広告法の制定 - Vietnam Laws

vietnam legal update
2012年8月
ベトナム最新法律情報
広告法の制定
2012年6月21日に閉幕した第13期第3回国会では、新労働法、預金保険法、マネ
ー・ロンダリング防止法など13の法律が成立しました。本号では、その中から、
広告活動及び広告業に関する規制を定めた広告法(法律第16-2012-QH13号)につ
いてご紹介します。
広告活動等については、これまで2001年に成立した広告に関する政令(政令第
39-2001-PL-UBTVQH10号)(以下「現行政令」)が規制をしていました。しかし、
この10年間での経済発展に伴う広告手法や技術の変化に伴い、現行政令による規
制が実態に即していないという指摘がされていたところです。今回成立し2013年1
月1日から施行される広告法は、そのような現行政令に代わるものとして、新たな
時代に対応したルールを定めているものです。以下では、これまでの規制と広告
法との主な相違点について概説します。
広告が禁止される商品
現行政令では、広告が禁止される商品について定めた規定は置かれておらず、広
告の禁止は、商法、医薬品の広告に関する規制、幼児向け栄養食品に関する規制
など、個別の法令の中で定められています。これに対して、広告法では、広告が
禁止される商品を包括的に定めた条項を置いています。このリストの中には、こ
れまでは広告が禁止されていなかった商品、例えば、アルコール度数が15度以上
のアルコール飲料、24ヶ月未満の幼児のための母乳代替乳製品、6ヶ月未満の幼児
のための栄養補助食品、スポーツ用銃器及びその弾薬なども含まれています。ま
た、広告法では、政府が他の商品についても広告の禁止を決定できる権限を与え
ています。
禁止される広告活動
現行政令同様、広告法でも禁止される広告活動を定めています。現行政令では、
景観や交通安全を害するような広告活動や他者の信用、名誉等を攻撃するような
広告活動等が禁止されていますが、現行政令では、これらに加えて、人種や民族
に基づく差別をする広告活動、性別や障害者に対する偏見をもった広告活動、知
的財産法に違反した広告活動、子供の健全な成長に悪影響を与えるような広告活
動等も禁止されています。
さらに、広告法では、他社の商品と価格、品質又は効能を直接的に比較する手法
による広告活動も禁止されています。日本では、景表法で、一般消費者に自己の
商品が他者のものよりも著しく優良であると誤認される広告表示を規制していま
すが、他社商品との比較そのものを禁止しているわけではありません。広告法の
内容は価格、品質等の直接的比較自体を禁止しているように読めますので、注意
が必要です。
また、広告法では「ナンバーワン」「唯一」「最高」「最初」など、最上級表現
を使った広告を行うことは、文化スポーツ観光省が定める規制に沿った法的な根
Please note: Allens will soon be using a new brand, pending regulatory approval, which reflects
the firm’s new alliance with Linklaters.
拠文書に基づく場合を除いて認められないことになっています。日本でもこれらの表現が合理的な根拠に基づか
ず、事実と異なる場合には景表法上問題になると考えられていますが、ベトナムでも同様に注意する必要があり
ます。
広告評価機関
広告法では、広告物についての評価機関が文化スポーツ観光省の下に設置されることになっています。この評価
機関は、同省が広告物が法律に則っているかを判断する際のサポートをする役割を担うことになります。この組
織の詳細については文化スポーツ観光省が別途定めることになっていますが、この評価機関により、広告物の違
法性についての判断手続が公平かつ透明性をもって行われることが期待されます。
広告の条件
広告法では、商品の広告をするために必要な条件についても定められています。その中には、ある事業について
の広告を行うのであればその事業を行う事業登録証を有していること、広告対象商品が法律に定める基準に適合
していることを示す証明書を有していること等、一般的に適用されるものと、医薬、化粧品、幼児向け栄養食品
等特定の商品の広告について特別に適用されるものとがあります。後者の例として、医薬、化粧品、食品及び食
品添加物等の広告については、それぞれ法律で必要とされる届出、登録等を行ったことを証する書面を有してい
ることが必要となります。
広告の方法
広告法では、近時新たに現れた広告媒体(例えば、印刷物、映像、看板、ネオン、交通機関等)を利用した広告
についても、個別にルールを定めた条項を置いています。また、現行政令でも、「コンピューター情報ネットワ
ーク」が広告媒体として使われることが想定され、その場合に適用される規制についての簡単な条項がありまし
たが、広告法では、ウェブサイトやe-mailを使用した広告についても、より詳しい条項を置いています。
例えば、新聞や雑誌の表紙や最初のページには広告を載せてはならず、有料テレビチャンネルにおける広告の放
送時間は、1日における総放送時間(但し、広告専用のチャンネル又は番組は除かれます。)の5%を超えては
ならないとされています。さらに、e-mailやSMSによる広告を送付する場合には、事前に受領者の承諾を得てい
なければならず、電子情報サービス業者や電気通信業者がe-mailやSMSで送ることができる広告の内容や送付時
