講演会 研修会 - 日本試薬協会

講演会 研修会
■研修会
日高港 新エネルギーパークにて
メタンハイドレートを見る
関東化学株式会社 取締役大阪支店長 野澤 邦央
(社)
日本試薬協会主催の西部地区見学会を下記の通り実施しました。
●日時:平成 21 年 10 月 20 日
(火)
●場所:日高港 新エネルギーパーク
(和歌山県御坊市)
●参加者:28 名
(19 社)
青山博士を囲んで EE パーク PR 館をバックに
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試薬会誌 Vol.30 January.2010
本年度の西部地区見学会は、御坊市にある日高
港 新エネルギーパーク(以下、EE パーク)を訪問
した。今回の主目的は、EE パークに保管される
天然資源「メタンハイドレート」
(通称:燃える氷)
の実物を見ることであった。実際には天然のメタ
ンハイドレートを一般来館者が見ることはできな
いが、(株)独立総合研究所 取締役自然科学部長
であり水産学博士でおられる青山千春博士のご好
意により、深海底から採取された天然メタンハイ
ドレートの実物ならびに研究用として作られた人
メートル掘削して採取した塊状の天然メタンハイ
工メタンハイドレートの燃焼実験を見ることがで
ドレートであり、産総研から借り受けている実物
きた。この貴重な機会を得られたのは、本年 7 月
を見せて頂いた。
の西部地区講演会で講師を務めて頂いた(株)
独立
安定領域を示した資料の通り、メタンハイド
総合研究所 社長 青山繁春先生に同行された青山
レートは低温高圧下でないと存在できない。例
千春博士から「御坊にお越し頂ければ実物をお見
えば 15 気圧(水深 1,500m)の場合は 15℃以下、5
せできる」という一言から実現したものである。
気圧の場合は 5℃以下、更に地上 1 気圧の場合は
メタンハイドレート研究の日本の実情については
−80℃以下でないと溶解(分解)してしまうため、
前号の試薬会誌(No.29 号)に掲載された講演録を
見せて頂いた試料は大型ビーカー内に液体窒素を
読み返して頂きたい。
入れ、容器内を−90℃にすることで安定を保たせ
■ 日高港 新エネルギーパーク
(EEパーク)
について
ている。
日高港企業用地内に約 9,900 平米を和歌山県よ
り借り受け、平成 19 年 10 月にオープンした次世
代エネルギーの複合施設。パーク内は PR 施設、
研究施設、公園施設に分かれ、太陽光や小型の
風力および水力発電設備、太陽光で走るソーラー
カー(ゴーカート)を走らせる 120 mのコースも備
えている。関西電力と御坊市が運営主体であり、
今年 9 月には来場者数 5 万人を越えた。近隣には
180 万キロワット(60 万世帯分)の発電能力を持つ
関西電力の御坊火力発電所がある。
(EEパークの「EE」と はEco・Energy・Electric・
メタンハイドレートの特徴は、メタンを中心
として水分子が“かご構造”のように取り囲む
固体結晶(分子式:CH4・5.75H2O)であり、見た
Environment の意味を含んでいる)
目はドライアイスのようだが、溶解(分解)する
■ メタンハイドレートについて
と元々のメタンハイドレート体積の約 170 倍の
天然のメタンハイドレートは採掘に億単位の費
メタンガスと約 0.8 倍の水を発生する。このメタ
用が掛かった貴重な研究試料であり、現在は(独)
ンガスが燃える事が「燃える氷」と呼ばれる所
産業技術総合研究所の北海道センターに保管さ
以である。
れている。写真は 8 年前に三重県に近い熊野灘沖
燃焼実験に使われた人工のメタンハイドレート
水深約 2,400∼2,500 メートルの海底から更に 300
は真っ白なペレット状であった。この人工ペレッ
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トは、現在は液化して輸送している天然ガスを小
青山博士も参加する共同研究)http://www.s.u-
