Title 環境問題とエリート主義 Author(s) 戸田, 清 Citation - HERMES-IR

Title
Author(s)
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Issue Date
Type
環境問題とエリート主義
戸田, 清
一橋研究, 17(2): 115-141
1992-07-31
Departmental Bulletin Paper
Text Version publisher
URL
http://hdl.handle.net/10086/5911
Right
Hitotsubashi University Repository
1
1
5
環境問題 とエリー ト主義
環境問題 とエ リー ト主義
戸
田
清
「
エ リー ト主義批判」 という視角か ら,環境問題の構造 についての粗描 を試
みることが本稿の目的である。 これは,環境社会学および市民運動にとって,
論点の整理に示唆 を与えるもの と思われる。
1.環 境 問題 の サ イ クル とエ リー テ イズ ム
環境問題の構造 を時間軸 を入れて とらえるためには,①破壊 (
問題の発生)
,
(
塾影響 (
被害)
,③対策 (
政策,社会運動な ど)のサイクルでみるのが適切であ
ろう (
図 1)
。私 は,アメ リカの社会学者ハムフェリー とバ トルにヒン トを得
て(
1
)
, このサイクルを「
ェ リーテイズム」が貫徹 しているととらえる.ハムフェ
リー とバ トルが考察 しているのは,③対策の局面 における 「
エ リー ト主義」で
ある。彼 らは,(
1
)
構成的エ リー ト主義 (
環境保護運動のメンバーの社会的出自
,(
2
)
イデオロギー的エ リー ト主義 (
社会的出自
が高所得層に偏 っていること等)
,(
3)
インパク ト的エ リー ト主義 (
公害工場の閉鎖で低所得層が失
ゆえの偏見等)
業する等)をあげている。「
エ リー ト主義」というと, 日本語のニュアンス とし
て,イデオロギー面 に限定 して理解 される恐れがあるので,本稿ではとりあえ
ず 「
ェ リーテイズム」 という表現 を用いることとする。
②影響の局面のエ リーテ イズムは,公害 の被害が社会的弱者 (
低所得層な
ど)
,生物的弱者 (
子供,老人,障害者など)に集中す る (
インパク ト的エ リー
テ イズムに相当す る) ことが, これ まで経済学者 (
宮本憲一,E・ミシャン
, 医学者 (
原田正純,土井陸雄他)
,
他)
,社会学者 (
飯島伸子,U・ペ ック他)
工学者 (
宇井純,小出裕幸他)らによって くり返 し指摘 されてきた ことが(2), こ
れに相当している。公害のしわ・
よせは,イギ リスの社会学者が よく指摘する「
健
1
1
6
一橋研究 第 1
7巻第 2号
図 1,環境問題のサイクル
エ
リ
ー
ト
の
責
任
が
大環
境
破
壊
型
ラ
イ
フ
ス
タ
イ
ル
大
衆
の
従
属
的
関
与
貧
困
と
環
境
破
壊
の
悪
循
環
な
る
問
題
の
発
生
/
次
Y
{
晶墓こ去e£言芸アチ
①破壊 \ \
\
J
\ 畳讐謂
薯)〇g警菅の
①②③の局面はそれぞれ,気候変動 (
地球温暖化)に関する政府間パネル (
I
PCC)
の第 1作業部会 (
科学的知見)
,第 2作業部会 (
環境 ・社会 ・経済への影響)
,
第 3作業部会 (
対応戦略)に対応 している (
寺西俊一 『
地球環境問題の政治経
済学』東洋経済新報社,1
9
9
2,
1
81
貢参照)
。
康面 の不平等(
3)
」の 「
氷 山の一角」 にす ぎない もの として とらえるべ きであろ
う。
①破壊の局面 のエ リーテ イズムは,環境破壊 の主た る責任が強者 (
エ リー ト)
にある とい うことである。国際的 には,途上 国環境会議 (
1
991
年 6月)の 「
北
先進 国の歴史的お よび現在的な責任」の問題 であ り,国内的
京宣言 」 (4)が言 う 「
には,経済エ リー ト (
大企業経営者等),政治エ リー ト (
高級官僚等),文化エ
リー ト (
指導的科学者等)の責任が大 きい とい う問題 である。 これ を,構成的,
イデオロギー的, イ ンパ ク ト的エ リーテ イズム と対比 して, とりあえず 「
原因
的エ リーテ イズム (
c
a
us
ale
l
i
t
i
s
m)
」 と呼 んでお こう。強者 (
ェ リー ト) の責
任が大 きい とい うことは,弱者 .
(
大衆)の非関与 を意味す るわ けではない。エ
リー トの大 きな影響力の もとにつ くられた システムの中で,環境破壊 への大衆
の「
従属的参加 」 (5) (トウレ-メ)もみ られ るのである。従属的参加 の典型的な
タイプ としては,先進 国にお ける 「
環境破壊型 ライ フスタイル」の普及,途上
国 における 「
貧困 と環境破壊 の悪循環」が あげ られ よう。
以上 の ように,環境 問題 のサイクル を通 じて,エ リーテ イズムの構造がみ ら
環境問題 とエリー ト主義
1
1
7
れ るように思われ る。本稿ではとりあえず,エ リーテイズムを 「
強者が得 をし,
リーダーシップをとり,弱者が損 をするとい う状態 を, そうした状況 を正当化
す るイデオロギーを含 めて まるごとさす」
もの として定義 してお こう。 そ し
(
6)
て,環境 問題 を解 決 してい くた め には,先進 国の 「
過剰 開発社 会(
7
)(
o
ve
r
エー リック)を変革 してマイナス成長 を推進す るこ
de
ve
l
o
ppe
ds
oc
i
e
t
y)
」(
P・
と (
途上国収奪か らの撤退 も含む)や,途上国における土地改革 を始 め とす る
分配の公正化 (
結果 としての人 口安定化 も)が不可欠である。
2.環境破壊の構造(
1
)
環境破壊 に対す る強者 (
エ リー ト)の責任が重大であるという論点 について
,
は,国際的視点か ら 「
先進国の歴史的および現在的責任」の問題,国民国家の
内部構造の視点か ら,企業エ リー トや行政エ リー トへの権限の集中度 と公害の
起 りやすさの問題 についてみてい く必要がある。弱者 (
大衆)の従属的参加 に
ついては,次項で検討する。
1
9
92
年 6月の国連環境開発会議 (
地球サ ミッ ト) を目前 にして,最大の環境
問題 のひ とつである地球温暖化 をめ ぐる構 図は どうなっているであろうか(
8
)
。
化石燃料 の大量消費 と森林破壊が主要 な温室効果 ガスで ある C02の増大 の主
因であることは多 くの人が認 め る ところである。温暖化 を防止 す るためには
CO2
排出量 を6
0%削減する必要があるが,「
環境先進国」であるスカンジナ ビア
諸国,オランダ, ドイツな どは,2
0%前後の排出削減 目標値 を表明 している。
一番足 をひっぼっているのは,最大の排出国アメ リカ (4%の人 口で世界の排
出量の2
5% を占める)で,排出削減 目標値の設定その ものに反対 してお り,プ
ッシュ大統領 は地球サ ミッ トへの出席 をしぶ りつづ けてきた。中間に位置す る
のは日本や英仏で,おおむね CO2排出量の凍結 を表明 しているが,同時に温暖
化対策の名 目で 「
原発の拡大」 をすべ りこませ ようとしている。
アメ リカが温暖化防止で消極的なのは,資源 ・エネルギー浪費型の社会経済
0
0
0
倍の国別格差
構造が最大の要因である。 1人当 りのエネルギー消費量 には1
があるが,アメ リカは最 も多い国のひ とつである。エネルギー消費が環境 に及
ぼす圧力 という点でみれば,アメ リカ人が 1人ふえることは,バ ングラデシュ
0
0
人以上ふえることに相 当す るであろう0
やサブサハ ラ諸国の人が2
アメ リカのエネルギー浪費構造形成の最大の要因のひ とつは,1
93
0
-1
9
6
0年
1
