あなたの健診百科第15版(740KB) - KKC 一般財団法人 近畿健康管理

目
次
zKKCドックを受診された方へ---------------------------zKKC判定区分について------------------------------------zブレスローの7つの生活習慣について -----------------z検査項目説明
‹身長・体重・腹囲測定-----------------------------‹特定保健指導-----------------------------------------‹血圧測定-----------------------------------------------‹視力測定-----------------------------------------------‹尿検査--------------------------------------------------‹心電図検査--------------------------------------------‹胸部X線撮影-----------------------------------------‹肺機能検査--------------------------------------------‹胃部X線撮影-----------------------------------------‹便潜血(大腸がん)検査--------------------------‹眼底撮影-----------------------------------------------‹眼圧測定-----------------------------------------------‹腹部超音波検査--------------------------------------‹乳がん検査--------------------------------------------‹子宮頸がん--------------------------------------------‹血液検査
○赤血球系
赤血球数(RBC)-------------------------血色素量(Hb)--------------------------ヘマトクリット値(Ht)--------------MCV--------------------------------------MCH--------------------------------------MCHC-----------------------------------○白血球系
白血球数(WBC)-------------------------桿状核球-----------------------------------分葉核球-----------------------------------リンパ球-----------------------------------単球-----------------------------------------好酸球--------------------------------------好塩基球------------------------------------
P4
P5
P6
P7∼8
P9∼10
P11∼12
P13
P14
P15∼19
P20
P21∼22
P23∼25
P26
P27∼29
P30
P31∼34
P35
P36∼37
P38、39
P38、39
P38、39
P38、40
P38、40
P38、40
P41
P41
P41
P41
P41
P41
P41
目
次
○止血系
血小板数 ---------------------------------○ウイルス性肝炎-----------------------------○肝機能
γGTP−J-----------------------------γGTP-----------------------------------GOT(AST)-----------------------GPT(ALT)-----------------------総ビリルビン(T-Bil)----------------直ビリルビン(D-Bil)----------------TTT--------------------------------------ZTT--------------------------------------ALP--------------------------------------LDH−J--------------------------------Ch−E-----------------------------------○蛋白
総蛋白(TP)-----------------------------アルブミン--------------------------------A/G比-----------------------------------分画A/G--------------------------------分画ALB--------------------------------α1−G-----------------------------------α2−G-----------------------------------β−G--------------------------------------γ−G--------------------------------------○脂質代謝
LDL−ch-----------------------------HDL−ch-----------------------------中性脂肪(TG) ----------------------T−ch-----------------------------------○糖代謝(糖尿病)
血糖-----------------------------------------HbA1c---------------------------------
P42
P43、44
P45、46
P45、46
P45、46
P45、46
P45、47
P45、47
P45、46
P45、46
P45、47
P45、47
P45、47
P48
P48
P48
P48
P48
P48
P48
P48
P48
P49、50
P49、50
P49、50
P49、50
P51、52
P51、52
目
次
○膵機能
アミラーゼ--------------------------------- P53
○腎機能
尿素窒素 ----------------------------------- P54
クレアチニン------------------------------ P54
○高尿酸血症(痛風)
尿酸(UA)-------------------------------- P55
○炎症
CRP--------------------------------------- P56
○免疫
RAテスト--------------------------------- P57
○前立腺
PSA--------------------------------------- P58
○腫瘍マーカー
AFP--------------------------------------- P59
CEA--------------------------------------- P59
CEA--------------------------------------- P59
CA19−9------------------------------ P59
シフラ--------------------------------------- P59
SCC抗原--------------------------------- P59
CA125--------------------------------- P59
抗P53抗体------------------------------ P59
KKCドックを受診された方へ
KKCドックには
①不適切な生活習慣(ライフスタイル)の影響で起きたり悪く
なったりする生活習慣病の有無を調べ、もしあればよい生活
習慣を身に着けて、病気の悪化を防ぐように努めるための
きっかけとする(一次予防)
②生活習慣病やがんを早期に発見して、大事に至る前に正しい
治療につなげる(二次予防)
2つの目的があります
という
『生活習慣病とは…』
若い頃からの良くない生活習慣、例えば食べすぎ、運動不足、
喫煙、寝不足、持続的ないし断続的なストレスなどが、歳と
ともに体にじわじわ影響して起きる病気の総称で、高血圧
糖尿病、脂質異常症などが代表的なものです。
これらの病気の結果として起こる心筋梗塞や脳卒中は、突然
起こるように見えますが、実は火山の地下に徐々にマグマが
溜まって一定の圧力を超える瞬間、噴火を起こすのによく
似ています。
4
5
KKC判定区分について
KKCドックでは、各機能別に8区分の判定を設定しています。
健康の目安としてお役立てください。
なお、ドック検査項目すべてにかかわる総合判定との関係は
下記のようになっています。
機能別判定区分
説
明
健康者扱い
過去の手術やけがの跡
などがあるが、
健康上問題ないと考えられる
要経過観察
/軽度異常
正常とも異常ともいえない
所見がある(生活習慣を
改善し様子をみる)
要再検査
検査に悪影響を与えた不摂生
などを排除し再検査を要する
詳しい検査を要する
要治療継続
治療中の病気については
継続治療が必要
要医療
要医師相談
判定保留
治療を必要とする
正常範囲内
要経過観察
要医師指導
医師の指導を
要するグループ
要精密検査
経過の観察を
要するグループ
問題なし
直ちに医療を
要しないグループ
正常範囲内
総合判定区分
医師の指導を要する
今回は判定できませんでした。
判定保留
検査の数値は、生活状況や食事などにより、動揺することがあります
ので今回の総合判定が「要経過観察」、「要医師指導」であっても病気がある
とは限りませんが、このまま放っておかずに、医師に相談し指導を受ける
ようにしましょう。
また、「正常範囲内」は 今回の検査範囲では問題となる所見は見つから
なかった ということであって、まったく病気がないということではあり
ませんので、自覚症状があれば医師にご相談ください。
6
ブレスローの7つの健康習慣
アメリカ・カリフォルニア大学のブレスロー教授は、
多くの人々について下記の7つの生活習慣を多く身
に着けている人ほど、病気にかかる率が総じて少な
く、寿命も長いことを明らかにしました。
日本でも、その後の調査研究で、ブレスローの正し
さが確かめられています。
この7つの健康習慣とは…
①7∼8時間の睡眠をとる
②朝食は毎日とる
③間食をしない
④適正体重(標準体重比±10%以内)を維持する
⑤定期的に運動する(1日1万歩)
⑥煙草は吸わない
⑦過度の飲酒をしない
「厚生白書」より
【健診結果への反映】
KKCでは、この7つの健康習慣を健康診断結果
のお知らせに採用しています。健診の際ご記入いた
だいた生活習慣の調査から、上記7項目の要素を確
認し、7点満点としてアドバイスコメントに点数表
示しています。
検査項目の説明
参考基準値
腹囲・身長・体重測定(BMI)
解
説
z腹囲…おへその高さで測ったおなかの周りの長さ(cm)
です。立った姿勢で、軽く息を吐いた状態で息を
止めて測ります。おなかの中の脂肪が多いほど、
動脈硬化が進みやすいのですが、脂肪の量を量る
のは難しいので、脂肪の量と比例する腹囲を測り
動脈硬化の進みやすさを推定するのです。
男性は85cm未満、女性は90cm未満が正常と
されています。
女性はあまり動脈硬化に影響しない皮下脂肪が
一般に男性より多いので、女性のほうがその分
大きい値になっています。
男性85cm未満
女性90cm未満
zBMI…Body Mass Indexの頭文字を取った略称で
肥満の度合いを表します。
体重kgを身長mの二乗で割った値で示します。
たとえば身長167.5cm、体重75.5kgの人のBMIは、
75.5を1.675×1.675で割った数、26.9 となります。
BMIは22が標準値(理想的な値)とされて
いますので、標準体重(理想的な体重)は
身長mの二乗に22を掛けた値ということに
なります。
たとえば上の例の人では、1.675×1.675×22 = 61.7kgが
理想的な体重ということになります。
18.5∼
24.9
(22±2.2)
標準体重のプラスマイナス10%の範囲内なら
正常と考えてよいのですが、この例の人は
75.5kgですから、少し太りすぎですね。
◆やせ…BMIが17.7∼18.4であれば「やせぎみ」
∼17.6であれば「やせすぎ」と判定されます。
背後に何らかの病気が原因となっていることもあります。
(例えば、甲状腺機能亢進症、吸収不良症候群など)
医療機関で確認しても病気がなく、症状や変化もなければ
経過観察でかまいません。
7
8
肥満は病気の家の玄関口
肥満は日ごろ習慣となった食べすぎや運動不足で
起こります。肥満は病気の入り口です。
その入り口を入ると、高血圧、糖尿病、脂質異
