2003年 第4巻第1号(通巻8号) ISSN 1345-7497 監修 大阪府立母子保健総合医療センター 総長 大阪大学名誉教授 岡田 正 巻頭言 EBMに根ざした臨床栄養学の普及と進歩...................... p.2 大阪府立母子保健総合医療センター 総長 大阪大学名誉教授 岡田 正 EVIDENCE BASED NUTRITION NST/ASSESSMENT NETWORK 患者が住み慣れた町でいつでも同じ栄養サポートが 受けられるよう, TNT方式の栄養管理を 地域全体で実践できるNSTに............................................... p.3─5 公立松任石川中央病院 特別養護老人ホーム柏柳の里 看護主任 中村 悦子 高齢褥瘡患者の栄養管理に有用な 高カロリー栄養剤エンシュア ®・Hの有用性............... NS PHARMACIST 製剤・薬理学的特徴とコストベネフィットからみた 経腸栄養剤の選択ポイント....................................................... p.6─7 山形大学医学部附属病院 助教授・副薬剤部長 東海林 高齢者経管栄養療法におけるフラクトオリゴ糖配合 TM アイソトニック栄養食品 (ジェビティ ) の 便通・便性改善効果 ...................................................................... p.12 ─ 13 徹 金沢西病院 外科医長 菊地 p.14 ─ 15 勤 エンシュア ®・H併用療法によりQOL改善を認めた 腹痛+便秘型過敏性腸症候群の治療経験 ....................... p.16 ─ 17 MEETING REPORT 第2回 信州NST研究会................................................................. p.8─9 東京警察病院消化器センター内科 医幹 鈴木 剛 ほか 第8回アジア静脈経腸栄養学会 ―プルモケア ®のPEG下24時間持続注入の有用性―............................... p.18 ─ 20 Abbott Co-medical Seminar..................................... p.10─11 国家公務員共済組合連合会 高松病院内科 粟井 慢性呼吸不全患者における栄養管理 一哉 巻 頭 言 EBMに根ざした臨床栄養学の普及と進歩 大阪府立母子保健総合医療センター総長 大阪大学名誉教授 岡田 正 ひと昔前に外科栄養黎明期に大学病院で栄養研究を行っていた人達が市中病院の院長或 いは部長として異動すると,まずは院内での栄養チーム (NST) の結成或いは栄養パスの作 成に本腰を入れて取り組み,職員の意識改革に乗り出す時代となっている。今回の NST/ASSESSMENT NETWORK 訪問先・公立松任石川中央病院外科部長の八木雅夫先 生も以前は金沢大学第二外科教室において栄養研究を行い活躍されていたが,臨床の第一 線でトータルの栄養管理を定例化し,その普及を目指して努力されている。実際にそのよ うな努力によって院内全体の栄養管理が統一され,その質的向上のみならず患者や家族の 医療スタッフへの信頼度が増したとの報告がなされている。NSTの確立と口に出して言う ことは簡単であるが,実際には強い推進者とその協力者が必要である事は言うまでもない。 中でも推進者=リーダーは栄養学の知識と技術に秀でており,指導者の素質がなければな らない。 中心静脈栄養法が1960〜70年代にわが国に導入され,徐々に普及・進展を遂げてきたが, 当時関係科以外の病棟医師達からは理解されず,広く普及を図るには大きな抵抗が見られ た。今から考えれば,微量物質投与の不足,肝障害,或いは感染症など未知の問題が多く, 一般臨床医が普遍的な知識として受け取るにはまだまだ多くの隘路があった事も事実であ ろう。そしてこの領域の進歩により安全性が確立され今こうして各地にNSTを持った医療 施設が増えつつあることに対し快哉を叫ばずにはおられない。今号も各施設から貴重な症 例報告がなされている。ベッドサイドから得られた患者の観察所見,印象の記載は新鮮で まことに得がたいものである。これらの経験が次の時代に生かされることを心から願う次 第である。 ただ,ここで一つわれわれが心しておくべきは現在はEBMの時代であるという事であ る。すなわち,公平な立場から他群と比較検討を行わない限り,得られた所見・結果は必 ずしも真実とは言いがたい。比較する対象も理想的には同じ検者によって測定・観察され たものである事が望ましいが,少なくとも過去の報告例或いは自己の今までに得てきた経 験との比較検討が必要である。臨床の世界において「栄養が大切」, 「栄養学的観点からの 見方が大切」といわれて久しいが,EBMに則った観察記録,確実な診断,更には的確な 治療の集積がなければ真の進歩は見られないであろう。 新年早々厳しいことを言ってしまったが,かって「免疫」という言葉が普及すると共に 一般用語化し,さまざまな解釈・使い方がされるようになったと同様,いま「栄養」なる 言葉が同様の運命を辿りつつある。因みに栄養とは科学的には「細胞内外での各栄養素の 受け渡し」の事を称する由である。真の臨床栄養学の進歩を願ってやまない。 2 Nutrition Support Journal 8 NST/ASSESSMENT NETWORK 患者が住み慣れた町でいつでも同じ栄養サポートが 受けられるよう,TNT方式の栄養管理を地域全体で 実践できるNSTに 公立松任石川中央病院 公立松任石川中央病院(写真1)では,平成13年6月に病院長直属の組織としてNST(Nutrition Support Team)が設立された。その後の約1年間で,各部署がその専門性を活かして役割分担を工夫することにより, 栄養サポートという新たな業務を軌道に乗せた。そして,今日ではTNT(Total Nutrition Therapy)を共通言 語に,栄養管理の病診連携をめざし,地域医療圏での栄養管理に関する知識の啓発・普及を展開しはじめている。 今回は, 公立松任石川中央病院バージョンのNST の今日までの歩みと,今後の展望についてレポートした。 公立松任石川中央病院NSTのChairmanを務める外科 部長の八木雅夫先生 (写真2) が栄養管理の重要性に気づ いたのは,昭和50年代前半,医学部を卒業し,外科医と してスタートした直後だったと話す。 適切な栄養管理ができずにいた悔しさがスタン ダードな臨床栄養治療法の普及を願う気持ちに 写真2 八木雅夫先生 昭和52年,和歌山県立医科大学卒 業,平成10年より現職。 入局先の金沢大学医学部附属病院第二外科(消化器外 で開発されるとともに,補給方法の技術改善が行われ, 科)には,多くの膵臓癌,食道癌患者が入院していた。 栄養補給が安全かつ効果的に行えるようになった。栄養 「栄養剤や補給方法が今のように十分ではなく選択肢が 学に関連した学会や雑誌で,栄養管理の有効性が報告さ 少なかったことに加え,医学部での臨床栄養に関する教 れるようになった。