資料組織法 0.まず最初に記述を作ってみよう 1.ISBD(M)とはどういうものか ISBD:International Standard Bibliographic Desc ription 国際標準書誌記述 ISBD(M):International Standard Bibliographic Desc ription for Monographic Public ation 国際標準書誌記述(単行書用) 記述(出版物の客観的な属性を書き記したもの。人間で言えば、住民票や戸籍簿に相当す る ) を 国 際 的 に 標 準 化 し た も の で あ る 。 I F LA( T h e I n t e r n a t io n a l F e d e r at io n o f Lib r a r y As s oc iations and Ins titutions 、国際図書館連盟)によって、1970年代に作られた。各国の目録 規則のうち、記述の部分はISBDに準拠して作られている。資料種別ごとに種々のISBDがある が、最初にI SBD( M) が作られた。8つのエリアに大別され、各エリアの中はエレメント(要 素)に分けれれる。これらのうち、特によく用いられるものに○を記す(後に説明するNCR における第2水準とほぼ同じ)。 2.ISBD(M)を用いて、『デジタル知識社会の構図』、『情報サービス』の記述を作成す る デジタル知識社会の構図□:□電子出版・電子図書館・情報社会□/□合庭惇著.□−□初 版.□−□東京□:□産業図書,□1999.□−□vi, 274p□;□20c m.□−□ISBN4-78280123-8 情報サービス□:□概説とレファレンスサービス演習□/□西田文男監修□;□志保田務, 平井尊士編著.□−□初版.□−□東京□:□学芸図書,□1999.□−□199p□;□21cm. □−□ISBN4-7616-0332-1 3.ISBD(M)を用いて、『図書及び図書館史』、『資料組織演習』の記述を作成する 書誌事項 タイトル、著者、出版社、出版年、といった記述の中に現れるデータのことを いう。 - 1 - 集合書誌単位 タ イ ト ル お 本タイトル 単行書誌単位 新・図書館学シリーズ 12:図書及び図書館史 前島重方、高山正也監修 寺田光孝編 よ び 責 任 表 タイトル関連情報 示エリア 責任表示 寺田光孝 , 加藤三郎 , 村越 貴代美共著 版エリア 版表示 初版 出 版 ・ 頒 布 出版地 東京 東京 等エリア 出版者 樹村房 樹村房 出版年 1997 − 1999 1999 形 態 的 記 述 数量 14 冊 xii, 215p エリア 大きさ 21cm 21cm 標準番号 ISBN 4-88367-013-9 図書及び図書館史□/□寺田光孝編□;□寺田光孝, 加藤三郎, 村越貴代美共著.□− □初版.□−□東京□:□樹村房,□1999.□−□xii, 215p□;□21c m.□−□(新・図書 館学シリーズ□/□前島重方, 高山正也監修□;□12).□−□ISBN4-88367-013-9 【参考】多段階記述様式による記述 新・図書館学シリーズ□/□前島重方, 高山正也監修.□−□東京□:□樹村房,□19971999.□−□14冊□;□21c m 12: 図書及び図書館史□/□寺田光孝編□;□寺田光孝, 加藤三郎, 村越貴代美共著. □−□初版.□−□1999.□−□xii, 215p.□−□ISBN4-88367-013-9 - 2 - 集合書誌単位 単行書誌単位 タ イ ト ル お 本タイトル JLA 図書館情報学テキスト 10:資料組織演習 よび責任表 シリーズ 示エリア タイトル関連情報 責任表示 塩見昇, 三浦逸雄, 柴田正 吉田憲一編 美, 小田光宏編 野口恒雄, 山野美贊子, 山中秀夫, 吉田憲一, 吉田暁史共著 版エリア 版表示 新訂版 出 版 ・ 頒 布 出版地 東京 東京 等エリア 出版者 日本図書館協会 日本図書館協会 出版年 1997 − 2004 2002 形 態 的 記 述 数量 13 冊 270p エリア 大きさ 26cm 26cm 標準番号 ISBN 4-8204-0210-2 資料組織演習□/□吉田憲一編□;□野口恒雄, 山野美贊子, 山中秀夫, 吉田憲一,吉田 暁史 共著 .□ −□ 新訂 版. □− □東京 □: □日 本図 書館 協会 ,□ 2002.□−□270 p□;□ 26c m.□−□(J LA図書館情報学テキストシリーズ□/□塩見昇,三浦逸雄, 柴田正美, 小 田光宏編□;□10).□−□ISBN-4-8204-0210-2 【参考】多段階記述様式による記述 J LA図書館情報学テキストシリーズ□/□塩見昇, 三浦逸雄, 柴田正美, 小田光宏編.□− □東京□:□日本図書館協会,□1997-2004. □−□13冊□;□26c m 10: 資料組織演習□/□吉田憲一編□;□野口恒雄, 山野美贊子, 山中秀夫,吉田憲一, 吉田暁史共著.□−□新訂版.□−□2002.□−□270p.□−□ISBN4-8204-0210-2 書誌単位の定義 日本目録規則1987年版で初めて書誌単位という概念が現れた 固有のタイトル から始まる一連の書誌的事項の集合を書誌単位という。 書誌的事項とは 本タイトル、責任表示、出版者、出版年のような記述すべき事項を言う。 固有のタイトルとは 厳密な定義は行われていない。 - 3 - 書誌単位の種類 大きいものから順に、集合書誌単位、単行書誌単位、構成書誌単位、の3種類がある。 それぞれは、まず単行書誌単位の定義が決まり、次に集合書誌単位と構成書誌単位が決ま る。 単行書誌単位 物的に独立した最小の書誌単位 基準となる書誌単位である。必ず1つの段階である。 集合書誌単位 単行書誌単位より大きい書誌単位 シリーズ全体や全集など。多くの段階にわかれうる。 構成書誌単位 単行書誌単位より小さい書誌単位 物として独立していない。多くの段階にわかれうる。 1冊中の個々の論文や、短編集中の個々の作品など。 物理単位 『フーコーの振り子』をもとに物理単位を理解する。 物としての1点ずつをいう。定義上は固有のタイトルの有無には関係ないが、実際上は、固 有のタイトルを持たない1点ずつを指し示すときに用いられる。 本法による記述 フーコーの振り子□/□ウンベルト・エーコ著□;□藤村昌昭訳.□−□東京□:□文藝春 秋,□1993.□−□2冊□;□22c m 注)本法では書誌単位しか記述できない。物理単位は記述の対象外である。したがってこの 本の場合、上下2冊セットの単行書誌単位のみが記述の対象となる。 集合書誌単位−単行書誌単位−構成書誌単位、の実例 『モーム』をもとに、3つの書誌単位を理解する。 集合書誌単位−単行書誌単位−物理単位、の実例 『弁論家の教育』をもとに、集合−単行−物理単位の例を理解する。 「世界教育学選集」(集合書誌単位)と「弁論家の教育」(2冊セットで単行書誌単位)は、 書誌単位であるが、1と2それぞれは、固有のタイトルを持たないため、物理単位である。 『小倉武一著作集』をもとに複雑な書誌単位と物理単位の組み合わせを理解する - 4 - 小倉武一著作集全体の階層関係を図式化する 小倉武一著作集−世界の農村と農政−緑のヨーロッパ−上巻−概説、の順序で分析表を作 成する。集合(大)−集合(小)−単行−物理−構成となっている。 集合書誌単位は大と小の2レベルになっている。 緑のヨーロッパ2冊合わせたものが単行書誌単位である。 「上巻」は書誌単位ではない→固有のタイトルがなく物としては1冊であるから物理単位 と呼ぶ。 本法による記述とは NCR(日本目録規則)における原則的な記述方法を「本法」と名付ける。 次の2つが本法による記述である。 1.書誌単位のみを記述の対象とし、物理単位は記述の対象としない。 2.単行書誌単位を中心に記述を行う。 集合書誌単位はシリーズエリアに納め、構成書誌単位は注記の内容細目に納める。 - 5 - ISBD(M)の主な枠組み (第1)タイトルおよび責任表示エリア 要素 本タイトル [] 一般資料種別(Mの場合は原則として記載しない) = 並列タイトル(原則として記載しない) : タイトル関連情報 / 最初の責任表示 ; 2番目以後の責任表示 (第2)版エリア 版表示 / 特定の版に関係する責任表示 (第3)資料(または刊行方式)特性エリア(Mの場合は不使用) (第4)出版・頒布等エリア 出版地 : 出版者 , 出版年 (第5)形態的記述エリア 特定資料種別と資料の数量 : その他の形態的細目 ; 大きさ + 付属資料 (第6)シリーズエリア シリーズの本タイトル = シリーズの並列タイトル(原則として記載しない) : シリーズのタイトル関連情報(原則として記載しない) / シリーズに関する責任表示 , シリーズのISSN ; シリーズ番号 シリーズエリアは、全体を( )で括る サブシリーズがあれば、本タイトルからシリーズ番号までを繰り返すことができる。 (シリーズ.□サブシリーズ) (第7)注記エリア (第8)標準番号、入手条件エリア 国際標準図書番号(ISBN) ◎エリアとエリアの間は、 .□−□でつなぐ。 - 6 - 本タイトル : タイトル関連情報 / 最初の責任表示 ; 2番目の責任表示. − 版 表示 / 特定の版に関係する責任表示. − 出版地 : 出版者, 出版年. − 特定 資料種別と資料の数量 : その他形態的細目 ; 大きさ + 付属資料. − (シリー ズの本タイトル / シリーズに関する責任表示, シリーズのISSN ; シリーズ番号). − 注記. − ISBN 区切り記号の種類と字空け / スラッシュ 前後1字空け 責任表示の前 : コロン 前後1字空け タイトル関連情報の前、など ; セミコロン 前後1字空け 2番目の責任表示の前、など − ダッシュ 前後1字空け エリアとエリアのつなぎ + プラス 前後1字空け 付属資料の前 . , ( ) 〔 〕 片側1字空け - 7 - 図版、「フーコーモーム.tif」をA4縦に印刷した紙を挿入 - 8 - Ⅰ.資料組織法の意義と情報検索・情報利用 1.資料組織法とは 通常、「資料組織法」あるいは「資料組織化」という。 『図書館用語集』改訂版 日本図書館協会, 1996 資料組織化:図書館などがその収集・蓄積した資料を利用に供するために、利用者の検索 の便を考え、一定の方式に従って体系的に資料を整理すること。