常症、胆石症、痛風など、さまざまな生活習慣病
が待っています。そしてその行き着く先は、心筋
梗塞や脳卒中、そして動脈硬化性の認知症…。
肥満
糖尿病
動脈硬化症
高血圧症
心筋梗塞
脳卒中
<メタボリックシンドロームの判定基準>
必須項目
●内臓脂肪型肥満
腹囲 男性85cm以上
女性90cm以上
「特定健診」と名付けられ、満40歳以上
のすべての国民が年1回受けることとされて
います。
メタボリックシンドロームの判定結果
空腹時血糖
110mg/dl以上
2つ以上の項目に該当
基準該当
1つの項目に該当
予備群該当
該当しない
非該当
●脂質異常
中性脂肪(TG)
又は/かつ
HDL-ch
150mg/dl以上
40mg/dl未満
●高血圧
収縮期血圧
又は/かつ
拡張期血圧
130mmHg以上
85mmHg以上
<特定保健指導の選定基準>
特定健診でメタボリックシンドローム、或いはその予備群とされた人は、下
表の取り決めに従って、医師・保健師・管理栄養士などから指導を受けるこ
とになっています。
腹 囲
男性85cm以上
女性90cm以上
追加リスク*
①血糖②脂質③血圧
2つ以上
1つ
3つ
上記以外で
BMIが25以上
2つ
1つ
喫煙歴
―
あり
なし
―
あり
なし
―
対 象
40∼64歳
65∼74歳
積極的支援
動機付け支援
積極的支援
動機付け支援
動機付け支援
*追加リスク
①血糖:空腹時血糖100mg/dL以上、またはHbA1cN5.6%以上。
②脂質:中性脂肪150mg/dL以上、またはHDLコレステロール40mg/dL未満。
③血圧:最大血圧130mmHg以上、または最小血圧85mmHg以上。
情報提供
リスク
●高血糖
9
<特定保健指導の流れ>
動機付け支援
積極的支援
初回面接指導:個人では20分以上、グループ(最大8人)では80分以上
指導は「1に運動、2に食事、3にしっかり禁煙、最後にクスリ」が土台
自身で行動目標に沿って、生活習慣改善を実践する
面接・電話・メール・ファックス・手紙
などで生活習慣改善を応援する
(約3ヶ月以上)
実績評価:面接・電話・メールなどで健康状態・生活習慣改善状況を
確認する(6ヵ月後)
10
<肥満はライフスタイルの改善で解消できる>
大抵の肥満は、食べた栄養(カロリー)の一部が、消費されずに脂肪と
なっておなかの中や皮下に蓄えられて生じます。従って、カロリーを摂りす
ぎたり、それを使いなさすぎたりしないようにすると(つまり、食べ過ぎず
飲みすぎず、よく運動しさえすれば)、大抵の肥満は解消できるはずです。
ただし、度を越えた食事制限や急激な運動は危険です。運動の際にウォーミ
ングアップが必要なのと同じで、徐々に慣らしてゆくのが大切です。「過ぎ
たるは及ばざるが如し」で、「急がば回れ」です。
<食事はバランスよくとりましょう!>
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
一日3回、なるべく規則正しく食事する。
腹八分。「もう少し」と思うところで箸を置く。
脂肪の多いものは控え目にし、野菜は沢山食べる。
多くの種類の食品を食べる。一日30種類以上が理想的。
よくかんで、ゆっくり、楽しく食べる。
アルコール類はほどほどに。
なるべく床に就く2時間前までに夕食を済ませる。
夜食はしない。
⑧ なるべく間食をしない。特に菓子や甘いジュース類は
避ける。
<運動不足に気をつけましょう!>
毎日の生活の中で、適度な運動を続けて、体の中に余分なカロリーを残さ
ないことが肥満防止につながります。しかし、毎日欠かさず運動するとなる
と大変ですね。
そこで、たとえば通勤で、駅まで自転車を使っているなら、少し早めに家
を出て歩いたり、駅ではエレベーターやエスカレーターに乗らずに階段を使
い、電車が来るまで時間があればプラットホームを歩くなど、生活の中でこ
まめに「体を動かすこと」を意識するよう心がけてください。
1日の必要カロリーは体重1㌔当たり25∼30kcal(キロカロリー)です。
だから体重70㌔男性なら凡そ1800∼2100kcal、50㌔女性なら1300∼
1500kcal程度でしょう。一方、健康保持のために運動で消費したいカロ
リーは250∼300kcal、少なくとも必要カロリーの1割はクリアするのがよ
いといわれます。しかし日常生活でカロリーを頭に置いて食べたり運動した
りする人はあまりいないでしょう。そんな面倒なことをしなくても、「太り
すぎない程度に運動する」のがよいのではないかと思います。体重が増えれ
ば、増えた分は余分なカロリーが脂肪となって体に溜まっているのです。
11
血圧測定
参考基準値
最大:
129mmHg以下
最小:
84mmHg以下
解
説
血圧は最大血圧と最小血圧の二つの値で示されます。
最大血圧とは、心臓が収縮して血液を大動脈に押し
出す時に、動脈の壁に加わる圧力のことです。この
圧力で血液が全身に送り出されます。最小血圧とは
肺から戻ってきた血液を受け入れるために心臓が拡張
して、動脈内の血液量が最も減った時に動脈の壁に
加わる圧力のことをいいます。
最大血圧は動脈硬化のせいでその壁が弾力性を失っ
て硬くなると高くなり、比較的太い動脈の動脈硬化の
影響を強く受けます。最小血圧は細い動脈の硬化で
血液が流れにくくなる(血流抵抗が増す)と、高く
なります。
最大血圧と最小血圧との差を脈圧といいます。
通常、脈圧は最大血圧の3分の1程度ですが、動脈硬化
が起こる血管の太さや心臓の働き具合、心臓の弁の
開き具合・閉じ具合など、いろんな要素で大きくなっ
たり小さくなったりします
KKCが採用している判定基準
(JSH2009に準拠)を下図に示します。
KKC判定基準(JSH2009に準拠)
最小血圧
↑
要医療
Ⅲ度高血圧
110
Ⅱ度高血圧
要精密検査
90
要経過観察
Ⅰ度高血圧
85
正常高値血圧
正常範囲内
正常血圧
至適血圧
130 140
茶色
180
はJSH2009高血圧管理指針
→最大血圧
12
高血圧の状態が続くと動脈硬化が進む
血圧が高い状態が続くと、血管の壁が高い圧力を受け続けて傷つき、
そこへ血液中の悪玉コレステロールなどがこびりついて動脈硬化が進みます。
脳に分布する動脈で動脈硬化が進むと
脳
脳出血、脳梗塞、くも膜下出血
心臓
狭心症、心筋梗塞、心不全
腎臓
腎不全、尿毒症
本態性高血圧には生活習慣の改善を…
高血圧の凡そ90%は原因がはっきりしない本態性高血圧ですが、次のことに注意
すれば、おおよそ悪化を防ぐことができます。
①塩分(食塩、醤油、味噌、梅干、干物、佃煮など塩蔵品)をできるだけ控える。
(日本人の過半数は、塩分を摂ると血圧が高くなるという遺伝的素質を持って
います。)
②太りすぎない。(太ると、太った部分へも血液を供給しなければならないので、
血圧が高くなりがちです。)
③脂肪の多い食べ物(特に牛肉、豚肉、羊肉などの動物性脂肪)を食べすぎない。
(脂肪はハイカロリーなので体を太らせ、血液を脂っぽくし、動脈硬化を推し
進めます。)
④ストレス(働き過ぎ、心の悩み、イライラ、ムカムカ)を避ける工夫をする。
(ストレスは交感神経と副腎を刺激して、血圧を高めるアドレナリンの分泌を
増やします。)
⑤カリウム分の豊富な野菜やバナナなどの果物を沢山食べる。
(カリウムは摂りすぎた塩分を尿に排泄させる働きがあります。)
⑥タバコを吸わない。(タバコは動脈硬化を起こす強敵です。)
⑦よく運動する。車に頼らない。なるべく1日合計1万歩、あるいはそれに相当する
運動を。(運動は心臓や筋肉の働きを活発にし、動脈硬化を防ぐ大きな力です。)
以上のような注意を守っても血圧がなかなか正常化しない場合は、薬による治療が
必要になります。
しかし注意を守らないまま、手っ取り早く血圧を下げようとして薬に頼ると、心臓や
脳や腎臓などの臓器で却って障害が進んでしまうこともあります。「急がば回れ」と
いう昔ながらの諺が、ここでも生きています。
13
視力測定
参考基準値
解
説
KKCでは、遠方視力を5mの距離で、矯正視力を優先
して、片眼づつ測定します。電子式視力計を用いて
測定する場合もあります。
一般的に遠方視力の正常範囲は0.8∼1.2と
されています。
KKCでは、普通第一種運転免許取得基準で
「裸眼、矯正を問わず両眼視力で0.7以上」
を採用しています。
以下にKKCの判定基準を示します。
右
0.1以下
0.2∼0.6
0.7以上
失明
0.1以下
要精密検査
要精密検査
要精密検査
要精密検査
0.2∼0.6
要精密検査
要経過観察
正常範囲内
要経過観察
0.7以上
要精密検査
正常範囲内
正常範囲内
健康者扱い
失明
要精密検査
要経過観察
健康者扱い
健康者扱い
左
0.7以上
判定が要経過観察・要精密検査だったら…
長時間にわたって本や書類を読んだり、パソコン業務で
VDT画面を見続けたりした場合、目の辺りや奥の方に重い
感じがしたり、目がかすんだり、時には肩が凝ったり頭痛
がしたりすることがあります。これが「眼精疲労」と呼ば
れる状態です。無理して目を使い続けると、視力が低下
したり、近視が進むことがあります。このためVDT作業
では1時間毎に10分程度は画面を見ないで目を休め、でき
れば窓の外に見える遠くの山や緑の木々を眺めることが
勧められます。
他の病気で視力が低下することもあります。40歳台以降
では白内障や緑内障、加齢黄斑変性症など、視力障害を
起こす病気も少なくありません。視力検査は目の健康状態を
知る最も基本的な検査ですが、これだけで正しい診断ができ
るわけではありません。
KKCの判定基準で視力が悪ければ「要精密検査」と判定
するのはこのためです。この判定を受けた方は、眼科で詳
しい検査を受けるようにしてください。
14
尿検査
参考基準値
解
説
腎臓で作られる尿には、正常の身体活動で生じた老廃物や塩類
が含まれています。しかし腎臓や尿路の病気の他、糖尿病や
高血圧などの全身病でも、健康なら尿にほとんど含まれない
ような物質が増えることがあります。だから尿に含まれる成分
の量を調べることによって、腎臓の働き具合や全身の健康状態
を或る程度判断することができます。比較的簡単に短時間で
できる尿検査は、健診でも診療でも、最も大切な基本的検査と
いえます。
まだ自覚症状が出る前に尿検査で病気が見つかることも多い
ので、「要再検査」や「要精密検査」という通知を受けた場合
は、必ず医師にご相談ください。
KKCでは尿検査として、下表のように蛋白、糖、潜血、比重
を検査しています。
(現在、ウロビリノーゲン検査は、血液検査での肝機能の判定が可能になった
ので、その意義が減少しました。そのため、KKCでもドック項目から除いて
います。)
蛋白:(−)
糖:(−)
潜血:(−)
比重:*
病気ではないが
異常が出る状態
(体質)
検査の目的
疑われる病気
蛋白
腎臓障害/
尿路感染などの
有無
腎炎、ネフローゼ、
尿路感染症、結石、腫瘍など
体位性蛋白尿、
熱性蛋白尿など
糖
糖尿病の
スクリーニング
糖尿病
胃切除後高血糖
腎性糖尿など
潜血
血尿の有無
腎炎、高血圧、結石、
腎腫瘍、膀胱がん、膀胱炎な
ど
特発性腎出血
比重
尿の濃縮、希釈力
の評価
高値:糖尿病、ネフローゼなど
低値:慢性腎不全など
(注)薬品による影響
高値:多汗時の
脱水状態など
低値:水分多量摂取
*比重の基準値は概ね1.015∼1.025くらいですが、この値は採尿時の身体の
状態によってかなり変動しますので、あえて表示はしておりません。ただし、
1.010以下、或いは1.030以上であれば念のため再検査をお勧めします。
15
心電図検査
心電図検査とは
心臓は血液を肺とその他の全身に送り出すポンプの役割をしています。
ほぼ握りこぶしの大きさで、右前部分の上部が右心房、下部が右心室、左後ろ部分の
上部が左心房、下部が左心室という、4つの袋でできています。
左右の心房と心室の間には血液を通す穴があります。
全身から大静脈を通って心臓に戻ってきた血液は、まず右心房から右心室を通って、
肺動脈から肺へと送られます。肺で二酸化炭素を吐き出し、酸素を取り入れて新しく
なった血液は肺静脈を通って、今度は左心房に戻ります(これを肺循環と呼びます)
そして、血液は左心房から左心室へと送られ左心室の収縮によって全身に送り出され
ます(これを大循環と呼びます)
心臓はポンプとして働くために、特殊な筋肉(心筋)で
できています。
心筋には収縮というポンプ作用を繰り返すための電気的刺激を
自動的に発生させる性質があり、それによって心臓は休みなく
拍動し続けることができるのです。
心電図は、心筋内の電気的刺激の伝わり方と、その刺激に
よって心筋が収縮した際に生じる電気(活動電位)を、両手足
と胸部に付けた10個の電極から導き出して、波形として描いた
ものです。
心電図検査でわかること
不整脈(脈の乱れ)は波形の乱れとしてとらえられます。また心筋に異常があると
心筋で電気的刺激の伝わる道筋や速さにも異常が生じ、波形の高さや幅が変化しま
す。この波形の変化から、心筋の異常の部位や程度を或る程度推測できるのです。
しかし心電図は心臓の電気的活動だけを見ているのですから、心臓の異常がすべて
分かる訳ではありません。だからまず医師の診察と組み合わせて診断を絞り込み、
それでも分からない場合は「要精密検査」として、超音波検査や心血管造影検査など
で診断を確定するのです。
心疾患のリスク回避を!
