Title 日本経済の輸入行動 : 低い輸入依存度の謎 Author(s) - HERMES-IR

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Type
日本経済の輸入行動 : 低い輸入依存度の謎
小島, 清
駿河台経済論集, 5(1): 55-108
1995-09
Departmental Bulletin Paper
Text Version publisher
URL
http://hdl.handle.net/10086/16759
Right
Hitotsubashi University Repository
日本経済の輸入行動
論
文
日本経済の輸入行動
一 低 い輸入依存度の謎 一
小
島
清
Ⅰ 課 題 1)
日本は 「資源小国」であ り 「
加工貿易立国」で発展 しなければならないか ら
輸入依存度 (
或いは輸入性向)は高い。 この輸入 をまかな うために輸 出振興 は
至上命令である-
「
輸出か死か」 とさえ言われた。 これが支配的な通説であ
った。
だが実際には,日本の名 目輸入依存度は極めて低 く,かつ,戦後一貫 して (2
回のオイルシ ョック時 を除 き)
傾 向的に漸減 し,1
9
9
3
年 には5.
7%,製品輸入が
増 した1
9
9
4
年 で5.
9
% とい う,驚 くべ き低 い水準に下がった。なぜ であろうか。
これは,米国や ドイツな ど他の先進国において輸入依存度が傾 向的に高 まって
いるの と,全 く対照的でさえある2
)
。
この低 くかつ漸減す る輸入依存度が近年構造的 とも見 うる大幅出超 を生み,
日本市場の閉鎖性,異質性 とい う非難3)を招 いている。輸入拡大は,かか る非難
を回避す るために も, いな 日本の厚生向上のために,果たさねばな らない優先
課題 となって きた。だがそれは小手先の規制緩和で実現で きるほ ど容易 なこと
ではない。低 くかつ漸減 して きた輸入依存度 とい う日本の輸入行動の原因を徹
底的に追求 し, その中か ら改善策 を見出さなければならない。考 え方 (
プ リン
シプル)の転換 を必要 とす る。 これが本稿 の課題である。
9
5
0
年代の1
2%台か ら1
9
9
0
年代 の 6%以下へ, 日本の (
名
先ず第 Ⅰ
Ⅰ節では,1
目)輸入依存度が低 くかつ逓減す る傾 向をもったことを指摘す る。 それは米国
や ドイツな どが逆の傾 向 をもったの と対照的である。 日本のは「
生産体系輸入」
であ るのに対 し他の先進諸国のは 「
需要体系輸入」であることが, この対照 の
原因であろうこ とが示唆 され る。
1
9
5
2
-1
9
7
3
)
,第 Ⅰ
Ⅰ期 (
1
9
7
4
-1
9
8
4
)
,第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期 (
1
9
8
5
第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
節では,第 Ⅰ期 (
-5
5-
駿河台経済論集
第 5巻第 1号
(
1
9
9
5
)
1
9
9
4
)の 3期に区切 った上で, 日本の産業構造,輸出構造そして輸入構造が多
様化 し高度化 してきたことを概観す る。「
商品特殊分類」 を用いた分析である。
「中間財に限る ミニマム輸入主義」が浮かび上が る。各産業の技術進歩による
産業別輸入依存度の低下 と,高い輸入依存度の産業 を相対的に縮小 し,低 い輸
入依存度の産業 を相対的に拡大 した (
産業構造の高度化) こととが, 日本経済
全体の輸入依存度 を低 くめたことが示唆される。
Ⅴ節に入って若干の計量分析が試み られる0第Ⅰ
Ⅰ
期(
1
9
7
4
-8
4
年のオイル・
第Ⅰ
ショック期)は不安定な傾向 しか示 さないので省 く。第 Ⅰ期 と第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期 では,相
)の大幅低落につれ名 目輸入依存度は低下傾向を示 し,実質
対輸入価格 (
Pm/P。
輸入依存度は逆に上昇傾向をもった。つ ま り輸入中間財の価格低下 とい う貿易
利益 を享受 しなが ら,加工貿易工業化が成功裏に進展 した。両期につ き輸入関
NPの変動に左右 されることが圧
数を計測す ると,実質輸入量の変化 は,実質 G
倒的であ り,価格考慮による輸入選択は無視 しうる程少いことが分かる。 これ
が 「
生産体系輸入」たることの証拠である。中間財輸入であるか ら生産に一年
先行 して輸入が決定 されるとい う関係 も証明され る。
第Ⅴ節では,本稿の主題 ではないが, 日本の輸出行動の計量分析 を補足 した。
ここで強調 したいのは,世界の需要に左右 される 「
需要体系輸出」ではな く,
日本の生産の発展 ・充実 と国際競争力強化によって決 まる 「
生産体系輸出」で
あったという点である。
0
%台
第ⅤⅠ
節では,戦前の 日本の輸入依存度の トレン ドを簡単に回顧す る。2
であったものが戦後半分に低下 した原因が,戦時中の統制経済, ミニマム輸入
主義にあること,その考 え方 (
プ リンシプル)がご く最近 まで続いてきたこと
を明 らかにする。
第V
I
l
節では,一次産品輸入対工業品輸出 という 「
垂直貿易」か ら,工業品相
互間の 「
水平貿易」へ移 らねばならなかったのに,それがいまだ不十分 であ り,
したがって 日本の輸入は最適 (
オプティマム)の水準に達 していないことを,
「
産業内貿易度」の分析 を通 じて明らかにす る。
か くて, 日本は ミニマム輸入主義 をあらためて,オプティマム輸入水準にま
で高めるべ く,規制緩和など市場開放 を積極的に推進す る必要があるとの結論
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
節で到達す る。
に,第T
-5
6-
日本経済の輸入行動
Ⅰ
Ⅰ 輸入依存度の長期趨勢
図 1に, 日本の名 目輸入依存度 (
通関輸入円額/GNP円額- ともに時価-)
仏
)
9
5
2
-9
4
年にわた り描かれているOその トレン ドラインは,次節の表 1の
が1
のように,決定係数は R2-0.
3
2と低いが,年0.
1ポイン トづつ漸減す る傾向値 を
示 している。 この趨勢的低下傾 向に注 目すべ きである。
0
%台か ら,戦後初期 には
大 ざっばに言 うと, 日本の輸入依存度は,戦前の2
1
2
%台に半減 した。 2回のオイル ・ショック (
1
9
7
3
年 と1
9
7
8
年)による急上昇
9
9
3
年には5.
7
%,1
9
9
4
年には5.
9
があるが,それを除 くとトレン ド的に逓減 し,1
%の低い水準に達 したのである。
これに比べ図 1に示すように,米国の輸入依存度
(
FOB建て輸入額/GDP)
は,1
9
5
9
年の5.
0%か ら,9
4
年の1
2.
2
%へ,ほぼ一直線的に漸増 している(
傾向
2
1
1
,R2-0.
9
0
4
8
)
。 日本の輸入依存度が漸減 トレン ドをもったのに,
値 は+0.
米国のそれは一貫 した漸増傾向を示 しているという対照性が見出される。
1
9
5
0
駿 河台経済論集
第 5巻第 1号 (
1
9
9
5
)
分母が 日本のは GNPであ るに対 し米国のは GDPである (また 日本の輸入
は CI
F建てであるに対 し米国のは FOB建てである)とい う違 いがあるので,厳
9
8
5
年 で 日本の輸入依存度が9.
7
%であるのに比
密な比較は許 されない。だが1
0.
6%になって, それ まで 日本の方が高か った傾 向が逆転 し,
べ,米国のそれは1
1
9
9
4
年には 日本のは5.
9%で米国の1
2.
2%の半分以下 とい う低水準に達 した。こ
れは注 目に値す る驚 くべ き事態である。
9
2
9
年5.
7
%,3
9
年3.
7
なお米国の戟前の輸入依存度は,対 GNP比であるが,1
%,4
9
年3.
8
% とい うきわめて低 い水準であった。
米国の戦後輸入依存度のかか る上昇 トレン ドを詳細に吟味す る余裕 はない。
9
3
0
年代 の保護主義か ら一転 して,戦後は数 回の
だが それが第 1に,米国が1
GATT ラウン ドを通 じ,関税 引下げその他の貿易 自由化 を推進 したことに基づ
くことは明 らかである。
第 2に,米国多国籍企業
(
MNC)の活動が活発にな り,海外調達輸入 を増加
させ た。それは行 き過 ぎな程 に行 われ,国内生産の空洞化 をもたらす との懸念
さえ生んだ。
米国の輸入依存度が戦後 このように上昇 したことは世界諸国, とくに 日本や
東アジア諸国, を大 いに稗益 した。米国が ビッグ ・アブソーバー (
外国品吸収
国)になった。 これがあったか らこそ 日本や束アジア諸国は急速な輸出主導型
経済発展 を成功 させ ることができたのである。
米国に代 って 日本が ビッグ ・アブソーバーになるべ Lと言われ る。米国の半
GNP)規模 であ り, しか も 2分の 1程度の低 い輸入依存度にある 日
分の経済 (
本に とっては,容易 ならざる課題 である。輸入拡大の基本施策 を考案せねばな
らない所以である。
もう 1つ注 目すべ き対照 を挙げてお こう。石油の輸入は, 日本経済全体 に と
っての必要度の増加 ならびにオイル ショックなどによる価格急変によ り, 日本
の輸入依存度に大 きな振乱的影響 をもった。 この石油輸入 を控除 したノンオイ
時価)に対比 したノンオイル (
名 目)輸入依存度
ルの輸入額 (
時価)を GNP (
を算出 してみ ると,図 2Aの ようになる。その トレン ドライン (
1
9
6
3
-94年)
は-0.
1
の漸落傾 向をもつ きれいな直線になる (
決定係数 も R2-0.
71で高い)
O
ここで全輸入依存度の時系列傾 向値 (
-0.
0
9
6
7
) とノンオイル輸入依存度の
それ (
-0.
0
9
51
)とに殆 ん ど差がな く, ともにお よそ-0.
1であることに注 目L
-5
8-
日本経済の輸入行動
6
5
7
0 ノンオイル名
7
5
8
0 存度一8
5
図 2A
目輸入依
日本一
(
%)2
1
2
l
3
2
4
8
7
0
2
6
5
9
1
l
9
0
n- (
仝輸入額一鉱物性燃料 )
÷GNP
n
n
bu
1
9
5
81
9
6
11
9
6
41
9
6
71
9
7
01
9
7
31
9
7
61
9
m,
7
91
8
21
9
8
51
9
8
81
9
91
出所)R.
W.
D
o
r
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i
,"
Th
eC
a
s
ef
orB
i
l
at
e
r
al
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s
s
h
1
9
9
4
年
駿河台経済論集
第 5巻第 1号 (
1
9
9
5
)
たい。このことは,石油輸入価格の激動は挽乱要因であ り,決定係数 (
相関度)
を低めたが, 日本の輸入依存度の長期的低下傾 向は,石油輸入に影響 されるこ
とな く,確定 していたことを物語 るのである。
これに対 し,西 ドイツのノンオイル (
名 目)輸入依存度は,図 2Bのように,
9
5
8
年の1
2%か ら1
9
9
0
年の2
1
%へ上昇す るという, きれい
トレン ドラインは,1
な直線になる。なおこの図は, ドーンブッシュ (
図の注)が 日本の と対応 させ
なが ら示 したものである。その傾向値は明示 されていないが, ノンオイル輸入
依存度における日本の漸減傾 向 と, ドイツの漸増傾 向 とい う対席は疑 う余地が
ない。
く
輸入依存度の通観)
NPに対す る割
国際比較によると貿易依存度つ まり輸出と輸入の合計額の G
1
)
国の規模 (
これを何で計 るかが問題であるが)
合は,次のような傾 向をもつ。(
が大 きいほど貿易依存度は低 くなる (
逆に国の規模が小 さいほど貿易依存度は
高 くなる)傾 向が見出される。たとえば米国のように国の規模が大 きいと,国
内で各種の分業 を深化できるし,不足す る資源 も少ないか らである。逆にシン
0
0万人)ではそういかない。
ガポール (
人 口3
(
2
)
国民経済全体の生産性 を高め るためには比較生産費に従 って国際分業 を進
め,或いは不足資源 を補充 し,貿易利益 を実現す るのがよい。 また生活水準が
高 くなれば多様 な商品 (
外国品を含め) を需要す ることになる。 このため経済
発展が進むほ ど貿易依存度は高 くなる傾 向がある。
N,千人)で表わし,経済発展
次の計測が興味深い4
)
。いま国の規模 を人口 (
NP(
y, ドル)で表わす と,貿易依存度 (
6)は次のようにな
度 を一人当 りG
る。
l
n♂-4.
07
1-0.
21
5
1
nN+0.
0
6
0
7
1
ny
(
6.
9
1
)
(
2.
2
5
)
打-0.
58
3
F-2
7.
0
3
(
カッコ内は t値)
NPが高けれ
この結果は,国の規模が小 さければ小 さいほど,そして一人当 りG
ば高いほど貿易依存度は高 くなることを示 している。
^
6)は3
8
%で,実際
「
上武の N とyに 日本の数値 を代入 してえられる計測値 (
-6
0-
日本経済の輸入行動
2
3
%) を大 きく上回っている。すなわち日本の貿易依存度は,その規模 と
値 (
)
生活水準か ら予測 される水準 を大 きく下回るのである。」5
貿易依存度3
8
%のほぼ半分に輸入依存度はなるべ きだとすれば, 日本の輸入
8-1
9
%程度でなければならない とい うことになる。だが実際値は図
依存度は1
1のように1
0
%以下である。 日本の輸入依存度が過小ではないか,他の先進諸
国 とくらべて異質ではないか という疑問が当然に発せ られることになるのであ
a)
人口は 1億 2,
0
0
0
万人 と多いが,資源不足国であるか ら輸入依存度
る。つ まり(
b)
一人当 りG
NPは 2万 ドルを越 える米国並
はもう少 し高 くなるはずである。 (
みの高所得国になったか ら, これ も輸入依存度 を米国並みない し米国以上に高
くして もよいはずである。 この二点を追求す ることによって, 日本の低輸入依
存度の原因を明 らかにす ることができそうである。
3
)
各種の貿易 (
輸入)自由化 (
欧州共同体 ECのごとき地域的経済
もう一つ,(
統合 を含め)は,除去 された貿易障害分だけ輸入品を廉価にす るので,国内生
産 よりも輸入の成長率 を高め,輸入依存度 を引 き上げる。事実,貿易 自由化が
GATTの貢献などにより急進展 した1
9
5
7
-7
3
年では,世界輸出の成長率は8.
8
7
%(
複利)に達 し,世界生産の成長率 5.
8
4
%の1.
5
2
倍になった6
)
。それだけ世界
各国 とも輸入依存度 を高めえた。既に見たように,米国や ドイツではそうなっ
たのである。なお米国の戦前の輸入依存度が 3%程度 と低水準であったのは
1
9
3
0
年代の高関税政策の結果であった。
これに対 し,戦後 日本の輸入依存度は,既述のように,長期的逓減傾向をも
った。 日本でも戟後かな りの貿易 自由化が推進 されたにもかかわらず,他の先
進諸国 とは逆の トレン ドになったのである。なぜであろうか という問題が当然
に提起 されるのである。
く
生産体系輸入)
本稿のね らい,つ まり基本命題はこうである。すなわち 「
需要体系輸入」 と
「
生産体系輸入」の二種が区別 され うる。欧米の先進国経済では,生活水準 (
求
いは厚生) を高めることが 目標 とされる。生活水準が高 まるに応 じてすべての
財 (
および余暇)への需要が増大 し多様化す る。外国品が割安 な限 り国産品 と
差別す ることな く,その輸入が増加す る。貿易 自由化が進めば輸入増加が促進
され る。つ まり,国民経済全体の需要体系が支配的要因 となって輸入が決 まる
-6
1-
駿河台経済論集 第 5巻第 1号 (
1
9
9
5
)
のである。それ故, これを 「
需要体系輸入」 と名づけよう。 これは貿易理論の
伝統的かつ支配的な見解であるO これはまた 「
先進国 (
成熟)型開放経済」で
ある。
これに対 し日本経済では,生産体系 を補完するのに必要不可欠な外国品に限
りミニマム量 を輸入す るとい う方針であった。 これを 「
生産体系輸入」 と名づ
けよう。このため,産業構造が軽工業か ら重化学工業へ, さらに- イテク機械
産業へ と高度化 し多様化す るにつれて輸入依存度は低下 して きた。 またそれ故
に貿易 自由化が進展 して も反って輸入依存度が逓減 してきた。 こういう低 くか
つ逓減傾向をもつ 日本の輸入依存度の特色 を以下で究明 してみたい。 この 「
生
産体系輸入」という特色は, 日本経済だけでな く韓国,台湾をは じめ とす る「
追
c
a
t
c
hi
ngup)経済」に共通す るものがある。それ故 「
追いあげ型開放
いあげ (
経済」の輸入 ビヘイビアだ と言ってよい。
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ 産業 ・貿易構造の変動
く
実質輸入依存度)
Y は1
9
5
2
-9
4
年の全期 間にわたって年既述のように,名 目輸入依存度 M/
0.
1
のスロープをもって傾向的に低下 している。だが実質輸入依存度 m/
yで見
ると逆であって,依存度は傾向的に高まっているとい う指摘がある。
ここで実質輸入依存度 m/
yとい うのはこうである。名 目(
時価)輸入額 M を
つ ま りm輸入物価指数 Pmでデフレー トした もの を実質輸入額 m とす る (
M/
Pm)
。他方,名 目 (
時価)GNPたる Y を,GNPデフレー ター指数 P。
でデ
つ まりy-Y/
P。
)。そして m を
フレー トしたものを実質 GNPたる yとす る (
yで割った ものを実質輸入依存度 m/
yとみなすのである。したが って,M/
Yと
m/
yの間に帝離が生ず るのは相対輸入価格 P
m/P。
の変化に基づ くわけである。
m-M/
P。は輸入の金額でな く数量の変化 を示す もの と解釈 される (
yについ
yは数量的 (
それを実質 (
r
e
al
)という)輸入依存度
ても同様)
。 したがって m/
を示す と言われる。
そこで,たとえば(
1
)
名 目の M/
Yが低 くなっても実質の m/
yは高まっている
か ら, 日本は閉鎖的ではない (
正 しくは閉鎖性 を強めたわけではないと言 うべ
きであるが) (
2)
輸入は数量的には増加 しているか ら,大幅黒字是正の傾向が生
0
み出されている。 このように通産省 などが主張す る (
後の製品輸入比率の上昇
- 6
2-
日本経済の輸入行動
問題 とならんで)
0
だが数量的輸入依存度の上昇が何 を意味す るかについては種々の疑問が もた
れ る。問題 はやは り名 目輸入依存度 M/
Y にある。本稿 ではそれ を中心に据 えて
検討 を進めたい。ただ し(
1
)
M/
Y に しろ m/
yに しろ,その水準が きわめて低 い
ことこそが,閉鎖的ではないか と批判 され る原因である。(
2)
貿易収支不均衡 は
あ くまで金額の問題であって,数量の問題 ではないか らである。
9
8
5
年(
基準年)の9.
7
%か ら1
9
9
4
年の5.
9
最近の動向では,名 目輸入依存度は1
%に低下 した。実質輸入依存度 は同 じ く9.
