2014年度「生活福祉履修モデル」卒業論文要約 ファッションとジェンダー 阿部 汐里 【要約】 本論文では、ファッションにおける性差は存在するのか、性差が生まれた原因はなにか ということについて考察した。スカートは男女共通の衣服の正装であり、性別に関係なく、 色も飾りも様々で華やかであった。しかし、近年では「スカート=女性」 「ズボン=男性」 の図式が確立してきており、身につけられる形の選択肢が狭くなっている。この図式は、 もともと存在したのではなく、後に男性側が作り上げたイメージなのだ。また、色の選択 肢も限られており、男子は寒色系、女性は暖色系というイメージがいつからか身について しまっている。このイメージはメディア、特にテレビや雑誌の影響が多いことがわかった。 ファッションによるジェンダーによって、悩んでいる人も少なからず存在するだろう。し かし、一度ついてしまった図式を消滅させることは難しく、今後、自由にファッションを 楽しむためには、メディアの影響を考慮し、一人ひとりの「個性」を認識すること、自ら の意思が大切だと考える。 知的障害者の老いと暮らし 船田 麻由香 【要約】 本論では、知的障害者とその家族の老いの過程や暮らしの実態と、障害者を支える家族 の困難や心情について考察していく。高齢の知的障害者は、誰かのサポートが必要になる だろう。しかし、支えてくれる一番近い存在である、親による扶養が困難になってくる。 なぜなら、高齢な親自身の健康面も配慮しなければならないからだ。そんなとき、多くの 人が「施設」に頼る。しかし、知的障害者当事者は、自分が今まで暮らしてきた地域に住 みたいという希望が多い。その希望の裏には、今までと同じ生活がしたいという思いが込 められているのではないだろうか。筆者はこのような希望を尊重することが大切であると 理解した。 「施設」を有効に活用することは家族の負担を減らすが、知的障害者当事者の、 人としての尊厳と自立を保障することを一番に考えることが望ましいと考える。 東日本大震災と高齢者 ―コミュニティの構築という視点から― 古嶋 操稀 【要約】 我々の記憶にも新しい東日本大震災は、地震に加え津波・原発事故によって複合的な被 害が生じ、岩手・宮城・福島・茨城の4県だけでも死者 15,693 人、行方不明者 4,782 人と 未曾有の人的被害があった。直接的な被害を受けて亡くなった方の7割が高齢者であり、 また、 「震災関連死」で亡くなった方の内、高齢者は約9割にも及んだ。被災した宮城県気 仙沼市の高齢者施設では、想定を超えた津波が施設を襲い、多くの高齢者が犠牲になった。 避難の経過でも寒さとストレスは高齢者の体力や気力を奪い、多くの高齢者は命を落とし た。さらに避難生活や仮設住宅生活を余儀なくされた住民は、あっという間に今まで構築 してきたコミュニティを失っていた。仮設住宅の孤独死が社会問題となった阪神淡路大震 災の教訓は活きているのかどうか、筆者はこの点に関心をもった。避難者の中でも、特に 高齢者は、地域との繋がりが切れることが、生活に大きな影響を与える。故郷や家族、親 族、頼れる仲間を失った被災者の生きる力を生み出すためにも、コミュニティの再構築が 震災の復興に大きく関わってくるだろう。 少年犯罪の背景 ―家族との関係― 春中 麻里 【要約】 筆者は少年犯罪とその子供の養育関係に関心を持った。以前は一人親、貧困家庭に育っ た子どもの非行が多かったが、今は、両親もそろっているごく普通の家庭で育った子ども の非行が増えてきている。なぜ平凡な家庭に育った子どもの非行が多くなってきているの か。非行少年の家庭に対する不満や、親からの愛情を感じられないなど、家庭に不満を持 っている少年が多いことが指摘されている。少年の保護者は、子育てに関して過干渉であ ったことや、夫婦間の協力が不十分であったことを自覚しており、ひとり親であることや 貧困が非行原因として重要ではなく、家庭内における不適切な親子関係、家庭間の不調和 や葛藤などという、人間関係の障害が重要な非行原因だとわかった。