日本 CT 技術研究会 第 2 回学術大会(JSCT2014)

日本 CT 技術研究会 第 2 回学術大会(JSCT2014)
【日 時】2014 年 6 月 28 日(土)09:00~17:00
【会 場】名古屋市立大学病院(さくら講堂)
〒467-0001 名古屋市瑞穂区瑞穂町川澄 1
TEL: 052-851-5511
【参加費】会員:2000 円,非会員:3000 円
【大会長】小山修司(名古屋大学)
【後 援】公益社団法人 日本放射線技術学会
発表者の方へ
口述発表(発表時間:7 分+討論:5 分)は時間厳守でお願いします。
発表は、ご自身の PC(OS: Windows 7, 8 または Macintosh X 以上)もしくはデータ持ち込み(USB ストレー
ジ等)に限ります。当日は念のため、発表用データの USB ストレージをご持参ください。発表用データは,Power
Point(Windows 版)でバージョン 2003~2010,Windows OS(Windows 7, 8)で作成をお願いします。Macintosh で
作成された場合には,上記の仕様で再生確認を必ず行ってください.
当日は受付にて、発表の 30 分前までに登録を完了してください。
(受け付け開始時間:9:00~)
会場へのアクセス
学術大会会場
・お車でお越しの方
駐車場に限りがあり患者様、お見舞いの方を優先するため、公共交通機関等をご利用ください。
※当日は駐車券、補助券等の発行は出来ません。
--- 日本 CT 技術研究会 第 2 回学術大会(JSCT2014)プログラム ---
受付
09:00
開会挨拶
09:45
大会長
Refreshers Seminar 1 画質評価
「CT における画質評価の基礎」
名古屋大学 小山修司
10:00-10:25
司会
金沢大学 市川勝弘
広島大学病院診療支援部高次医用画像部門
西丸英治 先生
Session 1(臨床応用技術)
座長
14001.
10:30-11:30
順天堂大学医学部附属順天堂医院 木暮陽介
藤田保健衛生大学 辻岡勝美
下肢 CT-angiography における造影剤通過時間を考慮した新しい撮影法について
星野貴志*, **,市川勝弘***,細見和宏*,豊山栄治*,西村健司*
*社会医療法人医真会八尾総合病院放射線科 **金沢大学大学院医学系研究科保健学専攻
***金沢大学医薬保健研究域保健学系
14002. しきい値を用いない新しい体積算出法の提案
伊藤雄也*,辻岡勝美**,佐藤靖朋*,木全洋奈*,鹿山清太郎*,磯部好孝*, ***,丹羽正厳*, ****,加藤良一**
*藤田保健衛生大学大学院保健学研究科 **藤田保健衛生大学医療科学部 ***四日市羽津医療センター
****市立四日市病院
14003. Dual energy CT による MR 用造影剤描出能の基礎的検討
中原晶子*,小野寺聡之*,藤浪喜久夫*
*東京都保健医療公社豊島病院放射線科
14004. 3 次元マッピングシステムにおける低管電圧 CT 撮影の被ばく低減効果について
舛田隆則*,今田直幸*,奥 貴行*,山下由香利*,下川由枝*,石橋 徹*
*医療法人あかね会土谷総合病院
14005. 低電圧乳腺 CT における画質と被ばくの検討
大橋一也*,加藤勝也*,**,市川勝弘***
*名古屋市立大学病院中央放射線部 **金沢大学大学院医薬保健学総合研究科保健学専攻
***金沢大学医薬保健研究域保健学系
Refreshers Seminar 2 被ばく
11:40-12:10
司会
「CT における線量評価の基礎」
金沢大学医薬保健研究域保健学系量子医療技術学講座 講師
国立がんセンター東病院 村松禎久
松原孝祐 先生
< 弁当受け渡し>
JSCT2014 Luncheon Seminar
12:30-13:30
司会
広島大学病院 石風呂 実
(協賛:富士フィルム RI ファーマ株式会社)
テーマ:
「最新 CT システム画像診断の現状 -ハードウエア・ソフトウエア統合の中での画像診断- 」
岐阜大学医学部付属病院放射線部部長 臨床教授
兼松雅之 先生
演題名:
「躯幹造影 CT の新技術で何が変わるのか」
熊本中央病院放射線診断科部長
片平和博 先生
演題名:
「腹部緊急 CT 検査を極める -当直医をうならせる追加- 工夫」
Session 2(画像解析)
14006.
13:40-14:40
座長
熊本大学 船間芳憲
大阪物療大学 山口 功
ハーフ再構成画像における面内画質特性の評価
高田 賢*,市川勝弘**,竹中和幸*,市川宏紀*,後藤竜也*
*大垣市民病院医療技術部診療検査科中央放射線室 **金沢大学医薬保健研究域保健学系
14007.
X 線 CT における異なるスライス厚画像の物理的検出率指標による評価
伊藤翔太*,村崎祐一*,市川勝弘**
*金沢大学医薬保健学総合研究科保健学専攻 **金沢大学医薬保健研究域保健学系
14008. 逐次近似型画像再構成における中間コントラス領域での空間分解能特性は物体形状に依存するか?
高田忠徳*,市川勝弘**,林 弘之*,作田啓太*,布目晴香*,松原孝祐**,松浦幸広*,蒲田敏文***
*金沢大学附属病院放射線部 **金沢大学医薬保健研究域保健学系 ***金沢大学医薬保健研究域医学系
14009. タスクベースによる逐次近似再構成画像の体軸方向分解能評価
原 孝則*,瓜倉厚志**,市川勝弘***,東出 了****,井上 健*****,西丸英治******
*中津川市民病院医療技術部 **静岡県立静岡がんセンター画像診断科 ***金沢大学医薬保健研究域保健学系
****名古屋市立大学病院中央放射線部 *****社会医療法人高清会高井病院放射線科
******広島大学病院診療支援部高次医用画像部門
14010. 逐次近似再構成画像の低コントラス検出能評価
瓜倉厚志*, **,市川勝弘***,原孝則****,西丸英治*****,中屋良宏*
*静岡県立静岡がんセンター画像診断科 **金沢大学大学院医学系研究科保健学専攻
***金沢大学医薬保健研究域保健学系 ****中津川市民病院医療技術部
*****広島大学病院診療支援部高次医用画像部門
Session 3(線量評価・その他)
14011.
14:50-15:50
座長
散乱線測定による高速 CT のオーバーレンジング低減機構の評価
山崎詔一*,江崎徹*
*自治医科大学附属病院中央放射線部
広島大学病院 藤岡知加子
札幌医科大学付属病院 平野 透
14012.
頭部 CT におけるボリュームスキャンによる線量低減に関する検討
上野博之*,松原孝祐**,野手伊知郎*,橘 良道*
*高岡市民病院放射線技術科 **金沢大学医薬保健研究域保健学系量子医療技術学講座
14013.
X 線 CT における深部線量分布の実測とモンテカルロシミュレーション
井上政輝*,小山修司**,角田尚矢***,堤 貴紀****,遠藤真紀****
*名古屋大学大学院医学系研究科 **名古屋大学脳とこころの研究センター ***名古屋大学医学部保健学科
****名古屋大学医学部附属病院
14014.
冠動脈 CT 検査における固形がんの罹患に関する生涯寄与リスクの推定
松原孝祐*,高田忠徳**,作田啓太**,市川勝弘*,越田吉郎*
*金沢大学医薬保健研究域保健学系量子医療技術学講座**金沢大学附属病院放射線部
14015.
