調 査 速 報 浜銀総合研究所 調査部 産業調査室 2014.7.2 国内新車販売統計(2014年6月) 登録乗用車需要の「反動減」は早期に収束しない ○国内の全体需要は縮小し続けている ・7月1日発表の6月の国内新車販売台数(登録車+軽自動車)は前年同月比 0.4%増と3 か月ぶりにプラスに転じたが、季調済年率換算値(X-12-ARIMA にて当社試算(注1)、以下 SAAR)は前月比 1.6%減の 501 万台と減少が続いた。前年6月の販売台数はエコカー補助 金終了の影響により発射台が低かったので、本年6月の前年同月比は高く出ている。実際 のところは、足元の販売動向は SAAR で示すように依然として駆け込み需要の反動減が続 く厳しい状況と言える(図表1) 。 ・内訳をみると、登録乗用車、軽乗用車、トラックとすべての主要セグメントで SAAR が前 月比で低下しており、国内四輪需要は全体でみると回復感に乏しい。 ・乗用車(登録車+軽)の SAAR は前月比で 2.8%減少した(図表2) 。内訳は、登録乗用車 が同 2.4%減の 254 万台となり、反動減が継続した(図表3) 。軽乗用車も同 3.3%減の 166 万台と2か月ぶりに低下した(図表4) 。新車販売に占める軽自動車比率は 41.4%と前月 (43.1%)を下回ったが、後方 12 か月移動平均値は前月比並みの 40.4%となり、引き続 き高水準である(図表5) 。 ・貨物車(普通+小型トラック)の SAAR は前月比 2.2%減の 39.2 万台となった(図表6) 。 トラック需要には頭打ち感が出てきている。 ・後述するが、登録乗用車における需要の反動減は長引く可能性がある。消費増税前に需要 が前倒しされたことで、3月末までに4月以降に見込まれる需要が累積した。増税後は反 動減により、この累積した需要が徐々に減ってはいるが、未だ高水準で積み残されたまま である(注2)。実質所得の向上と新モデル投入による、登録乗用車の需要喚起が待たれる。 図表1 駆け込み需要後の反動減が続いている (千台) 新車販売台数(登録車+軽自動車):SAARと前年同月比 7,000 (前年同月比) 14年6月SAAR 501万台 前月比▲1.6% 6,500 100% 80% 6,000 60% 5,500 40% 5,000 20% 4,500 0% 4,000 -20% 3,500 3,000 -40% 季節調整済年率換算値:SAAR(左軸) 前年同月比(右軸) 2,500 -60% -80% 2010年 11 12 13 14 注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値 注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算 出所: 日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会のデータより作成 (注1)季節調整係数の算出前提は、①サンプル:04 年1月以降の 120 か月、②曜日効果の回帰変数は閏年変動を考慮した td (trading day)、③水準変化(LS2010.10:エコカー補助金終了後の需 要減)、減衰的外れ値(TC2011.3:東日本大震災影響)を外れ値として検出、④TRAMO-SEATS 法により ARIMA 次数は(010)(110)に確定。 (注2)4月の消費増税前に需要が大きく前倒しされたが、4月以降は、その前倒しされた需要累計額と同額の反動減が生じると仮定している。 1 図表2 乗用車 SAAR の前月比低下が続く (千台) 乗用車新車販売台数(登録車+軽):SAARと前年同月比 7,000 (前年同月比) 6月SAAR 420万台 前月比▲2.8% 6,500 図表3 登録乗用車の SAAR の低下が継続 (千台) 100% 4,500 80% 4,000 6,000 60% 5,500 40% 登録乗用車新車販売台数:SAARと前年同月比 (前年同月 比) 100% 6月SAAR 254万台 前月比▲2.4% 80% 3,500 60% 40% 5,000 20% 3,000 4,500 0% 2,500 20% 4,000 -20% 3,500 -40% 2,000 0% 3,000 -60% 季節調整済年率換算値:SAAR(左軸) 前年同月比(右軸) 2,500 -80% 2,000 -100% 2010年 11 12 13 1,500 2,500 40% 1,500 20% 1,000 0% 500 季節調整済年率換算値:SAAR(左軸) 前年同月比(右軸) 0 45% -20% 450 貨物車販売台数:SAARと前年同月比 100% 80% 60% 350 40% 300 20% 200 150 0% 季節調整済年率換算値:SAAR(左軸) SAARの後方3か月移動平均値(左軸) 前年同月比(右軸) 45% 40% 40% 35% 35% 30% 30% 25% 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 注: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値 出所: 日本自動車販売協会連合会及び全国軽自動車協会連合会のデータより作成 400 250 50% 後方12か月移動平均値 2004年 (前年同月比) 6月SAAR 39.2万台 前月比▲2.2% 14 25% -40% 図表6 貨物車の需要には頭打ち感あり 500 13 軽自動車販売比率 50% 2010年 11 12 13 14 注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値 注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算 出所: 全国軽自動車協会連合会のデータより作成 (千台) 12 図表5 軽自動車販売比率は高水準を維持 60% 2,000 11 注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値 注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算 出所: 日本自動車販売協会連合会のデータより作成 (前年同月比) 80% 6月SAAR 166万台 