雛 一 ■ 解説 核融合炉のためのトリチウム確保(1) 一核融合炉燃料トリチウムの製造施設について一 棚 瀬 正和 (日本原子力研究所) (1997年5月22日受理) Procurement −A Design Study of of Tritium Faci趾y for Fusion Production TANASE To々α〃〜636α70h for Reactor of Fusion Fuel Tritium一 Masakazu Es如61ゑsh規6フ循ノのαπ・4∫o%z記E%怨y R6s6α76h/iπs!2伽陀,乃αzo玩3ヱ9一ヱヱ,ノ砂oπ (Received22May1997) Abstract Tritium,a developmental tors in Japan sign of a tus of by large−scale tritium fuel extraction for from pro(luction pro(iuction technology use in fusion reactors,has been neutron−irradiated6Li−targets.This facility in Japan capable is of also pro(lucing500g pro(iuce(l paper of in丘ssion describes tritium the research reac− preliminary annually.The present de− sta− discusse(i. Keywords: fusion fuel,tritium,neutron irradiation,tritium production,500g,production facility,design 生成する核反応は種々あるが,実用的には2H(n,γ)T(反 1.はじめに 平成4年7月に6ヵ年計画で開始された国際熱核融合 応断面積5×10−4バーン),6Li(n,α)T (反応断面積9.5 実験炉(ITER)の工学設計活動(:EDA)は順調に推移して ×102バーン),3He(n,γ)T (同,5.33×103バーン) いる.この計画が発展しわが国でITERを建設する必要 の核反応があげられる.実際には,現在の所,前者2つ が生じた場合,その燃料である重水素とトリチウムの確 による反応で多量のトリチウムが生成されている.しか 保は必要不可欠となる.この内,重水素は比較的容易に し,最近になりトリチウム(半減期12.3年)の崩壊生成 得られるが年間に数kgが必要とされるトリチウムを確 物である3Heが大量にトリチウムから分離されており, 保することは輸入などの措置を含めて非常に重要とな 最後の反応による方法も検討され始めた.この3つの反 る.ここでは,トリチウムの大量確保を念頭に置きつつ 応はどれも中性子により引き起こされる反応で,原子炉 トリチウムの生成法について外国も含めて簡単に述べた や加速器,また,将来的には核融合炉で生じる中性子が 後,年間500g規模のトリチウム製造施設の予備的検討 利用される. について紹介する. 2.1原子炉による方法 2.トリチウムの生成 どさまざまのタイプの炉があるが,重水(2H20)炉では, 原子炉には,軽水炉,重水炉,新型転換炉,研究炉な トリチウムは天然にも極低濃度で存在するが,大量に 特に新たなターゲットなしに重水と中性子の反応で重水 得るためには人工的につくる必要がある.トリチウムを 中に大量のトリチウムが生成する.そのため,重水炉を 666 解 説 核融合炉のためのトリチウム確保(1) 棚瀬 多く持つカナダでは,重水から大量のトリチウムを定常 ターゲットを材料試験炉で照射してトリチウムを生成さ 的(年間2.5kg程度といわれている)に回収している. せ,ターゲット中に生成したトリチウムを回収,精製し 重水を使用しない原子炉を用いて多量のトリチウムを生 ている.この一貫した工程を経て得られる0.l 成させる方法として,6Li(n,α)丁反応によるものがあり, 度トリチウムの製造技術開発の概要を次に述べる[4]. gの高純 内容に不明な点も多いが欧米で広く利用された.日本(原 原子炉照射に使われるターゲットは3%のリチウム 研)では研究炉,材料試験炉でこの方法で生成させてい (6Li,95%濃縮)を含むアルミニウムの合金板をアルミ るが,その量は年間数10g程度が限界である.しかし, 別な炉(新型転換炉など)を用いることができれば課題 ニウム板で被覆したもので外形寸法100mmL×20 mmW×2mmTである.このターゲットを材料試験炉 も多いが年間500g程度は可能であると思われる[1]. (2×1014cm91s『1)で2〜3ヵ月問照射する.