High resolution abdominal CT-Angiography の新規注入プロトコル
-血管拡張剤を用いた血管描出能の改善-
西山徳深*,中川潤一*,星加美乃里*,寺見佳祐*,村上奈津紀*,高谷昌泰*,小林有基*
*岡山済生会総合病院画像診断科
【特別講演】
16:00-16:45
司会
名古屋大学 小山修司
愛知県立大学情報科学部 教授 戸田尚宏 先生
演題タイトル:
「X 線 CT におけるエネルギー情報と散乱線の利用」
表彰式
閉会挨拶
16:50-16:55
16:55-17:00
表彰委員長 山口 功
次期大会長
JSCT 2nd annual meeting, Abstract submission
下肢 CT-angiography における造影剤通過時間を考慮した新しい撮影法について
星野貴志*, **,市川勝弘***,細見和宏*,豊山栄治*,西村健司*
*社会医療法人医真会八尾総合病院放射線科
**金沢大学大学院医学系研究科保健学専攻
***金沢大学医薬保健研究域保健学系
【背景及び目的】
下肢末梢血管領域において CT-angiography (CTA) はスクリーニングから術前検査に至るまで広く用いられている [1].下肢末梢動脈の血
流速度には個人差を認め peripheral arterial occlusive disease (PAOD) ではさらに差が大きくなる [2].特に近年の多列化された CT により,撮
影時間が短縮されているため血流速度が遅い場合に造影剤を撮影が追い越す現象が生じることがある [3].造影剤の追い越しを防ぐために,
造影剤注入時間を延長させ遅い table speed で撮影する方法や [3],2 部位で test bolus を行いあらかじめ造影剤の通過時間を把握する方法
[4] が報告されているが,これらの手法では使用造影剤量が増加する.今回,我々は末梢部位における test bolus から得られた脛骨動脈での
造影剤到達時間を利用した新しい撮影タイミングの決定方法を考案した.本研究の目的は,提案する方法の有用性を検証することである.
1 方法
1-1
造影剤通過時間の計測
CT 装置は,SOMATOM sensation 64 (SIEMENS)を使用した.下肢 CTA 撮影を行う 30 症例において,体重あたり 90 mgI の造影剤を 5 秒間
注入し,第 3 腰椎と足関節レベルで連続に monitoring scan を行うことで,腹部大動脈 (Atao) と脛骨動脈 (Attib)における造影剤ピーク時間を
測定した.その結果から通過時間 ( Transit time: TT ) を算出した ( TT = Attib - Atao ).一度の test bolus injection のみから得られた TT, Atao, Attib
の分析から,最適化された撮影開始時間,撮影時間を決定する新しい方法を考案した.
1-2
提案する手法と従来法 ( Bolus tracking ) の比較
提案する方法を検証するために,従来法 ( Bolus tracking method: BT 法 )と本法でそれぞれ 30 症例の撮影を行い,動脈内 CT 値を計測した.
本法,BT 法ともに,450 mgI/kg の造影剤を 25 秒間で注入し,注入終了直後に生理食塩水 30 mL を注入した.動脈内 CT 値は,Abdominal
aorta (AA), External iliac artery (EIA), Distal superficial femoral artery (SFA), Mid-popliteal artery (pop-A), Anterior tibial artery (ATA), Dorsalis pedis artery
(DPA) の 6 点にて計測した.6 点の計測部位全ての CT 値が 200 HU 以上を good case, 1 部位でも 200 HU 未満な場合を poor case と定義し
本法と BT 法で比較した.
2. 結果
2-1
造影剤通過時間の計測
30
Attib – 10.48, R = 0.892, P < 0.01).
2-2
従来法との比較
AA, EIA, SFA, pop-A の 4 部位では,
有意差は認めないものの,
末梢の ATA, DPA に
Transit time (sec)
Fig. 1 に示すように,TT と Attib の間には,極めて強い相関関係を認めた (TT = 0.78
お
いて CT 値が向上した ( P < 0.01).BT における good case は 15.7 %であったのに対し,
本法では 70 %だった.また本法では,造影剤の追い越し現象は認めなかった.
y = 0.78x – 10.48
r = 0.892
25
Atao と TT との間には明らかな相関関係は認めなかったが ( R = 0.121, P <0.01 ),
20
15
10
5
0
0
10
20
30
40
50
Tibial artery arrival time (sec)
Fig. 1. Prots of tibial artery peak time versus contrast medium transit time.
A highly positive correlation between Attib and TT was indicated.
3. 結論
本法を用いることにより,下肢 CTA における撮影時間と撮影開始時間が最適化され下肢動脈の造影効果を向上させることができた.
【参考文献】
[1]Portugaller HR, Schoellnast H, Hausegger KA, et al. Multislice spiral CT angiography in peripheral arterial occlusive disease: a valuable tool in detecting
significant arterial lumen narrowing. Eur Radiol 2004;14(9):1681-1687.
[2]Siriapisith T, Wasinrat J, Mutirangura P, et al. Optimization of the table speed of lower extremity CT angiography protocols in different patient age groups.
J Cardiovasc Comput Tomogr 2010;4(3):173-183.
[3]Fleischmann D, Rubin GD. Quantification of intravenously administered contrast medium transit through the peripheral arteries: implications for CT
angiography. Radiology 2005;236(3):1076-1082.
[4]Laswed T, Rizzo E, Guntern D, et al. Assessment of occlusive arterial disease of abdominal aorta and lower extremities arteries: value of multidetector
CT angiography using an adaptive acquisition method. Eur Radiol 2008;18(2):263-272.
JSCT 2nd annual meeting, Abstract submission
しきい値を用いない新しい体積算出法の提案
1)
2)
1)
1)
1)
○伊藤雄也 , 辻岡勝美 , 佐藤靖朋 , 木全洋奈 , 鹿山清太郎 , 磯部好孝
1) 3)
, 丹羽正厳 1) 4), 加藤良一 2)
1)藤田保健衛生大学大学院保健学研究科, 2)藤田保健衛生大学医療科学部, 3)四日市羽津医療センター, 4)市立四日市病院
【背景及び目的】
現在、CT における体積の算出にはしきい値を用いた 2 値化が行われている. しかし, この方法では設定されるしきい値や画像再構成関
数によって算出される体積が変動することが知られている. 今回我々は CT 画像から体積を求める際にしきい値を用いない新しい方法を考
案したので報告する.
1 方法
評価は長さの評価, 面積の評価, 体積の評価を行った. ファントムにはそれぞれの実験で 1mm から 3mm の厚さのアクリル板, 一辺が
5mm のアクリル四角柱, そして直径 10mm のアクリル球を用いた. 実験ではしきい値を被写体の最高 CT 値に対して 25%、50%、75%と変
化させた. また, 新しい方法として, 被写体の周囲に設けた CT 値の累積を被写体 CT 値で除した.
2. 結果
厚さ, 面積, 体積のいずれの被写体においても, しきい値を用いた方法では設定しきい値, 画像再構成関数によって結果が変動し, 真値
に対して厚さの誤差は-47.2~+107.6[%], 面積の誤差は-22.7~+73.9[%], 体積の誤差は-27.3~+131.1[%]であった. しきい値を高く, 画像再構成
関数を腹部関数にすることで長さ, 面積, 体積は小さくなった. それに対して, 我々の提案する新しい手法ではしきい値を設定する必要が
なく, 測定結果も厚さ、面積、体積の誤差が真値に対してすべてにおいて±5[%]以内となった.
図 2 各手法による面積(100mm2)の測定値
図 1 各手法による 1mm 厚の測定値
真値
真値
図 3 体積測定(ノンヘリカルスキャン)
図 4 体積測定(ヘリカルスキャン)
3. 結論
CT による体積計算ではしきい値や画像再構成関数の設定で大きな誤差が生じた. それは, CT 画像の空間分解能によるもので測定対象の
物質が小さいほど誤差率は大きくなる. それに対して, 我々の提案する手法では空間分解能によらず体積測定ができるので, しきい値, 画
像再構成などの各種パラメータの変化があっても常に高い精度で正確な測定が可能となる.
【参考文献】
[1]叶亮浩, 神時寿宏, 葛西次郎, 他. マルチスライス CT による Volume 算出法の検討. 日本放射線技術学会東北部会雑誌 2003; 12,
190-193.
JSCT 2nd annual meeting, Abstract submission
Dual energy CT による MR 用造影剤描出能の基礎的検討
中原晶子*,小野寺聡之*,藤浪喜久夫*
*
東京都保健医療公社豊島病院放射線科
【背景及び目的】肝細胞特異性 MR 造影剤 Gd-EOB-DTPA (EOB)は,血流評価と肝細胞機能評価が同一検査で可能であり投与量は通常
Gd 製剤の半分である.MR 検査においては,検査室入室のための準備が必要(金属類・貼付薬など)だけでなく,呼吸停止時間は CT の
約 3 倍であり,呼吸停止不良例が散見される.よって,CT で Gd の描出が可能であれば,被ばくのデメリットはあるが検査の容易性は向
上し,dual energy 解析によって Gd の定量化ができればさらに有効である.そこで,dual energy CT(DECT)における極微量 Gd の検出能
について基礎的検討を行った.