アルコール類の飲みすぎとタバコは、動脈硬化を押し進めて心臓に負担を与え、
不整脈の原因ともなります。
また「腹囲・BMI」や「メタボリックシンドローム」の項で説明しましたように、
肥満は高血圧、糖尿病、脂質異常症を起こしやすく、このため心臓の冠状動脈の
動脈硬化が進んで狭心症や心筋梗塞のリスクが高まります。
„心電図について「要経過観察」とされた方は、どのようなことに注意し
どのように経過を観察すればよいかを医師(産業医)にご相談ください。
また「要医師指導」とされた方は、循環器専門医或いは病院の循環器科で
精しく調べてもらってください。
„心電図に異常がないからといって、心臓に病気がないとは限りません。
何か心臓に関係すると思えるような症状があれば、医師にご相談ください。
16
<心臓を収縮させる電気的刺激の伝わり方>
洞結節
心房
心室
1.洞結節で生じた電気的刺激(以下、「刺激」と略す)が心房内を伝わることで、P波
を.生じます。
2.心房を通った刺激は、心房と心室の間(房室結合部)を下って心室へと伝わります。
房室結合部を通る時間がPQ(PR)間隔で表されます。
3.心室へ入った刺激は左右の心室を隔てる壁(心室中隔)の中を通って心室の筋肉に伝
わり、QRS波を生じます。
4.そして海岸に押し寄せた波が引くように、刺激が引いてゆくときにT波を生じます。
<異常所見とその意味>
心電図の記録紙は1秒間に2.5cm左の方へ動きます。これによって記録紙では時間を距離
として計ることができ、横1㍉幅は0.04秒ということになります。以下に心電図所見に
ついて簡単に説明しますが、その病的な意味合いと注意事項や治療方法については、医師
お尋ねください。
QT延長:Q波の始まりからT波の終わりまでの時間をQT時間といい、ほぼ心臓が収縮す
る時間に相当します。大体0.45秒(11∼12mm)以上、或いは心拍と心拍との距離の
半分以上ならQT延長と判定されます。
PQ(PR)短縮・延長:P波の始まりからQ波(Q波がなければR波)の始まりまでの時
間をPQ時間(またはPR間隔)といい、心臓を収縮させる刺激が心房から心室に入るまで
の時間を示します。0.12∼0.22秒(3∼5.5mm)が正常で、0.11秒以下なら短縮、
0.22秒以上なら延長です。
WPW症候群:刺激が房室結合部を通らずに、房室結合部以外のパイパスを通って房室結
合部を通るよりも早く心室に伝わることがあります。心電図ではP波の直後にR波にくっ
ついた三角形の波形(デルタ波)が見られ、これがあればWPW症候群と判定されます。
WPW症候群では、ときにバイパスを通って心室に先回りした刺激が、房室結合部をさか
のぼって心房に戻り、再びバイパスを駆け下るということを繰り返し、脈拍数が1分間に
150∼300回にも増える頻脈が起きることもあります。
17
は正常範囲内
は有所見正常範囲内
は要経過観察
は要医師指導
を現します。
分
類
脈の乱れ(不整脈)や
それにつながる所見
所
見
141
QT延長
401
PQ(PR)短縮(LGL症候群含)
402
WPW症候群
412
MobitzⅠ型房室ブロック(Wenckebach型)
413
Ⅱ度房室ブロック(MobitzⅡ型)
414
Ⅱ度房室ブロック(2:1)
415
完全房室ブロック
501
不完全右脚ブロック
511
左脚前枝ブロック
521
両脚ブロック
532
三束ブロック
551
Brugada型波形
803
異所性上室性調律
804
房室干渉解離
815
高度な頻脈
816
高度な徐脈
831
補充収縮および補充調律
842
心室性期外収縮(散発)
845
上室性期外収縮(頻発)
846
心室性期外収縮(頻発)
851
洞房ブロック
861
上室性頻拍
862
PACショートラン
863
心室性頻拍
864
PVCショートラン
865
心室調律
871
心房細動
872
心房粗動
881
確定できない不整脈
891
副調律
18
分
類
脈の乱れ(不整脈)や
それにつながる所見
先天性の心疾患や
弁膜疾患があると
出現しやすい所見
虚血性心疾患や
心筋疾患があると
出現しやすい所見
所
892
洞不全
893
多源性心房頻拍
894
QT間隔変動(QT dispersion )
895
電気的交互脈
306
右室肥大
307
左房負荷(肥大)
308
右房負荷(肥大)
314
両室肥大
315
左室肥大
503
間欠性右脚ブロック
504
完全右脚ブロック
512
左脚後枝ブロック
171
ST上昇
181
中隔性Q波を欠くV6
182
SⅠQⅢTⅢ
183
V2
502
心室内伝導遅延(心室内ブロック)
505
完全左脚ブロック
611
平低T波
621
陰性T波
631
ST低下
633
ST−T異常
641
陰性U波
642
V1∼V3のε波
701
R波の増高不良
713
その他の所見
見
V3の大きな陽性U波
異常Q波、QS波(軽度、中等度含む)
790
心筋梗塞
133
低電位(四肢誘導+胸部誘導)
410
PQ(PR)延長 (=Ⅰ度房室ブロック)
421
人工ペースメーカー
19
分
類
所
時計回転・反時計回転
軽度な軸偏位
正常範囲内
としてよい所見
不定軸
101
低電位(四肢+胸部)
高いT波(ただしHyperacute Tは除く)
RSR パターン
洞性不整脈
単独所見の場合、
正常範囲内
としてよい所見
101
洞性徐脈(40∼49/分)
101
洞性頻脈(100∼139/分)
142
QT短縮
151
右胸心
204
高度の右軸偏位
205
高度の左軸偏位
206
SⅠSⅡSⅢパターン
301
左室高電位
805
移動ペースメーカー
841
上室性期外収縮(散発)
見
20
胸部X線撮影
以前は肺結核の発見がこの検査の主な目的でしたが、現在では肺がんの早期発見
が最も重要な役割です。
この検査では、それ以外に、胸膜炎、気胸、じん肺、肺気腫、心臓・大動脈肺動脈
の異常、リンパ節腫大、骨の異常(脊椎や肋骨の骨折・変形、骨粗しょう症)など
いろんな異常が分かります。
他の検査と同様、「要医師指導」や「要精密検査」という判定を受けた場合は
必ず医師にご相談ください。
なおこの検査で浴びるX線の量はごくわずかで、大人はもちろん、妊婦さんの
おなかの中の胎児にもほとんど危険はなく、外出時に交通事故に遭う危険の
ほうがはるかに大きいくらいです。
肺結核
肺結核は以前より激減したとはいえ現在でも、年間約2.5万人(2008年)
の新規患者が発生しており、わが国最大級の感染症です。
(全国集計では罹患率19.4:2008年)
徐々に減少の傾向で、罹患率は欧米先進国より数倍も高く、これに関しては
わが国は途上国並みの状況です。
空気感染することがありますので、患者本人のためだけでなく、家族や職場の
人たちの感染防止のためにも、この検査は非常に重要です。
肺がん
近年の肺がんの増加は著しく、死亡率は40年前に比べて男性で約6倍、女性で5倍に
なっています。発生部位から、気管支が肺に入る入り口付近にできる「肺門部がん」
と、それより奥にできる「肺野部がん」とに分けられます。
肺門の気管支はタバコの発がん物質を含む濃い煙が通るところなので、喫煙者では非
喫煙者より凡そ26倍も高率に肺門部がんが発生します。肺に出入りする血管や気管
支が複雑に重なり合っているところなので、その隙間から早期のがんを見つけるのは
難しいのが問題です。少しでも疑わしければ、「要精密検査」という判定になります
ので、ご了承ください。
肺野部がんは空気の量が多くて明るく写る肺の中に黒っぽく写りますので、心臓や横
隔膜と重なっていなければ肺門部がんより発見しやすい場合もあります。しかし発生
頻度はむしろ肺門部がんより高く、またタバコが原因でないタチの悪い種類のがん
(腺がん)も多いので、少しでも疑わしければ、すぐ医師に受診してください。
21
肺機能検査
胸郭と横隔膜の筋肉が収縮すると胸郭とその中の肺が拡張して、空気が気管・気管支
を通って肺に吸い込まれます。そして肺に入った空気中の酸素が肺を流れる血液中の
赤血球に取り込まれます。
同時に、体内で生じた炭酸ガス(二酸化炭素)を運んできた血液は、それを肺に吐き
出して吐く息とともに外部に放出します。
肺で酸素と炭酸ガスを交換するこの働きを「換気機能」といい、肺の病気ではこの
機能が悪くなることがあります。肺機能検査はこの機能を調べる検査です。
<測定項目>
項目
努力性肺活量
(FVC)
解
説
精一杯息を吸った後、精一杯吐き出した空気の量
性・年齢・身長から計算される標準的な肺活量
次の式により算出します。
予測肺活量
(FVCPR)
<日本呼吸器学会の予測式>
男:0.045×身長(cm)−0.023×年齢−2.258(L)
女:0.032×身長(cm)−0.018×年齢−1.178(L)
パーセント肺活量
(%FVC)
一秒量
(FEV1.0)
一秒率
(FEV1.0%)
予測肺活量に対する努力性肺活量の割合(%)
80%以上が正常
努力性肺活量で、最初の1秒間に吐き出した空気の量
努力性肺活量に対する1秒量の割合(%)
70%以上が正常
22
<換気機能障害の種類>
換気障害には次の3
換気障害には次の3つに分けられます。
拘束性障害:努力性肺活量が減る。一秒量が予測肺活量の80%以下。
閉塞性障害:一気に吐き出すのに時間がかかる。1秒率が努力性肺活量の70%以下。
混合性障害:一気に吐き出せず、肺活量も減る。1.と2.の合併。
体を動かすには酸素が必要です。体の隅々にまで酸素を含んだ血液を行きわたらせる
には、酸素を取り込む肺と、血液を循環させる心臓が丈夫でなければなりません。
息を吸うときに肺がよく膨らまないと、十分な量の空気が肺に入らず肺活量が落ち
必要量の酸素を取り込みにくくなります。これが拘束性障害で、肺繊維症、じん肺、肺
水腫、無気肺、気胸、肺うっ血などのほか、肥満や妊娠も原因になります。運動すると
酸素の必要量が増え、息が弾みますが、太った人がやせた人より息切れしやすいのは
このせいです。
また、気道(空気が通る管、気管や気管支)が
狭くなったり、その中に痰が溜まると、空気が
肺に速やかに出入りできないために、1秒率が落ち
やはり酸素不足になります。これが閉塞性障害で
肺気腫、慢性気管支炎などの慢性閉塞性肺疾患
(COPD)が原因となります。
拘束性、閉塞性のどちらの障害を起こす病気で
あっても、進行・悪化すると肺活量も1秒率も落ち
てしまいます。これが混合性障害です。
<健康な肺を保つために…>
①きれいな空気を吸うように心がける。例えば職場の換気を良くするように注意し
車の排気量が多い道路沿いは頻繁に歩かない。
②日頃の歩行などの運動や乾布摩擦で、体力を付けて風邪にかかりにくくし、か
かったら無理しない。風邪から肺の病気に進むことがあるからです。
③タバコを吸わない。タバコはじわじわと慢性気管支炎を進めます。咳と痰はその
初期症状です。
23
胃部X線撮影
内臓はX線で写らないので、それに写るバリウム溶液をコップに半分ほど飲み
食道から胃や十二指腸の内面を被っている粘膜面を浮かび上がらせて、異常の
有無を調べます。
胃がんの早期発見が最大の目的ですが、潰瘍(粘膜面の掘れ込み)やポリー
プ(粘膜のいぼ状の盛り上がり)などもよく見付かり、まれには食道がんが写
ることもあります。胃や十二指腸の外に、X線に写る胆石や腎結石が見付かるこ
ともあります。
なおこの検査で浴びるX線の量は、問題になるほどではありませんが、妊婦さ
んはおなかの中の胎児に万一悪影響があるといけないので、妊婦さんは検査を
受けないほうが無難です。
胃や十二指腸には、図に示すように区域別に名前があります。異常があれば
その場所の名と、その状態を記録することになっています。
KKCでは、下記に示す指導分類(判定)、部位、所見、主要所見を報告して
います。
解
指導分類
異常所見なし
説
問題となるような異常は認めない
要経過観察
多少の異常を認めるが、症状がなければ翌年の検診まで放っ
ておいても心配はない
要医師相談
軽い異常と考えられるが、精密検査や治療の要否を医師に確
認する必要がある
要精密検査
放っておくと悪化の恐れがあり、精しい検査を受ける必要が
ある
読影困難
部位
静止不良
噴門部
幽門部
大弯
腎臓
残渣
胃体部
球部
前壁
食道
摂食
胃角部
十二指腸
後壁
その他
胃液多量
前庭部
小弯
胆のう
24
所
見
胃下垂
胃の下半分が骨盤の中まで垂れ下がっている状態です。痩せ型の人、特に女性に多く、病
気ではありませんが、胃がもたれて重苦しい感じがして食欲が落ちることもあります。こ
のような人は食事をなるべく規則正しく摂り、胃を疲れさせないよう食べ過ぎや飲みすぎ
に注意して下さい。
瀑状胃
胃の上部が後方へ折れ曲がっている状態です。大抵は肥満で胃が押し上げられるせいで、
まず心配要りませんが、稀には潰瘍のせいで胃がひきつれて変形することもあります。
胃液多量
胃に胃液が多量に溜まり、バリウム溶液が胃の粘膜面に十分付着しないために、正確な
判定が難しい状態です。この場合も「要医師指導」や「要精密検査」になりがちです。
粘膜乱れ
粘膜ひだが、潰瘍やがんのせいで引きつれたり、不自然に歪んで見えます。
粘膜粗大
粘膜ひだが胃炎やがんのせいで萎縮し、不規則なしわが網目状に見えます。
ニッシェ
胃や十二指腸の潰瘍で掘れこんだ穴にバリウムが溜まった状態です。まれにがんでもみら
れます。精密検査が必要です。
Ba斑
粘膜の一部にバリウム溶液が斑状に付着した状態です。潰瘍やその傷跡(瘢痕)のことが
あります。
集中様
粘膜ひだが放射状に集中した状態です。治りかけや治った潰瘍の周り、ときにはがんの周
りに生じることがあります。
欠損様
胃の中へ盛り上がったポリープやがんなどで、バリウムの溜まった胃の壁が外側からえぐ
られたように見えます。
変形
胃や十二指腸球部が潰瘍の傷跡やがんなどで変形した状態です。
短縮
胃の壁が潰瘍やがんなどでひきつれて短くなった状態です。胃角部によく生じます。
壁硬化
潰瘍の傷跡やがんで胃の壁が硬くなり、弾力性を失った状態です。
辺縁不整
潰瘍やその傷跡、ときにはがんで、胃の壁の縁が滑らかでなくなった状態です。よく壁硬
化と同時に見られます。
弯入
胃の一部が内側にくびれた状態です。潰瘍やがんで引きつれてくびれることもあります。
充満不良
十二指腸球部にバリウムが十分入らず、よく写らない状態です。ほとんどの場合、異常で
はありませんが、壁が薄い球部が潰瘍のせいで潰れて、バリウム溶液が通りにくいせいの
こともあります。このため「要精密検査」と判定されることもあります。
隆起
粘膜の一部が内面に盛り上がった状態です。大抵は小さく盛り上がるポリープですが、比
較的大きい粘膜下腫瘍のこともあります。
結石
腎結石や胆石が胃や十二指腸の外側に、或いは重なって写ることがあります。
巨大皺襞
(すうへき)
胃外性
圧排像
憩室
粘膜ひだが太く、うねって見えます。大抵は異常ではありませんが、まれにがんや悪性リ
ンパ腫のせいであることもあります。
膨らんだ腸などで胃が圧迫され変形している状態です。
胃の一部が外側に袋状に膨れた状態です。まず心配要りません。
25
主要所見(疑い所見であることが多く、確定診断ではありません)
GU
GUs
DU
DUs
GC
胃潰瘍
胃潰瘍瘢痕
十二指腸潰瘍
十二指腸潰瘍瘢痕
胃がん
GCe
早期胃がん
GP
胃ポリープ
GI
胃炎
Ge
びらん性胃炎
Gr
胃巨大すうへき
G−Op
術後胃
GD
胃憩室
その他
設定された判定項目に該当しない場合
(胃・十二指腸以外∼肝・膵・脾などの病変)
ST
粘膜下腫瘍
GO
その他の胃の異常
DP
十二指腸隆起性病変
DO
その他の十二指腸の異常
胆石
腎石
胃がん
胃壁は内側から外側にかけて粘膜層、粘膜下層、筋層、漿膜層の
4層が重なってできています。
胃がんは内側の粘膜層から発生します。がんが粘膜層と粘膜下層
にとどまっていれば「早期胃がん」で、この時期に手術でがんを取
り除くと、ほぼ完全に(95%以上)治ります。しかしがんが筋層や
それより外側に拡がると、「進行胃がん」で、治癒率は65%以下に
下がります。
胃がんの死亡率は高いですが、最近は幸い減少する傾向にありま
す。その理由は、食事が洋風化して塩辛い食べ物や熱い食べ物を食
べることが以前より少なくなり、さらに検診によって早期がんが発
見される機会が増えたことだといわれます。胃がんは他の多くのが
んと同様、早期がんの間は自覚症状がないのが普通なので、「がん
年齢」といわれる40歳以上の方は胃X線検査を受けておくことが非
常に大切です。
便潜血(大腸ガン)検査
便に混じった肉眼で分からないほどの微量の血を「便潜血」といい、検
査でそれが検出されれば「便潜血陽性」となります。痔以外で最も多い原
因は大腸ポリープ、次いで大腸がんです。大腸ポリープは大腸の粘膜の一
部が内側に突出したこぶ状の出っ張りを指し、ときにはこれががんである
こともあります。出っ張りが大便に擦れて出血するのです。出血しやすい
血液の病気のせいであることもあります。このため便潜血が陽性と判定さ
れたなら、さらに精しく原因を確かめなければなりません。出血量がごく
微量ではっきりしない場合は「疑陽性」と判定されることもありますが、
この場合は再検を受けてください。
陽性といわれても、「痔のせいだろう」と自己判断して放っておいたが
ために、取り返しが付かなくなった人もいます。「陽性」と判定されたな
ら、必ず精密検査を受けてください。
偏った食事は避け、定期的にチェックを!