7
%か ら1
3.
8
%へ上昇 した (
付録表
参照)。 それは相対輸入価格が1
0
0
か ら4
3.
2
-輸入品が半分以下 に安 くなったか
3.
8
% とい う輸入依存度は (
名 目の5.
9
%はい うまで もな
らである。だが実質で1
く)なお 日本市場の閉鎖性; 異質性 を示 していると言 えな くはない。
Y-m/
yとせ ざるをえない。最近指数 の基準年 は本稿
基準年においては M/
9
8
5
年か ら1
9
9
0
年へ変 えられた。 そ うす ると1
9
9
0
年の輸入依存度は名
で用いた1
0
% とい うことになる。 また,1
9
9
4
年 には名 目は5.
9
%に低下 した
目も実質 も7.
が,実質は7.
5
%に僅かに上昇 したことになる。これは名 目で も実質で も低 くす
ぎる輸入依存度だ と言わざるをえない。
基準年が変わると名 目と同値 に実質輸入依存度 も変 わる(
傾 向的に低下す る)
とい うことになる。 このことは1
9
5
2
-1
9
9
4
年 といった長期 にわたって M/
Yと
m/
yの関係 を検討す るのは無理が ある或 いは無意味であ る とい うこ とを意味
す る。 そこで 1つの構造変動 と次のそれ とにはさまれた構造安定期 に区切 って,
その中で検討す るのが有意義 であるとい うこ とになる (
次節で試み るように)0
そうい う構造安定期の中においてであるが,名 目依存度の変化の原因を明 ら
かにす るもの として (
そ うい う意味においてのみ),実質輸入依存度 と相対輸入
価格が意味 をもつ もの と考 えたい。
た とえば,バルキー な鉄鉱石 ・粘結炭の輸入 シェアが減 って銑鉄のそれが増
す とか,綿花の輸入シェアが減 って衣類 とか冷蔵庫のそれが増す といった輸入
構造の大幅変動があった場合 に,輸入物価指数並 びにそれ を用いた実質輸入数
量が何 をあ らわすのか,甚だ不明確 である。む しろ輸入構成が一定のパ ター ン
をもつ構造安定期 においてのみ,輸入物価指数 と実質輸入数量の変化傾 向が意
味 をもつ もの と解 した方が良いのである。
A)
に見 られ るように,1
9
5
2
-1
9
9
4
年 の全期 間につ いては,M/
Yは年 1
表 1(
- 6
3-
駿河台経済論集
第 5巻第 1号 (
1
9
9
5
)
0.
1
0
の下降傾 向をもち,逆に m/
yは+0.
11の上昇傾 向 をもった。その帝艶は相
Pm/
P。の -2.
1
6の低下傾 向によって説明できるように見 える。だが
これは決定係数 R2
が低 いこ ともあって,一般的傾 向 として受けいれない方が よ
対輸入価格
いと思われ る。
く日本貿易の発展略史)
次の 3期 に分 けて検討す ることに したい。
第 Ⅰ期
1
9
5
2-7
3 重化学工業化期
第Ⅰ
Ⅰ
期
1
9
7
4
-8
4 石油危機不安定期
Ⅰ
Ⅰ
期
第1
1
9
8
5-9
4 ハ イテ ク産業化期
第 Ⅰ期 は,終戦か ら1
9
5
8
年頃までの戦後復興期か ら始 まる。戦後貿易 は1
9
49
表 1 時系列傾 向値 (
輸入)
仏) 全期 間 t
-1
9
5
2
-1
9
9
4
名
(
M目輸入依存度
-時価輸入額 ,Y-時価 GNP)
実質輸入依存度
(
m-M/
Pm,y-Y/
Pd
)
(
B) 第 Ⅰ期
R2
-0.
3
2
4
0
3
m/
y- 0.
1
1
1
4
4
6
t
+ 8.
0
3
8
8
7
R2
-0.
5
8 4
Pm
/
Pd
ニー2.
1
6
2
5
9
4
t
+1
4
5.
3
6
0
7
9
相 対輸 入価 格
名 目輸入依存度
M/
Yニー0.
0
9
6
7
3
8
t
+l
l.
8
5
6
1
4
M/
Yニー0.
1
6
8
4
3
5
t
+1
2.
1
2
3
3
7
m/
y- 0.
2
7
7
0
1
8
t
+ 6.
3
7
7
9
実質輸入依存度
Pm
/
Pd
ニー5.
2
6
7
4
7
6
t
+1
7
3.
相 対輸 入価 格
(
名 目輸入依存度
I
M t
-1
9
7
4
11
9
8
4
C) #I
相対 輸 入価格
名E
l
(
輸入依存度
功 第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期
t
=1
9
8
5
-1
9
9
4
R2
-0.
6
1
4
1
4
6
2
R2
-0.
8
9
8
9
5
2
2
6
2
3
3
R2
-0.
9
2
3
0
5
0
M/
Yニー0.
0
7
1
8
1
8
t
+
m/
y=-0.
1
8
5
4
実質輸入依存度
7
7
5
0
0.
6
1
0
3
6
3
t
1
9
5
2
-1
9
7
3
R2
-
1
3.
4
1
0
9
0
R2
-0.
0
2
6
9
4
0
1
8
1
8
1
t
+
8
9
4
5
4
5
5t
十6
1
6.
2
8
3
6
3
Pm/
Pd
- 1.
2
R2
=
-0.
5
0
2
4
8
7
M/
Yニー
.
0
8
9
2
3
3
実質輸入依 存度
0.
2
1
9
3
9
3
t
+1
5.
3
2
6
6
6
R2
-0.
3
1
0
3
3
3
相 対輸 入価格
7
+2
1
Pm
m
/
y
3
8
4
8
4
8
t
2.
9
4
6
6
6
/
P
d
ニー0
3.
9
9
2
7
2
R2
-0.
8
1
8
9
0
8
日本経済の輸入行動
5日に 1ドル -3
6
0円 とい う一本為替 レー トが設定 されたことか ら始 ま
年 4月2
った と見て よい7
)
。 その前後 に土地改革, ドッジ ・ラインによる財政引締政策,
シャウプ税制 な ど,戟時体制か ら市場経済化への転換がはか られた。
復興のため輸入需要が大 きく,逆に輸 出生産力が不足 していた(
僅かな繊維 ・
0
億
雑貨の輸出 しかで きなかった)ため大幅 な入超に陥った。そのギャップは2
ドルに及ぶ米国の対 日援助によって埋め られた。1
9
5
0
-5
1
年の朝鮮動乱が 日本
に特需 をもたらしたこ とが幸 した。 これ を契機に, 日本に重化学工業化 を許す
9
5
9
年頃か ら出超に転ず るよ
ように対 日政策が転換 したことの意義 は大 きい。1
うになった (
オイル危機時に入超に陥った とい う例外があるが)0
ここで記憶すべ き重要 なポイン トは, この戦後復興期の貿易赤字 (
国際収支
,
の壁)の故 に,輸入は必要不可欠な食料 と原燃料 に限るとい う 「ミニマム資源
輸入」 とい う原則- それは1
9
4
0
年の戦時統制体制の延長で もあるが-が立て ら
れたことである。
1
9
4
6
-4
8
年)は有名 であるが本格的重化学工業
石炭鉄鋼 の 「
傾斜生産方式」(
9
6
0
年代 に入 ってか ら,鉄鋼 と基礎化学工業の急拡大が成功 した。その結
化 は1
莱,鉄鋼,造船,化学肥料次いで電気機器, 自動車な ど次つ ぎと花形産業が続
捻花的産業化」 とか 「フルセ ッ ト工業化」 と言われ る。問題 は,製
生 した8)0 「
造 中間財 と言わず製造消費財のすべてを,輸入代替生産化 し, 自給化 し,やが
て輸出化す るとい う 「
輸入削減志向工業化」 (
フルセ ッ ト工業化 と同義だが)と
い う原則が貫ぬかれたことである。 これが今 日要望 され る「
工業品間水平貿易」
或 いは 「
産業 内 (
i
n
t
r
a
i
n
d
us
t
r
y)分業」-の道 を長 くとざす ことになった0
1
9
7
4
-1
9
8
4
年)は 2回のオイル ・ショック (
1
9
7
3
年1
0月 と1
9
7
9
年1
第Ⅰ
Ⅰ
期 (
月)に撹乱 された 日本経済の転換期 であった。原油価格は第 1次オイル ・ショ
2ドルに 4倍化 し,第 2次オイル ・ショックで
ックで,バ レル当 り3ドルか ら1
1
3ドルか ら3
4ドルへ さらに2.
5
倍化 した。石油だけでな く他の一次産品 (
市況商
,「ミニマム資源輸入原則」の見直
品)も大幅 な価格変動 を経験 した。 このため
しが必要 とされた。
,
1)「
省エネレギー化 」 「
脱石油」
, もっと一般的に 「
脱資源」がはか
そこで, (
られた。 (
2)
そのため一方では,鉄鉱石 ・粘結炭の輸入 を減 らし銑鉄やスクラッ
プの輸入への転換がはか られた。 ボー キサ イ トや鋼硬石の輸入か らアル ミナや
鋼 インゴッ トの輸入に転換 した。一般的に言 うと粗原 料の輸入 を減 らし加工半
-6
5-
駿河台経済論集 第 5巻第 1号 (
1
9
9
5
)
製原料への転換 であ る。 これが全体 の輸入依存度 を減 らす一因になった。(
3
)
技
術進歩によ り原燃料投入 (
原単位係数) を低下 させ,付加価値率の上昇 をはか
4
)
輸入中間財 の必要度の小 さい産業への構造変動が 目ざされた。素材産
った。(
業か ら加工組立 (
機械)産業への高度化 である。
1
98
5-1
9
9
4
年)では 「
知識 (
kno
wl
e
d
ge
)集約型産業化」或いは 「
第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期 (
イテク化」が結実 しつつある。マイクロエ レク トロニ クス革命,或いは 「
マイ
コン革命」を起点 とす る9
)
。半導体が 「
新 しい産業の コメ」とな り,各種機械産
業だけでな く,広 くすべ ての ビジネス運営に活用 され,省力化 ・ロボッ ト化 を
もた らしつつ ある。
く
輸 出構造の変化〉
産業構造の変動か ら説 き起 こすのが順序であるが,その余裕 はない。 それは
当然に輸出構造の変化 に結実す るか ら,輸 出構成比の変化 を検討す ることに し
よう。表 2が これである。
1
96
4
年か ら,輸出入について 「
商品特殊分類」なる統計が 『
外国貿易概況』
(日本関税協会)に公表 されている。表 2の Bシ リーズが これである。1
9
6
3
年
以前については,一橋 グループの 『
長期経済統計』 を利用 した。 これが,Aシ
9
6
4
年 と,Bシ リーズの1
9
6
4
年 とで若干の帝敵が
リー ズである。Aシ リーズの1
認め られ る。分類の相違か ら来 るものでやむ をえない。
(
1
) Aシ リー ズの一次産 品,Bシ リーズの食料他 (
食料及びその他 の直接消
費財)の輸 出シェアは, きわめて小 さ くかつ漸減 している。1
9
9
4
年では0.
5%に
す ぎない。
(
2) B シ リー ズの工業用原材料 は,粗原料,鉱物性燃料 (
石油,天然ガス,
石炭),化学工業生産 品,金属 (
主に鉄鋼)
,繊維品 (
原料)か ら成 るが,大 き
いのは金属 と化学品である。 この工業用原材料 は1
9
6
4
年の4
5.
0
% とい うシェア
が示す ように,第 Ⅰ期 の リーディング輸出品であったこ とを物語 っている。 し
か しそれは1
99
4
年の1
7.
2%に まで低下 した。
(
3
) Aシ リーズの 「
繊維」は1
9
5
2
年3
5.
3
%,1
9
5
8
年3
0.
5
%で,戦後復興期 の
9
6
4
年には1
9.
8
%-敬
リーデ ィング輸出品であった ことを示す。 しか しそれは1
「
機械」のシェアが1
9
6
4
年には3
2.
2
減 している。重化学工業品に とって代 られた (
%に急増 しているこ とか らも分か るように)
0
-6
6-
日本経済の輸入行動
表 2 分類別輸出構成比
(
分類別輸出額/捻輸出額)%
Aシ リー ズ
歴年
(
1
卜次産品
(
3
)
機械
(
4
)
繊維
3
5.
3
1
9
5
2
4.
5
9.
8
1
9
5
8
4.
5
2
3.
8
1
9
6
4
3.
歴年
4.
8
1
9
7
3
1
9
7
4
依 目輸
存度
出
9
1.
8
1
0
0.
0
7.
6
9
3.
2
1
0
0.
0
9.
0
9
5.
5 1
0
0.
0
7
)
消費財
製 造 8
)
(
工業品
1
)
+(
7
8.
3
3
0.
5
2 (
3
2.
2 (
1
9
.
8
(
1
)
食料他
2
)
工業用 3
)
資本財
4
)
繊維
原材料 (
機械類)
製品
1
9
6
4
(
8
)
工業品 捻 輸 出 名
4
5.
0
2
5.
7
2.
3
3
4.
2
1.
5
4
1,
4
(
5
)
家電 (
6
)
乗用車
機器
5.
3
4.
5
1.
2
3
7.
0
1.
3
5.
6
7.
2
3
5.
1
0.
8
4
2
2.
9
4
8.
6)
2
4.
8
6
1.
8
1
0
0.
0
8.
3
1
0
0.
0
8.
9
1
9
8
4
0.
9
2
1.
7
4
6
.
3
6.
3
2
0.
0
5
5.
1
1
0
0.
0 1
2.
1
1
9
8
5
0.
8
2
0.
4
4
6.
5
8
0.
5
6
4
1
3.
8
1
4
5
2.
9
3
1.
1
2
9
4
7
7.
6
6
2
3.
4
1
0
0.
0 1
1
9
8
6
0.
7
1
8.
5
4
8.
6
4
0.
3.
0
1
5.
8
3
0.
9
7
9.
1
9
8
7
0.
7
1
8.
2
5
1.
1
0.
4
2.
4
1
5.
1
9
8
8
0.
6
1
8.
5
5
2.
8
0.
6
2
8.
7
7
9.
8
1
0
0.
0
1
9
8
9
0.
6
1
8.
1
9
9
0
0.
6
2
1
7.
6
1
9
9
1
0.
5
1
9
9
2
1
9
9
3
1
9
9
4
5
.
0
1
0
0.
q 1
0.
5
9.
5
3
2.
0
1
4.
6
2
6.
6
7
9.
4
1
0
0.
0
9.
1
4.
3
5
0
0.
3
1.
8
9
1
1
4.
4
2
5
2
6.
1
7
9
5
8
0.
1
1
0.
0
0
9.
5
4
1
7.
5
4.
6
0.
2
2.
0
1
4.
2
2
5.
6
0
9.
7
0.
5
1
7.
2
5
5.
4
0.
3
1.
8
1
4.
3
2
5.
1
8
0.
2
5
1
0
0.
0
9.
3
0.
5
1
7.
0
5
7.
6
0.
2
1.
6
0.
5
1
7.
2
6
0.
1
0.
2
1
1
3.
0
2
3.
0
8
0.
6
1
0
0.
0
8.
5
.
2
.
3
l
l.
3 2
0.
11
8
0.
2 1
0
0.
0 , 8.
6
出所 )Aシ リー ズ :山津逸平 ・
山本有造 r
貿易 と国際収支
』
長期経済統計
4,東洋経済新報社
BシB
リシ リー ズ :E]本関税協会
『
外国貿易概況』各年
1
9
7
9
製品) と耐久消費財か
ー ズの 「
製造消費財」
ら成 る。 さ
とい うカテゴ リーは,非耐久消費財 (
主に繊維
用車,二輪車
らに耐久消費財 は,家庭用品,家電機器,乗
駿河台経済論集
第 5巻第 1号 (
1
9
9
5
)
と同 じ運命にある。
(
4
) Bシリー ズの家電機器は,第 Ⅰ期後半か らシェアが増 し1
9
7
3
年に5.
6%の
9
8
5
年の4.
1
% まで高いシェアを維持 したが,以降漸落 し,1
9
9
4
最高に達 した。1
年には1.
3%にまで後退 している。
9
6
4
年
家電機器に とって代 って花形輸出品におどり出たのが乗用車である01
2% と低 くかったシェアが,1
9
7
3
年の7.
2%に急増 し,1
9
8
6
年の1
5.
8% とい
に1.
9
9
4
年の1
1.
3
%にまで漸落 している (
これは米国
うピー クに達 した。その後は1
E.
R.などの輸入規制に基づ く)。
の強要 した Ⅴ.
工業消費財の中身に以上のような変化が含 まれるが,製造消費財合計 として
9
6
4
年の2
2.
9%か ら漸増 し,1
9
8
5
年の3
1.
1
%の ピー クに達 し,その後 1
9
9
4
は,1
年の2
0.
1
% まで低落 した。 この製造消費財に とって代 ったのが,次の資本財の
輸出シェアの増加 である。
(
5) B シ1
)-ズの資本財 とい うのは,一般機械,電気機器,輸送機器の 3種
の機械類か ら成 る。ただ し家電機器 と,乗用車および二輪車類 を耐久消費財 と
9
6
4
年の資本財輸出シェアは2
5.
7
%であって,A シリ
して除いたものである。1
2.
2
% より小 さいが, これは機械類の一部 を耐久消費財に移
ーズの 「
機械」の3
したか らである。
9
6
4
年の2
5.
7
%か ら1
9
7
3
年(
第 Ⅰ期末)に3
7.
0%に,1
9
8
4
資本財のシェアは,1
午 (
第Ⅰ
Ⅰ
期末)に4
6.
8
%へ と急増 した。第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期 に入っても増加 を続け1
9
9
4
年に
0.
1
%に達 している。つ まり工業消費財か ら資本財-の輸出構造の高度化が
は6
Ⅴ期において進展 しているのである。
第Ⅰ
(
6
) 結局, 日本の輸出は,繊維製品-工業用原材料 (
鉄鋼 など)一家電機器
-乗用車-資本財 といった順序で多様化 し高度化 して きた。
(
7
) しか し名 目輸出依存度 (
通関輸出額/時価 GNP)は,1
9
5
2
年の7.
6%か
9
8
4
年の1
3.
4
%の ピー クに達 したものが,その後は傾向的に漸落 し,
ら上昇 し,1
1
9
9
4
年には8.
6%に低 くなっている。それに もかかわらず第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期に入って構造的
大幅出超に陥っている。何故であろうか。輸入 ビ- イビア と対照 させて深 く検
討 しなければならない問題である。
く
輸入構造の変動)
産業構造 と輸出構造の多様化 ・高度化につれ輸入構造 も当然に変化 した。表
-6
8-
日本経済の輸入行動
3aが これ を示 してい る。 この輸 入構成 比 (シェア)変化 につ いて次 の 4点 を
指摘 してお きたい。既述 の よ うに Aシ リー ズ とBシ 1
)- ズでは分 類の カバ レー
ジが異 な るため, シェア値 に若干の喰 い違 いが あ る。 そ こで以下 では Bシ リー
ズに基 いて主 に考察 し,Aシ リー ズは参考 に入れ るこ とに とどめ る。
表 3a 分類別輸入構成比 (
シェア)
(
分類別輸入額/総輸入額)%
Aシ リーズ
歴年 (
1
)
食料
帆 (
2
)
原料
粗 (
3
)
石炭
石油
(
5
)
機械
1
9
5
2 2
7.