最近では,医学部教育に臨床栄養の 育は皆無で,私はその状況を改善できるだけの知識も技 講座が増えはじめ,また 臨床栄養治療・教育のグロー 術ももち合わせていなかった。毎日,自分の無力さを責 バルスタンダード めながら,患者さんの栄養状態を改善する方法を必死で JSPENなどが協賛し,世界各地で展開されている医師 模索していた」と八木先生は,状況下で栄養管理と悪戦 向け臨床栄養生涯教育プロジェクト・TNTが日本にお 苦闘していた当時を振り返った。 いても始動した。 このようななか,経腸栄養剤が臨床に登場し,栄養の を目指し,ASPEN,ESPEN, TNTのコアスタッフである八木先生は,「癌治療医, 重要性を認識していた医師らの努力により,栄養管理は 特に食道や膵臓など消化器癌の治療医にとり,栄養管理 著しく進歩した。新しい輸液製剤や経腸栄養剤が相次い 能力は腫瘍の存在有無を判断する触診技術や画像読影能 力,あるいは腫瘍摘出術と同じぐらい重要である。臨床 栄養治療のグローバルスタンダードのTNTがある今日 では,それに基づいて栄養管理が実施されて当然だ」と 述べる。同病院では,消化器内科医2名,消化器外科医 3名がTNTを受講・終了し,彼らを中心にTNT方式の 栄養管理が実践されるようになったそうだ。 写真1 公立松任石川中央病院(石川県松任市) 昭和43年設立,305床,スタッフ383名(平成15 年1月10日現在) 栄養管理は,誰がいつどこで実践 しても同じTNT方式で ところが,その一方で,「1日必要カロリーを算出し 3 たら,それをすべてブドウ糖液に置き換え,短絡的に経 栄養管理研修会(月1回,約1時間)や病棟回診(毎週火 末梢静脈的に投与する,あるいは1日必要カロリーすら 曜日午後2時〜:外科・消化器科病棟 (写真4) ,水曜日 も算出せずにブドウ糖液を点滴静注するという医師がい 午後2時30分〜:その他の病棟) などのNST業務を遂行。 たことを否定できない」と八木先生は苦言を呈した。同 NSTの介入対象は,外科・消化器科病棟では入院患 時に,自らも,院内全体にTNT方式の栄養管理を普及 者全員だが,その他の病棟ではNSTへ依頼された患者 させる努力が足りなかったことを反省した。 である。このNSTへの依頼は,主として,各病棟に備 おりしも,中央検査室室長の高畠外美子さんから,八 え付けられたNSTノート(写真5)へ各主治医が希望や 木先生に「栄養管理に関する勉強会をして欲しい」との 要請を書く方法,あるいは各病棟の看護師らが主観的包 依頼があった。生理検査を受けに来る患者のなかには, 括的アセスメント (subjective global assessment;SGA) 痩せ細り,見るからに栄養状態の悪さがわかる人が少な を用いて,栄養管理が必要だと考えられる患者を抽出す からずいたからだ。高畠さんは,「検査室として,患者 る方法が採られている。SGAについて,導入当初,看 さんの栄養状態を改善するためにできることは何かない 護師らから強い反発があったと八木先生は話す。「SGA か。栄養管理をサポートするための有用な検査とは何か」 は,ある看護師が,患者さんとの会話や患者さんの見た を日々悩んでいたと話す。平成11年12月,八木先生は中 目の変化で,何となく栄養障害が起こるかも知れないと 央検査室のメンバーにTNT方式の栄養管理とNSTに関 いう危険性を感じるか否かで,栄養障害を予知・判断し して講義した。これに共感した高畠さんが,栄養管理室 ようというきわめて主観的なアセスメント法だからだ。 や薬剤部,看護部のスタッフに「ぜひ栄養管理の勉強会 アルブミン値や総たん白量などで栄養障害を科学的に判 へ参加してほしい」と呼びかけた。こうして,同院にお 断することがあたりまえだった看護師にとり, 私と他 いて,NST発足,つまりは全科型横断的・標準的栄養 の人とでは意見が食い違うはずだ , 日によって判断が 管理の実践へ向けた第一歩が踏み出され,平成13年6月 異なる と心配の声があがるのは当然。しかし,最近は, に病院長直属の組織としてのNSTが活動を開始した。 看護師らのSGAによるスクリーニングが機能するよう になった。この方法を活用すれば,NSTが全病棟をま SGAの判断に基づいてNSTが介入 治療方針は各部署からのスタッフで検討 わり,栄養管理が必要な患者さんを抽出することは不必 要だ」 (八木先生) 。 そして,回診前日までに,対象患者個々について,薬 同院のNST(写真3)は,病院長以下,八木先生が務 めるChairman,Director(薬剤室副技師長・山下忠明先 生),Sub-Director(高畠さんほか,副看護師長・岡野由 紀美さんと栄養管理室長・高田豊子さん)と各部署・各 病棟から2〜3名ずつ選定されたメンバーで構成されて いる。いずれのスタッフも,一般通常業務を行いながら, 写真4 外科・消化器科病棟でのNST回診 写真3 NSTメンバー Directorの山下先生(上,後列右から2番目),SubDirectorの高田さん(上,後列右から3番目),高畠 さん(上,前列左) ,岡野さん(下,左から3番目) 。 4 写真5 NSTノート (内科病棟) 各主治医からの希望や要 請などをNSTへ伝えるた めの連絡ノート。病棟に より形式は異なる。 図1 対象患者に関するデータ(各部署が持ち寄る) 剤室は栄養に関する使用薬剤(輸液,経腸栄養剤)の成 師の高橋ひとみさんは,「中心静脈栄養法(IVH)はそれ 分・組成一覧,栄養管理室は食事摂取状態からみた栄養 以外に選択肢のない患者さんにのみ施行されるようにな 摂取量,中央検査室は身体計測値,生化学検査成績,細 り,それに伴い,本来,行わなくてもよかったはずの看 菌検査結果など (図1) を作成,各関連部署に配布し,回 護が減り,やるべき看護に力が注げるようになった」と 診時にそれらデータをもち寄り,NSTメンバーと病棟 話す。また,病棟ごとに異なっていた看護師らによる胃 看護師らで適切な栄養管理方法を検討,主治医に提言し 瘻注入方法や,患者家族への胃瘻管理の説明方法などが ている。 全病棟で統一された。これにより看護業務の効率が向上 管理栄養士の高田さんは「多くの施設のNSTでは, 身体計測は栄養管理室が担当しているだろう。しかし, しただけでなく,栄養管理の質はもちろん,患者や家族 らの看護師に対する信頼が高まったという。 私たちはとても身体計測まで手が回らない……」と苦し さらに,NSTメンバーはTNTを基盤に活動している い胸の内を明かす。305床に対して,管理栄養士の数は ため,当然のことだが,メンバーの誰に質問してもほぼ わずか3名。高田さんらは通常業務をこなすのが精一杯 同じ回答を出す。これがNSTに対する信頼を高め,循 というのが現状だ。これに対して,高畠さんも八木先生 環器科や脳外科の医師らは患者の栄養管理をすべて も,検査室が身体計測を行うことで,患者さんに最も適 NSTに任せ,循環器専門,脳外科専門の診療により一 した栄養管理法を提供できるのであればそれでよく,管 層,専念できるようになったそうだ。 理栄養士が身体計測をするべきだという考えに囚われる ことはないと話す。 