12.自宅を売って 老後資金を作る時考えること

12.自宅を売って
老後資金を作る時考えること」
(1)自宅を売って老後資金を作る時に起きる問題
子育てが終わった60歳過ぎの親は、「後残された20~30年の第二の人生をどう豊
かに生きようか?」と考え始めます。
自宅を売って、田舎暮らしやマンション暮
らしをする為の買い換えをして、残ったお金を老後資金に回したい。
そのお金で
元気な内は旅行をしたり、趣味を楽しんだり、好きなだけ勉強したりしたい。
更
に老いて体が動かなくなった時の介護の費用や病院の費用に当てて、子供に迷惑が
かからないようにしたい。 子の結婚費用や孫に小遣いをあげられる余裕が欲しい。
それが豊かな老後の生き方であるはずだ、と考える人が多いでしょう。
しかし、いざ自宅を売ろうとすると、一人の子供は「お父さん、お母さんのいい
ようにしていいよ!」と言ってくれますが、もう一人の所帯を持った子供は「思い
出がある自宅が無くなるのは淋しいし、私が住みたいので売らないでくれ」と言い
ます。
子供の気持ちは判るし、争いたくないが、でも自宅を子供に譲る程のお金
の余裕もないし、必死で子育てしてきて、やっとそれから解放され、「自分達自身
の生活を楽しみたい」と思っていたのに、「さてどうしたものか?」と悩みます。
(2) 「自宅」は「最後で最大の老後の資金源」
60歳を過ぎたら、段々体力は落ちてくるし、頭だって回らなくなることが予想で
きる。
そして、70歳後半になれば、働けなくなるし、株の運用でお金を稼ぐこと
も段々難しくなってくる。
そうなると、「老後の生活費」としては、「年金」の
他には「どれだけの預金があるか」「どれだけの株や債権を持っているか」「病気
の時どれだけの保険が下りるか」が頼りになる大事なものになります。
その時、
「貸家・アパートの賃料収入」があれば、老後は安泰です。 そして、日本人の80
%が自宅を所有しているので、「自宅」は日本人の「最後で最大の老後資金源」に
なります。
ただ、子供には子供の考えがあり、「思い出を無くしたくない」「できれば自分
がそこに住みたい」と言うのも一理あります。
子供を住ませることもできます。
親にお金の余裕があれば、自宅に
しかし、親に余裕がなければ、売却してマンシ
ョンや田舎の安い家に買い換えて、お金を残す必要があります。
この時子供を納
得させる為には、老後の生活にどれだけのお金が必要かを説明することが必要です。
①
夫婦2人が生きて行くのに最低限度の生活費は月242,000円、年間2,904,000円、60
歳~80歳までの20年間で5,808万です。
豊かな生活には月379,000円、年間4,548,
000円、60歳~80歳までの20年間で9,096万です。
い分は預金が必要になります。
②
年金がいくらあるかで、足りな
「預金が少ないと心細い老後」になります。
更に、「動けなくなったら介護の費用」が月10万~20万必要になります。
介護保
険で対応できない分は預金が必要になります。
このお金の準備がないと、自宅で
週何回かの訪問介護を受けても、その時以外は家族がオムツの取り替えや体ふき等
をやらなければならなくなり、看護する家族は、夜も眠れない日が続き、働く時間
がとれなくなって収入も減り、これが長く続くと看護する家族の生活は破壊されて
しまいます。
「介護の費用が準備されていないと、家族の生活は破壊される」こ
とになります。
③
また、老いてくると、畳の縁で転んで骨折するし、病気も多くなり、入院すると費
用がかさみます。
この費用も健康保険から出る以外の費用は預金がなければ、最
低限度の医療しか受けられず、長引けば家族にとっては「早く死んで欲しい」と思
うような厳しいことになります。
こんな時、親にお金の余裕があれば、そこから
出費できるので、子供達にお金の負担も、看護や介護の労力もなく、時々お見舞い
に来てくれたら嬉しいだけの良い親子の人間関係が続けられます。
①②③のような問題をなくす為には、「自宅を売却して老後資金にする必要があ
るのだ」、と説明すればいいのです。
(3) それでも納得しない子供が居る時は「親の主張を強行する」ことも必要です。
いくら説明しても、どうしても理解できない子供が出てきます。
50歳まで位は
人は上を向いて歩きますが、50歳を過ぎると「自分の人生の終着駅が見えてくる」
ので、そこから初めて「その20~30年間をどう生き、どう最後を締めくくるか」を
考え始めます。
ですから、50歳前の人間にはその時がくるまでは、考えも及ばな
いこと、どんなに説明しても「その年になるまではわからない感覚」なのだと思い
ます。