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8
一橋研究 第 1
7巻第 2号
代 を中心に自動車資本や石油資本 によって行われた 「
交通体系変容戦略」(9)(
鉄
9
2
0
年代 (
当時アメ リカ
道 ・公共交通の破壊 とモータ リゼーション)である。1
は世界の石油消費の半分 を占めていた)の第 1次モータリゼーションで市場が
飽和 したので, これを打開するために,鉄道 を買収 して線路 を剥が し,バスに
置 き換 え,さらにそのバス も廃止 して自家用車の売上げをのばしたのである。
また鉄道機関車 も電気か ら GM 製のジーゼルへの転換がすすめられ、日欧に比
9
2
0
年代 には都市鉄道
べてアメ リカは 「
鉄道電化後進国」 となったのである。1
が発達 していたロサンゼルス等 も、第 2次大戦後 には排気ガスの街 になって し
まった。 また,地球サ ミッ トのM ・ス トロング事務局長庭,地球環境の修復の
2
5
0
億 ドルを負担すべきだ というが、世界の軍事費 は年間 1
ために北側 は年間1
兆 ドルにのぼ り,そのうちアメ 1
Jカ 1国だけで2
9
0
0
億 ドルを占めている。 ヨー
ロッパ型の 「
福祉国家」や 日本型の 「
企業国家」 と対比 してアメ リガが 「
軍事
国家」(
1
0
)
であることも浪費 に大 きく寄与 しているD
日本 はどうか。日本政府 は,経済規模の割 には
C
O
2
排出が少ないことを自賛
するが,経済規模 自体が過大であることにはふれようとしない。国鉄分割民営
0
0
0
k
mの廃止 は,高速道路 を5
0
0
0
k
mか ら1
4
0
0
0
k
mに
化 による 「
赤字」ローカル線2
のばそうとする第 4次全国総合開発計画 と連動 してお り,エネルギー浪費 と大
l
)
。 これは,
気汚染 を促進 し,交通事故の増大 を容認 しようとす るものである(l
1
9
3
0
-1
9
6
0
年代のアメ リカの二の舞 を官民一体でお し進めようとするものだ。
環境庁 はモーダルシフ ト (
自動車か ら鉄道 ・船舶への転換)の必要 を強調する
が,交通体系の形成 は依然 として,通産省 ・建設省 と財界の主導ですすめられ
ている。環境庁の自動車公害防止法案 も,① 自動車単体の排ガス規制,②事業
所 ごとの交通総量規制,③乗入れ規制 という 3本の柱のうちわ②③ をはずされ,
骨抜 きにな りつつある(12)。
また,環境庁の リサイクル目標では,一般廃棄物削減のために(
∋排出量の抑
刺 (
い らないものを買わない等ライフスタイルの見直 し)
,@再利用の促進 (
不
用品交換, リターナブルぴんの普及)
,③再生利用の促進 (
紘,缶,ぴんの再生
0
0
0
年 までに紙,ガラス くずの再生利用率 を6
0
%,ス
利用率の向上) をあげ,2
0
%に」
句上 させ ることをめざしている(13)0
チール缶,アル ミ缶の再生利用率 を7
しか しそれだけでは 「
生活様式」の視点はあって も 「
生産様式」の視点がない。
これ らは生産の規制 (
通産省の領域ではあるが) と結びつかなければ,ゴミ削
環境問題 とエリー ト主義
1
1
9
減 に効果がないOサン トリーを始 め とす るビール会社 はガラスぴん (リターナ
ブル)か らアル ミ缶への転換(14)をすすめてお り,キ ッコーマ ンを始 め とする醤
PET) ボ トルへの転換 をすすめてい
油会社 はガラスぴんか らプラスチック (
,
る。「リターナブルぴんの普及」だけでな く 「
非 リターナブルぴんの生産抑制」
が必要なのである。た とえば,アル ミ缶1
0
0tで リサイクル率4
0
%とした場合,
0
%に向上 した として もアル ミ缶の生産量が2
0
0tになれ ばゴ
リサイクル率が7
ミの発生量 は同 じである。 しか し,プルタブ (
飲 み口金具の分離型) と対比 し
て言われ るステイオンタブ (
固着型)に 「
エ コマーク」 を与 えることによって,
アル ミ缶 自体の使 い捨ては免罪 されている。
約4
8
0
8
億 円)の うち5
0
%以上 は 「原
平成 3年度の政府の地球環境保全予算案 (
)
0OECD諸国におけるエネルギー開発研究
子力の開発利用の推進」であった(
1
5
の政府予算 (
1
9
8
6
年)に占める原子力予算 は,相対比率で も絶対額で も日本が
トップである。 また,原発が大事故 を起 した場合の賠償限度額の年次推移 の日
1
9
7
9
年)の少 し前か ら限度
米比較 をみると,アメ リカではス リーマイル事故 (
9
8
0
年代以降新規発注が 0
額が急騰 して電力資本 は原子力か ら次々 と撤退 し,1
になったのに対 し, 日本では限度額 (
残 りは税金 をあてる)の低減政策が維持
されている(16)。 日本の原発 は米仏 ソに次 いで 4位 の4
0
基であ り,政府の 「
長期
」「地球再生計画」および 「地球温暖化防止行動
エネルギー需給見通 し中間報告
計画」 (
いずれ も1
9
9
0
年)をみるな らば,2
0
1
0
年 までに原発 を 2倍 にせ よといっ
0
基増設 とい うことになる。政府 は,原発か ら C
0 2が
ているのだか ら,さらに4
出ない ことだけを一面的に強調す るが,核燃料 を原発 に搬入するジーゼル トラ
0
万年以上 に
ックか ら当然窒素酸化物や C0 2が排出され るし,核廃廃物 は今後 1
わたって管理 しつづ けなければならない。物理学者槌田敦が 「
原子力 は石油の
缶詰(
1
7
)
」だ といったように,原発の石油浪費性 は明 らかである。 また,核燃料
5
による地球大気汚染 もすすんで
再処理工場 を主た る発生源 とするクリプ トン8
いる。
,
エ コロジーをめ ぐる日本社会のコンセ ンサス」をわれわれに
原発 の問題 は 「
考 えさせて くれ る(
表 1)。た しかに皮相的な観察 によれば「
ェ コロジーブーム」
,
年以降,
「
地球環境問題」 として定義 している(
∋温暖化,②オ ゾン層,③酸性
エ コビジネス」と「
エコマーク」の時代である。 しか し,環境庁が1
9
9
0
であ り 「
雨,④熱帯林,(
参野生生物,⑥砂漠化,(
∋海洋汚染,⑧有害廃棄物越境移動,
1
2
0
一橋研究 第 1
7巻第 2号
⑨途上国公害 については,「
総論賛成各論反対」の状況である。「
公害輸出」の
概念は政府文書ではタブー とされている。⑩化学物質一般 (
温室効果ガスなど
を除 く)
,⑫ 自動車 については,総論 レベルですでにコンセンサスがな く,化学
物質の種類や自動車台数はい くらふえて もよい とされているo⑫原発 に至って
は,政府 レベルの 「アンチコンセンサス」ともいうべ き状況で,環境問題の 「
原
因」であるはずのものが 「
救世主」として登場する。「
地球 を救 うバイテク」と
いう言説 も同様で,1
9
7
3
年以来警告されてきた遺伝子工学の 「
潜在的危険性」
が,昭和電工 トリプ トファン食品公害事件(18) (
1
9
8
8-8
9
年)で現実の もの とな
ったにもかかわ らず,その ことが考慮 されていない。地球環境 ファシリティ
表 1 地球環境問題における日本社会の コンセンサスの状況
動野 オゾ
向 層こ/
暖
温
性
酸
砂
漢 港
洋
境
移
化
雨
化 汚
染
動物
の
坐
屍
乗
上
の
国
物
学
質
車
動
・
.壁
射
坐
公
⊂
コ
般
公
壁
【
=
コ
染
拷
E
i
冊
対策 をとるべきということで
総量規制
サスなし
について
コンセン .
」一球再
大(地球
=
a
拡
_
を九温生
A九暖計
画 と地
7
面
レ
ノ
ベ
レ
コンセンサスが成立 している
[欝
塗
境
保
ゾ
暖
化
悼
雨
配助 は 'Ⅰ 漢 洋
に
ウT 化 拷
境
撹
境
痩
学
ン
読 環
各
方
の
オ
煤
護
堤
酸
策
境援 ど法 C 砂 港
け
る 撤
回メ圏
ガS 策
援 止
防
環
環
策
化
対
罪
.
