酒と妖怪の国 中国 葛藤せめぎ合う イスラエル

Japan
憲一郎 河出書房新社
内容よりも、
その読書の経験について語りたくなる。
それが磯 憲一郎の小説。(小木曽)
後藤さんのこと
□ 円城塔 早川想像力の文学
裏切られるとわかっているのに毎回期待
して読んでやっぱり裏切られるけどまた
次回作に期待して読んでしまうのは何故
なのでしょう。
円城塔、こわもてだ。(小木曽)
肝心の子 供 は ど こ に い る の か ?
憲一郎
□ 磯
︱︱磯
肝心の子供
アクロバット前夜 90°
□ 福永信 リトルモア
両人対酌して山花開く
一盃一盃復た一盃 ︱︱李白
酒と妖怪の国
中国
空飛ぶ福永信
セルバンテス、ベケット、カルヴィーノ、
阿部和重、フーディニ、ブージャムさん
より、草葉の陰から応援のメールが届い
ております。90°だなんて。
(小木曽)
聊斎志異 上巻
□
蒲松齢
立間祥介訳 岩波文庫
このあいだ東京でね
□ 青木淳悟 新潮社
乗り物の棚に差しといたら
1 冊だけ売れました。
フィクションに頼らない
ドキュメンタリーを小説でやってしまう
青木淳吾の凄さ。(小木曽)
バレエ・メカニック
□ 津原泰水 早川想像力の文学
理沙の脳=東京
美しい想像力を見せてくれる。
と、同時に現実を目の前にすると、
人は無力であることを見せてくれる。
(榎本)
選 考 基 準はこれ からの日本 文 学を
リードする作家たち。というのは建前で、
決してメインストリームにはなれないけ
どアングラ的にはむしろメジャーで凡百
の小説に飽いた読者の迷いこむ路地裏
的作家がここに集いました。
読むか買うか、
それが問題だ。
(小木曽)
阿 Q 正伝・狂人日記
□
魯迅
竹内好訳 岩波文庫
カフカも訳した
精巧な構成と
豊かな変態力で
異界に遊ぶ。(榎本)
狂うしかないだろ
夜、月が出なけりゃ狂ってしまえ。
狂ってしまえば常人です。
(田川)
聊斎志異 下巻
バルザックと小さな中国のお針子
□
蒲松齢
立間祥介訳 岩波文庫
□
ダイ・シージエ
新島進訳 ハヤカワ epi 文庫
幽玄の美
驚異的現実が
写実的に描かれている。
オバケと妖怪は目の前にいる。
(榎本)
文学の価値。
文学のデータ化、媒体の多様化が
益々進む世界において、
文学の持つ価値、影響力は
失われてゆくのだろうか。
(黒澤)
駱駝祥子 らくだのシアンツ
千年の祈り
China
□
老舎
立間祥介訳 岩波文庫
目標に向かってがんばる
祥子はすごく楽しそう。
と思いきや…。
こ、こんなことになるとは。
絶望するよ、ほんと。
(榎本)
□
イーユン・リー
篠森ゆりこ 新潮クレスト
希求する
驚いた。
こんなにも静かでありながら、
その中でひとり、強く、
希求しつづけている。
「あまりもの」
、これだ。
(梅 )
19
抑圧された
の
SHAME SHAMELESS
間にある地軸を中 心 に し て 回 っ て い る 。
ガニ ス タ ン
アわフ
れわれは
と
︱︱サルマン・ラシュディ
Afghanistan
カブールの燕たち
□
君のためなら千回でも 上巻
ヤスミナ・カドラ 香川由利子訳
ハヤカワ epi ブックプラネット
□
カーレド・ホッセイニ
佐藤耕士訳 ハヤカワ epi 文庫
愛を書くのに性はいらない
去年のベストセラー書のような
性描写は一切ない。
それでも愛をこんなにも深く描ける。
もうあの本捨てちゃお。
(木村)
過去は這い出る
友人なのに友人だと言えない、
助けたいのに足が動かない。
今なら簡単に出来ることが
あの頃は何で出来なかったのだろう。
(木村)
悲しみを聴く石
君のためなら千回でも 下巻
□
アティーク・ラヒーミー