これから人生を始める子供には、後00年で人生を閉じようとする親の考
えを本当に理解することは不可能だからです。
そうだとすれば、どうしても理解
できない子が居た場合、最後は「親のどうしたいかの考えをハッキリと宣言して強
行する姿勢を示す」しかありません。
但し、それでも、家族の人間関係を考える
時、できる限り次のような子供への配慮が必要だと思います。
①
自宅を売ったお金の一部を「子供の住宅取得資金として贈与する」
子供世代は、まず自宅が欲しいのですから、自宅売却資金から子供のマンション
購入資金の一部を贈与して、自分の家を買わせる提案をすればいい、と思います。
「610万までは住宅取得資金として子供に贈与しても無税」です。
更に、「相続
時精算課税制度」を使えば、子供の住宅購入資金として3,500万まで贈与しても無
税です。
この二つの制度を使って、子供に自分のマンションを、住宅ローンを使
って買わせれば、子供も喜ぶはずです。
親が死んだら相続で自分の物になる何十
年も先の親の家にこだわるより、今すぐに自分の家が手に入る方が、ずっと嬉しい
ことでしょう。
現在は住宅ローンも史上最低の低金利ですし、最大500万の還付
金(減税)もありますので、
今はアパートの賃料よりも安い月々の返済で自宅を購
入できるとても有利な時期でもあります。
子供にとっては、親から住宅取得資金
を得て、自分の住宅を買うチャンスの時なのですから、子供にそのことを判らせれ
ば喜んで親の考えに協力できると思います。
②
自宅を持っている子供には、ローンの返済金としてお金を贈与することを約束すれ
ば、大変に喜ぶでしょう。
住宅ローンの繰り上げ返済をすると、その分だけ元本
が減るので、ローンの支払期間を短くすることができます。
例えば、支払いの終
わりが75歳だったものを60歳に短縮でき、定年後もローンが残っていることをなく
すことができます。
住宅ローンを借りる時は、月々の返済額を少なくする為に、
75歳や80歳までの返済期間を取ることが多いのですが、定年退職後にも返済が続く
のはきついことですので、このローンの短縮を親からの贈与資金でできることは、
若い人が気づかないとてもとても大事なことです。
親から子への贈与は、「相続
時精算課税」の制度を使って、2,500万円までは無税で贈与できます。
③
介護や病気入院の時に、子供達に迷惑を掛けない為であることも説明すれば、納得
が早いでしょう。
④
親が豊かに幸せに生きて、相続となった時は、残った財産は子供達の物になるので
すから、「私たちのことを思って見守ってくれ」と頼めば、子供なら判ってくれる
はずです。
それでも、この老親の最後の老後資金である自宅の売買に反対する子
供が居たら、それは親不孝者です。
その時は、「親の決断」を宣言するしかない
でしょう。
(4) 具体的事例
(1)
自宅一戸建てを売って、郷里に戻った事例
62歳のご主人と61歳の奥様の二人暮らし、富岡の一戸建、土地42坪・建物木造築32
年で30坪の自宅を4,200万で売却、郷里茨城に戻られました。
お子様は長男、次
男、長女の3人が皆結婚して自立、賃貸中の長男が自宅の売却に反対でした。
ご主人は左官業でしたので、仕事が無くなり、年金も国民年金しかなかったので、
今後の老後資金として自宅の売却金は必要でした。
そこで、ご長男には住宅取得
資金として300万を贈与してマンションを買ってもらうことを提案しましたところ
ご長男の了解も取れて、売却することができました。
田舎の兄の土地に小さな家
を建てて、生活費は月に10万でも充分にやっていける所なので、時々くる左官の
仕事をこなしながら、今はのんびりと田舎暮らしを楽しんでいらっしゃいます。
(2)
自宅マンションを売って、千葉のマンションに移った事例
美浜東エステートにお住まいの64歳のご夫婦が、千葉市郊外のマンションに買い
換えたい、との相談でした。
話を進めていくと、結婚して別居している30歳の長
女は「お父さんお母さんのいいようにしていいよ」と言ってくれましたが、結婚し
て賃貸に住んでいる33の長男が反対でした。
らないでくれ」と言うことです。
「思い出がいっぱいある家なので売
ここでも、ご長男にマンション購入取得資金と
して500万を贈与する提案をしました。
'09年・'10年の場合だけは、住宅取得資金
の贈与は610万までは無税の特例が利用できたので、この制度を利用して贈与を受
けて頭金とし、3,000万以下のマンションを買えば、今住宅ローンを2,500万借りて
も金利が安いので、今借りている賃料の10万よりは安い月々7万位の返済で買える
ことも提案しました。
とができました。
ようやくご長男の了解も取れたので、3,500万で売却するこ