最も狭義には、排架のため の分類業務を指していうが、一般にはこれまで、受け入れ、分類、目録、排架の一連の業務 を指して〈整理業務〉とほぼ同義に用いられてきた。近年では索引作成、件名作業、データ ベースの作成など、ドキュメンテーションやレファレンス・サービスなどのために、図書館 資料そのものではなく、その書誌情報を処理・整理して、組織づけ、体系化することをも含 めていうことが多い。目録をも含め各種のファイルを編成・整備することを特に指していう こともある。また時には、十分な検索が可能なように、情報・資料の収集・蓄積の計画を立 て、実行していくプロセスを含めていう場合もある。 2.資料組織法の情報検索への利用 図書館に多くの資料があっても、それらがバラバラに(例えば受け入れ順に)並んでいて も、求める資料を迅速かつ的確に探すことはできない。資料を組織化することにより、資料 が一定の方式に従って配列され、また種々の手がかりから検索できるようになる。資料を探 す手がかりとしてはいろいろ考えられるが、図書館において伝統的に用意されてきた方法は、 著者、タイトル、主題である。こういった手がかりから資料を検索し、そしてその資料が本 当に求めているものかどうかを、その資料の書誌的事項をもとに確認する。目録がこのよう なプロセスを保証するために作られる。 3.分類と目録 分類は目録として提供される多くの情報のうち、もっぱら資料の主題(その資料が何につ いて述べられているか。資料の意味内容)に関わる部分を受け持つ。 目録は、まず資料の書誌記述を中心に持ち、そこから必要な情報を抽出して検索項目とす る。検索項目には、著者、タイトル、出版者、出版年、ISBN、主題等がある。 Ⅱ.目録法 1.書誌と目録 (1)書誌 bibliography 書誌は、資料に関するリストであり、全国書誌、主題書誌、人物書誌、等がある。資料が 存在さえすればよく、所在位置を明示する必要はない。 (2)目録 c atalog 目録は、書誌と同様に資料に関する記録の集合物であるが、ある図書館(あるいは図書館 群)における所蔵の記録であり、必ず所蔵と結びつく必要がある。複数館の合体目録を 総合 - 9 - 目録 という。 (3)索引 部分を指し示すもの。部分を検索するためのもの。 例:巻末索引、語句索引、(雑誌の)論文索引、(新聞の)記事索引 論文索引、記事索引のように書誌である場合と、巻末索引のように指し示す部分が余りに も小さいために書誌とは呼べない場合がある。 (4)メタデータ データに関するデータ。 メタデータには、(1)記述メタデータ、(2)保存メタデータ、(3)管理メタデータ、(4)技術メ タデータ、などの種類がある。資源を検索し特定するためのメタデータは、記述メタデータ と呼ばれ、図書館目録と同様の性格を持つ。記述メタデータの代表格はダブリンコアであり、 ネットワーク情報資源の記述を行う際に、広く用いられている。(後に詳述) 2.目録の構成要素 (1)記述、標目、標目指示、所在記号 目録は書誌的記録の集合である。書誌的記録とは、個々の資料の書誌的なことがらを記録 したものである。書誌的なことがらとは、タイトルや著者、出版者、主題情報といったこと である。 a.カード目録における書誌的記録(記入)の構成要素 記入とはカード目録における記録の単位をいう。記入が集まって目録となる。 記入の構成要素は、記述、標目、標目指示、所在記号の4種類である。 記述 :記入の本体となるもので、他の資料と識別するのに必要なタイトル、責任表示、出 版、形態等に関する書誌的事項の総体。資料の客観的な属性を表現する。 標目 :記入の冒頭部に位置し、検索の手がかりとなるもの。カード目録では記入の配列を 決定するものでもある。記入の見出し語と考えれば分かりやすい。 標目指示 :カード上に記載する標目を示す事務的な記録。採用された標目の種類とその形 を、通常記述の下部に標目の種類ごとに記載する。基本記入方式の場合は、トレーシングと いう。タイトル標目、著者標目、件名標目、分類標目の4種類がある。 なお標目指示とは、後に標目として記載すべき事項を記述ユニットカード上にあらかじめ 指し示しておく役割のものであり、カード目録特有の概念である。 所在記号 :資料の配架場所を示す記号。通常分類記号と図書記号とからなる。総合目録で は、所蔵している図書館名がこれにあたる。所在記号のほか、資料の登録番号など事務的な ことがらが記載されることもある。 カード目録においては、記入は標目の数だけ作成される。標目を記載する直前の段階のカー ドを記述ユニットカードという。記述ユニットカードを標目の数だけ複製し、各々に標目を - 10 - 記載する。タイトル標目を記載したものをタイトル記入、著者標目を記載したものを著者記 入、件名標目を記載したものを件名記入、分類標目を記載したものを分類記入という。タイ トル記入をタイトルの音順に集めたものがタイトル目録となる。同様に著者記入を著者名の 音順に集めたものが著者目録、件名記入を集めたものが件名目録、分類記入を集めたものが 分類目録となる。 カード目録では、検索するためには「配列」が必要である。 b.コンピュータ目録における書誌的記録(MARCレコード)の構成要素 コンピュータ目録における書誌的記録のことを、MARCレコードあるいは書誌レコードとい う。 記述、標目、所在記号 の3種類からなる。 コンピュータ目録においては、書誌的記録は1つの資料に1つあればよい。検索項目の数 だけ複数個作成する必要はない。記述中の任意の事項および標目が検索可能項目となる。コ ンピュータ目録では検索のための配列は必要ではない。 コンピュータ目録では、書誌的記録中のどの項目からも検索することが可能である。通常 は検索項目に対してインデックスファイルを作成することによって、高速に検索が行える。 したがって検索項目は、カード目録のように標目(タイトル、著者、件名、分類)に限定さ れない。例えば記述中のタイトルやタイトル中の個々の単語、出版者、出版年、ISBNといっ たどのような項目からも検索することが可能である。このようにコンピュータ目録において、 検索項目の概念は拡張される。検索可能項目を アクセスポイント という。ただし、カード目 録における標目のように、標準化された検索項目はない。 (2)記述 記述は資料の客観的な属性を記録したものであり、コンピュータ目録の場合は検索項目に もなりうる。標目は検索専用項目として、記述のほかに別途与える項目である。記述は、客 観的な属性であるから目録作成者が勝手に形を変えたり、手を加えたりしてはならず、資料 に記載されたそのままの形を書き記さなければならない。これは書誌学における伝統的な手 法でもあるが、記述に関する 「転記の原則」 という。 【参考】 ・記述の対象と識別機能 写本であれば1冊ずつがすべて異なる。そういう記述対象にあては、目の前にある資料そ のものをもとに記述作業を行う必要がある。しかし近代以降の刊本の時代にあっては、記述 の対象は目の前にある資料そのものではなく、その資料の背景にある版(または刷)全体で ある。記述は資料の客観的属性を記すものであるが、最低限他の資料と識別できるようにす る必要がある。通常は、版のレベルまで(場合によっては刷まで)識別できるように書誌的 事項を選択する。なお後述のFRBRでは、個々の資料をitem、版全体のことをmanifes tationと 呼 び 分 け て い る 。 す な わ ち 複 製 資 料 に 対 す る 目 録 で は 、 記 述 の 対 象 は it e m で は な く manifestationである。 - 11 - 記述すべき事項とその順序に関しては、国際的に定められた標準がある。これをISBDとい う。 ISBD:Intrernational Standard Bibliographic Desc ription 国際標準書誌記述 IFLA:International Federation of Library Assoc iations and Institutions 国際図書館連盟 によって1969年以来制定された記述に関する国際標準で、各種資料ごとに制定されている。 ISBDの詳細は後述。 (3)標目 標目には通常4種類ある。 タイトル標目・・・タイトルからの検索 著者標目・・・・・著者からの検索 分類標目・・・・・主題からの検索(主題標目) 件名標目・・・・・ 〃 (主題標目) タイトル標目と著者標目は、それぞれ記述中の事項から検索に必要と判断されるものが選 ばれる。著者標目とタイトル標目は、例えば著者名の場合、記述中の著者の形をそのまま標 目にするとはかぎらない。目録作成者が検索の目的を考慮して、著者の形やタイトルの形を 変化させることがある(後述)。 ・主題標目 主題に関する標目(分類と件名)は、資料を主題から検索するためのものであり、記述中 の事項とは直接関係なしに目録作成者の判断によって選ばれる。分類標目は統制された形と なる。件名標目も現実には統制形が与えられている。 主題の把握→主題標目の選定(分類と件名) 上記標目のうちタイトル標目のみは、形が統制されない(統制された形を与えることもあ る→統一タイトル)。その他の標目は、その形が統制された検索専用項目である。 3.コンピュータ目録とカード目録における書誌的記録の比較 (1)書誌的記録の比較例 以下に,コンピュータ目録の場合(図1,図2)およびカード目録の場合(図3)における記 述と標目の記載例を示す。 - 12 - 図1.コンピュータ目録の場合の書誌レコード例(NACSIS−CATの入力画面例) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・<BN02210688> ・CRTDT:19880610 RNWDT:19970221 RNWFA:FA01403 ・ ・GMD: SMD: YEAR:1988 CNTRY:ja TTLL:jpn TXTL:jpn ORGL: ・ ・VOL: ISBN:4124025483 PRICE:2200円 ・TR:古代国家と日本 / 岸俊男編||コダイ コッカ ト ニホン ・PUB:東京 : 中央公論社 , 1988.5 ・PHYS:350p, 図版32p ; 21c m ・NOTE:執筆: 佐藤宗諄ほか ・ ・PTBL:日本の古代 / 貝塚茂樹 [ほか] 監修|ニホン ノ コダイ ・<BN00102378> 第15巻//a ・AL:岸, 俊男(1920-1987)||キシ, トシオ<DA0014159X> ・・著者標目1 ・AL:貝塚, 茂樹(1904-1987)||カイズカ, シゲキ<DA00131960> ・・・ 著者標目2 ・CLS:NDC8:210.3 ・・分類標目 ・SH:NDLSH:日本--歴史--古代||ニホン--レキシ--コダイ//L ・・・件名標目1 ・・件名標目2 ・ 目 ・SH:NDLSH:律令||リツリョウ//L ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ ・ ・ 記 ・ ・ 述 ・ ・ ・ ・ ・ 標 ・ ①TR,PUB,PHYS,NOTEは,タイトル及び責任表示といった各エリアを示す。 ②ALは著者標目。CLSは分類標目。SHは件名標目。タイトル標目は、記述中の各フィール ド(例えば、T Rフィールド)で||の後に記録されている。著者標目は記述中の著者名と 同じとはかぎらない(統一標目を採用する)。統一タイトルを採用する場合は、記述中 ではなく標目中に記載される。また、ALフィールドの著者名は、ID番号<DA0014159X> (岸俊男の場合)で,著者名典拠ファイルとリンクされている。 ③PTBLは集合単位とのリンク情報が記録される。ID番号<BN00102378>で,集合書誌レコー ド(図2参照)とリンクされている。 ④MARCレコードの場合、標目のほか記述中のあらゆる項目から検索することが可能である。 ◎この単行書誌レコード中で、標目指示に誤りが一つある。それは何か。またなぜそのよう な間違いをおかしたのかを考えること。 図2.集合書誌レコード例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・<BN00102378> ・ ・CRTDT:19860506 RNWDT:19940208 RNWFA:FA006565 ・ ・GMD: SMD: YEAR: CNTRY:ja TTLL:jpn TXTL:jpn ORGL: ・ ・VOL: ISBN: PRICE: ・ ・TR:日本の古代 / 貝塚茂樹 [ほか] 監修||ニホン ノ コダイ ・ ・PUB:東京 : 中央公論社, 1985-1988 ・ ・PHYS:16冊 ; 21c m ・ ・AL:貝塚, 茂樹(1904-1987)||カイズカ, シゲキ<DA00131960> ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 標目は、各書誌単位ごとのレコードに関わるものだけを与えればよい。単行書誌単位レコー ドなら、単行関係のタイトルや著者のみを、集合書誌単位レコードなら、集合関係のタイト ルや著者のみを与えればよい。 - 13 - 図3.記述ユニット方式でのカード記載例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ ・ ・・210.3 ・・ 標 目 ・ ・・キ1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ ・ ・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ ・・・・・・ ・古代国家と日本△/△岸俊男編.△−△東京△:△中 ・ ・ ・ 所在記号↑ ・央公論社,△1988.△−△350p,△図版32p△;△21c m. ・ ・ ・ ・ ・△−△(日本の古代△/△貝塚茂樹△[ほか]△監修 ・ ・ ・ 記 述 → ・△;△第15巻) ・ ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ ・ ・t1. コダイ コッカ ト ニホン t2. ニホン ノ コダイ 15 a1. キシ ,・ ・ ・ ・標目指示→・トシオ a2. カイズカ, シゲキ s1. 日本−歴史−古代 ・ ・ ・s2. 律令 ① 210.3 ・ ・ ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ ・ ・ ○ ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ カード目録の場合は、書誌単位ごとに記録を分けることはできないから、カードに記載さ れているすべての項目につき(単行も集合も)、必要な標目を与えなければならない。 (2)書誌的記録 特定資料について、組織的に構成された書誌的事項の集合に、標目、所在記号等を加え たもの。目録記入である場合とMARCレコードである場合とがある (『日本目録規則1987 年版改訂版』用語解説)。目録や書誌の記録媒体には、カード、冊子、コンピュータファイ ルなど、各種のものが用いられているが、これらの記録媒体を問わず、記述対象資料に対す る書誌的な記録を総称する場合に「書誌的記録」という用語を用い、カード目録や冊子目録 上の記録に対しては「目録記入」を、コンピュータ目録に対しては「MARCレコード」を用い ている。 記入はカード目録の場合の概念であったが、これはコンピュータ目録ではふさわしくない。 カード目録では1つの標目ごとに1つの記入が必要となる。したがって標目の数だけの記入 を作る必要がある。しかし、コンピュータ目録では「記入」に相当するものは1つでよい。 これをMARCレコード(あるいは書誌レコード)とよぶ。その構成要素は、記述、標目、所在 記号の3つである。記入とMARCレコードを統合したものを書誌的記録と名付ける。 - 14 - 4.書誌階層 (1)書誌レベルと書誌単位 書誌階層 記述対象資料内および資料間に存在する多様な書誌的関係の一つであり、全体---部分 関係、あるいは垂直関係とも呼ばれる。目録の機械可読化および目録(書誌)情報の共有 化の動きが、階層関係の把握や処理を促す結果を招いた。 書誌レベル 書誌的記録に書誌階層構造があるときの、上下の位置づけをいう。書誌レベルには、基 礎、集合、構成の3レベルがある (『日本目録規則1987年版改訂版』用語解説)。『日本目 録規則1987年版』および『同改訂版』では、独自の記述対象の把握の単位である「書誌単位」 に基づき、階層構造を基礎書誌レベル、その上位書誌レベル、および下位書誌レベルから構 成されるものと捉え、それらを各々、基礎、集合、構成書誌レベルと表現している。さらに、 基礎書誌レベルについては、単行資料に対する単行レベル、継続刊行物資料対する継続刊行 レベルの二つに分かれる。 書誌単位 同一の書誌レベルに属し、固有のタイトルから始まる一連の書誌的事項の集合。書誌的 記録は一つまたは複数の書誌単位からなる。書誌単位には、基礎(単行、継続刊行)、集合、 構成の3種がある (『日本目録規則1987年版改訂版』用語解説)。 「一連の書誌的事項」とは、具体的には本タイトルから始まって国際標準番号に至るまで のISBDにおける記述事項の総体だと思えばよい(ただし、シリーズエリアは含まない)。 固有のタイトルとは 現在、書誌単位の規定に含まれる「固有のタイトル」は日本目録規則では説明されて いない。これをどのように規定すべきかが解決を求められている。NACSI S- CAT が採用 している「目録情報の基準」においては、「固有のタイトルではないもの」を示すこと により、その解決を図っている。 基礎書誌単位 物的に独立した最小の書誌単位。基礎書誌レベルに属し、固有のタイトルから始まる一 連の書誌的事項の集合。物的な1点が基礎書誌単位になることもあり、数点以上合わさっ たものが、基礎書誌単位になることもある。 基礎書誌単位に相当する部分が単行資料の場合、単行書誌単位となり、継続資料の場合 に、継続刊行書誌単位となる。 集合書誌単位 基礎書誌単位より上位のレベルの書誌単位。集合書誌レベルに属し、固有のタイトルか ら始まる一連の書誌的事項の集合。基礎書誌単位の集まったものが集合書誌単位である。 - 15 - 集合書誌単位(集合書誌レベル)は一つとはかぎらず、より上位の集合書誌単位が何段 階も存在する可能性がある。 構成書誌単位 基礎書誌単位より下位のレベルの書誌単位。構成書誌レベルに属し、固有のタイトルか ら始まる一連の書誌的事項の集合。物的には独立せず、例えば1冊の中の論文・作品や1 枚の音楽CDの中の1つずつの曲のように、1つの資料の部分を占めるにすぎない。 集合書誌単位と同様、一つのレベルとはかぎらず、より下位の構成書誌単位が何段階も 存在する可能性がある。 物理単位 単に物としての1点1点をいう。固有のタイトルを持つ、持たないは関係ない。NCRでは 書誌単位を分割して形態的に独立した部分1点ずつについて記述する単位 (『日本目録規 則1987年版改訂版』用語解説)。NCRの定義はよくない。記述対象資料を形態的に独立した 単位で把握し、それに基づき記述を作成するものであり、『日本目録規則新版予備版』がこ れを原則的な記述の対象と位置付けていた。『同1987年版』からは、「書誌単位」を補足す る位置付けに置かれており、 とき 、あるいは 必要があるとき 資料の管理や所蔵記録のため、1点ずつの書誌的記録が必要な 目録とか出版物リストに収録するとき、1点ずつの書誌的記録を作成する に採用するとされている。 (2)本法の記述様式 日本目録規則1987年版における記述様式の原則は次の2つである。 1.書誌単位のみを記述の対象とし、物理単位は記述の対象としない。 2.単行書誌単位を中心とする。 単行書誌単位から記述を始め、集合書誌単位はシリーズ中で簡略に記録し、構成書誌単位 は注記の内容細目として記録する。 以上の原則どおりの記述様式を「本法」と名付ける。 本法 学校図書館と児童図書館 / 塩見昇, 間崎ルリ子共著. -- 東京 : 雄山閣, 1976. -- 263p ; 21c m. -- (日本図書館学講座 / 椎名六郎[ほか]編 ; 第5巻). -- ISBN 4-6390-0107-X (3)多段階記述様式 日本図書館学講座 / 椎名六郎[ほか]編. -- 東京 : 雄山閣, 1975-1978. -- 10冊 ; 21c m 第5巻: 学校図書館と児童図書館 / 塩見昇る, 間崎ルリ子共著. -- 1976. -- 263p. -- 内容: 学校図書館 / 塩見昇. 児童図書館 / 間崎ルリ子. -- ISBN 4-6390-0107-X - 16 - (4)その他の記述様式(覚える必要はない) 簡略多段階記述様式 日本図書館学講座 / 椎名六郎[ほか]編 第5巻: 学校図書館と児童図書館 / 塩見昇る, 間崎ルリ子共著. - - 東京 : 雄山閣, 1976. - 263p ; 21c m. - - 内容: 学校図書館 / 塩見昇. 