関口涼子訳 白水社エクス・リブリス
□
カーレド・ホッセイニ
佐藤耕士訳 ハヤカワ epi 文庫
抑圧と抵抗と…
徹底的に削ぎ落とされた文体、
そこから感じ取れるのは、
女の強さと死の日常。
カドラと併せて。(木村)
今、読むべき物語
書かなくてはいけないけれど
書いてはいけない。
それでも書き続ける作家の本は
読まなくてはいけない。
(木村)
灰と土
アフガニスタンの風
□
アティーク・ラヒーミー
関口涼子訳 インスクリプト
□
ドリス・レッシング
加地永都子訳 晶文社
ブルーリア
□
ダヴィッド・シャハル
母袋夏生訳 国書文学の冒険
<あんたのような人たちには
理解できないことさ>
「わかり合おうと思えばわかり合える」
というのは幻想だ。その幻想に絶望した
あとで、やっとゼロ地点へと辿り着く。
(梅 )
つかの間の静寂
皆起きているはずなのに、
なぜか静かな夜。
そんな感じのエルサレム。
(木村)
ハイファに戻って/太陽の男たち
地下室のパンサー
□
ガッサーン・カナファーニー
黒田寿郎他訳 河出書房新社
派遣村など比にならない
決してフィクションではない文学。
少しでも気になったら読んで下さい。
世界を見る目が変わります。(木村)
エルサレムの秋
□
アブラハム・B・イェホシュア
母袋夏生訳 河出 Modern & Classic
言葉で絵は描ける。
言葉を大事にすると、
読者の心に絵が描ける。
この本を読むと、見たことのない
エルサレムが描かれる。(木村)
20
□
アモス・オズ
村田靖子訳 未知谷
終わりと始まりの狭間で。
何かひとつを信じること、
それは同時に何かを裏切ること。
狂信主義が溢れる世界で
少年は成長していく。
(木村)
皆さんは「NAKBA」という言葉を知っ
ていますか? 今回のフェアに取り上
げたカナファーニーはまさに「NAKBA」
から誕生した作家の一人です。このフェ
アを機にイスラエルの文学に少しでも
興味を持った方は『パレスチナ 1948
− NAKBA』(監督:広河隆一)という
DVD を見てみて下さい。自分の周りの
空気が一瞬で変わります。(木村)
Israel
葛藤せめぎ合う
ヤスミナ・カドラ 藤本優子訳
ハヤカワ epi ブックプラネット 多様であることは、歯をくいしばってでも
折り合わねばならない一つの現実である。
□
︱︱アモス・オズ
テロル
イスラエル
泣いたっていいじゃないか?
中立的ではないという中立性
悲しみが流れるままにしておけ!
レッシングは擁護をしない。
――p.115
男も女も、大国も小国も。
二人称からの視点と、
だからこの本はルポではなく文学だ。
無駄のない文章が、
(木村)
男の怒りと悲しみを倍増させる。
(木村)
ヤスミン・クラウザー
小竹由美子訳 新潮クレスト
逆らわずに、受け入れる。
結局運命に逆らうことはできない。
人生なんてそんなもの。
そんな人生を
レッシングは拾ってくれる。(木村)
故郷があるから生きていける
妻が離れた原因は故郷。
その故郷がこんなにも美しかったなら、
夫はもう為す術がない。
(木村)
破壊者ベンの誕生
白い紙/サラム
□
ドリス・レッシング
上田和夫訳 新潮文庫
□
シリン・ネザマフィ
文藝春秋
壊すつもりはないのに
壊れていく。
生まれた瞬間から忌み嫌われるベン。
でもあまりかわいそうではない。
(木村)
日本語で書かれたイランの空気
翻訳ではない日本語が、
イランの空気を直に運んで来る。
だから読むと悲しみ、涙する。
(木村)
ルバイヤート
生埋め――ある狂人の手記より
□
オマル・ハイヤーム
小川亮作訳 岩波文庫
□
酔っぱらい。
この人、
酒と女の話しかしてないです。
酒、飲んでいいんだっけ?