そこで現在,同院のNSTは,TNTを共通基盤として 地域医療圏での栄養管理の統一を進めている。その1つ TNTという共通認識さえあれば,医師,看護師,薬 として,地域医療機関のスタッフを対象にした栄養管理 剤師,臨床検査技師,管理栄養士が互いに協力し,それ 講習会を開催している(年2回,第1回目は平成14年5 ぞれが最もその専門性を発揮しやすいようにNSTを構 月11日実施済み)。講習会はミニレクチャー,ワークシ 築すればいいのだ。TNTは世界で1つだが,NSTのあ ョップ,グループディスカッションで構成され,内容は り方は病院の数だけあるのかも知れない。 TNTと同様だ。 同院は松任市とその周辺の野々市町,美川町,川北町 NSTの活動により各専門職本来の業務の質と効率 が向上,病院から地域へTNTを浸透させる段階へ より組織される17診療科,305床(精神30床含む)の医療 施設組合立病院で,地域の基幹病院として急性期医療, 高度専門医療を担っている。基本的に,入院治療の段階 公立松任石川中央病院版のNSTの活動により,病院 が終了した患者の治療は,外来,あるいは地域の医療機 全体の栄養管理はTNT方式で統一が図られた。たとえ 関で継続される。「栄養管理も,病診連携を進めていか ば,栄養補給ルートの選定も医師により基準が異なって なければならない」と八木先生。この地で,地域一体型 いたが,消化管が安全に使用できる場合は経口摂取ある のNSTが確立されることに期待したい。 いは経腸栄養が選択されるようになった。内科病棟看護 5 Nutrition Support Journal 8 NS PHARMACIST 製剤・薬理学的特徴とコストベネフィット からみた経腸栄養剤の選択ポイント 山形大学医学部附属病院 助教授・副薬剤部長 東海林 徹 経腸栄養法は,経静脈栄養法に比べ生理的であり,腸管を利用することで腸内細菌に対するバリア機能を強 化し,免疫,たん白代謝面での利用が期待される。日本静脈経腸栄養学会のガイドラインには,「消化管機能 があるかぎり経腸栄養を行うことが栄養管理の基本原則である」と明記されている。適正な経腸栄養法を展開 するためにはどの経腸栄養剤を選択すべきなのか。今回は,山形大学医学部附属病院副薬剤部長の東海林徹先 生に,製剤・薬理学的特徴とコストベネフィットからみた経腸栄養剤の選択ポイントをお伺いした。 いをもたらします。たん白質源がアミノ酸に近づくほど, 経腸栄養法が必要な患者のほとんどは 半消化態栄養剤が第一選択 残渣は少なくなり,浸透圧は高くなり,味は悪くなりま す。したがって,成分栄養剤や消化態栄養剤は残渣の点 で優れていると考えられますが,逆に浸透圧が高いため 各経腸栄養剤の製剤・薬理学的特徴 (表1) に基づいた に,水分が大腸に溜まり下痢を惹起しやすく,また経腸 使い分けのポイントを教えてください。 栄養剤を食事と考えると味の悪さにより患者さんのQOL 東海林 成分栄養剤,消化態栄養剤,半消化態栄養剤 は配合されているたん白質成分 (消化吸収) の相違により を損ねるという大きなデメリットがあります。さらに, 分けられています。つまり,成分栄養剤ではアミノ酸が, 特に成分栄養剤の長期間投与例では,必須脂肪酸欠乏予 消化態栄養剤ではジペプチド,トリペプチドが配合され 防のための脂肪乳剤の静注が必要となります。 ており,これらはほとんど消化を要さずに小腸で吸収さ 患者さんの精神的,肉体的負担を考えれば,半消化態 れます。一方,半消化態栄養剤は,低乳糖乳たん白が配 栄養剤が優れています。病態的にどうしても成分栄養剤, 合されており,胃・小腸でオリゴペプチドからアミノ酸 あるいは消化態栄養剤でなければならないという場合以 あるいはジペプチド,トリペプチドに消化され,吸収さ 外,半消化態栄養剤の選択が基本だと考えています。 つまり,半消化態栄養剤をどう選択するかが重要課 れます。 実はこのたん白質源の相違が,残渣,浸透圧,味に違 表1 題ですね。確か,半消化態栄養剤には,医薬品と食品 経腸栄養剤の主たる特徴 半消化態栄養剤 エンシュア・リキッドÑ エンシュアÑ・H 包装 消化態栄養剤 成分栄養剤 ハーモニックÑ-M ハーモニックÑ-F ツインラインÑ エンテルードÑ エレンタールÑ 250/500mL 250mL 200/400mL 250/500mL 250/500mL A液B液400mL 100g 総カロリー (kcal) 250/500 375 200/400 250/500 250/500 400 400 300 たん白質 (g) 8.8/17.6 13.2 8.76/17.52 12.0/24.0 12.0/24.0 16.2 18.4 14.1 たん白質源 カゼイン 分離大豆たん白質 カゼイン 分離大豆たん白質 カゼイン 分離大豆たん白質 植物性たん白質 乳清たん白質 低乳糖乳たん白質 卵白加水分解物 結晶アミノ酸 31.5 31.5 20.1 27 27 25 11.25 1.53 54.5 54.5 62.48 54 54 58.72 72 84.8 デキストリン 精製白糖 デキストリン 精製白糖 マルトデキストリン 精製白糖 マルトデキストリン 精製白糖 マルトデキストリン 精製白糖 トウモロコシデンプン マルトデキストリン デキストリン デキストリン 630 1250 29.3 脂質エネルギー 比率 (%) 糖質エネルギー 比率 (%) 糖質源 6 ラコールÑ 植物性たん白質 乳たん白加水分解物 低乳糖乳たん白質 ミネラル濃縮乳清末 80g 食物繊維 ビタミン・微量元素など ビタミンK1 (μg/1,000kcal) 亜鉛 (Zn) (mg/1,000kcal) 浸透圧mOsm/L ダイズフスマ 15 15 6.4 7 2.6 9.4 4 6 360 540 400 350 350 595〜640/kg 534 760 薬価(1,000kcal/円) 790 926.67 1,100.00 1,100.00 1,000.00 1,150.00 1,087.50 1,826.69 70 70 625 (記載なし) (記載なし) 表2 半消化態栄養剤(医薬品)と半消化態濃厚流動食(食品) の相違点 は必要です。エンシュア・リキッドÑあるいは エンシュアÑ・Hは亜鉛もビタミンKも含有して いるので推奨されると思います。 分類 医薬品 (薬事法) 食品 (食品衛生法) 半消化態栄養剤 半消化態濃厚流動食 三大栄養素,特に脂肪酸の種類や組成の違 いより,むしろビタミンや微量元素に配慮し, 配合でき 日本薬局方収載医薬品,日本薬局方外医薬品, 天然物 るもの 食品添加物収載化合物 食品添加物収載化合物 栄 養 直接配合でき 組 ないもの 成 (ビタミン・ 微量元素) 特に制限なく添加可能 食品衛生法で定量的に添加が認められていない,パル 栄養学の根拠に基づき配合されて チミン酸レチノール,フィトナジオン,シアノコバラ いる ミン,塩酸コリン,ビオチン,クエン酸カリウム,塩 化マンガン,硫酸銅,水酸化カリウム,硫酸亜鉛など 効能・効果 明記できる 明記できない 薬との相互作用が生じにくい栄養剤を選択す るべきだと。 東海林 用法・用量 臨床試験に基づき定められている 定められていない 製造承認 長期投与によるそれらの欠乏や基礎疾患治療 ええ現時点はです。