インベスターズ・デー 質疑応答要旨

インベスターズ・デー 質疑応答要旨
インベスターズ・デー 質疑応答
Q :
開催日:
12 月 6 日
場 所:
野村證券 日本橋本社講堂
回答者:
野村ホールディングス株式会社
取締役社長
氏家 純一
取締役
柳谷 孝
取締役
稲野 和利
取締役
戸田 博史
取締役
渡部 賢一
日本の証券会社あるいは投資銀行は数が多すぎ、ある意味供給過剰であると思うが、今後どの
ようになって行くか?
A :
(回答者 氏家 純一)一般的に日本の証券会社が供給過剰の状態に陥っているとは思わない。
しかし、取り扱う商品などで考えるとその様な所もあるかもしれない。第一に、株式のブロー
カレッジを主たる業務とする会社は、確かに需要と比べて多く数も減少すると思う。しかし、
取り扱う商品数を限定した新しい形態の会社、例えばオンライン・ブローカーなどは新規参入
も有ると思う。一方、投資銀行とブローカー・ディーラーを行っている大型の会社は数も限ら
れている。大きくは独立系、外資系、銀行系と分けられると思う。
まず、当社は独立系に属しており、どのグループにも属さないという利点を生かして、ビジネ
スを拡大していく。外資系は、現在規模を縮小してきているが、これは日本のビジネスの将来
性が無いと判断したというよりは、本国のビジネス環境が悪化しているという要因があると思
う。銀行系については、まだ歴史が浅くこれからの展開を見て行く事になると思う。
Q :
グローバル・ホールセールの話の中で、「ターンアラウンド・ビジネス」などでリスクを取っ
て行くと言う話が有ったが具体的にどのようなリスクを取っていくのか?また、ターンアラウ
ンド・ビジネスにスペシャリストが居ないという話が有ったが、野村はどうなのか?
A :
(回答者:戸田 博史)現在リスクを大きく取れていない背景は、ロシア危機以前当社は、海
外の各拠点が与えられた資本の範囲内でかなり自由にリスクを取っていた。しかし、ロシア危
機を契機にグローバル・マトリックス体制を取りリスク・コントロールを東京で集中して行う
体制とした。現在のリスクの量はピーク時と比べるとおよそ 4 割ほど低下している。今は環境
が厳しくなると自然とリスクが減少する体制となっている。マネジメントからリスクをとる事
にインセンティブを与える事が必要。再生ビジネスにおいてリスクをとろうと考えている。
一方、スペシャリストが少ないという点については、アドバイザリー契約を結んでいる R.ギド
リン氏とその他ターンアラウンド・ビジネス専門の弁護士の方と週に二回程度のペースで研究
会を持っている。この研究会には当社の投資銀行部門の人間が 20 名程度参加しており現在急
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速にノウハウとネットワークを作り上げている。この点で当社の優位性は他社との比較でも相
当高まってきていると考える。
Q :
野村には社外役員が 2 名いるが、米国では社外取締役が上手く機能していないという話も有る。
野村のコーポレート・ガバナンス体制はどのようになっているか?
A :
(回答者:氏家 純一)たしかに、社外取締役がいるからコーポレート・ガバナンスがしっかりで
きるという訳で無いと言う事が、米国の例で証明されたと考えられる。当社が営んでいる証券
業は最近まで規制業種であったので、規制業種でない業種でグローバルに成長してきた会社の
方、またコーポレート・ガバナンスを専門に研究し実行している専門家の方に社外取締役をお
願いしている。また、社外監査役についても、業務をグローバル展開している会社の方にお願
いしている。当社の経営の補完・補強機能を社外の方に期待している。
Q :
野村は現在 1 兆 7000 億円ほどの株主資本があるが、この内自己投資に振り向ける事ができる
金額はどの程度と考えているか?
A :
(回答者:渡部 賢一)今具体的な金額を述べることはできないが、現在欧州の旧 PFG でのポ
ートフォリオ額が約 2,650 億円と日本国内の子会社における投資額が約 200 億円弱ほどあり、
この比率が将来的に逆転してゆくような状況は、国内のターンアラウンド・ビジネスの状況を
考えると正しいことだと思う。また、現在財務としては、エクイティと長期性の借り入れを一
定の比率でコントロールしておりその意味で、必要なリスクを取る準備は出来ている。
Q :
そのような自己投資の、投資期間と投資から得られるリターンはどの程度と考えているか?