児童図書館 / 間崎ルリ子. - - I SBN 4- 63900107-X 分割記入様式 日本図書館学講座. 第5巻 東京 : 雄山閣, 1976 263p ; 21c m 第5巻: 学校図書館と児童図書館 / 塩見昇, 間崎ルリ子共著 叢書の編者: 椎名六郎ほか 内容: 学校図書館 / 塩見昇. 児童図書館 / 間崎ルリ子 ISBN 4-6390-0107-X NCR新版予備版(1977)以来の、論理的に不整合な記述様式である。 しかし現実にJAPAN MARCやTRC MARCなどで用いられている記述様式である。 一括記入様式(省略) (5)分出記録様式 構成書誌単位を中心とする記述様式である。 規則には定めがあるが、実質的な普及は全くしていない。 月と六ペンス / モーム著 ; 中野好夫訳. - - (モーム / モーム著 ; 中野好夫, 上田勤訳. - 初版. -- 東京 : 中央公論社, 1994. -- p3-235. -- (世界の文学セレクション36 ; 29)) - 17 - 5.目録とは ( 1)一図書館または図書館グループが所蔵する図書館資料の目録記入を、各種の標目(タイ トル、著者、件名、分類記号)を検索手段として、一定の順序で排列したもの。 (2)MARCレコードのファイル(『日本目録規則1987年版改訂版』用語解説)。 6.目録の種別 (1)形態面からみた種別 ①冊子体目録 歴史的には最も古い目録の形態である。 長所:(1)各ページには、20冊内外の資料に関する記録を掲載し、通覧して見ることができる。 (2)また相当部数を印刷して、図書館外にも配布することができる。 短所:(1)いったん作成した時点以後に受け入れた資料に関しては、別の冊子として納めざる をえない。すなわち資料を検索するのに、幾種類もの冊子目録を見なければならなくなる。 ②カード目録 19世紀以後1980年代初頭まで全盛をほこった目録形態であるが、コンピュータ目録の出現 以降急速に姿を消しつつある。 長所:(1)新規の目録記入の挿入が自由に行える。 短所:( 1) 一覧性に欠ける。( 2) カード配列に手間がかかる。( 3) 目録設置の場所(図書館)で しか検索できない。 ③コンピュータ目録 1990年代に入ってから急速に普及し、現在ほとんどの図書館で用いられている。 長所 (1)著者やタイトル、件名、分類記号からの検索はもちろんのこと、出版者、ISBN、などさま ざまな項目からの検索が可能である。 (2)タイトル中の単語など、一つの項目の中のさらに部分からも検索が可能。 (3)トランケーション技法を用いて、完全一致検索のほか、前方一致検索などが行える。 (4)タイトルと著者というように、組み合わせ検索が行える。 (5)検索速度が速い(通常数秒程度)。 - 18 - ( 6)リンク手法を用いて、ある書誌レコードを検索したときに、さらに関連項目をたどって検 索することができる(単行書誌単位から集合書誌単位へ、タイトルで検索して著者や件名検 索へ、といったように)。 ( 7)内部レコードの形式は、表示形式とは別に、論理的に最適の形式を選ぶことができる。そ の結果、単行書誌単位と集合書誌単位とを別々に維持したり、書誌レコードと典拠レコード とを別々に維持したり、ということができる。このようにして、目録表示形式と検索上の自 由度を大きくすることができる。 ( 8)ネットワークを介して図書館外からの検索が可能である。インターネットを経由して全世 界からもアクセスできる。 (9)資料の書誌情報は通常1つだけである。 (10)コンピュータ目録においては、通常自館では目録データを作成しない。カード目録時代で も「印刷カード」というものがあり、必ずしも自館で目録データを作成しないこともあった が、印刷カードは円滑な入手が難しく、概して実用的とはいえなかった。これに対し、コン ピュータ目録では、電子媒体やネットワークをとおしてデータのやりとりが容易であり、全 国書誌作成機関等の作成した標準的な質の高い目録データを利用することが常識となってい る。したがって低いコストで質の高い目録データが得られるという特徴がある。 短所 ( 1)検索方法や操作方法が誰にでも分かりやすいとはいえず、使いやすさに関するさまざまな 工夫が必要となる。 (2)現状における表示装置程度の画面の大きさでは、通覧性が十分とはいえない。 ( 3)コンピュータ目録の仕組みは、ブラックボックスのようなことが多く、図書館員がしっか り理解しいないと、利用者に適切な使い方を指導できない。 ( 4)コンピュータやソフトウェア、ネットワークの管理が必要であり、またそのためのコスト がかかる。しかし今日コンピュータとネットワークを持たない事務組織はほぼ皆無であり、 コンピュータ目録のためだけにこういったものが必要なのではない。 (2)閲覧用目録の種類(カード目録の場合) ①著者目録 著者記入を著者名の音順に配列した目録。著者名からの検索に対応する。被研究者、被伝 - 19 - 者などの人名件名を便宜上著者目録に組み入れることがある。 ②タイトル目録 タイトル記入をタイトルの音順に配列した目録。タイトルからの検索に対応する。 ③件名目録 件名記入を件名の音順に配列した目録。主題目録の一つであり、件名からの検索に対応す る。 ④分類目録 分類記入を分類記号の記号順に配列した目録。主題目録の一つであり、分類からの検索に 対応する。分類記号をことばから探すための、件名索引をともなう。 ⑤ 辞書体目録 著者名、タイトル、件名の3種類のてがかりから検索できる目録。著者を標目とする記入、 タイトルを標目とする記入、件名を標目とする記入を総合して一元的に標目の音順に配列し た目録。特に北米でよく普及。北米では分類目録は通常作成されない。したがって目録は、 ABC順の1種類のみということになる。カード目録時代(冊子体目録)の産物である。 (3)コンピュータ目録の場合 著者目録、タイトル目録、などのような分け方はされない。コンピュータ目録では、検索 のために配列を必要としないため、検索項目別の目録を設ける必要はない。同じ画面で同じ 書誌データベースを用いて、著者からの検索、タイトルからの検索、タイトル中の単語から の検索、件名からの検索、出版者からの検索、あるいはそれらの組み合わせによる検索、を 行うというようになる。また著者名、タイトル、件名等を区別せず、あらゆるアクセスポイ ントから検索させるという方法もありうる。このようにコンピュータ目録では、検索項目の 相違による「∼目録」というような目録種別を表す概念は適用できない。 利用者が直接利用できるコンピュータ目録を O PAC (Online Public Ac c es s Catalog)という。 コンピュータに目録データを入力するようになっても、すぐには利用者が直接検索するもの にはならなかった。特に北米ではコンピュータに入力した目録データを、マイクロフィッシュ に直接出力して利用する CO M (c omputer output mic roform)目録と呼ばれる段階があり、その 後コンピュータ目録を直接利用者がオンラインで検索できるようになった。 (4)その他の目録 ◎書架目録 資料が書架に並んでいるとおりの順序に書誌的記録を並べた目録。通常、蔵書点検のとき に必要となる。多くの図書館では分類順に資料を配架するので、分類目録と似たものになる が別物である。現在ほとんどの図書館では、資料にバーコードを貼って、資料1点ずつの存 在をコンピュータで把握することが可能になっている。したがって蔵書点検は単にバーコー ドを読みとるだけで行えるので、もはや書架目録を作成する図書館はまず存在しない。 - 20 - ◎総合目録 Union catalog 複数の図書館の蔵書を一括して検索できる目録。コンピュータ目録以前は、各図書館が作 成した目録記入を手作業で統合する作業をしていたが、コンピュータとネットワーク出現後 は、総合目録の作成方法は様変わりした。各図書館の目録情報を集中させ、一つのデータベー スに統合する集中型と、ネットワーク上に分散した各図書館のWebOPACを一括検索する分散 型の2種類がある。 総合目録は図書館相互協力、特に図書館資料の 相互貸借 (Inter Library Loan: ILL) に必須の ものである。日本では相互協力が非常に遅れていたが、その主要な原因が総合目録の不備に あった。国立情報学研究所(旧学術情報センター)の総合目録ができるまでは、大規模な総 合目録は『学術雑誌総合目録』と『新収洋書総合目録』くらいしかなかった。また世界的に は、アメリカの National Union Catalog が有名。 1986年の学術情報センター(2000年4月以後は国立情報学研究所)発足後、オンライン共同 分担目録が軌道に乗り、巨大な総合目録が出現した。その結果、大学図書館を中心として資 料の相互貸借が活発化している。 - 21 - 7.目録の機能と標目の統制 著者およびタイトルからのアクセスに関する目録の機能には、以下の3段階がある。 標目の統制 1.特定図書の検索 行う必要がない 2.ある著者のすべての著作の検索 著者名の統制を行う( 統一著者名 ) 3.ある著作のすべての版の検索 著者名の統制に加えて、タイトルの統制を行う (統一著者名+ 統一タイトル ) ◎統一著者名 例:夏目漱石 本名:夏目金之助 夏目金之助著と書かれた本と、夏目漱石著と書かれた本がある。 これら同一人物の書いた本をすべてまとめて検索したいときは、異なる著者名を1つに定 めなければならない。 例:John von Neumann Von Neumann, John か Neumann, John von かNeumann, Johann Ludw ig vonか Von Neumann, John, 1903-1957(L.C.における統制形の例) 生没年を付して、同姓同名の別人と区別する。 例:D. H. Law renc e Law renc e, David Herbert か Law renc e, D. H.かLaw renc e, David Herbert Ric hardsか Law renc e, D. H. (David Herbert), 1885-1930(L.C.における統制形の例) 同じイニシアル形が2人以上いる場合、本名を( )の中に添えて区別する。 