と言いますのは 最近,イムノ・ニュートリション(免疫栄養療 基礎・臨床試験により有効性と安 特に必要なし 全性が確認されたもののみ承認 法)が話題になっており,おそらく今後の新製 剤はその方向に進む可能性は高いと思います のものがあったかと。 東海林 「半消化態栄養剤」は医薬品に限定され,食 が,現時点ではそれを支える臨床上のエビデンスが十分 ではありませんからね。 品のものは「半消化態濃厚流動食」と呼びます。両者は 残念なことにイムノ・ニュートリションの考え方を取 一見同じようにみえますが,実は基本的に異なる点がい り入れた経腸栄養剤が,日本では食品として発売された くつかあります (表2) 。特に,有効性と安全性が確認さ ことです。医薬品として臨床試験を経てから発売されて れている点から,経腸栄養法では,私は原則的に半消化 ほしかったと思います。 態栄養剤 (医薬品) を用いるべきだと考えています。 今後,医療費の患者自己負担がますます増えてくる と思います。この点についてはいかがですか。 ビタミンや微量元素の組成と1mLあたりの カロリーで半消化態栄養剤の使い分けを 東海林 まずは,患者さんの病態に適し,できれば本 人の口に馴染む栄養剤の選択が重要です。そのうえで, 今後は,時代の要請として,コストベネフィットを考慮 製剤・薬理学的特徴 (表1) からはどのように。 した栄養剤の選択が大切になってくると思います。エン 東海林 各半消化態栄養剤のたん白質含有量,脂質エ シュア・リキッドÑ,エンシュアÑ・Hは他の栄養剤に比 ネルギー比率,糖質エネルギー比率,糖質源において, べて1,000kcalあたりの薬価が最も低く,コストベネフィ 大差はみられません。脂肪に関しては,吸収という過程 ットに優れた栄養剤だといえますね。それに,臨床応用 を経ることから,高カロリー輸液製剤で問題になってい されてからの歴史が長く,有効性,安全性は確立してい るような平均粒子径よりも脂肪酸の種類や脂肪酸組成に ますので,当院ではエンシュア・リキッドÑが最も多く ついての話題を耳にします。しかし,ヒトにおいてこの 使用されております。 組成の違いが臨床上に差があることを実証した日本人で のデータは少ないようです。私は,現在入手可能な栄養 剤を摂取して,脂肪酸の種類や組成の違いが,生体へ明 適切な経腸栄養法の鍵は薬剤師に らかな影響を与えることが可能なのか,多少の疑問を感 最後に薬剤部の活動の今後の展開を教えてください。 じています。しかし,今後この分野の研究が進むと思い 東海林 先ほどお話ししましたように,経腸栄養剤をめ ますので,エビデンスが集積されてくると思います。 したがって,現段階で,私はビタミンやミネラルの組 ぐる製剤学的,薬理学的エビデンスはまだまだ不足してお り,この点に関して研究を進めていきたいと考えています。 成の差,特にヒトでエビデンスがでている亜鉛欠乏やビ 実は,ようやく当院でもNST (Nutrition Support Team) を タミンK過剰が生じない栄養剤を選ぶようにしています。 設立しようという動きがでており,今後はNSTにおいて, 静脈栄養法の進歩により,亜鉛欠乏症のエビデンスは集 薬剤師ならではの活動を展開していく予定です。 積しており,これは経腸栄養法でも同じです。長期完全 これまで高カロリー輸液に含有されている酸によるア 経腸栄養法の場合,栄養剤には必要最上限または安全最 シドーシスの危険性を指摘したことがあります。このよ 大摂取量が確保できる亜鉛が含有されていなければなら うに,経腸栄養剤投与においても,組成や病態との関わ ないと考えます。 りを文献的・経験的に積み上げていけば,薬剤師が栄養 一方,ワルファリンカリウムではビタミンKを含む食 物による作用の減弱が知られています。最近は,脳梗塞 後後遺症による嚥下障害から経腸栄養法が必要となる患 者さんが増えており,栄養剤に含有されるビタミンKと 療法上見落とされがちな点を補うことが可能と考えてい ます。 今後のさらなるご活躍をお祈り申し上げます。あり がとうございました。 の相互作用が問題となっています。しかし,ビタミンK 7 Nutrition Support Journal 8 MEETING REPORT 第2回 信州NST研究会 信州NST研究会は,奥寺敬先生(信州大学救急集中治療医学助教授)を当 番世話人として,TNT研究会を受講した信州大学,地域救急災害医療研究開 発機構,長野赤十字病院,佐久総合病院,飯田病院の医師が中心となり発足 した。栄養療法とNSTについての研究と情報交換・交流を目的とし,長野県 内の施設におけるNST設立・運営のノウハウを討論している。 去る2002年10月26日の第2回研究会(於:長野県松本文化会館)では,実際にNSTを立ち上げた丸の内病院,飯田病 院の現況報告とともに武藤正樹先生(国立長野病院副院長)による「栄養クリティカルパス」についての講演が行われた。 アル作成など,できることから始めていくべきである。 チーム医療におけるNSTの役割 信州大学医学部内科学第一 講師 木下 経腸栄養を必要とする多くの患者はほとんど話すことができ 修 なければならない。つまり,自ら要求しない患者こそ,NSTを 経腸栄養剤の種類や投与方法の選択, 必要としているのである。 管理などを誰が行うのかについて,明確 NSTの役割は,まず栄養評価を行うこと。つまりその患者に な役割は,決まっていないのが現状であ るが,これらは医師,看護師,栄養士, 栄養管理が必要かどうかの判断,適切な栄養管理がなされてい 薬剤師,検査技師,理学療法士,事務で るかどうかの評価,最適な栄養管理法の提言である。栄養管理 構 成 さ れ た NST( Nutrition Support に伴う合併症の予防,早期発見,対策を行うことも重要である。 経腸栄養を開始して栄養状態が良くなると,経口栄養が可能 Team)で相談して,決定していく必要がある。 静脈経腸栄養学会の認定施設になるためには,TNT研修会 となる患者もいる。そのような患者を見逃さず,少しでも食べ (Total Nutrition Therapy)に出席した医師が施設に少なくとも られそうだと判断すれば勇気をもってチューブを抜き,経口摂 1人は必要である。このTNT研修会に出席してNSTの必要性を 強く感じ,設立に乗り出す医師は多い。このように,NST設立 取の訓練をしていくことも必要である。 NSTを立ち上げるのが患者のためであるのはもちろんだが, は,医師のTNT研修会への出席から始まる。そして,先にNST それはスタッフの育成にもつながる。またNSTによって患者の を作り,それから院長を説得して院長直属のチームとしてもら 早期退院が可能となれば,病院にも経済的なメリットがある。 い,栄養評価法や栄養設定,経腸栄養の計画と管理などに関す 皆さんの病院でも,ぜひNSTを立ち上げていただきたいと願っ る勉強会を開始する。また,経腸栄養や静脈栄養管理のマニュ ている。 NST導入からシステム化への展望 ―丸の内病院NSTの現況報告― 丸の内病院栄養科 管理栄養士 吉江 に1回の回診から活動を始めた。また,IVHから経腸栄養に移 行する際の管理や,合併症に対するリスクマネジメントを徹底 するためさまざまな事項を実際に研究し, マニュアルを作成した。 