胃がんとは違って、脂肪分が多く食物繊維が少ない洋風の食事を食べる
回数が多いと、大腸がんの発生頻度が高まります。消化されにくい食物繊
維が少ないと、便の量が少なくて便秘に傾きやすく、脂肪に溶け込んだ発
がん物質が大腸に接する時間が長くなるからです。(胃は食べ物がとどま
る時間がせいぜい3時間と短いので、あまり発がん物質の影響を受けませ
ん。)食事は和食洋食取り混ぜて、偏らないように心がけましょう。特に
食物繊維の豊富な野菜、海草、きのこ類を沢山食べるようにしてください
(これらの食べ物に含まれる水溶性食物繊維は、コレステロールを吸着し
て便に排泄する働きもあります)。
また年に一度は便潜血検査を受けましょう。
26
27
眼底検査
眼底は血管を直接見ることができる唯一の場所です。だから高血圧や糖尿
病などの動脈硬化を起こす病気の状態を、眼底の血管の状態から推し量るこ
とができるのです。また、光を感じる網膜や、光の刺激を脳に伝える視神経
の状態から、加齢黄斑変性症や網膜色素変性症などの網膜の異常や視神経が
萎縮する緑内障を診断するのに、この検査は欠かせません。
何を見ているの!
上のような眼底写真から、次のような異常な所見が見つかることがあります。
1.高血圧や動脈硬化による異常の例
・動脈の太さが細くなったり(細動脈狭細)、一定でなくなる(管径変化)
・動脈と静脈が交差するところで、静脈が動脈に押されてくびれたり、曲がったり
上流側でせき止められたりする(交差現象)
・血管が詰まって出血する(眼底出血)
2.糖尿病による異常の例
・動脈に接して、微細な赤い点状の毛細血管瘤がある
・点状∼斑状、あるいは広い範囲の出血がある
・白斑がある
3.眼科的な病気による異常の例
・乳頭の異常な凹み(陥凹)など、乳頭部の変化がある
・網膜の裏側にある脈絡膜の血管が、網目のように透けて見える(近視による豹
紋様眼底)
・網脈萎縮、網脈裂孔、ドルーゼ(白っぽい斑点)など、網脈面の異常がある
28
各分類の所見説明
Sheie分類
分類
高血圧性所見(H)と動脈硬化性所見(S)の変化を表した分類
所見
所見の意味と対策
0度
正常
1度
細動脈の反射光が強くなり
軽い動静脈交叉現象が見られる
軽い動脈硬化
予防のため、日常の生活習慣に注意
2度
反射が高進し、交叉現象も著明
細動脈の狭細あり
中等度の動脈硬化
日常生活上の対策も十分に
3度
さらに出血や白斑が見られ
交叉現象も著明
かなり進んだ高血圧や動脈硬化
医師による管理・治療が必要
4度
さらに網膜浮腫や乳頭浮腫が
加わる
重症の高血圧と動脈硬化
強力な治療が必要
KW分類
分類
高血圧による細動脈の変化を表したものです。
所見
対策
0度
正常
Ⅰ度
軽い細動脈の狭細と硬化
初期の変化で、他の臓器の血管障害は
ないと判断される
ときどき血圧測定が望ましい
Ⅱa度
中・高度の硬化、動静脈の反射高
進、動静脈交叉現象が見られる
やや進んだ動脈の変化
十分な血圧管理が必要
Ⅱb度
網膜静脈の血栓なども
伴う
進んだ動静脈の変化
全身の臓器の動脈硬化の予防と血圧管
理が必要
さらに
網膜の浮腫、綿花様白斑
出血が見られる
血圧は持続的に高く、軽い心・腎機能
の障害、心電図異常など全身の異常が
見られる
放置すると悪化するので医師による
管理が必要
Ⅲ度
Ⅳ度
さらに乳頭の浮腫が加わる
血圧は著しく高く固定していて
心・腎障害が著明
厳重な管理が必要
29
Davis分類
分類
所
見
糖尿病網膜症の病期の分類
病
期
0
正常
1
単純網膜症
毛細血管瘤、網膜出血、硬性白斑
2
増殖前網膜症
軟性白斑、網膜内細小血管異常(IRMA)、静脈異常
3
増殖網膜症
網膜・乳頭上新生血管、硝子体・網膜前出血、
線維血管性増殖膜、牽引性網膜剥離
眼は口ほどにものを言う!
前に記したように、眼底検査を行うと、眼科的な病気の他、高血圧や糖尿病
などで起こる眼底の出血や動脈硬化の有無・程度が分かります。これらの病変
が進行すると、視力が落ちたり、ときには失明することもあります。「目は口
ほどにものを言い」という諺通り、眼はさまざまな病気の存在や状況を教えて
くれるのです。
このため「要経過観察」という判定を受けた方は、何か思い当たる症状があ
れば、医師にご相談ください。また「要精密検査」になった方は、眼科に受診
して精しく調べてもらい、高血圧や糖尿病のせいで眼底に異常が現れているよ
うなら、内科で必要な指導や治療を受けてください。
30
眼圧測定
KKCでは検査結果をもとに、以下の基準で判定します。
検査結果(mmHg)
判定区分
20以下
正常範囲内
21∼23
要再検査
24以上
要精密検査
解
説
正常の眼圧は
10mmHg∼20mmHgとされており、
20mmHgより値が高いと高眼圧状態
といい、緑内障の危険があります。
緑内障ってどんな病気?
眼圧(角膜とレンズの間にある前房に溜まった液の圧力)が高くなって視
神経乳頭が圧迫され、障害を受けて視野(見える範囲)が狭まったり、視力
が落ちて失明することもある病気です。ときには正常眼圧緑内障といって、
眼圧が高くなくても起こることがあり、これが疑われる場合には視野検査な
どの精しい検査を行います。
急性緑内障(発作)では視力低下や眼の充血の他、頭痛、嘔吐などの症状
が起こりますが、大抵の緑内障は徐々に進行し、当初は目の疲れ程度の症状
しか感じないので、知らないうちに悪化する危険があります。
眼精疲労にご用心!
最近、目が疲れやすい、何だかモノが見えにくくなったなどと感じても、
パソコンを見すぎたせいかな、メガネが合わなくなってきたのかな、歳のせ
いかな、などと思っているうちに、緑内障が進行してしまうことがあります。
進行すると薬や手術で治らないことが多いので、目の具合が良くないように
感じたら、早めに眼科に受診することが大切です。
健診やドックは、眼の状態をチェックする良い機会です。「要精密検査」
といわれたら、たとえ自覚症状がなくても、眼科に受診してください。また
「要再検査」という判定なら、面倒がらずに再検査を受けてください。眼圧
はそのときの身体の具合によって、あるいは時間的、季節的にも変動するこ
とがあるからです。
31
腹部超音波検査
超音波は密度が異なった物体の境い目で反射します。これを利用して、超
音波をおなかの中に発射して、反射波が戻って来るまでの時間と反射波の強
さをコンピューターで自動計測し、臓器や組織などの場所と形を画面
(VDT)に写し出すようにしたのが超音波検査です。超音波はまったく無害
ですし、数分間横になっているだけで苦もなく検査を受けることができます。
超音波検査では超音波を発射する探触子
を身体に当て、身体の各部分から反射し
て戻ってきた超音波を測定します。
この時、超音波の戻ってくるまでの時間
と強さの情報をもとに身体の内部の超音
波像を合成することによって、モニター画面上に画像を表示させる
ので、超音波の反射が少ないとその部分の画像は暗く(黒く)写り
反射が多いと明るく(白く)写ります。
腹部超音波検査で見える臓器
この検査では、画面で肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓、腎臓、副腎などの臓器
と、血管やリンパ腺、時には胆石、腎結石やがんなども見ることができま
す。心臓、肺、胃、腸、筋肉、脂肪などは、見ることができませんし、と
きにはこれらが邪魔して見たい臓器がよく見えないこともあります。太っ
ている人では超音波が深いところまで十分届かず、分かりにくいことがよ
くあります。また、空気が溜まった胃が膵臓の上に被さったようなときに
は、空気は超音波を通しませんので膵臓がよく見えず、検査が不十分にな
ることがあります。
32
KKCの判定及び所見
KKCでは下表のように5段階で判定しています。
判
定
解
説
異常所見なし
異常所見を認めず、1年後の健診(ドック)受診でよいもの。
有所見健康
所見は認められるが、症状がなければ1年後の健診(ドック)
受診でよいもの。
要経過観察
経過観察を要し、3,6,12ヶ月以内のいずれかに
再検査が必要なもの。
(3、6、12ヶ月内再検)
治療中・
経過観察中
すでに医療機関で治療中、または経過観察中のもの。
要精密検査
異常所見を認め、精密検査が必要なもの、
または治療を要するもの。
超音波検査で見られる主な所見を説明します。
臓器
所
見
解
説
脂肪肝
肝臓に脂肪がたまりすぎた状態です。脂肪は超音波をよく反射す
るため、肝臓が通常より白っぽく見えます。食べすぎや飲みすぎ
が原因です。
まだら脂肪肝
腸から血管を通じて肝臓に運ばれてきた栄養が、脂肪となって血
管の近くからたまるため、脂肪の多い場所がまだらに見える状態
です。白っぽく見えるがんなどと紛らわしい場合があります。
慢性肝炎・肝硬変
肝臓全体の病気なので、分かりにくいことがあります。肝硬変が
進むと肝臓が萎縮し、表面が円滑でなくなります。
のう胞
肝臓の中にできた袋で、液体が溜まっています。多くは円滑な球
状です。直径5∼10cm以上なら、まれに破れることもあります
が、大抵は無害です。
肝血管腫
毛細血管が毛玉状の塊になったものです。大抵は放っておいてよ
いのですが、大きくなったり、まれに悪性(血管肉腫など)の場
合がありますので、多くの場合、「要経過観察」と判定されます。
肝腫瘤
悪性であることが多く、良性と判断される場合以外は精密検査が
必要です。
肝臓
33
臓器
胆のう
膵臓
脾臓
所
見
解
説
胆のう壁肥厚
胆嚢炎や腫瘍などで胆嚢の壁が分厚い状態ですが、異常
でないこともあります。
胆のう腺筋症
胆嚢壁の中に細かい結石や水疱があって、壁が分厚く
なっている状態です。多くはタチの悪いものではありま
せんが、治療が必要になることもあります。
コメットサイン
ポリープや胆嚢壁に埋まった結石に超音波が当って、そ
の後方に超音波の影が彗星のように尾を引いて見える現
象です。心配は要りません。
胆石
いくつかの種類があり、胆石溶解剤で溶けないものが多
いようです。大抵は無症状ですが、痛み発作や黄疸が出
れば手術を要することもあります。
デブリス(胆泥)
胆汁が泥状になったもので腸に排泄させる治療を要する
ことがあります。
胆のうポリープ
大抵は良性で放置してよいのですが、大きいものは手術
を要することもあります。
総胆管拡張
総胆管(肝臓から十二指腸に通じる胆管)が結石やがん
で胆汁の流れを塞き止められて拡張した状態です。しば
しば黄疸を伴います。
膵管拡張
膵液を通す管ががんや膵炎で膵液の流れが滞り、拡張し
た状態です。塞き止める原因がないのに自然に拡張して
いる場合は、心配要りません。
慢性膵炎
慢性肝炎と同様、この検査では診断が難しいことがよく
あります。胆石が総胆管と膵管の合流部で詰まったり、
お酒類を飲みすぎて起こることがあります。
膵のう胞
膵臓の中にできた袋で液体がたまっています。タチの悪
いものもありますので、経過観察や精密検査が必要です。
膵臓−異常所見
膵腫瘍が疑われる状態です。精密検査が必要です。
脾腫
肝硬変で脾臓から肝臓へ通じる血管の流れが滞ったり、
溶血性貧血などで壊れた赤血球を処理する機能が高まっ
て、脾臓が大きくなった状態です。
副脾
脾臓の小さな飛び地です。生まれつきのもので心配要り
ません。
脾臓−異常所見
きわめて稀ですが、脾腫瘍が疑われる状態です。精密検
査が必要です。
34
臓器
腎臓
所
解
見
説
重複腎盂
生まれつき腎臓に腎盂が2つあるものです。心配要りま
せん。
馬蹄腎
生まれつき左右の腎臓が繋がって馬蹄状にみえるもので
す。心配要りません。
腎結石
腎臓にできた結石です。尿管に流れると激痛を起こすこ
とがあります。
水腎症または水尿管
尿管に詰まった結石で尿が塞き止められて、腎盂や尿管
が拡張した状態です。
腎のう胞
腎臓の中にできた袋で、尿がたまっています。直径
10cm以上にも大きくなったり痛みが生じなければ、
放っておいて差し支えありません。
腎臓−異常所見
腎腫瘍が疑われる状態です。精密検査が必要です。
事後措置が大切!