1 方法
1-1
線質測定
TOSHIBA 社製 Aquilion PRIME(80DAS)を使用し,線量計(Radcal 社製 9015 型放射線モニタ)を用いた Al 半価層法により,80,100,
120 及び 135kV の各 bowtie フィルタ(S,M,L)の線質(実効エネルギー)を測定した.
1-2
Dual Energy の CT 値相関図と dual energy index
MR 用造影剤としては,EOB・プリモビスト(バイエル薬品)を用い,140mm 径の円筒形外容器の中に 35mm 径の 6 個の内容器を均等
に配置した自作ファントムを使用した.内容器内には 0.00086,0.00172,0.0043,0.0086,0.02,0.03mmol/ml の EOB または,1.65, 3.30, 4.96,
6.61, 8.26 mgI/ml のヨード造影剤を封入し,それぞれを 80-135kV 及び 100-135kV の DECT で約 18mGy の CT dose index にて撮影し,それぞ
れの CT 値の相関図
(135kV の CT 値に対する 80kV 及び 100kV の CT 値)
を作成した.
また,
dual energy index(DEI)
を DEI= (CT 値@80kV-CT
値@135kV)/(CT 値@80kV+CT 値@135kV+2000)の式により算出した.さらに,装置付属の DE Image View ソフトウエアを用いて各電圧
における CT 値を算出し,EOB の CT 値における感度を調べた.
2. 結果
実効エネルギーは,80kV では,39.44~42.27 keV,100kV
0.01
0.00086mmol/ml
では,
44.83~48.20keV,
120kV では,
49.95~53.42keV,
135kV
では,53.51~57.17 となり,bowtie フィルタの S,M,L
の順で高くなった.80-135kV の DECT の相関図における傾
きは,EOB で,1.21,ヨードでは 1.33 となり,EOB はや
0.01
0.00172mmol/ml
0.02
0.02
や低い値を示した.EOB の DEI は 0.006~0.027,ヨードの
DEI は,0.015~0.059 となり,EOB はヨードの約 45%の値
を示した.EOB の最低濃度(薬物動態学的分布容積)であ
る 0.00086 mmol/ml では,CT 値は水とほぼ同等であり,描
80kV
出は困難であった.しかし,その 2 倍の 0.00172 mmol/ml
135kV
135kV
Fig.1 80kV と 135kV における EOB の CT 画像
では,CT 値は 10HU 程度上昇し,描出の可能性が示唆
された (Fig.1).ただし用いた装置の,スペクトルを藤田保健衛生大学 加藤 秀起氏の「X線スペクトル近似計算式」プログラム[1]を使用し
て推測したところ,DECT におけるスペクトルの重なりが大きいことが判明し,より高い DEI を得るためには,付加のフィルタの必要性
が示唆された.
3. 結論
Gd 製剤である EOB の DECT における描出能である DEI 値は,ヨードの約 45%であり,ヨードより描出感度が低くなることが推測され
た.また,想定される肝臓内濃度[2]と同レベルの濃度では,描出の可能性が期待できる CT 値であった.
【参考文献】
[1]http://www.aapm.org/meetings/amos2/pdf/35-9870-60838-480.pdf
[2]Schuhmann Giampieri G, et al. : Liver contrast media for magnetic resonance imaging. Interrelations between pharmacokinetics and imaging. Invest
Radiol 28(8):753-761(1993) 29-34.
JSCT 2nd annual meeting, Abstract submission
3 次元マッピングシステムにおける低管電圧 CT 撮影の被ばく低減効果について
舛田隆則*,今田直幸*,奥 貴行*,山下由香利*,下川由枝*,石橋 徹*
*
医療法人あかね会土谷総合病院
【背景及び目的】近年, 循環器領域では不整脈に対して,心筋を経カテーテル的に焼灼するカテーテルアブレーションが根治的な治療と
して行われている.従来、X線透視をガイドにカテーテルアブレーションが行われてきたが、3 次元マッピングシステムの登場により, 透
視時間が低減すると報告されている.しかし, 3 次元マッピングシステムは 3DCT画像とのFusionが必要であり, 心臓CT検査での被ばく線量
が多い.被ばく線量低減法の一つに低電圧撮影1)があるが, 今回我々は,低管電圧(80kV)を使用することで通常管電圧(120kV)に比べどのくら
い被ばく低減が可能か検証したので報告する.
1 方法
対象及び使用機器
1-1
2013.10 月から 2014.4 月の間に、心臓 CT とカテーテルアブレーション治療を施行した連続 60 例を対象とした.管電圧の設定を 80kV 群
(A 群)30 例と 120kV 群(B 群)30 例の 2 群に振り分けた.CT 装置は,Lightspeed VCT(GE Helthcare)を使用し, Angio 装置は, Allura Xper
FD10/10(PHILIPS), 3 次元マッピングシステムは, CART3(Biosence Webstar)を使用した.
管電流の設定
1-2
両群においてはCNRが一定になるように設定した.
本装置のECG gated scanではCT-AEC機能が使用できないため, CT-AEC機能が使用で
きるHelical scanを利用し, 心臓phantomで各管電圧における画像ノイズが等価となる管電流値を求めた2).
1-3
評価項目
1-3-1
被ばく線量と画質評価
各群での心臓 CT 検査による被ばく線量は,CT 装置のコンソ-ルに表示される DLP 値を使用した. Workstation ADW4.4 を使用し, 得られ
た画像の CT 値,SD 値を計測し CNR を算出した.また, 両群における画質については 4 段階の視覚評価を行った.
カテーテルアブレーションの手技時間
1-3-2
画質が治療に与える影響を評価するため, 両群でのカテーテルアブレーション手技時間を比較した.
統計解析
1-3-3
患者背景の患者数(男,女)においてはX2検定,年齢,身長,体重,BMI,画像の視覚評価においてはStudent-T testを, 被ばく線量と定量的解析
におけるCT値, CNRに関しては, Mann-whitney U testを使用した.統計学的な有意基準はP<0.05 とした.
2. 結果
被検者の基礎データである年齢, 身長, 体重, BMI, CNR においては有意差を認めなかったが,CT 値においては有意差を認めた(A 群; 389.2
±77.1HU vs B 群; 622.1±89.5HU) .A 群(549.6±222.1mGy-cm)での被ばく線量は, B 群(1281.9±371.4mGy-cm) と比較し有意に低い値を示
したが(p<0.001), 視覚評価においては有意差を認めなかった.カテーテルアブレーションの手技時間においても, 両群で有意差を認めなか
った(A 群;183.1±32.3min vs B 群; 200.1±48.2min).
3. 結論
カテーテルアブレーション治療前 CT における CNR を指標とした低管電圧撮影(80kV 使用)は, 治療レベルを維持したままで, 58%被ばく
線量を低減することが可能である.
【参考文献】
[1]Scaglione M.Visualization of maltiple catheters with electroanatomical mapping reduces X-ray exposure during atrial fibrillation ablation. Europace.
2011 Jul;13(7):955-62.
[2]Funama Y. Radiation dose reduction without degradation of low-contrast detectability at abdominal multisection CT with a low-tube voltage
technique: phantom study. Radiology. 2005 Dec;237(3):905-10.
[3]舛田隆則,今田直幸,奥 貴之,他.被ばく低減を目的とした ECG-gated Scan における CNR を指標とした低電圧撮影について
2013;13015 JSCT.
JSCT 2nd annual meeting, Abstract submission
低電圧乳腺 CT における画質と被ばくの検討
大橋一也*,加藤勝也*,**,市川勝弘***
*
名古屋市立大学病院 中央放射線部
**
金沢大学大学院医薬保健学総合研究科保健学専攻
***
金沢大学医薬保健研究域保健学系
【背景及び目的】乳腺 CT はマンモグラフィや MRI と違い,手術体位に近いことから術前検査として用いられている.しかし,乳癌診
療ガイドラインでは消極的なグレードとなっている[1]. また CT は MRI と比較してほぼ同等の特異度を示すが感度は有意に低いという報
告がある[2].これらは 120 kV での検討であり,低電圧 CT 撮影による造影剤のコントラスト増強効果による検討はなされていない.本研
究では低電圧造影乳腺 CT の臨床応用への前段階として,新しく使用可能になった管電圧 70 kV および X-CARE 併用での超低電圧乳腺 CT
の被ばくと画質の関係を明らかにする.
