授業支援ボックス:お客様との共創開発により 実現した

新商品・ソリューション・サービス解説
授業支援ボックス:お客様との共創開発により
実現した紙とLMSの連携ソリューション
The Classwork Assist Box: A Solution, Developed
through Customer Co-creation, Linking Paper and LMSs
要
旨
現在の大学においては、教育研究システムのIT化に
【キーワード】
ドキュメントハンドリング、文字認識技術、授
伴い授業支援システム、e-Portfolioといったシステム
業支援システム、LMS、共創開発
の普及が進んでいるが、利用時の負担から利用教員数
が頭打ちになるなど、計画どおり活用されない問題が
顕在化している。
授業支援ボックスは、この問題に対して法政大学様
との間で共創型の開発を実施することにより、授業中
に利用される紙とLMS(Learning Management
System)を複合機により連携させ、教員業務の負担
軽減と学生の学修に対するモチベーションの向上を
実現したアプライアンス商品である。
本論文では、授業支援ボックスの商品化の背景と効
用、法政大学様との実証実験とその後の商品化におい
て開発導入した技術について説明する。
Abstract
【Keywords】
document
handling,
character
recognition
technology, learning management system, LMS,
customer co-creation development
執筆者
佐藤 悦志(Etsushi Sato)*1
榎本 尚之(Naoyuki Enomoto)*1
森田 雅夫(Masao Morita)*2
阿出川 智通(Tomomichi Adegawa)*1
長谷川 博之(Hiroyuki Hasegawa)*1
中村 慎也(Shinya Nakamura)*1
井上 桂(Katsura Inoue)*3
*1
*2
*3
コントローラ開発本部 CTPF第四開発部
(CTPF IV Controller Development Group)
コントローラ開発本部 CTPF第二開発部
(CTPF II Controller Development Group)
商品開発本部 システム企画部
(System Platform Strategy & PlanningProduct
Development Group)
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
In recent years, as many education and research
institutions have adopted systems that use information
and communication technology, learning management
systems (LMSs) and e-Portfolios have grown popular.
However, one problem which has come to light is that
after the introduction of these systems, the number of
teachers who actually use them tends to reach a
plateau. To address this problem, we developed the
Classwork Assist Box with Hosei University using
customer co-creation development. By utilizing a
multifunction printer, this appliance product allows the
paper media used in classes to be effectively used in
combination with an LMS, thus reducing the workload
of teachers while at the same time increasing
students’ motivation to learn.
This paper explains the background of the
commercialization of the Classwork Assist Box, its
benefits, the field tests we conducted in cooperation
with Hosei University, and the technologies that were
later
developed
and
added
during
the
