Japan 憲一郎 河出書房新社 内容よりも、 その読書の経験について語りたくなる。 それが磯 憲一郎の小説。(小木曽) 後藤さんのこと □ 円城塔 早川想像力の文学 裏切られるとわかっているのに毎回期待 して読んでやっぱり裏切られるけどまた 次回作に期待して読んでしまうのは何故 なのでしょう。 円城塔、こわもてだ。(小木曽) 肝心の子 供 は ど こ に い る の か ? 憲一郎 □ 磯 ︱︱磯 肝心の子供 アクロバット前夜 90° □ 福永信 リトルモア 両人対酌して山花開く 一盃一盃復た一盃 ︱︱李白 酒と妖怪の国 中国 空飛ぶ福永信 セルバンテス、ベケット、カルヴィーノ、 阿部和重、フーディニ、ブージャムさん より、草葉の陰から応援のメールが届い ております。90°だなんて。 (小木曽) 聊斎志異 上巻 □ 蒲松齢 立間祥介訳 岩波文庫 このあいだ東京でね □ 青木淳悟 新潮社 乗り物の棚に差しといたら 1 冊だけ売れました。 フィクションに頼らない ドキュメンタリーを小説でやってしまう 青木淳吾の凄さ。(小木曽) バレエ・メカニック □ 津原泰水 早川想像力の文学 理沙の脳=東京 美しい想像力を見せてくれる。 と、同時に現実を目の前にすると、 人は無力であることを見せてくれる。 (榎本) 選 考 基 準はこれ からの日本 文 学を リードする作家たち。というのは建前で、 決してメインストリームにはなれないけ どアングラ的にはむしろメジャーで凡百 の小説に飽いた読者の迷いこむ路地裏 的作家がここに集いました。 読むか買うか、 それが問題だ。 (小木曽) 阿 Q 正伝・狂人日記 □ 魯迅 竹内好訳 岩波文庫 カフカも訳した 精巧な構成と 豊かな変態力で 異界に遊ぶ。(榎本) 狂うしかないだろ 夜、月が出なけりゃ狂ってしまえ。 狂ってしまえば常人です。 (田川) 聊斎志異 下巻 バルザックと小さな中国のお針子 □ 蒲松齢 立間祥介訳 岩波文庫 □ ダイ・シージエ 新島進訳 ハヤカワ epi 文庫 幽玄の美 驚異的現実が 写実的に描かれている。 オバケと妖怪は目の前にいる。 (榎本) 文学の価値。 文学のデータ化、媒体の多様化が 益々進む世界において、 文学の持つ価値、影響力は 失われてゆくのだろうか。 (黒澤) 駱駝祥子 らくだのシアンツ 千年の祈り China □ 老舎 立間祥介訳 岩波文庫 目標に向かってがんばる 祥子はすごく楽しそう。 と思いきや…。 こ、こんなことになるとは。 絶望するよ、ほんと。 (榎本) □ イーユン・リー 篠森ゆりこ 新潮クレスト 希求する 驚いた。 こんなにも静かでありながら、 その中でひとり、強く、 希求しつづけている。 「あまりもの」 、これだ。 (梅 ) 19 抑圧された の SHAME SHAMELESS 間にある地軸を中 心 に し て 回 っ て い る 。 ガニ ス タ ン アわフ れわれは と ︱︱サルマン・ラシュディ Afghanistan カブールの燕たち □ 君のためなら千回でも 上巻 ヤスミナ・カドラ 香川由利子訳 ハヤカワ epi ブックプラネット □ カーレド・ホッセイニ 佐藤耕士訳 ハヤカワ epi 文庫 愛を書くのに性はいらない 去年のベストセラー書のような 性描写は一切ない。 それでも愛をこんなにも深く描ける。 もうあの本捨てちゃお。 (木村) 過去は這い出る 友人なのに友人だと言えない、 助けたいのに足が動かない。 今なら簡単に出来ることが あの頃は何で出来なかったのだろう。 (木村) 悲しみを聴く石 君のためなら千回でも 下巻 □ アティーク・ラヒーミー 関口涼子訳 白水社エクス・リブリス □ カーレド・ホッセイニ 佐藤耕士訳 ハヤカワ epi 文庫 抑圧と抵抗と… 徹底的に削ぎ落とされた文体、 そこから感じ取れるのは、 女の強さと死の日常。 