ターゲッ 2、2加速器による方法 ト内に生成したトリチウム量はカロリメータで測定し, アメリカでは,APT(AcceleratorProductionofTri− tium)計画として加速器によるトリチウムの生産方法が ターゲット数10枚(0.l 抽出炉に入れる.系内を真空にし,ターゲットを700℃ 検討されている[2].この方法は,数百MeVからGeV で融解してトリチウムを抽出する.抽出したトリチウム オーダの陽子を重い原子核に照射しスポレーション反応 ガスは,循環ポンプにより,活性化したウラン・ゲッター gのトリチウムを含む)を真空 (核破砕反応)を起こさせ,10〜100個/陽子の大量の中 に回収する.回収したトリチウムガスは99%以上が水素 性子を発生させ,これと3Heや6Li原子と反応させトリ 形で,トリチウムの同位体純度は90%以上(不純物の軽 チウムを得ようというものである.使用する加速器は陽 水素Hを含む)である.しかし,実用上トリチウムガス 子をi.6GeVまで加速し電流は250mAにすることがで の純度は99%以上が必要である.そのため,ラジオガス・ きる非常に強力なものである[3]. クロマトグラフィによる同位体濃縮法を開発し,0.l g 規模でのトリチウム濃縮を達成させることができた.こ 3.日本(原研)におけるトリチウム製造技術 の操作によりトリチウムの純度は99.9%以上となる.こ 日本(原研)では,原子炉と加速器によるト.リチウム のようにして得られたトリチウムガスは,理研(ラザフ 生成の内,前者による方法を採用している.6LシAl合金 ォード・アップルトン研究所)で実施しているミュオン Targe†Preparation (U A l O2) Pe目et FissionReactorlrradiation = φ10×10 mmH 5×10−3g−T2/pellet,50peHets/capsule ドの ■一幽轍網一鞠 { TranSpOrtatiOn i surfacedose:〈2mSv/hr l I I ヨ l 1 { コ 1 1 l l I l l 6capsules/vessel×2vessels/day,3g一丁2/day GB : g I◎ve 一一一榊一幽一醐儒幡口楠需一幽一一甲『 1 lロI I } l l I bOX Cave Capsule Openin9(N賎1) Toploading 24capsuies/day,39−T2 TritiumExtractlon(N巳2) 600pellets/day(100pellets/batch×6times/day) 3 9/day x 1了days ≒ 50 g−T2/RUN Analysis(GB2) Ca I or i meter,Gaschromatograph Massspectrometer,lonizationchamber Reduction,Purification l &Recovery(GB1) Reductionoftritiatedwater,Zr−sponge Purificationoftr川㎝gas ZrCo509一丁2(1getter) Recoveryoftritiumgas,ZrCo50g一丁2(1get之er) l TemporaryStorage,Zrα)1009−T2(2getters) 1 Waste T『eatment ヒ l I I l l ヒ Enrichment(GB4) Thermaldiffusioncolumn, En r i chment facto r = >99% Cave(N巳1),Carrying−outthroughtop loading (lrradiatedpins&targets) GB 5, L i qu i d waste, Meta l bed Storage&Distribution(G83) ZrCo1009一丁2(5getters) ー一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一・TRITIUM Fig。1 T醐um productbn processes ln tわe facility deslgned 667 PRODUCTlO閥 pre踊minarily FAC匿LITY for producing500g of tritium in a year, プラズマ・核融合学会誌 第73巻第7号 1997年7月 900 Ex士ract i on Fu 1300 rnace Electrode CooI ed wi th 6ateVaive Water /Therm。c・uple Preparat甚on /Shutter飴teValve i臼1 Room Crucible Ekt ract i on &C◎nt ract i on Rod 一 〇譜藷 i ノ Ref l ec to r Plate Heater. 