環 L等有 化国 化国 内熱 法 け9
の
、
で ジ
汰
環
な内 助
量素
策 対 息 リ保
規化
の策 地ゾ留
総塩
鞄
鞄
対
生一
o
ラ
制合
不材 、破
つ
ベ
ノ
レ
レ向
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] 記○化L
※)防
損 =
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動
車
罪
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鼻
坐
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千 批バ 不公 竺化 の自
F
F
害
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ノ
レ 出 拡質
ム
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】
秦
対 大の
数
投
ゼ
檎
染物
大事
約
策
種
な
法
秦
原
皮
原
進
推
環境 白書」で平成 2年版 (
1
9
9
0
)以降,主要な地球環境問題 としてあ
(
注)(
∋∼(
9は,「
げられているOCI
TES-ワシン トン条約 ※-政府 レベルのアンチコンセンサス
環境問題 とエリー ト主義
1
2
1
(
GEF)で脚光 を浴びている世界銀行 も, これ までの歴史 をみるならば,むし
ろ環境破壊 を促進 して きた といえる。 また, 日本 は世界 に冠たる野生動物取引
大国であ り,野生動物取引総量ではアメ リカが世界一だが,絶滅のおそれによ
TES(ワシン トン条約)対象種 の取引量では日本が
り取引が規制 されている CI
世界一 なのである(19)0
以上のように,最大の資本主義国である日米 をみると,環境破壊 における歴
史的お よび現在的責任 は重大である。次 に,社会構造 と公害のお こりゃすさに
,
疑似社会主義国」 (
藤井一行)
ついての予備的な検討 を行 いたいO ここでは 「
を代表する旧ソ連が登場す る。社会構造 とのかかわ りで公害の類型 を考 える場
,
令,日本型公害 とソ連型公害の対比が重要 となるであろう(
表 2)。これ は 「
強
P ・ビルンボーム) と 「
軍事国家 一企業国家 一福祉国家」
い国家 一弱い国家」(
(
宮本憲一) とい う類型 を念頭 においているO 旧ソ連では政治エ リー トと経済
エ リー トがほぼ一体であったのに対 し, 日本や欧米では政府 と企業 は相対的に
独立 してお り,長時間労働や過労死,職場八分な どをみるな らば,日本 には「
強
い企業」 とい う特徴づ けが必要 となって くるであろう。大規模 な原子力災害 は,
9
5
7
資本主義国,疑似社会主義国のいずれにも起 るが, ウインズケール (
英国1
年),ス リーマイルアイラン ド (
米国1
9
7
9
年) とウラル (
1
9
5
7
年),チェルノブ
イ リ (ソ連 1
9
8
6
年)を比べてみると,後者の方がスケールが大 きい。前述の賠
償限度額 にみるように,施設規模 の大 きな原子力では国策のウェイ トが大 き く
なって くるので, ソ連 のような強力なユタテイスム (
国家管理主義)の役割が
大 きくなるのであろう。他方,企業 による食品 ・薬品公害 は,資本主義国に特
有の現象である。そして, ヨーロッパ諸国のサ リドマイ ドのように諸外国にも
表 2 日本型公害 とソ連型公害の比較
公害の類型
公害の性格
背景となる社会構造
日本型公害
企業主導型
強い国家
ソ道型公害
国家主導型
強い国家
典型事例
1食品 .薬品公害
原子力災害
(
注)原子力災害は,英米など資本主義国にもある。
旧ソ連には,国家主導型の薬害 (
政治犯の精神病院収容 ・薬づけ)は存在した。
1
2
2
一橋研究 第 1
7巻第 2号
み られるが, とりわ け日本 には大型被害が多発す る構造があるようだ(
2
0
)
。薬害
のサ リドマイ ド,スモン, クロロキン, コラルジル,血友病患者のエイズ等,
食品公害の ヒ素 ミルク,カネ ミ油症, トリプ トファン (これは対米公害輸 出)
等はその典型例である。なお, ソ連 においては,企業犯罪 としての食品 ・薬品
公害 はなかったが,いわゆる 「
政治犯」の精神病院収容 ・薬づけのような,国
家主導型 の薬害がみられた。 この ように, 旧ソ連 の行政エ リー ト, 日本の企業
エ リー トへの権限集中 (
両国の行政秘密,企業秘密の壁 は悪名高u) といった
ような事態が市民 によるチェック機能 を弱体化 させ,公害の多発 を招いている
と推察 され る。
3.環境破壊の構造(
2
)
次 に,環境破壊への弱者 (
大衆)の 「
従属的参加」 について検討 してみたい。
環境破壊型 ライフスタイル」の普及で
第 1の主要な類型 は,先進国における 「
ある。ダーレン ドルフが強調するように(
2
1
)
,ライフチャンスやライフスタイル
は,社会構造 とのかかわ りで とらえなければな らない。水俣病やイタイイタイ
病のような古典的公害 は 「
企業犯罪」 としての性格が濃厚であ り,加害 一被害
図式が明確であったが, 自動車公害や合成洗剤汚染のようなよ り現代的なタイ
プの公害においては,資本や国家の責任 とともに, ノンエ リー トのライフスタ
0
0
0
万人 を超 えた (
日本)
イル も重要な役割 を演 じる。 自動車運転免許所持者が5
現在 においては,た しかに 「
一億総汚染者の時代」 といえよう。 とりわけモー
タ リゼ ー シ ョンが進 行 した の はア メ 1
)カで あ る。 ア メ▲
リカ にお い て は,
1
9
3
0
-1
9
6
0
年代の独 占資本の 「
交通体系変容戦略」 によって大衆の 「
移動手段
の選択肢 の幅」というライフチャンスが構造的に制約 され(22)
,公共交通 を奪わ
れた市民 は自動車の使用 を余儀 な くされたのである。 その際,いわゆる交通弱
者 (
子供,老人,障害者等)が とりわけしわ寄せを受 けた といえよう。合成洗
剤の場合 も洗剤資本の販売戦略で石鹸の生産 シェアが著 しく縮小 され ることに
よって,市民 は 「
洗濯手段 の選択肢の幅」 を制約 されることになったのである0
しか し,市民 はたんなる操作 の客体ではな く,主体的 に 「目先の便利 さ」やカ
ツコつきの 「
豊かさ」 を追い求めていった ともいえる。昭和電工の対米公害輸
出である トリプ トファン食品公害事件 は,企業犯罪 (
同社 としては新潟水俣病
に,アメ リカの白人中産階級中高年女性 の 「
健
に続いて 2回目)であるととも・
環境問題 とエリー ト主義
1
2
3
康食品依存」 という 「
健康破壊型 ライフスタイル」がなければ,あれほどの大
5
0
0
人余,死者3
8
人。但 し独仏 日にも若干名の患者あ り)には
型公害 (
被害者1
ならなかったか もしれない。
第 2の主要な類型 は,途上国における 「
貧困 と環境破壊の悪循環」である。
焼畑による熱帯林破壊 はその典型例であろう。た しかに FAOのいうように焼
畑 は熱帯林破壊の最大原因であろうが(
続いて商業伐採,節,放牧等)
,焼畑 を
十把ひ とか らげに論 じるのではな く,サラワク先住民のような環境 と調和 した
伝統的な焼畑(
2
3
)
i
_
,土地所有の不平等から目をそらすために国策 として行われ
るブラジルやインドネシアの集団移住政策 による都市貧困層出身の入植者の焼
畑による環境破壊(24)とは明確に区別 されなければならない。 この場合,熱帯林
破壊の直接の責任 は貧困入植者 にあるが,土地改革 を行わないエ リー トの責任
の方が より重大であるといわねばならない。土地改革をしないという前提で政
策 をたてると,肥沃な土地は商品作物のモノカルチャーのために大地主に占拠
されているのだか ら,貧困層には原生 自然地域 (
熱帯林)を切 り開いて農地化
させるという形で環境破壊 に追いこんでい くのである。 こうした状況 は,故 シ
)
』などに措かれている。
コ ・メンデスの 『
アマゾンの戦争(25
このような状況があるために,最近の地球環境 をめ ぐるイデオロギー状況 と
環境破壊型 ライフスタイル」や 「
貧困 と環境破壊の悪循環」が一面的
しては,「
地球人総 ざんげ」 (
寺田良一)が促 された り,現行タイプ
な仕方で強調 され,「
政府開発援助)による大企業への利益誘導の正当化や,「
犠牲者 をと
の ODA (
vi
c
t
i
mbl
ami
n
g(
2
6
)
)
」が横行することになるのである。そして,援
がめる論理 (
助 と債務返済 を差引きした正味の資金の流れをみると,1
9
8
3
年以降,途上国か
債務危機(
2
8
)
」の状況の
ら先進国へ資金が移転 (27)するようになっているという 「
もとでは途上国の住民に環境保全の名 目での福祉切捨てによって苦境(
2
9
)
を強
DNS)」が経団連などの音頭取 り
いるもので しかない 「
債務 自然保護スワップ (
で美化 されることになるのだ。
また,環境破壊や健康破壊の構造をみるときには,個別的 ・偶発的要因 と集
団的 ・構造的要因を総合的にとらえなければならない。主たる死因が感染症か
ら痛や交通事故 に移行 してい くことによって偶発化 ・個別化 してきた ことを一
)
。癌の原因の約 3分の 1 (
男性の場合)はタ
面的に強調するのは誤 りである(30
バ コであるか ら,タバ コ資本 とそれに追随する行政 によって構造的にひきおこ
1
2
4
一橋研究 第 1
7巻第 2号