65
8.
0 l
l.
5
4.
7
(
7
)
繊維
P
E
H
l
F
l
u 総輸入
1
9
5
8 1
5.
76
0.
0 1
6.
15
5.
2 1
7.
7
1
9
6
4 1
5.
9
(
1
2
)
工業
l
コ
l
l.
3
1
2
0
0.
6
1
3.
31
0
0.
0
7
4
0.
2
8
7
0
0.
3.
61
0
Cシ リ
歴年 B
(
1
シ
)
食料
リーズ
(
2
)帆 (
3
)
原油 一次晶
2(
4
)
加工 (
5
)
資本 (
6
)
中野 (
7)
繊維
製品 (
8
)
家電 (
9
)
乗用
辛 (
1
0
)
製造 (
l
l
)
工業品-ズ
.
1
9
他
原料
+
1
)
(
+
3
)
(
原料
財
l
卜
(
5
)
汁 0.
機器
費
財 1
(
5
)
+
0
0
)
(
1
2
)
製品
6
4 2
0
.
4 3
5
.
4 l
l.
8(
6
7
.
6)1
9
.
6 1
0
.
6l
9
7
.
8
2 0
0 0.
3 消
1
.
6
2
.
2
1
9
7
3 1
8.
12
8.
7 1
5.
76
2.
52
2.
8 8.
39
3.
6 1.
9 0.
1
1
9
7
4 1
4.
9 2
0,
73
0.
46
6.
02
2.
3 7.
0 9
1
9
8
4 1
3.
0 1
2.
42
8.
85
4.
2
8.
71
0
0.
0
0.
4
5.
6 1
3.
93
0.
61
0
0.
0
5.
3 1.
7 0.
2 0.
3
4.
2 l
l.
22
3.
71
0
0.
0
2
0
1
9
8
5 1
3.
11
4
3
2
9 1.
6
1 0.
3
2.
2 2
6.
75
2.
03
1.
0 8.
,
99
1.
8 0.
4
4.
3
2
6
9
8
0
0.
0
91
3.
82
3
0.
91
1
9
8
6 1
6.
0 1
2.
4 1
5.
44
3.
83
1.
0 1
0.
58
5.
3 2.
6 0.
2 0.
8
7.
3 1
7.
84
1
9
8
7 1
5.
4 1
3.
4 1
3.
8 4
2.
63
1.
9 1
0.
9 8
5.
4 3.
5 0.
3 1.
4
1
9
8
8 1
6.
11
3.
6 1
0.
1ノ
3
9.
83
2.
3 l
l.
98
4.
1
9
8
9 1
5.
11
3.
3 1
0.
23
8.
6
1.
81
0
0.
0
1
0.
52
1.
44
4.
11
0
0.
0
0 3.
9 0.
6 1.
6 1
2.
12
4.
04
9.
01
0
0.
0
1
9
9
0 1
3.
7 l
l.
4
1.
7 1
2.
68
9 4.
5 0.
7 2
1.
9
3.
82
6.
0 1
3.
43
8.
13
0
1
4
0
2.
2
0
5
6 1
4
6
8
65
0.
31
0
0.
0
1
9
9
1 1
4.
7 1
0.
4 1
2.
83
7.
9 3
0.
4 1
5.
0 8
3.
3 4.
2 0.
6 2.
2 1
3.
72
1
9
9
2 1
6.
0 1
0.
0 1
2.
93
8.
92
8.
0 1
5.
38
2.
2 5.
1 0.
7 2.
1 1
4.
9 3
8
0.
7
25
0.
9
21
0
0.
0
駿河 台経済論集
第 5巻 第 1号 (
1
9
9
5
)
表 3b 分類別輸入依存度 (
名 目)
(
分類別輸 入額/名 目 GNP)%
Aシリーズ
歴年 (
1
)
食
帆
料(
2
)
原
粗
料(
3
)
石油
石炭
(
5
)
機械
(
7
)
繊維
P
。
P
1
9
5
23.
34 7.
02 1.
3
9
0.
57
0.
1
5
1.
1
4
2
0.
04
7
(
1
2
)
工業
P
。
R 依存度
(
稔輸入
1
3
) &
総
(
1
4
)
輸出 一
(
1
5
)
次品_
_
総輸出
塵と
1
9
5
81.
4
9 5.
7
0 1.
61
1
9
6
41.
49 5.
46 1.
75
1.
61 1
2.
1 1
5
9 1
5
5
0.
2
0
8
4 9.
9
5 1
0
1
8
5 1
0
9
5
8
-ズ
Cシリ
歴年 1
憤料
Bシ(
リ
2
)
原料
ー
粗ズ(
3
)
原油 4
)
力工 (
5
)
資
本6
財
仲間財(
7
)
繊維
製品 (
8
)
家電 (
9
)
乗用 (
1
他
〟
ト
(
5
)
計
辛
消
0
)
製造
費
財
l
)
(
工
5
)
業
+
(
P
ロ
Ⅰ
0
P(
1
2
)
製品
9
6
42.
0
2 3.
50 1.
1
7 1原料
.
9
4 1.
05 1
9.
6
8 0.
02 0機器
.
00 0.
0
31
0
.
1
6l
1
.
2
1
2
.
8
4
1
9
7
31.
68 2.
67 1.
46 2.
1
2 0.
77 8.
70 0.
1
8 0.
01 0.
04 0.
5
2
1
9
7
42.
01 2.
7
9 4.
1
0 3.
01 0.
95 1
2.
87 0.
23
1
9
8
41.
3
9 1.
33 3.
08 3.
25
9.
9 1
1
8
81
1.
2
9 2.
8
5 9.
3 1
0
4
6
5
0.
0
3 0.
04 0.
57 1.
5
2 3.
2
01
3.
5 1
1
2
1
9
8
51.
27 1.
9
9.
0.
01 0.
3 0.
6 1.
2
42
6
51
0
1
8 2.
59 3.
01 0.
8
6 8
94
10
1
7 0.
04
4
8
3
3.
0
0
9.
7
4
3
2.
6
8 6.
4
6
0
2
7
0.
09 0.
65 1.
3
3 2.
7
3 6.
2
6
5
3
0
1
9
8
61.
0
2 0.
79 0.
99 1.
98 0.
67 5.
46 0.
1
7 0.
01 0.
05 0.
47 1.
1
4
1
9
8
70.
95 0.
83 0.
86 1.
9
8 0.
68 5.
29 0.
22 0.
0
2
1
9
8
81.
03 0.
87 0.
65 2.
07 0.
76 5.
7
4
8
0
7
4
3
9
7 1.
5
3 1.
9
6 6.
4
38 0.
25 0.
0
4 0.
1
0 0.
7
7
1
2
8
1
9
9
01.
11
0.
9
2
0
5 0.
3 0.
5 0.
1
4
0
12
1.
9
3 3.
6
3
0
8 0.
87 1.
06 2.
3
8
l
l 6.
4
9
32
0
4
2
1 1.
1
5
2
6
9
7 7.
9
7
7
3
0
1
9
8
91.
1
0 0.
97 0.
74
1
9
9
11.
03 0.
7
3 0.
90 2.
1
3 1.
05 5.
83 0.
29 0.
04 0.
1
5 0.
96
8
2
3
1
1
9
9
21.
00 0.
6
3 0.
81 1.
76 0.
96 5.
1
7 0.
3
2 0.
04 0.
1
3 0.
94 2
1.
9
0
0
1 3.
1
5
6 7.
0
7
5
2
9
1
9
9
30.
9
3 0.
58 0.
66 1.
5
4 0.
92 4.
64 0.
31 0.
05 0.
1
2
6 6.
3
6
9
2
7
1
9
9
41.
9
02
1.
8
23
2.
9
6 5.
7
00 0.
5
5 0.
60 1.
52 1.
0
5 4.
71 0.
34 0.
0
6 0.
1
50
1.
0
2
0
7
2
9
6
7
9
2
5
日本経済の輸入行動
9
6
4
年の9
7.
8
%か ら1
9
8
6
年の8
5.
3
%
中間財輸入の総輸入に 占め るシェアは,1
へ, さらに1
9
9
4
年の7
9.
8
%- と,漸減 しているが, 日本の輸入は圧倒的に中間
財輸入であったこ とを示 している。「中間財輸入主義」 と称 したい所以である。
日本経済の生産体系 を補完す る (
或いは生産の起動力 となる)必要不可欠な中
間財 に限 り最小量輸入す るとい う輸入行動 をとったのである。
(
2
) 中間財 を構成す る分類商品のシェアは工業化の進展につれ変化 している。
(
a)
食料他 は,1
9
6
4
年の2
0.
4
%か ら1
9
8
4
年の1
3.
0
%の最小に-たん低下 した。
以降1
9
9
4
年の1
6.
9
%まで傾 向的に微増 している。
(
b)
粗原料のシェアは,
1
9
6
4
年の3
5.
4
%か ら1
9
9
4
年の9
.
3
%へ と一貫 して低下 し
た。
(
C
)
原油は1
9
7
4
年の3
0.
4
%とか1
9
8
4
年の2
8.
8
%の ように, オイルショックによ
り最 も大幅 な変動 を示 した。 しか し,1
9
9
4
年には1
0.
1
%におさまっている。
(
d)
粗原料 シェアの減少に とって代 ったのが加工原料の増加 である。そのシェ
アは1
9
6
4
年の1
9.
6
%か ら最大 1
9
8
8
年の3
2.
3
%に上昇 した。 その後は漸減に転 じ
1
9
9
4
年の2
5.
7
%にまで低下 した。
(
e)
加工原料の近年の シェア低下に とって代 ったのが資本財輸入の変化 である。
9
6
4
年の1
0.
6
%か ら1
9
8
5
年の8
.
9
%まで,停滞的であった。これは
そのシェアは1
石油輸入シェアの急増による影響が大 きいが,工場新設のための機械設備の国
産化が この期 間に進展 したせ い もあろう。 しか し1
9
8
6
年に1
0.
5
%に達 した後漸
9
9
4
年には1
7.
8
%に達 している。 これは多国籍企業による部 品な ど
増に転 じ,1
の海外調達が増加 しつつ あることに基づ く。
結局,食料-粗原料-加工原料-部品 といった順序で中間財輸入が多様化 し
高度化 して きたことになる。だがかか る中間財輸入構成の高度化が,われわれ
の主題である輸入依存度 を高めたのか低めたのかが, 問われねばならない。石
油輸入は撹乱的であったにす ぎない。
(
3) 「
中間財輸入主義」の反面は 「
製造消費財輸入制限主義」である。Bシ リ
9
6
4
年には僅かに1
.
6
%の低水準 であっ
ー ズの製造消費財の シェア を見 ると,1
た。1
9
7
3
年に5
.
6
%に高 まった後1
9
8
5
年の4
.
9
%まで停滞的であった。増加 に転
じたのは1
9
8
6
年以降であ り,同年の7
.
3
%か ら1
9
9
4
年の1
7.
3
%にまで増加 しつつ
ある。
9
8
0
年代後半に 「
製造消費財輸入制限主義」の緩和 ない しその原則
た しかに1
- 71-
駿河台経済論集
第5
巻第 1号
(
1
9
9
5
)
か らの転向が見 られ る。だが GNP比の輸入依存度は (
表 3b参照)1
9
9
4
年でも
僅かに1
.
0
2
%である。 この程度 では製造消費財輸入-の市場開放が十分 なされ
たとは到底言いえまい。
なお製造消費財輸入の主要 なもの として三種が表 3aにかかげ られている。
9
7
3
年に1
.
9
%
最初に輸入が増 して きたのは繊維製晶であ り,その輸入 シェアは1
に達 し,以降漸増 し1
9
9
4
年に5
.
8
%に達 している。家電機器 と乗用車の輸入増は
1
9
8
6
年か ら始 まった とみてよ く,前者は1
9
8
6
年の0
.
2
%か ら1
9
9
4
年の1
.
0
%-,
後者は0
.
8
%か ら2.
5
%-,輸入 シェアを高めている。
(
4) 「
製品輸入比率」が近年高 まっているこ とが通産省 など関係機関に よって
強調されている。表 3aに追加 した Cシ リー ズがこれである。 ここで製 品 とい
I
TC (標準国際商品)分類の 5-9部 に属す る加工製品 (化学工業生
うのは,S
産品,原料別製品,機械類,雑製品,特殊取扱品)の合計である。逆に言えば
紙輸入か ら食料,原材料,鉱物性燃料の輸入 を除いた ものが製品輸入である。
1
9
6
4
年 までのAシ リー ズの 「
工業品」 と同 じ概念である。
9
8
5
年 の3
0.
9
%か ら1
9
9
4
年の
た しかに製 品輸入比率 は近年上昇 してい る。1
5
5.
2
%にまで達 した。
表 3bを見 よ)
,1
9
8
5
年
だが問題 は第 1に,GNP比の輸入依存度 で見 ると (
の3
.
0
0
%か ら1
9
9
4
年 の3
.
2
6
%へ の微 増 に とどまってい る。中間の1
9
8
8
年 には
1.
9
6
%への低下 さえ含んでいる。欧米が非難す るのはこの製品輸入依存度の極
端 な低 さなのである10)0
第 2に,製品 と言って もその大部分 は加工原料や資本財 とい う中間財 であっ
て,製造消費財の輸入はいまだ僅小 である。[
製品輸入 シュアー製造消費財 シェ
ア-製造中間財 シェア] とみ るならば, それは1
9
6
4
年2
7.
1
%,1
9
7
3
年2
5.
0
%,
1
9
8
4
年2
5.
5
%,1
9
9
4
年3
7.
9
%とな り,む しろ近年漸増傾 向を示 していることに
9
8
0
年代後半か ら転 じたのであるが,製品輸入につ
なる。つ ま り,製品輸入に1
いて も 「中間財輸入主義」が貫徹 されているのである。
く
分類商品別輸入依存度)
輸入構成比 (
シェア)は,輸入構造の変動 を示すには適 してい るが,稔輸入
額の増減, したが って輸入依存度の変化 に,輸入構造変動が どう関連 している
か を明 らかに しえない (
既 に若干指摘 したように)
。 そこで各分類商品 ご との
-7
2-
日本経済の輸入行動
GNP比,つ まり商品別輸入依存度 を計算 してみる必要がある。それを示 したの
が表 3bで虜)
るO
総輸入依存度 (
名 目)がオイルショック時 を除 くと長期的に逓減傾向をもっ
ことは既に指摘 した(
図 1)
。石油輸入 を除いたノンオイル輸入依存度が きれい
。かかる傾 向が,表 3bの
な一直線的逓減傾 向を示す ことも指摘 した(
図 2A)
分類商品別輸入依存度の変化によって も裏づけられ るであろうか。前述のごと
き輸入構造の変動にもかかわらず,稔輸入ない しノンオイル輸入が長期的逓減
傾向をもったのである。
オイルショック期 を除 くと,すべての中間財の輸入依存度 (
名 目)は長期的
に逓減す る傾向を示 している。すなわち,
(
1
) 食料他の輸入依存度は1
9
6
4
年の 2%か ら1
9
8
6
年の 1%へ低下 し,それ以
後 1%前後に収赦 している。
(
2
) 粗原料の輸入依存度は,1
9
6
4
年の3
.
5
%か ら1
9
9
4
年の0
.
5
5
%へ,きれいに
低下 している。
(
3
) 石油の輸入依存度です ら,オイルショック期 を除 くと,1
9
8
5
年の2
.
5
9
%
か ら1
9
9
4
年の0
.
6
0
%へ低下 している。唯一の例外は1
9
9
0
年 (
1.
0
6
%)と1
9
9
1
年
(
0.
9
0
%)におけ る上昇であるが, これは湾岸戦争の影響である。
9
6
4
年の1
.
9
4
%か ら1
9
8
4
年の3
.
2
5
%まで上昇
(
4) 加工原料の輸入依存度は,1
9
9
4
年の1
.
5
2
%まで傾 向的に低下 している。
し,以降1
(
5
) 資本財の輸入依存度は1
9
6
4
年 と1
9
9
4
年が ともに1
.
0
5
%である。その間に
低下 と上昇の うね りがある。だがはっきりと上昇傾向をもった (
それが期待 さ
れたのだが)わけではな く,む しろ 1%程度の収数値におさまりつつあると見
てよい。
要す るに,食料-粗原料-加工原料-資本財 といった中間財輸入の構造変動
があったのであるが,オイル ・ショック期 だけを例外 として, 中間財全体の輸
9
6
4
年の9
.
6
8
%か ら1
9
9
4
年の4
.
7
1
%まで低下 したのである。これは
入依存度は1
「中間財輸入主義」に基づ くものであろうか。産業 ・輸出構造の多様化 ・高度
化に照応す る中間財輸入構造の変化が,何故中間財輸入依存度 を低下 させ得た
のであろうか。究明に値す る問題である。
6)
製造消費財である。それ
他方,輸入依存度上昇が大いに期待 されるのは,(
- 7
3-
駿河台経済論集
第5
巻第 1
号
(
1
9
9
5
)
は1
9
6
4
年の0
.
1
6
%か ら1
9
7
4
年の0
.
5
7
%にジャンプ したが,以降1
9
8
5
年(
0.
4
8
%)
ないし1
9
8
6
年 (
0.
4
7
%)まで停滞的であった。 それ以降1
9
9
4
年の1
.