(蜷川)
戦争に次ぐ戦争
アメリカ
すべての出来事は平和的な方法を持って
解決できる。解決しなければならない。
︱︱ドラガン・ストイコビッチ
「誰もが死を恐れるが、
僕は執拗に続く生が恐ろしい」
死の追求、それは則ち生の追求。
生の追求、それは則ち自我の追求。
「なぜ僕は生きているのだろう?」
(木村)
ドン・デリーロ
上岡伸雄訳 新潮社
あの瞬間の、それぞれの一瞬。
ビル崩壊という大きな事件に
紛れて見えない個人の事件。
それでも人には「記憶」がある。
(木村)
黒い時計の旅
□
Iran
サーデグ・ヘダーヤト
石井啓一郎訳 国書文学の冒険
墜ちてゆく男
□
答えようとて誰に は っ き り 答 え ら れ よ う
︱︱われらはどこ か ら 来 て
□
郷愁を誘う
サフラン ・ キッチン
ドリス・レッシング
山本章子訳 集英社文庫
どこへ行くやら?
︱︱オマル・ハイヤーム
□
イラン
グランド・マザーズ
スティーヴ・エリクソン
柴田元幸訳 白水uブックス
本当の戦争の話をしよう
□
ティム・オブライエン
村上春樹訳 文春文庫
本当の戦争の話は
戦争の話ではない
戦争の話ではないから、痛みは伝わる。
戦争の話ではないから、
平和に感謝する。
(木村)
火星年代記
□
レイ・ブラッドベリ
小笠原豊樹訳 ハヤカワ文庫
ヒトラーは老人となり死んでゆく。
人間は死ぬ。
そしてもう一度 20 世紀を書く。
時間はひっくり返る。
(榎本)
21 世紀には何も残らない。
論理も、常識も、良い政治も、
平和も、責任も。
あるなんて思っていたのが
馬鹿げていたのかもしれない。
(蜷川)
スローターハウス5
ゴールデン・ボーイ
USA
□
カート・ヴォネガット
伊藤典夫訳 ハヤカワ文庫
□
スティーヴン・キング
浅倉久志訳 新潮文庫
ちょっとした好奇心、ちょっとした嘲弄
ちょっと隠喩の効果に頼りすぎ
心。元ナチの老人をからかうつもりが、
という気もするのですが、
その白々しさがアメリカに残された良心 いつの間にか狂人の仲間入。人が普通に
狂う過程を見せつけられる恐さ。
ではないかと思います。
多感な子供に読ませてはいけない!
直視しないで済ませたいけど
(黒澤)
そういうわけにもいかない作品。
(小木曽)「ショーシャンクの空に」併録。
21
窒息する土 地
疲れた読者をす っ か り 満 足 さ す よ う な 作 品 を 、
南部の作家が書 く 日 な ど 考 え る の も い や で あ る 。
︱︱フラナリー・オコナー
アメリ カ 南 部
青い眼がほしい
□
□
信じるな!
神とは何か? 人とは何か?
まがいものが溢れるこの世界で
あなたは何を貫くか。
信じる者すら救わない神なんか
信じない方が良い。
(木村)
スーラ
フラナリー・オコナー全短篇 上巻
□
トニ・モリスン
大社淑子訳 ハヤカワ epi 文庫
□
死と暴力がもたらすわずかな希望
衝撃をもたらす短編集。
『田舎の善人』は特に良い。
究極の悪人とは
まさにこの青年のことだろう。
(木村)
アブサロム、アブサロム!