commercialization process.
1
新商品・ソリューション・サービス解説
授業支援ボックス・顧客共創開発により実現した紙とLMSの連携ソリューション
1. はじめに
授業支援ボックスの外観を図1に示す。本商
品は、大学の授業で利用される紙文書である小
テスト、レポート、期末試験などを複合機でス
キャンするだけで、授業支援システム
( Learning Management System、以下、
LMSと記す)に登録するアプライアンス商品で
ある。1)
本商品は、大学の教育活動で行われる教員の
採点、返却作業を複合機のスキャン機能を用い
図2
て教員の事務作業を省力化、LMSを通じて、採
点後すぐに学生に返却することで、学修に対す
るモチベーションの向上も狙っている大学市場
向けのシステムである。
2.2
LMSの利用例(Sakai CLE)
An example of a learning
management system (Sakai CLE)
LMSとe-Portfolio
近年のLMS普及に伴い、大学教育関係者の間
で e-Portfolio と い う 言 葉 が 使 わ れ る よ う に
2. 授業支援ボックス開発の背景
2.1
授業支援システムとは
なっている。e-Portfolioは、LMSのように授
業で使い課題やテスト、成績を管理するだけで
なくルーブリック(Rubric)と呼ぶ、学生の成
近年、LMSの普及が国内でも進んでいる。
長目標を設定し、学修結果と比較することで
LMSは、授業に必要となる教材の保管、配布、
個々の学生が自己目標を明確にし、成果物を学
受講する学生の学習履歴、小テストや期末試験
生間で情報を共有することでモチベーション向
などの成績を統合的に管理するITシステムであ
上を図ることを狙ったシステムである。これま
る。図2は、Sakaiと呼ばれるLMSの利用例で
で、e-PortfolioとLMSは、個別に管理運用さ
あるが、LMSを利用する学生は、Webブラウ
れてきたが、LMSがすべての教員と授業で利用
ザーを通じて、期初に受講する授業の履修登録
されることで、LMSに蓄積されるテストやレ
をし、教材の配布を受け、レポート提出、授業
ポートなどの学修成果をe-Portfolioと共有で
中の小テスト実施、成績の確認などを行うこと
きれば、より高い教育効果を上げることが可能
ができる。また、教員はLMSを通じて学生の履
と考えられる。
修状況、学習の進捗確認、成績の管理や通知と
いった作業を行うことができ、活用ができれば
高い教育効果を上げることも可能と考えられて
おり、日本国内においても普及が加速している。
2.3
LMSの課題
普及の始まったLMSであるが、全学にシステ
ムを導入している大学でも教員の利用率は、高
くても70%、大学によっては10%未満という
のが現状である。図3は、LMSによる小テスト
の例であるが、学修成果を蓄積していくために
は、授業を再設計しLMS上で教材を作成しなお
す必要があり、ある程度のITリテラシーと操作
の学習が必要であることが、LMSを利用しない
原因となっている。
また、数学、物理学や経済学といった分野で
は、図4のように数式や図形を多用する授業が
図1
2
授業支援ボックス
The Classwork Assist Box
必須である。しかし、LMSを利用して授業中に
学生に回答させることは、現実的でなく、紙に
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授業支援ボックス・顧客共創開発により実現した紙とLMSの連携ソリューション
成績に直接影響するため、間違いが発生しない
ように小テストを学籍番号や名前順に並べ替え、
慎重に手入力している。特に大手私立大学では、
履修学生が100人以上となる授業も多く、この
作業が教員の負担となっている。
また、教育の観点からは、提出物の問題点や
評価を学生にフィードバックを行うことが重要
である。しかし、受講学生の多い授業では、紙
の返却に時間を消費してしまい授業時間が減少
してしまう。さらに教育認定制度や成績に対す
るクレーム対応などから提出物を保管する必要
図3
LMSによる小テストの例
An example of a quiz administered
through an LMS
性が高くなっており、紙の提出物が学生に
フィードバックされていない。
富士ゼロックスでは、これまでも複合機を活
用した大学向けソリューションを提供している
が、このような大学教育現場の現状から、新た
なIT機器ではなく、複合機とLMSを組み合わせ
ることで紙文書に関する教員の事務作業の負担
やLMS利用に必要となる教員の学習量を低減、
さらに紙文書の情報をLMSに蓄積できること
が、お客様の価値になると考え、法政大学様と
の間で実証実験を行いながら価値の検証を実施
した。2), 3)
図4
LMSによる数式入力の困難さ