非行少年の円滑な社 会復帰を実現するためには、愛と信頼を基盤に形成された人間関係が築かれている家庭が 一番だ。しかし、少年院に入院する少年に関して、全て施設任せの保護者が多く、親子関 係の悪い少年の保護者に、親子関係に距離をおいて指導しており、少年の出院後に帰る場 所を作っていることがわかった。家庭は、子どもが生まれて初めて接する社会であり、第 一の場だからこそ、保護者が一人一人責任と自覚を持ち子どもを育てていくことが大切だ と思った。 お姫様になりたい女性たち ―ジェンダーの視点から見る物語― 本村 有紀 【要約】 本論では、ジェンダー観の形成が、誰もが幼いころに観たであろうディズニーのプリン セス・ストーリーに描かれている男女のあり方に影響を受けているという仮説のもとで、 ディズニー映画「シンデレラ」と「眠れる森の美女」を考察していく。 世界中の人々から愛されているディズニー映画のプリンセスであるが、その多くが原作 に脚色し、映画が製作された時代を生きる人々の理想が詰め込まれた内容になっている。 社会的・文化的につくられた「ジェンダー」に囚われず、一人ひとりが自分の力を発揮で きるジェンダーフリーな社会を実現するために、性差は社会的に形成されたものだという 知識や視点を、私たち一人ひとりが身につけなければならない。ディズニーに限らず、メ ディア媒体は人々のジェンダー観を形成するきっかけとなっていることを自覚すべきであ る。現代には結婚せず仕事に生きる女性や、自分で幸せをつかみとる女性なども多く存在 するのであり、ジェンダーフリーな視点や考え方をメディアは発信してほしいと思う。 アフリカ系アメリカ黒人における人種問題の歴史と今 本吉 咲映 【要約】 本論文は、アフリカ系アメリカ黒人の約 400 年間の歴史にみる人権侵害とそれに対する 反発運動、そしてこれからの人種差別のあり方についてまとめたものである。筆者は人種 差別問題はアフリカ系黒人だけではなく、アジア人やアイヌ民族など、地域によっては根 強く残っている問題であると認識している。2009 年には、黒人初の大統領としてバラク・ オバマが大統領に就任し、今のアメリカは建国以来、どの時期よりも「差別の少ない」状 態であるとされているが、黒人地域社会は今もなお問題を抱えている。黒人がアフリカか ら奴隷としてアメリカに連れて来られてから、現代までには偉大な黒人たちが多く現れ、 アメリカに大きな影響を与え続けた。しかし人種差別を完全に消し去ることは非常に難し く、これは、黒人だけでなくすべての人種にも言えることだと考える。人種差別と闘い続 けることは人権を尊重する上で重要なことであり、我々は自分以外の人種を尊重し、理解 し合うべきであると結論付けた。 認知症を知る 二瓶 友里 【要約】 本論では、認知症についての基本的な事柄及び支援のあり方を、幾つかの資料をもとに 考察した。現在、日本における認知症患者の総数は、2014 年度時点で約 800 万人とされて いる。これは、軽度の患者も含めた数であるが、高齢者の 4 人に 1 人が認知症患者である という計算になる。今後ますます増加していくと想定される認知症患者だが、その支援は あまり行き届いていないといえる。事実、患者の徘徊による行方不明事件は頻発し、また 災害時、避難所などで認知症高齢者のおかれている状況は様々な問題を抱えている。厚生 労働省の課題としても挙げられているが、地域との連携がうまくとれていないことが認知 症高齢者の家族を追いつめることにもなっている。これからの課題として、社会全体が認 知症に対して多くの知識や理解を持ち、支え合っていくことが大事だと筆者は考える。 障害者雇用とジェンダー 能登 美里 【要約】 障害者雇用においては、知的障害者と身体障害者とでは就くことのできる職業の幅や種 類が異なる。