0
2
%に向け
て若干の上昇傾 向をもったが期待 された程明確 でない。 また 1%とい うのはい
かにも低 くす ぎるとい う問題が残 る。Bシ リー ズの「
工業品」,或いは Cシ 1
)ズの 「
製品」 とい う範噂で見て も,輸入依存度の傾 向 と問題 とは同 じである。
く
資源制約)
1
4
)
欄 は,総輸入/総輸 出の比率つ ま り指数が1
0
0(
%)を越 える分 は
表 3bの(
0
0を下 回る分 は出超率 を示す。1
9
5
2
年 では輸 出の実 に5
9
%とい う入超
入超率,1
であった。 この入超 は米国援助によって埋め られねばならなか った。本格的出
9
6
8
年か ら転 じた(
表 3bの1
9
7
4
年 はそ うなっている)
01
9
9
4
年では3
1
%
超には1
の出超率 に達 している。
1
5
)
欄 に,一次晶輸入/総輸出の比率つ ま り輸出で まかなわれ る資源輸
同表の(
入調達率が算出されている。1
9
5
2
年の1
5
5
%とい う値 は,輸 出だけでは支払い き
5
%に も達 したことをあ らわす。輸入の殆ん ど
れなかった資源輸入分が輸出の5
が一次産品であったか ら, それは入超率5
9
%とほぼ等 しい。1
9
6
4
年 で も輸出だ
けでは 5%だけ資源輸入 をまかない切れなか ったことを示 している。
ここか ら次の命題が導びかれた。すなわち 日本は資源稀少国であるか ら,資
源の多 くを輸入に頼 らねばならない。 したがって輸入依存度は高水準にならざ
るをえない。輸入資源 を基に してそれに付加価値 を加 えて輸 出す るとい う加工
貿易立国を基本 とせねばならない. これが 「
生産体系輸入」 とい うテーゼであ
る。国際収支の壁に直面す るか ら,輸入は国産 で きない不可欠な一次産 品の ミ
ニマム量に限 らねばな らない。 これが 「中間財輸入主義」の起源 である。他方,
必要資源輸入 をまかな うよう輸出拡大 に努力す ることは至上命令 である。
だがかか る資源制約 に起 因す る輸入節約論 は今や不必要 になった。輸入行動
の理念 を転換す る必要がある。輸 出に対す る資源輸入調達率 は1
9
7
4
年の7
4
%か
9
9
4
年では2
5
%の低 きに達 している。 この間に国際収支の壁 も消散
ら急減 し,1
しむ しろ大幅な出超に陥っている。
5
%は一次産 品輸入に充当す るが,残 りの3
/
4
は工
大 ざっばに言って,輸出の2
業品 (
製造 中間財 と製造消費財)の輸入に振 り向けて もよい とい うことになる。
そ うしなければ 日本の大幅出超は是正 されえない。本稿の政策的結論 となる「
工
-7
4-
日本経済の輸入行動
業晶水平貿易」のすすめが導 き出され る所以である。
Ⅰ
Ⅴ 期別輸入依存度
く
名 目輸入依存度 と実質輸入依存度)
名 目輸入依存度 (
M/
Y)は傾 向的に低下 しているのに,実質輸入依存度 (
m/
y)は逆に傾 向的に上昇 している。両者の帝敵の主因は相対輸入価格 (
Pm/
Pd)
の傾 向的低下である。 このことは全期間 (
1
9
5
2
-1
9
9
4
年)についても或程度 あ
。そこで
てはまるが, トレン ドラインの決定係数がいずれ もやや低 い (
表 1A)
3つの期 間に分 けて検討す ることに した。
1
9
5
2
-1
9
7
3
年)重化学工業化期。
第 Ⅰ期 (
図 3(
鶴 (
B)
,(
C)
に示す ように,決定係数の高い きれいな トレン ドラインが描
Y は年 -0.
1
7の傾斜 をもつ右下 り傾 向線 として,逆に実質
き出せ る。名 目 M/
m/
yは0.
2
8の傾斜 をもつ右上 りの傾 向線 として描 き出され る。両者の帝離の原
因は-5.
2
7とい う大 きな傾斜 をもつ,輸入価格 (
Pm)の国内物価 (
P。
)に比べ
ての急速 な相対的低落にある。つ ま り急速に進展 したこの期間の重化学工業化
に必要 とされ る輸入中間財 (
この期 間では大部分一次産品)が,実質的 (
数量
的)には輸入依存度の漸増 を要 したのに,輸入価格の大幅な低落のお蔭で,漸
減す る名 目輸入依存度の下で入手できた。大 きな貿易利益 を得 なが ら,重化学
工業化が急進展 しえたのである11)。 まことにラッキーであった と言わ ざるをえ
ない。
相対輸入価格 (
Pm/
P。) の低落は,図 4に示す ように,1
9
4
9
-1
9
71
年は, 1ド
6
0円の固定相場制 であったか ら,為替 レー トの変動に起因す るものではな
ル -3
く,明 らかに一次産品の対工業品相対価格の低落に基づ くものである (
ただ し
1
9
7
1
-7
3
年には円高化の影響 も加 わった)。一次産 品交易条件の悪化,開発途上
9
7
3
年1
0月に第 1次オイルショックが爆発 したのであ
国の困難 を打開 しようと1
1
6
)
,(
1
7
)
欄 にかかげてある)
0
る。 (
交易条件 と為替 レー トは付録表の(
第Ⅰ
Ⅰ
期
1
9
7
4
-84年 :石油危機不安定期。
表 1(
C
)
に示す ように,M/
Y と Pm/
Pdは決定係数が 0であ り,傾 向値 をもたな
m/
yも決定係数 は0.
5にす ぎない。この期間は,2度のオイルシ ョック(
1
9
7
3
い。
年 と1
9
7
8
年)によ り,石油だけでな く他の一次産 品の大幅価格変動があ り,Pm/
-7
5-
駿河台経済論集
第 5巻 第 1号 (
1995)
% 14
13
2--0.168435t.12.12337
12
R2
-0.
6
1
4
1
4
11
10
9
8
1
9
5
5
6
0
6
5
6
7
0
1
9
% 14
図 3(
A) 名 目輸 入依 存度 (
1952- 197
7
3
13 12
11 10
7
6
9 8
==0.
2
7
7
0
1
8
t
3
+6
).
3
7
7
9
2
R
y2
-0.
8
9
5
5
6
0
6
5
8
9
5
27
J
0
図 3(
B) 実質輸入依 存度 (
1952-19
1
9
7
3
1
90 8
0
1
701
Pm
73
)
=
-5.
2
6
7
4
7
6
t
+1
7
3.
2
6
2
3
3
Rd
60
1
50
1 4
0
1 3
0
1 2
0
1 10
1 0
0
1 9
0 0
8
P
70
60
50
5
5
6
0
2
=0
6
.
5
9
2
3
0
5
0
1952- 1
図 3(
C) 相 対輸入価格 (
0
973) 7
1
9
7
3
日本経済の輸入行動
0
01
5
2
0
0
1
1
952
55
60
70
65
75
8
0
85
9
0
94
P。
が大 きく上下変動 した (
図 4参照)。
図 この
4 Pm/
P。の上下変動
が激
ただ決定係数が
しく上下変動0
したのである。
.
5
につれ名 目 M/
Y
したことが注 目され る。
で低これは輸入一次産
い とは言え,実質品への数量的依存度
m/
yが -0.
1
9の右下
り傾斜
で逓減
を減
らす技術
歩第
と産業構造の変動 とがこの期 間に進展 したこ とを反映 していると言えよう。
進
第Ⅰ
Ⅴ
I期 と類似の傾
1
9
8
5
-1
9
9
向が明示
4
年,- イテ
さ ク産業化期。
も第 Ⅰ期 の ものよ り低 い。)
D)
)
.(
ただ し決定係数はいずれ
れている (
表 1(
で上昇傾 向
(
変化率
はいず
すなわち名
目をもつ
逆に実質 m/
yは+0.
3
8の傾斜
M/
Yは
-0.
2
2
の傾斜 で低下傾 向 を,
大 きい)。両者の乗雛 は-3.
9
9なる傾斜 (これは第 Ⅰ期 より小 され も第 Ⅰ期 よ り
図 4に見
Pm
られ
/
P。
るように
の低落に基づ
,Pm/
く
P
。
dの下落は大部分 この間の為替 レー
トの円高化
輸入価格
い)をもつ相対
(
1
9
8
4
年平均 2
3
7円か ら1
9
9
4
年平均 1
0
2円へ)と対応 している。 それにこの
Ⅰ
に生
第 じた石油価格の低落
も加 わったのである。
期間
駿河台経済論集
第 5巻第 1号 (
1
9
9
5
)
械類) をも含む ようになった中間財輸入 を,低落す る相対価格 で入手できたこ
とが, 日本の低 い名 目輸入依存度の下での経済成長 を可能にさせ た と言えるの
である。
く
輸入依存度の水準低下)
輸入依存度の水準 を期 間平均 で見 ると, また第Ⅰ
Ⅰ
期 は石油危機のため傾 向を
Y は,第 Ⅰ期 (
1
9
5
2
もたない不安定期 であるとしてスキップす ると,名 目 M/
7
3
年)の1
0.
2
%か ら,第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期 (
1
9
8
5
-94年)の6.
9
%へ低下 したことになる。か
か る輸入依存度の構造的低下 こそが重要 な問題点である。
他方,実質 m/
yの平均 は,付録表によれば,第 Ⅰ期 の9.
6%か ら第1
Ⅰ
Ⅰ
期の1
1.
8
%へ逆に上昇 したことになる。 しか しこれは既 に触れたように ミス リーディン
グであると思 う。つ ま り期 間内の基準時点では名 目と実質の輸入依存度は同 じ
P。の大幅低落に基づ き,実質 m/
y
である。また期 間内では,相対輸入価格 Pm/
は上昇傾 向を示 した。したが って期間平均 において実質 m/
yは名 目 M/
Yを1
-2%ポイン ト上 回るであろ うが,第 Ⅰ期 に くらべ第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期 は,名 目 M/
Y平均値
yも,た
と同様に,構造的変動 に基づ き低下 したはずである。すなわち実質 m/
1
% ぐらいか ら第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期の 8%程度に低下 した と解 した方が
とえば第 Ⅰ期平均 の1
よい。事実構造変動期 たる第Ⅰ
Ⅰ期 において,m/
yの トレン ドラインは-0.
1
9の
低下傾 向を示 していた (
上述)。
こうして名 目で も実質で も輸入依存度が第 Ⅰ期か ら第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期へ構造的に低下 し
た と判断す るならば, その間に生 じた産業構造の変動 と,各産業における技術
革新が,輸入依存度 を構造的に低下 させ た原因であるとい う既述の問題 に到達
す るのである12)0
く
輸入関数)
Y,実質 m/
y,お よび相対輸入価格 Pm/
P。の傾 向値の検討は当然に輸
名 目 M/
入関数の計測 とい う問題に到達す る。通常用い られ る次の輸入関数計測式に従
って求めた ものが表 4である。
I
nn(
t
)-cons
t
.
+αl
ny(
t
)+βl
nP(
t
)
Pm (
ただ し M は名 目輸入額,Pmは輸入
これは実質輸入 (
輸入数量) m-M/
P。(
ただ し Y は名 目 GNP P。は GNPデ7
物価指数)は,実質 GNP y-Y/
-7
8-
日本経済の輸入行動
表 4 輸入関数 (
not
i
mel
a
g)
1
mm(
t
)=c
ons
t
.
十αl
ny(
t
)+βl
nP(
t
)
〔
蒜
諾
;G
"
PP
id
・
=y
G
=
N 号 , VL ,三笠
㌫〕
芸,
m
8
;芸
(
a
) 全期間 t
-1
9
5
2
-1
9
9
4
c
o
ns
t
-0.
2
8
8
9
(
-0.
4
9
1
)
β
α
+1.
1
1
0
0
(
4
0.
7
7
7
)
=
Adj
.
R2
F
D
.
W
-0.
2
1
8
6
(
一3.
3
0
7
)
=
0.
9
9
1
6
2
4
7
3
0.
9
0
2
日
-0.
3
4
5
5
(
-1.
3
0
8
)
0.
9
9
2
4
1
3
7
2日
2.
3
7
6
日
-0.
1
0
4
9
(
-0.
7
1
0
)
0.
6
5
1
7
1
0"
l.
4
2
5
日
-0.
0
8
3
2
(
-0.
8
0
4
)
0.
9
5
6
6
1
0
0
+
∼
日
<d
L
(
b
) 第 Ⅰ期 t
-1
9
5
2
-1
9
7
3
-0.
0
5
9
9
(
10.
0
2
3
)
(
C) 第 Ⅰ
Ⅰ
期
4.
7
9
3
6
(
2.
7
2
0
)
*
+1.
1
4
4
1
(
9.
0
6
1
)
''
>d
U
t
-1
9
7
4
-1
9
8
4
4
+0.
6
6
1
(
4.
5
2
1
)
=
(
d) 第 Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期
t
-1
9
8
5
-1
9
9
4
-9.
9
8
2
0
(
-3.
2
1
7
)
*
+1.
8
1
5
7
(
8.
4
2
9
)
=
注)カッコ内は T値。*
5%水準で有意, *
*1%水準で有意
W:
*
*1%水準で,<d
L自己相関 ア リ。 >d
U自己相 関ナ シ。
D
.
レ- タ-) と相対輸入価格
>d
U
l.
1
5
9H
d
しく,
>d
U
d
しく,
>d
U検定不能
P-Pm/
Pdに左右 されて決 まると見 る輸入関数 の
計測式である13)0α は実質 GNPの変化 に基づ く実質輸入量の変化 を示す「
所得
弾力性」であ り,β は相対輸入価格の変化 に基づ く実質輸入量の変化 を示す「
価
格弾力性」である。
表 4において,(
a)
の全期 間の結果は,既述の理 由ならびに D.
W(
ダー ビン・
ワ トソン係数)か らみて 自己相関があるとい う理由か ら,考察か ら省 くことに
す る。また(
C
)
の第Ⅰ
Ⅰ
期 について も,既述の理由ならびに相関係数 Ad
j
.
R2
が0
.
6
5
と低 い とい う理 由か らオ ミッ トす る。検討に値す るのは(
b)
の第 Ⅰ期 と(
d)
の第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期 であると見 るのである。
1
4
,第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期 では1
.
8
2
で
そこで注 目され るのは,所得弾力性 α が第 Ⅰ期 では1.
あ り, ともに 1%水準で有意であることである。他方,価格弾力性 β は雨期 と
も非有意であるのみな らず,第 Ⅰ期 では -0
.
3
5
,第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期 では一0
.
0
8
であって極
めて小 さいことである。
- 79-
駿河台経済論集 第 5巻第 1号 (
1
9
9
5
)
先ず,価格弾力性 β は負値であるべ きだが, 1より小 さ く非弾力的であるた
め輸入価格が低下す るときで も輸入金額 は反 って減少 し,名 目輸入依存度 M/
Y を低下 させ ることになる。他方実質輸入量は増加 し,実質輸入依存度 m/
yを
高めることになるのである。
生産体系輸入」である
次に,所得弾力性の α は,われわれの推論す る通 り 「
ならば,産業別輸入中間財投入係数 と産業別 シェアの構成比変化によって決 ま
1
4
か ら第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期の1.
8
2に高 まったのは,輸入中間財の内
る。αの値が第 Ⅰ期の1.
容が,食料 と粗原料 とい う一次産品か ら加工原料 さらに資本財 (
機械類)- と
多様化 し高度化 したためである。第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期 では製品消費財の輸入シェアが増加 し
たことも,需要体系輸入理論の示す とお り,第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期の α を大 きくした。
価格弾力性 β の絶対値 も所得弾力性 と同様 に高 まるべ きはずであるのに,-
0.
3
5
か ら-0
.
0
8
へ反って小 さ くなったのは不思議である。いずれ も非有意であ
るか ら β の絶対値の変化 を問題に しな くて もよいのか も知れない。
寄与率 (
c
o
nt
r
i
bu
t
i
o
nr
a
t
i
o
)を計算 してみると,第 Ⅰ期の実質輸入量 m の変
8
%までが所得効果,残 りの1
2
%が価格効果に基づ くことになる。第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期
化の8
2
%が所得効果,残 りの僅か 8%が価格効果に基づ くことになる。
では9
Ⅰ
Ⅰ
期で
この結果はいったい何 を意味す るであろうか。第 1に,第 Ⅰ期でも第Ⅰ
も大幅な相対輸入価格の低下があった (
既述)にもかかわらず,輸入品対国産
s
wi
t
c
hi
ng)には殆ん ど影響 を与えなかった。つ まり価格考慮によっ
品の選択 (
て輸入ビ-イビアが決め られることはご く僅かであった。市場の価格 メカニズ
ムは余 り働 らかなかった。 こう判断 してよい。 しか も輸入 自由化が進展 し,逮
択の範囲が広がった第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期において (
第 Ⅰ期に くらべ)価格弾力性は反って小
さくな り,価格効果の寄与率は減少 しているのである。
pr
e
d
o
mi
na
nt
)であるとい うことは,
そうす ると第 2に,所得効果が圧倒的 (
必要最小限の輸入が主に数量的に,技術的投入産出関係に立脚 して,決め られ
たということである。 これは輸入品の大部分が生産の始発力になる中間財 であ
生産体系輸入」であることを反映 しているのであ
る場合に成立す る。つ まり,「
る。
1
4
か ら第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期の1.
8
2
-上昇 し,所得効果の寄与率が
所得弾力性が第 Ⅰ期の1.
8
8
%か ら9
2
%へ高まったのは,中間財の内容が初期の食料,原燃料中心か ら加
工原料, さらに資本財 (
機械類)- と多様化 し高度化 したことに基づ く。 しか
-8
0-
日本経済の輸入行動
しこのことは輸入依存度 (
名 目 ・実質 とも)の水準 を反って低 くしたことを留
意 しておかねばならない。価格効果の寄与率は僅小であったけれども主に中間
財の輸入価格が大幅に低落す るという貿易利益 を享受 しつつ 日本経済は加工工
業化 を推進す ることができた(
既述)
。輸入価格低下の実質的貢献は多大であっ
た。
要す るに, ミニマムの中間財輸入に限るとい う 「
生産体系輸入」であったが
故に,所得 (
数量)効果が圧倒的になったと判断 したい。逆に消費者の 自由な
選択に任か される 「
需要体系輸入」であったならば価格弾力性ならびに価格効
果の寄与率は もっと大 きくなるべ きはずである。消費財の輸入シェアが増 した
1
9
8
5
年以降の近年において,それ らが反って減少 しているのはむ しろ不思議 と
言 うべ きである。
こ
投入中間財であるなら,生産の始発力,起動力になるのであるか ら,GNP(
こでは国民総生産)の変化に時間的に先だって,輸入量が変化するはずである。
ここでは国
それが生産体系輸入である。逆に需要体系輸入であるならば GNP(
)
。このことを検
民所得)の変化 と同時に或いは一期遅れて変化す るはずである14
証 してみたい。
試みに,実質輸入量 m が,説明変数 y と P に一年先行 して変動す るという
輸入関数 (
これを生産体系輸入関数 と呼ぶ)と,逆に m が y と P に一年遅れ
ot
i
mel
a
gの場合 と比較 してみた。
て変動す る需要体系輸入関数 とを計測 し,n
i
mel
a
gを入れ るため1
9
5
3(
5
2
でな く)-1
9
7
3
年
これが表 5である。ただ し t
9
8
5
-1
9
9
3
年 (
9
4
でな く) を,それぞれ第 Ⅰ期,第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期 とした。
と,1
1
)
生産体系輸入の所得弾力性 αは n
ot
i
mel
a
gの場
いずれの期について も,(
合 よ り大 きくなっている。 (
1
′
)
逆に需要体系輸入の所得弾力性は小 さ くなって
いる。
(
2)
価格弾力性 β の符号は生産体系輸入では雨期 ともプラスになっている0
(
2
′
)
not
i
mel
a
gの場合は第 Ⅰ期 ではプラス,第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期 ではマイナス (
+0.
0
3と0.
0
5
でいずれ も無視 しうる程の ものだが)であった。需要体系輸入では,第 Ⅰ
期 -0
.
5
4
,第I
I
I
期 -0
.
2
6と,正常な形の価格弾力性が検出されている (ただ し
非有意である)
。
(
1
)
の点は, 日本の輸入は生産体系輸入が圧倒的に多かった というわれわれの
2
)
および (
2
′
)
についてはこう解釈 してよいで
主張 をサポー トす ることになる。(
-8
1-
駿河台経済論集
第 5巻第 1号 (
1995)
表 5 輸入関数の比較
仏) 1
9
5
3
-1
9
7
3
(
Al
) not
i
mel
a
g I
nn(
t
)-c
o
ns
t
.
+αl
ny(
t
)+βl
nP(
t
)
c
o
ns
t
-3.
5
3
3
2
(
-1
.
1
0
7
)
α
+1.
2
9
9
(
8.
7
1)
4
5
=
β
Ad
j
.
R2
F
+0.
0
2
7
1
(
0.
0
8
2
)
0.