The problem of inputting a mathematical
formula on an LMS
書かせるほうが現実的である。この問題に対し
3. 実証実験による課題解決
3.1
大学講義における紙の利用
てタブレットなどのIT機器を利用しLMSと連
図5は、実証実験の初期段階で大学講義にお
携するサービスも登場しているが、教員にとっ
いて、一般的にどのように紙メディアが利用さ
て新たな操作を要求するだけでなく機材の陳腐
れるかを法政大学様と分析したものである。
化が早く継続的な利用が難しい。このような現
状もLMSが利用されない要因である。
この結果、LMSに蓄積すべき情報として、毎
回の講義で使用される小テスト、学生に提出さ
授業準備
2.4
授業における紙利用の課題
学期
シラバス作成
学期前準備
専門分野や授業形態により異なる場合もある
が、学生の評価は、提出されるテストやレポー
トなどの文書を教員が採点評価することで決定
履修予定
アンケート
前提知識
アンケート
初回授業
オリエンテーション
レポート課題
課題準備
授業
資料作成
授業
授 業
されることが多い。
LMS利用の有無にかかわらず、教員は、履修
レポート課題評価
フィードバック
期末テスト
期末レポート
期末評価
する学生の出席、小テスト、レポート提出状況
学生参加議論
解 説
および結果をMicrosoft® Excel®などにより管
理解度確認
理している。たとえば、授業中に小テストを行っ
た場合、教員は、学生が提出した小テストを採
点、手作業で入力することになる。この作業は、
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図5
出席票
小テスト
授業における紙メディアの利用分析
An analysis of paper usage in a course
3
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授業支援ボックス・顧客共創開発により実現した紙とLMSの連携ソリューション
せるレポート課題、期末テストを抽出した。こ
の抽出には、狩野モデル4)を用いて要件を明確
にしたうえで使われる紙のメディア特性、使わ
れ方を分析した。その結果、次のような特徴が
あることがわかった。
z 小テスト
授業中に配布して学生に手書きさせる
白紙だけでなく事前に問題を印刷する
A4/A5の用紙が主に利用される
z レポート課題
次回の講義までに学生が提出する
学生は、Microsoft® Wordなどで原稿を作
図6
成しLMSに提出する
実証実験で使用したMISTCODEを印刷した小テスト用紙の例
An example of a paper quiz sheet printed with MISTCODE
that was used in our field test
A4、10枚以内で作成される
z 期末テスト
書内に付加するための専用スペースを設けるの
学期の最後に1度だけ使用する
ではなく、原稿に極小ドットを用紙全面に描画
B4/A3用紙を利用し1ページから3ペー
し情報を埋め込み、部分的に読み出すことがで
ジの問題を教員が作成、片面ないしは両面
きれば埋め込まれた情報を復号できる技術であ
で印刷される
る(図6)。
MISTCODEを採用したことにより、二次元
3.2
3.2.1
システムの検討
コードのような専用の領域を不要にし、過去の
既存システムや過去の実証実験の課題
実証実験で発生した書き込みなどの問題を防止
5)
できる。また、授業の情報をMISTCODEに埋
「PDF2Submission」 といった授業や学生の
め込んだことで、スキャナーを起動するだけで
情報を二次元コードやバーコードとスキャナー
教員が簡単にLMSに取り込めると考えた。
本実証実験前から「飛ぶノート」
6)
を用いてLMSやe-Portfolioに取り込み、学生
にフィードバックを行うシステムが存在する。
7)
3.2.3
文字認識技術の採用と運用課題の解決
富士ゼロックスが、過去に行った実証実験 で
前述した過去の実証実験では、学生の情報を
も「授業中に二次元コードに学生が書き込みを
符号化し用紙に印刷した結果、運用時の事前配
してしまい、情報が読み取れずシステムが停止」、
布の手間などを増やしまう課題が顕在化した。
「学生個人の情報が含まれたシールやフェイス
そこで、今回の実証実験では、学生個人を特
シートを個別に配布することが授業の負担と
定する情報を印刷物に埋め込み学生ごとに配布
なった」、「事前に配布しても授業に学生が忘れ
するのではなく、採点結果の文字認識と同時に
てしまい提出物をスキャンできない」といった
学生がテストやレポートに記述した学籍番号を
事象が発生していた。
文字認識することにより学生を特定する設計を
そこで、今回の実証実験では、二次元コード
検討した。
よりも誤った書き込みに耐性がある技術を選択