さく固体化する事によって安全に輸送する研究の
tokyo.ac.jp/info/methane-hydrate.html
ために三井造船が試験的に製造しているものであ
■ EE パークから約 15 分のところに「安珍・清姫
る。人工ペレットの燃焼実験は、国内では当施設
伝説」の道成寺があり、当日は短時間ではあった
と名古屋にある東邦ガスの「ガスエネルギー館」
が昼食前に立ち寄ることができた。通常は本堂に
のみで見学可能となっている。今回の燃焼実験で
は入れないが当日は運良く無料公開日で、参加者
は 5 粒の人工ペレットを燃焼させ、約 2 分間固形
全員が興味深く本堂内に展示された絵巻に見入っ
燃料のように燃えると同時に溶解(分解)した無色
ていた。参考までに伝説中の釣鐘は現在では京都
無臭の水がボタボタと落ちる様子を間近に見るこ
の妙満寺に安置されておりここで見ることはでき
ない。
EE パーク終了後は日高郡にある南高梅の製造
工場を見学、その後大阪に戻り、希望者にて懇親
交流会を開催した。
最後に、今回の見学会ではメタンハイドレート
研究の問題点と将来性の一端を学ぶことができ
た。日本周辺には日本が消費する天然ガスの約
100 年分に相当するメタンハイドレートが腑存し
ていると推測されており、このメタンハイドレー
トによって日本が“エネルギー資源大国”に変貌
とができた。
講演では青山博士が特許を取得された魚群探知
機によるメタンハイドレートの探査方法、メタン
ハイドレートが安定する圧力と温度の関係、日本
周辺の埋蔵場所や無人潜水調査船を用いた採掘方
法等をパワーポイントやビデオを使ってご説明頂
いたが、とても本誌面で紹介できるボリュームで
はないため残念ながら割愛させて頂く。興味のあ
る方は是非下記サイトを覘いて頂きたい。余談だ
が、前号掲載記事の通り自民党政権下の開発計画
は予算の割には動きが緩慢だったようである。新
政権で大臣となったある議員は、以前よりメタン
ハイドレートの可能性について調査をしていたそ
うで、新政権下では迅速かつ活発な動きに期待し
ているとの青山博士のコメントもあった。
●メタンハイドレート資源研究開発コンソーシア
ム(MH21)
(経産省主導の研究開発)
http://www.mh21japan.gr.jp/
●東京大学・海洋研究開発機構(文科省主導:
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する日が来ることを期待したい。
■研修会
味の素株式会社 川崎工場
富士純薬株式会社 営業部部長 中崎 崇
(社)
日本試薬協会主催の東部地区見学会を下記の通り実施しました。
●日時:平成 21 年 10 月 20 日(火)
●場所:味の素株式会社 川崎工場
●参加者:59 名
(37 社)
参加者一同
はじめに、味の素(株)の概要の説明がありまし
川崎工場では、1700 アイテム / 年の生産(うち食
た。味の素グループでは、大きく分け「食品」
「ア
品は、1000 アイテム)を行っています。今回見学
ミノ酸」
「医薬品」の製造、販売を行っており、
する「食品」の分野では、「味の素」
「CookDo」
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「ほんだし」「煮物上手」等があり、特に「味の素」
「昆布(グルタミン酸)+ かつお(イノシシ酸)
」に
については、東京帝大 池田菊苗博士により、昆
ついての説明がありました。また、味の素 6 g相
布からうま味成分を発見し、甘み、酸味、塩味、
当分の昆布の展示もありその量の多さに驚かされ
苦味に加え、うま味の発見となった説明がありま
ました。
した。
次にビデオにより、
「味の素ってなんだろう」
なり、製造工程としては、原料→調理→充填→加
にて、「味の素」についての説明がありました。
熱殺菌→包装→検査→完成の流れである説明があ
池田菊苗博士による昆布からのうま味成分発見か
り、実際には充填工程、殺菌工程、包装工程の見