1. 方法
使用装置はシーメンス社製 SOMATOM Definition Flash を使用した.ファントムとして京都科学社製の胸部ファントムと自作乳腺ファン
トムを使用した.
自作乳腺ファントムは希釈造影剤や線量計と配置できるように設計した.
線量計は,
RTI 社製Piranha およびCT Dose Profiler
を使用した.測定条件は 70–140 kV の 5 段階の管電圧と前面からの照射をカットすることで乳腺の被ばく低減が期待できる X-CARE の組
み合わせで測定を行った.希釈造影剤を使用して CNR:Contrast to noise ratio を測定した.各管電圧の CNR と乳腺線量から Figure of merit for
the CNR (FOMCNR)を算出した[3, 4].
2. 結果
CTDI vol. (5.0 mGy)における乳腺の線量は 5.4 mGy で,X-CARE を使用した場合は 4.4 mGy となった.
CTDI vol.を一定とした場合,管電圧 70 kV での CNR が 16.9 と最も高く,FOMCNR で比較すると 70 kV と X-CARE の併用が 58.21 と最も
高い値を示した.
Table 1 Measured CNR of each tube voltages
kV
Eff.mA
CT number
Contrast media Water
Table 2 Measured Figure of merit for the CNR of each tube voltages
SD
FOMCNR
CNR
70
400
213.2
-2.1
12.7
16.9
80
255
175.3
-3.1
11.9
15.0
100
121
130.4
-3.4
11.3
11.8
120
73
105.6
-3.0
11.6
9.4
140
50
89.0
-2.5
11.3
8.1
kV
70
80
100
120
140
Without X-CARE
With X-CARE
52.9
40.9
25.8
16.1
11.9
58.2
46.1
30.1
19.2
13.2
3. 結論
CTDI vol.を一定とした場合,管電圧 70 kV での CNR が最も高く,FOMCNR で比較すると 70 kV と X-CARE の併用が線量に対する CNR
が最も高かった.
【参考文献】
[1] 日本乳癌学会. 科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン ②疫学・診断編 2013 年版. 東京: 金原出版
[2] Shimauchi A, Yamada T, Sato A, et al. Comparison of MDCT and MRI for evaluating the intraductal component of breast cancer.AJR Am J
Roentgenol. 2006 Aug;187(2):322-9.
[3] Gupta AK, Nelson RC, Johnson GA, et al. Optimization of eight-element multi-detector row helical CT technology for evaluation of the
abdomen.Radiology. 2003 Jun;227(3):739-45. Epub 2003 Apr 17.
[4] Samei E, Dobbins JT, Lo JY, Tornai MP. A framework for optimising the radiographic technique in digital x-ray imaging. Radiat Prot Dosimetry
2005;114:220–229.
JSCT 2nd annual meeting, Abstract submission
ハーフ再構成画像における面内画質特性の評価
高田賢*,市川勝弘**,竹中和幸*,市川宏紀*,後藤竜也*
大垣市民病院医療技術部診療検査科中央放射線室
*
金沢大学医薬保健研究域保健学系
**
【背景及び目的】Computed tomography(CT)の面内の解像度,ノイズ特性,signal-to-noise ratio(SNR)は中心部と辺縁部で異なると報告され
ている[1].心臓 CT 検査のように,人体の中央に位置しない特定の臓器を対象とした検査においては,対象臓器と面内画質特性を考慮する
必要があると考えられ,また,通常のフル再構成画像に比し,心臓 CT において用いられるハーフ再構成の画質特性が異なることが考えら
れるため,その影響を考慮すべきである.本研究の目的は,SNR 測定によりハーフ再構成画像における面内画質特定を評価することであ
る.
1 方法
1-1
使用機器・撮影条件
CT 装置は 320 列 CT 装置(Aquilion ONE; 東芝メディカルシステムズ株式会社)を使用した.撮影条件は管電圧:120 kVp,管電流: 580mA,
管球回転速度: 0.35 s/rotation,
検出器配列: 320×0.5mm,
scan field of view: 240 mm,
ボリュームスキャンとし,
スライス厚: 0.5 mm,kernel: FC13,
ハーフ再構成にて画像再構成を行った.
1-2
空間分解能測定
径 0.2 mm のタングステンワイヤを用いて,ワイヤ法[2]にて modulation transfer function(MTF)の測定を行った.評価位置は,iso-center(幾
何学的特異性を考慮して Y 方向に+10mm),Y 方向に+30, +60,+90mm off-center とした.なお,ハーフ再構成においては,180°+ファ
ン角度のデータより画像再構成が行われ,管球-検出器対位置により画質の変動が予想されたため,管球側および検出器側についてそれぞ
れ測定を行った.
1-3
ノイズ
1-3-1
Standard deviation(SD)測定
直径 240 mm の水ファントムをガントリ中央に配置し,撮影した.得られた画像中に 64×64 pixel の region of interest(ROI)を 32pixel ずつ
移動させて配置し,各 ROI 中の SD を計測した.
1-3-2
Noise power spectrum(NPS)測定
SD 測定の際に取得した画像を使用し,64×64 pixel の ROI を各評価位置に配置し,radial frequency 法[3]にて NPS を測定した.
1-4
SNR
MTF,NPS よりそれぞれの評価位置における SNR を算出した.
2. 結果
MTF は管球側では 90mm off-center のみ高空間周波数領域で低下を認め,検出器側では iso-center から離れるほど低~中空間周波数領域で
低下した.SD は管球側+60mm off-center 付近で最大値(31.7HU)を示し,検出器側に向かい同心円状に低下した.NPS は管球側では 90mm
off-center のみ低値となり,検出器側では iso-center から離れるほど低値となった.SNR は 0.5 cycles/mm までは全評価位置で等値となり,0.5
cycles/mm 以上の周波数領域では管球側 90mm off-center のみ低値となった.
3. 結論
320 列 CT 装置におけるハーフ再構成画像において,辺縁部ほど検出器側の解像度の低下,ノイズ特性の向上を認めた.90 mm off-center
までの範囲では,SNR は 0.5 cycles/mm まで位置依存性を認めなかった.
【参考文献】
[1]Hara T., Ichikawa K., Sanada S., et al. Image quality dependence on in-plane positions and directions for MDCT images. Eur.J.Radiol, 2010; 75(1):
114-121
[2]市川勝弘, 原 孝則, 丹羽伸次, 他. CT における金属ワイヤによる MTF の測定法. 日本放射線技術学会雑誌 2008; 64(6): 672-680
[3]Kijewski, M. F., Judy, P. F. The noise power spectrum of CT images, Phys.Med.Biol, 1987; 32(5): 565-575
JSCT 2nd annual meeting, Abstract submission
X 線 CT における異なるスライス厚画像の物理的検出率指標による評価
伊藤翔太*,村崎祐一*,市川勝弘**
*
金沢大学医薬保健学総合研究科(博士前期課程)保健学専攻
**
金沢大学医薬保健研究域 保健学系
【背景及び目的】マルチスライス CT の普及によって,一度のスキャン(同一の線量下)から,スライス厚の異なる画像を再構成して臨床利
用する機会が増加した.このような場合,スライス厚の変化により,ノイズとともに,パーシャルボリューム効果の影響を受け,物体のコン
トラストが変化する.しかし,そのような条件下において視覚的検出能や定量的画質について評価した研究はなされていない.そこで,X 線
CT において,同一線量下での異なるスライス厚の画像が球体の低コントラスト検出能に与える影響について視覚的検出率試験と物理的検
出率指標で評価する.
1.方法
1-1 低コントラスト検出能ファントムの作成
5mm 径のアクリル球を直径 200mm の水ファントム内に固定した.また,アクリル球とバックグラウンドとの CT 値差が 15 程度(低コントラ
スト)となるように周囲を希釈造影剤とした.
1-2 X 線 CT 画像の取得
管電圧 110kV で撮影を行い,5,3,2,1mm のスライス厚で再構成した.
1-2 視覚的検出率試験の実施
再構成した画像から球の中心をランダムに変化させた画像をそれぞれ 100 枚ずつ切り出し,
スライス厚ごとに視覚的検出率試験を行った.
検出率試験には画像順をシャッフルして表示する専用プログラムを用いて,観察者が球の位置を正しく指示した割合を検出率とした.