腹部超音波検査ではさまざまな所見が見つかります。KKCの人間ドック
では、次のような所見がよく見つかっています。
有所見における割合
脂肪肝
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
肝のう胞
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9.5
肝血管腫
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.5 (%)
胆のうポリープ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
胆石
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
腎のう胞
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9.4
腎結石
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5.9 (%)
肝腫瘍の疑い(肝血管腫を除く)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
0.0 (%)
−(平成18年度)KKC集計より−
22.7 (%)
11.4
(%)
(%)
3.7 (%)
(%)
など
これらの所見のどれかが見つかった場合、結果通知書にその後の対処の
仕方が記載されていますので、それに従ってください。
腫瘍らしい所見は稀ですが、もし見つかった場合はすぐに医療機関に受
診することが大切です。
35
乳がん検診
KKCの判定及び所見
KKCでは通常、視診・触診と超音波検査を行っていますが、オプション検査(任
意の追加検査)としてマンモグラフィ(乳房レントゲン検査)を行うこともありま
す。これらによって、下表に示すように5段階で判定することになっています。
判
定
異常所見なし
解
説
異常所見を認めず、1年後の健診(ドック)受診でよいもの。
有所見健康
所見は認められるが、その所見に関しては症状がなければ
1年後の健診(ドック)受診でよいもの。
要経過観察
経過観察を要し、3,6,12ヶ月内のいずれかに再検査が
必要なもの。
(3、6、12ヶ月内再検)
治療中・
経過観察中
すでに医療機関で治療中、または経過観察中のもの
要精密検査
異常所見を認め、精密検査の必要があるもの、
または治療を要するもの。
乳がんの有無を調べるのがこの検診の主な目的ですが、がん以外によく見つかる
所見には次のようなものがあります。
臓器
乳房
所
見
解
説
線維腺腫
割合若い人に多い良性の腫瘍です。手術で取り除くほうが
良い場合もあります。
のう胞
乳房の中にできた袋で、液体がたまっています。大きくな
ると、内部の液体を注射針で抜き取るほうが良い場合もあ
ります。
乳腺症
乳腺内の良性のしこりで、手で触れるごともあります。痛
んだり、乳首から乳汁が滲み出ることもあります。中年期
に多く、性ホルモンのバランスの崩れが原因とされます。
なお、検査で異常がなくても、乳頭から分泌液がよく出たり、特に血が混じった液
が滲み出るようなことがあれば、がんが潜んでいることもありますので、乳房の専
門医に受診してください
【乳がん検診を受診された方へ】
検診時には見つからないほどが小さながんでも、1年後の検診時にはかなり大きく
なっていることがあります。このため月に1度生理が終わって3、4日後、乳房が柔らか
くなった頃に自分で乳房を人差し指、中指、薬指をそろえた指先で隈なく軽く皮膚の上
を滑らせるように押して、しこりがないかどうかを確かめてください。自己触診の詳し
い方法については別刷りのパンフレットをご覧ください。
36
子宮頸がん検査
KKCでは、婦人科医による診察と、子宮頸部の細胞を少し取って顕微鏡で
がん細胞の有無を調べる細胞診検査を行っています。
子宮頸がん検査の判定には、原則として下表に示すような細胞診のベセスダ
システムおよびクラス分類結果を表示し、判定はベセスダシステムに準拠して
おります。さらに「HPV検査」を追加でご受診になると、前がん病変(がん
になる前の段階)の発見率が飛躍的に上がることが分かってきました。
細胞診検査
∼クラス分類(日母分類)∼
∼ベセスダシステム∼
分類
NILM
推定される病理診断
判定
異常所見なし
陰性
分類
内
容
Ⅰ
正常
Ⅱ
異形細胞を認めるが、良性であって悪性の兆候はない。
要経過観察
ASC-US
軽度扁平上皮内病変疑い
HPV高リスク型が陽性の場合
は
要精密検査
ASC-H
高度扁平上皮内病変疑い
LSIL
軽度扁平上皮内病変
HSIL
高度扁平上皮内病変
SCC
扁平上皮がん疑い
AGC
腺異型・腺がん疑い
AIS
上皮内腺がん疑い
Ⅲa
悪性の疑いは薄いが断定はできない。
軽度∼中等度の異形上皮を想定する。
Ⅲb
悪性を強く疑うが断定はできない。
高度の異形上皮を想定する。
Ⅳ
強く悪性を疑う。
上皮内がんを想定する。
Ⅴ
悪性である。
湿潤がん(微小浸潤がんを含む)を想定する。
要精密検査
Adenocarcinoma 腺がん疑い
Other malig.
その他の悪性腫瘍疑い
不適正
判定保留
オプション検査
HPV−DNA検査
ハイリスク型
発がんに関与しているといわれるハイリスク型が
検出されると「高リスク型陽性」とご報告します。
子宮頸がんの原因の多くがヒト・パピローマウイルス(HPV)による感染
であること分かってきました。
HPVは自然排出されることも多いのですが、感染が持続すると、子宮頸部に
異形成という前がん病変が発生する場合があります。
ご自身のリスクの度合いを把握していただきながら、癌へ進行してしまうその
前の状態で見つけ対処するために、定期的に検診や精密検査を受けることが最
大の予防策となります。
37
子宮頸がん検査
ベセスダシステムに基づいた子宮頸がん検診
細胞診検査
標本適正
陰性
標本不適正
判定保留
↓
再検査
扁平上皮系異常
NILM
ニルム
日母分類
Ⅰ、Ⅱ
ASC-US
ASC-H
LSIL
HSIL
SCC
アスク・ユーエス
アスク・ハイ
ローシル
ハイシル
エスシーシー
┃
軽度扁平上
皮内病変疑
い
┃
┃
┃
┃
高度扁平上
皮内病変疑い
軽度扁平上
皮内病変
高度扁平上
皮内病変
扁平上皮癌
疑い
┃
┃
┃
日母分類
Ⅱ、Ⅲa
日母分類
Ⅲa、Ⅲb
日母分類
ⅢⅢa
┃
┃
┃
HPV検査
または、半年
以内の再検
査
1年後検診
HPV陰性
┃
日母分類
Ⅲa、Ⅲb、
Ⅳ
┃
┃
日母分類
Ⅴ
┃
要精密検査
コルポ診、生検必要
HPV陽性
その他の異常
腺系異常
AGC
AIS
エイジーシー
エイアイエス
Adenocarci
noma
┃
┃
┃
┃
腺異型・腺癌
疑い
上皮内腺癌
疑い
腺癌疑い
悪性腫瘍
疑い
Other malig.
アザーマリグ
アデノカルチノーマ
┃
┃
┃
┃
日母分類
Ⅲ
日母分類
Ⅳ
日母分類
ⅢⅤ
日母分類
Ⅴ
┃
┃
┃
┃
要精密検査
コルポ診・生検・頸管および内膜細胞診また
は組織診
要精密検査
病変検索
その他の婦人科疾患
臨床所見(問診と診察)の結果は、「その他の婦人科疾患」として報告してい
ます。なお細胞診検査で、感染症の所見を認めた場合も、「その他の婦人科疾
患」に加えて報告しています。
解
外陰炎
臨床所見
膣炎
頸管炎
説
外陰部の炎症
膣の炎症
膣から子宮に通じる頸管の炎症
子宮膣部びらん 頸管の入り口付近の粘膜のただれ
頸管ポリープ
細胞診
真菌類
トリコモナス
ヘルペス
頸管にポリープ(粘膜のいぼ状の隆起)
真菌(かび)による膣炎
トリコモナス(原虫の一種)による膣炎
ヘルペスウイルスによる膣炎
38
血液検査
KKCでは、
血液検査については機能別に下記の考え方(表1)をもとに判定をして
います。
境界域とは集団での基準域から外れているものの、個人の生理的変動を
考えると、正常とも異常ともいえない領域です。
−表1−
スクリーニング域(低値)
生理的変動許容域
境界域(低値)
異常域(低値)
基準域
スクリーニング域(高値)
境界域(高値)
異常域(高値)
赤血球系(貧血)
−基準値表−
項
目
基準域
境界域(高) 異常域(高)
男
∼349
350∼429 430∼570 571∼599
600∼
女
∼319
320∼369 370∼500 501∼529
530∼
男
∼10.0
10.1
∼13.9
14.0
∼18.0
18.1
∼19.9
20.0∼
女
∼10.0
10.1
∼11.9
12.0
∼16.0
16.1
∼17.9
18.0∼
男
∼30.9
31.0
∼40.9
41.0
∼52.0
52.1
∼54.9
55.0∼
女
∼30.9
31.0
∼35.9
36.0
∼47.0
47.1
∼47.4
47.5∼
MCV
∼80
81∼82
83∼99
MCH
∼25.0
25.1
∼26.9
27.0
∼34.0
34.1
∼35.9
36.0∼
MCHC
∼30.0
30.1
∼30.4
30.5
∼36.0
36.1
∼37.9
38.0∼
赤血球数
(RBC)
血色素量
(Hb)
ヘマトクリット値
(Ht)
赤血球恒数
異常域(低) 境界域(低)
100∼105
106∼
39
赤血球数
(RBC)
赤血球を含む血液は動脈を通じて全身に運ばれ、動脈から枝分
かれした毛細血管から、酸素が体のすべての細胞に入ります。
赤血球中の血色素(ヘモグロビン)が酸素と結びついて、酸素
を肺から臓器や組織にある細胞まで運ぶ役目をしているのです。
細胞の活動で生じた二酸化炭素(炭酸ガス)が入れ替わりに赤血
球に取り込まれ、静脈→心臓→肺動脈を通って肺から外に排泄さ
れます。
酸素を運ぶ赤血球の数が減ると酸素を運ぶ能力も落ち、細胞が
酸素不足に陥ります。逆に赤血球が増えすぎると、血液が濃く
粘っこくなり、血管が詰まりやすくなります。
血色素量
(Hb)
血色素は鉄原子とタンパク質の一種とでできた赤い物質で、血
液の赤さのもとになっています。酸素との結合力が強いので、血
液が肺の中を循環する僅か1秒足らずの間に、肺に入った空気中
の酸素と瞬間的に結びつきます。赤血球の数が減ると、その中に
ある血色素も当然少なくなりますが、一般に赤血球数の減り方よ
り血色素量の減る割合が大きいのが普通です。
ヘマトクリット値
(Ht)
ヘマトクリット値は、血液に占める赤血球集団の体積の割合をい
います。赤血球数が減ると、ヘマトクリット値も当然減りますが、
一つ一つの赤血球の形が小さいと赤血球数の減り方よりヘマトク
リット値の減る割合が大きく、赤血球が大きいと、その割合は小
さくなります。
ヘマトクリット値が高くなるのは、タバコや肥満、時にはスト
レスや高地順化(空気の希薄な高地での生活)のせいで赤血球数
が増える場合で、上述したように血液が粘っこくなって血管が詰
まりやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞の危険が高まります。
40
貧血の種類によって
赤血球数、血色素量、ヘマトクリット値の3者の相互関係が
変化します。
この相互関係を表わす値を「赤血球恒数」と呼び、この大小に
よって貧血の種類を推定することができます。
赤血球恒数
(MCV)
(MCH)
(MCHC)
※赤血球恒数は
原因により増加
したり低下したり
することが
あります。
①MCV(平均赤血球容積)
赤血球の大きさを判断します。
Ht(%)
MCV(fl)=
×103
RBC(×104/mm3)
②MCH(平均赤血球血色素量)
個々の赤血球に含まれる平均的な血色素の量を示します。
Hb(g/dl)
MCH(pg)=
×103
RBC(×104/mm3)
③MCHC(平均赤血球血色素濃度)
個々の赤血球に対する血色素濃度を示します。
Hb(g/dl)
MCHC(%)=
×100
Ht(%)
MCVとMCHの値が
低下します。
鉄分の不足による貧血。
女性に多い。
血
失血性貧血
(病気やケガによる
出血が原因の貧血)
急な出血ではヘマトクリット値が低
下しますが,赤血球恒数は正常です。