されている。 1人ひ とりの喫煙者 をみると発病 は偶発的であ り,泉重千代氏の
ような 「
健康なヘ ビースモーカー」 もしばしばみられるが,喫煙者 と非喫煙者
0
倍ほどの格差がある。 また交通事
を集団 として比較すると,肺癌死亡率には1
故 をみると, 1人ひ とりが事故 にあうか どうかは偶発的なものであるが,他方
構造的な要因 も重要である。
交通事故の構造的な側面を少 しながめてみたい。第 1に,交通事故死者 と自
9
7
0
年 まで急速 にふえ続 け,
動車保有台数の推移 をみると(31),交通事故死者 は1
これをピークとしてまた急速 に減少 している。他方, 自動車台数当 りの死者 は,
9
8
8
年 ごろか ら再び増勢に転 じる気配が うかがえる。
一貫 して減少 してきたが,1
これは明らかに、 自動車の過剰使用 (
クルマ社会)の問題 を示唆 している(
3
2
)
C
0
万人当 り交通事故死者 をみると,東京や大阪で低 く,
第 2に,都道府県別人 口1
栃木や茨城,福井,滋賀,
■香川な どで高 くなってお り,最高 と最低 ゼ 4倍位の
格差がある。 これは,おそらく公共交通の整備の度合いなど交通政策や経済状
況の格差 を反映 してお り, また皮肉なことに,交通渋滞は交通事故防止の点に
限れば有益なものであろう。第 3に,鉄道に比べて自動車 は危険性が高いこと
である。東京 と大阪を結ぶ高速交通手段 としては機能的等価物である東海道新
9
71
年 までの死者数で比較 してみると,前者 は事故死
幹線 と東名 ・名神高速 を1
7
1
5
9
人の死者が累積 している(
3
3
)
。国鉄分割民
者が 0であるのに対 して,後者 は1
営化 ・四全総 は明 らかに,交通事故の構造的増大 を容認する政策 といえよう。
第 4に,大型 トラックの死角による左折巻込み事故の問題がある。 自動車資本
と運輸省 は, この間題の社会問題化への対応 として,左側 ドアの下半を透明に
したのみで, より根本的な解決策である低運転席化 については,技術的に可能
0
年以上にわたってさぼ り続 けている。それゆえ,1
0
であるにもかかわ らず,1
年前に比べると事故 は減少 してきた とはいえ,警察庁の 『
交通事故統計年表』
をみて も,今なお毎年数千件の事故 と,数十人の事故死亡が発生 している。左
折巻込み事故 は,資本の論理 と国家の論理による人命の軽視であ り、「
社会的殺
,
,
,「疑似非暴力体制 -社会暴力」 (向井孝)に相当するもの といわ
ガル トウング)
不変資本の充用上の節約」(
マルクス) 「
構造的暴力」(∫・
人」(
エンゲルス) 「
ざるをえない。第 5に, 自動車をめ ぐる南北問題がある。公害 を出す中古車が
よく第三世界 に輸出されることが指摘 されている (日本 自動車ユーザーユニオ
ン)
0
環境問題 とエリー ト主義
1
2
5
このような環境破壊 ・健康破壊の構造的性格 は,意識の面で も,集団的主体
の形成 を促 している。嫌煙権運動や,「
交通遺児学生の会」はその典型例であ
る。
4.環境破壊の影響
公害の被害が社会的弱者や生物的弱者 にしわ寄せされるという問題 は,「ライ
フチャンスの不平等」 という包括的な現象の中の氷山の一角にすぎない。ただ
し, ここでいう 「ライフチャンス」は,ダーレン ドルフのいう広義の概念 (
敬
育,職業,余暇,移動手段等 を含む)ではな く, リー ドのいう狭義の概念 (
平
均寿命,死亡率などの保健指標 によって示 される)である(34
)
。 このような不平
等 (
集団間格差)を規定する基本的な要因は,④階級階層,⑧エスニシティ ・
人種,⑥ジェンダー,⑳年齢 ・世代,⑥地域であろう(
3
5
)
。 また,格差 は,環境
の空間的区分でみるならば,家庭環境,地域生活環境,職場環境 にわたってい
る。労働者 ・低所得層は,専門職 ・高所得層に比べて,職場の有害物質にふれ
る機会が多 く,空気が比較的汚れた地域 に住み,喫煙率 も高いという傾向があ
る。 さらに,生物学でいう環境因子の概念を参考 にするならば,物理化学的要
因(
有害物質の摂取など)
,異種生物-生物学的要因 (
感染症など)
,同種生物 社会制度的要因 (
戦争や死刑など)のいずれをとって も,一般 に有色人種 は白
人 に比べて不利である。 これ らの格差について, もう少 し具体的に検討 してみ
たい。
④階級 ・階層
健康面での階級的不平等 については,医者 は遅 くとも1
9
世組の始め頃には気
づいていたようだが,社会科学的にまとめた先駆的な本 は,エ ンゲルスが2
4
歳
の ときに書いた 『
イギ リスにおける労働者階級の状態(
3
6
)
』であろう。彼 は,医
師の報告などを参照 しなが ら,乳幼児死亡率や平均寿命の階級格差 を明 らかに
している。 これ らは1
8
4
0
年代のデータであるが, リー ドが引用 している1
9
8
0
年
代のデータと対比 させることがで きる。1
8
4
0
年代 と1
9
8
0
年代の乳幼児死亡率の
階級格差 を比べてみると,国民全体の乳幼児死亡率 は著 しく改善 されているが,
相対的な階級格差 (
倍率)にはほとんど違いがない。平均寿命 も全体 として改
善 されてきているが,格差 は依然 として続いている。戦後のイギ リスについて
1
2
6
一橋研究 第 1
7巻第 2号
は成人死亡率の統計 もある。 ウェスクーガー ドらは,成人 の死亡率 について,・
格差 は絶対 的 には縮小 して きたが,相対 的 に は拡大傾 向 にあ る と述 べ てい
る(37)0
イギ リスの保健社会学者 ドイアル らは,1
9
7
0
年後半 における癌死亡率の階級
格差 を示 している(
3
8
)
。専門職,管理職,熟練労働者,半熟練労働者,不熟練労
働者 という順 に,癌死亡率 は上昇 してい く。階級格差 は,男性では急カーブで
あ り,女性ではゆるやかなカーブ となっている。労働者階級 は男女 ともに比較
的空気の汚れた地域 に住むが,男性の方が喫煙率が高 く, また職場で有害物質
を扱 う機会 も多いか らであろう。部位別の癌死亡率 をみると,肺癌, 胃癌,食
道癌では階級格差が急カーブになっている。肺癌では,喫煙や職場 の有事物質
(
アスベス ト,放射線, クロロメチルメチルエーテルな ど)が反映 しているで
あろうし,食道癌 は喫煙の影響が大 きいであろう。胃癌 は,低所得層が安価な
塩蔵品 を多 く食べること等 によると思われ る。勝脱癌の階級格差が,専門職 の
リスクはもちろん低いのであるが,熟練肉体労働者の突出 という 「
変則的」な
形 をとっているのは,職場の芳香族 ア ミン類 な どによるものであろう。大腸癌
や肝臓癌のような 「
ぜいた く病」では階級格差がみ られない。
9
6
5
年 に4
0
歳
癌な どの社会的階層構造 は日本で も検出されている。平山雄 は1
の出生 コホー トを追跡調査 しているが, ここでは,教育年限 (
旧制の教育)の
長い ものか ら順 に,①専門職,②管理職,③事務 ・サー ビス労働者,④輸送 ・
製造業労働者,⑤鉱山労働者 ・農漁民 に分 けてお り,数が少ないので① と② は
,
いっしょにして扱 っている。全死亡,全部位の癌,食道癌,胃痛,肺癌 は 「
低
い階層」 ほど高 くなってお り,大腸癌や肝臓癌 はほ とん ど階層差がない という
イギ リス とよ く似た結果 になっている(39)。 また,発癌性の食品添加物 AF2の
摂取量 も低所得層に多 く,肝臓癌 との関連が示唆 されている(
4
0
)
。東京や大阪で
中年男子死亡率 と職業 ・所得構成の地域差 をみると,専門職 は死亡率が低 く,
)
。
低所得層 は死亡率が高い傾向が うかがわれる(41
⑧人種 ・エスニシテ ィ
アメ リカでは,黒人 は白人 に比べて,平均寿命が短 く,乳幼児死亡率(
4
2
)
,癌
死亡率,癌死亡の増加率な どが高い。 また,死刑 に処 され る可能性や,戦場で
死 ぬ可能性 も高 くなっている。湾岸戦争の ときも,黒人 コミュニティでは とく
環境問題 とエ リー ト主義
1
2
7
に反発が強かった。喫煙率 も黒人 の方が高 く,タバ コ会社 は特 に黒人や若年層
をターゲ ッ トにしている。
南アフ リカでは,異人,アジア系, 白人の順 に平均寿命 は長 くなっている。
アジア系 (
イン ド人が多い)では戦後 しばらくまでは女性の方が平均寿命が短
,
喪われた女性」 (
次項)の現象 を示 している。
く 「
「
公害輸 出」 も,人種 ・エスニ シテ ィによるリスクの不平等配分 を示す もの
である。先進国で禁止ない しきび しく規制 された有害 な施設や農薬,医薬品,
避妊薬 な どが途上国に輸 出されることが少な くない。
◎ジェンダー
先進国 と大部分の途上国では女性の平均寿命が男性 よりも長い (
生物学的に
もそれが 自然である)のに対 して,南アジア諸国 (
イン ドのケララ州 とス リラ
ンカを除 く)では女性の方が短 くなっている。 また人 口比でみて もイン ド等で
は女性の方が少ない。 これを,
、イン ド出身の経済学者 A ・K ・センは 「
喪われ
た女性 (
mi
s
s
i
ngwome
n)
」と呼んでいる(
4
3
)
。 またイン ドでは,最近,女子胎児
の選別的中絶 (
f
e
mal
ef
e
t
i
ci
de
(
4
4
)
)が大 きなスキャンダル となった。 これ らは,
食物の配分 など生活面で女性が差別 されているためである。中国で も今なお女
児の間引 き等が問題 となっている。
日本 は,男女別賃金格差が大 きい ことで悪名高いが,公害健康被害補償法で
は,給付金が平均賃金 にスライ ドされ るため,病気の程度が同 じで も,女性患
者 は男性 の半分 しか もらえない(