前述のユースケース分析では、原稿の特性と
し、情報の認識方法を再検討することで事前配布
して小テストや期末テストであれば、授業中に
による教員の負担を減らすシステムを検討した。
学生がすべて手書き、レポート課題であればワー
ドプロセッサーにより記述が記載されている。
3.2.2
符号化技術の選択
つまり、これらの記述方法の異なる文字を高
今回の実証実験では、富士ゼロックス独自の
符号化技術であるMISTCODE
TM 8)
®
を採用して
いる。MISTCODEは、QRコード のように文
4
い認識率で読み込むことが可能であれば、事前
配布の問題も解消できる。そこで、本システム
では、富士ゼロックスが独自に研究開発してい
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授業支援ボックス・顧客共創開発により実現した紙とLMSの連携ソリューション
教員
文字
形状
学生
PCでテストを作成し
DocuWorksでプリント指示
学生別 ソートされた
得点一覧 提出物一式
教員向け情報をメール
情報が付加された
DocuWorksを複合機に送信
評価を確認
認識
6
6
9
7
正解
0
0
4
1
図7
返却用PDFと
採点結果をLMSに登録
MISTCODE
複合機+授業支援ボックス
MISTCODE付
期末テスト
スキャン
手書きで採点
文字認識が難しい手書き文字の例
Examples of handwritten characters that are difficult for
the optical character recognition system to recognize
MISTCODE
期末試験を実施
図9
実証実験における期末テストのワークフロー
A workflow of a final examination in our field test
① 教員は、DocuWorksをベースとしたツール
を用いてLMSの登録先となる授業の情報を
入力しテストを授業支援ボックスに印刷指示
する。
図8
文字認識結果確認作業の改善
Improvements made to the process of
confirming character recognition results
② 印刷を受け付けた授業支援ボックスは、授業
の情報をMISTCODEとして符号化し同時に
受け付けた原稿に画像を合成し接続されてい
9)
る文字認識技術 を採用し、教員がテストや課
題レポートに書いた採点結果と学籍番号を認識
させる方式を採用した。
図7は、実際に法政大学様の小テストで学生
や教員が記入した文字を文字認識させた例であ
る複合機でプリントする。
③ 教員は、印刷されたテストを授業で使用し手
書きで採点を行い複合機のスキャナーに読み
込ませる。
④ 授業支援ボックスは、スキャナーで読み込ま
る。この例のようにどんなに高い認識率を持つ
れたイメージに含まれるMISTCODEを復号、
文字認識機能であっても人間も判断に迷うよう
ページごとに記載された学籍番号や採点結果
な文字まで確実に認識することは、不可能であ
の文字認識を行う。
る。そこで文字認識の検討と同時に教員が、シ
⑤ 授業支援ボックスは、文字認識結果を基に学
ステムの処理結果を容易に確認できるシステム
生ごとにPDFファイルを作成し、LMSに登録
を検討し、図8のようなMicrosoft Excelファイ
する。同時に教員が保管に利用する全学生の
ルを出力するようにした。
分 を ま と め た PDF と 採 点 結 果 を ま と め た
このExcelのファイルには、文字認識した学
Microsoft Excelのファイルを作成し、授業
籍番号と評価だけでなく文字認識箇所と学生の
支援ボックス内に保存し、処理が終了したこ
氏名の画像を貼りつけることで、紙を参照せず
とを電子メールで教員に通知する。
に文字認識の訂正を容易にできるようにした。
⑥ メールを受け取った教員は、授業支援ボック
スからExcelファイルとPDFをWebDAVで
3.2.4
実証実験のワークフロー
ダウンロードし文字認識結果などに間違いが
これらの要素技術を組み合わせた実証実験シ
ないかを確認、問題がなければ電子メールや
ステムを図9に示す。先に述べたように今回の
LMSを通じて学生にフィードバックを行っ
実証実験では、小テスト、レポート課題、期末
たことを通知する。
テストの3つの原稿に対応した。参考として期
末テスト向けに開発した実証実験のシステムの
フローを次に示す。
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表1
文字認識率の評価
An assessment of the rate of successful
character recognition
述べ学生数
認識対象
文字数
正認識数
誤認識数
認識率(%)
899
6293
6270