フラナリー・オコナー全短篇 下巻
ウィリアム・フォークナー
篠田一士訳 河出世界文学全集
フラナリー・オコナー
横山貞子訳 ちくま文庫
読み終わらない
何度読み返しても
読み終えることができない。
一生読み続けるんだろうな。
(木村)
フォークナー短編集
リトル・トリー
冬の犬
ウィリアム・フォークナー
龍口直太朗訳 新潮文庫
Canada
アリステア・マクラウド
□
中野恵津子訳 新潮クレスト
吐く息はずっと白い
極寒の地で
厳しい生活を営む
力強い人々を見よ。
(榎本)
Canada
R・A・ラファティ
柳下毅一郎訳 国書未来の文学
ハイテンションスペース珍道中
書いているラファティが一番ノリノリだったのだろう
と想像できます。『オデュッセイア』を下敷きにした
トークセッションです。(小木曽)
22
□
南部からの解放
それは一族の滅亡。
トマス・サトペンという
蠅の王。(榎本)
□
インディアンと黒人奴隷。そして社会的
退廃。これらの出来事はそんなに昔の話
じゃない。今のアメリカは、こういう歴
史を土台に成り立っているけれど、そこ
に生きた人達と澱んだ世界の息づかいは
歴史書になんか載ってやいない。
(黒澤)
□
フラナリー・オコナー
横山貞子訳 ちくま文庫
時が経っても、環境が変わっても、
決して変わらぬもの。
この作品の主人公はネルです。
ネルが教えてくれます。
(木村)
□
宇宙舟歌
フラナリー・オコナー
須山静夫訳 ちくま文庫
読んだだけで終わらせてはいけない
いろんな色の肌が混じり合う。
そんな世界の中でどう生きるか。
読み終えた時に考えることが始まる。
(木村)
□
United States
of America
賢い血
トニ・モリスン
大社淑子訳 ハヤカワ epi 文庫
フォレスト・カーター
和田穹男訳 めるくまーる
インディアンの教えは口伝によって語られ
る。又は先人の生き方をもって伝えられる。
だからインディアン文学はない。この一冊
を除いて。チェロキー族末裔の著者が体験
を元に描いた永遠に読み継がれるべき一
冊。子供に読ませたい本 No.1 です。
(黒澤)
九百人のお祖母さん
R・A・ラファティ
□
浅倉久志訳 ハヤカワ文庫
Canada
ホラ話を文章にできるナチュラル・ギフト
どの話も面白いですが、
「カミロイ人の初等教育」
が強く印象に残っています。
(小木曽)
つぎの岩につづく
□
Canada
R・A・ラファティ
伊藤典夫・浅倉久志訳 ハヤカワ文庫
短編をいくつも続けて読んで、
だいぶん記憶が混乱してきたところにいつも現れる
苦虫ジョン
の活躍にご期待下さい。
(小木曽)
シカゴ育ち
□
読み終わっても終わらない本
大切なものはハイウェイにある。
目的のない移動は延々続く。
(榎本)
荒廃に戻ろう。
「荒廃地域」を書いたダイベックが
大学の先生だなんて、
悪い冗談かスキャンダル
としか思えない。
(蜷川)
勝手に生きろ!
さらば愛しき女よ
□
チャールズ・ブコウスキー
都甲幸治訳 河出文庫
□
レイモンド・チャンドラー
清水俊二訳 ハヤカワ文庫
夢や目標なんて欠片もない。
ろくでもない男が
ただひたすら生きている。
なのに何で惹かれるんだ?
何で読みたくなるんだ? 謎。(木村)
マーロウの発言は、
シェイクスピアと同じくらい
引用されても良いと思う。
それにしても、
ヘミングウェイを馬鹿にしすぎ。(蜷川)
ライ麦畑でつかまえて
ハックルベリ・フィンの冒険
□
J・D・サリンジャー
野崎孝訳 白水uブックス
□
たとえ奴らが七 億 九 千 五 百 万 人 で 、
僕のほうは一人 ぼ っ ち で も 、
間違っているの は 奴 ら の 方 さ 。
スチュアート・ダイベック
柴田元幸訳 白水uブックス
︱︱セリーヌ
ジャック・ケルアック
青山南訳 河出世界文学全集
反逆の国
□
アメ リ カ