カドラと併せて。(木村) 今、読むべき物語 書かなくてはいけないけれど 書いてはいけない。 それでも書き続ける作家の本は 読まなくてはいけない。 (木村) 灰と土 アフガニスタンの風 □ アティーク・ラヒーミー 関口涼子訳 インスクリプト □ ドリス・レッシング 加地永都子訳 晶文社 ブルーリア □ ダヴィッド・シャハル 母袋夏生訳 国書文学の冒険 <あんたのような人たちには 理解できないことさ> 「わかり合おうと思えばわかり合える」 というのは幻想だ。その幻想に絶望した あとで、やっとゼロ地点へと辿り着く。 (梅 ) つかの間の静寂 皆起きているはずなのに、 なぜか静かな夜。 そんな感じのエルサレム。 (木村) ハイファに戻って/太陽の男たち 地下室のパンサー □ ガッサーン・カナファーニー 黒田寿郎他訳 河出書房新社 派遣村など比にならない 決してフィクションではない文学。 少しでも気になったら読んで下さい。 世界を見る目が変わります。(木村) エルサレムの秋 □ アブラハム・B・イェホシュア 母袋夏生訳 河出 Modern & Classic 言葉で絵は描ける。 言葉を大事にすると、 読者の心に絵が描ける。 この本を読むと、見たことのない エルサレムが描かれる。(木村) 20 □ アモス・オズ 村田靖子訳 未知谷 終わりと始まりの狭間で。 何かひとつを信じること、 それは同時に何かを裏切ること。 狂信主義が溢れる世界で 少年は成長していく。 (木村) 皆さんは「NAKBA」という言葉を知っ ていますか? 今回のフェアに取り上 げたカナファーニーはまさに「NAKBA」 から誕生した作家の一人です。このフェ アを機にイスラエルの文学に少しでも 興味を持った方は『パレスチナ 1948 − NAKBA』(監督:広河隆一)という DVD を見てみて下さい。自分の周りの 空気が一瞬で変わります。(木村) Israel 葛藤せめぎ合う ヤスミナ・カドラ 藤本優子訳 ハヤカワ epi ブックプラネット 多様であることは、歯をくいしばってでも 折り合わねばならない一つの現実である。 □ ︱︱アモス・オズ テロル イスラエル 泣いたっていいじゃないか? 中立的ではないという中立性 悲しみが流れるままにしておけ! レッシングは擁護をしない。 ――p.115 男も女も、大国も小国も。 二人称からの視点と、 だからこの本はルポではなく文学だ。 無駄のない文章が、 (木村) 男の怒りと悲しみを倍増させる。 (木村) ヤスミン・クラウザー 小竹由美子訳 新潮クレスト 逆らわずに、受け入れる。 結局運命に逆らうことはできない。 人生なんてそんなもの。 そんな人生を レッシングは拾ってくれる。(木村) 故郷があるから生きていける 妻が離れた原因は故郷。 その故郷がこんなにも美しかったなら、 夫はもう為す術がない。 (木村) 破壊者ベンの誕生 白い紙/サラム □ ドリス・レッシング 上田和夫訳 新潮文庫 □ シリン・ネザマフィ 文藝春秋 壊すつもりはないのに 壊れていく。 生まれた瞬間から忌み嫌われるベン。 でもあまりかわいそうではない。 (木村) 日本語で書かれたイランの空気 翻訳ではない日本語が、 イランの空気を直に運んで来る。 だから読むと悲しみ、涙する。 (木村) ルバイヤート 生埋め――ある狂人の手記より □ オマル・ハイヤーム 小川亮作訳 岩波文庫 □ 酔っぱらい。 この人、 酒と女の話しかしてないです。 酒、飲んでいいんだっけ? (蜷川) 戦争に次ぐ戦争 アメリカ すべての出来事は平和的な方法を持って 解決できる。