23
99.6
5
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授業支援ボックス・顧客共創開発により実現した紙とLMSの連携ソリューション
4. 実証実験の評価と商品化活動
4.1
手書き文字認識の評価
表1は、法政大学理工学部3年生のある授業
4.4
実証実験システムの問題点
法政大学様との実証実験によりシステムの有
効性だけでなく大学固有の問題も発見すること
ができた。特徴的なものを次に挙げる。
で使用した結果である。授業の履修者は、80名
z 大学では、企業と異なり非常勤講師などに
全15回のうち12回の授業で1ページものの小
専用のアプリケーションを配布することが
テストを実施したときに書かれた学籍番号と採
難しい。専用のツールではなく汎用のプリ
点結果、約6300文字に対して文字認識率を計
ンタードライバーで印刷したい。
測したものである。文字認識率は、99.6%と非
z 実証実験のシステムでは、授業の情報を符
常に高い数値であり、学籍番号を符号化し印刷
号化した用紙を印刷する必要があるが、授
時に埋め込まなくても実用的なシステムが構築
業前は、時間が不足することが多く印刷で
可能であることを証明できた。
きない。誤用した場合、別の課題として
フィードバックされてしまう。また、前回
4.2
採点とフィードバックの教員負担
の授業で使用した印刷物を使い回せたほう
がよい。
実際の教員負担となっていた手作業のデータ
入力作業においても、スキャンを行い集計が終
z 集計結果のExcelファイルとPDFをダウン
わると出力されるMicrosoft Excelを確認する
ロードするためにWebDAVを使うのは、
だけとなり、非常に簡単になったとの評価を得
一般の教員には難しい。
ることができた。また、学生へのフィードバッ
z スキャナーで読み込むときに原稿の方向や
クもLMSを通じて行ったことで学生のリフレ
白紙を気にしたくない。また、鉛筆の文字
クションを促し、授業の冒頭の5分から15分を
が読み難い。
使っていた紙のテストの返却時間を削減、90分
z スキャンデータサイズが大きいため全学利
用した場合、LMS側の負荷が高くなる。
間すべてを教育に使う授業を実現できた。
これらの問題を解決するためにワークフロー修
4.3
フィードバックの効果
今回の実証実験では、学生のモチベーションの
正、新たな技術を導入し、商品化に向け使いや
すいシステムに改良していった。
変化もインタビューにより計測している。次に、
学生から得たコメントのごく一部を紹介する。
z アンケートの実施や、毎回の出席票実施な
ど授業に興味を持ち参加できた面も大き
かったと思う。
z 出席票や、レポートを先生がしっかり見て
くださり、コメントをくださったり、点数
を付けてくださったので、やる気が出ました。
z 授業が終わったごとに提出した課題や授業
のリアクションペーパーなどについては、
5. 商品化に向けた改良
5.1
基本的な使い方の変更
4.4節に記した問題を解決した商品版の授業支
援ボックスの基本的な使い方と動作を次に示す。
① 教員は、授業支援ボックスから小テストやレ
ポートなどに使用するMicrosoft Wordの
フォームをダウンロード、必要に応じて編集
を行いプリントアウトする。
添削して返却していただくことができたの
② プリントした原稿を授業で使用、学生が記入
で、欠点やよかった点について見返して反
したものを回収する。その後、これまでどお
省することができて非常に役立ったと考え
り、手書きで採点、コメントの記入を行う。
られる。
③ 採点が終わった原稿を原稿送り装置に置き、
こ の よ う な 学 生 の 意 見 か ら も LMS を 通 じ た
複合機パネルから担当している授業の情報を
フィードバックにより学生の授業に対するモチ
選択しスキャンを開始する。
ベーションが向上したことがわかる。
④ スキャンが終わると授業支援ボックスが、学
籍番号、採点結果の文字認識を行い、学生に
6
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授業支援ボックス・顧客共創開発により実現した紙とLMSの連携ソリューション
スキャン画像
スキャンの順番
14X01
14X02
白紙
14X03
PDF化
・学籍番号の昇順に並び変え
・自動で正立
・白紙を除去
PDFファイル
PDFファイル中の順番
図10 集計スキャン完了通知メールの例
An example of a notification email for the
completion of scanning
14X01
14X02
14X03
返却するPDFをLMSに登録、同時に採点結果
を集計したExcelファイル、学籍番号順にソー
図12 PDF生成処理の改良
Improved processing for PDF generation