9
9
2
4
2
2
3
3
H
D.
W
2.
1
7
8
日
>dU
nm(
t
)-c
o
ns
t
.
+αl
ny(
t
十1
)+βl
nP(
t
+1
)
(
A2
) 生産体系輸入 l
-5.
5
0
3
1
(
-3.
3
4
4
)
=
+1.
3
7
8
4
(
1
8.
1
9
1
)
=
+0.
2
3
3
9
(
1.
3
0
9
)
0.
9
8
7
7
8
0
6H
2.
1
6
6
>dU
8
3
7
日
2.
2
8
2
>dU
日
nm(
t
)-c
o
ns
t
.
+αl
ny(t
-1
)+βl
nP(
t
-1
)
(
A3
) 需要体系輸入 l
2.
1
8
1
8
(
0.
6
6
7
)
+1.
0
3
8
9
(
6.
5
6
5
)
=
-0.
5
4
5
7
(
-1.
6
8
4
)
0.
9
8
8
2
**
(
B
)1
9
8
5
-1
9
9
3
(
Bl
) not
i
mel
ag I
nn(
t
)-c
o
ns
t
.
+αl
ny(
t
)+βl
nP(
t
)
2
11
0.
1
0
9
(
- 3.
3
1
6
)=
+1.
8
1
3
9
(
8.
5
7
7
)
=
-0.
0
4
7
5
(
-0.
4
4
6
)
0.
9
5
4
7
8
5+
∼
0.
6
7
3
<dL
+
(
B2
) 生産体系輸入 l
nm(
t
)=c
ons
t
.
+αl
ny(
t
+1
)+βl
nP(
t
+1
)
-1
6.
3
3
0
5
(
-1
4.
1
1
9
)
=
4
+2.
2
4
4
(
2
9.
2
6
6
)
=
+0.
1
0
7
2
(
1.
8
5
4
)
0.
9
9
4
5
7
3
0日
1.
9
9
6日
>dU
nm(
t
)-c
o
ns
t
.
+αl
れy(
t
-1
)+βl
nP(t
-1
)
(
B3
) 需要体系輸入 l
-1.
5
2
8
0
(
-0.
4
0
6
)
+1.
2
1
9
1
(
4.
6
4
7
)
=
-0.
2
6
1
8
(
-2.
1
7
3
)
0.
9
3
0
9
3
5
●
◆
H
1.
0
6
3
dしく,>dU
注)表 4に同 じ
あろう。価格が低下すれば需要が増加す るとい う需要体系輸入ならば,マイナ
スの価格弾力性 になる。だが生産体系輸入の視点か ら見れば,輸入中間財の年後の (
相対)価格変動は予測 し難い し,輸入決意の考慮外である。計測 され
た価格効果は単 なる結果にす ぎない。そのため正常 なマイナスの符号 でな くプ
ラスの価格弾力性になったのであろう。投入産出の技術係数か ら見て必要 とさ
れ る投入中間財の輸入量 を確保す ることが優先事項 とされ,価格考慮 は第二義
的にされたのである。結果 として価格弾力性の符合がプラスであるとい うこと
は, (
相対)輸入価格が低下す ると予測 した時に輸入量 を減 じ (
買い待 ち)
,逆
に輸入価格が騰貴す ると予測 された時に輸入量 を増す (
買溜め) とい う非正常
- 8
2-
日本経済の輸入行動
な行動 をしたこ とになる。
t
i
mel
a
gを一年 でな く, 四半期 デー タに基づ き適正 な l
a
gを求め るべ きであ
るとか,c
aus
al
i
t
y(
因果関係)テス トの方法で検討すべ きである15)とかのサ ジ
エスシ ョンを得 ている。今後の研究課題 としたい。
Ⅴ 輸 出行動
日本の輸 出行動 について簡単に触れてお きたい。 ここで強調 したいのは, 日
本の輸出は 「
生産体系輸出」 であって,通常検 出され る 「
外国需要輸出」 とは
異なるとい う点である。
通常の輸出関数 は,需要体系理論に立脚 し, 日本の輸出は諸外国 (
世界)の
日本品への需要に左右 されて決 まるもの と見 る。 それ故 「
外国需要輸出」 と名
づけ よう。
次の ような計測がある。第 1 に16),
l
n(
世界実質輸入)ニー9.
8
2 +1.
3
8
7h (
OECD の実質 GDPの合計)
(
-2
0.
4
) (
2
6.
3
)
R2
-0.
9
8
4
期間 1
9
7
6
-1
9
8
8
年次デー タ。
これは世界諸国の輸入需要 は,OECD 諸国の GDPで代表 させ た世界所得 に
よって決 まるとみ るのである。その所得弾力性は1.
4である。
第 2に,南
E
亮進教授によるものがある。すなわち,
7T
w
PE
R/
Rw
)=定数 +αh (
芸諾 )+ph (日課 謂 品評
1
9
5
2
-1
9
7
0:1
2.
2
6
2
+1.
7
5
0
-3.
4
3
4
(
5
7.
4
9
)
(
1
8.
5
2
)
(
6.
2
1
)
1
9
7
1
-1
9
8
8:1
0.
5
8
5 +1.
5
9
4
-0.
3
5
2
(
3
0
8.
0
0
)
(
1
0.
3
9
)
(
1.
9
6
)
h (諾
);R2
DI
W
0.
9
9
8 1.
2
8
0.
9
6
3 0.
6
9
世界貿易指数 をもって世界の 日本品需要 を示す変数 とした ものである。そ し
て次の ような解釈 を与 えている17
)
0
1
9
5
2-7
0
年 :各国で高度成長が現出 し, したがって海外市場が急激に拡大 し
た。比較的平穏 な国際政治情勢, ケネデ ィ ・ラウン ド (
1
9
6
7-71年)による関
-8
3-
駿 河台経済論集
第 5巻 第 1号
(
1
9
9
5
)
税引下げ とい うような制度的要因 も, この傾 向に拍車 を掛けた (
孔 の成長率は
6.
9
%)
。 この時期 に所得弾力性が大 きい造船 ・事柄などを大量に輸出し,所得
PE
R/
Rw) も強化 されたが,
効果 を十分に享受す ることがで きた。輸出競争力 (
5.
8
% という驚異的な成長率 を
価格効果はご く小 さいものに とどまった。E は1
記銀 した。
1
9
7
1
-8
8
年
:孔 の成長率は各国の景気後退によって4.
6
%に落 ちた。 しか し
わが国は強力に生産合理化,産業構造の転換に努めた結果,円相場 ・賃金 ・輸
9
8
5
年 を1
0
0と
入原燃料価格の上昇にもかかわらず,輸出競争力は強化 された。1
I
URwはこの期間に1
6
6
か ら1
2
9
へ低下 した.その結果,前の時期に比べて
する PE
価格弾力性が大幅に低下 したに もかかわらず,価格効果はプラスに作用 した。
7.
5
%)を記録 した.
か くして E は,かな り高い成長率 (
この解明にはいささか混乱が見 うけられる。上の式が 日本の「
外国需要輸出」
を表わす と解す るならば,所得弾力性 αが正値に,価格弾力性 βが負債 になる
のは正 しい。だが南教授の解釈はむ しろこれか ら説明す る 「
生産体系輸出」に
立脚 しているように推察 される。
われわれが 「
生産体系輸出」 と言 うのはこうである。 日本の輸出は,た しか
に諸外国 (
世界)の 日本品需要に影響 されるのであるが, そのことよりも, 日
本企業が外国需要に ミー トすべ く産業構造 と輸出構造 を次つ ぎに多様化 し高度
化 して きたこと,ならびに低廉な中間財輸入 を起動力 とし,かつあらゆるコス
ト・ダウンの合理化につ とめ輸出価格引下げに成功 したことの方が, よ り大 き
な輸出の決定要因になった。つ まり 「
生産体系の発展 ・充実に伴 う輸出拡大」
なのである。1
9
71
年以降の大幅な円高化に もかかわらず, 日本の輸出が急増 し,
大幅出超 をもたらしていることはこのような 「
生産体系輸出」 という考 え方に
立脚 してのみ正当に解釈できるのである。
9
5
2
-1
9
9
4の全期間について計測 した輸出関数は次の とお りであ
われわれの1
る。
I
nx(
t
)-c
o
ns
t
.
+αl
ny(
t
)+βl
nP(
t
)
(
ただし Ⅹ-実質輸出,y-実質 GNP,P-Px
/
Pd 相対輸出価格)
c
o
ns
t
.
α
β
5
8
9
6 - 0.
1
1
5
3
-6.
8
1
9
1 + 1.
(
1
7.
6
4
7
)
(
-0.
7
1
3
)
(
-3.
6
6
1
)
Ad
j
.
R2-0.
9
9
4
8
,F-4
0
1
4
*
*
,D.
W-0.
6
2
0
*<dL
**
**
-8
4-
日本経済の輸入行動
GNP)弾力性 と解 さるべ きであるが, それ
すなわち, α は輸出供給の生産 (
6であって,生産の成長につれてその1.
6
倍のスピー ドで輸出が成長 したこ
が1.
とを示す1
8
)
。そ してこの生産効果が圧倒的な貢献 を果た した(
寄与率は9
5.
6
%に
達 してい る)0
他方 β は,有意で もな く,
-0.
1とネグ リジブルな値 である。この β は輸 出供
給の価格弾力性 であるか ら,本来プ ラスの符号 をもつべ きである。それがマイ
Px/ P。
)の低落 を上 回る輸出生産 での コ
ナスにあ らわれたのは,相対輸出価格 (
ス ト・ダウンがはか られた とい う 「
生産性改善効果」 をあらわす。 その寄与率
は4
.
4
% と僅少 である。だが この国際競争力強化が輸出拡大 を支 えた実質的貢献
は大 きい。
輸 出関数の背景にある要 因のい くつかについて補足説明を加 えておこう。
表 6を見 られたい。全期間について19)の実質輸 出依存度は0.
3
1
の上昇傾 向 を
表 6 時系列傾向値 (
輸出)
仏
)全期間 t-1952-1
9
9
4
名
(
Ⅹ目輸出依存度
-時価輸出額,
Y-時価 GNP)
実質輸出依存度
(
Ⅹ-Ⅹ/
Px
,y-Y/
Pd)
Ⅹ/
Y- 0.
0
6
2
0
3
5
t
+ 8.
4
6
7
7
x/
y- 0.
3
0
9
3
6
t+ 0.
9
3
8
2
0
5
9
PJPd--6.
0
1
8
6
7
t+2
9
2.
1
1
5
2
8
相 対 輸 出価 格
(
B
) 第 Ⅰ期 t
名 目輸出依存度
1
9
5
2
-1
9
7
3
9
5
5
3
Ⅹ/
Yニー0.
0
9
0
1
1
8
t
+ 7.
8
1
8
1
8
Ⅹ/
y= 0.
2
0
2
1
5
t十 1.
8
7
5
3
2
4
相 対 輸 出価 格
3
6
3
66
Px
/P
dニー9
.
8
7
9
8
4
t+3
3
3.
1
t
-1
9
7
4
-1
9
8
4
R2
-0.
9
5
11
R2
-0
.
9
1
1
7
9
1
5
実質輸出依存度
(
C
) 第Ⅰ
名 目輸出依存度
Ⅰ
期
R2
-0.
2
2
4
6
6
R2
-0.
3
8
8
8
4
2
R2
-0.
9
5
4
7
2
5
8
1
8
8
4
4
Ⅹ/
Y- 0.
1
6
4
5
4
5
t
実質輸出依存度
Ⅹ/
y- 0.
4
5
8
1
8 + 1.
1
5
4
5
5
R2
-0.
2
7
5
3
4
9
相 対 輸 出価 格
7
2
7
2
+1
8
6
6
2
7
2
7
Px
/P
dニー3
.
5
4
1
t
+
1.
1
5
4
5
5
R2
-0.
8
8
4
8
8
8
名 目輸出依存度
0
)
) 第I
I
I
期
実質輸出依存度
相 対 輸 出価 格
t
-1
9
8
5
-1
9
9
4
Ⅹ/
Y
ニー0.
3
2
9
0
9
0
t
+2
2.
3
6
0
9
Px
Ⅹ
/
/
P
y
dニー3
0.
1
2
3
9
6
9
3
6
3
t
+ 8.
5
5
0
9
1
.
6
0
4
1
6
2
R2
=0.
5
9
4
5
0
5
R2
-0.
3
4
4
8
1
7
駿河台経済論集 第 5巻第 1号 (
1
9
9
5
)
もつ きれいな直線になる(
R2-0.
9
5
)
。これに対 し名 目輸出依存度は R2-0.
2
2と
低 い。 それは0.
0
6とご く僅かだが上昇 スロープである。つ ま り名 目で も輸 出依
存度が上昇傾 向をもった点が,名 目輸入依存度は下降傾 向をもったことと大い
に異なる。両者の違 いが構造的出超 を結果 しているのである。
x
/
Pd (これはE
g4に描 いてある)は-6.
0とい う急傾斜の右下
相対輸出価格 P
R2も0.
91で高い)。これが1
9
72年以降の円高化 とそれ を上 回る輸
り直線 とな'
る(
出企業の生産性改善, コス ト・ダウンの成果 を明示 している。
m
/
Pdカーヴ と Px
/
Pdカーヴの右下 りが示す ように,国内物価 に くら
図 4の P
べ,輸入品が相対的に安 くな り, さらにそれ を上 回る率 で輸出品が安 くなって
いる。逆に言えば輸 出入晶に くらべ国内品がかな り大幅に割高になっている。
これが近年話題 とされている 「内外価格差」の問題 である2
0
)
0
要す るに,加工貿易立国 を国是 とした 日本経済の発展過程 では,輸入だけで
な く輸出 もともに 「
生産体系貿易」であった。「
需要体系理論」に立脚す る輸出
と輸入は殆ん ど入 りこんでいなかった21
)
。 このことの発見が重要である。
ⅤⅠ 日本政府の輸入政策
日本の低輸入依存度 をもた らした政府の輸入政策,その基礎 になった哲学 (
哩
蘇) を振 り返 って追求 し, 日本の輸入行動 をいかに改変 して行 くべ きか, とい
う政策問題 に 目を転 じたい。
く
戦前の輸入依存度〉
先ず戦前の輸入依存度の推移 を簡単に振 り返 って考察 してお く必要があろう。
明治開国以来の戦前の輸入依存度22)を,スタイライズ して描 くと図 5の山型
カーブになる。明治初期 の6.
5%程度か ら漸増 し,1
9
2
9
年の2
5.
2
%の最高に達 し
たが,以後逓減に転 じた と見 られ るのである。
1
9
8
8
-1
9
0
1
年)では輸入依存度は開国 と輸出入拡大につれ漸増 した
第 Ⅰ期 (
が, その水準 (
期 間平均値)は1
1.
1
% と低かった。茶や生糸 (
一次産 品に近 い)
といった国産原料 を基礎 とす る輸出であったため,輸入の必要は少 なか ったの
である。
1
9
0
1
-6
年)は 日本経済の第 1の構造変動期 である。 日露戦争 をはさ
第Ⅰ
Ⅰ
期 (
んだこの期 に近代的工業化がスター トした。 その中核 は綿工業であった。 この
-8
6-
日本経済の輸入行動
駿河台経済論集
第 5巻第 1号 (
1
9
9
5
)
前でも生産体系輸入であった。それは通説の需要体系輸入ではなかったのであ
る。
もう1つ注 目すべ き問題がある。戦前のノーマルな輸入依存度 をどれ位 と見
0.
2% をとると,それは戦後 1
9
5
2
るかはむづか しいが,か りに第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期平均の2
年平均の1
0.