間、回数などについても制限が課されています。e-mailやSMSによる広告については、受領者がこれを拒否でき
るようにし、拒否の意思表示があった場合には直ちに送付を停止しなければならないことも規定されています。
この点は、ベトナムでは、携帯電話会社から頻繁にSMSで広告が送られてきており、迷惑に感じている人も多い
という実態を踏まえて規制が課されたものと推察されます。
広告に関する外資規制
2001年に成立した現行政令では、外国企業がベトナムで広告業を行おうとする場合に、合弁企業の設立や事業協
力契約(Business Cooperation Contract)の締結といった手法に加えて、ベトナムに支店を設置するという形
でも事業展開ができるものとされていました。しかし、2007年のWTO加盟時のコミットメントでは、広告業分野
における市場開放の約束に、支店形式での直接投資は含まれていませんでした。広告法では、WTOコミットメン
トの内容に合わせて、外国企業の広告業への参入の方法について、合弁会社の設立(外資比率の上限は特に定め
られていません。)と事業協力契約の締結のみを認め、支店の設置による参入については認めていません。
ホーチミン便り
本稿では、ベトナムに駐在する日本人弁護士から、その生活の中で気づいたこと等をお伝えします。今月は、ホ
ーチミンに駐在する中川からお伝えします。
ホーチミンで生活をしていると、様々なシーンでたばこをふかす人々の姿を見かけますし、店頭でたばこを販売
する路面店も街の至るところで見かけます。また、現地の報道等で喫煙に関連した記事を目にすることも度々あ
ります。今月のホーチミン便りでは、ベトナムの喫煙事情について取り上げたいと思います。
現在、ホーチミン市内の路面店では、たばこは、外国製品で1箱(20本)あたりおおよそ2万~3万ドン(日本円
で約80~120円)前後で、また、ベトナム製品であれば1箱あたりおおよそ1万5000ドン(日本円で約60円)前後
で購入することができます。この価格は、東南アジアの周辺諸国の中でもかなり低い価格のようです。背景とし
て、たばこに課される税金の低さが指摘されています。現在たばこに課される特別消費税は小売価格の45%とさ
れ、世界銀行が喫煙規制上推奨する65%~80%を下回っています。
こうした販売価格の低さに加え、ほとんどの路面店では1本単位でのばら売りも行っているため、極めて少額の
所持金でもたばこを容易に入手できることなども手伝い、ベトナムは世界の中でも喫煙率が高い国の一つとされ
ています。2010年にWHOとベトナム保健省が公表した調査結果(「2010年調査」)によれば、15歳以上のベトナ
ム人の喫煙率は23.8%(喫煙者人口は約1530万人)で、これをベトナム人男性に限ってみると喫煙率は47.4%に
上ります(他方で、ベトナム人女性の喫煙率は1.4%と低く、女性の喫煙を良しとしないベトナムの文化的な背
景事情に起因するものと言われています)。ベトナム社会における喫煙で特徴的かつ問題となる点として、若年
者の喫煙問題が指摘されています。WHOによれば、13歳~15歳男子の喫煙率は約10%であり、24歳までには男性
の約3分の1は喫煙を開始しているとされています。また、分煙も必ずしも進んでいるとはいえず、2010年調査に
よれば、非喫煙者の49%が過去30日間に職場で、67.6%が家庭で、それぞれ受動喫煙をしているとされます。
こうした状況のベトナムですが、喫煙に関わる規制は20年以上も前から存在しており、若年者の喫煙の禁止や
映画館等での禁煙、またたばこ広告の規制自体は比較的早い時期から存在しています。また、2004年12月に
は、ベトナムは「たばこ規制枠組み条約(WHO Framework Convention on Tobacco Control)」を批准していま
す。2009年には、同条約に関する実施計画を承認し、一定の公共施設内での禁煙などを定めるとともに、違反者
には罰金刑も定めた首相決定が出され、2010年1月1日から施行されています。しかしながら、こうした規制の取
締り実施状況は必ずしも思わしくなく、実効性を疑問視する声も聞かれます。
WHOは、ベトナムでは年間で約4万人が喫煙に起因する疾病で死亡しているとし、現地メディアの中には、このま
まの状況が続けば、この数字は2030年には年間で約7万人に膨れ上がると報じているものもあります。こうした
状況を受け、ベトナム国会は、喫煙規制の一層の強化を図るべく、「たばこの害防止法」を今年6月に可決しま
した。同法では、たばこ販売に課す特別消費税を喫煙抑止に適正なレベルまで段階的に引き上げるとしているほ
か、公共の場所での禁煙に違反した者を取り締まるための関係当局の責務などが規定されています。この法律に
よって喫煙規制の実効性がどの程度高まるのかは未知数との声も聞かれますが、ベトナムに暮らす者として、健
康に生活できるための環境整備は切に願うところです。この法律は来年5月1日から施行されますが、これを一つ
の起点に、喫煙をめぐる様々な問題が少しでも良い方向で解決されることを期待しています。
おことわり
当記事はベトナムにおける最近の法律情報を提供することを目的としており、法的助言ではありません。当記事に関して、または
ベトナム関連案件に関して法的助言をお求めの場合は、以下の事務所のいずれかにご連絡いただけますようお願いいたします。
連絡先 アレンズ アーサー ロビンソン法律事務所
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