銭皇く謝賑, 1 GaugePort Heatlnsulator Fig.2 Tritium extraction apparatus;Fiftyneutron−irradiated pe ets taken in the crucible are introduced intothe extraction fur− nace and tritium is extracted byheating tわe pellets at800。C undervacuum. 555 349 ,0 6 Z凶b《+Cu、 ater 照croheater ぐ 〆 一 一 軸 一 『 一 一一一 〇 〇 〇 }一{一 ・ O O o ・ 一〇couple D 一 一 o一 醗薫簾蘇薫庶蕉矯鴬嶽繍篇}も玉基 ●㎜ 一一一〇一の . 猟柵冊柵総柵矧・燃r猟 ●.・鰻騒灘澤難黙灘灘響 li寿 騨 _一 o 9 HeatReflectorZrC。PackedContainer Water略ooledJacket 9 Fig.3 ZrCogetter;Purified tritium gas(ねydrogen form)is absorbed and stored in the getterthrougれtbe reaction witれZrCoat an ambient temperature、Tritium gas is taken out from the getter by heating ZrCo containing重ritium at temperatures below400℃. 4.トリチウムの大量製造施設 触媒核融合反応実験用トリチウムターゲットの調製にも 上記のように日本(原研)で独自に開発したトリチウ 利用している[5,6]. ム製造技術の成果を受けて,1回50g規模(年間500g) 668 解 説 棚瀬 核融合炉のためのトリチウム確保(1) した)ためそれを除く必要がある.そのため,熱拡散筒 のトリチウムの製造が可能な施設を予備的に検討した. トリチウムの製造工程としては,ターゲットの製作に [9]を備えた同位体濃縮装置により1回分の50gを5日 始まり,ターゲットの原子炉(または加速器)での照射, (上記17日間の中で実施可能)で処理する.99%以上に ターゲットからのトリチウムの抽出,化学的精製(化学 濃縮されたトリチウムガスはZr−Coゲッタ(Fig.3)に貯 形の変換を含む),トリチウムガスの回収,トリチウム 蔵する.ここまでの操作を1サイクル(1回)とし年間 の貯蔵,トリチウムから軽水素(H)を除く同位体濃縮 10回実施すれば500gのトリチウムを得られることになる. 一方,これらの工程を実施するために最も重要なこと がある.その工程(装置類を含む)と内容の概略をFig. は,放射性物質を安全に取り扱うことである.トリチウ 1に示す. 原子炉照射用のターゲットとしては,高温の照射場に ムは水素の同位体であり,特にガスとして扱う場合は飛 も適用が可能な融点の非常に高いセラミックであるアル 散しやすく,いかに閉じ込めるかということが課題とな ミン酸リチウムを選択し,キャプセルに封入する.原子 り,ここでは多重格納システムを採用した.また,ター 炉照射されたキャプセル(ターゲット)は輸送容器でト ゲットやキャプセルなどの被照射物はガンマ線放出核種 リチウム製造施設に運び込む.キャプセルはケーブ内の も生成するためその放射線からの防御も必要となる.そ 開封装置で一部を切断してターゲットを取り出す.ター のために,これらの放射性物質を扱うために,グローブ・ ゲットは抽出装置(Fig.2)で加熱しトリチウムを放出さ ボックス,ケーブなどを備えた.さらに,放射性物質(特 せる.この工程で1日3g(17日で1サイクル,1回と にトリチウム)の装置類からの漏洩に備えて,グローブ・ する)のトリチウムが放出してくる.ターゲットから取 ボックス内などの雰囲気(空気)を浄化する装置を設置 り出したトリチウムは水素形であればそのままで,また, するとともに,グローブ・ボックス外に万一漏洩したト 水の形であればZrスポンジで水素形に還元し,Zr−Co リチウムが建屋外に異常放出されるのを避けるために必 ゲッター[7,8]に一時貯蔵する.