4
5
)
。 また,生体 賢移植 は,親が ドナー (
提供
者)
,子が レシピエ ン ト (
受容者)となる場合が多いが,遺伝学的には ドナー と
して父がよ り適する場合 と母が より適す る場合 は半々のはずである。 しかるに,
「自己犠牲」が母親の役割であるとい う社会通念のためか,母が ドナー となる
ことが圧倒的に多い。
⑳年齢 ・世代
チェルノブイ リ原発事故 の後遺症 として,今後 ロシア, ヨーロッパ を中心 に,
1
0
0
万-2
0
0
万人以上の病死者が生 じると推定 され るが,その大部分 は子供たち
であろう(46)。子供 の方が同 じ線量 を浴びて も放射線 の害 に敏感,すなわち生物
的弱者だか らである。核兵器や原発 による被害 は,三重構造 になっていると思
1
2
8
一橋研究 第 17巻第 2号
われ る (
表 3)
。第 1は, ヒロシマ ・ナガサキにみ られ るような,全生物殺滅
mni
c
i
d
e
)である。金持 も貧乏人 も,米国人捕虜 も,
(∫.サマヴィルのい う o
強制連行 の中国人 ・朝鮮人 も平等 に殺 された (
但 し,朝鮮人被爆者の問題 な ど
にみるように,生 き残 った被害者の救済 は平等ではなかった)
。第 2は,不熟練
労働者や旧植民地か らの出稼 ぎ労働者な どの社会 的弱者 に危険が押 しつけられ
る 「
被曝労働」の問題であるoそして第 3が,イギ リス ・セラフィール ド再処
理工場 の平常運転 に伴 う放射能汚染で周辺地域 の小児 白血病 が増加 している
(
集団訴訟 を準備中) ことや,ネバデ,セ ミパ ラチンスク,南太平洋な どの核
実験場周辺でみられ るような,生物的弱者 としての子供たちへの しわ寄せの問
題である。
2)
近代 テ
ドイツの社会学者ペ ックは,(
1
)
前近代か らひ きついだ階級社会 と,(
クノロジーによって もた らされ る 「
危険社会」 を対比 し,現代の環境問題 には,
の危険社会 によって階級社会が強化 される局面 (
低所得層や労働者への しわ寄
せ) と(
1)
危険社会の固有の論理があらわれる局面 (T
)スクの平等化)があるこ
)
.彼の本 は,(
j)
の局面 (
「
貧困は階級的であ り,スモ ッグは民主
とを指摘 した(47
)
の分析 を目的 とした ものであるが,田の局面 を否定 していると解釈
的である」
●●●■■●●
す ることは誤読である。 さらに,ペ ックが何 を見落 したか, ということにも注
目しなければな らない。彼 は,核被害の子供たちへの しわ寄せにみ られるよう
●●●●●●
危険社会が新 しい不平等 をもた らす局面」 に気づいていないのである。
な,「
また,障害者の人権 は一様 に侵害 されるのではな く,ライフステージの弱い
部分か ら狙われてい くように思われ るoスウェーデンの ような福祉先進国でさ
え,出生後の障害者 は手厚 く保護 されているが,障害のある胎児 をみつけだ し
て中絶す ることは倫理的にとがめ られ るべ きではない とされI
Tいる。最近英語
表 3 核板書の三重構造
核攻撃
科学技術的要因によ
る
社会的要因による
核実験
リスクの普遍化 .平等化
(
ヒロシマ .ナガサキ)
商業利用
(
原発)
生物学的不平等構造
(
子 どもへのしわよせ)
社会的差別構造
環境問題 とエリー ト主義
■
1
2
9
圏の一部の倫理学者が主張 しているのは,胎児殺 し (
f
e
t
i
c
i
d
e
) と新生児殺 し
(
i
n
f
a
nt
i
c
i
d
e
)の間に倫理的な違いはないのだ という思想である(48
)
O どちらも
理性 と自己意識 をもった人格 (
パー ソン)ではないか ら, というのだ。た とえ
ば,ダウン症児で消化管閉塞 を合併 している場合 は,治療の手術 をせずに新生
児の段階で薬物 により 「
安楽死」 させて もさしっかえないと主張 されている。
成人の障害者 (
少な くとも幼児以上)の人権侵害に対 しては市民社会の眼が厳
しいが,胎児については女性の最後の選択肢 としての中絶 (
私 もこれは当然肯
定すべ きだ と思 う)が認められているのだか ら,障害胎児の選別中絶 もさしつ
かえないし,障害新生児殺 しもか まわない, とエスカレー トさせてい く優生思
想である。
高齢者 に目を転 じるならば,老人の健康不安 につけこんで,医薬品の乱用 も
ひ どくなっている,などの事例がみられる。
⑥地域
,
原発などの危険な施設 は 「
避地」に立地 されることが多い。た とえば,東京
電力は,すべての原発 を東北電力管内に立地 している。
5.環 境 破 壊 へ の対 応 とエ リー テ イズ ム
アメ リカの農業問題研究者マーク ・リッチ-は,1
9
7
0
-1
9
8
0
年代のエコロジ
ー団体の中に,黒人や労働者 は環境問題に対する意識が低い といってばかにし
た り,農民 を 「
大地の強姦者,水の汚染者」 とみなす傾向がみられた, とのべ
ている。 また,アメ リカの自然保護運動の父といわれるジョン ・ミューアは,
黒人 をニガ- と呼び,ユダヤ人商人 をきらい, 自分がアングロサクソンである
0
世紀初頭 に,南欧の低
ことを誇 っていた。ホ-ナデー というエコロジス トは2
所得層 (
新移民)は野生生物 にとって脅威だ とのべている。 ごく最近 まで自然
白人アングロサクソン ・プロテスタン ト)の運動であっ
保護運動は WASP (
た。学歴では大学卒,大学院卒,職業では専門職が多 く, また高所得層が多い。
これ らが 「
環境運動のエ リー ト主義」 と呼ばれる問題である。
④構成的エ リーテイズム
ハムフェリー とバ トルは,構成的,イデオロギー的,およびインパ ク ト的エ
1
3
0
一橋研究 第 1
7巻第 2号
リーテイズムを区別する。構成的エ リーテイズム とは,環境保護団体のメンバ
ーが,主 として専門職や高所得層,上層中産階級 によって構成 されるというこ
とである。イデオロギー的エ リーテイズム というのは,彼 らがエ リー ト階層出
身であるがゆえの偏見ないし考 え方のゆがみである。インパク ト的エ リーテイ
ズム というのは,環境運動の成果や環境政策の効果が社会的弱者 にとって不利
に作用することである。
全米オーデュポン協会の会員の年収や学歴 は高 く,専門職が多い。 日本の場
合 も,共同購入運動や生協のメンバーは, 日本国民全体の水準か らみて,相対
的に高所得層であることが指摘 されている(49)0
⑧イデオロギー的エ リーテイズム
イデオロギー的エ リーテイズムについて,日本では,た とえば,いわゆる「
安
全な食品を求める運動の優生思想」があげられるだろう。奇形ザルの写真 を使
って安全な食品の価値 をアピールするとか,せっか く安全な食品で育ててきた
自分の子供の結婚相手が 「
変な物」を食べてきた人だ と困るか ら,共同購入運
動の内部で結婚相談 をしようとかいった発想である。そして農薬汚染や原発の
「こわさ」 を説明するときに 「
奇形児が増 えるか ら」 といった言い方をするこ
とである。障害者解放運動の人たちが しばしばエコロジス トの優生思想 を警戒
するのは当然の ことであろう。 また,青森県六カ所村 に核燃料施設が きて農産
物が汚染 されたら都市住民たるわれわれはそれをボイコットせざるをえないか
ら,おまえたち農民 は反対運動 をまじめにやれ, といった趣 旨の公開質問状 を
東京の消費者団体が青森の農民団体 に出す こともやはり問題である(
5
0
)
Oチェル
ノブイ リ原発事故の後 に厚生省が設定 した3
7
0
ベ クレル という許容基準 は確か
に安全 とはいえないものであるが, 日本が基準 を強化すれば,
-つき返 された農
産物 は,原子力 を選択 していない第三世界諸国へ と流れてい く。米仏 ソ日等の
市民は,原子力 を選択 した以上,
.汚染食糧 を引き受けるべ きである。 にもかか
わ らず, 日本の多 くの反原発団体 は基準強化 を政府 に要求 したのであ り, これ
は身勝手 さと想像力の貧困を示 している。なすべきことは,政府が危険性 をい
つわることや汚染データ隠しを追及することだったはずである。 また, トロツ
キズムを経て自然食 ・動物実験反対などの活動にかかわるようになった太田竜
の「
反ユダヤ主義」も最近 目立っている(
5
1
)
0「
女が職場進出すると食品添加物が
環境問題 とエリー ト主義
1
3
1
ふえる」「
食品公害か ら家族 を守 るのは主婦の役割である」・
「
過労死か ら夫 を守
るのは妻の役割である」 といった ような 「
ェ コ母性主義」の言説にも注意すべ
きであろう。
海外では, リベ ラ リズムの立場 をとる米国のワール ドウオッチ研究所の 『
地
9
8
7
年版では,計画経済 と国営企業が非効率 と環境汚染 をもた らす と
球 白書』1
して市場経済 と民営化 を礼賛 し,その文脈 の中に日本 における国営企業の売却
(
1
9
8
5
年) をも位置づけている。 しか し, その環境問題か らみた意義 は何であ
ったか。国鉄の分割民営化 とそれに引 き続 く四全総 は,エネルギー浪費, 自動
車公害,地球温暖化,酸性雨,交通事故 を促進するものであ り,専売公社の民
営化 は, タバ コの宣伝 (
食塩のぴんにまで 「
たばこ」 という文字が入 ることに
なった) とタバ コ公害 を増大 させ るものであった。
また,動物福祉 (
動物の道徳的地位 の向上)の主張 自体 は肯定的は評価すべ
きものであるが,P ・シンガーのようにそれ を優生思想 ・能力主義 と結びつ け
るのは誤 りであ り,欧米豪の市民運動 はそれに追随す ることが少な くない。欧
米のエ コロジス トの人 口問題認識 は,ネオマルサス主義 (