オン・ザ・ロード
USA
マーク・トウェイン
大久保博訳 角川文庫
システム内で生きることは、
自殺マニアの運転するバスに乗って
国を横断するようなものだ。
︱︱ピンチョン
アメリカ最先端
誰が少年のための文学だって?永遠の青春小 「よし、それなら、
オレは地獄に行こう」
説だって?いやいや、おっさんたちよ今こそラ
イ麦畑を読もう!オレだってホールデンみたい トム・ソーヤーが最低のクソガキ
な職業を夢見るアラフォー世代。なんならホッ であったのに対して、
ハックは最高に格好良い、
プ畑でもいい。ホールデンがキャップを後向
俺たちのヒーローである。
(蜷川)
きにかぶっているのは何故でしょう?(黒澤)
ブラッド・メリディアン
□
コーマック・マッカーシー
黒原敏行訳 早川書房
スロー・ラーナー
□
トマス・ピンチョン
志村正雄訳 ちくま文庫
戦争地獄図
この本を読めれば、
他のどんな小説も読める。
読者に一切の感情移入を拒む衝撃作。
(榎本)
短編集ではありますが、
ピンチョン入門というにはちょっと…。
それでも表題作と「エントロピー」は
面白く読めました。
(小木曽)
父の遺産
イン・ザ・ペニー・アーケード
□
フィリップ・ロス
柴田元幸訳 集英社文庫
□
スティーヴン・ミルハウザー
柴田元幸訳 白水uブックス
我々への贈りもの
父が何を残したかというより、
我々がそれをどのように受け継ぐか。
(榎本)
第一部が最高。
勿論他のも良いけど、
「アウグスト・エッシェンブルク」の
衝撃は忘れられない。
人形好きは必読。(蜷川)
ディフェンス
舞踏会へ向かう三人の農夫
USA
□
ウラジーミル・ナボコフ
若島正訳 河出書房新社
鮮やかにルークを捨てる。
ルージンの妻が演じた役割は、
ルークを奪うために h8 から a8 へと
翻弄させられたクイーンのようだ。
なんてね。(蜷川)
□
リチャード・パワーズ
柴田元幸訳 みすず書房
写真から話が
膨らむ3D小説
三つの時間と空間の異なる物語が、
アメリカの歴史を語る。
(榎本)
23
驚異の2ト ッ プ
ものだけが作品 を 豊 か に す る 。
キューバ
文学の領域にお い て は 、 た だ 驚 異 的 な
︱︱カルペンティエル
Cuba
この世の王国
□
夜明け前のセレスティーノ
アレホ・カルペンティエル
木村榮一他訳 叢書アンデスの風
春の祭典
□
めくるめく世界
アレホ・カルペンティエル
柳原孝敦訳 国書文学の冒険
追跡
アレホ・カルペンティエル
杉浦勉訳 叢書アンデスの風
El Salvador
オラシオ・カステジャーノス・モヤ
寺尾隆吉訳 現代企画室
崩壊につぐ崩壊
社会、国家、民衆、家族、世代、夫婦、親子…。
多くのものが崩壊し、ひとつの文学が構築される。
(木村)
Trinidad and Tobago
ミゲル・ストリート
□
V・S・ナイポール
小沢自然・小野正嗣訳 岩波書店
「ぼく」と出会いたい
「ぼく」と出会うと、
人はこんなに芸術的な人生を送れるのだ。
16 人の夢の話。
(榎本)
Trinidad and Tobago
ドラゴンは踊れない
アール・ラヴレイス
□
中村和恵訳 みすず書房
二日間の為の一年。
スティールバンド、カリプソ、そしてカーニヴァルの
熱狂。ディケンズのように丹念に描かれた人々の声を
聴け。くそくらえ! フラー!(蜷川)
24
□
レイナルド・アレナス
鼓直・杉山晃訳 国書文学の冒険
2 行目にはもうほら話が始まる
p.9 を読んでみて下さい。
1 行目は至って普通。
2 行目から疑問を感じ、
3 行目にはすでに混乱。
4 行目から楽しくなります。
(木村)
歴史は流動体
内面描写が少ないのに
これほどまで登場人物が
生き生きしている。
語らずとも語る小説。
(榎本)
カルペンティエルに追いつけ!
テキストにまじ翻弄されるから
気を付けて追いかけろ!