3,000万が老年金として残ったので、これから楽しい豊かなお
二人の生活が始まることでしょう。
年金が月23万あるので、このお金と預金があ
れば、介護や病院の資金にもなるし、お孫さんが来た時のお小遣いにも心配ありま
せん。
(3)
子供や孫との関係も良い関係が続けられるでしょう。
自宅一戸建てを売って、新築マンションに移り、残ったお金で安いマンションを
買って10万で貸した事例
72歳のご主人と62歳の奥様の二人暮らし、富岡の60坪の土地・43坪の木造の自宅を
8,200万で売って、明海地区の4,000万のマンションを買い、更に2,300万のマンシ
ョンを買って13万で貸しました。
手元に1,500万のお金が残り、年金の月25万+
賃料手取り額11万=月の収入31万で悠々と暮らしていらっしゃいます。
賃料収入は、入居者が居る限りは、自分が寝込んでいても、旅行をしていても、口
座にキチンキチンとお金が毎月振り込まれる「金の卵を産む鶏」になりますので、
老後資金には最高に優れた資金源になります。
(4)
自宅を買って、今までのマンションを貸した事例
サンコーポに住んでいた30歳代の方が、住宅ローンを2,800万借りて今川の低層マ
ンションを買い、今まで住んでいた自宅を12万で賃貸に出されました。
しばらく
は住宅ローンの支払いと賃料がほぼトントン位で、少し手元からの支払いが出るか
もしれませんが、住宅ローンの減税分とボーナス分を繰り上げ返済していけば、こ
の方なら10年くらいで返済し終わるのではないか、と思います。
0万の賃料が手元に残る計算ですので、老後は安泰でしょう。
その時は、毎月1
ちなみに、この方
の住宅ローンの返済例は、借入金2,800万・35年返済・固定金利2.2%・元利均等返
済で毎月の返済額は95,653円です。
更に、住宅ローン減税が使えますので、10年
間は年末の残債の1%が税金から還付されますので、借入金利は1.2%で借りたと
同じになり、10年間で約240万位の還付金が得られます。
000円で自宅のローンの支払いができる状態です。
自宅を貸した賃料125,
もちろん、この方はこの若さ
でこのことを始められたのですから、おそらくこの後も次々に資産を増やして行か
れるでしょうから、定年までには数十億の資産を手にしておられることが想像され、
楽しみです。
(本田静六著
「私の財産告白」、拙著「金持ち父さんへのステッ
プ」参照)
(5)
自宅はそのままに、サンコーポを買って12万で貸した事例
最後に、私自身のことですが、18年前に妻の名義でサンコーポを2,000万で買っ
て、13万で貸しています。
債が1,000万くらいです。
アパートローンを2,000万借りていましたが、今は残
ちなみに、アパートローンの返済金は、2,000万の借入
・変動金利2.2%・30年の元利均等返済で月々75,940円ですので、賃料130,000円ー
管理費20,000円ー管理業者の管理報酬6,000円ー固定資産税年間65,000円×1/12ーロー
ン返済金75,940=手取り金額は月額で約23,000円です。
この他、時々リフォーム
費用がかかりますので、収入と支出はほぼトントンです。
先月に賃貸人が出たので、リフォーム中ですが、子供達は「今はマンションが高く
売れる時期なので、売ってお金にするべきだ」と主張して、妻もその気になっていま
すが、私は断じて売らせません。
何故ならば、今未だ元気で働ける60歳の時にお
金にするよりかは、老いて働けなくなった時に、私も居なくなっているかもしてな
い時に、妻の老後資金として貴重な収入源になることを考えているからです。
今
はローンの返済と家賃がほぼトントンで実入りが無いので、子供や妻が考えている
ことも一理あると判ります。
しかし、今は苦しくとも、75歳でローンは完済でき
ますので、75歳以降の体も心も老いてきた時に、年金+賃料が「妻を支える心強い
老後資金になる」ように考えて設定したことだから、今は売らないのです。
考え
てみて下さい、ローンを返済してくれているのは、入居者の方の賃料です。
「今
目の前の収入が無く、リフォーム費用がかさむだけ」と言うのは目先のことしか見
ていないからです。
入居者の払って下さる賃料で、15年後にはマンションのロー
ンは全て払い終わり、サンコーポの所有権は自分のものとなり、賃料は全部老後資
金として使えるようになるのです。
幸い、自宅もありますので、その内自宅は売
って、夫婦2人で老人ホームのレベルの高い所に入所しようか、と考えているとこ
ろです。
(5) 自宅の上手な買い方と売り方
(1)
「自宅は、家族が幸せになる為に買う家」ですから、「利益目的で所有するもの