採用されなかった形から、確定形への参照(Referenc e)が必要である。 夏目金之助 Neumann, John von see 夏目漱石を見よ Von Neumann, John - 22 - ◎統一著者名の機能 1.ある特定人物(団体名のこともある)について、1つの形に統制する。 2.同姓同名など、同じ形の複数著者を区別する。 (生没年や職業などを添えることにより) ◎統一タイトル 例:ShakespeareのHamlet Hamlet. Hamlet, Princ e of Denmark Hamlet, Princ e of Denmarke The tragic all historie of Hamlet, Princ e of Denmarke The tragedy of Hamlet The tragedy of Hamlet, Princ e of Denmark 例えば、Hamletを統一タイトルに採用する。統一著者名(Shakes peare, Willis m)と統一タ イトル(Hamlet)の組み合わせで検索を行うことによって、シェイクスピアの書いたハムレッ トがどのようなタイトルで出版されていようとも、すべて検索することができる。 例:無著者名古典 千夜一夜物語、千一夜物語、アラビアンナイト 参照: 千一夜物語 千一夜物語 アラビアンナイトを見よ アラビアンナイトを見よ 無著者名古典の場合、統一タイトルのみで著作を特定する。 NCR1987年版では、統一著者名は採用する。統一タイトルについては、 無著者名古典 、聖 典、音楽作品にかぎり、任意規程で採用してもよい、としている。 統一著者や統一タイトルについては、どの形を確定形にしたかを記録する「典拠ファイル」 を作成しなければならない。 典拠ファイル Authority file 著作の集中機能を果たすため、標目の確定形を維持管理するためのファイル。 確定形、参照形、典拠となった資料名などが記録される。 - 23 - 種類としては、統一著者名典拠ファイル、統一タイトル典拠ファイルのほか、件名典拠ファ イルがある。 コンピュータ目録になって、典拠ファイルは単なる事務用目的から著者名からの検索時に 利用しうるものへと変貌した。著者名から検索する場合、まず典拠ファイルを検索し、確定 形以外から検索した場合でも自動的に確定形へと導くような仕組みを作ることが出来る。な おこの場合、書誌ファイル上の著者名と典拠ファイル上の同じ著者名とがリンクされている 必要がある。著者名等の典拠ファイルを作成し維持することを 典拠コントロール という。 - 24 - 8.目録規則 (1)意義 目録規則とは、図書館等における目録作成の原則、方法について成文化した基準である。 記入の内容、形式等を安定・標準化するものであり、公刊され広く共通に使用されることに よって、館外の目録システムとの融合や、他館との総合目録を実現する基礎となる。書誌ユー ティリティが出現し、共同で目録作業を行うようになってからは、とりわけ緻密な目録規則 の必要性が高まっている。またWebOPACを用いた分散型一括検索においても、目録データ要 素を同じように定義しておかないと検索はうまく機能しない。そのためにも目録規則を厳密 に定める必要性が高まっている。 (2)構成 ①記述に関する規則 ②標目に関する規則 ③配列に関する規則(欧米では別立ての規則になることが多い) (3)目録規則の歴史(西洋) 1.パニッツイの目録規則(1839) 大英図書館の蔵書目録用にパニッツイ(Antonio Panizzi)が作成した91ヶ条から成る目録規則。 2.カッターの辞書体目録規則(初版1876) アメリカのカッター(Charles Ammi Cutter)が発表した辞書体目録を対象とする目録規則。件 名記入に関する規程が特に有名。 3.パリ原則 1961年にIFLA(国際図書館連盟)の主催によりパリで開かれた国際会議において採択され た、主として標目の選定と形の決定に関する原則。主たる著者を基本記入の標目とすること が確認された。その他団体標目の扱いなどを含めて、標目に関する国際的統一が前進した。 パリ原則にしたがって、各国の目録規則が改訂された。 4.英米目録規則[1967年版](AACR1) Anglo-Americ an Cataloging Rules パリ原則に基づき、LA(Library As s oc iation)、ALA(Americ an Library As s oc iation)、カナダ 図書館協会およびLCが協力して策定した英語圏共通の目録規則。北米版と英国版に分かれる。 図書以外の資料をも対象とする。基本記入制をとる。1974年に国際標準書誌記述にしたがい、 第6章記述の部が改訂された。 - 25 - 5 .国際標準書誌記述 Inte rnational Standard B ibliographic De s cription: ISB D IFLAの世界書誌コントロール事務局によって策定された記述に関する国際標準。 1971年にISBD(M)(単行書用)勧告案が出されてから、S: Serials 逐次刊行物用、NBM: Non-Book materials 非図書資料用、CM:Cartographic materials 地図資料用、CF:Computer f iles コンピュータ・ファイル用(現在はCF ではなくER:elec tr onic r es our c es )など各種の ISBDが刊行されている。これらの整合性を保たせるため、ISBD(G) General(総合)が出てい る。2007年には、各種ISBDを統合した統合版が出ている。 パリ原則とともに、目録に関する国際的な標準化を目指す動きのひとつ。パリ原則が標目 に関する原則を決めたのに対し、ISBDは記述に関する具体的な標準を定めた。 その具体的目的は、①書誌データを構成する要素の確定、②書誌要素の記載順序を定める、 ③各書誌データを識別する区切り記号法を定めることにより、書誌要素の確定に役立つとと もに、自国語以外の他の言語の利用者にも容易に解釈できるようにする、といったことであ る。 6.アルファベット順目録規則(1977) RAK: Regeln fur die alphabetis c he Katalogisierung。プロシャ図書館アルファベット順目録規 則第2版( 1908) を改訂したもので、ドイツ語圏共通の目録規則。従来ドイツ語圏と英語圏と で、目録原則に関し大きな相違があったが、パリ原則とISBDを全面的に採択し、英米系の目 録原則と同じにしたもの。 7 .英米目録規則第2版(AACR2) (1978) Anglo-Americ an Cataloguing Rules. 2nd edition. コンピュータの導入や国際標準化の具体化によりAACR1の改訂版として1978年に刊行され た。扱う資料種が網羅的。英米で版の別がない。記述を先に作成するが基本記入制を維持し ている。パリ原則、ISBDに準拠する。 事実上の国際標準となる目録規則であり、英米圏以外の各国でも直接、間接に使用されて いる。1988年に修正増補事項を組み込んだ改訂版(AACR2R)が、1993年にはその修正事項が、 2002年には「電子資料」「地図資料」「逐次刊行物」の記述を大きく改訂した2002年版が刊 行されている。 現在根本的な改訂作業が進行中である。当初AACR3になると言われていたが、2010年RDA (Res ourc e Des c ription and Ac c es s )という名称の新版が公表された。ただしまだ実用的に使わ れているわけではない。 - 26 - (4)基本記入方式(著者基本記入方式) Main entry 現在の記述ユニット方式では、記述をまず作成し、その後必要な標目を決定し、標目の数 だけ複製された記述ユニットカードに、個々の標目を記載するという手順になる。この場合、 どの標目も等価であり、特に中心となる標目を定めない。 これに対し欧米の目録の伝統では、記入を作成するのに先だって、まず基本となる標目を 選び、次に記述を作成する。基本となる標目は、その資料の最も主要な著者の中から選ぶ。 著者の数が多かったり、著作関与者の種別(著者、訳者、編者、など)が混在していたりで、 その資料を代表する適当な著者が見あたらない場合は、タイトルから記入を作成する(この 場合は、一見記述ユニットカード方式のようになる)。そして基本記入の標目に選ばれなかっ た著者やタイトルなど、他の必要検索項目に対しては、補助記入(後に副出記入となる)を 作って対処する。こういった方式を著者基本記入方式とよぶ。欧米ではある図書を表現する のに、まず著者を重視するという伝統からこういう方式が当然のごとく受け入れられた。 これに対し日本や中国では、ある図書を表現するのに著者ではなく、書名を重視するとい う伝統があった。したがって著者基本記入方式はなじまなかったが、戦後欧米目録の影響で、 目録規則は著者基本記入方式をずっと採用することになった。ところが日本目録規則新版予 備版( 1977) では、著者基本記入制を廃し記述ユニット方式に移行した。その後日本目録規則 1987年版に改訂されるが、記述ユニット方式は維持している。 基本記入 補助記入(簡略記入) タカギ, イチノスケ 931 高木市之助 931 湖畔 昭和32 ワス 湖畔 ワーズワスの詩蹟を訪ねて ワス 高木市之助 東京 平凡社 昭和32 169p 図 15c m 1.ワーズワス, ウィリアム 2.コハン 複写機の進歩していない時代においては、基本記入では完全な記入を作成し、その他の標 目に対しては、簡略な補助記入を手作業で作成していた。その後複写機の進歩により、簡略 な補助記入を作成せず、基本記入をそのまま複製して、基本記入の標目の上部にさらに副出 標目を記載するというスタイルになった。 欧米では今でも著者基本記入制を継続している。 (5)目録規則の歴史(日本) 日本図書館協会が、戦後「日本目録規則(NCR、Nippon Cataloging Rules)」を維持管理し てきた。日本図書館協会による最初の版はNCR1952年版である。 - 27 - 1.日本目録規則1965年版 日本図書館協会編 Nippon Cataloging Rules:NCR パリ原則に従った著者基本記入方式の規則で、洋書にも適用される。 2.日本目録規則新版予備版(1977) 日本図書館協会編 非基本記入制を採用する。