解決しなければならない。 ︱︱ドラガン・ストイコビッチ 「誰もが死を恐れるが、 僕は執拗に続く生が恐ろしい」 死の追求、それは則ち生の追求。 生の追求、それは則ち自我の追求。 「なぜ僕は生きているのだろう?」 (木村) ドン・デリーロ 上岡伸雄訳 新潮社 あの瞬間の、それぞれの一瞬。 ビル崩壊という大きな事件に 紛れて見えない個人の事件。 それでも人には「記憶」がある。 (木村) 黒い時計の旅 □ Iran サーデグ・ヘダーヤト 石井啓一郎訳 国書文学の冒険 墜ちてゆく男 □ 答えようとて誰に は っ き り 答 え ら れ よ う ︱︱われらはどこ か ら 来 て □ 郷愁を誘う サフラン ・ キッチン ドリス・レッシング 山本章子訳 集英社文庫 どこへ行くやら? ︱︱オマル・ハイヤーム □ イラン グランド・マザーズ スティーヴ・エリクソン 柴田元幸訳 白水uブックス 本当の戦争の話をしよう □ ティム・オブライエン 村上春樹訳 文春文庫 本当の戦争の話は 戦争の話ではない 戦争の話ではないから、痛みは伝わる。 戦争の話ではないから、 平和に感謝する。 (木村) 火星年代記 □ レイ・ブラッドベリ 小笠原豊樹訳 ハヤカワ文庫 ヒトラーは老人となり死んでゆく。 人間は死ぬ。 そしてもう一度 20 世紀を書く。 時間はひっくり返る。 (榎本) 21 世紀には何も残らない。 論理も、常識も、良い政治も、 平和も、責任も。 あるなんて思っていたのが 馬鹿げていたのかもしれない。 (蜷川) スローターハウス5 ゴールデン・ボーイ USA □ カート・ヴォネガット 伊藤典夫訳 ハヤカワ文庫 □ スティーヴン・キング 浅倉久志訳 新潮文庫 ちょっとした好奇心、ちょっとした嘲弄 ちょっと隠喩の効果に頼りすぎ 心。元ナチの老人をからかうつもりが、 という気もするのですが、 その白々しさがアメリカに残された良心 いつの間にか狂人の仲間入。人が普通に 狂う過程を見せつけられる恐さ。 ではないかと思います。 多感な子供に読ませてはいけない! 直視しないで済ませたいけど (黒澤) そういうわけにもいかない作品。 (小木曽)「ショーシャンクの空に」併録。 21 窒息する土 地 疲れた読者をす っ か り 満 足 さ す よ う な 作 品 を 、 南部の作家が書 く 日 な ど 考 え る の も い や で あ る 。 ︱︱フラナリー・オコナー アメリ カ 南 部 青い眼がほしい □ □ 信じるな! 神とは何か? 人とは何か? まがいものが溢れるこの世界で あなたは何を貫くか。 信じる者すら救わない神なんか 信じない方が良い。 (木村) スーラ フラナリー・オコナー全短篇 上巻 □ トニ・モリスン 大社淑子訳 ハヤカワ epi 文庫 □ 死と暴力がもたらすわずかな希望 衝撃をもたらす短編集。 『田舎の善人』は特に良い。 究極の悪人とは まさにこの青年のことだろう。 (木村) アブサロム、アブサロム! フラナリー・オコナー全短篇 下巻 ウィリアム・フォークナー 篠田一士訳 河出世界文学全集 フラナリー・オコナー 横山貞子訳 ちくま文庫 読み終わらない 何度読み返しても 読み終えることができない。 一生読み続けるんだろうな。 (木村) フォークナー短編集 リトル・トリー 冬の犬 ウィリアム・フォークナー 龍口直太朗訳 新潮文庫 Canada アリステア・マクラウド □ 中野恵津子訳 新潮クレスト 吐く息はずっと白い 極寒の地で 厳しい生活を営む 力強い人々を見よ。 (榎本) Canada R・A・ラファティ 柳下毅一郎訳 国書未来の文学 ハイテンションスペース珍道中 書いているラファティが一番ノリノリだったのだろう と想像できます。