ではありません」。
る」のです。
しかし、上記のように、「自宅は資産という価値も持ってい
その意味では、自宅は上手に買う必要があります。
買うコツは、「売る時に高く売れる家を買うこと」です。
自宅を上手に
「売る時に高く売れる
家を買うコツ」は、
「誰もがほしがるような家を買うこと」です。 一戸建てなら、
日照通風が良い角地、子育て環境が良い、交通環境が良い、買い物や通勤環境が良
い、耐震強度が高い家、健康に良い家等々です。
マンションの場合なら、交通環
境・買い物環境・子育て環境・衛生環境等々が良い場所にある、管理の良いマンシ
ョンの角部屋や公園や海に面した部屋を誰もが欲しいと思っています。
を少々高くても買っておけば、売る時には早く高く売れます。
そんな家
値段が安いから買
った家は、それだけ売りにくいから安いのですから、売る時にはなかなか売れずに、
安く売るしかないことになります。
(2)
また、自宅を買う時には、「もし売ることになった時に、税金が安くなるように
買うこと」です。
どういうことかと言えば、「居住用家屋の譲渡3,000万控除の
特例」が利用できる買い方をすること」が大事であると言うことです。 即ち、
「自
分が居住する家を売った場合は、利益が出てもその利益から3,000万控除できる」
という特例が利用できて、ほとんど税金を払わないで、お金を老後資金に残せるか
らです。
この特例は、所有者一人につき3,000万控除できますので、自宅を買う
時はご主人と奥様の共有で登記しておけば、2人×3,000万=最大で6,000万の控除
ができます。
もし、買った時に夫婦の共有名義にしていない自宅を売りたい時に
は、20年以上連れ添った配偶者に対する2,000万までの贈与は無税なので、この制
度を利用して配偶者に自宅の土地・建物の持ち分を贈与すれば、居住用3,000万控
除の特例が利用できるようになります。
この特例を利用して自宅の持ち分を贈与
した場合は、その翌年以降に売却することもコツの一つです。
(詳しくは
(2)
「残された妻の上手な相続対策」「居住用3,000万控除の特例」参照)
上手に売るコツは、自分の家の価値をきちんと評価してくれる業者と一緒に「買
う人が買いたくなる努力をすること」です。
①
例えば、売る時に、近隣類似の物件の成約価格の正確なデータに基づき、適正な売
買価格を定めて売り出さなければ、早くて確実な売却ができずに、なかなか売れず
に苦しんだ上に結局安い価格で売ることになってしまいます。
②
木造で20年以上の自宅・マンションで25年以上の自宅を売る場合は、「耐震適合証
明書」を取得して売り出すこと。
木造で20年以上の自宅・マンションで25年以上
の自宅を売る場合は、ローン減税や取得税の軽減、所有権移転登記料の軽減等々の
減税制度が利用できないので売りにくくて、その分安く売るしかありません。
しかし、「耐震適合証明書」を取得して売り出せば、古い家でも安心して住める
証明が出たことになるので、上記の減税制度が利用できるようになり、売りやすく
なり、より早くより高く売れることになるからです。
精密診断の「耐震適合証明
書」取得の費用は約20万前後です。
③
リフォームや掃除をして、「ここに住みたい!」と思って頂けるようにすれば、よ
り早くより高く売ることができます。
リフォームにお金を使いたくなければ、最
低掃除だけは4・5日かけて隅々まで綺麗にやれば、何とか売れる状態まで持って
行けます。
「掃除はタダで、家の価値を上げる最高の方法である!」
実は、これは私が社員に何時も入っている言葉ですが、若い社員が本当にこのこ
とを理解するまで、大体週に2~3日はお客様からお預かりした家の現場の掃除を
させています。
その家の中から外まで、自分で丁寧に掃除をすると、手の爪が痛
くなりますが、その家の短所・長所がよく分かるし、どういう住み方の人が住んで
いたか、どんな住み方の人に向くか、判ってきて、その家に対する愛着が湧いてき
て、不思議なことですが、何故かよく売れるようになるのです。
大分若い社員も
掃除が好きになってきましたが、まだ「掃除の名人」は出てきませんので、私に代
わる掃除名人が出てくるまでは当分私が掃除をやり続けることになるでしょう。
在宅のまま売買する場合は、お客様にやって頂くことをお願いすることになります。
以上、自宅を売って老後資金を創ることについてお話しさせて頂きました。
も
っといろいろお話ししたいことがありますが、毎月第2・第3土曜日9:30~12:00
のセミナーでお話し致します。
「個別相談」はいつでもお受けしていますので、
どうぞご相談下さい。
2009年12月2日
記