前月比▲3.3% -60% 2010年 図表4 軽乗用車の SAAR も前月比で低下 軽乗用車販売台数:SAARと前年同月比 -40% 500 14 注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値 注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算 出所: 日本自動車販売協会連合会及び全国軽自動車協会連合会のデータより作成 (千台) 3,000 -20% 季節調整済年率換算値:SAAR(左軸) 前年同月比(右軸) 1,000 -20% -40% 2010年 11 12 13 14 注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値 注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算 出所: 日本自動車販売協会連合会のデータより作成 2 ○登録乗用車需要の「反動減」は長引く可能性あり ・図表7の折れ線グラフ(青色)は、消費増税閣議決定後の登録乗用車の SAAR の推移を、 閣議決定前の 12 か月(2012 年 10 月∼13 年9月)平均を 100 とする指数に示したもので ある。また、同図表内の棒グラフ(赤色)は、各月の SAAR 指数で 100 を超過した分を 13 年 10 月から積分した数値であり、増税前の前倒し需要の累積を表したものである。 ・増税後の需要の「反動減」は SAAR 指数が 100 を切った時点、すなわち、需要が閣議決定 前の水準を下回った時から始まったと理解する。反動減は 2014 年4月に始まり、直近の 6月まで累積した需要の減少が進んでいる。 ・もっとも、6月末時点の需要の累積は依然として高い水準にある。累積がピークに達した 3月末時点では、指数にして 98.3 とおよそ1か月分の需要が超過分として積み上がって いたが、6月末時点ではそれがまだ 79.8 となっている。仮に6月の需要水準が今後続い た場合、前倒し需要が切り崩されるにはなお9か月を要することとなる(図表7における、 (A)/(B) ) 。 ・本当にそれ程まで長い期間に亘り、反動減が続くということが考えられるのか。図表8は 前回の消費増税時(1997 年4月)における、同様の分析を行ったものである。97 年増税 時には、96 年6月 25 日に消費増税が閣議決定された後、97 年3月まで駆け込み需要が発 生した。同年4月の消費増税と同時に需要の反動減が始まり、その後、前倒し需要は 15 か月後の 98 年6月にようやく解消された。 ・もちろん、需要は「反動減」以外の要因によっても拡大や縮小をするため、以上の分析は 国内登録乗用車需要の長期に亘る減少継続を予測するものではない。ただ、 「反動減」が 当分の間乗用車需要の下押し要因になる可能性がある点に留意したい。需要が回復するた めには、消費者の実質所得の向上、新モデル投入による需要喚起が必要となる。 ・なお、増税による駆け込み需要やその反動といった特殊事情が発生する局面では、前年同 月比の推移で、需要の強弱を測ることは難しい。足元の状況でいえば、仮に6月の需要 (SAAR)が7月以降も続き、前月比での減少に歯止めがかかった場合でも、販売台数の 前年同月比はマイナス幅が拡大していくことになる(図表9) 。 図表7 反動減により累積した前倒し需要の減少が続く (増税閣議決定前月までの 12か月平均SAAR=100) 消費増税 130 120 110 100 90 SAAR指数 ⊿8.6 (B) 91.4 120 増税前の駆け込み需要発生 = 前倒し需要の累積 100 80 2014年消費増税前後の登録乗用車SAARの推移 反動減による累積した 前倒し需要の減少 79.7 (A) 各月SAARの100超過分累積推移 60 40 20 0 10 11 12 1 2 2013年 3 4 5 2014 注1: 2014年消費増税は2013年10月1日に閣議決定 注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算 出所: 日本自動車販売協会連合会のデータより作成 3 6 図表8 97 年増税時には「反動減」は 15 か月間も続いた (増税閣議決定前月までの 12か月平均SAAR=100) 120 1997年消費増税前後の登録乗用車SAARの推移 消費増税 SAAR指数 100 80 120 前倒し需要の 累積 反動減による累積した前 倒し需要の減少(15か月) 100 80 各月SAARの100超過分累積推移 60 40 20 0 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 1996年 1997 1998 注1: 1997年消費増税は1996年6月25日に閣議決定 注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算 出所: 日本自動車販売協会連合会のデータより作成 図表9 仮に6月の需要水準が今後続くと前年同月比のマイナス幅は拡大する (千台) 登録乗用車新車販売台数:SAARと前年同月比 (前年同月比) 4,500 100% 4,000 80% 3,500 60% 3,000 40% 2,500 20% 2,000 0% 1,500 -20% 1,000 -40% 季節調整済年率換算値:SAAR(左軸) 前年同月比(右軸) 500 2010年 11 12 13 -60% 14 注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値 注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算 出所: 日本自動車販売協会連合会のデータより作成 担当:調査部 産業調査室 深尾三四郎 TEL 045−225−2375 E-mail: [email protected] 本レポートの目的は情報の提供であり、売買の勧誘ではありません。本レポートに記載されている情報は、浜銀総合研究所・調査部が 信頼できると考える情報源に基づいたものですが、その正確性、完全性を保証するものではありません。 4
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