ソーシャルワーク入門(7) 日本におけるソーシャルワークの展開

5.23.2014 SW 入門
担当:Yoshimi FUJINO
ソーシャルワーク入門(7)
日本におけるソーシャルワークの展開
Ⅰ.はじめに
NASW の SW の定義の日本語訳を載せて欲しいとのリクエストがあったのですが、機会を逸していたので、別紙にま
とめました。
Ⅱ.レスポンス・ペーパーから
〔ソーシャルワーク関連〕
・YMCA について調べたら、たくさんでてきたんですが、
「キリスト教青年会」と出てきました。これで正しいでしょ
うか?言葉自体知らなかったので、
「YMCA」と聞くと、ヤングマンしか出てきませんでした(笑)
・SW をグループワークと考える利点は何でしょうか?どうして日本はアメリカの真似をしてばかりなのでしょうか。
・診断主義と機能主義を終結する動きがありましたが、それが完全になくなったのは、いつごろなのでしょうか。
・診断主義に傾倒していた SW とありましたが、個人の心の問題のせいにして解決する方法で、本当に成り立っていた
のか疑問です。
・社会や人のためである SW が、主義・主張に左右されるのは、難儀なことだなと思わざるを得ませんでした。
〔公民権運動関連〕
・黒人差別は何がきっかけで起きたのでしょうか。一般的に黒人の方が運動能力などの点においては優れているように
思います。
・差別は、何を基準として判断されるのでしょうか? ⇒「世界人権宣言」に少しヒントはあるかもしれません。
・差別していた白人は、何かおかしいと感じなかったのでしょうか。
・当時よりは軽いが、まだ差別が残っていると思うので、アメリカの SW 関連の仕事は貧困に加えて差別の問題解決に
取り組まねばならず、やることが多いので大変そうだと思った。
⇒北米では、いろいろな差別にかかわるソーシャルワーカーは多いです。
・公民権運動などの当事者が立ち上がって社会を変えたという事実に感動した。私がいじめなどで差別を受けていたと
して、そのように「嫌なことは嫌「これが正しい」と主張する勇気があるだろうか?
⇒いじめはひとりで闘うことになることが多いと思いますが、公民権運動や自立生活運動などは共に闘う仲間たちがい
ました。仲間同士での支えあいがあってことで、ひとりでの闘いほど厳しいものはないと思います。
・今ではオバマ大統領が活躍しているように受け入れることが当たり前という時代。
(後略)
・私が今当然だと思っていることの中にも実は差別的な要素が含まれているのではないかと心配になりました。差別は
良くない、撤廃すべきだと口で言うのは簡単だけど、人間の感情が伴う問題であり、根本的な解決はとても難しいと思
います。私が障害者や外国人に会うと対応に困ってしまうのも差別的な考えが少なからず含まれているのかもしれない
と思い、反省しました。
・最近も試合中に黒人の選手に向かってバナナを投げつけるような人がいるようなので、本当にひどいと思います。
⇒最近の時事ニュースをチェックして、授業と関連づけてくれると嬉しく思います。
・貧困と人種差別は別の問題だと思っていました。 ⇒ 貧困と人種差別は、現在でも関連が非常に強い問題です。
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・今日勉強した時代の映画や、今日見た映画を全部見てみたいと思った。お勧めがあったら教えて下さい。
・差別に関わる映画などで先生のおすすめするものを紹介して欲しいです。
〔その他〕
・施設内での虐待で、職員のストレスを解消するような取り組みなどは行われていないのでしょうか。
・わたしは幼児教育志望ですが、
(中略)
、職員のケアをするならば、社会福祉士や心理の分野を専攻したほうが良いの
でしょうか。
・先生は海外に行っていますが、そのときは福祉施設に行ったのですか? 私も大学 4 年間の間に、海外に行って、福
祉施設を訪れてみたいのですができますか?
⇒福祉施設に行くことを目的とした旅行もありますし、単に観光を目的とした場合もあります。海外に行くといっても、
施設を単体で見学してもそんなに大きな意味はなく、その国の社会の成り立ちや社会情勢、国民性の理解なしに福祉サ
ービスの理解もできないと思っています。海外の福祉施設に訪れてみたいとのこと、どの国に行きたいのかにもよりま
すが、できます。が、お金がかかってしまう心構えはしておいて下さい。
・先生は結婚願望はないのですか?