ら、現在では、サトウキビが原料になっている説
学となりました。一日にニンニク 1 t(30 万粒)
、
明がありました。又、うま味調味料「味の素」は、
生姜 1 tを使用するとの説明もありました。その
グルタミン酸ナトリウムが主成分であり、サトウ
後更にバスによる移動となり、「ほんだし」工場
キビの糖蜜発酵により、グルタミン酸を生産して
の見学に向かいました。バスの中では、川崎工
おります。グルタミン酸自体は溶けづらく、すっ
場の概要の説明があり、川崎物流センター:8000
ぱい為、中和処理により、グルタミン酸ナトリウ
坪 2 万パレット収容可能、川崎工場の面積 10 万坪
ムとし、徹底した品質管理のもと、製品化してい
るとのことでした。
(東京ドーム 8 個分)
等の説明がありました。
次に「ほんだし」工場見学に移りました。7 階
その後、「うま味の体験」として、味噌を溶い
建の建屋であり、見学コース全体が「和」の雰囲
たお湯を使用し、そのままの味と、「味の素」添
気の工場でした。まず 5 階にあがり、シュミレー
加後の味を参加者全員により確かめました。味噌
ションによるカツオの一本釣り体験があり、参加
を溶いたお湯そのままでは、味がありませんでし
者が体験をしました。「ほんだし」製造工程につ
たが、「味の素」添加後の味見では、塩味が強く
いて、かつお節粉砕→混練→造粒→包装の説明が
なりおいしくなったことを、参加者全員で確認す
ありました。原料のかつお節にもこだわり、現在
ることができました。うま味は、素材の味を引き
は 3 種類のいぶし分けした原料を使用していると
立て塩味が強く感じられることから、減塩効果も
のことでした。その後、包装室、検査室の見学と
あるとのことでした。参加者全員に 6 gの「味の
なり、特に包装室では、包装室専用の服を使用す
素」を頂きました。この 6 gの「味の素」をつく
るなど、髪の毛等の異物混入に対して徹底的な対
るのに昆布ですと 2.4 kg必要となりますが、現
応をしているとのことでした。その後、味噌汁の
在の原料であるサトウキビですと、360 gで済む
味見実験として、お湯に味噌を溶かしただけのも
との説明もありました。
のの味見と、
「ほんだし」を入れた後の味見をし、
次の工場見学に際し、川崎工場の概要として、
「世界最大級のアミノ酸発酵エリア」「アミノ酸精
「ほんだし」
添加後の味噌汁にかつお風味が加わっ
たことを参加者全員で確認致しました。
製工場」「医薬研究所新棟」「工場内最も長い道路
以上で、見学は終了となりましたが、包装室で
として 750 m」等の説明が写真を使用してありま
の徹底的な異物管理、また検査室による厳しい品
した。
質検査、「ほんだし」原料に 3 種類にいぶし分け
その後、参加者 2 班に分かれ、バスを使用し工
したかつお節を使用するなどの各商品に対する新
場見学に移り、最初に「資料展示室」見学で、味
しい付加価値の追加等、我々業界にも参考になる
の素㈱創業者である鈴木三郎助氏の資料や、図や
ところが多く、
有意義な研修見学会でありました。
模型による味が伝わる仕組み、うま味の相乗効果
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次に Cook Do(中華あわせ調味料)
の工場見学と
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■説明会
●日時:平成 21 年 11 月 24 日(火)15:30∼17:00
●場所:日本橋倶楽部
●演題:
「改正化審法について」
中 副会長の開会挨拶
安全性・流通対策委員会の主催で下記の説明会が行われました。
●講師:社団法人日本化学工業協会 常務理事 安全環境部長 豊田 耕二 氏
●参加者:65 名
(37 社)
説明会の一部を解説コーナーに掲載致しましたのでご覧下さい。
司会の矢野安全性・環境対策委員長
講師の豊田先生
聴講者の皆様
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