これに対し少量の出血が長く続けば
MCV、MCHの値が低下します。
痔、胃潰瘍、子宮筋腫など
気付かない程度の少量の出血でも
長く続くと貧血になることがある。
悪性貧血
MCVとMCHCの値が高く
なります。
ビタミンB12や葉酸の不足による貧血。
胃の手術を受けた人に起こることがあります。
再生不良性貧血
MCVの値は一定しません。
赤血球の他、白血球や血小板
も減少します。
骨髄の造血機能が落ちることに
よっておこる貧血。
溶血性貧血
間接ビリルビンが増加します。
赤血球の寿命が短くなって、骨髄での
製造が間に合わなくなっておこる貧血。
の
貧
鉄欠乏性貧血
種
類
健診で発見される貧血で最も多いのは鉄欠乏性貧血です。
女性に多く見られますが、男性でもたまにあります。
慢性の出血(消化管、痔、月経過多、がんなど)・肝・腎の病気などの他、
食事の偏りが原因にもなります。
また、多血症といって赤血球などが異常に増加することもあります。
夏期の脱水症、喫煙、ストレス、高地生活者などで起こるものと、原因不明の
ものとがあります。
41
白血球系
−基準値表−
項
目
白血球数(WBC)
異常域(低) 境界域(低)
∼29
基準域
境界域(高) 異常域(高)
白血球百分率6分画
30∼39
40∼85
86∼94
95∼
∼3
4∼12
13∼14
15∼
∼17
18∼34
35∼69
∼6
7∼15
16∼50
51∼59
60∼
∼1
2∼8
9
10∼
好酸球
0∼8
9∼14
15∼
好塩基球
0∼2
3∼6
7∼
桿状核球
好中球
分葉核球
リンパ球
単球
70∼
白血球には好中球(桿状核球と分葉核球)、好酸球、好塩基球、単球とリン
パ球があります。それぞれ役割を分担して、体内に入ってきた細菌やウイル
ス、タバコに含まれる毒物、吸い込んだ粉塵などの外敵と戦って食い殺した
り無毒化するという大切な働きをしています。その数は外敵との戦闘状況や
体の状況(食事、運動、入浴、ストレスなど)に応じて大きく変動します。
疑われる病気や異常
白血球数が
増えすぎている場合(↑)
白血球数が
減りすぎている場合(↓)
•白血病
•細菌感染症
•(急性期の)心筋梗塞
•外傷、出血
•喫煙
•ステロイド投与
など
•無顆粒球症
•SLE(全身性エリテマトーデス)
•再生不良性貧血
•薬剤アレルギー
•抗がん剤の長期投与
•放射線の照射
など
42
止血系
−基準値表−
項
目
血小板数
異常域(低) 境界域(低)
∼5.0
5.1
∼12.9
基準域
境界域(高) 異常域(高)
13.0
∼37.0
37.1
∼79.9
80.0∼
血小板は
出血時に血液を凝固させて止血する働きを持っています。
血小板数を測ることにより、
各種の血液疾患の診断や出血しやすい人の原因解明に役立ちます。
疑われる病気や異常
血小板数が
増えすぎている場合(↑)
•原発性血小板血症
•真性多血症
•慢性骨髄性白血病
•慢性感染症
•悪性腫瘍
など
血小板数が
減りすぎている場合(↓)
•再生不良性貧血
•急性白血病
•ウィルス感染
•特発性血小板減少性紫斑病
•血栓性血小板減少性紫斑病
•抗がん剤の副作用
など
43
ウイルス性肝炎
肝炎は肝臓の炎症です。
ウイルスやアルコール、医薬品の他、製造現場で使われる有機溶剤や特定化
学物質などが原因となりますが、最も多いのはウイルスです。このため、肝
炎といえば一般にウイルス性肝炎を意味します。
肝炎を起こすウイルスにはA、B、C、D、E型の5種類がありますが、
このうち慢性化することが多くて肝硬変や肝がんといった重い肝臓病になる
危険性が高いのはC型、次いでB型です。
(日本ではA、D、E型肝炎は稀なので、一般に検診やドックでは検査しま
せん。)肝がんによる死者の数は年間3万人を超えていて、その95%はC型
とB型慢性肝炎から生じ、それぞれ肝がん全体の75∼80%と10∼15%を
占めています。
KKCドックでは、BとC型肝炎ウイルスに関する検査を行っています。
「要精密検査」と判定された方は、必ず医師にご相談ください。
A型ウイルス性肝炎
A型肝炎ウイルスに汚染された食べ物や飲み水から感染します。日本で感
染することはほとんどありませんが、海外、特に熱帯圏では多発しています。
そのような土地への渡航者は、HA抗体検査を受け、HA抗体が陰性ならばA
型肝炎ワクチンの接種を受けておく方が安心です。(HA抗体は、以前にA
型肝炎ウイルスに感染したことを示し、これが陽性なら発病する心配はあり
ません。)
感染して発病すれば、発熱、全身倦怠感や重病感、食欲不振、時には黄疸
などが起こります。稀に劇症肝炎になって死亡する人がありますが、慢性化
することはありません。
44
B型ウイルス性肝炎
成人では、多くの場合、B型肝炎ウイルスのキャリア(保有者)との性行
為を介して感染します。感染しても無症状のことが多く、時にはA型肝炎と
同様の急性肝炎の症状を起こすこともありますが、大抵は無事に治ります。
ただ稀には劇症肝炎を起こしたり、慢性肝炎に移行することもあります。
キャリアの血液や体液から感染し、渡航者はHB抗原・抗体が陰性なら、B
型肝炎ワクチンの接種を受けておく方が安心です。
(注)病原体に感染しているかどうかは、病原体を構成する蛋白成分(抗
原)を調べて確かめます。一般に、B型肝炎ウイルスについては、その表面
を構成するsという蛋白成分(HBs抗原)を調べます。これが陽性なら、そ
の人はB型肝炎ウイルスのキャリアです。精密検査では、ウイルスの内部に
あるeという蛋白成分(HBe抗原)を調べることもあります。
感染後にはリンパ球の働きで、月日の経過とともに病原体に対抗して病気
を抑える抗体ができることがあります。検査ではHBs抗原に対するHBs抗体
を、精密検査ではHBe抗体を調べることがあります。HBs抗体が陽性なら、
以前にB型肝炎ウイルスに感染したことを示しています。
HBs抗原:陰性
:
HBs抗体:陰性
今までB型肝炎ウイルスに感染したことは
ありません。
HBs抗原:陽性
B型肝炎ウイルスのキャリアです。
HBs抗体:陽性
過去にB型肝炎にかかったことがあります。
C型ウイルス性肝炎
B型肝炎と同様、血液や体液を介して感染しますが、C型肝炎ウイルス
の感染力は弱く、濃厚で頻繁な接触がなければ、夫婦間でもあまり感染し
ません。しかし一旦感染すると、無症状のまま体内でウイルスが生き続け
ます。つまり無症候性キャリアになるわけです。そのうちに、いつとはな
しに慢性肝炎になる場合が多く、その後に高率に肝硬変や肝がんに移行し
ます。集団健診でC抗原を調べるのは難しいので、C抗体を調べます。こ
れが陽性なら医師に受診して、無症候性キャリアであるか慢性肝炎である
かを確かめることが必要です。
(注)以前はB、C型肝炎ウイルスとエイズウイルスは、それらのウイ
ルスに汚染された血液や血液製剤の輸血や注射で感染することがよくあり
ましたが、最近では予防法が進んで、そのようなことはほとんどなくなり
ました。キャリアの母親から赤ん坊にうつるケースも少なくなりましたが、
ただC型肝炎ウイルスの母子感染はまだ数%の割合で起こっています。
45
肝機能
肝臓は栄養を蓄えて体に必要なたんぱく質を合成し、筋肉や臓器に栄養
を供給したり、有害な物質を解毒して胆汁中に排泄するなど、色んな働き
をしています。これらの働きを調べる検査を肝機能検査といい、多くの種
類があります。
肝臓は沈黙の臓器といわれ、病気が軽いうちは自覚症状がほとんどなく
検査を受けないと病気が見付かりにくいので、集団検診やドックで異常が
あれば、自覚症状がなくても精密検査を受けることが大切です。健診や
ドックでよく見付かるのは脂肪肝で、次いで慢性肝炎や肝硬変ですが、稀
には無症状の肝がんが見付かることもあります。
−基準値表−
項
目
異常域(低) 境界域(低)
γGTP−J
(JSCC基準*)
基準域
境界域(高) 異常域(高)
∼50
51∼155
156∼
GOT(AST)
∼7
8∼30
31∼99
100∼
GPT(ALT)
∼4
5∼30
31∼99
100∼
総ビリルビン(T−BiL)
∼0.19
0.20
∼1.00
1.01
∼1.99
2.00∼
直接ビリルビン(D−BiL)
∼0.30
0.31
∼0.49
0.50∼
TTT
∼4.0
4.1∼9.9
10.0∼
ZTT
∼2.9
3.0
∼12.0
12.1
∼39.9
40.0∼
ALP(アルカリフォスファターゼ)
∼124
125
∼335
336
∼429
430∼
LDH−J(JSCC基準*)
∼114
115
∼230
231
∼299
300∼
175∼202
203
∼460
461∼
Ch−E(コリンエステラーゼ)
(JSCC基準*)
∼174
*JSCC基準:日本臨床生化学学会が定めた基準
46
γ−GTP
GOT(AST)
肝臓の他、腎臓や膵臓の細胞にもある酵素の一つです。肝臓の
細胞(以下、肝細胞)が壊れたり胆道の胆汁通過障害があると、
血液中に増えてきます。アルコール類の飲みすぎには特に敏感
に反応し、値が上昇します。脂肪肝でも肝細胞に脂肪が溜まり
すぎて細胞が壊れると、この値がしばしば高くなります。
肝臓や筋肉の細胞に含まれている酵素の一つです。たんぱく質
のもとになるアミノ酸を作る働きをしています。健康であって
も古い肝細胞は少しずつ壊れて新しい肝細胞に入れ替わってい
ますから、血液中には少量のGOTが含まれていますが、ウイル
スやアルコールや溜まりすぎた脂肪で肝臓が障害されると、壊
れた肝細胞から漏れ出たGOTが血液中に増量します。心筋梗塞
や過激な運動で心臓の筋肉や骨格筋の細胞が壊れた時も、この
値が上昇することもあります。
GOTと同様、アミノ酸を作る酵素の一つですが、筋肉よりも肝
臓に多量に含まれています。このため肝細胞が障害を受けると、
敏感に値が高くなります。GOTとGPTの値は同時に上昇する
ことが多いですが、病気によって上昇する程度が幾分違います。
GPT(ALT)
例えばGOT値よりもGPTの上昇が目立つ場合は、脂肪肝や過
度の飲酒のせいであることが多く、慢性肝炎や心筋梗塞ではこ
の逆になることが多いので、これによってある程度病気の種類
を推定することができます。
ZTT
TTT
肝臓病が慢性化すると、たんぱく質を合成する機能にも変化が
生じ、たんぱく質の仲間で血液中に多いアルブミンが減り、グ
ロブリンが増えてきます。グロブリンが血液中に増えるとZTT
の値が高くなり、アルブミンとグロブリンの比(A/G比)が小
さくなります。
ZTT値が高くなるのは慢性肝炎や肝硬変の場合が多いのですが、
時にはグロブリンが血液中に増量する橋本病(慢性甲状腺炎)
やショーグレン症候群などの自己免疫疾患や膠原病、多発性骨
髄腫などのせいであることもあります。
47
アルカリフォス
ファターゼ
(ALP)
総ビリルビン
(T−BiL)
直接ビリルビン
(D−BiL)
乳酸脱水素
酵素(LDH)
コリンエステラーゼ
(Ch−E)
酵素の一つで、ほとんどの臓器の細胞に含まれていますが、特
に肝臓、胆道の病気で胆汁の流れが滞った場合や、骨の病気で
この値が高くなります。老人では骨の病気でなくても、骨の老
化によって血液中にこの酵素が流れ出して値が高くなることが
あります。
ビリルビンはヘモグロビンの分解産物です。赤血球は寿命(平
均120日)が尽きると脾臓で解体され、分別処理された鉄原
子は骨髄に運ばれて、新しく作られる赤血球の素材になります。
酵素の働きで鉄原子が外れた分解産物、間接ビリルビンは、肝
臓でその一部が直接ビリルビンになって胆汁中に排泄されます。
直接ビリルビンと間接ビリルビンを合わせたものが総ビリルビ
ンです。肝臓や胆道の病気で胆汁の流れが滞ると、直接ビリル
ビンが腸に排泄されにくくなって、血液中のこの値が高くなり
ます。また、溶血性貧血などで赤血球が大量に壊れるような状
態では、間接ビリルビンの値が上昇します。
ブドウ糖がエネルギーに変わる時に働く酵素です。あらゆる細
胞の中にありますので、細胞が壊れると血液中に流れ出します。
肝細胞が壊れる肝臓病、細胞を破壊する悪性腫瘍や血液疾患、
心臓病、筋肉疾患など、多くの病気でこの値が高くなります。