『オデュッセイア』を下敷きにした トークセッションです。(小木曽) 22 □ 南部からの解放 それは一族の滅亡。 トマス・サトペンという 蠅の王。(榎本) □ インディアンと黒人奴隷。そして社会的 退廃。これらの出来事はそんなに昔の話 じゃない。今のアメリカは、こういう歴 史を土台に成り立っているけれど、そこ に生きた人達と澱んだ世界の息づかいは 歴史書になんか載ってやいない。 (黒澤) □ フラナリー・オコナー 横山貞子訳 ちくま文庫 時が経っても、環境が変わっても、 決して変わらぬもの。 この作品の主人公はネルです。 ネルが教えてくれます。 (木村) □ 宇宙舟歌 フラナリー・オコナー 須山静夫訳 ちくま文庫 読んだだけで終わらせてはいけない いろんな色の肌が混じり合う。 そんな世界の中でどう生きるか。 読み終えた時に考えることが始まる。 (木村) □ United States of America 賢い血 トニ・モリスン 大社淑子訳 ハヤカワ epi 文庫 フォレスト・カーター 和田穹男訳 めるくまーる インディアンの教えは口伝によって語られ る。又は先人の生き方をもって伝えられる。 だからインディアン文学はない。この一冊 を除いて。チェロキー族末裔の著者が体験 を元に描いた永遠に読み継がれるべき一 冊。子供に読ませたい本 No.1 です。 (黒澤) 九百人のお祖母さん R・A・ラファティ □ 浅倉久志訳 ハヤカワ文庫 Canada ホラ話を文章にできるナチュラル・ギフト どの話も面白いですが、 「カミロイ人の初等教育」 が強く印象に残っています。 (小木曽) つぎの岩につづく □ Canada R・A・ラファティ 伊藤典夫・浅倉久志訳 ハヤカワ文庫 短編をいくつも続けて読んで、 だいぶん記憶が混乱してきたところにいつも現れる 苦虫ジョン の活躍にご期待下さい。 (小木曽) シカゴ育ち □ 読み終わっても終わらない本 大切なものはハイウェイにある。 目的のない移動は延々続く。 (榎本) 荒廃に戻ろう。 「荒廃地域」を書いたダイベックが 大学の先生だなんて、 悪い冗談かスキャンダル としか思えない。 (蜷川) 勝手に生きろ! さらば愛しき女よ □ チャールズ・ブコウスキー 都甲幸治訳 河出文庫 □ レイモンド・チャンドラー 清水俊二訳 ハヤカワ文庫 夢や目標なんて欠片もない。 ろくでもない男が ただひたすら生きている。 なのに何で惹かれるんだ? 何で読みたくなるんだ? 謎。(木村) マーロウの発言は、 シェイクスピアと同じくらい 引用されても良いと思う。 それにしても、 ヘミングウェイを馬鹿にしすぎ。(蜷川) ライ麦畑でつかまえて ハックルベリ・フィンの冒険 □ J・D・サリンジャー 野崎孝訳 白水uブックス □ たとえ奴らが七 億 九 千 五 百 万 人 で 、 僕のほうは一人 ぼ っ ち で も 、 間違っているの は 奴 ら の 方 さ 。 スチュアート・ダイベック 柴田元幸訳 白水uブックス ︱︱セリーヌ ジャック・ケルアック 青山南訳 河出世界文学全集 反逆の国 □ アメ リ カ オン・ザ・ロード USA マーク・トウェイン 大久保博訳 角川文庫 システム内で生きることは、 自殺マニアの運転するバスに乗って 国を横断するようなものだ。 ︱︱ピンチョン アメリカ最先端 誰が少年のための文学だって?永遠の青春小 「よし、それなら、 オレは地獄に行こう」 説だって?いやいや、おっさんたちよ今こそラ イ麦畑を読もう!オレだってホールデンみたい トム・ソーヤーが最低のクソガキ な職業を夢見るアラフォー世代。