1-3 物理的検出率指標の算出
物理的検出率指標として,NPS[2],MTF[1],球体のスライス画像の空間周波数成分である S(u)を用いて,Matched filter モデルに基づいた
SNR index である(SNRM2)[3]を算出した.
2. 結果
NPS は,
スライス厚が薄くなるほど高い値を示した.
S(u)は,
スライス厚が厚くなるほど振幅値が低下した.
物理的検出率指標である(SNRM2)
は,スライス厚 5mm と 3mm がほぼ等しい値を示し,2mm,1mm,の順に低下した.視覚的検出率においても,スライス厚 5mm と 3mm
がほぼ等しい値を示し,2mm,1mm,の順に低下しており,物理的検出率指標と同様な傾向を示した.
3. 結論
同一線量下において異なるスライス厚で再構成した画像では,5mm 球体の低コントラスト検出能は,3mm 厚が最も優れており,2mm 厚,
1mm 厚では顕著に検出率が低下した.また,パーシャルボリューム効果を考慮した物理的検出率指標(SNRM2)と視覚的検出率の傾向は一致
した.
【参考文献】
[1]市川勝弘, 村松禎久. 標準 X 線 CT 画像計測. 東京: オーム社, 2010.
[2]市川勝弘, 原 孝則, 丹羽伸次, 他. CT 画像におけるノイズパワースペクトル算出方法の比較評価. 医用画像情報会誌 2008; 25(2):
29-34.
[3]市川勝弘, 原 孝則, 丹羽 伸次, 山口 功, 大橋 一也, CT における信号雑音比による低コントラスト分解能の評価, 医用画像情報学会
雑誌, 24 (3), 106-111, 2007
JSCT 2nd annual meeting, Abstract submission
逐次近似型画像再構成における中間コントラスト領域での空間分解能特性は物体形状
に依存するか?
高田忠徳*,市川勝弘**,林 弘之*,作田啓太*,布目晴香*,松原孝祐**,松浦幸広*,蒲田敏文***
*
金沢大学附属病院放射線部
**
金沢大学医薬保健研究域保健学系
***
金沢大学医薬保健研究域医学系
【背景及び目的】X 線 CT 画像における逐次近似方再構成法 (Iterative reconstruct : IR) の空間分解能特性はコントラストと線量 (ノイズ)
に依存することは既に報告した (RSNA Annual meeting 2013 Scientific poster) .しかし,物体形状依存性については示されていない.さら
に,正確な診断のためにより高い空間分解能を必要とする検査,例えば血管内のソフトプラークのような周囲との CT 値の差が 50
Hounsfield Unit (HU) 程度の中間コントラストにおいて,IR の影響を評価することは効果的である.本研究の目的は中間コントラスト物
体における IR の空間分解能の物体形状依存性を評価することである.
1 方法
我々はシーメンス社製の IR (Sinogram Affirmed Iterative Reconstruction : SAFIRE) を使用した.
1-1
ファントム
直径 100 mm と 50 mm のアクリル製円柱ファントムおよび一辺が 50 mm のアクリル製立方体ファントムを直径 200 mm のアクリル製円
柱容器内の正確な中心に固定し使用した.ファントムの周囲は希釈造影剤で満たし,ファントムとのコントラスト差が 45 HU 程度になる
ように調整した.
1-2
データ収集
ファントムを 2 種類の撮像条件 (5mGy および 10mGy) で撮像し,filtered back projection (FBP) および IR で再構成した.IR はノイズ低減
効果が最も高い strength = 5 (S5) を使用した.ノイズが正確な空間分解能解析の障害となるため,我々はマルチスキャンにより得られた多
くの画像を加算する方式を採用した.したがって正確なアライメントが要求されるため,ファントムは寝台に乗せず,ガントリー内のア
イソセンターに固定して設置した.
1-3
データ解析
エッジ広がり関数を解析するために,円柱ファントム外周においてラジアル状にエッジプロファイル抽出を行った.得られたプロファ
イルを合成し,線広がり関数を得たのちフーリエ変換し MTF を得た[1]
.
2. 結果
IR画像において,
50 mm円柱ファントムが最も低いMTFを示し,
100 mm円柱ファントムと立方体ファントムの順にMTFは改善した (0.5
cycles/mm において,5 mGy では MTF = 0.2, 0.3, 0.31,10 mGy では MTF = 0.27, 0.4, 0.4) .5 mGy でのすべてのファントムにおいて,IR の
MTF が FBP よりも低下した.一方,10 mGy の IR はすべてのファントムで 5 mGy の IR よりも MTF が高かった.
3. 結論
中間コントラストでの SAFIRE の空間分解能は,撮像線量のみならず物体形状にも依存する傾向を認めた.特に,物体の曲率が高い場合
(例えば細い血管や小さい臓器)は空間分解能の劣化が示唆された.このことから,SAFIRE がバイラテラルフィルタなどの空間周波数フ
ィルタに近い特性であると考えられる.中間コントラストを有する形状が異なるファントムを用いることは,IR のエッジ保存性能を評価
することに有効である.
【参考文献】
[1]S. Richard and D. B. Husarik, “Towards task-based assessment of CT performance: System and object MTF across different reconstruction
algorithms,” Med. Phys. 39(7), 4115–4122 (2012).
以上.
JSCT 2nd annual meeting, Abstract submission
タスクベースによる逐次近似再構成画像の体軸方向分解能評価
原 孝則*,瓜倉厚志**,市川勝弘***,東出 了****,井上 健*****,西丸英治******
*中津川市民病院医療技術部
****
**静岡県立静岡がんセンター画像診断科
名古屋市立大学病院中央放射線部
***金沢大学医薬保健研究域保健学系
*****社会医療法人高清会高井病院放射線科
******広島大学病院診療支援部高次医用画像部門
【背景及び目的】Computed tomography(CT)の逐次近似画像再構成法(iterative reconstruction: IR)は患者の被ばく線量を低減するために
考案された新しい画像再構成技術で,一般にその画質は非線形的な特性を有する.このため IR 画像にはこれまで線形的な特性を仮定して
適応してきた評価手法をそのまま用いることは困難なため,最近の研究では臨床から乖離しない条件と特定の関心対象を定めて検討する
タスクベースの画像評価がなされている[1, 2]
.本研究は脈管構造と臨床のコントラストを考慮した円柱ファントムを用いて,IR 画像に
おける体軸方向の解像特性をタスクベースにて評価する新しい解析手法を考案し,その有効性の検証を行ったので報告する.
1. 方法
直径 200 mm の円筒形容器の中央にアクリル円柱(12 mmφ)を固定し,希釈
したヨード造影剤の溶液を用いてアクリル円柱(120 HU)と水溶液のコントラ
cylindrical PMMA
12-mm diameter, 120 HU
ストがおよそ 60 HU の専用ファントムを作成した(Fig.1)
.CT 装置は体軸方向
に 320 列の検出器列を有する Aquilion ONE(東芝メディカルシステムズ株式会
社)を用い,ファントムをガントリ中央にアクリル円柱の曲面が体軸方向と垂
background
60 HU
直となるように精度よく配置した.測定条件は,管電圧: 135 kV,X 線管の回転
速度: 0.5 s/rot.,ピッチファクタ: 0.813,データ収集: 80×0.5 mm,display-field of
view(D-FOV): 256 mm,スライス厚: 0.5 mm,管電流は filtered back projection
(FBP)画像の 100 mA(低線量: 高ノイズ画像)
,300 mA(高線量: 低ノイズ画
Fig.1 Overview of dedicated phantom.
像)を基準に,それぞれ 50 %,80 %を低減した条件から得られたデータに対して IR(Adaptive Iterative Dose Reduction 3D: AIDR 3D)を用
いて処理をして,全ての画像データを DICOM(digital imaging and communications in medicine)形式にて専用コンピュータに転送した.体軸
方向の解像特性は,アクリル円柱の曲面に対する体軸方向への仮想的なスリット走査からエッジプロファイル(edge spread function along
z-direction: ESFZ)を得て,その微分より計算される section sensitivity profile(SSP,line spread function along z-direction: LSFZ)をフーリエ変換
することで modulation transfer function(MTF)を求めて評価した.なお,本手法の正当性と測定精度はシミュレーションと体軸方向分解能
の評価手法として一般的なマイクロコイン法によって比較検証をおこなった.
