診断および経過観察に腹部エコーが有用であった小児肝損傷の1例

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診断および経過観察に腹部エコーが有用であった小児肝損傷の1例
◎喜舎場 智之 1)、山中 正 1)、小椋 恵美子 1)、安井 幸子 1)、赤井 花江 1)、日巻 健太郎 1)、西村 友子 1)、立石 紀子 1)
社会医療法人 阪南医療福祉センター 阪南中央病院 1)
【症例】8歳女児。学校の校庭で鬼ごっこをしていてスロ
レードⅡの肝損傷と診断された。
ープにつまずき、うつ伏せに転倒、脱輪予防縁に腹部を打
【その後の経過】4 時間後の腹部エコーにて肝損傷部の領
撲。一瞬息が止まったぐらいの衝撃があり、その後、1回
域がやや拡大傾向にあり、大出血の対処ができる小児外科
の嘔吐あったが徐々に元気になり、1時間後に歩いて当院
へ搬送となった。転送先で保存的治療が行なわれ、1 週間
を受診。初診時は腹痛もなく、至って元気であった。
後、肝実質の損傷は徐々に縮小したため、当院への back
【ラボデータ】CRP:<0.02mg/dl、AST:181 IU/l、ALT:
transfer となった。引き続き保存的治療を行ない、腹部エコ
153 IU/l、LDH:486 IU/l、CPK 547 IU/l、WBC:11,500/u
ーにて経過観察した。初診から 12 日目の腹部エコーでは
l、RBC:416 万/ul、Hgb:11.7g/dl、HcT:33.1%、MCV:
S3 区域の肝損傷部は正常構造を呈し、肝皮膜下血腫も縮小
79.6fl、Plt:20.4 万/ul、PT:87.2%(INR:1.00)、
していた。
APTT:29.0 秒、FIB:170mg/dl、FDP:16.9ug/ml、D-ダイ
【結語】小児の腹部打撲による肝損傷の 1 例を経験した。
マー:6.8ug/ml、FM テスト:11.4ug/ml と軽度肝機能異
小児腹部打撲の原因は、交通事故が最も多く、転倒、転落、
常と軽度の凝固・線溶系亢進を認めた。臓器損傷 R/O のた
スポーツ外傷、虐待などによるものがある。本症は打撲部
め、腹部エコーが施行された。
位の直下に損傷部があり、比較的容易に発見できたが、打
【腹部エコー】
撲部位から離れた場所や反対側の臓器が損傷する場合もあ
打撲部直下の肝 S3 区域に境界不明瞭で不均一、内部に嚢胞
る。腹部打撲の場合は打撲部位付近だけでなく、腹部全体
様エコーを伴う 25㎜程度の高エコー領域と肝皮膜下にもや
を注意深く観察する必要があると思われる。また、エコー
もやエコーを認め、肝損傷および肝皮膜下血腫を疑った。
検査は非侵襲的で経過観察に有用であると思われる。
【腹部 CT】肝 S3 区域に深さ 3cm の laceration を認め、グ