また、賃金の面においても大きな差があり知的障害を持つ人は職業において 大きなハンディを背負っていることも明らかである。さらに、ジェンダーの面からみると 非障害者も仕事において不利を負うことがある中で障害者女性の就労はより難しいものに なっている。 障害者雇用の国際比較において日本は他の国と比べ障害者雇用の制度が不備であり、企 業の意識も低い。そのため障害者雇用の目標数値が他の国と比べて低いため目標達成率が 高いという結果である。欧米諸国と比べ、障害者に対して冷たい印象を筆者は抱いた。本 論文を通して、障害者雇用の課題とは何かを述べていく。 現代社会に生きる若者の自殺とその背景 大坂 咲樹 【要約】 若者が自殺に至る要因や動機には、健康上の悩みや経済・生活問題、仕事や家庭のトラ ブルなどがあり、数多くの事柄が複雑に絡み合い、影響している。その背景には、日本の 非正規雇用の実態、就職活動の過酷さ、仕事に伴う過労やストレスが大きく関係している。 また、警察庁の調査データの統計によると、勤務問題が原因で自殺した人は、2012 年で 2472 人、2013 年は 2323 人となっており、毎日約 7 人が過労やストレスによって自殺している ことになる。特に近年では、職場のメンタルヘルス不調者の増加が指摘されている。政府 はメンタルヘルス対策として、労働安全衛生法に基づく方針である「労働者の心の健康の 保持増進のための方針」を公表している。本方針は、心の健康を保持・増進させる方針と 命名されているものの、その具体的な方法や政策は乏しいといえる。WHO は、 「メンタル ヘルスとは個人が自己の能力を実感し、生活上の通常のストレスに対処でき、生産的に働 き、その所属するコミュニティに貢献できる状態をいう」と述べている。これからの日本 の課題として、うつ病など精神疾患を患い、自殺に陥る若者を救うためにも、メンタルヘ ルス対策を国が地方自治体や地域、学校、職場にどのように働きかけていくかが重視され ることが分かった。 東日本大震災による避難者の現状 瀧口 未来 【要約】 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災では、多くの方が被害に遭われた。もう 3 年 前のことであり、北海道に住む私たちには終わったことのように思われがちだが、震災の 影響によって多くの方が全国に避難している。仮設住宅に今もなお住んでいる人は心身と もに疲れている。仮設住宅ではなく、全国に避難した人も多くいる。その人たちも世間の 目を気にしながら、慣れない土地での生活を余儀なくされている。その中でも、母子避難 者は子育ても閉鎖的になってしまい、助けが欲しくても誰にも頼れない状況である。福島 第一原発事故に伴い自主避難してきた人は、子どものために避難してきた人が多いが周囲 からは理解されず、苦悩を抱える。 避難者の方々に対して、公的な支援だけではなく、私たち一人ひとりも支援に加わるべ きではないかと思う。現地に行って支援するという高いハードルを乗り越えなくても、自 分の住む地域にも避難者がいるのでその人たちと関わるだけのことも支援の一歩になると 筆者は考える。 若年カップルにみるデート DV の特徴と支援の必要性 谷田 奈緒 【要約】 本論文では、近年、若年カップル間で増加傾向にあるデート DV について、その特徴と、 今後必要とされてくる支援について考察した。デート DV の特徴は、被害者、加害者共に 「愛」というもので「暴力」を軽くとらえがちであった。しかし、何よりも「社会」がデ ート DV を重く受け止めていないことが増加の原因であった。支援活動は民間シェルター などの専門機関だけではなく、身近な存在である、家族、友人にも可能なことである。デ ート DV についての知識は当事者である若者だけではなく、幅広い年代に必要なものであ る。
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