社会福祉の総合的な
向上 の代わ りに人 口抑制の必要のみを強調する)におちいることが多い し,「デ
ィープェコロジー」の提唱 (
1
9
7
3
)で知 られ るノルウェーのアルネ ・ネス教授
地球人 口 1億人適正説」の主張 さえ行 っている(
5
2
)
0
は,「
債務 自然保護 スワップ)を肯定するの も
欧米 の大 きな NGOが環境 スワップ (
エ リーテイズムであろう。 これは,債務 を帳消 しにす る代わ りに森林保全な ど
を求めるものであるが,そ もそも途上国が債務 を負っているとい う前提が誤 り
である.た しかに帳簿上 は途上国が彪大な累積債務 をかか えてお り,だか らこ
I
MFの内政干渉 (
構造調整) による住民の生活破壊が横行す る。 しか
そ世銀 ・
し,「
森食 い虫 ・環境 テロ リス トニ ッポン」「
ハ ンバーガーコネクション」な ど
の ことばが象徴す るように,先進国は途上国に対 して 「
生態学的債務」 をかか
0
0
年の植民地支配の歴史 をみるな らば,実質的にどち
えている。ましてや近代5
らが 「
人権的な債務」 を負っているかは明 らかであろう。 また実際にもスワッ
プは途上国の住民の生活 を圧迫 している。だか ら,環境 NGO の国際会議で は,
途上国の代表が先進国の代表 をきび しく非難す るとい う光景がみ られ るのであ
る(53)0
1
3
2
一橋研究 第 1
7巻第 2号
⑥ インパ ク ト的エ リーテ イズム
環境破壊 の影響 におけるインパ ク ト的エ リーテイズムが公害の被害が社会的
弱者や生物的弱者 にしわ寄せ される問題 であるのに対 し,環境破壊の対策 にお
,
安全 な食品」 (
無添加 ・低農薬等)は割
けるインパ ク ト的エ リーテ イズムは 「
高なので高所得層の方が購入 しやすい とか,都心部 の大気汚染がひ どくなれば,
高所得層 は空気が きれいで地価の高い郊外へ容易 に転居することができる (
ジ
ェン トリフイケ「ション) というような問題である。 また,公害 を出す工場が
閉鎖 されれば,失業す るのは主 として低所得の労働者である。つまり被害発生
の局面で も対策の局面で も,損 をするのは弱者である。
OECDは地球温暖化対策で C0 2の排出を抑制す るために,石油,石炭な どの
9
9
2
年1
0
月に公表す
化石燃料 に課税する炭素税 の指針案 を,地球サ ミッ ト後 の1
る予定である。 日本で も 「
竹下賢人会議」 (
市民運動サイ ドの 「
凡人会議」が こ
れに対置 された) を受 けて 「
炭素税
」「環境税」の議論が高 まるはずであるが,
,
消費税」 と同様 に逆進的な もの となる公算が大 き
このまま推移す るな らば 「
い。とくに不利 になるのは寒い地域 に住む低所得層であろう。
ECではエネルギ
付加価値税)や事業税か ら控除 して増税 にならな
ー税 をかけるときはVAT (
いように配慮するとい うが,日本 はどうなるであろうか。「インパ ク ト的エ リー
テイズム」が生 じがちであるということを念頭 において,政策設計お よび運用
の面で注意 を払 う必要がある。
6.資本主義 と社会主義
ソ連 ・東欧の崩壊 によって,市場経済万能論 に正当性が付与 され, これ は環
境問題 において も支配的な潮流 にな りつつあるようにみえる。環境税論議 など
にみるように,直接規制 よりも市場 メカニズムにゆだねるべ きだ という主張が
有力である。 こうした傾向のいきす ぎを防 ぐためには,現実の市場経済には ど
のようなマイナス面があるのか,いわゆる 「
現存 した社会主義の崩壊」 とは何
であったのか, ということを冷静 に検討 してお く必要がある。
④構造的暴力 としての 自由貿易
「
構造的暴力 としての自由貿易」 という局面 は,タバ コ,粉 ミルク,医薬品等
環境問題 とエリー ト主義
1
3
3
を例 にとるとわか りやすい。WHO は,1
99
0
年代 には毎年世界で3
0
0
万人がタバ
コ関連疾患で死亡すると見つ もっているが,喫煙 は最大の健康問題のひ とつで
)
。公衆衛生政策 として国民の喫煙 を抑制す ることは重要な課題である
ある(54
が,その熱心 さは,た とえば政府ないし医師会のタバ コ白書 (
第 1次)の栄行
年次 にみることができよう。イギ リスは1
96
2
年,アメリカは1
9
6
4
年,そして日
本 は大 きく遅れて1
9
8
7
年である。 このようにアメリカは喫煙対策先進国である。
しか し,途上国ではほぼ一様 に喫煙率が上昇 し (
タバ コ多国籍企業の公害輸
出)
,ほとん どの先進国では喫煙率が低下 している (日本 は漸増傾向)のに対
し,アメ リカは横 ばいである。タバ コ会社が黒人や若者 をターゲ ットに攻撃的
な宣伝販売活動 を行 っているか らだ。そしてアメ リカは,タイ,韓国, 日本 に
対 しては自由貿易主義イデオロギーをふ りかざしてタバ コ輸入 を強要する。ア
メ リカ政府や GATTが擁護するのは,タイ市場 におけるタイのタバ コ会社 と
アメ リカのタバ コ会社の営業条件の平等であ り,タバ コ病 によるライフチャン
スの制約 という観点か らみたタイ市民 とアメ リカ市民の平等 は考慮 されないC
先進国の一般家庭や途上国の上流階級の家庭の状況では,乳児用粉 ミルクは,
母乳 に比べれば劣 るにして も,直ちに有害商品 というわけではない。 しか し第
三世界の低所得層では,晴乳ぴんを煮沸消毒する燃料が不足 した り, ミルクの
値段が高 く,識字率が低 くて説明が読めないこともあるので,過剰 に薄めて使
った りしたために,多 くの乳児 (
年間1
0
万人)が感染症や栄養不良で死亡 した。
母乳で育てられていれば死なな くてすんだはずなのにである(
5
5
)
。第三世界 に粉
ミルクが普及 したのはネッスルを始め とする多国籍企業の 「ライフスタイル変
容戦略」(
粉 ミルクの売込みによって母乳晴青 というライフスタイルを変容 させ
ようとする)が大 きな要因である。 この戦略は,第三世界の とりわけ低所得層
のライフチャンスその も・
の (
生存チャンス)を大 きく制約することとなったの
である。 この間題 を取 りあげた 『
ベ ビーキラー』 という本が1
9
7
4
年 にイギ リス
で出版 され,その ドイツ語訳 (
スイス版)のタイ トルが 『
ネッスル社 は赤ん坊
を殺す』 となっていたため,ネ ッスル社 は翻訳 した市民団体 を名誉棄損で訴 え
た。その裁判の過程で企業犯罪が次々 と明 らかになったのである。
アメ リカの薬理学者 シルバーマンらは,米国では年間1
0
万人,第三世界で年
間1
0
0
万人が薬害で死亡 していると推定 した(
5
6
)
。第三世界で耐性菌が増 えてい
ることも抗生物質などの乱用 (
先進国 と同様ないしそれ以上の)を示唆 してい
1
3
4
一橋研究 第 1
7巻第 2号
る。多国籍製薬企業の商品は,先進国の市場 と第三世界 の市場では,情報の提
供 の仕方が違 う。適応症 については,先進国では厳 しく限定 しているが,途上
国では広 くして乱用 を促 しているo副作用 については,先進国では充分 な情報
を提供するが,第三世界では充分 な情報 を提供 しない。あるいは 「
特異体質 に
注意 」な どと逃 げる。スモ ン薬害に取 り組ん喪スウェーデンの小児科医,故ハ
ンソン博士 は,多国籍企業の 「
医薬品植民地主義」を指摘 している(57)。先進国
と途上国の政治環境 (
保健医療政策)
,経済環境 (
資本 の販売戦略,家計の状
釈)
,情報環境 (
医薬品情報)な どの違いによって 「
薬害によるライフチャンス
の制約」の面で格差が生 じるのである。
㊨ 「
現存 した社会主義」の崩壊 について
1
9
1
8
)
,
ソ連社会の権威主義的な体質については, ローザ ・ルクセ ンブ ルク (
A ・ベルクマ ン (
1
9
2
5
)
, トロッキー (
1
9
3
6
)
, ヴォ- リン (
1
9
4
7
)
,C・カス ト
1
9
4
8
) は,社会主義が どうあってはならないか とい う 「ネ
ルイズ ・ベルネ リ (
ガティブな青写真」の必要性 を示唆 し,プラ トン以来のユー トピア思想史 に く
り返 し登場する硬直的 ・静的な権威主義的ユー トピアの諸特徴 をソ連 は再生産
す ることになってしまった と指摘す る(
5
8
)
。 ソ連 ・東欧が崩壊 し,最大の資本主
義国アメ リカが地球環境保全の足 をひっぼっていることに典型的にみ られるよ
,
社会主義のない自由は特権 と
うに資本主義 もまた破産 しているということは 「
不正義であ り, 自由のない社会主義 は奴隷制 と野蛮である」 とい うバ クーニ ン
1
8
6
7
年)の有名 なことばの中に直観的に
『
連合主義 ・
社会主義 ・
反神学主義』(
予見 されていた と思われ る。 ソ連が硬直 したエ リー ト主義社会であった とすれ
ば,かろうじて延命 しているアメ リカは柔軟 なエ リー ト主義社会であろう0
,
マルクス主義の名前の もとに,マル クスの思想 とはまった く異
桜井哲夫 は 「
Jとのべているが,マル クス とレーニ ンの二面
質の思想が,世界 を支配 した(59)
性 とい うことを考 えてみなければならない と思 う。マルクスの民主主義的な面
は, ローザ ・ルクセンブルクやグラムシに受 けつがれ,権威主義的な面 はレー
ニンの前衛党論 (
ェ リー トとしての前衛が上か ら大衆 を指導す る)に引 きつが
れた。 レーニ ンの民主主義的な面 は,資本主義諸国 も対抗上模倣せ ざるをえな
かったロシア革命初期 の諸改革 (8時間労働制,社会保障制度等) にあ らわれ