2%にまで,断層のごとく大幅低下 したことである。 ここに戦時
7
3
中の統制経済主義に基づ く輸入行動原則の樹立 という変革があった。いわゆる
「
1
9
4
0
年体制」の問題である。それが戦後の 「
低 くかつ逓減す る輸入依存度」
を規定 したことに もなる。
く
1
9
40
年体制)
1
9
4
0
年体制』が強調するのは次の 2点である。第 1に,
野口悠紀雄教授の 『
9
4
0
年 (
昭和 1
5
年)前後に作 られた。第 2
官僚首導の統制経済体制は戟暗中の1
に, この1
9
40
年体制が戦後に連続 し,現在 もなお生 き残 っている (したがって
改革の必要がある) とい うことである。同感す る点が多い2
3
)
。
1
9
3
8
年)
,物資動月計画 (
1
9
3
9
年)
,
本稿 との関連で言えば,国家級動月法 (
1
9
41
年 5月)
,食糧管理法 (
1
9
4
2
年 2月)などにより, 1)輸入は
貿易統制令 (
, 2)秩
必要最小限の一次産品に限ること,つ まり「ミニマム中間財輸入主義」
鍋,機械類 (自動車,航空機 を含め)は自給で きるようにす ること,つ まり「
製
品類の輸入代替生産化」そして 「フルセッ ト型工業化」の方針が建てられたこ
とである。 これ らは,諸列強による経済封鎖の下で戦争 を斗わねばならなかっ
たことか らの必然の措置であった。逆に資源 とくに石油 を求めてアジアへの侵
攻がひき起 こされたとも言える。
もう一つ重要なことは, 3)物動計画であって,必要供給量の調達が優先 さ
れ,価格考慮は全 く無視 されたという点である。これが今 日まで続 く,低 い(1
以下の)輸入の価格弾力性の原因である。石油,鉄鉱石 などの資源輸入は 「
無
nonCompe
t
i
ng)財」であって価格考慮の余地はなかった。消費財にしろ
競争 (
中間財にしろ工業製品はコス トを無視 して 自己生産 (
輸入代替)が推進 された。
コメについて も同様 である。
終戦直後には巨大な率の入超,つ まり国際収支の壁 につ きあたった。都留教
授は,原料食糧の国内増産,輸入原料の代替で きるものの国内生産,原材料利
,
国内資源開発主義」を主張された2
4
)
。 この入超は,米
用の合理化 などという 「
-8
8-
日本経済の輸入行動
国の対 日援助 と朝鮮動乱特需 とによって克服 された。
く
貿易 自由化)
戦後の 日本の貿易 自由化はかな り急速に推進 された。それは輸入依存度 を高
め る方向に作用すべ きはずであった。 ところが実際には輸入依存度は低下の傾
向をもったのである。
9
6
3
年に9
2
%,1
9
7
2
年に9
7
%にまで達 した。残
いわゆる 「
貿易 自由化率」は1
2
品目,鉱産物は石炭だけ 1品目,工業品
存輸入制限品目は農産物が大部分で2
は草および革製品 4品 目と,計数型電子計算機およびその周辺機械の 2品目に
1
9
7
5
年 6月現在)
。だが 「自由化率」とい うのは,1
9
5
9
年の輸入額の
す ぎない (
9
5
9
うち,数量制限が撤廃 された輸入品目の割合 を言 うのである。 したがって1
年当時,たとえば銑鉄 といった加工原材料,或いはウイスキー, コピー機など
が輸入されていなかったわけであるが,それ らは 自由化率 とは無関係であった。
他方,繰返 し述べたように,幼稚産業保護育成政策によ り,次つ ぎに花形重
化学工業の誕生 とな り,フルセッ ト型工業化が成功 した。 この間,関税率のエ
スカレーション構造が維持 された り,付加価値率 を高め ること,付加価値率の
より高い産業へのシフ トがスローガンとされた。生産体系輸入 という基本方針
は貫徹 され,輸入依存度は傾 向的に低下 した。
1
9
6
9
年頃か ら出超傾 向が本格化 したので輸入政策の転換がはか られた。鉄鉱
石 ・粘結炭の輸入か ら銑鉄輸入へ (
ボーキサイ トか らアル ミナへ,銅鉱石か ら
インゴッ ト-なども同 じ) という粗原料か ら加工原料 (
半成中間財)- とい う
中間財輸入のシフ トである。 これには公害問題の深刻化 も原因 していた。かか
るシフ トも原単位の節約 となって輸入依存度 を低め る結果になった。
かかる製品 (
中間財に しろ最終消費財に しろ)輸入拡大の動向は,オイルシ
ョックによる資源制約の再認識 と一時的入超化のため,不幸に して中断され,
ミニマム輸入主義に逆戻 りした。そして輸入依存度 をいっそう低下 させ る- イ
9
8
0
年代に入って前進 したのである2
5
)
。
テク産業化に1
加工原材料,製品中間財 (
部品)
, さらに完成消費財 など 「
競争的輸入」が漸
9
8
6
年以降である。それは,大幅な円高化,企業の海外直
く増加 し出したのは1
接投資急増,その活動のグローバル化 (とくに海外調達,逆輸入)によるとこ
deろが大 きい。そ してかか る 「
競争的輸入」 を拡大す るための 「
規制緩和 」 (
-8
9-
駿 河台経済論集
第 5巻第 1号 (
1
9
9
5
)
r
e
g
ul
a
t
i
o
n)が今 日の課題 となって きているのである。
Ⅴ
Ⅰ
Ⅰ 日本の市場開放
日本の低い輸入依存度 を最適 (
o
pt
i
mu
m)な水準に まで高め るべ きである。
またそれ をいかに して実現す るか とい う政策問題 に解答 を出 しうる段階に漸 く
到達 した。
く
垂直貿易対水平貿易〉
i
n
t
r
a
i
nd
u
s
t
r
yt
r
a
d
e
)が他の先進諸国に くらべ低 い,
日本の産業内貿易度 (
それが 日本市場の閉鎖性の証拠であるとい う非難が出されている。
この産業内貿易度 (
以下 Ⅰ
-指数 と略す) とい うのは適 当に分類 した (
通常
SI
TCの 3桁分類品 目)産業 i(
i
-1, 2, 3,--・
n)について, その輸出額
X と輸入額 M との差額つ ま り出超額 ない し入超額が,i商品の貿易稔額 (
つま
りⅩ+M)に対 して どれ位 になるか を示す.すなわち (
下添字 iを付すべ きだ
が省 く)
,
I
a-(
Ⅹ-M)
/(
Ⅹ+M)
である。この a方式では,Ⅹ-M な らば I
a指数 はゼ ロとな り,最 も産業内貿易
度が高いことになる。Ⅹ>M すなわち出超 ならばプラスに,逆に Ⅹ<M すなわ
ち入超な らばマイナスに,I
a指数はなる。 また Ⅹ と M の差額が大 きい程,指
数I
aは, (1以下 であるが)よ り大 きい値 になる。結局 I
aは産業 ごとの輸出入
不均衡率 を示すわけで,産業 内貿易度 とい うよ りは,産業 内純輸 出比率 (
マイ
ナスの場合 は純輸入比率) と言った方が良い。
不均衡度が大 きい程,指標が 1以下ではあるが大 きくあ らわれ ることを避け
るために,次の ように修正す る。すなわち,
I
b-1-(
Ⅹ-M)
/(
Ⅹ+M)
この b方式では,指数 I
bが 1に近いほ ど産業内貿易が進んでいることを示す。
さらに出超 はプ ラス,入超はマイナスにあらわれ ることを避け るために,吹
のように修正 された。Ⅹ-M の絶対値 を分子にお くのである。
I
c-ll I
X-M l/(
X+M)
これが最 も代表的 とされ るグルーベル ・ロイ ド26)指数 である。
一国全体 の産業 内貿易度指数 を求め るには各 i産業 ご とに求め た I
c指数 を
- 9
0-
日本経済の輸入行動
集計せねばならないが,単純平均によるもの と,各産業のシェアに応 じて加重
平均 を求め る方法 とがある。
産業内貿易度指数の算定についてはい くつかの問題がある。第 1に,分類す
I
TCの 3桁 よ りも細 い分類
る産業 iの とり方によって結果が異なって くる。S
にす ると産業内水平貿易 は余 り進んでいないことになる。 これはそもそ もいか
なる目的のために産業内水平貿易度 を求め るのか とい う根本的問題 (
後述) と
連 なって くるO第 2に,一国の絵輸出 と総輸入の間に,大幅な出超あるいは入
超 とい うアンバ ランスがある場合 に, それが均衡 している場合 とくらべ,結果
は違 って くる。
この ような問題が残 るが,算定 された産業内貿易度の若干 を挙げると表 7の
ようなものがある。
表 7aは木村 ・小浜両氏が SI
TC3桁 の1
0
1品 目について計算 された方式 I
c
9
9
1
年 で見 ると,米国は6
6.
0% と産業内貿
のグルーベル ・ロイ ド指数 である。1
5.
1
%であって,米国の半分位 と低 いので
易がかな り進んでいるのに, 日本は3
ある。
表 7bは ドー ンブ ッシュが計算 した ものであるが,厳密な産業内貿易指数で
はな く,商品別の 輸出/輸入比率 である。つ ま り指数が 0の ときには輸出だ
け とい う完全片貿易であ り,指数が大 きく 1に近づ くほ ど,輸出す ると同時に
b方式に近いが,それ
輸入 もす るとい う,双方貿易が 多 くなったことを示す。I
表 7a 日米の産業内貿易指数 (
対世界)
表 7b 製造品の産業内貿易度
1
9
6
21
9
7
01
9
8
01
9
8
71
9
9
1
日
本 2
7.
23
2.
82
6.
72
8.
03
5.
1
アメリカ 4
2.
95
7.
26
3.
05
9.
56
6.
0
(
完全片貿易=0,完全双方貿易=1
)
ドイツ 韓
国
日 本
資料 :アジア経済研究所,AI
DXT(
貿易
統計デー タベース)
出所 :木村福成・
小浜裕久『
実証国際経済
9
9
5,
p.
4
7
学入門』 日本評論社,1
nt
e
r
na
t
i
o
na
lTr
a
de
.
資料 :GATT I
出所 :Ru
di
ge
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W.
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,
1
9
9
3
,p.
1
9
6
.
a re,
-9
1-
駿河台経済論集
第5
巻第 1
号
(
1
9
9
5
)
よりももっと簡単なものである。調査年次が指摘 されていないが1
9
9
0
年頃であ
.
1
7
ろう。 ドーンブッシュは, 日本の双方貿易度が,た とえば 自動車で僅かに0
と低 く, ドイツ
(
0.
7
1
)に くらべて も, さらに韓国 (
0.
9
1
)に くらべて もはる
かに低いことが, 日本市場の製造品についての閉鎖性 を反映 していると非難 し
ているのである。たしかに閉鎖性が原因の一部であろう。だが韓国の方が 日本
より, また ドイツよりも高い双方貿易度であるのは, 自動車生産についての比
較優位度が韓国は未だ低いことの結果であるか もしれない。逆に韓国の比較優
.
3
3
であって, 日本の0
.
3
6よりも僅かであるが低い。
位の強い繊維では0
とまれ,産業内貿易度は,厳密なものであれラフなものであれ,その大小が
何 を意味す るのか,高い方が何故望 ましいのか,その決定因は何 なのか といっ
た問題 をもっと深 く究明 してみなければならない。
く
垂直貿易か ら水平貿易へ〉
特殊商品分類 を用いた第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
節での輸出入構造変動の分析の延長 として,表 8
が算出できる。純輸出比率 NX-(
Ⅹ-M)
/(
Ⅹ+M)
が分類商品群別にベ ンチマ
aと同 じであるが,細別商品毎の産業
ー ク年毎に算出されている。これは方式 I
内貿易指数 を集計 した ものではないか ら厳密な産業内貿易指数ではない。む し
3
品目
ろ 「
純輸出比率」と呼んだ方が よい。なお表 9は,表 8よ りも細分 した2
について同 じ純輸出比率 を藤田夏樹氏が算出 したものである。良 き参考になる。
表 8に基づいてい くつかの重要な問題点 を指摘 してみたい。
NXがマイナスの場合 は入超 を意味す るが,その絶対値が 1に近
.
8
以上
いほ ど一方的輸入 (
或いは片貿易 という)であることを示す。NXが -0
完全特化輸入」と名づけよう。同様に NXがプラス値で
に- 1に近い場合 を 「
.
8
以上に 十1に近い場合 を「
完全特化輸
あるのは出超 を意味す るが,それが +0
.
5より小 さ くなって始めて水平貿易 (
或
出」とみなす ことに しよう。絶対値が0
.
2よ り小 さ くなって始
いは双方貿易)が進行 したと言えよう。そして絶対値が0
純輸出比率
めて本格的水平貿易だ と判定できよう。
NX-(
Ⅹ一M)
/(
Ⅹ+M)
-0.
5の場合には,表 7bのごとき輸出入比率つ ま
M は,輸入 M が輸出 Ⅹの1
/
3
である。
NX-0.
2
の場合に漸 く Ⅹ/
M-1:
りⅩ/
2
/
3に達す るのである。
(i)表 8の最初の 3商品群は一次産品輸入であ り,「
完全特化輸入」である。
-9
2-
日本経済の輸入行動
表 8 特殊分類商品群別水平分業度
Ⅹ-i財輸出額 (
百万 ドル)
,M-i財輸入額 (
百万 ドル)
Ⅹ-M)
/(
Ⅹ十M)
,輸入 シュア (
%)-i財輸入額/稔輸入額
純輸出比率 -(
%)-i財輸入額/
GNP
輸入依存度 (
Ⅹ
M
純輸出比率
輸入シェア
輸入依存度
1,
6
2
0
9,
2
4
4
1
7,
7
8
3
4
6,
41
0
-0.
6
7
-0.
8
3
-0.
8
5
-0.
9
3
2
0.
4
1
4.
9
1
3.
0
1
6.
9
2.
0
2
2.
0
1
1.
3
9
1.
0
0
2,
81
0
1
2,
8
2
8
1
6,
9
4
3
2
5,
5
91
-0.
8
7
-0.
8
4
-0.
8
6
-0.
8
2
35.
4
20.
7
1
2.
4
9.
3
3.
5
0
2.
7
9
1.
3
3
0.
5
5
9
3
0
1
8,
9
0
0
3
9,
3
8
0
2
7,
6
3
0
-1.
0
0
-1.
0
0
-1.
0
0
-I.
0
0
1
1.
8
3
0.
4
2
8.
8
1
0.
i
1.
1
7
4.
1
0
3.
0
8
0.
6
0
0.
2
9
0.
2
2
-0.
0
7
-0.
0
4
1
9.
6
2
2.
3
3
0.
4
2
5.
7
1.
9
4
3.
01
3.
2
5
1.
5
2
(
4) 加工原料 (
工業用原材料一粗原料一石抽)
1
9
6
4
2,
8
0
9
1,
5
6
2
1
9
7
4
21,
8
9
3
1
3,
8
51
1
9
8
4
3
5,
5
9
5
41,
3
5
7
1
9
9
4
6
5,
7
6
2
7
0,
6
3
3
(
5
) 資本財 (
機械類)
1
9
6
4
1,
7
1
8
1
9
7
4
1
9,
4
9
7
1
9
8
4
7
9,
5
7
0
1
9
9
4
2
3
7,
7
4
2
8
4
2
4,
3
6
2
l
l,
3
2
6
4
8,
7
8
7
0.
3
4
0.
6
3
0.
7
5
0.
6
6
1
0.
6
7.
0
8.
3
1
7.
8
1.
0
5
0.
9
5
0.
8
9
1.
0
5
(
6
) 非耐久消費財
1
9
6
4
1
9
7
4
1
9
8
4
1
9
9
4
4
91
6
8
8
1,
9
0
7
3,
1
9
6
4
3
1,
3
8
9
3,
2
01
2
4,
2
01
0.
8
4
-0.
3
4
-0.
2
5
-0.
7
3
0.
5
2.
2
2.
3
8.
8
0.
0
5
0.
3
0
0.
2
5
0.
5
2
1,
0
31
1
0,
41
6
4
8,
1
6
5
7
6,
3
1
2
9
0
1,
2
3
6
2,
7
31
2
3.
4
2
4
0.
8
4
0.
7
9
0.
8
9
0.
5
3
1.
1
2.
0
2.
0
8.
5
0.
l
l
0.
2
7
0.
21
0.
5
0
(
7) 耐久消費財
1
9
6
4
1
9
7
4
1
9
8
4
1
9
9
4
- 93-
駿河台経済論集
表 9 日本における純輸出比率の推移
第5
巻第 1
号
(
1
9
9
5
)
日本経済の輸入行動
1
)
両種貿易の決
かか る垂直貿易か ら水平貿易-の転換は重要 な意味をもつ。(
定 因 とかそれぞれが生み出す貿易利益 は異な り,両者 を基礎づ ける貿易理論 も
変遷 して きた(
それ を詳論す る余裕がないが)。つ ま り貿易の役割についての考
2)
具体的には, 日本経済が もっていた 「
資
え方 (
哲学)の転換 を必要 とす る。(
源輸入の壁」 とい う制約か ら転 向 しなければならない。 日本経済は一次産品輸
入が 巨額 に必要 であるか ら,工業品は 自給 自足 し,出超 を様がねばならない と
い う考 え方 を放棄せねばな らない。言い換 えると,一次産 品輸入に限るとい う
「ミニマム輸入主義」か ら転向 しなければならない。
(
3)
石油で代表 され るように,内外 コス ト差は巨大 な ものがあ り,一次産 品は
いわば 「
無競争 (
nonC
o
mpe
t
i
ng)輸入品」である。 その輸入は, 日本経済 とい
う生産体系 を始動 させ補完す るために技術的に数量的に決 まる。価格考慮の余
地は少ない(
価格弾力性 は小 さい). コメのように,輸入 自由化 し,国内流通の
規制緩和 をし,輸入 を増すべ き余地のあるもの もあるが,それ も純輸入比率 (
つ
ま り輸入特化度) を高め ることになる。
(i
i)それでは工業品 どうしの水平貿易が十分 に進展 したであろうか。先ず製
品消費財について見 よう。繊維製品が 中心 であ る非耐久消費財 の NX指数 は,
1
9
6
4
年の0.
84とい う特化輸 出 (
出超)か ら1
9
7
4
年の -0.
3
4
,1
9
8
4
年の -0.
2
5に,
入超の水平貿易 に一転 しているOこれは望 ましい転換であるOだが1
9
9
4
年には-
0.
7
3と輸入特化 に進んでいる。繊維品は性格が一次産品に近づ いたのである。
9
6
4
,1
9
7
4
,1
9
8
4
家電機器 と自動車 (
完成車) を主 とす る耐久消費財では,1
年では NX は0.
8以上で輸出特化 品であった。それが1
9
9
4
年には0.
5
3とな り,漸
く水平貿易化に前進 した といえる。
非耐久 と耐久の両者 を合計 した製造消費財輸入は,1
9
6
4年 と1
9
9
4
年の間に,
輸入 シェア を1.
6%か ら1
7.
3
%へ,輸入依存度 を0.
1
6
%か ら1.
0
2
%へ急増 させ
た。 だが1
9
9
4
年 で も消費財輸入が この程度に低 いことは, 中間財輸入に限 りミ
ニマム輸入 をす るとい うプ リンシプルが働 いていることを意味す る。製品消費
財の輸入に踏み切 ったのはご く最近 (
1
9
9
4
年)にす ぎない。 このため耐久消費
9
9
4
年以前は輸 出特化 品であったのである。水平分業化は未だ不十分 であ
財は1
り,最適の輸入依存度には達 していない と言えよう (
その理由は後述)0
厳密な産業内貿易論の一つによると,産業内貿易 は消費 多様化の利益 をもた
らす とされ る.すなわち同一 目的 を達す る類似商品であるが,デザ インや ブラ
-9
5-
駿河台経済論集
第 5巻第 1号 (
19
9
5)
ン ドネームがわずかに違 うといった相似的差別化品種 d
i
f
f
e
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nt
i
a
t
e
dp
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o
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uc
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がある。 この差別化 品種 につ き双方通行 (
t
wowa
y)貿易つ ま り産業 内貿易が
d
i
ve
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s
i
f
i
c
a
t
i
o
n)が実現 し, それは双方
行われると,消費者選択範囲の多様化 (
国の消費者効用 を高め るこ とになる27)。
これは 「
需要体系輸入論」の一環である。 これ を実証す るには,産業内貿易
の対象 とす る商品カテゴ リー を厳密に,細い分類に下 ろ して,定義 しなければ
ならない。それは容易 なことではない。た とえば 「
輸送機械」 とい う中分類の
中には船舶,航空機, 自動車,二輪車 などが含 まれ る。「
輸送機械」
全体 では高
い産業内貿易指数 になる場合 で も,航空機 だけ を取上 げると指数 はゼ ロに近 く
なる。 自動車 といって も大型高級車 と小型車或 いは商用車は違 った差別化 品種
なのか とい う問題が生ず る。 さらに 「
輸送機械」の中には完成車 とその部品の
両者が含 まれ るが,両者の間の貿易は産業間垂直貿易 なのか産業 内水平貿易 な
のか とい う問題 に も直面す る。
工業品間水平貿易」とい う広
そこで, ここでは厳密 な産業 内貿易 ではな く,「
いコンセプ トを用いることに したい.だがそれは一次産 品対工業品 とい う 「
垂
直貿易」 とは大 いに異なる。一次産品が内外 コス ト差が隔絶 して大 きい 「
無競
争品」であったのに対 し,工業品は コス ト (
価格)差 によって左右 され る 「
競
争品」である。 内外価格が同一になるまで貿易が行 われ るべ きである (
理論的
には)
。したが って運送費 を上 回る内外価格差が存続す る場合 には,輸入はまだ
貴通の規模 に達 していないことになるのである。
広 いカテゴ リーの産業 (
上述の輸送機械 のごとき) をとれば, 多数の商品が
含 まれるので,比較優位 品 も比較劣位 品 も発生す る。 また 自動車のごとき組立
産業において,比較優位 の工程部 門 と比較劣位 のそれ とが生起す る。 こうして
工業 品間水平貿易が喚起 されて くるのである。
工業生産 においては,大規模生産,学習効果,技術革新 な ど (
一括 して規模
経済 と呼ぶ)に基づ き生産費が逓減す る。輸出市場 を開拓 して生産規模 を拡大
す るとコス トを引下げることがで きる。相手の外国企業が別の品種について同
様にすれば, 自国の輸入品の価格 は低下す る。つ ま りお互に規模経済の利益 を
享受 で きるようになるoこれが私の言 う「
合意的国際分業J
2
8
)
であ り,「
棲み分け
分業」 と言って もよい。
工業品間水平貿易において輸入す る財が中間財 であるならば, それが低廉に
-9
6-
日本経済の輸入行動
入手できるようになることは,その中間財 を使用す る国内生産が コス ト低減,
国際競争力増強 を果た しうることになる。
これ らが 「
生産体系貿易論」か ら見た工業品水平貿易の利益に他 ならない。
(
i
i
i
)
上述の解明は製造中間財の輸入について も同様に適用できる。表 8によ
9
6
4
年の0
.