(榎本)
□
レイナルド・アレナス
安藤哲行訳 国書文学の冒険
無秩序世界のエネルギー
音楽が鳴り響く
西欧が侵入してくる大地だからこそ、 「頭かちわったる」と、とりあえず
じいさんが斧持って
耳をすませば聞こえてくる音楽。
(榎本)
この国なら地震にも負けない。
(木村) やってくるような話です。
□
崩壊
□
キューバはもともと口承文学だっ
た。口伝を絶滅させ、文字をもたらし
たのは、かの有名なコロンブス。それ
以降、この国はスペイン語で小説を書
くようになる。今回取り上げた2トッ
プはカストロ政権下で文化的活動の中
心だったカルペンティエルと非社会主
義者の反逆者アレナスという、ポジ
ション争いでもある。
(榎本)
グアテマラ伝説集
□
Guatemala
M・A・アストゥリアス
牛島信明訳 岩波文庫
さようならグアテマラ
訳の分からない数々の伝説と、
突如現れる不気味な絵。
グアテマラに行きたいと全く思わない奇跡の一冊。
(木村)
◆出場停止中の名選手たち◆
○河野多惠子『幼児狩り・蟹』
→妄想誘拐という暗黒シチュエーションなの
に素敵。実は単行本に入っているけど再文
庫化希望します。
○島田雅彦『彼岸先生』ほか初期作品
→彼なしに八十年代は語れない。芥川賞六回
エントリー(最多)
、無冠の貴公子。
○小林恭二『瓶の中の旅愁――小説の特異点を
めぐるマカロニ法師の巡礼記』
→タイトル長いな。
○猫田道子『うわさのベーコン』
→誤字脱字だらけというかなりヘンな小説。
○塚本邦雄『百珠百華――葛原妙子の宇宙』ほか多数
→塚本は評論を書いても小説になる。
その他、多くの歌集・句集。希少さがいいのだけれど、
すぐに読めなくなるのは悲しい。短歌、
俳句ラブ!
(梅 )
サルバドール・エリソンド
田沢耕訳 叢書アンデスの風
人の命の軽さ
この人は命をどうとも
思ってないのだろうか。
彼にとって生も死も同価なのか。
(榎本)
死とは究極のエロティシズム
「凌遅処死」という処刑は
実際に行われたのだろうか?
(榎本)
アウラ・純な魂
知への賛歌
□
カルロス・フエンテス
木村榮一訳 岩波文庫
□
ソル・フアナ
旦敬介訳 光文社古典新訳文庫
出会いのおもしろみ
人と人との出会いの
シーンもおもろいけど、
マヤ、インカ文明と近代の
出会いもおもろい。(榎本)
詩に奉仕する
詩を書くためには
修道女になるしか
方法がなかった。
(榎本)
老いぼれグリンゴ
血と暴力の国
□
カルロス・フエンテス
安藤哲行訳 河出世界文学全集
□
メキシコが生んだ純粋悪。
社会や環境が悪を生み出した、
なんてよく言うけれど、
そんな言い訳では
解決されない悪もある。
(木村)
フリアとシナリオライター
Peru
マリオ・バルガス=リョサ
野谷文昭訳 国書文学の冒険
Mexico
コーマック・マッカーシー
黒原敏行訳 扶桑社ミステリー
私はアメリカ人
アメリカ人であることの絶望。
グリンゴ爺さんは
死ぬためにメキシコへやってきた。
祖国へ反逆するという愛国心。(榎本)
□
私を迫害するこ と で 、 世 界 よ 、
お前は何の得を す る の か ?
□
死んでも蘇 る
ファラベウフ
フアン・ルルフォ
杉山晃訳 叢書アンデスの風
︱︱ソル・フアナ
□
メキシコ
燃える平原
マリオは血の繋がらない叔母に恋をするというのに
この雰囲気はなんだろう。すごくさわやか。
対して、ペドロ・カマーチョは…。(榎本)
◆出場停止中の名選手たち◆
○バルガス=リョサ『世界終末戦争』
→リョサの最高傑作を今すぐ復刊せよ!
