平成 27 年度 札幌啓成高校SSHマレーシア熱帯雨林研修報告

平成 27 年度
札幌啓成高校SSHマレーシア熱帯雨林研修報告
北海道札幌啓成高等学校 SSH 推進部
1.概要
冬季休業中9日間を利用し、北海道啓成高等学校の生徒4名と引率教諭1名でマレーシア・サバ州
(ボルネオ島)へ研修旅行を実施した。研修内容は大きく分けると1.キナバル国立公園での野外観
察、2.メシラウムラでのホームステイ、3.メシラウ小学校訪問(サイエンス教室実施)、4.ポ
ーリン温泉公園での植生・林冠観察、5.サバ大学での研修(講義、標本見学)、6.オールセインツ
高校生の家庭でのホームステイ、7.湿地センターでの見学及び植林活動、8.クリアス半島での動
物調査(リバークルーズ)
、9.オールセインツ高校訪問(授業参加、プレゼンテーション)と盛り
だくさんであった。本研修の主な目的は、世界で最も多様性の高いマレーシアの動植物について学ぶ
ことと、マレーシア人と英語で交流することで国際性を養うことであった。
2.まとめ
現地では2名のガイド及びコーディネイターによる完璧な受け入れ態勢のお蔭で、この研修は大
変充実したものとなった。マレーシアの動植物についての学習に関しては、国立公園や湿地センター
やクリアス半島のフィールドトリップにおいて、現地ガイドによる説明を受けながら観察し、サバ大
学で専門家からさらに深く学ぶことができた。
特に、オールセインツ高校との交流は生徒たちにとって思い出深いものとなった。最初は緊張して
言葉が少なかった四名の生徒たちが、帰国するころにはホームステイ先の家族やオールセインツ高
校の生徒たちと積極的に英語を使って笑顔で交流できるようになっていたのが印象的だった。
オールセインツ高校理事長との話し合いの中で、
「葉の吸光スペクトルによる生物多様性評価」に
ついて共同研究を提案したところ、
「是非取り組みたい」との意欲を示してくれたため、来年度から
さらに深い交流が期待される。
オールセインツ高校は1903年に創立したサバ州コタキナバル市のトップ校である。学力のみ
ならずスポーツにおいても優秀な成績を収めているミッションスクールであり、サバ大学やイギリ
スの大学へ進学する卒業生も多い。また、国際的に活躍する人物の育成にも力を入れているため、本
校との交流を大事にしたいと話していた。9月にさくらサイエンスプランにより招待したオールセ
インツ高校の生徒の家庭が今回四人の生徒のホームステイを引き受けて歓待してくれたことにも、
本校との交流を重視していることが表れている。
今回の研修旅行が成功した一つの大きな要因として、コーディネイターの存在がある。彼女は酪農
学園大学金子教授のアシスタントとして現地での受け入れのあらゆる面で支援してくれた。生物的
な知識が豊富で、英語、マレー語に堪能であり、さらには現地の人々との広範囲のネットワークを持
っている。彼女が、仕事に対する高い責任感と情熱を持って、プログラムの様々な面で気配りの効い
た最高の学習環境を創り上げてくれたことにとても感謝している。
参加した4名の生徒は1,2年2名ずつ、男女2名ずつとバランスが取れていた。男子2名はスポ
ーツ系の部活動に所属し一人は野球部、もう一人はテニス部。女子の2名は二人とも生徒会役員で、
そのうち一人は生徒会長であった。4人とも目的意識が高く、旅行中の態度も大変良かった。彼らの
感想から、4人ともオールセインツ高校の訪問とホームステイの印象が強く心に残っていることが
わかる。日本語が通じない環境で、英語やジェスチャーを使って異なる文化の人々と交流していく中
でコミュニケーションを取れたときの感動は他の何にも代えがたい経験であったようだ。そして、そ
の経験は彼らが将来の希望進路に向けて進む力強い原動力になるにちがいない。
2.実施日
平成28年1月9日(土)~17日(日) (8泊9日)
3.参加者(生徒4名、教師1名)
4.生徒のアンケートの考察