2
9
か ら1
9
9
4
年の-0
.
0
4
へ変化 した。
ると,加工原料の純輸出比率は,1
これは加工原料についての水平貿易化が大いに進展 し,殆んどバランスの とれ
た双方貿易 を達成 したことをあらわしている。輸入 シェアで見ても輸入依存度
9
8
4
年 まで加工原料は大幅に増加 した。1
9
9
4
年においてそれ らが減
で見て も,1
っているのは,貿易の重点が次の資本財 (
機械類)に移 ったか らである。
9
6
4
年の0
.
3
4
か ら1
9
8
4
年の0
.
7
5まで輸出特化 を強め
資本財の純輸出比率は,1
9
9
4
年に0
.
6
6
にな り, ご く近年に水平貿易の方向に踏み出したこと
た。 それが1
9
8
4
年 までは相対的に減退 したものが,
を反映 している。資本財輸入の重要性 も1
1
9
9
4
年に急増 した。
製造消費財 と製造中間財 (
加工原料 +資本財)を合計 した工業品 (
或は製品)
とい う観点か ら総括す ると次のように言える。(
1
)
純輸出比率 NXの変化は, 日
a)
比較優位
本の産業構造 ・輸出構造の比較優位の動態的変動 を反映 している。 (
b)
比較劣位化す るに
産業は輸出特化 を強め,プラスの NXの値 を大 きくした。(
b)
の傾向を
応 じて水平貿易に向かい,やがてマイナスの NX値 を大 きくした。(
示 したのが先ず非耐久消費財 (
主に繊維)であ り次いで加工原料 (
鉄鋼 など)
9
8
4
年 まで(
a
)
の傾向を示 しているのが資本財 と耐久消費財 (ともに機
である。1
械類)である。
(
2
)
資本財 と耐久消費財が水平貿易化に向ったのは1
9
8
5
年以降1
9
9
4
年にかけて
である。 これには円高化,海外直接投資による部品や製品の海外調達 (
逆輸入)
9
9
4
年の NXは資本財は0
.
6
6
,耐久消費財は0
.
5
3
であっ
の貢献が大 きい。だが1
0.
2
以下)には到達 していない。逆に言えばそれ らの輸入
て,本格的水平貿易 (
はいまだ最適水準に達 していない。
(
3)
既に第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
節で指摘 したことだが,一次産品輸入に限るというプ リンシプル
は修正 して,製品中間財に移行 したのであるが,依然 として 「ミニマム中間財
9
8
4
年頃 までは堅持 されていた。 このため機械類の水平分業化が
輸入主義」が1
一番遅れているのである。
相対輸入価格 Pm/
Pd と相対輸出価格 Px
/
P。
の分析 (
図 4,表 1,表 6を見 よ)
-9
7-
駿河台経済論集
第 5巻第 1号 (
1
9
9
5
)
に立戻 ってみ よう。全期 間 (
1
9
5
2
-1
9
9
4
)について も妥当す るのだが,最近の
第Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
期 (
1
9
8
5
-1
9
9
4
)に注 目してみ よう。Pm/P。は年 -3.
9
9の率 で低下 した。
Px
/
Pd も年 -3.
3
0の率 で低下 した。円高化 と海外直接投資の影響が大 きいので
あるが,輸入品 も輸 出品 も (
つ ま り貿易可能財)が ともに国内財 よ りも著 しく
価格低下 をみたことは,われわれの 「
生産体系貿易」の観点か ら見れば当然の
結果であ り,工業品間水平貿易の成果であると評価 で きる。 この期間に工業品
輸入額 (
2.
8
5
倍) も輸出額 (
2.
3
2
倍) も価格低下にかかわ らず急増 している。
つ まり拡大貿易 をもたらしている。
Pdと Px
/
P。
が ともに大幅 に低下 したこ とは,貿易財 (
輸入
しか しなが ら,Pm/
可能財 と輸出可能財) と国内財 との内外価格差が大 き く広が ったことを意味す
る。 また内外価格が均一 になる最適の水準にまで輸入 も輸出 も十分 に行 われて
いないことを物語 ってい る (
以上の ような分析 を各分類商品ごとに,或いは主
要単一商品ごとに行 うべ きであるが, その余裕がない)
0
(
i
v) 「中間財 に限 る ミニマム輸入主義」逆に言えばフルセ ッ ト工業化 による
「
製品輸入削減主義」の結果, 日本の輸入依存度が傾 向的に低下 したことは,
GNPに 占め る国内財生産の割合が高 まったこ とを意味す る。国内財 (
或いは非
貿易財)は外国の競争か ら隔馳 されている 「
無競争 グループ」であ り,ために
その内外価格差が発生 し拡大す る。土地や労働 の ように国際間を移動 で きない
ために国内財 となるもの もある。関税,輸入数量制限などの水際貿易障害や各
種 NTB (
税制, 多数の規制, さらに産業 ・
労働組織や競争政策な どを含む)に
9
)
。
よって,本来輸入可能財 であるものが国内財 に転 じているもの も多い2
か くていわゆ る 「
規制緩和」が内外価格差 を縮小す る方向に積極的に敢行 さ
れねばならない とい う問題に到達す る。事実,規制の多い財の内外価格差 は大
きく,規制緩和の進んだ財のそれは縮小 して きた との調査3
0
)
も出ている。規制緩
和が成功すれば,輸入は もっ と最適規模 にまで増大 し,工業品間水平貿易が深
まることになる。それが期待 されている。
(
Ⅴ)
最後に 日本の大幅輸出超過の是正 とい う課題がある。出超は商品別水平
分業度 を,貿易均衡 であったならば とい う状況に くらべ,低 くしている。 出超
とは 「
稼 ぎ以下の くらしをす る」 とい うことであ り, それだけ得 らるべ き貿易
利益 を少 な くし,厚生水準 を低 くめている。拡大的貿易均衡 を達成す るよう輸
入 を拡大す ることを目ざすべ きである。 そこまで増加す るのが最適輸入水準で
-9
8-
日本経済の輸入行動
ある。 そ うす るには,産業 ご とに も水平貿易 を高め深化す るこ とが必要 であ
る31)0
ⅥI
I 結論 :最適輸入依存度の達成
次の結論 (
政策勧告)に到達す る。 日本経済は ミニマムでな くオプティマム
(
最適)輸入依存度 (
た とえば2
0
%程度) を達成すべ きである。 ここに最適輸
入 とい うのは, (
輸送費 を除いた)内外価格が均一にな り,かつ輸入額 -輸出額
とい う貿易均衡 を保証す る水準の輸入である。
この最適輸入は,市場機構つ ま り価格の働 らきによって達成 され るべ きであ
る。 それには貿易 ・投資の水際 自由化 だけでな く国内の各種規制緩和 ・撤廃が
必要 とされ る。だがそれに先立 って,輸入行動 ない し貿易の役割についてのプ
リンシプルの転換,考 え方 (
哲学)の洗脳が不可欠である。
第 1に, 日本の貿易 はご く最近 まで,輸入はロス,輸出はゲインであ り,出
超は良いことだ とす る重商主義 に立脚 していた。追いあげ経済であったために,
止む をえなか ったか もしれない。 この重商主義 を-擬 し,輸入品を国内で生産
す るよ りも安 くかっ よ り多 く入手す ることこそがゲインである。 したがって 日
本市場が閉鎖的であるといった外国の非難 (
外圧)があるか らとい う理由では
な く, 自国の利益 になるか ら積極的に 自由化 し,最適水準 まで輸入 を増加すべ
きである。 これが 「
輸入 こそゲインだ」 とす る自由貿易主義である。 このプ リ
ンシプルに転向 しなければならない。
輸出超過 とい うことは 「
稼 ぎ以下の くらしをす る」 ことであって,得 られ る
べ き貿易利益つ ま り厚生向上 を十分 に享受 しているこ とにならない。 この点 も
考 え直 さぬばならない。
第 2に, 日本経済は 「ミニマム輸入主義」 を固執 して きた。最初 は国産で き
ない無競争財 たる一次産 品の必要最小限の輸入に限った。次いで工業品の輸入
も漸次増す ことになったが, 中間財輸入に限 られ,製造消費財の輸入はご く最
近 まで開放 されなかった。 ミニマム輸入主義の反面は, フルセ ッ ト工業化 を推
進 し,工業品輸入は制限す るとい うプ リンシプルであった。か くて輸入依存皮
は1
9
5
0
年代 の1
2
% ぐらいか ら1
9
9
0
年代 の 6%程度の きわめて低 い水準に逓減 し
た。
今や,価格考慮軽視の技術的 ・数量的 「ミニマム輸入主義」 を放棄 して,最
-9
9-
駿河台経済論集
第 5巻第 1号 (
1
9
9
5
)
適輸入を達成すべ きことは明 らかである。 巨大な出超が外国か ら非難されてい
る。内外価格差 を無 くす るほどの最適輸入を達成す ることな くしては, 日本経
済の更なる能率化,成長はあ りえない。そこまで輸入を増大す るのでな くては,
i
ga
bs
o
r
be
rにな りえない。国際環境 を良好に維持す ることはできな
外国品の b
いのである。
第 3に,輸入依存度 を最適水準 (
た とえば2
0
%)に引上げるには,一次産品
9
9
4
年で僅かに 2%程度に低 くなっているか ら,工業品 (
加工
の輸入依存度は1
原料,資本財,製造消費財)について水平貿易 を拡大 ・深化 しなければならな
い。垂直貿易か ら水平貿易-の転換である。工業品は自己生産 し,輸入はしな
い,輸出す るだけであるとい う完全 フルセ ッ ト工業化は修正 されねばならない。
0
%程度は輸入すべ きであるとい うことになる0
各産業 も平均す ると2
もともと完全 フルセ ッ ト産業体系 というものはあ りえない。必要 な一次原料
だけで も,次には加工原料や機械設備,部品なども,輸入に依存 したのである
か ら完全 自給 自足ではない。ただそれが 「ミニマム輸入主義」のため技術的 ・
数量的に低 い水準に制限されてきたのである。それを価格による選択 を十分に
とり入れて最適な水準にまで高める必要がある。
0
%程度の最適輸入をす ることはフルセ ッ ト産業体系 を崩壊
平均 で産出額の2
させ ることにはならない。水平貿易 をとり入れたフルセ ッ ト工業体系 という,
より効率の高い (
輸入による利益が加わるので)「
成熟」フルセッ ト産業体系へ
加工貿易立国」か ら「
水平貿易立国」
脱皮すべ きなのである。 このことはまた,「
或いは 「
成熟貿易立国」への転進だ と言って もよい。
輸入が最適水準 まで増加す ることは,直接投資による企業の海外進出が急増
することと合わせて, 日本経済の空洞化,失業の増加 をもたらす との懸念が議
論 されている。たしかに生産縮小,他産業への転換 をせ まられる企業 もい くつ
か出てこよう。 しか し水平貿易 をとりこんだ成熟貿易においては,輸入が増す
が同時に輸出も並行 して増加 し,拡大的均衡貿易 を達成す るのであるか ら, 日
本経済全体 としては空洞化 とか雇用機会減少は生 じない。その間に,経済全体
の生産効率が向上 し,われわれの厚生が一段 と高 まるのであるO
-1
0
0-
日本経済の輸入行動
近)
1)デー タの入手,計算, モデルの選択 などにつ き,三井物産貿易経済研究所,一
橋大学情報処理 センター,東京国際大学大学院奥原雄大君,大阪市立大学の横 山
将義助教授 ならびに一橋大学の山津逸平教授の助力 を得 た。感謝 したい。
2)本稿 は,小 島 清 「日本の輸入依存度一輸入拡大は容易ではない-」 世界経
済評論
1
9
9
4.4で着想 した問題点 を深化 し,ひ とつひ とつ芙証 してみた ものであ
る。理論的裏づ けは次で試みた。小 島 清 「
需要乗数 と供給乗数- 2つの開放経
済体系-」 駿河台経済論集
4の 2 (
1
9
9
5.3)
0
3) 日本市場の閉鎖性 に関す るアカデ ミックな検討には次の ものがある。
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7
,No.
3
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9
3
,pp.
2
1
4
3
.
次の反論がある。法専充男 「
低水準の産業内貿易 ・製品輸入 :市場閉鎖性の根
拠にならず」
9
9
0.
1
0.
1
8
の経済教室.
日本経済新聞,1
4)UN,Wo
r
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ntR勿o
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,1
9
9
1
,pp.
1
9
4
1
9
5
.
5)商 売進 『日本の経済発展』第 2版,東洋経済新報社,1
9
9
2
,p.
1
5
8
。
6)小 島 清 『
応用国際経済学』第 2版,文英堂,1
9
9
4
,p.
1
6を見 よ。
7)次 を参照。小 島 清 『
国際経済論』新紀元社 ,1
9
5
0
,第 6章。
8)篠原三代平 『
経済大国の盛衰』 東洋経済新報社 ,1
9
8
2
,p.
2
0
2
f
f
.
-1
0
1-
駿河台経済論集
第 5巻第 1号 (
1
9
9
5
)
9
8
8
,pp.
5
3
・
5
7.
9)森 口親司 『日本経済論』 創文社,1
製品輸入/捻輸入) と製品輸入依存度 (
製品輸入/GNP)の国
1
0
)製品輸入比率 (
際比較 を試み ると次の とお りであ り, 日本のは著 しく低いことがわか る。
製品野人比率
(
%)
1
9
8
51
9
9
2
日
本
31.
05
0.
2
米
国
製品輸入依存
度
1
9
8(
%)
5 1
9
9
2
7
4.
78
3.
0 3.
2
カ ナ ダ
6
8
4.
5 1.
6.
4 7.
3
ドイ ツ
6
英
国
8
6.
2
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8.
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6
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9
2.
07
8.
2
1
6
8 1
6
9
5.
7.
次 イタ
よ り引用
リア :小浜裕久
51.
27
2
・
.
柳
5原 l
l
透.
0
編著
1
1.
『
2
東 ア ジアの
1
9
9
日
5
,p
本の対内
.
2
4
3
。(
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d)
構 造 調整』 J
ETRO,
く低 いことが,「
閉鎖性」直接投資つ ま り諸外国企業の 日本市場への参入度が著 し
投資残高の対内投資残高に対す
1つの主要指標
は(
1
9 としてあげ られている。対外直接
の もうる比率
ドル対1
6
0
億 ドル)であるのに,米国では1.9
年末), 日本では1
5.
5:1(
2
4
8
0
億
2
億 ドル対4
2
00
億 ドル)
,ド
2:1(
4
8
7
0
イツでは2.
l
l
)戦後数次の経済計画の
億 ドル対6
0
0
億 ドル)である。
3:1 (
1
3
5
0
った。けだ し,GNPの規立案 にあたって,輸入依存度は重要なパ ラメー ターであ
る輸出額 とバ ランス しな 模 ×輸入依存度 -輸入額 とな り,これが独立に予測 され
込 まれ るなら GNP成長率
ければならない。 したがって輸入依存度が低下す ると見
で輸入依存度が高 まるの を高め ることがで きる (
その逆は逆)か らである。そこ
久雄 「日本経済 と輸入依存度」
か低 くまるのかが真剣に検討
(
経
された。 その代表が,金森
経
9
5
7
年1
0月に起草) 『日本
企庁 内部資料 として1
1
2
)済の
「
昭和
5
0
3
年0
年代
・金森久雄集』
におけ る輸入依
NTT 出版,1
9
9
4
。
存度の上昇 について」
日銀調査
月報,1
は,次の方式で商品別 (
或いは産業別)輸入依存度
を詳 しく
検 出 した
9
6
6.8
(
1
)(
工業用原料輸入依存度)
。すなわち
日本経済の輸入行動
(
2)(
輸入原料手当て率)
(
3)(
輸入原料投入率)
工業用原料輸入額
工業用輸入原料消費額
工業用輸入原料消費額
鉱工業給生産額
(
4)(
鉱工業付加価値率の逆数)
(
5)(
鉱工業化率)
鉱工業総生産額
鉱工業付加価値生産額
鉱工業付加価値生産額
国民絵生産額
3)
と(
4)
は
かか る要因分解 は各産業別に適用で きる。 この うち,技術進歩によ り(
小 さ くなることが期待 で き, それだけ(
1
)
の輸入依存度 を低める。 より大 なる輸入
依存度の産業の GNPに 占め るシェアが減少 し,代 わ りによ り小 なる輸入依存度
の産業のシェアが高 まれば (
産業構造変動 で(
5
)
にあ らわれ る)全体の輸入依存度
を低め ることになる。
9
5
9に執
篠原三代平 「
経済成長論争 ・
在庫論争の問題点」 (
最初 『
理論経済学』1
筆) 『日本経済の5
0
年 ・篠原三代平集』
NTT 出版,1
9
9
4は p.
1
9
7
の図 3につい
3
)
に相 当す る 「
原単位係数」は 「
1
9
5
3
年 をピー クとして,はっきりした
て,上の(
テンポで低下 しつづ けている。 これは,急激な技術革新 と産業構造の変化であ り,
われわれは原単位の低下が輸入依存度の上昇 を阻止 した持練的役割にまず注意せ
ねばならない」(
p.
1
9
6
)
。その他 い くつか重要 なポイン トを指摘 している。
前注にかかげた金森氏の研究 をも含め, これ らの諸研究が,本稿で言 う 「
生産
体系輸入」 とい う発想に立脚 している。それ以上ではない。 このことに注 目した
いのである。
われわれ も産業別輸入依存度の変化 と各産業の GNPに占め るシェアの変化 と
を検 出 して,仝経済の輸入依存度が長期的に低下傾 向をもったことを裏づけたい
のであるが,本稿 ではその余裕がない。
1
3
) この通常の計測式は
M/
Pm-f(
Y/
P。
,Pm/
P。)
なる輸入関数 を指定 している。だが Pmと Pdが各 2回挿入されているので,計測
式において 自己相関が生 まれるおそれが十分 にある。そこでもっと良い輸入関数
がない ものか とい う疑問が もたれ,われわれの図 3におけ る M/
Y,m/
y,Pm/
P。
の傾 向線の分析か ら見て,次の ような輸入関数の方がベ ターではないか とも思 う。
すなわち,
M-f(
Y/
Pd
,Pm)
1
4
)こうい う問題提起 を田中教授が始めて行 ったO 圧伸 書助 『日本の国際収支』 早
稲 田商学
第2
5
9
号 (
1
9
7
6.9)
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no
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,
-1
0
3-
駿河台経済論集
第 5巻第 1号 (
1
9
9
5
)
No.
5
,1
9
6
9
.
mst
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tなどがある。次 を参胤 Ra
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5
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,No.
3
,1
9
8
6
.
1
6
) 日本開発銀行 『
調査』第1
5
4
号 (
1
9
9
1.9)
,p.
7
4
。
1
7
)南 亮進 『日本の経済発展』第 2版,東洋経済新報社 ,1
9
9
2
,p.