○マッカラーズ『心は孤独な狩人』
→大学生の頃、大学生のときに母が買ったもの
を貰った。どこの古本屋でも見たことがない。
○目取真俊『魂込め(まぶいぐみ)』
→沖縄の遠野物語にして中上健次。
口からやどかり出てきます。
○津原泰水『ペニス』
→津原泰水のどうしようもない無力感漂う世
界を味わうにはやっぱこれじゃないと。
○ヘッセ『ガラス玉演戯』
→俺持ってるよーん。蜷川ざまあみろ。
○ディケンズ『ピクウィック・クラブ』
→絶対に読まれなければならない小説がそこ
にはある。これが我々の原点である。
(榎本)
楽園への道
□
マリオ・バルガス=リョサ
田村さと子訳 河出世界文学全集
Peru
ゴーギャンはすべてを捨ててタヒチへ。
フローラは平等社会の設立へ。
2人が歩んだ楽園への道は、
その足跡のことだ。
(榎本)
海に住む少女
Uruguay
ジュール・シュペルヴィエル
□
永田千奈訳 光文社古典新訳文庫
透明な物語
透明だからさらっと読める。でもさらっと
読むと見失う。ゆっくりと読むと見えてくる、
透明なものの形が。
(木村)
ロートレアモン全集
Uruguay
イジドール・デュカス
□
石井洋二郎訳 ちくま文庫
どこまで読めるか根比べ。
「あんたと意見交換するなんて
できない相談だよ」――52 ページ
完全に同感です。
(蜷川)
25
フーリガン だ ら け
アルゼ ン チ ン
真に現実を研究 し よ う と す れ ば 、 法 則
ではなく、それ か ら は ず れ た 例 外 に 目
を向けなければ な ら な い 。 ︱ ︱ ジ ャ リ
Argentina
モレルの発明
□
悪魔の涎・追い求める男
アドルフォ・ビオイ=カサーレス
清水徹・牛島信明訳 水声社
フリオ・コルタサル
木村榮一訳 岩波文庫
伝説の奇書。
南米らしからぬ、どちらかと言うと
チェスタトンやスティーヴンスンの
系譜に連なる小説。
ラテンアメリカ文学に興味がなくても、
これだけは読んで。(蜷川)
またもや彼は
悪魔を召喚してしまった。
しかも、
たった 2 ページで。
(榎本)
脱獄計画
蜘蛛女のキス
□
アドルフォ・ビオイ=カサーレス
鼓直他訳 ラテンアメリカ文学選集
□
マヌエル・プイグ
野谷文昭訳 集英社文庫
真実はどこだ
存在しない人間のことを考える。
非現実が日常になると、
現実が幻想になる。(榎本)
映画好きが高じて書かれた、
南米流のボーダーレスな自意識と
西洋的メタフィクションの調和する
傑作ホモ小説です。
(小木曽)
楽園の犬
ブエノスアイレス事件
□
アベル・ポッセ 鬼塚哲郎訳
ラテンアメリカ文学選集
交錯につぐ交錯
大航海時代と現代
新大陸と旧大陸
ほんととうそ(榎本)
マヌエル・プイグ
鼓直訳 白水uブックス
要するに、
エロ女と欲情男が出会って、
悲劇に進んでゆくって話です。
そりゃ、
うまくいくわけがないよね。
(榎本)
ホルヘ・ルイス・ボルヘス
木村榮一訳 平凡社ライブラリー
バベルの図書館に住みたい。
これはそんな残念なことを
公言するような人が
集まったフェアです。
無傷で帰れると思うなよ。(蜷川)
思索は現実を超える
「アヴェロエスの探求」を読むと、
詩を読みたくなる。
(榎本)
創造者
砂の本
□
ホルヘ・ルイス・ボルヘス
鼓直訳 岩波文庫
□
ホルヘ・ルイス・ボルヘス
篠田一士訳 集英社文庫
ポッケに入る『創造者』。
謎の文庫化、万歳!
「率直に言って覚えていないのだ、
あの晩、実際に自殺したのかどうか」
――p.23(蜷川)
本のページがみるみるうちに
指の間にはさまれてゆく…。
始まりもなければ終わりもない。
砂の本。
(榎本)
幻獣辞典
ボルヘス怪奇譚集
□
ホルヘ・ルイス・ボルヘス
柳瀬尚紀訳 晶文社クラシックス
幻獣って
それあなたのこと
ですやん!