記述ユニットカードを作成し、そこに示されている標目指示に ある標目の枚数だけカードを複製し、各々に標目を記載する。当時公共図書館において利用 者に対する直接サービスが重視されるようになり、従来の「整理偏重」を排し、貸出重視と いう潮流の中で生まれた規則である。整理はなるべく簡略にすべきであるとし、簡略目録指 向という当時の風潮の影響を受けた規則といえる。 記述においては当時すでにISBDが国際的に普及し、その内容もほぼ固まりつつあったにも かかわらず、ISBDを無視した日本独特の記述方式が採用された(分割記入様式)。また標目 に関する規程も非常に簡略なものとなった。 3 .日本目録規則1987年版 記述は全面的にISBDに依拠することになり、国際標準に復帰する。ISBDにおける「書誌レ ベル」という考え方をさらに精緻にした「書誌階層」「書誌単位」という概念が導入され、 論理的にしっかりした構造をもつことになる。しかし標目に関する規程は、新版予備版のま まで、簡略なものにとどまる。 特徴をまとめると ①書誌階層、書誌単位という概念の導入。これによって機械可読、書誌データベースの論理 的な処理に適する書誌ファイルを形成するのに役立つ。 ②記述において、単行書誌単位を中心に据えている(本法)。本法においては、単行書誌単 位を中心とする記述を行い、上位の書誌単位(集合書誌単位)はシリーズ、下位の書誌単位 (構成書誌単位)は、内容細目で扱う。 ③記述はISBDに準拠する。したがって区切り記号法も使用する。 ④あらゆる資料媒体メディアを扱う。標目の規則は、あらゆる資料媒体メディアに共通に適 用される。これはAACR2を参考にしたものである。 ⑤標目は、簡略なものにとどまる。 ⑥任意規定ではあるが、標目で統一タイトルを規定している。 4.日本目録規則1987年版 改訂版(1994) 改訂2版(2001) 日本図書館協会編 1994年改訂版:1987年版で未完成だった3つの章を完成、点字資料の記述をマイクロ資料 および逐次刊行物の前に配置した、各章の規則構成・条項の配置・条文の表現・用語等につ いて整合性を図ること、など1987年版の小さな改訂である。 2001年改訂2版:第9章(電子資料)(旧コンピュータファイル)をISBD(ER)改訂に対応し て、改訂したものである。 2006年改訂3版:I SBDの改訂に合わせて、和古書、電子資料、逐次刊行物の各章を大きく 改訂した。 - 28 - 9.MARCと書誌ユーティリティ (1)MARC(機械可読目録) Mac hine Readable Cataloging 書誌記述、標目、所在記号などの目録記入に記載される情報を、一定のフォーマットによ り、コンピュータで処理できるような媒体に記録すること、または記録したもの(『日本目 録規則1987年版改訂版』用語解説)。機械可読目録ともいう。 最初のMARCはアメリカ議会図書館の作成したLC MARC(後にUS MARC、さらにMARC21 と改称される)である。1969年からLCは従来から行ってきた印刷カード頒布サービスに加え、 目録を機械可読形式に変換した磁気テープを、予約した図書館等に頒布する事業を開始した。 LC MARCは、1967年に発足したOCLCにおいて書誌データベース作成のための重要な基礎 として使用され、大きな成果をあげた。その後各国の全国書誌作成機関も同様のMARCの作成 ・頒布を開始し、これらは国際的に交換されるようになった。機械可読形でデータを収納す る書式を、MARC Formatといい、MARC21 Formatが代表的なものであるが、国際的に交換す るためのフォーマットとして、UNIMARC Formatがある。 ・JAPAN MARC 1981年に国立国会図書館によってJAPAN MARCフォーマットが制定され、『日本全国書誌』 の機械可読版として頒布サービスが開始された。1988年からは逐次刊行物用のJ APAN MARC も頒布が開始された。J APAN MARCの利用は購入の各機関単位になされるが、NACSIS-CAT ではこれを参照ファイルとして取り入れ、加入館が共通利用する形となっている。出版され てからMARCレコードが作成されるまでに数ヶ月かかるのが最大の欠点である。年間5万件以 上の新規データが追加されるが、遡及データも作成されており、現在は明治期以後の国立国 会図書館所蔵図書についてはほぼMARC化が完成している。 ・TRC MARC 日本では国立国会図書館のMARCだけではなく、民間MARCがいくつか存在する。その中で も最大手が図書館流通センター(株)の作成・提供するT RC MARCである。フォーマットは J APAN MARCとほぼ同様であるが、TRC MARCの方が若干情報が詳しく、また出版されると 同時 にMARCレコ ード が頒 布さ れる ので 、新 刊書 に関 して はJ AP AN MARCではなく、T RC MARCが使われる傾向にある。特に公共図書館では圧倒的な普及を誇る。 (2)書誌ユーティリティ 多数の参加機関のオンラインによる分担目録作業を目的として形成された組織。北米には、 1971年にオンライン分担目録システムを稼働させたOCLCを初めとして、RLIN、WLN、Utlas などがある。日本では、1986年設立の学術情報センターが書誌ユーティリティの機能を果た - 29 - している。各書誌ユーティリティは、成立の経緯、参加機関の構成、経営基盤、および活動 内容等がそれぞれに異なる。 その活動内容のうち、参加機関に書誌情報を提供し、逆にそれに対する所蔵情報を受け取っ たり、また参加機関独自の所蔵資料に関する書誌および所蔵情報を受け取ったりして、結果 として総合目録を形成するというのが、その中核となる総合目録システムである。これに加 えて、資料収集、レファレンス、相互貸借、遡及変換などの図書館業務の支援システムや、 図書館業務処理システムパッケージ等の提供が行われており、これらが総合目録システムと ともに、書誌ユーティリティを参加機関の業務の省力化や標準化に不可欠なものとした。さ らには、各種データベースの運用、エンドユーザー向けの情報検索サービスや他機関の検索 システムへのゲートウェイの提供、国際的ネットワークや書誌ユーティリティ間の協力活動 の展開などによって、現在、書誌ユーティリティは情報ユーティリティへの変革期を迎えて いる。 ・OCLC (Online Computer Library Center) 1967年、オハイオ州内の大学図書館がOhio College Library Centerを設立し、オンラインに よる共同分担目録作業を始めた。初代所長はキルゴー( Fr eder ic k Gridley Kilgour)。1971年に 54機関80端末で始まったが、2006年には、110カ国、55,000館以上が参加するまでに発展した。 日本でも1986年にサービスを開始した。その後Online Computer Library Centerと名称変更し、 組織も独立した非営利法人となる。 Connexionとよばれる目録作成にかかわるサービスでは、2006年現在、書誌レコード約6, 800万件、所蔵レコード1億以上という膨大な総合目録データベース(図書のほか、逐次刊行 物、写真、CD、DVD、ネットワーク情報資源とありとあらゆる資料を含む)を提供している。 この総合目録データベースは WorldCat と呼ばれ、現在Web上で無料公開されている。中国語、 日本語、韓国語処理のためのcjkシステムを持つ。このほか、遡及変換、収書支援、相互貸借、 情報検索など、多様なサービスを展開し、さらに電子ジャーナルや電子図書館に関する研究 開発等も積極的に推進している。目録作成を初めとして、全世界の図書館界に大きな影響を 及ぼしている。 ・国立情報学研究所(NII)(旧、学術情報センター NACSIS) 文部省は、大学等の研究者が必要とする国内外の多種多様な学術情報を迅速かつ的確に提 供するため、「学術情報システム」を推進してきた。この学術情報システムの中枢機関が 1986年に大学共同利用機関として設置された学術情報センターである。2000年4月に国立情報 学研究所と改称。 その機能は、(1)大学図書館を主たる対象とした目録・所在情報データベースの形成・ 提供 ( NACS I S - CAT ) 、 (2 )さ まざ まな デー タベ ースを 用い る情報検索サービス( GeNii) 、 - 30 - (3)研究者の研究課題などのデータベースの形成、さらに(4)各研究機関の所蔵する資 源の電子化支援や統合検索、(5)研究開発・教育訓練等、多岐にわたる。 以上を大別すると、サービス事業と研究開発機能の2つになるが、2000年の名称変更後は より研究開発機能を強化している。 目録・所在情報サービスが書誌ユーティリティの機能に相当する。現在1100を越える大学 図書館などがオンライン共同目録作業による全国総合目録データベースの構築を行っている。 NACSIS-CATでは、JAPAN MARC, TRC MARC, MARC21, US MARCなどの各国MARCレコー ドを独自のフォーマットに変換し参照ファイルとして持ち、そのデータを利用して総合目録 データベースの形成を図る仕組みとなっている。目録データベースのうちの雑誌総合目録ファ イルは『学術雑誌総合目録』として冊子体でも刊行されていた。 大きな総合目録が形成された結果、参加館相互の資料貸借が活発になってきた。資料の相 互貸借をネットワークを利用して、迅速かつ円滑に行うILLシステムが稼働しており、さらに 相互貸借が大きく伸びつつある。このように国立情報学研究所は、大学図書館を中心とする 研究図書館の目録作成支援、図書と雑誌の総合目録の作成、維持、それに相互貸借の支援な どに大きな役割を果たしている。 - 31 - 10.目録界における最近の動向 (1)インターネット上の目録横断検索 ・Z3 9 .5 0 Information Retrieval (Z39. 50) : Applic ation Servic e Definition and Protoc ol Spec ific ationの 略。アメリカの国家規格 ANSIの規格番号である。なおZ39は図書館情報学関係の規格。目録 サーバーと検索するクライアントの間にあって、クライアントの検索要求をサーバーに伝達 するさいに、クライアント側がどのようなコンピュータを使っていても、その差異を意識す ることなく、共通に検索できるようにするもの。