アキレスと亀 ~パラドックス

2013 三重総合 数学科 菅 淳 司
も前に進んでいる…?
この話,どこかおかしい?
Vol.
17
A
アキレスと亀
~パラドックス(逆理)①~
B
今回からしばらくの間「パラドックス」について書いてみようと思います。
ところで「パラドックス」とは何か?ですが,パラドックスは間違った
C
推論でありながら,いかにも正しそうに見えるものをいいます。何かよく
分かったような,分からないような説明ですがとりあえずパラドックスの
世界を楽しんでみてください。(前置きが長くなりましたが)ゼノンの「アキレスと亀」
という話を紹介しましょう。アキレスはギリシャ神話に出てくる足の速い
アキレスと亀の問題は,「考えをいくらでも続けることができる」とい
神様のことで地上で最も早く走ることのできる人という存在です。足の速
うことから「いつまでたっても追いつけない」という結論を導いている箇
いアキレスと歩みののろい亀の競争の話です…。
所にトリックがあります。数学的にいえば有限の項を無限に集めた級数の
アキレスはどんなに頑張って走っても,自分より先を歩む亀に追いつく
ことができない。なぜなら
アキレスが亀が今いる所まで辿り着いた時,
亀はそれより少し先まで行っている。
アキレスがその地点まで行った時には,
亀はまた更にその少し先まで行っている。
アキレスがその地点まで行った時には,
亀はまた更にその少し先まで行っている。
アキレスがその地点まで行った時には,
亀はまた更にその少し先まで行っている。。。。
ということで,アキレスは永久に亀に追いつけないのである。
和は有限におさまることがあり得るのです。アキレスが前に亀のいた場所
にたどりつくまでの時間は何度繰り返しても有限ですが,これらを全て足
し合わせてもやはり有限の時間しか経過しないのです。そしてそれはアキ
レスが亀を追い越すのに要する時間です。
ひらたく言うとこの話は《時間軸》を無限として仮説を立てている所が
おかしいのです。たしかに,時間が無限に分割できればその瞬間・瞬間に
おいてアキレスは亀を追い抜くことができません。しかし,物理的に時間
は刻々と過ぎる有限のものです。有限の時間軸の流れの中ではいつかアキ
レスは亀を追い抜くことができるのです。
当然この結果は非現実的ですが,結果を導く論証は一見したところ正し
いように見えます。このような話を『パラドックス』(日本語では「逆理」や
この話,分かるような分からないような不思議な話だとは思いませんか?
「逆説」という) といいます。その論証の誤りや不合理さを指摘するのは簡
常識のある人なら最初どんなに離れていようとも,いつかはアキレスが
単ではなく,そのため多くの哲学者達がこの問題に挑むことになりました。
亀を追い抜くことができることは分かると思います。でも,こういわれる
しばらくの間Math2では「パラドックス」を紹介していこうと思います。
と確かに亀も進んでいるのだから,アキレスが追いついてきたときには亀
Math2 No.1217/作成日:2013年 1月 11日