1
3
5
環境問題 とエリー ト主義
てお り,権威主義的な面 はスター リンによっていっそう強化 されることになっ
1
9
8
9
)後の 「即決即殺」
た。「レーニ ンに帰れ」とい う人 もいるが,天安門事件 (
を思わせ るようなテロル をレーニ ン自身が命令 した ことも否定で きないであろ
う。私 は,スター リニズムを,マルクス自身 に内包 されていた権威主義的要素
が二重に強化 された もの として理解 しているO
スター 1
)ニズムの典型的な傾 向 としては,た とえば①死刑制度の濫用,(
参命
A・
W・グール ドナ-) をあげることがで きよう。
令経済,(
勤国内植民地主義 (
この うちの(
卦③ は深刻な環境破壊 に直結 しているO命令経済の もとでは,エ リ
ー トへの権限集中 と行政秘密の肥大化 によって,経済の非効率や環境配慮の不
足,出世主義的な官僚 の剰那主義 (
石油の乱開発 など) に対する市民のチェッ
ク機能が働かなかった。国内植民地主義 は,セ ミパ ラテンスク,ノバヤゼム リ
ャな どの核実験場 における放射能汚染や,中央アジアの綿作地帯 の農薬汚染 な
どをもた らしている.桜井が示唆するように, このようなエ リー ト主義的シス
,
テムが形成 されたのは 「ロシアジャコバ ン派」 とい う要因が大 きいであろう。
エ リー トが大衆 を 「
人民」 と 「
人民の敵」に選別するとい うロベスピエール ら
の思想のマイナス面が拡大 されたのではなかったであろうか。「ソ連型公害」と
,
個人
しての原子力災害 は,このような土壌 に根 ざしている。死刑制度 もまた 「
責任論」 という点 に着 目するな らば,社会主義思想ではな くブルジ ョア思想 の
あらわれであろう。周知のように,現在では,資本主義国でさえ死刑廃止 は世
界の流れ となってお り,アメ リカ (
少年死刑の存置)や中国は大 き くとり残 さ
れている。
疑似社会主義の崩壊の大 きな要因のひ とつは,社会主義の概念 を 「
資本主義
経済の否定」に矯小化 した ことにあると思われ る。その結果,エ リー ト主義 は
,
不問に付 され ることになった。私見によれば,社会主義の理念 は 「ノンエ リー
ト(
凡人)の自立 と連帯 を通 じて政治 ・経済 ・文化の民主化 をめざす もの」 と
して解釈すべ きである。 もちろん, ソ連 ・東欧の崩壊 はマルクス経済学の破産
を意味するわけではな く,宮嶋信夫の著作 な どにみるように,現代資本主義批
判 には依然 として有効であるo但 し,マルクス経済学が即社会主義の建設 に直
結す るわ けではない。
1
3
6
一橋研究 第 1
7巷第 2号
7.変革主体の形成 について
通俗的には 「
先進国-環境派,途上圏-開発派」 と図式化 されることが多い
-開発派 とエ コロジス トが, また途上
が,む しろ先進国においては「自由貿易」
国においては保護貿易 -開発派 とエコロジス トが対時 しているとみるべ きであ
ろう。先進国 と途上国の支配層は開発派であるが,彼 らは 「開発」が よいこと
だ とは決 して言わず,あ くまで 「
持続可能な開発」を主張す る。 その内実 は「
総
論賛成各論反対十の 「リップサービスエ コロジス ト」 といってよい。ただ し国
によって大 きな違 いがあ り,スカンジナビア諸国やオランダの政府 はかな り本
物の環境派に近 い といってよいだろう。
エ リー ト主義 システムを変革す る 「
反 システム運動」 (
ウオーラーステイン)
の知的 リーダーシップをとることをもっ とも期待すべ き集団は,私見 によれば
「
第三世界 のカウンターエ リー トおよびそれに準ずる人々」であ り,典型的な
グループ としては,第三世界ネ ッ トワーク (
Thi
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wor
k)があげら
れ る(
準ず る人々 というのは,た とえばアフ リカ系アメ リカ人 をさす)。カウン
ターエ リー トといえどもエ リー トには違いないので,第三世界のエ コロジス ト
も 1人 ひ とりをみれば 「
NGOのボスの権力志向」といった面 もあるか もしれな
いが,
集団 としての彼 らは,われわれが ものの見方の上で準拠集団 とすべ き人々
である。先進国のエコロジス トは,全体 としてはイデオロギー的エ リーテイズ
ムが強す ぎる。
第三世界のカウンターエ リー ト (
およびそれに準ず る人々) を,特 にエコロ
ジス トに限定せずに思いつ くままにあげれば,た とえば次のような人たちがい
る。女性では, ヴァンダナ・シヴァ,プ 1
)ンダ・ラオ (
イン ド), 7-・
ゲイク・
シム,イヴリン ・ホン (
マレーシア),ナワル ・エル ・サダウイ (
ェジブ ト),
アンジェラ ・Y ・デー ビス,ボニー ・T ・ディル,ポーラ ・ギディングス,ア
リス ・ウオーカー, トニ ・モ リスン (
アメ リカ),鄭咲恵 (日本)な ど。男性で
は,ラジシェカル ・シェツティ, ラ ドクリシュナ ・ラオ,チャクラパテ ィ ・ラ
ガバ ン,故 アンベ ドカル (
イン ド),アンワ一・フアザール,マーチン・コウ (
マ
レーシア)
,サ ミーJ
t
,・ア ミン (
ェジブ ト)
,故 フランツ ・フアノン (
アルジェ
リア),故 シコ・メンデス (
ブラジル),エ ドワー ド・
サイ- ド,アマルティア・
セン (
アメ リが ,声健次 (日本)な ど。
1
3
7
環境問題 とエリー ト主義
彼 らの出身階層である途上国の中産階級 (
その多 くは買弁的になるとして も)
の うちの先進部分 は,世界 システムの変革 において重要な役割 を果たす と思わ
れる。国際消費者機構
(
I
OCU)とい う NGOの会長職 は, 白人男性の間のた ら
い回 し-マ レーシア人男性-アメ リカ人女性-イン ドネシア人女性, というよ
うに推移 し(
6
0
)
,彼 らの リーダー シップの増大 を示 してい る。先進 国の中産 階
級,労働者階級の先進部分が彼 らとの連帯 を強めることも不可欠である。
8.エ リーテ イズム と民主主義
「
環境問題のサイクル」 において,環境破壊 の発生の局面では,エ リー トに
権限が集中す るほど公害が発生 しやすい ことが示唆 され る。被害が生 じる局面
では,低所得層や途上国住民,子供 な どの 「
環境弱者」 (
関境野)にしわ寄せ さ
れ ることになる。 そして対策が とられ る局面で も,社会的弱者 は損 をさせ られ
るとい う傾 向がある。以上の ようなことが社会構造 によって規定 され ると思わ
れ るので,環境社会学 を民主主義論 として構築す ることは,重要な課題 のひ と
つであろう。
政治 ・経済 ・文化の領域 にわた る民主化の進展 によって,環境問題 は解決の
,「持続可能 な社会 (sustainablesociety)」 (ワール ドウォッチ研究
方向に向い
,
持続可能 な地球 (
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h)
」(
増 田善信)への展望が開かれ
所等) 「
て くるもの と思われる。政治的 ・経済的民主主義 については多 くの人が論 じて
いるので,文化民主主義 について若干つけ加 えてお きたい。た とえば,科学技
術の市民 によるコン トロール,言語の問題 な どがあげられ よう。現在 のような
英語のヘゲモニーの もとで は,民主化 をすすめれば国連等の公用語の増加 によ
り紙の消費が増大 し,紙 の消費 を減 らすためには 「
英語帝国主義」 を強化する
しかない というジレンマがある。諸言語の平等 と中立語 (
エスペ ラン ト)の媒
介言語 としての採用 によって,エ コロジー と民主主義 は両立する。
㊨
[
付記]本稿 は,吹.
の拙稿 (
執筆順) をベースにしている。
「
環境社会学か
季刊思想 と現代 』No
.
2
6(
唯物論研究
らの人間像 一環境被害における不平等 『
」
」『世界』1992年 6月
協会,1991),⑧ 「
環境の危機 は 『
人類的」
】課題か
(
岩波
⑥「環境問題 とエ リー ト主義 を考 える」『地域社会研究』No.2(都留文
環境問題 とエ リーテイズム」 (日本保健医療
科大学地域社会学会,1
99
2), ㊨「
書店)
,
1
3
8
一橋研究 第 1
7巻第 2号
,⑥「地球環境 問題 の
9
92
年 6月2
7
-2
8日,於東京大学)
行動科学会一般演題 ,1
技術 と人 間』
1
9
9
2年 4月。本稿 で は紙 数 の関係 で図表, 出典,説明 をか
構 図」 『
な り省 略 したので,⑳⑥ を併読 していただ ける とあ りがたいO また, いちいち
言及 す る煩 を避 けたが,本稿 には市J
I
r
虎 彦氏 の論説
(
『
一橋研 究』第 1
6
巻第 4
早 ,1
9
9
2
)への反論が含 まれてい る。 しか しとれ も紙 数 の制約 か らすべての論
点 にふれ ることはで きなか った。
注
(1) Cr
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l・寺田 ・三浦 ・安立訳
9
9
1
年,1
7
0
1
7
9
貢。
『
環境 ・エネルギー ・社会』
, ミネルヴァ書房,1
(2) た とえば,庄司光・
宮本憲一 『
恐るべき公害』
,岩波書店,1
9
6
4
年。庄
司光・
宮本憲二 『日本の公害』
,岩波書店,1
9
7
5
年o宮本恵一 『
環境経済
9
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年.E.