この規格に準拠した目録であれば、多数の 図書館の目録をインターネット上で一括検索することが可能となる。 (2)デジタル資料・ネットワーク情報資源とメタデータ 従来の資料は、印刷形態であれ、AV資料であれ、CD- ROMやDVD-ROMに記録されたデジ タル資料であれ、「容器」に記録されており、その中味は確定し固定されていた。一般に資 料(メディア)は、情報内容が記録されている内容(メッセージ)と、それを納める容器 (キャリア)とに分けて考えることができるが、電子資料の場合は、内容と容器との関係が 変化自在で可変的である。同じ内容が印刷物、CD- ROM、DVD- ROM、WEB情報というよう に容易に移し替えられる。従来の資料でも、印刷資料がマイクロ形態になったり、レコード の楽曲がCDに移し替えられたりということはあったが、この変換が頻繁にかつ容易に行える ようになってきた。またネットワーク情報資源の場合、他の場所からリモートアクセスされ るので、容器というものを考える必要がなく、あたかも内容だけが存在することになる。こ のように従来の資料の場合、中味と容器とを一体として扱い記録してきたが、今後は両者を 分けて考えないと、うまく記述ができなくなってきた。 ネットワーク情報資源のもう一つの大きな特徴は、中味が不安定だということである。典 型的にはWebサイトに見られるが、中味は刻々変化し所在場所もよく変わり、存在がなくな ることすらめずらしくない。 ・メタデータ データそのものではなく、「データに関するデータ」あるいは「データに関する構造化さ れたデータ」をいう。図書館目録も広義にはメタデータの一種である。しかしメタデータは、 事実上ネットワーク情報を対象とした概念である。またメタデータの種類は広く、情報資源 を記述し検索するためのメタデータは 記述メタデータ といい、種々のメタデータの一つでし かない。 ◎メタデータの種類 A.管理的なもの(administrative) 管理的な観点から必要なデータを扱うものであり、権利関係、アクセスへの法的な問題、 等を中心にしたもの。 B.記述的なもの(desc riptive) 情報資源を特定するためのいわゆる書誌記述が中心であり、目録レコード、関連資源への リンクなどを含む。 C.保存的なもの(preservation) 情報資源を保存するために必要なデータを扱い、資源の物理的状態などを中心としたもの。 - 32 - D.技術的なもの(tec hnic al) コンピュータシステムが扱うために必要なデータを中心としたメタデータ。 現実のメタデータは、上記のいくつかを組み合わせたものが多い。図書館界におけるメタ データは、おおむね記述的なものを中心とし、他のものも従属的に含むようなものとなる。 例えば記述的+管理的、のような組み合わせである。 ・ダブリンコア 代表的な記述メタデータの枠組みに、ダブリンコア(Dublin Core Metadata Element Set)が ある。以下の15種類の粗雑な要素から成り立っている。図書館界を中心にネットワーク情報 資源を記述するのに広く用いられている。 (1)タイトル Title (2)著者あるいは作者 Creator (3)主題およびキーワード (4)内容記述 Desc ription (5)公開者(出版者) (6)寄与者 (7)日付 Publisher Contributor Date (8)資源タイプ (9)形式 Subjec t Type Format (10)資源識別子 Identifier (11)情報源(出所)Sourc e (12)言語 Language (13)関係 Relation (14)対象範囲(空間的・時間的) Coverage (15)権利管理 Rights 特徴と批判 ①15の記述要素を定める。それぞれの記載方法には特に決まった書式はなく、自由記述方式 である。 ②データ要素が非常におおざっぱであり、精密なデータの記述と分析という観点からは大変 見劣りがする。 ③その代わり、図書館界や博物館界、文書館界等を越えた枠組み相互のデータ互換としては、 都合がよいという見解もある。 ④ セマンティックスのみを定め 、シンタックスに関しては他の基準を採用する。 例えば、XMLやRDFなど。 ⑤情報専門家ではない 情報資源の作成者自身が付与 しうるというねらいもある。 そのためには、複雑な内容でない方がよいという見解がある。 ⑥ C r e a t o r と C o n t r ib u t o r が な ぜ 分 離 し て い る の か 、 ど う い う 違 い が あ る の か 。 S u b je c t と - 33 - Coverageとでは重なりがあるのではないかといった疑問点が投げかけられている。 ⑦DCQ(Dublin Core Qualified)とDCS(Dublin Core Simplified)がある。 qualifier(限定子)を使う場合をDCQといい、ダムダウン原則(Dumb-Dow n Princ iple)を 持つ。qualifierを使わない場合をDCSという。ダムダウン原則とは、限定子を取り除いても、 矛盾が起こらないようにする、という方針である。例えば著者名を国籍別に細分することは 可能であるが、姓と名とに分解することは出来ない。要するに種類に分解することは出来て も、構造化は出来ないということである。この原則に縛られるので、より精細にデータ要素 を分析していくという方向には大きな制約がある。 ダブリンコアによるWeb情報資源の記述例 記述メタデータのうちで最も有名なものはダブリンコアであるが、ほかにも多数の記述メ タデータがあり、その中には、TEI headerのように、極めて詳しくかつセマンティックスとシ ンタックスを併せ持つようなものもある。 T EI :T ext Enc oding Initiative(古典文献をマークアップ言語を用い、構造化してデジタル化 する国際的な事業。テキスト本体とともにheader部に詳細なメタデータを与える) - 34 - 目録におけるセマンティックスとシンタックス メタデータの出現を契機として、目録におけるセマンティックスとシンタックスという区 分が意識されるようになった。 ○セマンティックス 目録データの記載内容を論じる観点である。ある記述対象に関して、どのような要素をど のような基準にもとづいて選択し、採用するかという問題である。 ○シンタックス 採用した記述要素なりアクセスポイントを、どのような順序でどのような識別方法で、そ れらを表現するかという問題を扱う。 従 来の 目録 規則 では 、非 常に おお ざっ ぱに 言え ば、I S BDがセマンティックスを規定し、 MARCフォーマットがシンタックスを規定する。しかし、I SBD自体も、採用する記述要素を 定めるほか、記載順序や区切り記号を定めたりするので、後者の部分はシンタックスに関わ ることになる。メタデータでは、ダブリンコアの場合は、セマンティックスのみを規定し、 それをどのような順序でどのような識別方法で記載するかは一切規定しない。その部分は、 別途XML等のマークアップ言語やRDFといったシンタックス専用の書式を用いて行う。しか しメタデータといっても多くの種類があり、千差万別である。セマンティックス、シンタッ クス両方を備えるようなメタデータも存在する(例:TEIヘッダ)。 ・ネットワーク情報資源の情報提供 図書や雑誌の目録を共同で行うのと同様に、ネットワーク情報資源に関する共同分担目録 の試みも行われている。インターネット情報を探すには、すでにYahoo!やGoogleといった商 用の検索サービスがあるが、これらはあらゆる情報を対象としており、内容的にも玉石混淆 である。さらにこれらは「全文検索」という方式を採っており、検索件数も多すぎるという 欠点がある。良質な情報に絞り込み、精選されたメタデータ付きネットワーク情報資源を提 供する必要性が生じている。図書館サイドでこのような役割を担う試みが多数行われている。 主 題 分 野 ご と に 良 質 な 情 報 を 提 供 す る 仕 組 み を サ ブ ジ ェ ク ト ・ ゲ ー ト ウ ェ イ ( S u b je c t g ate way) といい、BUBL I nf ormation Servic eなどが代表例である。そのほか、OCLCにおけ るCORCプロジェクトのように、多数の図書館が協力して、ネットワーク情報資源に関する目 録情報を共同で作成し提供する試みも始まっている。 ネットワーク情報資源は、(1)内容の種類や品質のレベルがさまざまであり、いかなる基準 で良質な情報を選ぶか、(2)その内容や所在等が不安定であり、通常の図書館資料のように、 一度目録を作れば済むというのではなく、たえずメンテナンスを必要とする、(3)目録データ の形式をどのように選ぶか、(4)ネット上には、テキスト主体の資源だけでなく、画像や音声 主体の情報資源もあり、そういった情報資源も含めて検索の対象とする必要がある、(5)利用 するのに特別なソフトや機器を必要とする場合がある、(6)著作権や契約条件といった利用上 の制限が付いている場合がある、といった問題点がある。 国立情報学研究所では、「メタデータ・データベース共同構築事業」が2002年秋から始まっ た。各大学や研究機関がWeb上で発信する情報の目録を共同で構築しようとするものである。 現在では、NII-ELSという事業に統合されている。 - 35 - (3)メタデータとマークアップ言語 ・マークアップ言語 メタデータは、XMLのような統一した書式のもとに記録しようという方向性がある。それ によってデータの互換性が高くなり、共通のソフトでそれらを扱うことが出来るようになる。 また本文そのものもS GMLやXMLで記述するのが一般的となってきており、本文とメタデー タとを共通の書式で扱えるというメリットがある。マークアップ言語はメタデータを記載す るときの、シンタックス部分を受け持つといえる。 ・SGML (Standard Generalized Markup Language) 文書中に論理構造を示すマークであるタグおよび文書構造の記述文法を指定することによ り、電子化された文書の統一的な取り扱いを可能とする規格。出力される文書イメージより も、文書の構造を記述することに力点がおかれている。 これにより、文書の処理や管理,コ ンピュータ間でのデータ交換などが容易に行なえるようになる。