2. 結果
体軸方向の解像特性は IR によって低下する傾向を示した.解像特性の低下は,より大きなノイズ低減強度の AIDR 3D_strong の方が,
AIDR 3D_mild よりも大きく,
その低下割合は基準FBP 画像の50 %MTF に対して,
100 mA はAIDR 3D_mild(50 mA)
で20 %,
AIDR 3D_strong
(20 mA)で 45 %,300 mA は AIDR 3D_mild(150 mA)で 0 %,AIDR 3D_strong(60 mA)で 25 %となった.円柱エッジを用いる本手法
の測定精度はマイクロコイン法によるインパルス法と同程度で,FBP 画像にて求めた 0.5 mm のスライス厚の full width at half maximum
(FWHM)はそれぞれ 0.85 mm,0.84 mm であった(n=3)
.
3. 結論
非線形的な特性を有する IR の CT 画像に対して,タスクベースにて体軸方向の解像特性を評価する新しい測定法を考案した.解析結果
から本手法の正当性と有効性を確認し,IR のノイズ低減処理がノイズレベルに依存する体軸方向のフィルタリングを伴っていることが明
らかとなった.本手法は IR の臨床画像への効果をより正確に評価可能なことから,線量低減化における撮像パラメータの決定の一助とな
ると考える.
【参考文献】
[1]Richard S, Husarik DB, Yadava G, Murphy SN, Samei E. Towards task-based assessment of CT performance: system and object MTF across different
reconstruction algorithms. Med Phys. 2012; 39(7): 4115-22.
[2]Inoue T, Ichikawa K, Hara T, Urikura A, Hoshino T, Miura Y, Terakawa S, Uto F. Investigation of vessel visibility in the iterative reconstruction method
in coronary computed tomography angiography using simulated vessel phantom. Nihon Hoshasen Gijutsu Gakkai Zasshi. 2012; 68(12): 1631-6.
JSCT 2nd annual meeting, Abstract submission
逐次近似再構成画像の低コントラスト検出能評価
瓜倉厚志* **,市川勝弘***,原 孝則****,西丸英治*****,中屋良宏*
*
静岡県立静岡がんセンター画像診断科
****
中津川市民病院医療技術部
**
金沢大学大学院医学系研究科保健学専攻
***
金沢大学医薬保健研究域保健学系
*****
広島大学病院診療支援部高次医用画像部門
【背景及び目的】X 線 CT の線量低減を目的として用いられる逐次近似再構成 (iterative reconstruction: IR) のノイズ低減処理は非線形であ
り,その周波数特性は従来の filtered back projection (FBP) と異なることが知られている [1, 2] .一般に,CT 画像における低コントラスト
検出能の定量化手法として contrast-to-noise ratio (CNR) [3] が広く用いられ,IR においても CNR による評価が多くみられる.しかしなが
ら,CNR は画像の周波数特性が考慮されないため視覚的な検出能評価との間に乖離が生じる [4, 5] .本研究の目的は,我々が考案した対
象物体の周波数成分を考慮した CNR 測定法と視覚的評価との関係について評価し,IR 画像の低コントラスト検出能評価法としての妥当
性について検討することである.
1 方法
周囲 CT 値に対して低濃度で様々な径 (2-10 mm)を有する円柱ロッドが複数封入された低コントラスト評価用ファントムを回転中心に配
置した.ファントムを異なる線量 (2.5-40 mGy) でスキャンし,すべての画像は FBP および IR で再構成した.本検討において IR 評価
には Adaptive Iterative Dose Reduction 3D (AIDR 3D, 東芝メディカルシステムズ) を用い,2 種類の強度設定 (mild, strong) で再構成した.ス
キャンパラメーターは,管電圧: 120 kVp,回転速度: 1.0 s/rotation,ピッチファクタ: 0.813,検出器設定: 80 × 0.5 mm,スライス厚: 5.0 mm,
volume computed tomography dose indices (CTDIvol): 2.5, 5, 10, 20, and 40 mGy,再構成カーネル: FC03(軟部標準関数)とした.得られた画像に
関する客観的指標として従来の CNR 測定法(従来法)
,および我々が考案した object-specific CNR (CNRobject ) による解析を行った.CNRobject
は評価対象物体のコントラストを,円柱ロッドの周波数 (ū) におけるノイズパワー値 (NPV (ū)) で除することで算出した.2 種類の CNR
算出法における線量と再構成法の関係について評価した.また,主観的評価として,CT 値差 10 HU,直径 5 mm の円柱ロッドの描出能
を視覚的に評価しスコア化した.さらに 2 種類の CNR 算出法と視覚的評価の関係について評価した.
2. 結果
2 種類の CNR および視覚的評価は撮影線量増加とともに向上した.従来法ではすべての線量において IR の強度に応じて CNR が向上し
た.一方,CNRobject および視覚的評価では,同一線量における FBP に対する IR の描出能は同等あるいはわずかな向上を認めるのみであっ
た.また,CNRobject と視覚評価の間にはほぼ直線的な関係を認めた.
3. 結論
我々が考案した CNRobject は,再構成法の異なる画像間の周波数特性および評価対象物体の周波数を反映し,従来の CNR 測定おいて生
じた視覚的評価との乖離を改善する客観的評価指標として有効であることが示唆された.IR のノイズ低減効果と低コントラスト検出能の
関係を評価する一手法として本法は有用である.
【参考文献】
[1]Richard, S., Husarik, D. B., Yadava, G., Murphy, S. N., & Samei, E. Towards task-based assessment of CT performance: System and object MTF
across different reconstruction algorithms. Medical physics, 2012; 39(7), 4115-4122.
[2]Willemink MJ, de Jong PA, Leiner T, de Heer LM, Nievelstein RA, Budde RP, Schilham AM. Iterative reconstruction techniques for computed
tomography part 1: technical principles. Eur Radiol. 2013;23: 1623-1631.
[3]Gupta AK, Nelson RC, Johnson GA, Paulson EK, Delong DM, Yoshizumi TT. Optimization of Eight-Element Multi–Detector Row Helical CT
Technology for Evaluation of the Abdomen1. Radiology. 2003;227:739-745.
[4]Kondo M, Hatakenaka M, Higuchi K, Fujioka T, Shirasaka T, Nakamura Y, Nakamura K, Yoshiura T, Honda H. Feasibility of low-radiation-dose CT
for abdominal examinations with hybrid iterative reconstruction algorithm: low-contrast phantom study. Radiol Phys Technol. 2013 Jul;6(2):287-92.
[5]Schindera ST, Odedra D, Raza SA, Kim TK, Jang HJ, Szucs-Farkas Z, Rogalla P. Iterative reconstruction algorithm for CT: can radiation dose be
decreased while low-contrast detectability is preserved? Radiology. 2013 Nov;269(2):511-8.
JSCT 2nd annual meeting, Abstract submission
散乱線測定による高速CTのオーバーレンジング低減機構の評価
山崎詔一,江崎徹
自治医科大学附属病院 中央放射線部
【目的】
Overranging 低減機構(以下 Adaptive dose shield)はピッチが小さいほど被ばく低減率は高くなる 1).しかし動きのある小児などの CT 検査では
高速 Scan が有用なため,高ピッチでの Scan が日常的に行われている.そこで Overranging を簡便に評価する手法を案出し Adaptive dose shield
の高速 Scan 時の挙動の解析を行った.
【使用装置】
SOMATOM Definition FLASH (Adaptive dose shield 搭載装置)
SOMATOM Sensation 64
(Adaptive dose shield 非搭載装置)
Piranha+ R100B 型 Probe
RTI
SIEMENS
SIEMENS
【方法】
散乱線をFig.1のように測定を行うと,線量は照射面積に比例するためAdaptive dose shieldのシャッターが閉じていると散乱線は少なくなりシ
ャッターが開くと散乱線は多くなる.
そこで散乱線を測定しその変化を計測することにより Adaptive dose shield の動作状況の評価を行った.