ボルヘスさん!(榎本)
26
図書館はパン、あるいはピラミッド、
あるいは他のいかなるものでもあり得る。
□
Argentina
□
ボルヘス&カサーレス
柳瀬尚紀訳 晶文社クラシックス
短ければ短いほどいい、
とボルヘスが言う。
そうね、とカサーレスが言う。
そこで 2 人は 2 ページくらいで
終わる作品を世界から集める。
なんて、いい奴らなんや。
(榎本)
バベルの図書館
エル・アレフ
︱︱ボルヘス
ホルヘ・ルイス・ボルヘス
鼓直訳 岩波文庫
□
アルゼンチン
伝奇集
□
□
予告された殺人の記録
□
90 歳のじじいが
14 歳の少女に恋をする。
そして生きがいを見つける。
恋ってすごいね。
(榎本)
まとわりつく血の匂い
始めから終わりまで、
ずっと漂う血の匂い。
極限的な第三者の目が薄気味悪い。
(木村)
幸福な無名時代
百年の孤独
□
ガブリエル・ガルシア=マルケス
旦敬介訳 ちくま文庫
□
ガブリエル・ガルシア=マルケス
鼓直訳 新潮社
ジャーナリストのガルシア=マルケス
ルポのレベルを超えた、
驚異的現実の数々。
語り継がれた土地の話である。(榎本)
ブエンディアだらけ。
「どいつもこいつもマルケス、マルケス、
うるせえんだよ」と思いながら読んだの
に面白かったから、間違いなく面白い。
評判が良すぎて嫌になってる僕みたいな
人は、この機会に是非。
(蜷川)
ロサリオの鋏
エレンディラ
□
ホルヘ・フランコ
田村さと子訳 河出 Modern & Classic
鋏は銃よりも恐ろしい
ひとりの女がキスをします。すると男は
殺されます。鋏はそうやって使うもので
はありません。(木村)
□
チリ
細く長く
失われた世界を再建する力を
言葉に与えようとしたのです。
︱︱イサベル・アジェンデ
嘘つけ。
ありえないことが普通に起こる、
それがいわゆるマジック・リアリズム。
例えばタマネギを刻みながら窓の外を
見たら、天使が飛ぶ練習をしてたり。
少しは驚け。(蜷川)
イサベル・アジェンデ
木村榮一訳 河出世界文学全集
通話
□
ロベルト・ボラーニョ
松本健二訳 白水社エクス・リブリス
過去は未来へ、未来は過去へ
一族の歴史は繰り返す。
ぐるぐるぐるぐる廻り続ける。
『百年の孤独』を
シュッとさせた物語。
(木村)
不安で暗い小説なのに
なぜか心が暖まる。
ボラーニョのドライな愛に気付く。
すると、もう一度読みたくなる。
(榎本)
エバ・ルーナのお話
隣りの庭
□
Chile
Colombia
ガブリエル・ガルシア=マルケス
鼓直・木村榮一訳 ちくま文庫
精霊たちの家
□
それは、羊ほど の 大 き さ が あ り 、
悲しげな乙女の 頭 が つ い た 、
見るも恐ろしい 毒 蜘 蛛 だ っ た 。
ガブリエル・ガルシア=マルケス
野谷文昭訳 新潮文庫
︱︱ガルシア=マルケス
ガブリエル・ガルシア=マルケス
木村榮一訳 新潮社
魔法の右足
□
コロ ン ビ ア
わが悲しき娼婦たちの思い出
イサベル・アジェンデ
木村榮一他訳 国書文学の冒険
南米のシェヘラザード
「トスカ」は名作。
人生はミスだらけ。
選択してしまったら、
信じるしかない。(榎本)
□
ホセ・ドノソ 野谷文昭・良子訳
ラテンアメリカ文学選集
私がここにいることの不安
「なんと多くの物事が、
ここでは無意味になることか」
(榎本)
カモメに飛ぶことを教えた猫
アジェンデ大統領の社会主義政権を
ルイス・セプルベダ
倒すため起きた軍事クーデタに翻弄さ
□
河野万里子訳 白水uブックス
れたチリの作家たち。メキシコから
帰ってきた途端、逮捕されたボラー 「カニの肢にかけて!」
ニョ。スペイン亡命を余儀なくされた 一人だって生きていける。
ドノソ。そして、アジェンデ大統領の でも、独りなんだって気付いたとき、
いとこの娘、イサベル・アジェンデ。 人は生きていけない。
混乱を物語る必要性がこの国には確か 誰かと約束するって素敵なことだ。
にあったのだ。(榎本)
(田川)
27