研修後に生徒にアンケート調査を行った。下記の 23 項目について 4 点満点で評価してもらい、各
項目でコメントを記入してもらった。全体的に高得点であったが、傾向として、生徒達は「友人たち
やホストファミリーと楽しい思いをした」ものに高得点を付け、
「講義の内容が難しかったり、英語
が上手く通じなかったなどでがっかりした」ものに低い評価をつける傾向が見られた。このことか
ら、この研修の成否は現地での人々との関わり合いが上手くいくかどうかに大きく影響されること
がうかがわれる。ただし、評価が低いからといって、一概に悪いとは言い切れないことにも注意する
必要がある。とくに、英語でのプレゼンテーションなどは、質疑応答を含め非常に大変高いコミュニ
ケーション能力が要求される。かえって上手くいかない体験がその後の学習に大きな目標を与えて
くれるという意味では、失敗体験も教育的に重要であると考える。
5.アンケートの平均数値(4点満点)
①キナバル公園での植物観察 3.3
②メシラウ村サイエンス教室 3.7
③ポーリン温泉公園植生観察 3.7
④サバ大学講義 3.3
⑤植林活動 4.0
⑥湿地センター見学 3.3
⑦クリアス半島動物調査 4.0
⑧サバ大学水分析実習 2.7
⑨オールセインツ授業体験
4.0
⑩オールセインツポスター発表 3.7
⑪オールセインツ skype 交流 3.7
⑫メシラウ村交流 3.7
⑬メシラウ村ホームステイでのコミュニケーション
⑭オールセインツホームステイ異文化研修 3.7
2.7
⑮オールセインツホームステイでのコミュニケーション 4.0
⑯自然環境について興味関心が高まった 4.0
⑰自然を調査する手法(水の調査)を学ぶことができた 3.0
⑱英語でのコミュニケーション能力の向上 4.0
⑲英語での発表力の向上 3.7
⑳英語で議論する力の向上
3.0
㉑将来海外で活躍したい気持ちの向上 4.0
㉒進路や学習への意欲の向上 4.0
㉓研修全体への満足度 4.0
6.生徒のコメント一部抜粋
・ 一番印象に残っているのは現地高校生との交流です。一緒にいろんな話をした経験は忘れられま
せん。研修前は英語で上手く表現することができませんでしたが、今ではしっかり話すことがで
きるようになりました。とても楽しかったです。素晴らしい研修を計画していただき有り難うご
ざいました。
・ ホストファミリーや現地の高校生と過ごした日々が一番印象に残っています。一緒に研修に参加
する中で、とても仲が深まりました。研修を通し、物事を深く考えることが多くなり、また積極
的に意見を言えるようになりました。また、英語で話すことも積極的になりました。
・ 一つ一つの研修で良い経験ができ、生の英語に触れ、文化の違いを感じることができたのでとて
も満足しています。マングローブの植林体験に参加できて嬉しかったです。今回の研修を通して
環境問題などにより目を向けるようになり、この経験が将来につながると考えています。とても
良い経験ができました。
7.写真
① オールセインツ高校での共同授業の様子
② メシラウムら小学生との交流
③ メシラウ村小学校での科学授業
④ 国立公園での野外観察
〈SSHマレーシア熱帯林研修の日程〉20160104
月日
場所
時間
実施内容
1/9
新千歳
13:30
新千歳空港集合
(土)
16:00
新千歳空港出発(JL516)
コタキナバル
17:40
羽田着、到着後空港間バスで成田空港へ移動→20:00前には成田空港でチェックイン
21:40
成田空港出発(MH071)
【機内泊】
1/10
クアラルンプール
04:15
クアラルンプール到着
(日)
07:30
クアラルンプール出発(MH2604)
コタキナバル
10:05
コタキナバル到着
11:30
【昼食】
12:30
昼食会場出発
キナバル
13:30
○キナバル国立公園にて野外観察
・植物園にて樹木・草本・動物・昆虫等の観察
16:00
キナバル公園発
メシラウ村
17:00
メシラウ村到着、(水のサンプリング調査)