なんならホッ であったのに対して、 ハックは最高に格好良い、 プ畑でもいい。ホールデンがキャップを後向 俺たちのヒーローである。 (蜷川) きにかぶっているのは何故でしょう?(黒澤) ブラッド・メリディアン □ コーマック・マッカーシー 黒原敏行訳 早川書房 スロー・ラーナー □ トマス・ピンチョン 志村正雄訳 ちくま文庫 戦争地獄図 この本を読めれば、 他のどんな小説も読める。 読者に一切の感情移入を拒む衝撃作。 (榎本) 短編集ではありますが、 ピンチョン入門というにはちょっと…。 それでも表題作と「エントロピー」は 面白く読めました。 (小木曽) 父の遺産 イン・ザ・ペニー・アーケード □ フィリップ・ロス 柴田元幸訳 集英社文庫 □ スティーヴン・ミルハウザー 柴田元幸訳 白水uブックス 我々への贈りもの 父が何を残したかというより、 我々がそれをどのように受け継ぐか。 (榎本) 第一部が最高。 勿論他のも良いけど、 「アウグスト・エッシェンブルク」の 衝撃は忘れられない。 人形好きは必読。(蜷川) ディフェンス 舞踏会へ向かう三人の農夫 USA □ ウラジーミル・ナボコフ 若島正訳 河出書房新社 鮮やかにルークを捨てる。 ルージンの妻が演じた役割は、 ルークを奪うために h8 から a8 へと 翻弄させられたクイーンのようだ。 なんてね。(蜷川) □ リチャード・パワーズ 柴田元幸訳 みすず書房 写真から話が 膨らむ3D小説 三つの時間と空間の異なる物語が、 アメリカの歴史を語る。 (榎本) 23 驚異の2ト ッ プ ものだけが作品 を 豊 か に す る 。 キューバ 文学の領域にお い て は 、 た だ 驚 異 的 な ︱︱カルペンティエル Cuba この世の王国 □ 夜明け前のセレスティーノ アレホ・カルペンティエル 木村榮一他訳 叢書アンデスの風 春の祭典 □ めくるめく世界 アレホ・カルペンティエル 柳原孝敦訳 国書文学の冒険 追跡 アレホ・カルペンティエル 杉浦勉訳 叢書アンデスの風 El Salvador オラシオ・カステジャーノス・モヤ 寺尾隆吉訳 現代企画室 崩壊につぐ崩壊 社会、国家、民衆、家族、世代、夫婦、親子…。 多くのものが崩壊し、ひとつの文学が構築される。 (木村) Trinidad and Tobago ミゲル・ストリート □ V・S・ナイポール 小沢自然・小野正嗣訳 岩波書店 「ぼく」と出会いたい 「ぼく」と出会うと、 人はこんなに芸術的な人生を送れるのだ。 16 人の夢の話。 (榎本) Trinidad and Tobago ドラゴンは踊れない アール・ラヴレイス □ 中村和恵訳 みすず書房 二日間の為の一年。 スティールバンド、カリプソ、そしてカーニヴァルの 熱狂。ディケンズのように丹念に描かれた人々の声を 聴け。くそくらえ! フラー!(蜷川) 24 □ レイナルド・アレナス 鼓直・杉山晃訳 国書文学の冒険 2 行目にはもうほら話が始まる p.9 を読んでみて下さい。 1 行目は至って普通。 2 行目から疑問を感じ、 3 行目にはすでに混乱。 4 行目から楽しくなります。 (木村) 歴史は流動体 内面描写が少ないのに これほどまで登場人物が 生き生きしている。 語らずとも語る小説。 (榎本) カルペンティエルに追いつけ! テキストにまじ翻弄されるから 気を付けて追いかけろ! (榎本) □ レイナルド・アレナス 安藤哲行訳 国書文学の冒険 無秩序世界のエネルギー 音楽が鳴り響く 西欧が侵入してくる大地だからこそ、 「頭かちわったる」と、とりあえず じいさんが斧持って 耳をすませば聞こえてくる音楽。 (榎本) この国なら地震にも負けない。 (木村) やってくるような話です。 □ 崩壊 □ キューバはもともと口承文学だっ た。口伝を絶滅させ、文字をもたらし たのは、かの有名なコロンブス。それ 以降、この国はスペイン語で小説を書 くようになる。今回取り上げた2トッ プはカストロ政権下で文化的活動の中 心だったカルペンティエルと非社会主 義者の反逆者アレナスという、ポジ ション争いでもある。 (榎本) グアテマラ伝説集 □ Guatemala M・A・アストゥリアス 牛島信明訳 岩波文庫 さようならグアテマラ 訳の分からない数々の伝説と、 突如現れる不気味な絵。 グアテマラに行きたいと全く思わない奇跡の一冊。 (木村) ◆出場停止中の名選手たち◆ ○河野多惠子『幼児狩り・蟹』 →妄想誘拐という暗黒シチュエーションなの に素敵。実は単行本に入っているけど再文 庫化希望します。 ○島田雅彦『彼岸先生』ほか初期作品 →彼なしに八十年代は語れない。芥川賞六回 エントリー(最多) 、無冠の貴公子。 ○小林恭二『瓶の中の旅愁――小説の特異点を めぐるマカロニ法師の巡礼記』 →タイトル長いな。 ○猫田道子『うわさのベーコン』 →誤字脱字だらけというかなりヘンな小説。 ○塚本邦雄『百珠百華――葛原妙子の宇宙』ほか多数 →塚本は評論を書いても小説になる。 その他、多くの歌集・句集。希少さがいいのだけれど、 すぐに読めなくなるのは悲しい。短歌、 俳句ラブ! (梅 ) サルバドール・エリソンド 田沢耕訳 叢書アンデスの風 人の命の軽さ この人は命をどうとも 思ってないのだろうか。 彼にとって生も死も同価なのか。 (榎本) 死とは究極のエロティシズム 「凌遅処死」という処刑は 実際に行われたのだろうか? (榎本) アウラ・純な魂 知への賛歌 □ カルロス・フエンテス 木村榮一訳 岩波文庫 □ ソル・フアナ 旦敬介訳 光文社古典新訳文庫 出会いのおもしろみ 人と人との出会いの シーンもおもろいけど、 マヤ、インカ文明と近代の 出会いもおもろい。(榎本) 詩に奉仕する 詩を書くためには 修道女になるしか 方法がなかった。 (榎本) 老いぼれグリンゴ 血と暴力の国 □ カルロス・フエンテス 安藤哲行訳 河出世界文学全集 □ メキシコが生んだ純粋悪。 社会や環境が悪を生み出した、 なんてよく言うけれど、 そんな言い訳では 解決されない悪もある。 (木村) フリアとシナリオライター Peru マリオ・バルガス=リョサ 野谷文昭訳 国書文学の冒険 Mexico コーマック・マッカーシー 黒原敏行訳 扶桑社ミステリー 私はアメリカ人 アメリカ人であることの絶望。 グリンゴ爺さんは 死ぬためにメキシコへやってきた。 祖国へ反逆するという愛国心。(榎本) □ 私を迫害するこ と で 、 世 界 よ 、 お前は何の得を す る の か ? □ 死んでも蘇 る ファラベウフ フアン・ルルフォ 杉山晃訳 叢書アンデスの風 ︱︱ソル・フアナ □ メキシコ 燃える平原 マリオは血の繋がらない叔母に恋をするというのに この雰囲気はなんだろう。すごくさわやか。 対して、ペドロ・カマーチョは…。(榎本) ◆出場停止中の名選手たち◆ ○バルガス=リョサ『世界終末戦争』 →リョサの最高傑作を今すぐ復刊せよ! ○マッカラーズ『心は孤独な狩人』 →大学生の頃、大学生のときに母が買ったもの を貰った。どこの古本屋でも見たことがない。 ○目取真俊『魂込め(まぶいぐみ)』 →沖縄の遠野物語にして中上健次。 口からやどかり出てきます。 ○津原泰水『ペニス』 →津原泰水のどうしようもない無力感漂う世 界を味わうにはやっぱこれじゃないと。 ○ヘッセ『ガラス玉演戯』 →俺持ってるよーん。蜷川ざまあみろ。 ○ディケンズ『ピクウィック・クラブ』 →絶対に読まれなければならない小説がそこ にはある。