トし束ねたPDFを作成する。1回でダウン
ロードできるようにZipファイルにまとめる。
⑤ すべての処理が完了すると教員完了通知メー
ルを送信する。完了通知メールには、Excel
いただき、操作性とワークフローに問題がない
ことを確認した。
ファイルとPDFをまとめたZipファイルの
URLが記載されている(図10)。教員は、
5.3
ダウンロード仕様の変更
Webブラウザーでダウンロード、Excelファ
実証実験では、メールで終了通知を受けると教
イルに書かれている学籍番号、採点結果の文
員ごとに設定されたWebDAVフォルダーにア
字認識に誤りがないか確認する。その後、
クセスすることにExcelファイルとPDFファイ
LMSの機能や電子メールを通じて学生に返却
ルを取り出す仕様としていたが、一般的な教員
したことを伝え、すべての作業が完了となる。
は、WebDAVになじみがなく取り扱いにくい
との意見を基にWebブラウザーで処理結果を
5.2
フォームとスキャン操作の変更
ダウンロードする仕様とした。また、ダウンロー
授業支援ボックスでは、実証実験向けのシス
ド先を教員ごとに作成する仕様では、教員のア
テムと異なり、専用ツールにより授業情報を
カウントやパスワード情報を授業支援ボックス
MISTCODEとして印刷する機能を廃止、あら
行う必要があり、運用コストが高くなると考え、
かじめプリセットした小テスト、レポート課題、
完了を通知する電子メールの本文に、期限付き
期末テストの原稿のみを使用する仕様とした。
のURLを記載しダウンロードする仕様とした。
このため、図11のように、取り込み先の授業を
選択するようにユーザーインターフェイスの変
5.4
PDF/Excel生成機能の改良
更を行った。実証実験のシステムのようにス
図12は、原稿送り装置に置いた紙の向きや現
キャンするだけでLMSに取り込むことはでき
状の状態と、実際に教員に送付されるPDFファ
なかったが、実際に法政大学様で利用してい
イルの各ページの構成を示している。
図11 授業支援ボックスの操作ステップ
Steps for operating the Classwork Assist Box on the MFP panel
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7
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PDFファイルサイズ比較
1400
スキャナーで読み込んだ画像
1200
1000
800
一般的な二値化処理をした画像
600
400
200
0
標準
特殊な二値化処理をした画像
図13 文字の読みやすさの改善
Improved legibility of characters
授業支援ボックスでは、スキャナーから入力
高圧縮
図14 PDFファイルの低容量化
Reduced file size of PDFs
している原稿により計測したデータサイズの違
された画像の向きをMISTCODEから検出、適
いであるが、約1/8のファイルサイズになって
切な方向に正立処理を行う。また、完全に白紙
おり、データ転送の負荷やハードウェアリソー
のページを除去する機能を搭載した。この機能
スの低減に寄与していることがわかる。
を開発したことにより、教員は、スキャン時に
学籍番号の並びや原稿の向き、白紙の混在などを
気にせずにスキャナーを利用することができる。
6. おわりに
また、図13は、スキャナーで読み込んだ画像
授業支援ボックスを販売開始した時点で対応
をそのまま、Excelに貼り付けたものと授業支
するLMSは、SakaiとMoodleのみであった。
援ボックスで貼りつけた画像の違いを示したも
しかし、販売開始直後から他のLMSと接続する
のである。特に大学の授業中に作成するテストや
要望を受け、本原稿の執筆時点では、日本デー
レポートは、鉛筆により記入されるため、文字が
タパシフィック社のWebClass、富士通社の
かすれやすい。授業支援ボックスには、自社で独
CoursePowerとの連携を実現した。これは、
自に開発したかすれた文字を読みやすくする技
実証実験の課題が特定校の問題ではなく大学共
術を搭載したことにより、Microsoft Excelの
通の課題であること。紙メディアとLMSの連携
データをより読みやすくした。
が教育効果や教員の事務作業の効率化に有効で
あることを示している。
5.5
PDFファイルの低容量化
現在も法政大学様とは、紙メディアの新たな
教員の採点やコメントは、赤いボールペンな
ユースケースの探索と活用、e-Portfolioに向け
どで記入されるケースがほとんどである。実証
た紙と紙以外のメディアのシームレスな活用な
実験のシステム同様、授業支援ボックスでも、
ど当社の技術を活かしたシステムの検証を継続
フィードバック結果をリアルに伝えるためには、
させていただいている。今後は、継続して大学