1
7
9
。
1
8
)生産の充実 につれ輸出が増加す るのであるか ら,輸出は生産変化 よ りも 1期 お
くれて変化す るか もしれない。逆に輸出が被乗数になるとの 「
需要乗数」が正 し
いならば,輸出は国民所得の変化に 1期先だって変化す るか もしれない。 この二
種のタイムラグを入れた関数 を計測 してみたが,αの値 は n
ot
i
mel
a
gの場合 に
くらべいずれ も殆ん ど違いがなかった。
1
9
)表 6に見 られるように,全期 間についての計測結果の方が, 3つの期 に分けた
場合 よ りもベ ターなフィッティングを示 している。従 って期別検討は省 くことに
す る。
2
0
)最 も検討に値す る文献は次の ものである。
YokoSaz
a
nam
i ,Shu
j
i
r
oUr
a
t
aandHi
r
okiKawai
,Me
がu
S
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ngt
o
n,D.
C.
,
J
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n
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y1
9
9
5
.
2
1
)青木 健 『
太平洋成長の トライアングル』 日本評論社,1
9
8
7
年の第 2章 と第 5
章が,1
9
8
0
年代の 日本の輸入依存度低下の原因を詳 しく追求 している。私 と同 じ
「
生産体系輸入」 とい う考 え方 といえる。 日
く「日本の輸入はむ しろ 日済経済の
ダイナ ミズムを維持す るための産業構造の変革 と国際分業の再編の有力なテコと
」(
p.
1
3
2
)
。
い う観点か らとらえるべ きである。
なお, 中北 徹 ・浦 田秀次郎 ・原田 泰 「なぜ市場開放が必要 なのか」三 田出
,
版会,1
9
9
3は 「サプ ライサ イ ド強化 のための市場 開放」(
p.
l
l
) と言 ってい る
が, これ も 「
生産体系輸入」 とい うコンセプ トに属す るであろ う。
直接投資 (
対外,対内) も日本では,生産体系開放経済理論に立脚 して推進 さ
れていると言えよう。た とえば次 を参照。『
平成 6年版
通商 白書』
1
9
9
4
,pp.
2
0
8
-90
2
2
)私の詳細な研究がある。小島 清 『日本貿易 と経済発展』国元書房,1
9
5
8
の第
2章 「日本の経済発展 と貿易依存度」。同 『
世界経済 と日本貿易』勤葦書房,1
9
6
2
の第 8章 「
経済成長 と最適輸入依存度」。
2
3
)野 口悠紀雄 『
1
9
4
0
年体制- さらば戦時経済-』東洋経済新報社,1
9
9
5
0
同様な指摘 として次に注 目したい。山本紫緯 『日本型政策の誤算一経済摩擦解
-1
0
4-
日本経済の輸入行動
9
9
3
。
梢のために-』同文館,1
,『市場開放のために』同文館,19860
同
2
4
)都留重人 「日本貿易政策の主要問題点」経済研究,1
9
5
3.70
これに対 し中山教授は 「
貿易第-主義」 を主張 されたのであるが, これが 「
加
工貿易立国」のすすめであった.た とえば, 中山伊知郎 「この十年一経済-」 日
9
5
5.8.
1
5
。
本経済新聞,1
終戦直後期の問題 については,次で論 じている。小島 清 『
交易条件』勤葦書
房,1
9
5
6
,pp.
2
9
5
-3
1
8
。なおこの本には篠原教授 との 「
交易条件論争」が組込 ま
れている。
2
5
)小 島 清 ・小宮隆太郎編 『日本の非関税障壁』 日本経済新聞社,1
9
72の拙論 は
日本 の輸入規制が,輸入数量制限だけでな く外貨割 当ての双方によって 「
水 もも
9
7
9
年末の 「
外国為替お よ
らさぬ」 タイ トなものであったことを詳論 している。1
び外国貿易管理法の改正」によって,始めて本格的 自由化 に前進 した と言える0
2
6
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1
9
7
5
.
「
産業 内貿易」については実に多数の文献がある。規模 の経済-長期的費用逓
減が独 占行動,s
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t
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ct
r
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depol
i
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yを生むので,それ との関連でも理論的究明
が進め られている。 ここでは次の 日本 についての実証文献だけをあげてお く。
Saz
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,Yoko, "Pos
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no
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,Vol
.
1
8
,No.
2
,1
9
8
2
.
佐々汲楊子 『
国際分業 と日本経済』東洋経済新報社,1
9
8
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No.
5
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y1
9
9
2
.
,
佐野玉雪 『
産業内貿易の実証分析』国際基督教大学大学院行政学研究科修士論
9
9
1.10
文,1
日本開発銀行 『
調査』第1
4
8
号 (
1
9
9
1.3)「国際水平分業の進展 と主要国産業の
ダイナ ミズム」。
2
7
)次 を参照o小 島 清 『
海外直接投資のマ クロ分析』文 集堂,1
9
8
4
,pp.
8
5
-8
6
。
2
8
)同上,pp.
9
3
-9
4
。小島 清『
応用国際経済学』
文異堂,1
9
9
4
,pp.
3
4
1
-4
7
,pp.
3
5
7
-6
0などを見 られたい。
2
9
)国内財の代表は各種サー ビスである。家賃, ホテル代,高級 レス トランの食事
代,娯楽費,航空運賃 などの割高 (
外乱 こくらべ て)が 目につ く。サー ビス貿易
の 自由化が必要 とされ る所以である。(
サー ビス貿易については,多数の文献があ
-1
0
5-
駿 河台経済論集
第 5巻第 1号 (
1
9
9
5
)
るが,次善だけ を指摘 してお く。佐々披楊子 ・浦田秀次郎 『
サー ビス貿易』東洋
経済新報社,1
9
9
0
)
海外旅行や技術貿易 などの盛行 に伴 ってサー ビスを含む実質輸入依存度は近年
9
8
4
年の1
3.
3
0
/
.か ら9
0
年の1
8.
5
%(
最高)
,9
2
年の
かな り高 くなったO た とえば,1
1
6.
6
%に増加 した。 ノンサー ビスの実質輸入依 存度 (
付録表) を 3-5%ポイン
ト上 回った。ただ しこのことをもって 日本の輸入依存度 は欧米に くらべ十分 に高
い水準に達 した とは言えない。けだ し欧米で もサー ビスを含む輸入依存度は 日本
と同様に ノンサー ビスのそれよ り高 くなってい るか らである。本稿 では無視 した
が,サー ビス貿易 を含む分析は今後の重要 な課題である。
3
0
)経済企画庁 『
物価 レポー ト'
9
2
』1
9
9
2
。
3
1
)1
5
年 も前か ら産業 内分業 を勧めているのが佐々披教授 である。佐々披楊子 『
国
際分業 と日本経済』東洋経済新報社,1
9
8
0
, とくに p.
1
6
0 0
-1
0
6-
日本 経 済 の 輸 入 行 動
付録表
国民総生産 (
GNP)
,輸 入,輸 出デー タ
1
9
5
2
-1
9
9
4
デフ
名目輸入 実質輸入 相対輸入
暦年 名目
(
1
)
(
2
)
(
3
)
(
4
)
(
5
)
(
6
)
(
7
)
(
億円)
G
NP (
1
9
G
8
5
N
=
P
1
0
0
一
)1
実質
9
(
8
1
5
0
億円)
G
NP 輸入
(
億円)
額(
通関)(
1
9
輸
8
5
=
E
入
3
1
0
0
)実質輸入額
(
4
億
5
(
8
)
(
9
)
レ
一
円) (
1
952
60,
51
3
21.
8
27,
8
4
)
/
(
1
)陶 (
6
)
/
(
3
)陶 5
)
/
(
2
)%
1
953
6
9,
654
09
7,
304
43.
2
1
6,
907 1
2.
1
6.
1 1
9
8.
2
1
954
3.
4
2
9
.
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7
,
7
5
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3
2,
6
5
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1
2.
5
6 1
6
3.
7
77,
924
2
4
6
3
1,
7
2
9
8.
63
8
37
5
2
3
0
3
4
l
1
7.
3
52.
1
95
5
86,
23
6
24.
8
3
4,
71
5
8,
8
97
38.
0
23,
41
3 1
0.
4
1
95
6
97,
26
0
25.
9
37,
60
4
3
6.
7 1
5
3.
2
ll,
627
38.
7
3
0
1
957
110,
,
0
43 1
2.
0
8.
0 1
4
9.
4
803
2
6.
4
41,
92
9
1
5,
421
1
95
8
115,
40.
0
38,
55
2 1
3.
9
9.
2 1
51.
5
21
9
26.
5
4
3,
4
1
95
9
1
2
9,
26
3
57
1
0,
91
9
34.
9
31,
2
86 p9.
5
7.
2 1
31.
7
1
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7.
4
7,
9
1
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2
9
5
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3
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2
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0
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2
2
2.
2
1
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0
5
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2
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6,
1
6
33.
4
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9
9
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1
1
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91,
25
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0
6
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7
26
20,
91
8
33.
2
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0
7.
9
1
962 211,
.
9
9.
9 11
0.
7
99
2
30.
9
6
8,
58
6
20,
291
3
2.
3
1
963 244,
640
33.
1
6
2,
820
9.
6
9.
2 1
04.
5
73,
84
9
24,
251
33.
1
964 2
88,
37
9
34.
1
84
4
72,
6
07
9.
9
9.
8 1
00.
9
1
965 31
7,
86
9
,
45
0
28,
575
3
3.
8
84,
541
9.
9 1
0.
0
9
9.
1
1
966 36
6.
3
86
7,
1 3
24
9,
4
02
8
0
82
9,
1
1
5
2
97
0.
9
8,
21
3
3
8
2
9
57
1
0
2
8
33.
3
1
0
9
4
8
9.
3 1
0.
7
8
1
9
67
4
35,
690
39.
8
1
09,
5
44
41.
937
33.
5
1
25,
1
8
5
9.
6
2
1
96
8
51
5,
9
91
41.
2
1
25,
1
45 46,
754
34.
2
1
36
ll.
4
84.
2
1
969 596,
696
4
2.
5
1
40,
259 54,
0
85
,
707
9.
1 1
0.
9
8
3.
0
1
97
0
70
7,
0
88
45.
7
1
54,
74
2
3
4.
8
1
5
5,
41
6
9.
1 l
l.
1
81.
9
67,
972
35.
5
1
91,
47
0
9.
6
1
2.
1
971 7
92,
577
46.
8
1
69,
4
77.
7
1
97
2 906,
202
48.
9
294 69,
1
00
3
6.
1
1
91,
41
2
8.
7 ll.
3
77.
1
1
97
3 1,
1
24,
4
09
1
85,
364
7
2,
2
90
3
4.
8
207,
7
29
8.
0
l
l.
2
71.
2
1
97
4 1,
5
5.
2 20
3,
8
4
3 1
0
4
0
4
4
3
8.
9 24
6
7.
4
6
5 1
9.
3 1
3.
1 17
0.
5
33
9,
21
7
6
6
1
2
.
7
3
5
8
0,
7
6
7
2
4
9
,
6
7
4
3
5
2
3
1
975 1,
4
78,
7
38
71.
9
2
05,
665 1
71,
7
00
7
4.
3
231,
0
90 l
l
09.
5
1
976 1,
656,
947
76.
5
21
6,
595 1
92,
292
7
8.
9
24
.
6 ll.
2 1
03.
3
1
97
7 1,
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6
82
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0
22
8,
0
86 1
91,
31
8
3,
71
6 ll.
6 ll.
3 1
03.
1
7
4.
6
25
6,
45
8 1
0.
1
978 2,
027,
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84.
5
2
39,
7
62
4
l
l.
2
92.
3
1
97
9 2,
1
88,
941
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3
2
1
67,
27
6
6
2.
4
26
8,
07
0
8.
3
l
l.
2
73.
8
1
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0 2,
40
0,
9
85
53.
50
9 24
2,
454
76.
4
31
7,
34
8 l
l.
1 1
2.
5
8
8.
5
1
981 2,
93
0.
8
4,
3
5
2
9
9
5
05
0
0
7
1
7
3
3
l.
5
5.
6
5
74,
1
65
9 26
7
0
6
1 31
4,
6
43
1 1
6.
7 3
2
94,
88
3 1
2.
2 l
1
0
8 11
1
982 2,
7
06,
6
93
95.
8
2
82,
51
2 32
6,
56
3
11
5.
1 28
3,
7
21
11
3.
6
1
983 2,
82
0,
78
2
96.
7 291,
66
7 300,
1
48
1
06.
1
2.
1 1
0.
0 1
20.
1
1
9
84 3,
01
0,
4
82
98.
5
3
05,
697 3
2
1 282,
891 1
0.
6
9.
7 1
09.
7
1
985 3.
21
5,
55
9 1
00.
0
3.
21
1
1
02.
5
31
5,
3
27 1
0.
7
1
0.
3 1
0
4.
1
321,
53
3 310,
1
9
86 3,
35
8
849
1
00.
0 31
0,
84
9
9.
7
9.
7 1
00.
0
3
7
8 1
3
0.
,
0
2
2 21
5,
56
09
7
68
4.
2 36
3
5.
,
6
8
0
1
4
2
63.
1
987 3,
504,
7
8
9
01.
8
3
4
4
3
3
3
7
3
5
9
9
0
9
3
6.
2
1
0.
1
988 3,
7
37,
311 1
0
2.
2 365,
823 240,
06
3
5
6.
2 427,
1
5
7
57.
9
1
98
9 3,
8
6.
4
l
l.
7
55.
0
990,
46
4 1
04.
1 383,
44
8 2
駿河台経済論集
第 5巻第 1号 (
1
9
9
5
)
付錦表 つづ き
(
1
9
8
5-1
0
0
) (
1
0
)
/
(
l
l
)
(
1
0
)
/
(
1
)陶
(
1
2
)
/
(
1
)陶
相 対
交易条件
対 ドル
暦年 輸出
(
岬通関)輸出物価
(
l
l
)指数 実質輸出額
(
1
2
) 名目輸出
(
1
3
)
(
1
4
)
(
1
5
)
(
億円)
額(
(
億円)
依存度 美質輸出
(
1
9
8
5
年基準)
依存度 輸出価格
(
l
l
)
/
(
5
) 為替レー
岬 ト
(
岬
1
9
5
2
4,
5
82
7
9.
2
5
(
l
l
)
/
(
2
)% (
1
9
8
5
年基準) 1ドル=円
1
95
3
4,
58
9
,
785
7.
6
2.
1
363.
3
1
83.
3
36
0.
0
0
1
95
5
9
6
09
4
6
6
6
0
3
2
4.
8.
2
00
4
5,
865
7
3.
4
7,
9
0
7.
5
2.
5
2
9
8
4
1
9
5
7
360.
1
9
55
7,
238
7
2.
1
1
0,
039
8.
4
2.
9
29
0.
7
0.
00
1
9
5
6
9,
00
2
7
3.
0
1
2,
332
9.
3
3.
3
1
90.
0
3
60.
00
1
95
7 1
0,
2
89
71.
2
1
4,
451
281.
9
1
88.
6
360.
00
1
9
5
8 1
0.
356
66.
0
9.
3
3.
5
28
0.
3
1
78.
0
3
60.
00
1
95
9 1
2,
4
1
5,
691
9.
0
3.
6
249.
1
1
89.
1
3
60.
0
0
1
4
3
69
8.
0
1
8
2
93
9
6
3.
8
56
1.
9
209
6.
0
3
60.
00
9
6
0 1
4,
59
6
1
2
1,
1
2
9.
4
24
8
4
1
961 1
5,
248
6
6.
2
23,
0
29
8.
0
3.
6
220.
7
36
0.
0
0
1
9
62 1
7,
6
98
64.
2
27,
559
8.
3
4
1
99.
4
36
0.
0
0
1
9
63 1
9,
62
9
65.
7
29,
88
.
0
207.
8
1
9
8.
8
360.
00
1
96
4 24,
02
3
66
4
8.
0
3.
5
1
9
8.
5
1
96.
7
3
60.
00
1
96
5 3
6
3
6,
.
07
92
8.
3
3.
8
9
5.
3
1
9
0
360.
00
0,
4
26
66.
2
4
5
9
9
6
4
6
1
8
2
4
2
07
0.
6
1
9
66 35,
1
95
66.
0
53,
307
9.
6
4.
8
1
72.
8
1
98.
1
9
67 37,
589
66.
1
56,
838
8.
6
4.
6
1
66
2
3
60.
00
1
9
6
8 46,
698
66.
2
70,
558
9.
1
5.
.
1
1
9
7.
3
3
60.
0
0
1
96
9 57,
5
64
6
8.
0
84,
6
58
1
1
60.
7
1
93.
6
3
60.
00
1
97
0 69,
5
44
71.
0
9
9.
6
5.
4
1
60.
0
1
9
5.
4
36
0.
00
1
971 83,
9
28
6
7,
991
9.
8 .
5.
7
1
5
5.
4
20
0.
0
36
0.
0
0
9.
9
1
1
97
2 88,
10
9,
9
80
5
1
0.
6
4
9.
3.
6
6
0.
0
61
67
7
3
0
3
9
7
6.
7
1
3
8
4
1
9
4
5
30
8
0
0
1
9
73 1
00,
31
4
74.
6
1
34,
4
04
8.
9
6.
4
1
35.
1
1
91.
8
1
97
4 1
62,
07
9
99.
9
1
6
2,
21
5
1
2.
1
7.
8
1
51.
271.
2
0
1
97
5 1
65,
4
53
95.
9
1
7
2,
590
ll.
2
1
1
3
8.
0
291.
97
1
97
6 1
99,
346
9
5.
2
209,
39
8.
1
1
3
3.
4
1
29.
1
29
6.
77
7
1
2.
0
9.
1
977 21
6,
481
90.
7
4
1
24.
4
1
20.
7
2
96.
60
238,
638
ll.
7
1
0.
3
11
3.
1
97
8 205,
4
1
21.
6
268.
51
1
9
5
5
8
8
4
7
24
2
6
9
6
1
0.
1
9.
9
1
00
2
1
3
5
7
21
0.
44
79 22
5,
3
1
5
9
3.
9
3
9,
9
7
4
3
3
8.
8
2
2.
9
1
9
80 293,
825
1
0
2.
0
288,
1
00
1
2.
2
1
0.
8
11
2.
3
9.
1
4
1
9
81 334,
69
0
1
03.
2
324.
363
1
3.
0
ll.
97.
1
2
26.
7
4
1
9
82 34
4.
3
25
1
07.
2
321,
1
7
8
8
1
0
9.
9
96.
7
220.
54
1
98
3 349,
093
1
0
0
1
2,
7
l
l.
3
1
11.
9
93,
1
249.
08
1
9
84 403.
8
39
47
6.
,
30
55
4
1
2.
4
l
l.
8
1
0
4.
2
98
5.
0
237.
51
25
3
1
01.
4
6
3
1
3
0
2
9
9
1
9
85 41
9,
557
1
00.
0
41
9,
703
1
3.
0
1
3.
1
1
00.
0
5
2
1
9
86 3
52,
897
84.
9
41
5,
7
62
1
0.
5
1
1
00.
0
2
38.
54
2.
6
83.
1
987 333,
1
52
8
0.
6
41
3.
35
4
1
32.
2
1
6
8.
51
7
43 2
1
98
8 3
39,
392
7
8.
9.
5
1
2.
0
7
9.
2
1
36.
8
1
4
4.
6
2