これが我々の原点である。 (榎本) 楽園への道 □ マリオ・バルガス=リョサ 田村さと子訳 河出世界文学全集 Peru ゴーギャンはすべてを捨ててタヒチへ。 フローラは平等社会の設立へ。 2人が歩んだ楽園への道は、 その足跡のことだ。 (榎本) 海に住む少女 Uruguay ジュール・シュペルヴィエル □ 永田千奈訳 光文社古典新訳文庫 透明な物語 透明だからさらっと読める。でもさらっと 読むと見失う。ゆっくりと読むと見えてくる、 透明なものの形が。 (木村) ロートレアモン全集 Uruguay イジドール・デュカス □ 石井洋二郎訳 ちくま文庫 どこまで読めるか根比べ。 「あんたと意見交換するなんて できない相談だよ」――52 ページ 完全に同感です。 (蜷川) 25 フーリガン だ ら け アルゼ ン チ ン 真に現実を研究 し よ う と す れ ば 、 法 則 ではなく、それ か ら は ず れ た 例 外 に 目 を向けなければ な ら な い 。 ︱ ︱ ジ ャ リ Argentina モレルの発明 □ 悪魔の涎・追い求める男 アドルフォ・ビオイ=カサーレス 清水徹・牛島信明訳 水声社 フリオ・コルタサル 木村榮一訳 岩波文庫 伝説の奇書。 南米らしからぬ、どちらかと言うと チェスタトンやスティーヴンスンの 系譜に連なる小説。 ラテンアメリカ文学に興味がなくても、 これだけは読んで。(蜷川) またもや彼は 悪魔を召喚してしまった。 しかも、 たった 2 ページで。 (榎本) 脱獄計画 蜘蛛女のキス □ アドルフォ・ビオイ=カサーレス 鼓直他訳 ラテンアメリカ文学選集 □ マヌエル・プイグ 野谷文昭訳 集英社文庫 真実はどこだ 存在しない人間のことを考える。 非現実が日常になると、 現実が幻想になる。(榎本) 映画好きが高じて書かれた、 南米流のボーダーレスな自意識と 西洋的メタフィクションの調和する 傑作ホモ小説です。 (小木曽) 楽園の犬 ブエノスアイレス事件 □ アベル・ポッセ 鬼塚哲郎訳 ラテンアメリカ文学選集 交錯につぐ交錯 大航海時代と現代 新大陸と旧大陸 ほんととうそ(榎本) マヌエル・プイグ 鼓直訳 白水uブックス 要するに、 エロ女と欲情男が出会って、 悲劇に進んでゆくって話です。 そりゃ、 うまくいくわけがないよね。 (榎本) ホルヘ・ルイス・ボルヘス 木村榮一訳 平凡社ライブラリー バベルの図書館に住みたい。 これはそんな残念なことを 公言するような人が 集まったフェアです。 無傷で帰れると思うなよ。(蜷川) 思索は現実を超える 「アヴェロエスの探求」を読むと、 詩を読みたくなる。 (榎本) 創造者 砂の本 □ ホルヘ・ルイス・ボルヘス 鼓直訳 岩波文庫 □ ホルヘ・ルイス・ボルヘス 篠田一士訳 集英社文庫 ポッケに入る『創造者』。 謎の文庫化、万歳! 「率直に言って覚えていないのだ、 あの晩、実際に自殺したのかどうか」 ――p.23(蜷川) 本のページがみるみるうちに 指の間にはさまれてゆく…。 始まりもなければ終わりもない。 砂の本。 (榎本) 幻獣辞典 ボルヘス怪奇譚集 □ ホルヘ・ルイス・ボルヘス 柳瀬尚紀訳 晶文社クラシックス 幻獣って それあなたのこと ですやん! ボルヘスさん!(榎本) 26 図書館はパン、あるいはピラミッド、 あるいは他のいかなるものでもあり得る。 □ Argentina □ ボルヘス&カサーレス 柳瀬尚紀訳 晶文社クラシックス 短ければ短いほどいい、 とボルヘスが言う。 そうね、とカサーレスが言う。 そこで 2 人は 2 ページくらいで 終わる作品を世界から集める。 なんて、いい奴らなんや。 (榎本) バベルの図書館 エル・アレフ ︱︱ボルヘス ホルヘ・ルイス・ボルヘス 鼓直訳 岩波文庫 □ アルゼンチン 伝奇集 □ □ 予告された殺人の記録 □ 90 歳のじじいが 14 歳の少女に恋をする。 そして生きがいを見つける。 恋ってすごいね。 (榎本) まとわりつく血の匂い 始めから終わりまで、 ずっと漂う血の匂い。 極限的な第三者の目が薄気味悪い。 (木村) 幸福な無名時代 百年の孤独 □ ガブリエル・ガルシア=マルケス 旦敬介訳 ちくま文庫 □ ガブリエル・ガルシア=マルケス 鼓直訳 新潮社 ジャーナリストのガルシア=マルケス ルポのレベルを超えた、 驚異的現実の数々。 語り継がれた土地の話である。(榎本) ブエンディアだらけ。 「どいつもこいつもマルケス、マルケス、 うるせえんだよ」と思いながら読んだの に面白かったから、間違いなく面白い。 評判が良すぎて嫌になってる僕みたいな 人は、この機会に是非。 (蜷川) ロサリオの鋏 エレンディラ □ ホルヘ・フランコ 田村さと子訳 河出 Modern & Classic 鋏は銃よりも恐ろしい ひとりの女がキスをします。すると男は 殺されます。鋏はそうやって使うもので はありません。(木村) □ チリ 細く長く 失われた世界を再建する力を 言葉に与えようとしたのです。 ︱︱イサベル・アジェンデ 嘘つけ。 ありえないことが普通に起こる、 それがいわゆるマジック・リアリズム。 例えばタマネギを刻みながら窓の外を 見たら、天使が飛ぶ練習をしてたり。 少しは驚け。(蜷川) イサベル・アジェンデ 木村榮一訳 河出世界文学全集 通話 □ ロベルト・ボラーニョ 松本健二訳 白水社エクス・リブリス 過去は未来へ、未来は過去へ 一族の歴史は繰り返す。 ぐるぐるぐるぐる廻り続ける。 『百年の孤独』を シュッとさせた物語。 (木村) 不安で暗い小説なのに なぜか心が暖まる。 ボラーニョのドライな愛に気付く。 すると、もう一度読みたくなる。 (榎本) エバ・ルーナのお話 隣りの庭 □ Chile Colombia ガブリエル・ガルシア=マルケス 鼓直・木村榮一訳 ちくま文庫 精霊たちの家 □ それは、羊ほど の 大 き さ が あ り 、 悲しげな乙女の 頭 が つ い た 、 見るも恐ろしい 毒 蜘 蛛 だ っ た 。 ガブリエル・ガルシア=マルケス 野谷文昭訳 新潮文庫 ︱︱ガルシア=マルケス ガブリエル・ガルシア=マルケス 木村榮一訳 新潮社 魔法の右足 □ コロ ン ビ ア わが悲しき娼婦たちの思い出 イサベル・アジェンデ 木村榮一他訳 国書文学の冒険 南米のシェヘラザード 「トスカ」は名作。 人生はミスだらけ。 選択してしまったら、 信じるしかない。(榎本) □ ホセ・ドノソ 野谷文昭・良子訳 ラテンアメリカ文学選集 私がここにいることの不安 「なんと多くの物事が、 ここでは無意味になることか」 (榎本) カモメに飛ぶことを教えた猫 アジェンデ大統領の社会主義政権を ルイス・セプルベダ 倒すため起きた軍事クーデタに翻弄さ □ 河野万里子訳 白水uブックス れたチリの作家たち。メキシコから 帰ってきた途端、逮捕されたボラー 「カニの肢にかけて!」 ニョ。スペイン亡命を余儀なくされた 一人だって生きていける。 ドノソ。そして、アジェンデ大統領の でも、独りなんだって気付いたとき、 いとこの娘、イサベル・アジェンデ。 人は生きていけない。 混乱を物語る必要性がこの国には確か 誰かと約束するって素敵なことだ。 にあったのだ。(榎本) (田川) 27
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