カラー画像をPDF化する仕様とした。カラー画
教育に寄与する商品開発だけでなく、今回、実
像は、1ページあたり1Mバイトを超える場合も
践したお客様との共創開発を応用し他の業種、
多く、大規模な授業で利用すると数百Mバイト
業務においても、お客様の業務課題を解決する
のデータをLMSに転送する必要があり、実証実
ソリューションを提供していく。
験で指摘があったように、ネットワークやLMS
に負担をかける懸念がある。そこで、授業支援
ボックスでは、当社の複合機と同じPDFの高圧
7. 商標について
縮化技術を採用しデータサイズの低容量化と画
z Microsoft 、 Excel は 、 米 国 Microsoft
質の問題を両立した。図14は、商品評価に使用
Corporationの米国およびその他の国にお
8
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授業支援ボックス・顧客共創開発により実現した紙とLMSの連携ソリューション
processing/lfg.html
ける登録商標または商標です。
z QRコードは、株式会社デンソーウェーブの
登録商標です。
z その他の商品名、会社名は、一般に各社の商
号、登録商標または商標です。
8. 参考文献
1) 授業支援ボックス:
http://www.fujixerox.co.jp/product/m
f_etc/class_box/
http://www.fujixerox.co.jp/solution/in
_output/class_box.html
2) 常盤祐司, 宮崎誠, 山田勇樹, 佐藤悦志: “電
子透かしを活用した手書き文書とSakaiの
連携”, 大学 ICT推進協議会 2012年度年
次大会論文集, pp.5-12, (2012).
3) Y. Tokiwa, M. Miyazaki, Y. Yamada, E.
Sato: “An Instructional Practice Based on
Handwritten Answer Sheets with a Course
Management
System”,
2013
IEEE
Frontiers in Education Conference (FIE),
pp.779-781, (2013).
4) 狩野紀昭, 瀬楽信彦, 高橋文夫, 辻進一: “魅
力的品質と当り前品質”, 『品質』Vol.14,
No.2, pp.147-156, (1984).
筆者紹介
佐藤
悦志
コントローラ開発本部 コントローラプラットフォーム第四開発部
に所属
専門分野:ドキュメントハンドリング技術、画像処理、ネットワーク
5) 飛ぶノート:
http://tobu-note.ver2.co.jp/
6) PDF2Submission:
https://moodle.org/plugins/view.php?plugin
=block_pdf2submission
7) 小山内直樹, 神林博幸, 長井康訓, 上林憲
之ほか: “大教室講義における個別フィード
バックを支援する複合的なメディアを活用
した教育サービス -サービス設計と運用方
法 -”, 第 69 回 情 報 処 理 学 会 全 国 大 会 ,
6ZA-5, (2007).
8) 紙への低視認性コード埋め込み技術:
http://www.fujixerox.co.jp/company/
technical/main_technology/handling_
processing/mistcode.html
9) 自然言語処理技術による意味分析:
http://www.fujixerox.co.jp/company/
technical/main_technology/handling_
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
榎本
尚之
コントローラ開発本部 コントローラプラットフォーム第四開発部
に所属
専門分野:ドキュメントハンドリング技術、ネットワーク
森田
雅夫
コントローラ開発本部 コントローラプラットフォーム第二開発部
に所属
専門分野:ドキュメントハンドリング技術、画像処理
阿出川
智通
コントローラ開発本部 コントローラプラットフォーム第四開発部
に所属
専門分野:ドキュメントハンドリング技術、ユーザーインターフェ
イス技術
長谷川
博之
コントローラ開発本部 コントローラプラットフォーム第四開発部
に所属
専門分野:ドキュメントハンドリング技術、ネットワーク技術
中村
慎也
コントローラ開発本部 コントローラプラットフォーム第四開発部
に所属
専門分野:ドキュメントハンドリング技術、画像処理
井上
桂
商品開発本部 システム企画部に所属
専門分野:ユーザーインターフェイス技術
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