千佳 2000年4月,当院では内科病棟を中心 導入から2002年9月までのNST対象142例において,栄養状 況,身体状況,院内感染,褥瘡状況には改善傾向がみられた。 にNSTを導入した。それまで経口摂取が また,このような数値だけではなく栄養療法の有用性を実感す できない患者にはIVH(intravenous ることができ,スタッフのレベルアップにつながっている。 hyperalimentation)による栄養管理が主 導入後2年半が経過した現在では,NSTは導入よりも継続が 流であったが,導入後は経腸栄養が増加 難しいと実感しており,NSTをシステム化して浸透させること した。NST導入初期には,何のための栄 が重要と考えている。 養管理なのかを考え,生きるための表現が少ない患者に対して 8 ず,要求を訴えられないことから,NSTが患者の状態を判断し NSTはEBM(evidence based medicine)に基づき,すべての もエビデンスに基づいた医療を行い,患者がもつ可能性を信じ, 患者がもつ可能性を最大限引き出すことができるチーム医療で 最大限の効果を発揮するためのチーム医療の実践をテーマとし あり,同時に患者に対しても対話を重視し,患者が示す心と体 てきた。そして,栄養状態の改善が最終的には経口摂取,褥瘡 の声を聴く暖かな医療である。当院のNST立ち上げの最大の意 の治癒,皮膚状態の改善などにつながることを体験してきた。 義は,スタッフが医療者として暖かい気持ちをもち,命に対し 当院では栄養改善に着目し,医師,看護師,薬剤師,栄養士 て誠実であり,前向きな姿勢が大きくなったことだと考えてい が患者の状況をベッドサイドで確認,栄養管理を検討する,週 る。NSTは経済効果以上に,患者そして医療者にとって光とな る。この光を断ち切らないために,当院でも継続とレベルアッ が減ったため患者の摂食意欲が増し,食べ残しが少なくなるこ NST導入までの歩みと現況 とで満足感が得られるなどの効果があり,総摂取栄養量が上が ―栄養士の立場から― 飯田病院栄養科 管理栄養士 北澤 プに向けシステム化の再構築を検討している。 った。また,入院患者平均在院日数は,2002年4月以前は20日 千枝 以上であったが,4月以降は18日前後となった。長期入院患者 当院では,2001年4月に院内LANが も,NSTだけの効果とはいい切れないものの,2001年10月には 稼働し,院内の各種活動が活発化した。 36名であったが,2002年8月には15名まで減少した。さらに, このようななか,外科病棟でNST導入を 部署を越えた情報の共有化ができたことや,コミュニケーショ 見越した栄養学の勉強会が始まり,2002 ンがスムーズになったことなど,数字では評価できない効果も 年6月1日,NSTが正式に稼動した。主 あった。 一方,現時点での問題点としては,各部署から数名の参加は な活動は,週1回のランチタイムミーテ ィング,週2回のNST回診,栄養学の勉強,講演会の主催,新 あるものの,活動が院内全体に広がっているとはいえない点や, 製品の紹介などである。 褥瘡対策委員会との活動が完全に一本化できていない点などが NSTの効果の一部を紹介する。まず食事の面では,以前は各 ある。また,現在は患者の病状が悪化してからNSTが関わって 病棟ごとに作っていた嚥下困難患者の水分補給のためにとろみ 症例検討を行っているが,本来は入院後速やかに栄養状態を評 つきのお茶を,栄養科でお茶ゼリーとして一括して提供し,品 価し,早期から低栄養状態の患者に関わり,全身の栄養状態の 質の標準化と作業の効率を上げることができた。また,食事摂 改善を図る必要があると考えている。 取量が少ない患者を対象に,個々の必要栄養量を計算してハー 今後は,早期栄養評価を組み込んだクリティカルパスの作成 フ食を導入し,不足の栄養量は,間食に経口栄養剤などを提供 や,クローズドシステムの導入,在宅栄養管理などの課題にも することで補うことにした。その結果,量が半分になり見た目 取り組みたいと考えている。 特別講演 れていること,第5はアウトカムからの逸脱であるバリアンス を収集して分析し,原因を究明し改造して最終的にケアの質の 栄養クリティカルパスについて 国立長野病院 副院長 武藤 向上につなげることである。第6は診療のプロセスやアウトカ 正樹 ムを評価する定量指標である臨床インディケイターを設定し 日本におけるクリティカルパス の普及とコンセプト て,パスを評価することである。第7はCPを医療安全に活かす 1980年後半から,医療界でも他産業と いずれ14日以下の時代が来ると考えられており,第8は平均在 同様に,投入した資源に見合った成果が 院日数短縮に応用することである。さらに,第9はDRG 要求され,その成果を達成しているかど (diagnosis related group,診断群分類)に対応できること,第10 ことである。そして,現在,平均在院日数は平均17日であるが, うかを社会に向かって説明する責任が生 は電子カルテに対応できることである。 じるというアウトカムマネジメントの時代となってきた。これ 栄養パスの条件 は栄養ケアにおいても同様で,そのための代表的なツールが栄 養パスといえる。 日本では1998年頃からクリティカルパス(critical path;CP) 栄養パスは,栄養療法がケアの重要部門を構成するパスであ る。栄養パスの作成にあたっては,栄養パスの適応疾患に関し て該当の栄養ガイドラインやエビデンスが参照され,栄養ケア が普及しはじめ,現在では30〜40%の施設で使われており,特 マネジメントが体系的に組み込まれていて,アウトカムに栄養 に大規模病院で導入が進んでいる。2002年5月に日本健康・栄 関連アウトカムとその指標が含まれ,臨床栄養士が栄養パスの 養システム学会で,栄養士とCPの関わりについてアンケート調 作成,使用に主要な役割を果たすことを条件としている。また, 査を行ったところ,CPの作成に管理栄養士が関わったのは35% 栄養ガイドライン,栄養療法の選択フローチャートを併用する で,遂行には55%が関わっていた。NSTが存在するのは約5% ことが重要であり,栄養ケアマネジメントには,栄養スクリー の施設であった。最近では,CPは専門学会でもかなり議題にの ニング,栄養アセスメント,栄養ケアプラン,実施,モニタリ ぼり,医療制度改革にも登場している。 ング,評価という栄養ケアマネジメント(nutrition care and CPには10のコンセプトがある。第1はPDCA(plan 計画,do management;NCM)の6つのステップが組み込まれているこ 実施,check 確認,action 実行)サイクルが組み込まれているこ とが必要である。さらに,栄養関連アウトカムには,臨床栄養 とで,第2は根拠に基づいて作られていることである。また, アウトカム,栄養コストアウトカム,栄養ケアと在院日数アウ CPは選択基準や適応基準が不明瞭という問題点があるため,診 トカム,栄養ケアと患者満足度・QOLがあり,それぞれの指標 療ガイドラインやアルゴリズムと組み合わせて使用すべきであ を栄養的に測定することが重要である。 る。