・ホームステイオリエンテーション
○ホームステイ語学研修
【メシラウ村でのホームステイ泊】
1/11
メシラウ村
09:00
○メシラウ小学校訪問
(月)
・サイエンス教室、文化交流
12:00
【昼食】
13:00
ポーリン温泉公園へ移動、(移動前に水のサンプリング調査)
ポーリン
14:00
○ポーリン温泉公園、バタフライファームにて野外観察
・低地熱帯林の植生と林冠観察(キャノピーウォーク)
17:00
メシラウ村へ移動
メシラウ村
18:00
○ホームステイ語学研修
・音楽体験による国際交流、昆虫観察(昆虫のライトトラップ)
【メシラウ村でのホームステイ泊】
1/12
メシラウ村
07:00
サバ大学へ移動
(火)
コタキナバル
09:30
○サバ大学にて熱帯雨林についての研修①(日本高校生のみ)
・講義①(ボルネオ概要)
・標本庫見学
12:00
【昼食】(本校生徒のみ)
12:45
・プレゼンテーション準備(15日用)
15:45
◇オールセインツ高校へ移動
16:30
○ホームステイ引き渡し式
17:00
・ホームステイ先の車でそれぞれ移動
・ホストファミリーと過ごす(英語での国際交流)
【コタキナバルでのホームステイ泊、教員は市内ホテル】
1/13
コタキナバル
06:50
オールセインツ高校に登校、朝礼に参加
トゥアラン
07:30
湿地センターへ立ち寄り、トゥアランへ
(水)
09:00
●トゥアランでの植林活動(現地高校生との交流)
・マングローブの植林活動
10:00
コタキナバル湿地センターへ移動
・着替え
コタキナバル
11:00
●コタキナバル湿地センターにて講義と観察(現地高校生との交流)
・講義(ビデオ)②(マングローブ林の役割と植林活動~過去、現在、未来の視覚化~)
12:00
【昼食】
13:00
・コタキナバル湿地センター内のガイドウオーク、水のサンプリング調査
14:30
クリアス半島へ移動(現地高校生は学校に戻る)
16:30
○クリアス半島での動物調査
・リバークルーズ(川沿いの動物観察)、水のサンプリング調査
【夕食】
・ホタル観賞と昆虫観察
20:00
コタキナバル(オールセインツ高校)へ移動
22:00
○ホームステイ語学研修
・ホームステイ先の車でそれぞれ移動
【コタキナバルでのホームステイ泊、教員は市内ホテル】
1/14
コタキナバル
08:00
オールセインツ高校集合、サバ大学へ移動
(木)
08:30
●サバ大学にて熱帯雨林についての研修②(現地高校生との交流)
・水分析(サンプリングした水の分析を行い、水と生態系の関係を考察する)
・(撮影した昆虫写真の同定)
12:00
【昼食】
・講義③④(環境問題と自然保護プロジェクト)
15:30
◇オールセインツ高校へ移動
16:00
○ホームステイ語学研修
【コタキナバルでのホームステイ泊、教員は市内ホテル】
1/15
コタキナバル
06:50
オールセインツ高校へ登校
(金)
07:10
●オールセインツ高校科学プログラム(現地高校生と交流)
・朝礼に参加(35分)
08:00
・啓成生によるプレゼン(北海道の自然、見て学んだこと、課題研究、学校生活と冬)(40分)
08:40
【休憩】
09:10
・化学の授業に参加(35分)
10:10
・前日の講義の振り返りとディスカッション
11:40
・プレゼンテーション(サバと北海道の環境問題、我々にできること)
12:30
・挨拶、記念写真(60分)
13:30
○ホームステイ語学研修
【コタキナバルでのホームステイ泊、教員は市内ホテル】
1/16
○ホストファミリーと市内見学
(土)
17:00
コタキナバル国際空港集合
20:00
コタキナバル空港出発(MH2631)
22:20
クアラルンプール到着
23:35
クアラルンプール出発(MH088) 【機内泊】
1/17
07:15
成田空港到着、到着後空港間バスで羽田空港へ移動
(日)
12:35
羽田空港出発(JL515)
14:05
千歳空港到着 到着後、解散