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学』
,岩波書店,1
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9
6
9
都 留垂入監訳 『
経済成長の代価』
,岩波書店,1
9
7
1
年。飯島伸子 『
環境問題 と被害者運動』
,学文社,1
9
8
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年。
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東廉監訳 『
危険社会』
,二期 出版,1
9
8
8
年。原 田正純 『
水俣 が映 す世
9
8
9
年。土井陸雄 「リスク管理にお.
ける社会・
文化要
界』
, 日本評論社,1
因の評価」 (
日本 リスク研究学会第 2回研究発表会,1
9
8
9
年1
2
月 9日)
0
宇井純 「
公害病患者」新泉社編集部編 『
現代 日本の偏見 と差別』,新泉
社,1
9
8
1
年。小出裕幸 『
放射能汚染の現実 を超 えて』
,北斗出版,1
9
9
2
年。
(3) た とえば,Vi
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1
9
8
9
,
(4) 竹内謙 「
先進国責任問い北京宣言」 『
朝 日新聞』1
9
9
1
年 6月1
9日夕刊。
(5) 従属的参加については,Al
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9
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寿里 ・西川訳 『
脱工業化の社会』
,河出書房新社,
1
9
7
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年,1
8
2
3
貢。
(6) 戸田清 「
地球環境問題の構図」
『
技術 と人間』1
9
9
2
年 4月。
(7) PaulEhr
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8
1
.
戸田・
青木 ・
原子訳 『
絶滅のゆ くえ』新曜社,近刊。なお,「
先進国
」というのは欺満的な表現であり,本来ならこれらの社会の
(
先進社会)
病的性格 を考慮 して,「
過剰社会」 (
熊本-規)
,「
浪費社会」 (
宮嶋信
夫)
,「
暴走社会」などと呼ぶべ きであろう。
1
3
9
環境問題 とエ リー ト主義
(8) た とえば,寺西俊一 『
地球環境問題の政治経済学』,東洋経済新報社,
1
9
9
2
年,第 5章。
(9) Ba
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6
.
松岡信夫訳 『
エネルギー』,時事通信社,
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年。a C.
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7
4
.
戸 田他訳 『
アメ 7
)カの陸上交通 (
仮
題)』
,緑風出版,近刊。
(
1
0
) 宮本憲一 『
現代資本主義 と国家』
,岩波書店 ,1
9
8
1
年。
(
l
l
) 宮嶋信夫 『
大量浪費社会』,技術 と人間,1
9
9
0
年。宮嶋信夫 「
政府の地
球温暖化防止行動計画 を批判する 『
技術 と人間』1
9
9
2
年 1月。
(
1
2
) 藤原寿和 「自動車排出ガスが地球環境 を破壊する 『
技術 と人間』1
9
9
2
年 4月。
(
1
3) 環境庁 リサイクル研究会編 『リサイクル新時代』,中央法規 ,1
9
9
1
年,
9
3
貢。
(
1
4) 宮嶋信夫,前掲書,8
5
貢。
(
1
5
) 秋山紀子 「日本の環境政策 -これか らの課題 『
公害研究』2
0
巻 4号,
1
9
9
1
年。
(
1
6
) 小出裕幸,前掲書,1
81,
1
8
4
貢。
(
1
7
) 樋田敦 『
石油 と原子力 に未来 はあるか』亜紀書房 ,1
9
7
8
年。
(
1
8
) 戸 田清「
昭和電工 トリプ トファン食品公害事件」
『
消費者 リポー ト出9
9
2
年 5月1
7日∼ 5月2
7日 (日本消費者連盟)。
(
1
9
) 小原秀雄 『
野生動物消費大国ニ ッポン』,岩波書店 ,1
9
9
2
年。
(
2
0
) 片平例彦 「
医薬品産業 ・薬事行政 と薬害 ・副作用の諸問題 『
講座 日本
の保健 ・医療』第 4巻,労働旬報社 ,1
9
9
0
年。片平例彦 「
食品 ・医薬品
公害」
『
環境科学への扉』,有斐閣,1
9
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年。′
(
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) Ra
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1
97
9
.
吉田 ・田中 ・加藤訳 『ライフチャンス』
,創世記 ,1
9
8
2
年。
(
2
2
) 選択肢の構造的制約の概念 については,た とえば,船橋晴俊 「
社会制
御 の三水準 一新幹線公害対策の 日仏比較 を事例 として 『
社会学評論 』
41
巻 3号 ,1
9
9
0
年。
(
2
3
) Ev
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Ma
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1
9
8
7
.
北井 ・原後訳 『
サラワクの先住民』,法政大学出版局 ,1
9
8
9
年。
(
2
4
) 鷲見一夫 『
ODA援助の現実』,岩波書店 ,1
9
8
9
年,1
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4
3
貢。
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神崎牧子訳 『
アマゾンの戦争』,現代企画室 ,1
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年。
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.
(
2
7
) 高榎東 「
南北環境対立 をどう解 くか 『
世界 』1
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年 6月。
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」
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一橋研究 第 1
7巻第 2号
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8
」
句寿-訳 『
債務危機の真実』,朝 日新聞社,1
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9
年。
(
2
9
) た とえば,「ブラジル便 り-環境 SWAPに反対」『
9
2NGO フォーラ
ム ・J』No.ll
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2国連 ブラジル会議市民連絡会,1
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年 4月,1
3
貢。
(
3
0
) 山崎正和 『
柔 らかい個人主義の誕生』中央公論社,1
9
8
4
年,3
7
4
2
頁。
(
31
) この点 も含め,本稿では多 くの図表や出典 を紙数の制約のため省略 し
たが,詳細 は拙稿 「
環境問題 とエ リ⊥テイズム」 (
付記参照)をみ られた
い。
(
3
2) 杉田聡 『
人 にとってクルマ とは何か』,大月書店,1
9
91
年。
(
3
3) 宇沢弘文 『自動車の社会的費用』,岩波書店,1
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4
年,9
7
頁。
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) Da
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(
3
5
) 鈴木広他 「
パーソナ リ「
ティと社会的性格 『
講座社会学第 1巻』東京大
学出版会,1
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年。
(
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) F.
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,
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杉山訳 『
イギ 7
)スにおける労働者階級の状態』,岩波書店,1
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) J.We
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) L Doyale
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0.
(
4
0
) 平山雄 「
環境癌研究における疫学の役割」 『
医学のあゆみ』1
9
7
3
年1
0月
2
7日。
(
41
) 園田恭一 『
保健 ・医療 ・福祉 と地域社会』有信堂,1
9
91
年。
(
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2
) Mul
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) A.K.Se
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9
0.
川本隆史訳 「
一億人以上の女たちの生命が
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喪われている」『
みすず』1
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年1
0月。
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年,1
7
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貢。
(
4
5
) 宮本憲一,前掲書,1
(
4
6
) 小出裕幸,前掲書,4
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5.
(
4
9
) 里見宏・
玉城英彦 「
子 どもの食生活 と健康 をめ ぐる実態調査か ら 『
健
康 白書 No.4
』
, 日本教職員組合,1
9
8
4
年。
(
5
0
) 河野誠 「
農民蔑視の思想 を駁す」『
技術 と人間』1
9
8
9
年 2月。
(
51
) 『コンパ ッション』4
3
号,1
9
9
1
年1
1・1
2月, 日本動物実験廃止協会。
(
5
2
) 井上達夫の発言によるO『
現代思想』1
9
9
0
年11月,1
8
5
貢。
(
5
3
) 鷲見一夫氏 (
横浜市立大学)のご教示による (
1
9
9
0
年1
2月)
。
」
」
環境問題 とエ リー ト主義
1
41
(
5
4) 戸 田清 「
喫煙問題の歴史的考察 」 『
科学史研究』No.1
67,1
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8年。
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88.
浜谷 ・池田 ・中村訳 『
母乳の政治経済学』
,技術 と人間,1
9
91
年。
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n,1982.
斉藤正美訳 『
医薬品ス
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86年 ,1
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キャンダル』,三一書房 ,1
(
57) 01
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1
988.
斉藤正美訳 『
チバガイギーの内幕』,青木書店 ,1
98
9年,27
章。
(
58) Ma
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n,1950(
執筆 1
9
48),手塚 ・
広河訳 『
ユ
ー トピアの思想史』,太平出版社 ,1
972
年 ,3
5
0貢。
(
59) 桜井哲夫 『メシアニズムの終蔦』,筑摩書房 ,1
9
91
年, 7貢。
(
6
0
) 『
91
年夏 ・香港の燃 えた 6日間 -IOCU第 1
3回世界大会か ら』, 日本
消費者連盟編 `発行 ,1
991
年,1
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1
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