CT
Scattered ray
Probe
Fig.2 Without adaptive dose shield
Fig.1 measurement method
Fig.4
Fig.3 With adaptive dose shield
Scan range
75%
1 管球
Pitch 1.0
Rotation time 0.5s
Fig.5
Scan range
2 管球
Pitch 2.0
Rotation time 0.28s
【結果】
Fig.2 は Adaptive dose shield を搭載していない装置の測定結果である.シャッターがないため X 線照射開始から終了まで一定の X 線量が観
察された.Fig.3 は Adaptive dose shield を搭載している装置で X 線照射開始直後と終了直前はシャッターが作動しているため線量が制御さ
れていた.Fig.4 は pitch 1.0,Rotation time 0.5s の通常の螺旋 Scan であるが,X 線照射開始時には Adaptive dose shield のシャッターは完全に
閉じていた.
Adaptive dose shield はシャッターを全閉から全開まで要する時間は0.5s 程度であった.
Fig.5 は2 管球使用による高速Scan (Pitch
2.0)で X 線照射開始時には Adaptive dose shield のシャッターが全開時の 75%まで開いていた.Adaptive dose shield のシャッター制御の時間
がX 線照射開始から全開までに0.15sしかないため,
一定の程度まで開いておかないと全開までの制御が間に合わないためであると考える.
また,これは pitch 以外に Rotation time の影響も受けていた.
【結論】
高速 Scan では Adaptive dose shield の被ばく低減率が低下するので,高速 Scan が必要ではない場合や被ばく低減を考慮する場合は過度な高
速 Scan は避けなければならない.また本研究で用いた散乱線を利用して Overranging を評価する手法は時間分解能の高い線量計の使用が条
件であるが,その他に必要な物品はなく各種パラメータを変更しながらの測定は非常に容易であり,結果も把握しやすいため Overranging
の解析には有用である.
【参考文献】
1)小島英之, 辻村明日香, 矢部仁. 小児 CT 検査における adaptive dose shield の有用性について
日本放射線技術学会 雑誌 , 2011; 67(1):57-61
JSCT 2nd annual meeting, Abstract submission
頭部 CT におけるボリュームスキャンによる線量低減に関する検討
上野博之*,松原孝祐**,野手伊知郎*,橘良道*
*
高岡市民病院放射線技術科
**
金沢大学医薬保健研究域保健学系量子医療技術学講座
【背景及び目的】当院の頭部 CT では,ノンヘリカルスキャンを用いて,頭蓋底部で厚さ 4 mm,頭頂部で 8 mm の画像を
1 スキャンで 1 枚取得している.この方法では,X 線の利用効率が低いビームを使用する為,画像に寄与しない線量が多い
ことが考えられる.
当院で使用している80 列multi-detector row CT(MDCT)
装置はノンヘリカルスキャンで用いている4 mm,
8 mm の X 線ビーム幅より利用効率の高い 40 mm の X 線ビーム幅を用いたボリュームスキャン(40 mm の検出器幅でノン
ヘリカルスキャンでボリュームデータを取得する方式)が使用できる.そこで本研究では,頭部 CT においてボリュームス
キャンを用いた線量低減の可能性について,線量と画質の両面から検討した.
1 方法
Aquilion PRIME(東芝メディカル社製 80 列 MDCT)を用いて,120 mm の長さの頭部 CT 検査を撮影する場合を想定し
て,以下の検討を行った.スキャン方式はノンヘリカルスキャンとボリュームスキャン.X 線ビーム幅はノンヘリカルスキ
ャンは 4 mm と 8 mm,ボリュームスキャンは 40 mm を使用した.撮影条件は当院の頭部 CT 撮影条件に準じて設定した.
1-1
CTDI と DLP の比較
装置に表示された CTDIvol(computed tomography dose index volume)と DLP(dose length product)について比較した.設定条件は,管電
圧 135 kV, X 線管回転速度 1.5 rot/sec とし,各スキャンの 4mm 厚の画像の SD(standard deviation)値を同等にして比較するた
めに,管電流はノンヘリカルスキャンで 230 mA,ボリュームスキャンで 260 mA とした.DLP はノンヘリカルスキャンは 4
mm 厚の画像を 10 枚,8 mm 厚の画像を 10 枚取得するとき,ボリュームスキャンは 3 回スキャンしたときの値を比較した.
撮影範囲は 120 mm とした.
1-2
Z 軸方向のビームプロファイルの比較
ガントリー中心に 12×1.75 cm のガフクロミックフィルム(XR-CT,IPS 社製)を Z 軸に平行に配置して X 線を照射し,
ImageJ を用いて解析を行うことにより,Z 軸方向の線量プロファイルを取得し,X 線利用効率を算出した.
1-3
面内の空間分解能およびノイズ特性の比較[1]
各スキャン方式で得られた 4 mm 厚の画像から MTF(modulation transfer function)を取得し,さらに一次元仮想スリット
法にて NPS(noise power spectrum)を算出することによって,画像の物理特性に与える影響を比較した.設定条件は管電圧
135 kV,管電流 200mA,X 線管回転速度 1.5 rot/sec,関数は FC20 とした.MTF の測定は,内部を水で満たされた直径 5cm のプラスチック
製シリンジに銅製ワイヤ(直径 0.25 mm)を張った自作ファントムを用いて行った.NPS の測定においては,ファントムは直径 30 cm
の水ファントムを用い,仮想スリットのピクセル数は 20 ピクセル,FOV(field of view)は 230 mm とした.
2. 結果
CTDIvol は X 線ビーム幅 4 mm では 163.8 mGy,8 mm では 110.8 mGy,40 mm では 93.1mGy であった.DLP はノンヘリカルスキ
ャンが 1542 mGy・cm,ボリュームスキャンが 1117.2 mGy・cm であった.
Z 軸方向の X 線利用効率は X 線ビーム幅 4 mm が 37.95%,8 mm が 60.47%,40 mm が 88.97%であった.実測した X 線ビ
ーム幅から装置に設定した X 線ビーム幅を引いた値は X 線ビーム幅 4 mm で 6.54 mm,8 mm で 5.23 mm,40 mm で 4.96 mm
となった.
画質の物理特性は,MTF はボリュームスキャンよりノンヘリカルスキャンの方が優れていたが, 50%MTF はノンヘリカ
ルスキャンで 0.31,ボリュームスキャンでは 0.33 となり,両者の差は小さかった.NPS は低周波数領域ではボリュームスキ
ャンの方が優れていたが,高周波領域ではノンヘリカルスキャンのほうが優れていた.
3. 結論
ボリュームスキャンを頭部 CT に用いることで,ノンヘリカルスキャンと比較して面内の空間分解能やノイズ特性を大き
く劣化させることなく,線量を低減できる可能性が示された.
【参考文献】
[1]市川勝弘, 村松禎久. 標準 X 線 CT 画像計測. 東京: オーム社, 2010.
JSCT 2nd annual meeting, Abstract submission
X 線 CT における深部線量分布の実測とモンテカルロシミュレーション
井上政輝*,小山修司**,角田尚矢***,堤 貴紀****,遠藤真紀****
*名古屋大学大学院医学系研究科
**名古屋大学脳とこころの研究センター
***名古屋大学医学部保健学科
****名古屋大学医学部附属病院
【背景及び目的】近年 X 線 CT 装置の多列化に伴い,吸収線量のピーク位置がファントム表面よりやや深部へ遷移しているという報告
がされている.そこで,本研究では自作した水ファントムを用いた実測とモンテカルロシミュレーションによる計算を行い,詳細なファ
ントム内線量分布を取得し検討を行うことを目的とした.
1 方法
1-1 ファントム内深部線量分布の実測
発泡スチロールを外枠とし,直径 320 mm,長さ 450 mm の円筒型水ファントムを作製し,東芝メディカル社製 X 線 CT 装置 Aquilion64
を用いて管電圧 120 kV,スキャン範囲 100 mm で照射を行った.線量計は半導体線量計[1]を使用し,線量計の深さ位置を変えて各深さの
体軸方向 100 mm の積算線量測定を行った.
1-2 モンテカルロシミュレーションを用いた計算
シミュレーションコードとして Electron Gamma Shower 5 を使用し,実測で用いた CT 装置やファントム等の条件を忠実に再現して計算
を行い,ファントム中心の体軸方向の長さ 100 mm を取得領域としたファントム内深部線量分布及び,中心断面より体軸方向 0~50 mm の
10 mm 毎の各断面を取得領域としたファントム内深部線量分布を得た.
