フェルマー点

468_3点からの距離の和が最小となる点(フェルマー点)
C平面上の3点からの距離の和が最小となる点
右図のように△ABC の 3 辺 AB,BC,CA のそれぞれを 1 辺
とする正三角形 △ABC′ , △BCA ′ , △CAB′ を△ABC の外側
A
B-
にかき,3 直線 AA ′ , BB′ , CC′ を結ぶと 1 点 P で交わる.
この点 P をフェルマー点(または,トリチェリ点,等角中心) B
という.
P
C
D
特に,三角形のどの内角も 120 より小さい場合,フェルマー
点 P は,△ABC の 3 頂点 A,B,C からの距離の和
AP + BP + CP
の値を最小とする点である.
△ABC 内に任意の点 P0 をとり, △ABP0 を点 B の
証明
AC-
D
周りに 60 回転した三角形を △C′BQ0 とする.
A
Q0
BP0 = BQ0 , ∠P0 BQ0 = 60D
より, △BP0Q0 は正三角形であるから
BP0 = P0Q0
"" ①
P0
また, △ABP0 ≡ △C′BQ0 より
B
AP0 = C′Q0 "" ②
ここで, C , C′ を結んだ線分に注目すると,①,②より
C
CQ
AP0 + BP0 + P0C = C′Q0 + Q0 P0 + P0C
A
であるから,この値が最小となるのは,2 点 P0 , Q0 が
線分 CC′ 上にあり,4 点 C′ , Q0 , P0 , C が一直線上に
あるときである.
そのときの 2 点 P0 , Q0 をそれぞれ P,Q とすると,点 P が
60,
120,
D
D
C
B
AP + BP + CP の値を最小とする点である.
このとき
D
P
CD
∠BPC= 180 − ∠BPQ= 180 − 60 = 120
であり,同様に △BCA ′ , △CAB′ を作図して考えると
A
B-
D
∠APB=∠BPC=∠CPA = 120
となり,点 P から△ABC の 3 頂点を見たときのなす角はすべて等
しくなる.(これが,等角中心と言われる所以である.)
P
B
C
C-
次に,
P
A
B
BC
A-
A = 120D のとき,フェルマー点は点 A と一致
D
し, A > 120 のとき,フェルマー点は△ABC の外部にある.
D
したがって, A)120 の場合, AP + BP + CP を最小とする点は,
点 A と一致する.
A-
−1−
http://www.geocities.jp/ikemath
まず,1 辺の長さが a の正三角形 ABC の内部の点 Q から,3 辺に下した垂線の足をそ
れぞれ D,E,F とすると
A
QD+QE+QF=(一定)
となることを示す.
△ABC の高さを h とすると
a F
△ABC=△BCQ+△CAQ+△ABQ
E
Q
より
h
別証
1 ah = 1 a ⋅ QD + 1 a ⋅ QE + 1 a ⋅ QF
2
2
2
2
= 1 a(QD + QE + QF)
2
よって,QD+QE+QF=h(一定)
■
D
次に,右図のように内角の大きさがすべて 120
B
C-
D
D
C
A
B-
より小さい三角形 ABC において,内部に
D
∠APB=∠BPC=∠CPA= 120
となる点 P をとる.3 頂点 A,B,C を通り,そ
れぞれ AP,BP,CP に垂直な 3 直線をひき,交
点 を そ れ ぞ れ A ′ , B′ , C′ と す る と , 四 角 形
APBC′ は円に内接することから
120,
Q
B
E
P
C
F
∠C′ = 180D − 120D = 60D
同様に
∠A ′ = ∠B′ = 60D
Aしたがって,△ A ′B′C′ は正三角形となる.
′
′
′
′
′
′
いま,△ABC 内に任意の点 Q をとり, B C , C A , A B に垂線 QD,QE,QF を下すと
AQ+BQ+CQ ) QD+QE+QF=AP+BP+CP
がつねに成り立つ.
よって,AQ+BQ+CQ を最小にする点は P である.
■
例題.座標平面上の 3 点 A ( −1 , 0) ,B (1 , 0) ,C (0 , 1) を頂点とする△ABC の内部の任
意の点を P とする.点 P を通り x 軸に平行な直線と y 軸との交点を Q とするとき,次
の(1),(2)に答えよ.
(1) AP + BP ) AQ + BQ が成り立つことを示せ.
(2)
AP + BP + CP を最小にする点 P の座標を求めよ.
(鹿児島大)
s(1) 直線 PQ に関して,点 A と対称な点を A ′ とすると
AP = A ′P , AQ = A ′Q
が成り立つ.したがって
AP + BP = A ′P + BP
y
1
C
A-
) A ′B
P
= A ′Q + QB
= AQ + QB
A
-1
等号成立は,点 P が点 Q に一致するときである.
−2−
■
Q
B
O
1 x
468_3点からの距離の和が最小となる点(フェルマー点)
(2)
(1)において, CP )CQ が成り立つことから
AP + BP + CP ) AQ + BQ + CQ
したがって,求める点 P は y 軸上にあり,P (0 , t ) (0 < t < 1) とおける.
このとき
AP + BP + CP = 1 + t 2 + 1 + t 2 + 1 − t
= 2 1+ t2 +1− t
f (t ) = 2 1 + t 2 + 1 − t (0 < t < 1) とおくと
f ′(t ) = 2 ⋅
2
2t
− 1 = 2t − 1 = 2t − 1 + t
2 1+ t2
1+ t2
1+ t2
2t − 1 + t 2 = 0 とおくと
2t = 1 + t 2
両辺,正であるから 2 乗して
0 < t < 1 より
4t 2 = 1 + t 2
⇔ t2 = 1
3
t= 1
3
1
3
0
t
増減表は右のようになる.
1 のとき f (t ) は最小となる.
3
1 ⎞
よって,求める点 P の座標は ⎛⎜ 0 ,
⎟
3 ⎠
⎝
ゆえに, t =
f ′(t )
−
f (t )
:
t △APC を点 A の周りに 60D 回転した三角形を C-
+
9
y
△AP′C′ とすると
△APP′ は正三角形, △APC ≡ △AP′C′
であることから
AP = PP′ , CP = C′P′
したがって
AP + BP + CP = PP′ + BP + C′P′
0
1
1
C
P-
A
-1
P
B
O
1 x
= BP + PP′ + P′C′ ) BC′
等号成立は,4 点 B , P , P′ , C′ が一直線上にあるときである.
したがって,直線 BC′ と y 軸との交点が点 P であるとき, AP + BP + CP が最小となる.
D
D
このとき, ∠APC′ = 60 より ∠APB = 120
1
AO=1 より OP=
3
1 ⎞
よって,求める点 P の座標は ⎛⎜ 0 ,
⎟
3 ⎠
⎝
■ 練 習 問 題.
xy 平面上の 3 点 O (0 , 0) ,A (1 , 0) ,B (0 , 1) からの距離の和 OP + AP + BP を最小にす
る点 P を求めよ.
(お茶の水女子大)
−3−