に申し立てなければなりませんでした。
肯定的な一歩として、法律第54号は、第三の仲裁人または議長の任命のために裁判所に訴えることは当事
者自身が異なった仲裁手続に合意しない場合にのみ起こり得るものと規定して、この障壁を取り払っていま
す。これにより当事者は、このような任命を誰がいかに行うかにつき自由に合意できることとなります。
暫定的救済措置
一当事者が紛争対象である資産を売却することを防ぐ差止め命令などの暫定的救済措置は、現状を保持する
上で重要な役割を果たし、訴訟手続の効率および最終的に下された仲裁判断の効果的な執行の両方を確実な
ものとします。
厄介なことに、旧条例の下では、仲裁廷は暫定的救済措置を下すことができませんでした。これは、ベトナ
ムの裁判所からしか求めることができなかったので、訴訟手続の遅延が不利益をもたらす場合がありまし
た。
歓迎すべき変更として、法律第54号は一定の種類の暫定的救済措置を一方の当事者の要請により発令できる
権限を仲裁廷に与える一章を含んでいます。これらの新しい権限が効率的かつ効果的な仲裁手続を容易にす
ることが望まれています。
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