2. 結果
取得されたファントム内深部線量分布において,実測によるものでは線量のピーク位置はファントム表面より約 8 mm 深部へ遷移してお
り,計算によるものでは約 12 mm 深部へ遷移していた(図1).また,中心断面より 10 mm 間隔で取得した各断面における線量分布におい
ては,ファントムの体軸方向の中心から離れるにつれて,線量のピークはファントム中心へ遷移しており(図 2),これらの分布が合算され
ることにより,ファントム内深部線量分布の線量ピークが深部へ遷移すると考えられる.
図 1.実測及び計算による深部線量分布
図 2.各断面における深部線量分布(アイソセンターで規格化)
3. 結論
実測,計算の両者において,線量のピークがやや深部へ遷移していることが確認された.また,ファントムの体軸方向中心付近の各断
面の線量分布より,中心からやや離れた位置で特に線量ピークの遷移が顕著であり,ファントム内深部線量分布全体の線量ピークの遷移
に寄与していると考えられる.
【参考文献】
[1] T.Aoyamaa,S.Koyama,C.Kawaura. An in-phantom dosimetry system using pin silicon photodiode radiation sensors for measuring organ doses in x-ray
CT and other diagnostic radiology Med.Phys.29(7),july 2002
JSCT 2nd annual meeting, Abstract submission
冠動脈 CT 検査における固形がんの罹患に関する生涯寄与リスクの推定
松原孝祐*,高田忠徳**,作田啓太**,市川勝弘*,越田吉郎*
*
金沢大学医薬保健研究域保健学系量子医療技術学講座
**
金沢大学附属病院放射線部
【背景及び目的】2X 線管型 CT 装置や 320 列面検出器型 CT 装置などの臨床への導入に伴い,非侵襲的な冠動脈 CT 検査が普及してきて
いる.しかし,冠動脈 CT 検査は被ばく線量が比較的多い検査として知られている.そこで本研究では,冠動脈 CT 検査における肺がん,
乳がんの罹患に関する生涯寄与リスク(lifetime attributable risk: LAR)の推定を試みた.
1. 方法
1-1
対象
金沢大学附属病院において,128 列 2X 線管型 CT 装置(SOMATOM Definition Flash: Siemens 社製)にて冠動脈 CT 検査を施行した連続
162 例のうち,
冠動脈バイパス術後症例を除く 138 例
(男性 70 例,
女性 68 例)
の性別,
年齢,
および線量情報
(volume CT dose index: CTDIvol,
dose length product: DLP)を後ろ向きに調査した.撮影法の内訳は,心電同期螺旋スキャン(low-pitch spiral: LPS)法が 33 例,心電同期非
螺旋スキャン(step-and-shoot: SAS)法が 88 例,心電同期高速二重螺旋スキャン(high-pitch spiral: HPS)法が 17 例であった.
1-2
LAR の推定
人体等価ファントムを用いた臓器吸収線量の測定結果から導出された CTDIvol-臓器吸収線量換算係数[1]を用いて,各被検者の肺(男
性および女性)および乳房(女性のみ)の吸収線量を推定した.その推定値と,Committee on the Biological Effects of Ionizing Radiation (BEIR)
VII Phase 2[2]の Table 12D-1 に示された 0.1 Gy あたりの固形がんの罹患に関する LAR より,肺がん(男性および女性)
,乳がん(女性の
み)の罹患に関する LAR を推定した.
2. 結果
各撮影法における CTDIvol および DLP は,LPS 法で 102.3±19.4 mGy および 1534±310 mGy·cm,SAS 法で 45.1±13.5 mGy および 633
±190 mGy·cm,HPS 法で 5.8±0.6 mGy および 107±12 mGy·cm であった.また,DLP-実効線量換算係数[3]より推定された実効線量
は,LPS 法で 22±4 mSv,SAS 法で 8.9±2.7 mSv,HPS 法で 1.5±0.2 mSv であった.
被検者における肺の吸収線量の推定値は,LPS 法で 110±10 mGy,SAS 法で 46±10 mGy,HPS 法で 7.0±0.7 mGy であった.乳房(女
性)の吸収線量の推定値は,LPS 法で 86±12 mGy,SAS 法で 32±7 mGy,HPS 法で 5.3±0.5 mGy であった.これらの値より推定された,
1 検査あたりの男性の肺がんの罹患に関する LAR は 1/900~1/19000,女性の肺がんの罹患に関する LAR は 1/380~1/7100,女性の乳がんの
罹患に関する LAR は 1/670~1/77000 であった(図 1~3)
.
図1 男性の肺がんの罹患に関する LAR
図2 女性の肺がんの罹患に関する LAR
図3 女性の乳がんの罹患に関する LAR
3. 結論
LAR の推定には不確実な要素が多いものの,肺がんや乳がんの罹患に関する LAR は,選択する撮影法によって異なり,被検者の年齢が
若いほど大きくなる傾向が確認された.冠動脈 CT 検査を施行する際には,特に若い女性の被検者に対する撮影法の最適化が重要である.
【参考文献】
[1]Matsubara K, Koshida K, Noto K, et al. Estimation of organ-absorbed radiation doses during 64-detector CT coronary angiography using different
acquisition techniques and heart rates: a phantom study. Acta Radiol 2011; 52(6): 632-637.
[2]BEIR. Health Risks from Exposure to Low Levels of Ionizing Radiation: BEIR VII, Phase 2. Washington, DC: National Academy of Science, 2006.
[3]Valentin J. Managing patient dose in multi-detector computed tomography (MDCT). ICRP Publication 102. Ann ICRP. 2007; 37(1): 1-79.
JSCT 2nd annual meeting, Abstract submission
High resolution abdominal CT-Angiography の新規注入プロトコル
-血管拡張剤を用いた血管描出能の改善-
西山徳深*,中川潤一*,星加美乃里*,寺見佳祐*,村上奈津紀*,高谷昌泰*,小林有基*
*
岡山済生会総合病院画像診断科
【背景及び目的】近年 CT-Angiography は多くの施設で診療に用いられている.造影方法も確立され再現性も良く有用な検査である 1).
しかし,造影剤の注入速度や注入ヨウド量の増加による画質の向上には限界がある.また,注入速度の上昇は注入時の血管外漏出のリス
クも高くなり安易に速度を高くすることはできない.加えて,近年の CT 装置は検査時間が短いため,最適な撮影タイミングで目的とする
微小血管を描出することは困難である.そこで,心臓の冠動脈 CT 検査で用いられている血管拡張剤ニトログリセリンを用いて体幹部 CT
-Angiography の血管描出能の向上を目的して有用性の検討を行った.
1 方法
腹部 CT-Angiography において血管拡張剤(ニトログリセリン)を使用した A 群と使用しなかった B 群での検討を行った.A 群は 23 例(平
均年齢 66.5/男女比 15:8) ,B 群は 26 例(平均年齢 71.9/男女比 13:13)である.画像検討は膵十二指腸動脈と下膵動脈の描出能,腹腔動脈
起始部から 200HU 以上の血管体積値の比較検討を行った.
CT 装置は Discovery CT750 HD (GE 社製)と Aquilion64(東芝社製)
,造影剤注入装置はデュアルショット GX である.撮影条件は,管電
圧 120kVp を用いて 0.625mm×64 列 Auto mA SD8.5GE)
,0.5mm×64 列/Auto mA SD10(東芝)
,造影剤注入条件は,700mgI/kg 23sec 注入と
した.血管拡張剤使用時はニトログリセリン錠剤舌下 5 分後に造影検査を行った.
2. 結果
膵十二指腸動脈の描出は,A 群は 100%,B群は 30%であった.下膵動脈の描出は,A 群は 83%,B群は4%であった.また,腹腔動
脈の体積は,A 群は平均 36.53cc,B群は平均 22.88cc であり,Cochran-Cox を用いた有意差検定において P<0.001 となり有意差が認められ
た.血管拡張剤を用いた CT-Angiography は,ニトログリセリンの末梢動脈の拡張作用により描出能が向上した.臨床において末梢の動
脈の描出向上は手術において大変有用である.また,注入速度を早くすることなく血管描出能が向上することは検査リスクの低減におい
ても大変有用である.
体積[㏄]
80
60
40
20
0
A
B
図 1 腹腔動脈のAB群における体積比較
3. 結論
血管拡張剤を用いた CT—Angiography は腹部の末梢血管まで描出可能となった.
【参考文献】
[1]
八町淳,寺澤和昌, CT 造影技術,東京:株式会社メディカルアイ,2013