病気の時だけでなく、激しく運動すると筋肉の細胞からこの酵
素が血液中に流れ出ますし、タバコを吸うと気管支や肺の細胞
が壊れて、やはりこの値が高くなることがあります。また妊娠
時にもこの酵素の血中濃度が高まります。
コリンエステルという物質をコリンと酢酸に分解する酵素です。
ほとんどが肝臓で作られるので、肝細胞が壊れてその数が減る
慢性肝炎、肝硬変、肝臓がんや栄養失調などでこの値が低くな
ります。
一方、脂肪肝や飲酒などで肝細胞が刺激された状態では、この
値が高くなります。
48
血清蛋白
−基準値表−
項
目
異常域(低) 境界域(低)
基準域
境界域(高) 異常域(高)
総蛋白
(TP)
∼6.0
6.1∼6.5
6.6
∼8.3
8.4∼9.9
アルブミン
∼3.4
3.5∼3.7
3.8
∼5.2
5.3∼
アルブミン・グロブリン比
(A/G)
∼0.80
0.81
∼1.09
1.10
∼2.00
2.01
∼2.19
10.0∼
2.20∼
・蛋白分画
特殊な検査により、アルブミンとグロブリン(α、α2、β、γ)の総蛋白に対する存在割合を%で表示します。
蛋
分画A/G
∼1.29
1.30
∼1.49
1.50
∼2.20
2.21
∼2.65
分画ALB
∼51.0
51.1
∼59.7
59.8
∼62.0
62.1∼
白
∼1.8
1.9
∼2.2
2.3∼
α2−G
∼6.4
6.5
∼8.7
8.8∼
β−G
∼6.7
6.8
∼10.8
10.9∼
γ−G
∼19.0
19.1
∼20.4
20.5
∼22.9
分
α1−G
画
総蛋白
(TP)
2.66∼
23.0∼
血液の液体成分である血漿から、血液凝固に関わる蛋白質(フィ
ブリノーゲン)を除いたものが血清ですが、その中にアルブミン
とグロブリンという2種類の蛋白質が含まれていて、この2つを
合わせて総蛋白といいます。総蛋白のほぼ3分の2がアルブミン
で残りがグロブリンです。
アルブミンは肝臓でのみで作られますので、その製造能力が落ち
る慢性の肝臓病や、尿中にアルブミンが多量に漏れてしまうネフ
ローゼ症候群では、血液中のアルブミン濃度が減り、従ってアル
ブミンとグロブリンの比(A/G比)も低くなります。血液の浸
アルブミン/
透圧(血液の水分を血管内に保持する力)はアルブミンによって
グロブリン比
保たれていますので、それが減ると血液の水分が毛細血管の外へ
(A/G)
滲み出して、むくみ(浮腫)が生じます。
アルブミン
(ALB)
49
脂質代謝
血液中の脂肪を血中脂質といい、コレステロールと中性脂肪(トリグリセ
ライド)がその主成分です。コレステロールにはHDLコレステロールと
LDLコレステロールの2種類があり、この2つを合わせて総コレステロール
といいます。これらの脂質の1つ、あるいは2つ以上が異常に増減した状態
を脂質異常症と呼んでいます。
脂質異常症でよく見られるのはLDLコレステロール値や中性脂肪値が高す
ぎたり、HDLコレステロール値が低すぎる場合で、この状態が長く続くと、
動脈硬化が進み、心筋梗塞、脳梗塞、動脈硬化性認知症などが起こりやすく
なります。食べすぎ、飲みすぎや運動不足で体内に余分に溜まった栄養は、
脂肪となっておなかや皮下に蓄えられて体が太りますが、血液中にも脂質が
増えて脂質異常症に陥るのです。
なおタバコは、血管を傷つける働きがありますので、脂質異常症と重なる
と、動脈硬化が速く進みます。
−基準値表−
項
目
異常域(低) 境界域(低)
LDL−ch
∼20
21
∼59
HDL−ch
∼34
35
∼39
空腹時 or
食後9時間以上
食後4時間
未満
中性脂肪
(TG)
食後4時間∼
5時間未満
食後5時間∼
9時間以未満
T−ch
∼139
基準域
60 ∼119
40
∼119
境界域(高) 異常域(高)
120
∼159
160∼
120∼
∼34
35
∼149
150
∼299
300∼
∼34
35
∼199
200
∼379
380∼
∼34
35
∼189
190
∼359
360∼
∼34
35
∼159
160
∼339
340∼
140
∼199
200
∼239
240∼
50
コレステロールは細胞膜、ホルモン、胆汁の構成成分で、体に
とってなくてはならない重要なものです。
LDLコレステロール
(LDL−ch)
<総コレステロール>
(T-ch)
ところがこのうちのLDLコレステロールが栄養の摂りすぎや運
動不足で増えすぎると、それが血管の内面に付着して血管が硬く
分厚くなります。
そこへ石灰分が沈着するなどして血管が弾力性を失って血管の
内腔が狭まると、血液が円滑に流れにくくなります。これが動脈
硬化です。このためLDLコレステロールは俗に「悪玉コレステ
ロール」とも呼ばれます。上まぶたの皮下に黄色っぽい斑点が出
ることがありますが、これはLDLコレステロールが溜まってでき
たもので、黄色腫と呼ばれます。
女性は閉経後に女性ホルモンの分泌が急に減少するせいで、そ
れまで正常だったLDLコレステロール値が急上昇することがよく
あります。このため動脈硬化が進みやすいので、生理がある若い
時分から、食事や運動面で適正な生活習慣を身につけておくこと
が大切です。
このコレステロールは血管に付着したLDL-コレステロールを取
り去って、肝臓に運ぶ働きをしています。つまり動脈硬化を防ぐ
役割を果たしているわけです。このため「善玉コレステロール」
とも呼ばれます。
HDLコレステロール
(HDL−ch)
中性脂肪
(TG)
タバコは上述したように動脈壁を傷つける上に悪玉を増やして
善玉を減らしますので、二重に動脈硬化を進めます。これに対し
運動は、逆に悪玉を減らして善玉を増やす効果があります。栄養
を摂り過ぎない範囲での適度の飲酒も、善玉コレステロールを増
やす働きがあります。
細胞でエネルギーを生む燃料として利用されます。しかし栄養
を取りすぎると、この燃料はおなかや皮下に蓄えられて体が太り、
肝臓に蓄えられて脂肪肝を生じます。特に糖分の多い菓子類や炭
酸飲料、アルコール類は中性脂肪をよく増やします。
51
糖代謝(糖尿病)
食後には食べた糖質がブドウ糖に変わり、血液中のブドウ糖の濃度が高く
なります。高くなると膵臓のベータ(β)細胞はインスリンを分泌し、イン
スリンはブドウ糖を肝臓や筋肉などに送ります。血液中のブドウ糖の濃度が
高くなりすぎると、ブドウ糖は血管壁を傷つけて動脈硬化を進めます。これ
を糖毒性といいます。β細胞の数はそれほど多くありませんので、栄養を摂
りすぎる状態が続くと、β細胞に負担がかかりすぎて壊れ始めます。いわば
β細胞の過労死です。そのためインスリンを分泌する能力が落ち血糖値が高
すぎる状態が続くようになります。これが糖尿病です。
肥満があってもインスリンの働きが悪くなります(インスリン感受性の低
下、或いはインスリン抵抗性増大)。働きの悪さを補うため、インスリンの
分泌量を増やさねばなりませんので、β細胞にますます負担がかかります。
だから太りすぎをそのままにしておくと、糖尿病が進行しやすいのです。
日本人は遺伝的にβ細胞が少ない人が多いので、栄養の摂りすぎや運動不足
でカロリーを使わなさ過ぎると、糖尿病になりやすいといわれます。日本人
は太っている人が白人ほど多くなくて、太り方も軽いのに糖尿病になる人が
多いのはこのせいです。
また、お酒類を飲みすぎると、栄養の取りすぎに傾きやすい上に、アル
コールの作用でβ細胞が壊れて、余計に糖尿病になりやすくなります。アル
コールには善玉コレステロールを増やす働きがあるのですが、適量を超える
とその長所が帳消しになります。「過ぎたるは及ばざるが如し」です。
−基準値表−
項
血糖
目
異常域(低) 境界域(低)
基準域
境界域(高) 異常域(高)
空腹時 or
食後4時間
以上
∼60
61
∼69
70
∼99
100
∼125
126∼
食後
2時間未満
∼60
61
∼69
70
∼119
120
∼179
180∼
食後
2時間∼
3時間未満
∼60
61
∼69
70
∼109
110
∼149
150∼
食後
3時間∼
4時間未満
∼60
61
∼69
70
∼99
100
∼129
130∼
4.3
∼5.5
5.6
∼6.4
6.5∼
HbA1cN
∼4.2
52
糖代謝(糖尿病)
血糖
(GL)
血液中のブドウ糖を血糖といいます。ブドウ糖は中性脂肪
とともに、生きてゆくために欠かせないエネルギー源です。
血糖値は高くなりすぎると、上述したように動脈硬化を進め
ますし、少なすぎると身体が活動するためのエネルギーが不
足するわけですから、適度に保つ必要があります。インスリ
ンが血糖値を抑え、アドレナリンやグルカゴンなどのホルモ
ンは高める働きをして血糖値は巧みに調節されているのです。
なお、空腹時の血糖値が126mg/dL以上なら糖尿病と診断
されますが、これが170mg/dL以上にならないと、通常、尿
に糖は出ません。昔は血液中の糖を測ることができず、尿中
の糖を測っていましたので、糖尿病という名を付けたのです。
尿に糖が出ないからといって、糖尿病でないとはいえません。
グリコヘモグロビン
(HbA1c)
KKCでは
HbA1cN
と表記しています
これはブドウ糖が赤血球中のヘモグロビンと結びついたも
のです。一度結びつくと離れないので、血糖値が高ければ高
いほど、そして高い状態が長く続くほど、この値が高くなり
ます。赤血球の寿命は凡そ4ヶ月なので、この値は検査時点ま
でのほぼ4ヶ月間の血糖値の動向を反映します。だからこの値
によってその間の血糖のコントロール状態の良し悪しが分か
ります。5.2%未満が正常とされますが、7%を超えるほどに
なると、血管障害(眼底出血、脳梗塞、心筋梗塞、下肢動脈
閉塞症、動脈硬化性認知症)、腎障害(腎不全、尿毒症)、
神経障害(下肢知覚異常、インポテンツ)などさまざまな病
気が起こり始めます。
なお、赤血球の寿命が短くなったり、多量の出血で赤血球
数が減ったり、逆に赤血球の生成が増えたりする状態では、
グリコヘモグロビンの値は不正確になりますので、注意が必
要です。
生活習慣病の代表、糖尿病にならないために、糖尿病を悪くしないために…。
① 間食や眠る前2時間以内の夜食はできるだけ避ける。
② 食事は、「あとちょっと食べたい」ところで箸を置く。アルコールも
「ほんわかいい気分」まで。
③ドリンク類は無糖タイプを。
④ フライ、天ぷら、油炒めは敬遠し、「焼いた」「煮た」「蒸した」
食べ物を
選ぶ。
⑤ 加工食品のエネルギー表示に関心を持つ。
⑥ 運動する。なるべく車、エスカレーター、エレベーターに頼らずに1日1万歩
クリアを。
⑦ タバコは吸わない。糖尿病にタバコが重なると動脈硬化はスピードアップ
します。
53
膵機能
膵臓は血液中にインスリンやグルカゴンなどのホルモンを分泌(内分泌)
する一方、アミラーゼやリパーゼ、パンクレアチンという消化酵素を消化管
に分泌(外分泌)しています。
膵炎などで膵臓の細胞が壊れると、特に消化酵素が血液中に漏れ出す酵素
逸脱現象が起こって一時的にその量が増え、尿中にもそれに応じて排泄され
ます。健診やドックでは、主に血液中のアミラーゼ濃度を測定しますが、と
きには尿中のアミラーゼや血中のリパーゼを測ることもあります。
−基準値表−
項
目
アミラーゼ
(IU/l)
異常域(低) 境界域(低)
∼39
基準域
40
∼115
境界域(高) 異常域(高)
116
∼144
145∼
アミラーゼはでん粉などの多糖類を糖に分解する働きをします。
膵臓の細胞が壊れると血中や尿中のアミラーゼが増えますので、
急性膵炎や慢性(再発性)膵炎の診断に役立ちます。
アミラーゼ
しかし腎臓病や高齢者ではアミラーゼを尿に排泄する働きが落ち
ますので、膵臓に異常がなくても血中アミラーゼ値が高くなるこ
とがあります。アミラーゼは唾液腺からも分泌され、型が少し違
います。
血中アミラーゼ値が高い場合には、さらに精しい検査で膵型と唾
液腺型とを区別することも行われます。
54
腎機能
腎臓は主として体内の不要物を尿に排泄するろ過器の役目をしています。
腎臓の病気でろ過機能が落ちると、血液中に不要物が溜まって、尿毒症を起
こします。
腎臓病では必ずといっていいほど尿に蛋白が出ますので、尿検査が腎臓病