A :
(回答者:戸田 博史)野村グループの目標 ROE が 10 から 15%であるなか、プライベート・
エクイティ投資という性格を考えるとそれよりも高い目標が必要となる。絶対的な数値と考え
ているわけではないが 20%程度に設定している。
期間についてはおよそ 4、
5 年を考えている。
また、現在国内における投資額は 200 億円弱の金額を 5、6 社にしか投資できていない。これ
は、様々な案件がこれまでもあったがメインバンク、あるいはサブ・メインバンクとの関係で
なかなか案件を進めにくかった事が背景にあるが、昨今銀行の行動や認識に変化が現れており、
これから半年から一年のうちには状況はかなり変化しているのではないかと考えている。また、
当社の有する国内のネット・ワークは競合他社に対して優位でありその点からも多くの案件を
取り込むことが出来る体制にあると思う。今後金融機関の関連するビジネスにもさらに大きな
変化が予想されるため組織的に取り組んで行きたい。
Q :
資産管理課、FA 課 SA 課、お客様サービス課とチャネルを明確に分けてきているが、過去の
組織改正と比較してなにが違うのか?また、FA 課 SA 課と分けることは戦力の分散化になら
ないか?また、各課に属する人員数を教えてほしい。
A :
(回答者:柳谷 孝)今回のチャネル対応のポイントは、まずお客様のニーズがありそれに対
して当社の体制を変化させたものであると考えている。その意味で、経営指標の考え方も、お
客様一人あたりの資産、費用というような形に変化させている。個人、法人マーケットをセグ
メント化しそれぞれのセグメントの属するお客様が求めるコア・バリューにフォーカスしサー
ビスを提供してゆくというアプローチを現在行おうとしており、FA 課 SA 課に分けたことも
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その結果である。10 月 1 日よりこの変更を行ったが、ミッションを明確化したことにより出
足は順調である。各課の人員数は、資産管理課が約 1500 名、FA,SA 課は、FA,SA 社員が 2100
名弱、総合職が約 270 名、お客様サービス課は 1800 名弱になっている。
Q :
資産管理課の富裕層にたいするアプローチを進める上でどのように質の向上を図っているの
か?
A :
(回答者:柳谷 孝)現在資産管理課では「スピリット研修」という名前でお客様に対する問
題解決提言能力を高めるための研修を行っている。オーナー経営者の方にとっては、資産運用
という点だけではなく会社経営そのものも非常に重要な問題であり、資産管理課では経営その
ものに対する提言能力の強化を図っている。また、FA という制度はおよそ 3 年前から導入し
ているが、現在資産相談チャネルの 57%が FA 社員となっている。FA 社員は株式も取り扱え、
より専門性の高い提言を行うことが出来る。
Q :
資産管理課、FA 課 SA 課、お客様サービス課の収入構成を教えてほしい。
A :
(回答者:柳谷 孝)収入構成の具体的数値は開示していないし期によって違いもあるが、資
産管理課、
資産相談チャネル、お客様サービス課でおよそ 2 対 1 対1程度の構成となっている。
Q :
ウエルス層の求めるものでやはり税金に関する悩みが一番大きいと聞くが、野村證券はそのよ
うな悩みにどのようなサービス、商品を提供できるのか?