第3は情報開示で,患者用パスは必須であり,診療ガイド ラインも患者に開示すべきである。第4はアウトカムが設定さ 21世紀は栄養パスの新時代であり,栄養パスを通じて,栄養 ケアマネジメントの普及を図るべきであると考えている。 9 MEETING REPORT 第8回アジア静脈経腸栄養学会 Abbott Co-medical Seminar 2002年10月より,わが国においても褥瘡対策未実施減算の施行が始まった。各施設において,勉強会や褥 瘡チームの活動開始など組織として褥瘡対策に取り組みつつある。おりしも,第8回アジア静脈経腸栄養学会 (PENSA,会長:小越章平 高知医科大学副学長,会期:11月5〜7日,於:高知市文化プラザ)では,5日に Abbott Co-medical Seminarとしてダイナボット株式会社主催によるイブニングセミナー「褥瘡患者の栄養 管理」 (講師:Dr. Charlette Gallagher-Allred)が開催された。講演会では,褥瘡予防への栄養介入の効果およ びアメリカで実践されている栄養管理プログラムなどが紹介され,参加者は熱心に聞き入っていた(写真1) 。 褥瘡患者の栄養管理 アメリカにおける栄養管理計画 褥瘡のリスクを明らかにした後,褥瘡の治療を目的と して長期療養所400施設で,カロリーが30〜35kcal/kg/ 日,たん白質が1.25〜1.5g/kg/日,水分が30〜 35mL/kg/日を推奨摂取量とし,ビタミンA,C,亜鉛, Charlette Gallagher-Allred PhD, RD, 米国褥瘡諮問委員会 アドバイザー アメリカ栄養士協会研究委員会 前会長 ロス・プロダクツ学術教育部 部長 銅の補給を推奨した栄養管理計画を実施した。褥瘡の栄 養治療は,十分なカロリー摂取によって,筋肉の合成や 創の治癒のために使われるたん白質を確保することが重 要で,糖尿病患者や高脂血症患者の食事制限を撤廃して カロリー摂取を増加させることを試みた。なお,たん白 栄養管理による褥瘡予防効果 質は,高齢者や腎機能低下患者が1.5g/kg/日以上摂取し 褥瘡発症の最大の危険因子は圧迫であるが,栄養不良 ても,たん白合成は亢進せず,脱水のおそれもある。水 も重要である (表1) 。積極的な褥瘡予防によって,発症 分は摂取量と排出量を等しくなるようにすべきで,飲用 率低下,治療費低減,リスク低下,QOL向上が得られ として1,000mL/日以上の摂取が推奨されている。 ることから,アメリカでは10年前から積極的な栄養管理 計画が展開されてきた。 全米の長期療養施設を対象とした褥瘡研究では,長期 そのほか,ビタミンCはコラーゲン合成に必要であり, ビタミンAは褥瘡創の治癒に不可欠であるが,褥瘡患者 へのビタミンCやビタミンAの投与は欠乏が認められな 療養施設患者2,490名をレトロスペクティブに検討した。 そのうち,褥瘡患者は1,343名,褥瘡のリスクがある患 者が1,147名,平均年齢は約80歳で,70%が女性であっ た。まず,疾患が重症であるほど褥瘡が発症しやすいこ とがわかった。さらに,褥瘡の病歴あり,喫煙者,糖尿 病患者,男性,日常生活動作で要介助,85歳以上の場合 に褥瘡が発症する可能性が高くなる。また,長期療養施 設の特徴として,喫食率の低下,体重減少,脱水状態は 褥瘡が発症しやすいことがわかった。一方,特定疾患用 や高カロリー/高たん白の経腸栄養剤が用いられている 場合,経腸栄養剤など間食が活用されている場合,水分 補給を指示されている場合は,褥瘡発症率の低下に効果 があることが認識された (表2) 。 写真1 10 イブニングセミナー会場 表1 日本の褥瘡患者にみられる栄養不良 ・低アルブミン血症 (<3.5g/dL) ・病的な骨の突出 ・食事摂取量<75% ・脱水 表2 46% 86% 48% 88% 褥瘡発現率が低い患者 経腸栄養 特定疾患用 (病態別経腸栄養剤) 高カロリー/高たん白 間食の活用 (厚生省長寿科総合研究事業平成11年度報告書) 経腸栄養剤 間食 施設で調理する流動食 水分摂取量を増やすよう指示 表3 88% 72% 63% 49% 28% 35% アメリカにおける栄養管理計画 対象:下記の1項目以上あてはまる患者 ・褥瘡の病歴あり ・体重減少がみられる ・ほぼ毎食25%以上を食べ残す ・食事は全面介助または部分介助 ・咀嚼・嚥下に問題あり ・脱水があるまたは水分摂取量が少ない 24時間以内に実行 ・治療目標を話し合う ・体重を測定し毎週の体重測定を指示 ・栄養士の指導を要請 ・その他の指導を考慮 ・食事制限を撤廃するか,経腸栄養を調節 ・医師による水分増量の指示を仰ぐ ・毎日ビタミン・ミネラルサプリメントをとらせる ・計画の各段階で栄養補給を指示 第7日までに実行 ・栄養士の評価をはじめとする主な評価を行う ・必要に応じて1日1缶以上の経口栄養剤を投与 第7日 体重を測定し,経口摂取量を評価する 体重減少や食事量の減少 ・医師の診察 ・抑うつの評価 ・食事または経腸栄養を調節 体重減少がなく食事量が減少 ・患者の状態を観察する 第14日 体重減少や食事量の減少 ・治療目標について話し合い下記のいずれかを実施 経腸栄養を開始 その他の栄養療法と対症療法を考慮 体重減少がなく食事量が減少 ・体重と食事量の観察を4週間以上続行する いかぎりRDI (Recommended Daily Intake=米国の推奨 下を招くので過剰投与に注意する。 1日栄養摂取量)を上まわる補給効果を裏付ける科学的 アメリカにおける栄養管理計画 (表3) では,褥瘡発症 根拠が不十分であり,議論が多い。しかし,多くの褥瘡 のリスクがある患者を発見した場合は,24時間以内に実 患者は栄養状態が悪いので,複数のビタミンやミネラル 行すべきこと,7日目までに実行すべきことが詳細に決 を充分含有する経腸栄養剤を投与すべきだと思われる。 められている。そして,第14日目になっても体重や食事 ただし,ビタミンAのRDIを上まわる投与は過剰症の恐 量が減少している場合には患者や家族と話し合い,経腸 れがあり,注意が必要である。 栄養を開始するかどうかを決める。 コラーゲン合成には亜鉛も必要で,亜鉛不足患者に投 このような栄養管理計画の実施により9〜11%あった 与することによって褥瘡創の治癒が早まることがわかっ 褥瘡発症率が,1%以下となり,治療費も軽減した。こ ている。ただし,亜鉛は150mg/日以上1ヵ月間投与す のように,十分な栄養摂取は,褥瘡予防や治療効果の向 ると銅欠乏をひき起こし,貧血や感染症への抵抗力の低 上に不可欠であることが明らかとなった。 11 Nutrition Support Journal 8 EVIDENCE BASED NUTRITION 高齢者経管栄養療法におけるフラクトオリゴ糖配合 アイソトニック栄養食品(ジェビティTM)の便通・便性改善効果 特別養護老人ホーム柏柳の里 看護主任 中村 悦子 こしにくく,腸の機能を正常化するフラクトオリゴ糖を はじめに 配合していることで便通を整える(便秘および下痢の予 特別養護老人ホームの入所者は,痴呆,寝たきりなど 防・治療)という特徴(表1,2)を有する栄養食品であ の身体上,あるいは精神上著しい障害があり,常時介護 る。