Ⅲ.現在のSWにおける重要な概念・理念
*エンパワメント
生活状況の改善を通じて、本来持っている力を取り戻すとともに、公正な社会の実現を目指していく理論・実践
*ストレングス(視点)
弱さやダメなところを見るのではなく、人が持つ強さ・長所に着目し、活用していこうとする理論・実践。どんな人に
もストレングスがあると考える。
*ケア・マネジメント/ケース・マネジメント
ケアプランを作成し、他職種との連携をもとに、地域の資源を活用しながら利用者に効果的に効率良くサービス提供を
行う一連の支援の流れ
*ナラティヴ・アプローチ
利用者が語る言葉を重視し、利用者が言葉を通じて作り出す世界や語る物語をもとに支援する実践
*リジリエンス/レリジエンス
大きな困難・難事が表れる中で、個人の心理的・社会的・文化的・身体的資源が自身に作用する方向を捜し求め、安定
した生活を維持する能力であると共に、これら資源が文化的に意味ある方法で提供されるように、協議し利用する、個
的・集合的な能力のこと
Ⅳ.日本におけるソーシャルワークの形成過程
1)ケースワーク導入期(1920(大正 9)年~
*「ケースワーク」の初登場 → 三好豊太郎「
『ケースウォーク』としての人事相談事業」
(1924)
小沢一「組織社会事業とその元則」
(1925)
、福山政一「ケース・ウォークの意義と方法」
(1928)
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*方面委員
・1917 年、岡山県にて済生顧問制度創設
・1918 年、大阪府にて方面委員創設 : 済生顧問制度やエルバーフェルト制度を参考に創設
・現在の
、考案したのは
*ケースワークは方面委員の活動技法と考えられていた
*セツルメント : 日本では「
」として広がる
・1891(明治 24)年 岡山博愛会
・1897(明治 30)年
によって
・1921(大正 10)年
によって大阪市立市民館設立(日本で最初の公立の隣保館)
設立
*グループワークに関連して、1880(明治 13)年 YMCA 設立、 1905(明治 38)年 YWCA 設立
*医療ソーシャルワークの活動
・1919(大正 8)年 泉橋慈善病院
・1929(昭和 4)年 聖路加病院 社会事業部設立
活動
2)ケースワーク導入期第 2 期・第 3 期(1930(昭和 5 年)~)
*ケースワークの本格的導入
・
『ケース・ウォークの理論と実際』
(1938) M・リッチモンドの理論の紹介など
*第 2 次世界大戦終結 → 敗戦
GHQによるソーシャルワークの積極的導入
現在に続く社会福祉法制度の基礎がGHQによって作られた
*1951(昭和 26)年 社会事業法(現在の社会福祉法)
社会福祉主事・児童福祉司・身体障害者福祉司が公的に制定化 ⇒ 養成課程にソーシャルワークが必修化
*1950 年以降、診断主義、機能主義、家族中心ケースワーク等、アメリカの最新の考えが紹介される
*社会福祉理論の3つの論争
①技術論 VS 政策論 (『大阪社会福祉研究』)
技術論 ⇒
社会福祉は人間関係技術である
政策論 ⇒
労働問題から派生する社会的問題に対応するのが社会福祉
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②
論争
1953 年 黒木利克「生活保護制度におけるサービスについての議論」
生活保護制度にはケースワークは必要
制度はあくまで制度、ケースワークという技術は必要なのか?
論争 1958(昭和 33)年~1963(昭和 38)年
③
・仲村優一:公的扶助をケースワークの手段にするのではなく、ケースワークを手段にするべき
・岸勇:公的扶助とケースワークは切り離すべき
3)ソーシャルワーク発展期第 1 期(1960(昭和 35)年~
*北米におけるテキストが次々と翻訳・出版、その後も北米のモデルが中心
*社会福祉六法をもとに施設を中心に、社会福祉が発展
・戦後の生活状況に対応するための社会福祉
・施設の生活を支援するためにソーシャルワークが活用される
⇒日本独自のソーシャルワークの発展は?
4)ソーシャルワーク発展期第 2 期(1987(昭和 62)年~
1987(昭和 62)年 「社会福祉士及び介護福祉士法」制定
⇒ 社会福祉従事者の専門職化
社会福祉士=ソーシャルワーカー?
・北米、英国等から新しい理論・考えが入ってくる
・社会福祉基礎構造改革(1990 年代半ば~
5)ソーシャルワーク発展期第 3 期(2009(平成 21)年~
*ジェネラリスト・アプローチによる社会福祉士養成の始まり
・エコロジカル・アプローチ(生態学にもとづくソーシャルワーク)
、システム理論が基盤
・人と環境との交互作用を重視する
モデル
・病理や欠陥、欠点に着目するのではなく、一人ひとりがもっている長所、強さに着目
⇒
・総合的・包括的な援助
の重視