A :
(回答者:柳谷 孝)ウエルス層の求めるコア・バリューは資産の運用、保全、継承というもの
になる。その意味で当社が出来るものまた法律的に提供が可能なのかどうか検証しなければな
らない物があり、10 月以降プロジェクトを立ち上げて精査を進めている。来年前半をめどにプ
ロジェクトからの提言を受けどのようなことを行えるか考えていく予定だ。
Q :
ホールセールにおいて、証券化ビジネスで野村の名前をあまりリーグテーブルで見ないが取り
組みを教えてほしい。
A :
(回答者:戸田 博史)証券化に関わるお客様は大きく分けて、金融機関と事業法人になると
思う。金融機関の証券化ビジネスでは、生命保険会社の基金の証券化、銀行の住宅ローンの証
券化、CLO、住宅金融公庫の RMBS などかなりの実績があり、トップに位置すると思う。一
方、事業会社の証券化の対象は、保有不動産とバランスシートの左上の部分、つまり手形など
の金銭債権の証券化である。後者の部分は確かに当社は強くなく、銀行系証券会社がほとんど
行っている銀行貸付の代替として行っているものが多いと考える。ただしこの分野はスプレッ
ド機会も大きくなく戦略的に強化しようとは考えていない。一方、不動産の証券化は今後大き
なビジネスチャンスとなりうると考えているが、今は銀行の貸し出しレートが低いので、事業
会社側にインセンティブが働いておらず、すぐには大きな量の不動産証券化が行われないと考
える。一方、海外においては米国、欧州において CMBS ビジネスをすすめている。日本国内
において CMBS ビジネスが大きく伸びるような状況になった時にはすぐにここでの人員を日
本に展開できる体制となっている。
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Q :
国内営業部門においては、新規参入組みの撤退も始まりつつある。株式などの手数料は引き下
げ圧力がかかり続けるが、商品供給の面からも価格支配力のある商品をどのように提供してい
けるのか、あるいはどの程度そのような視点から価格支配力のある商品が占めているのか?
A :
(回答者:柳谷 孝)まず販売する商品があるというよりは、お客様の多様なニーズがあって
そのようなニーズの違いを正しく発見し、その発見に基づいて多様な商品から最も適切な商品
を提供してゆくことが重要と考えている。一方で、圧倒的な顧客基盤を有するがゆえに、世界
中の競争力のある商品を提供する会社が、当社に販売パートナーになって欲しいと考えること
も当社が価格支配力のある商品を提供できる一因となっていると考えられる。
(回答者:稲野 和利)商品としての投資信託は、新しい商品を開発して発売するだけでは差
別化の出来た商品とはいえない。商品そのものはすぐに誰でも真似ができる。問題はその後い
かに実績を積み上げて行くかである。日本の投資信託の過去を考えると、良いパフォーマンス
があがっている時に残高が減少するという状況があった。これは、販売会社と投資家両方の行
動様式の問題だと考えられる。われわれとしては、良い商品を提供することによって、その商
品を正しく取り扱ってもらえる販売会社と提携し残高が増加して行くという形が望ましい。投
資信託には一つの販売会社専用の専用商品と、多様な販売経路を使う商品の二つのタイプがあ
るが、専用型で長期的に商品の魅力を高め、付加価値を与えることが出来る場合には、価格支
配力のある商品としてゆくことも長期的には可能であり商品戦略の一つとなりえる。
(回答者:戸田 博史)確かに、誰でも取り扱える商品の価格には低下圧力がかかる。当社の
強みは国内営業部門で把握したニーズをすばやく商品組成に結びつける点にある。いろいろな
セカンダリー商品を使って新しい商品を作って行くやり方が現在のマーケット・ニーズに適合
したやり方だと思っている。他社が真似できない商品を開発していくことに重点をおいている。
Q :
アセット・マネジメント部門の ROE は野村グループの目標 ROE の 10∼15%よりも低いが何
時までにどのようにその目標に到達するつもりか?
A :
(回答者;稲野 和利)現在の厳しい業務環境から考えると、今の時点で何時その目標に到達
することが出来るかを言うことは出来ない。しかし、どのようにという点については、現在「運
用力強化プロジェクト」を進める中で、遅くても来年 4 月には運用力を向上させるための数種
類の具体的施策が実行に移されていく。収益性の向上のためには、一つには時間をかけお客さ
まの信頼を得、運用資産を増やしていくかということと同時に、運用資産のイールドを高める
ための高収益プロダクトを開発していかねばならない。しかし、アセット・マネジメントのビ
ジネスは、商品が開発されたり運用力が強化されたからと言って、すぐに状況が変わるもので
はなく、最低でも一年単位の時間が必要になる。アセット・マネジメント部門のヘッドとして
必要な施策をとり、ROE の向上を目指していく。
Q :
買収戦略をとらずにグローバル展開を目指していく中で、どのような外資系会社のパターンを
求めていくのか?