1987年にI SO標準8879とし て承認されており、アメリカ国防総省などの公文書フォーマットとしても採用されている。 デジタル化された1次資料が提供されるケースが激増しているが、そのさい共通の構造化さ れたフォーマットで入力されておれば、他の機関で入力された文書と共通の土台で操作する ことができる。電子図書館では、こういった共通のフォーマットで扱えるようにすることが 不可欠とされる。HT MLと同様マークアップ言語の一つであり、HTMLはSGMLをもとにして 作られたが、表示書式と構造書式とが分離されていないという欠点がある。なお、1998年に XML(eXtens ible Markup Language)が制定された。XMLはほぼSGMLのサブセットであり、複 雑な規約であるSGMLを簡略化し扱いやすくしたもの。かつインターネット対応へのが盛り込 まれている。実用的にはSGMLではなくXMLが用いられる。W3Cの定める規約である。 ・RDF (Resourc e Desc ription Framew ork) メタデータを記述するための汎用的な枠組み。主としてXMLを用いて記録される。Web上 の資源をRDF/XMLの書式により記述することにより、コンピュータはWeb資源を汎用的書式 で把握することが出来る。これを利用してWeb資源を、検索などさまざまな方面で利用する ことが行われている。RDFで定める記述要素の定義は、RDF Sc hemaという書式を用いて行わ れる。 - 36 - RDFによるメタデータのトリプル表現例 主語−述語−目的語、というトリプルでメタデータを表現する。 術語に当たるものが、メタデータの項目名、目的語に当たるものが項目値である。 1: <rdf:RDF xmlns...> 2: <rdf:Desc ription rdf:about="urn:isbn:4-8399-0454-5"> 3: 4: <dc :c reator> <rdf:Desc ription> 5: <ex:name>KANZAKI, Masahide</ex:name> 6: <ex:homePage> 7: <rdf:Desc ription rdf:about="http://kanzaki.c om"> 8: </rdf:Desc ription> 9: 10: 11: </ex:homePage> </rdf:Desc ription> </dc :c reator> 12: </rdf:Desc ription> 13: </rdf:RDF> XMLを用いたRDF書式 RDFでは人間が目で見て理解しやすいかどうかは意図せず、コンピュータが理解して処 理しやすいような書式で表現される。そのためコンピュータによる文書表現で、最も汎用 的に用いられるXMLによって記載することを原則とする。 (4)目録のとらえ方の新しい動き 以上述べたような、デジタル資料とネットワーク情報資源の出現を契機として、(1)内容と 容器という分け方を考えなければならない、(2)Web資料のような所在・内容の不安定な資料 をどう扱うか、という2つの大きな問題点が浮かび上がった。これらは決してデジタル資料、 ネットワーク情報資源特有の問題ではないが、図書館目録においては、従来特に考慮するこ となくすませてきたものである。 (1)については、AACR2における資料区分において、およそ物的形態ごとの区分が行われて いるとされるが、記述の対象は何らかの容器に固定された出版物であり、中味と容器とを一 - 37 - 体のものとして扱ってきた。つまり内容の単位(著作単位)と物的な単位とを折衷的に扱っ てきた。ところが現状のISBDやAARC2では、①デジタル環境では同じ中味が異なる媒体の出 版物として存在することが多いのに、これらを同じ内容のものとして把握することが出来な い、②ネットワーク情報資源のように容器を定義しにくい情報資源が出現した、③ある著作 が物的な容器の1個半におさまるような場合にうまく記述対象を把握できない、といった問 題点がある。 ( 2) については、Web資料出現前なら、「加除式図書」がちょうどそれにあたるが、以前な ら例外的なケースとしてすませてきた問題が、Web資料という大規模な情報資源が出現した ことにより、この問題に対応せざるを得なくなってきた。逐次刊行物が物的な出版がいつま でも継続し、全体としての記述が完結しないという性格を持つ。Web資源は物的には同じま とまりであり内容が安定しないという違いがあるが、完結しないという性格に着目してこれ らをひとくくりとし、「継続資料」(c ontinuing res ourc e)という名称で、Web資源と逐次刊行 物とを一緒にまとめて扱うことになった。 ・AACR2 とISB Dの改訂の動き 新ISBDやAACR2・2002年改訂では、Webサイトのように内容の安定しない情報資源を「更 新資料(integrating res ourc e)」として捉えた。さらに統合資料と逐次刊行物とを総合して、継 続 資 料 ( c o n t in u in g r e s o u r c e ) と 名 付 け て い る 。 結 果 と し て 、 従 来 単 行 資 料 ( m o n o g r a p h ic public ation)と逐次刊行物(serial)と区分していたのを、単行資料と継続資料と区分し、ISBD(S) はISBD(CR)として改訂された。 NCR(日本目録規則)においても、2005年、逐次刊行物の章は継続資料として改訂された。 現在AACR2の大改訂作業が進行中であり、2009年秋を目途に、RDA (Res ourc e Des c ription and Ac c ess)という名称で刊行される予定である。 ・IFLA研究グループによる書誌レコードの研究 『書誌的記録の機能要件』(FRBR) F unc tional r equir ements f or bibliogr aphic r ec or ds : f inal r epor t / I F LA S tudy Gr oup on the Func tional Requir ements f or Bibliogr aphic Rec or ds ; appr oved by the Standing Committee of t he I F LA S ec tion on Cataloguing. - - Munc hen : K. G. S aur , 1998. - viii, 136p. ; 25 c m . - (UBCIM public ations. New series ; v. 19). -- http://w w w .ifla.org/VII/s13/frbr/frbr.htm 1980年代の情報処理分野における「実体関連分析」entity-relations hip analys is tec hniqueの 手法を用い、利用者の観点から目録の機能要件モデルを提示しているものである。目録の利 用者は、社会的情報流通過程の多くの局面で存在する。一般読者を始めとして、生徒、学生、 研究者、図書館員、出版者、取次業者、小売業者、情報ブローカー、知的所有権管理者等、 様々な利用者が存在する。また、その利用目的もさまざまである(収集企画、選書、受入、 目録作成、蔵書管理、保存、閲覧、図書館間貸出、レファレンス、情報検索等)。 利用者及び利用目的はさまざまであるが、利用者が目録利用の際に関心対象とするものを 「実体」entityとしてモデル化する。次に利用者がこれらの「実体」を探索する場合に用いる 検索用語や概念を、各実体がもつ「属性」、各実体間の「関係」として捉え、それらの「属 性」及び「関係」をモデル化する。さらに、実体がもつ「属性」や「関係」を通して利用者 - 38 - が目録利用に際して取る行動をモデル化する。このようにしてモデル化された利用者行動に とって、実体がもつどのような属性や関係が価値をもつかを評価する。 - 39 - 著作−表現形−実現形−個別資料、の関係 このように『書誌的記録の機能要件』の目的は、「書誌的記録が果たす諸機能を、明確に 定義された用語によって記述すること」にある。これは、書誌的記録の意味論的考察であり、 それらをどのように記録するかという、シンタクスの領域を捨象したところで成立している。 そのため、引用される事例は、特定のOPACやその機能を想定したものではないとともに、目 録の果たすべき機能を網羅的に解説しているわけでもない。意味論的な観点から、あくまで も概念モデルの理解に資するためのものである。 実体は大きく3 種類に分けられる。資料(情報)そのものを表す実体は、Work(著作)− Expr es s ion(表現形)−Manifes tation(実現形)−Item(個別資料)の4つに分けられる。内 容に責任を持ったり、頒布したりする実体として、個人と団体とに分けられる。さらに作品 の主題を表す実体として、「概念」「オブジェクト」「事件」「場所」の4種類がある。さ らに著作、表現形、実現形、個別資料、個人、団体といった既出の実体も主題となりうる。 この分析で最も基本的なものは、資料を表す4つの実体である。著作は各種の版を統合した ようなまとまりのある抽象的な作品群を示し、表現形は何らか特定の文字や画像によって固 定された作品を示し、実現形は表現形が実際に印刷などの工程によって特定の媒体に物的に 固定されたものをいう。個別資料とは、印刷等の過程で複製物が現れるとき、その物理的な1 点ずつを示す。 現在の目録作業は、実現形に基盤をおいている。しかし、電子資料の出現とともに、同じ 内容が容易に別のキャリアに移し替えられるようになった現在、実現形に基盤を置くと、同 じ内容でキャリアのみが異なる資料が、すべて別々の記述実体として表現され、それらの間 の同一性を認識しにくくなる。これを回避するため、ISBDやAACR2における今後の改訂動向 - 40 - としては、表現形にもとづいて記述を作成しようとする流れがある。この場合、記述対象が、 まず内容にもとづく記述を作成され、次に同じ内容を持つ情報資源がキャリアごとにまとめ て記載されるという、2段階方式の記述となる。このようにして、同じ内容を持つ資料を一群 の記述としてまとめることが可能となる。 - 41 -
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