の有無を知る基本的な検査ですが、腎臓病の程度は尿素窒素やクレアチニン
の血中濃度を測って推定します。
−基準値表−
項
目
異常域(低) 境界域(低)
境界域(高) 異常域(高)
8.0
∼20.9
21.0
∼25.9
26.0∼
男
∼1.00
1.01
∼1.29
1.30∼
女
∼0.70
0.71
∼0.99
1.00∼
尿素窒素
クレアチニン
(酵素法)
基準域
∼7.9
尿素窒素は、蛋白が体の中で分解されたときにできる物質
の一つです。
尿素窒素の大部分は尿中に排泄されますが、腎臓の排泄機能
が悪くなると、血液中の尿素窒素の濃度も高くなります。
尿素窒素
腎機能異常の他にも、蛋白質をたくさん摂取した場合、
また運動や発熱の後など水分が血液中から失われたり、
筋肉等の蛋白質の破壊が起こった場合でも高い値になること
があります。
クレアチニンは、肝臓で筋肉中のクレアチンから合成されて
できる物質です。
クレアチニン
一般的に男性の方が筋肉量が多いので、基準値は女性よりも
高めになります。
尿素窒素と同じように、大部分は尿中に排泄されますが、
腎臓の排泄機能が悪くなると、血液中のクレアチニンの濃度
も高くなります。
55
高尿酸血症(痛風)
尿酸が血液中で増えている状態で、無症状のことが多いのですが、体重
が大きく加わって負担がかかる足の親指の付け根や膝の関節などに、尿酸
が針状の結晶となって析出し、それが周りの組織を刺激して、発作的とい
えるほど急激に炎症(痛風性関節炎)を起こすことがあります。
尿酸は水に溶けにくいので、血液中の濃度が7mg/dLを超えると、結晶化
しやすくなります。そよ風が吹いても激しく痛むので痛風と呼ばれます。
30~50歳代の、ばりばり働いて沢山飲み食いするといった精力的なA型性格
の男性がよく罹ります。尿酸は主に尿に排泄されますが、女性ホルモンは
尿酸の排泄を促しますので、女性はあまり高尿酸血症や痛風に罹りません。
−基準値表−
項
目
尿酸(UA)
異常域(低) 境界域(低)
∼1.9
基準域
境界域(高) 異常域(高)
2.0∼7.0 7.1∼7.9
8.0∼
体は約60兆個もの細胞で成り立っています。尿酸は細胞の構成成分であるプリ
ン体の分解産物です。新陳代謝で絶えず古い細胞が壊れて新しい細胞と入れ替
わっていますが、古い細胞が壊れる際に尿酸を生じます。食べ物やアルコール飲
料に含まれるプリン体からも作られますので、食べすぎ飲みすぎや、時には激し
い運動で血液中の尿酸値が上昇します。腎臓の病気とか生まれつき尿から排泄さ
れにくい状態があっても値が高くなります。水分の摂り方が少ないと、尿の量が
減って尿酸の排泄量も少なくなります。特に夏場は水分をこまめに多めに補給す
ることが大切です。
尿酸
(UA)
習慣的な食べすぎ飲みすぎが尿酸値を高める主な原因ですが、特にプリン体の
豊富な肉類・レバー・魚の干物や、尿酸生成を増やして排泄を抑えるアルコール
飲料(特にプリン体の多いビール)の摂りすぎには注意が必要です。
高尿酸血症が続くと、そのうちに尿酸結晶が次第に腎臓にも溜まり、ろ過装置
(糸球体と尿細管)に目詰まりを起こして腎臓の働きが悪くなって痛風腎になっ
たり、尿路結石を起こしたりします。また尿酸は細胞の中にも入り込んで、特に
心臓にも悪影響を及ぼして心臓病を起こすこともあります。
従来、「6、7,8のルール」が尿酸管理の原則とされています。尿酸値を
6mg/dL以下に保つことで上記の病気の発症が抑えられ、7∼8mg/dLが警戒レ
ベル、8mg/dL以上が治療を考慮するレベルということです。9mg/dLを超える
と、5年以内に3人に1人が痛風発作を起こすといわれます。尿酸値は1日のうち
でも1mg/dL程度は変動しますので、特に治療を始める目安の値は、複数回測定
したうえで決めることが必要です。しかし抗尿酸薬には肝障害の副作用を生じる
ことがあり、もともと肝障害があればさらに悪化しやすいので、食べすぎ・飲み
すぎ・太りすぎを解消しないまま安易に薬に頼るのは良くありません。
なお尿酸は抗酸化作用があって、不足しても問題があり、男性で4.6mg/dL、
女性で3.2mg/dLを下回ると心臓や血管の動脈硬化が進みやすくなるといわれま
す(Jカーブ現象)
56
炎症
炎症とは、例えば蜂に刺された場所が痛んで(疼痛)、赤く(発赤)腫れ上
がり(腫脹)、その場所(臓器や組織)の働きが損なわれる状態です。通常、
胃炎や肺炎などのように、炎症を起こした場所の名を「炎」の前に付けて病
名とします。
−基準値表−
項
目
異常域(低) 境界域(低)
基準域
境界域(高) 異常域(高)
CRP(定性)
陰性
疑陽性
陽性
CRP(定量) ㎎/dl
∼0.30
0.31∼
炎症が起きるとその場所の細胞が壊れ、たんぱく質の分解産
物であるCRP(C反応性蛋白)が血液中に増えます。怪我をし
た場合も細胞が壊れますので、同様にCRPが増えます。健康時
には血液中にほとんど存在しないので、検出されれば体のどこ
かに炎症か怪我など、細胞が壊れる状態があることを示します。
CRP
炎症や怪我の程度に応じてCRPが増減し、治るとCRPも消
えるので、炎症や怪我の重症度や治療効果の判定に大変役立ち
ます。炎症の有無を知るにはCRPが陽性か陰性かという定性試
験を行いますが、炎症の程度を判定する場合はCRPの量を調べ
る定量試験を行います。
疑われる病気や異常
細胞が壊れるとCRPが増えるのですから、細胞の壊れ方が激しい病気ほど血
中のCRP値が高くなります。
例えば慢性関節リウマチ、膠原病、結核の活動期、種々の細菌感染症や敗血
症、がん、急性心筋梗塞、壊疽や怪我による組織の壊死や挫滅などです。
ウイルス性疾患や内分泌疾患では細胞の壊れ方が少ないのでCRPはあまり増
えず、定性試験では陰性か弱陽性にとどまります。
また、動脈の内面を被っている内膜の細胞が動脈硬化のせいで壊れると、血
液中に微量のCRPが流れ出てきます。通常の方法では検出できず特殊な方法
で調べますが、これは高感度CRPと呼ばれます。
57
免疫
免疫の仕組みに異常が起きる病気で、最も多いのは慢性関節リウマチです。
関節面を被う滑膜に慢性的な炎症が起こり、徐々に関節に接する骨に炎症が拡
がって骨が破壊され、関節が変形して、動きにくくなる(拘縮し可動性が失わ
れる)病気です。
本来、免疫は細菌やウイルスなどの外敵から体を守る仕組みですが、自分の
体の色んな組織を外敵と見誤って、免疫系がそれを攻撃することがあります。
これを自己免疫病といいます。慢性関節リウマチは主に関節滑膜を敵とみなす
自己免疫病で、患者の約80%で血液中にリウマチ因子と呼ばれる自己抗体が増
えます。
−基準値表−
項
目
異常域(低) 境界域(低)
RAテスト
基準域
境界域(高) 異常域(高)
陰性
疑陽性
陽性
リウマチ因子を検出する検査です。他の自己免疫病や肝臓病
などでも陽性になることが多く、健康者でも数%が陽性になり
ます。従って陽性でも慢性関節リウマチとは限りませんので、
確定するにはさらに詳しい検査が必要です。
RAテスト
慢性関節リウマチ以外によく陽性になる病気には、全身性エ
リテマトーデス(SLE)、強皮症、多発性動脈炎、皮膚筋炎、
シェーグレン症候群、肺繊維症、細菌性心内膜炎など、発生頻
度は低いものの、多くの病気があります。
疑われる病気や異常
RAが
陽性の場合
RAが
強陽性場合
(↑)
(↑ ↑)
•慢性肝疾患
•全身性エリテマトーデス
•強皮症
•多発性動脈炎
•多発性筋炎
•シェーグレン症候群
•細菌性心内膜炎
•肺線維症
など
•慢性関節リウマチ
•悪性関節リウマチ
など
58
前立腺
最近は前立腺がんが増えています。食事の洋風化による脂肪の摂りすぎと
高齢化のせいといわれます。前立腺は男性だけにあり、睾丸で作られた精子
の動きを活発にする精液を作っています。
クルミぐらいの大きさで膀胱の下に付いていて、その真ん中を尿道が通っ
ています。このため、前立腺が肥大したり、がんができて腫れてくると、尿
が出にくい(排尿困難)、トイレが近い(尿意頻数)などの症状が出てくる
ことがあります。がんの初期には、他のがんと同様、ほとんど症状がないこ
とが多く、気付かないうちにがんが進行してしまうこともあります。しかし
幸いなことに前立腺がんの多くは成長が遅く、放っておいても長期間進行せ
ず命に別状のないものもあり、進行するようなものでも、初期に発見するこ
とができれば、適切な治療によって大抵は完全に治ります。
−基準値表−
項
目
異常域(低) 境界域(低)
PSA
基準域
∼4.0
境界域(高) 異常域(高)
4.1∼
前立腺から分泌される蛋白で、血液中に微量に含まれます。前立腺
組織が大きくなると、それに応じてPSAの分泌が増えますし、がんで
前立腺組織が壊されると、壊れた細胞のPSAも血液中に流れ出て、し
ばしば値が高くなります。だからこの値が高い場合は泌尿器科で精し
い検査をうけて、前立腺肥大か前立腺がんかを決めることが必要にな
ります。
ところが困ったことに、前立腺がんがあっても必ず検査値が高くな
るとは限らず、またがんでないのに高い値が出ることもよくあります。
今のところ、PSA検査が前立腺がんの死亡率を減らすのに確かに役立
PSA
つとまではいえず、その有用性については、専門家の間でも意見が分
かれています(日本泌尿器科学会は50歳以上男性のPSA検診を勧めて
いますが、厚生労働省の前立腺がん研究班は中止するよう勧告してい
ます)。このことを十分理解したうえで、検査を受けるかどうかをご
自身でお決めください。また検査値が異常に高く出た場合は、泌尿器
科で精しい検査をうけて治療を要するがんがあるかないか、もしあれ
ばどのような治療法を選ぶか(手術か放射線療法か薬物治療かなど)
を慎重に決める必要があります。
(PSA検査を受けるかどうかを判断するには、ドイツのポータルサイト
http://www.psa-entscheidungshilfe.de の情報が参考になります。)
59
腫瘍マーカー
がんなどの腫瘍から作られたり、或いは腫瘍やその他の病気に対する反応と
して、体の細胞から作られる物質です。
肝臓がんで作られるAFP(α胎児性蛋白)のように一定の臓器のがんでだけ
作られるものと、CEAのように種々の臓器のがんで作られるものとがあります。
腫瘍マーカーが陽性であれば、がんの有無を確かめるために、精しい検査が
必要になります。
しかし、がんの可能性はありますが、必ずがんがあるとは限りませんし、が
んがあっても陽性にならないこともあります。また、癌以外の良性疾患でも陽
性となることがあります。
また、抗P53抗体(*1)のように、前がん状態(がんになる前の段階)から
陽性を示すものもあります。現在問題がなくても、今のご自身の値から上昇傾
向にないかどうか経過を見ることも必要です。
(*1)
抗P53抗体の出現は、P53癌抑制遺伝子の変化に由来し、発癌抑制
監視機構の変化を示します。定期的ながん検診で癌発生の有無を監視される
ことをお勧めします。
関連する
腫瘍の部位
肺
食
道
胃
大
腸
○
△
△
○
△
○
AFP
肝
臓
胆
道
膵
臓
乳
子
宮
卵
巣
甲
状
腺
その他
○
○
○
△
○
△
喫煙、炎症性疾患、
腎不全など
○
◎
◎
CEA
CA19−9
シフラ
◎
SCC抗原
◎
○
○
◎
△
CA125
抗P53抗体
◎
△
△
◎
△
◎
◎
△
−基準値表−
項
目
異常域(低) 境界域(低)
基準域
境界域(高) 異常域(高)
AFP
∼10.0
10.1∼
CEA(N)
∼5.0
5.1∼
CEA(R)
∼2.5
2.6∼
CA19−9
∼37.0
37.1∼
シフラ
∼3.5
3.6∼
SCC抗原
∼2.0
2.1∼
CA125
∼35.0
35.1∼
抗P53抗体
∼1.30
1.31∼
あなたの健診百科
−KKCドックを受診された方へ−
第 15 版
平成 25 年 4 月 1 日
非売品(複製・無断転載禁止)
編
監
発
集
修
行
KKC 近畿健康管理センター医療統括本部
西村 明芳
KKC 近畿健康管理センター
滋賀県大津市木下町10−10
〒520-0812 電話(077)525-3233