そこで今回,私たちは7例の入所者を対象に,ジェ が必要な65歳以上の高齢者である。そのため,加齢,基 ビティTMの便通・便性に対する影響を検討したので報告 礎疾患,薬物治療の影響,運動不足,食事・水分摂取量 する。 の低下などにより,入所者の多くに便秘が認められる。 一方,脳梗塞後後遺症による嚥下障害などの理由により, 経口から必要かつ十分なカロリーを得ることが困難で, 経管栄養療法の適応となる入所者も多い。しかし,経管 対象と方法 1.対象 栄養療法の合併症として,高い頻度で下痢が認められる。 経管栄養療法を必要とする入所者7例(男:女=1: 時に,下痢の発症により,入所者は肛門周囲の皮膚損傷, 6例,平均年齢83.4歳) 腹痛,栄養吸収障害,電解質の異常,脱水などをきたし, 2.方法 全身状態を悪化させることもある。したがって,入所者 対象にジェビティ TMを用いて,排便状況を観察した の経管栄養療法においては,下痢が発生せず,便秘を改 (観察期間:平成14年4月1日〜9月30日,平均観察期 善する経管栄養食が望ましい。 間:4.57ヵ月)。下痢および便秘の定義は,「下痢とは, TM ジェビティ は,296mOsm/kgと低浸透圧で下痢を起 水分量の多い液状または泥状の糞便を排泄する状態で, 一般に24時間に排泄される糞便中の水分量が150〜 表1 標準成分表 200mL以上である」 , 「便秘とは,大腸内の糞便の通過が 普通より遅れ,腸内に停滞し排便が困難な状態,排便回 栄養成分 1本 (500mL) 中 数の減少,硬く乾燥した糞便,排便時の強度の怒責と苦 エネルギー 500kcal たん白質 20.0g カゼイン 脂質 16.4g なたね油, ひまわり油, コーン油, MCT 糖質 66.2g デキストリン,フラクトオリゴ糖 ナトリウム 550mg 食物繊維 5.3g フラクトオリゴ糖 3.5g 栄養成分 痛,排便後の残便感,3日以上排便がない状態」とし, 大豆多糖類,オートムギ繊維, アラビアガム, カルボキシメチルセルロース (CMC) ジェビティTMの便通・便性に対する影響を検討した。 結 栄養成分 果 症例によっては,ジェビティTM投与により,ラキソベ 表2 1本 (500mL) 中 その他の製品情報 1本 (500mL) 中 12.85mg ビタミンA 1,900 IU※ ナイアシン 比重 1.075g /mL ビタミンD3 151.5 IU パントテン酸 1.50mg 浸透圧 296mOsm/kg H2O;249mOsm/L ビタミンE 17.0 IU ナトリウム 550mg 腎溶出負荷 344mOsm/L ビタミンC 75mg カリウム 650mg 水溶性食物繊維/非水溶性食物繊維 25:75 葉酸 100 μg 塩素 610mg 脂肪酸組成 (SMP比) 約1:2:1 ビタミンB1 0.95mg カルシウム 460mg n6:n3 約6:1/リノール酸:α-リノレン酸 ビタミンB2 1.10mg リン 325mg pH 6.40〜6.75 ビタミンB6 1.25mg マグネシウム フレーバー なし ビタミンB12 2.00 μg 鉄 CN比 131.25 (※β-カロチン1,560IU) 12 主原材料名 50mg 6.85mg 表3 ジェビティTM投与による便性・便通の変化 症 例 年 齢 性 別 疾患名・ 既往歴 麻 痺 ジェビティ投与量 投与 期間 便性・便通の変化 薬の有無 摘 便 特記事項 有 8月8日, Cu欠乏由来 の貧血が認 められた 1 84 男 脳梗塞 脳血管性痴呆 有 1,000mL ラキソベロンを使用しても排便がなく,便が硬く摘便 →貧血発症後,ジェビティ も困難であった→ラキソベロン使用後は便通が得られ るようになり,摘便時の便性も軟らかくなった→7月 ラキソベロン 500mL+エンシュア・ 4〜9月 22日〜8月3日には,毎日自然排便が得られた→エン リキッド500mL 10〜15滴 シュア・リキッド投与後,排便回数の減少が認められ ポカリスエット300mL 白湯300mL た 2 92 女 肺癌 胃癌 アルツハイマー型痴呆 有 800mL 排便には,ラキソベロンを使用した上で,摘便が必要 ラキソベロン ポカリスエット300mL 4〜9月 であった→ラキソベロンを使用しなくても,摘便のみ 10〜15滴 で排便できるようになった 白湯350mL 有 なし 3 74 女 脳出血 意識障害にな り胃瘻造設 有 1,000mL ラキソベロンの使用,摘便で排便を促すことにより, ラキソベロン 10〜15滴 ポカリスエット300mL 4〜9月 安定した便通が得られるようになった。アップルファ アップルファイバー 白湯300mL イバーの使用量が減少した 2袋→1袋 有 なし 4 83 女 脳出血 てんかん 有 排便には,ラキソベロンを使用した上で,摘便が必要 ラキソベロン 1,000mL であった→ラキソベロンを使用しなくても,摘便のみ 10〜15滴 ポカリスエット300mL 4〜9月 で排便できるようになった。摘便時の便性は良好な状 アップルファイバー 白湯300mL 2袋→1袋 態となった。アップルファイバーの使用量が減少した 有 なし 女 脳出血 統合失調症 有 800 mL→血清Cu値低下後 排便には,ラキソベロンを使用した上で,摘便が必要 ジェビティ400mL+エン であった→4〜6月末までは,14〜19回/月の自然排便 ラキソベロン シュア・リキッド400mL 4〜8月 が得られた。7月初旬よりジェビティの減量,エンシ 10〜15滴 ュア・リキッドの併用により,排便回数が減少,ラキ ポカリスエット300mL 白湯300mL ソベロンの使用,摘便が増えた 有 7月31日, 血清Cu値 の低下あり 有 ラキソベロンを使用し,摘便しても,便が硬く,排便 ラキソベロン 困難であった→摘便時の便性が軟らかくなってきた。 1,000mL 10〜15滴 ポカリスエット300mL 6〜9月 9月初旬より,週1回程度の摘便は必要だが,ほぼ毎 アップルファイバー 白湯300mL 日,自然排便がみられるようになり,アップルファイ 2袋→1袋 バーの使用量も減少した 有 なし 無 1,000mL ラキソベロンの使用や摘便実施下で,4〜7回/月の排便 ラキソベロン ポカリスエット300mL 4〜9月 であった→ラキソベロンの使用や摘便は必要だが,20〜 10〜15滴 25回/月の排便が得られるようになった 白湯300mL 有 なし 5 77 6 88 女 脳梗塞 脳血管性痴呆 7 86 女 アルツハイマー型痴呆 高血圧 脳梗塞 ロンÑやアップルファイバーの使用,摘便の実施などで 促進作用,血糖調節作用,コレステロール低下作用,免 排便を促す必要があるものの,いずれの症例においても, 疫賦活作用,腫瘍抑制作用などさまざまな生理的有用性 便性・便通の改善が認められた (表3) 。また,ジェビテ を示すことがin vitro,in vivoおよびヒトでの研究で確 TM ィ 投与に関連する下痢は認められなかった。 認されている1)2)。 ただし,銅(Cu)欠乏由来の貧血が1例,血清Cu値の そこで,便秘が問題となっていた本対象において,フ 低下が1例に認められた。