貯蔵されたトリチウム 要な箇所の建屋内空気の浄化装置を設けている(Fig.4). には同位体不純物の軽水素が含まれる(H:Tニ1:9と この図の排出ガス浄化装置は,50m3/h,緊急時空気浄 鋤rting ㎞s for PipiR傷lSQlat哺, etc. Tritl㎝R㈱val ㎞rgency Cave(南,2) Cave(南.1〉 Transportati㎝Vessel lrradiatedτarget 郎 隔一日 CapsuleΦener Tritiun㎞val E)φausting 泳tractionハpparatus Syst㎝f◎r Syst㎝sfor gas Area(1) forぬ畑i㎎ 〉O.1g of Tritl鳳 「 ApParatuses Gbve%x(5) Glo》e恥x(4) Glove恥x(3) Glove恥x(2) Gbve騰x(1) 紘ti㎝,恥rification&RecQvery Waste Storage&Distribut㎞Apparatuses Analyzers ゴ ゴ Disposal㈱aratus Enric㎞nt加paratus 二」L±二二 Area(2)forHandling>0,1gofTriti㎝ Fig.4 Tritium removal system oftritium production 669 facility designed preliminarily. プラズマ・核融合学会誌 第73巻第7号 1997年7月 Area(2)for卜恰ndli㎎〉ωgofTr旧㎝ R6cept。ra㎡Distri㎞t。rf。rElectricP。wer 幽chineryRocmforVen創ation αriti㎝Area) oδ5 口 Cave Nα1 P・omfor梅副i㎎qlgofTriti㎝ 晦chinery㎞forVentiiation &Na2 (晦Tritl㎝Area) ㊤ 口 o 漁chinery㎞nforCooiingWater Room for Waste Storage 肋chineryR∞mforPressure(めntrol R㏄mforLiquidWasteTanksandTransferF㎞ps Fig.5 Conceptual design for tritium 化装置は300m3/hで系内のトリチウムを除去する. production facility, [3]G.P.Lawrence,研gh ∫∂7丁沈伽〃z 以上の予備検討で得たトリチウム製造施設全体の概念 Poω67L初6α7/10cε1ε7ζz置o猟3 P704%o!♂oπ伽4Tz伽s別勿如だo鋸げ翫6− 16α7防s云6,LA−UR−90−3315(1990). 図をFig.5に示す. [4]棚瀬正和:プラズマ・核融合学会誌70,32(1994). [5]M.Tanase,M.Kato,K 5.おわりに Matsuzaki,K 核融合炉燃料の高純度トリチウムを年間500g製造す Ishida and Kurosawa,M.Hashimoto,T. K Nagamine,1〜60副S渉%一 4σ6sげP70ζ!%oあoπ伽4P%プ舜加渉♂oπげT7ぢ枷〃zづn ることができる製造施設の予備的検討を実施した.日本 ノ丑E五〜ノl P706. oゾ乃z陀刀zαあoπθl T7露♂z6〃z におけるトリチウムの製造量は,課題も多いがある程度 盈云6解oあoκS伽認6s,Toyama,July,p85(1996L [6]K.Nagamine,T.Matsuzaki,K.Ishida,1.Watanabe, の見通しは得られたのではないかと考えている.核融合 炉の研究開発計画としても進められているEDA(工学 設計活動)も終わりに近づきつつあり,これから次のス S.N.Nakamura,R.Kadono,N.Kawamura,S,Saka− moto,M.Iwasaki,M.Tanase,M.Kato,K.Kurosa− テップに向けどうするかの検討がなされるだろう.この wa,G.H.Eaton,H.」.Jones,G 経緯との関連で日本でのトリチウム製造の進め方も考慮 Williams.HyperHne [7]S されていくものと思われる. W.G. N.Yokokawa E%8ゴ%6ε万7zgαπ4Z)εs⑫フz and Y。Naruse, lO,355(1989). and K.Okuno,Fusion Technology28,1015(1995). [9]T.Arita,T.YamanishL Y。Iwata and K.Okuno,Fu− [1]加∂魏60勉灘競φoπ Advisory and [8]T.Hayashi,M.Yamada,T.Suzuki,Y.Matsuda 参考文献 Research Thomas Interaction101/102,521(1996)。 Konishi,T.NagasakL Ez6sぢ07z [2]Energy 四〇7ゐshoρ oπP7εsε撹S如伽s伽4Pプoψ副げT7痂%解一1吻齢乞α1 Board,z40081ε名諺oプPプo− sion 4%漉oηoゾ丁痂劾〃z(24P『),DOE/S−0074(1990》. 670 Technology30,864(1996あ
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