A :
(回答者:戸田 博史)現在、どこかのパターンを求めていくことはない。当社の有する顧客
基盤と日本経済の状況の、特異性を考えると、どこかのパターンを求めていくよりは、今当社
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の考えている戦略を実行していくことが唯一のやり方だと考える。
(回答者:氏家 純一)日本の広義の金融システムは特異なものだと考えている。銀行を中心
とする金融システムが機能しなくなり、その状況が今後数年間かけて次の金融システムに移行
するという状況が、当社にとって非常に大きなビジネス・チャンスになる。従って、他国のあ
る会社のビジネス・モデルのパターンを求めていく事は難しい。
Q :
国内営業部門の株式保有口座の一年間の平均的な売買回数は、おおよそどの程度か?
A :
(回答者:柳谷 孝)およその数値であるが、平均すると1年間の売買回数は 2 回から数回程
度になる。
Q :
アセット・マネジメント部門の問題点と今後どのように変えていくのかという点を具体的に聞
きたい。
A :
(回答者:稲野 和利)問題点の第一点は、NAM のなかに付加価値の源泉はあるが、それが組
織の中に分散してしまい集積が行われていないこと。第二に、資産運用業はシステム装置産業
の側面を持つが、もともと投資信託の基準価格の計算や、顧客レポートの正確性を求めて設計
されているために運用支援の発想が十分に反映された設計になっていない事。具体的な例とし
ては、付加価値の源泉としての調査能力という点からは、現在アナリストが約 20 名いるが、
このアナリスト部隊の人的な面も含めた強化。また、計量的な分析能力を組織的にアクティブ
運用の支援に活用するなどである。
Q :
投資信託の信託報酬について、成功報酬型とすることをどう考えるか?
A :
(回答者:稲野 和利)投資顧問ではすでに成功報酬型と言う考え方は、一般的なものになっ
ている。一方で投資信託の信託報酬では、ある期間の成功報酬をどのように保有期間の異なる
受益者に公平に負担してもらえるかというテクニカルな問題がある。基本的には、良い運用結
果をだして受益者の方に満足してもらう事が一番重要であると考えている。また、成功報酬と
いう考え方がどこまで広く投資家に受け入れられるものか疑問を感じている。
Q :
国内営業部門において、セグメント上の収益は決して高くなかったが人的資本からの付加価値
はあったのか?リストラをする必要はないのか?
A :
(回答者:柳谷 孝)第 2 四半期の業績と言う点からは、当期新証券税制に関するセミナーや
相談に時間が取られたという点と、ワールドカップに関する費用が一部第 2 四半期に計上され
たということからレベル的に高くなかったといえると思う。しかし、株式や外債の新規口座、
株券の預かりなど中期的に評価するべき成果も上がっている。下期は、新証券税制についても
社内のノウハウが蓄積されたこともあり、お客様への投資相談に向けられる時間も十分出てき
ている。一方、人材については当社の競争力の源泉であり、お客様の相談に十分対応できる人
材の育成が最重要課題であると認識している。ただ、固定費の変動費化には取り組んでいる。
第一に、より実績に応じた給与体系となっている FA 社員の数は、資産相談チャネルの 57%に
なっている。第二に、非営業社員の中では業務の繁忙度合いに応じて増減できる派遣社員を活
用しており、現在およそ 1000 名程度がいる。第三に、賞与の業績への連動化も進めている。
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リストラという点については、業績の結果を極端にリストラという形で責任追求すれば、お客
様へのサービスの低下や社内の知識、ノウハウの流出がおきる可能性がある。経営としては、
固定費の変動費化を進めながら、人材の養成に努め他社との差別化を進めていきたい。
Q :
M&A や株式の引受ビジネスは現在利益率が高すぎるのではないかと思うが、今後低下してい
くようなことはないか?人的資源の再配分も必要ではないか?
A :
(回答者:戸田 博史)M&A や株式の引受ビジネスで全てのフィーが高く、今後低下して行く
とは考えていない。どちらのビジネスにおいても、お客様の側ですでに一定の方向感をもち案
件を進めていくような場合は確かに、フィーは低下傾向に入っている。一方、お客様に対して
経営戦略はどうすべきであるかというコンサルティングを行った結果としての M&A や株式引
受ビジネスの収益性は高い。このような案件の複合化により、全体としてのフィー収入は拡大
できると考えている。また、人的な資源の配分という意味では、案件自体の始まりのコンサル
ティングに人員を再配分することにより、付加価値の増加が図れ全体の収益性の向上につなが
る。
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