この2例においては,ジェビ ラクトオリゴ糖配合のジェビティTMの投与を試みたとこ ティTM投与量の半量をエンシュア・リキッド Ñに切替え ろ,便秘と下痢の両者の予防および治療に有効性がみら たところ,血清Cu値の上昇,貧血の改善が得られたが, れた。なお,症例によっては,ラキソベロンÑやアップル 排便回数に減少傾向が認められた。 ファイバーの使用,摘便の実施などで排便を促す必要が あった。これは,今回の検討対象が全介護の必要な寝た きり症例で意識障害や麻痺なども伴っている例もあり, 考察 そもそも排便反射障害や腹圧のかかりやすい姿勢をとり 経管栄養食においては,特に急速注入の場合,浸透圧 にくいなどの問題を有していることが原因と考えられた。 勾配による水分の拡散と腸粘膜からの水分再吸収に限界 以上より,ジェビティTMは寝たきり高齢者に対して, があるため,腸からの水分吸収よりも腸管内への水分流 下痢を惹起せず,便性・便通改善が得られる経管栄養食 出が上回り,それが腸蠕動運動を刺激して下痢を生じさ であると結論した。 せる。したがって,下痢を起こしにくくするには,体液 ただし,2例に血清Cu値の低下,そのうちの1例に と等張の経管栄養食が望ましい。今回の検討から,アイ それに起因する貧血が認められ,投与量の一部をエンシ ソトニック(等張)であるジェビティ による下痢は認め ュア・リキッドÑに変更したところ,排便回数に減少傾 られず,その有効性が示唆された。 向がみられた。ジェビティTMによる経管栄養食完全管理 TM また,ジェビティTMに配合されているフラクトオリゴ 糖は,大腸内においてビフィズス菌に有効利用され,ビ 下症例において,血清Cu値低下への対策は今後の検討 課題である。 フィズス菌優位の細菌叢を形成することにより腸内環境 を改善,腸管機能の正常化 (整腸作用) することが証明さ 文 れている1)2)。その結果,便性・便通の改善効果のほか 1)Garleb KA, et al:発酵性食物繊維としてのフラクトオリゴ糖 の医療用食品への適用. 田代靖人 訳,腸内細菌誌 16 : 43-54, 2002 2)谷口 肇:機能性オリゴ糖. Medicina 39 : 275-277, 2002 に,大腸完全性の維持作用,プレバイオテックスおよび 腸管定着抵抗性の回復,窒素排泄経路の変化,Ca吸収 献 13 EVIDENCE BASED NUTRITION 高齢褥瘡患者の栄養管理に有用な 高カロリー栄養剤エンシュアÑ・Hの有用性 金沢西病院 外科医長 菊地 勤 減少したときは,抗生物質による感染症治療に加え,経 はじめに 口摂取カロリーに基づいて投与カロリーを調整しながら 褥瘡治療においては,褥瘡の原因となった圧迫の除去, アミノ酸加総合電解質液・アミノフリードÑの点滴静注 ずれや摩擦からの回避,創傷の局所ケア・治療(洗浄, (4月21〜26日:400〜500kcal,5月5〜17日:210〜 薬物療法,外科的治療など)はもちろん重要だが,栄養 840kcal)を実施していた。4月26日より臥床時間を長く 管理により良好な栄養状態を維持することは,組織の耐 するため,また全身調整,バランス改善,歩行筋力増強 久性を高め,創傷治癒を促進するためにきわめて重要と のため,リハビリセンターへの出療に変更した。 されている。 しかし,発熱による体力低下や食思不振,パーキンソ 今回,われわれは,腰椎圧迫骨折を契機に褥瘡を発生 した高齢患者に,単位量あたりのカロリーが1.5倍とさ Ñ ン病による振戦,嚥下障害などにより,経口摂取量の減 少傾向が認められ,栄養状態は徐々に悪化していった。 れ,亜鉛含有量の多い半消化態栄養剤,エンシュア ・ 6月4日に誤嚥性肺炎による発熱がみられたことより, Hによる栄養療法を施行したところ,栄養状態の改善と 抗生物質+アミノフリードÑ500mL(210kcal)の点滴静注 同時に創傷治癒の促進がみられたことを経験したので報 に加え,軟飯をペースト食 (1,000kcal) に変更し,補食と 告する。 して経口から半消化態経腸栄養剤のエンシュア・リキッ ドÑ250mL(250kcal)を投与した。以後,栄養状態は改善 症例 しはじめ,それとともに褥瘡は治癒へ向かい,創の縮小 傾向がみられたが,ポケットが広く (図2) ,7月1日に 73歳,女性。 褥瘡部切開開窓術を実施した。その後,8日の血液検査 主訴:腰痛。 にて血清亜鉛の低下が確認され,少食であることを考慮 既往歴:40歳 骨粗鬆症,71歳 パーキンソン病。 し,19日より,エンシュア・リキッドÑから半消化態経 いずれも近医にて加療中。 腸栄養剤のなかでも高濃度高カロリーで,亜鉛含有量の 家族歴:特記すべきことなし。 多いエンシュアÑ・Hに切替えた。同時に,パーキンソ 現病歴:平成14年4月2日,自宅にて転倒し,翌3日に ン病のコントロールにより振戦や嚥下障害が改善したこ 近医受診。第一腰椎圧迫骨折を指摘され,自宅安静にて とから,ペースト食を全粥・極々軟菜 (1,200kcal) とした。 経過観察されていたが腰痛が強く,6日に加療目的にて その結果,栄養状態のさらなる改善とともに褥瘡の治癒 当院紹介入院となる。ベッド上安静後,床上リハビリテ が促進され,全身状態良好となり,褥瘡の治癒がみられ ーションを4月16日より開始し,また下顎,手指の振戦 たため (図3) ,10月12日に徒歩にて退院した。 が強かったため,神経内科にてパーキンソン病の再評価 後薬物コントロールされたが,4月19日 (入院14日目) に 仙骨部褥瘡が確認された。 理学的所見 (入院時) :身長145cm,体重38.5kg。両下肢 14 考察 褥瘡では,創面からのたん白質の喪失や,創部での亜 に軽度浮腫認める。 鉛やビタミンCの消費が起こると同時に,ホルモンの変 臨床経過 (図1) :褥瘡部に対して,静止型エアーマット 化から代謝が亢進し,たん白質の合成が遅延し消費が進 レスの導入による減圧・除圧をはじめ,摩擦・ずれの予 む。このような状況下で栄養が不足していると,ビタミ 防,湿潤対策,スキンケア,薬物療法など,局所環境の ン・ミネラル・たん白質の枯渇が容易に起こり,創傷治 整えや局所治療を施行した。同時に,振戦による摂取能 癒の遅延を招くだけでなく,生命そのものの維持にも危 力の低下を考慮し,栄養補給の向上をめざして普通食か 険が生じる。そこで,褥瘡治療においては,創傷の局所 ら老人用特別食の軟飯 (1,500kcal) に変更した。尿路感染 療法とともに,変化した代謝異常状況を正常状態に戻す による発熱 (4月21日,5月5日) のために経口摂取量が 栄養管理 (療法) が重要とされている。 4 19 4 21 仙尿 骨路 部感 褥染 瘡に よ 発る 生発 ↓熱 ↓ 普通食 経口食 経腸栄養 経静脈栄養 Ñ (アミノフリード ) 51 55 尿 壊ポ ピ路 死ド ン感 組 ヨ染 に 織ー ドよ 切シ ュる 除 ガ発 熱 ↓ー 塗 布↓ ↓ 5 21 肉 芽 up ↓ 64 誤 嚥 性 肺 炎 に よ る 発 熱 ↓ 軟飯(1,500kcal) 71 10 12 ︵ ト 7フ ィ 月ブラ フ 19 ラ ス 日トェ ︵ スル ミ 10 プ レ ン 日ー Ñ 間塗製 ↓ 布 ︶ 剤 ↓ ペースト食(1,000kcal) 褥ポ 瘡 部ケ 切ッ 開ト 開切 窓除 術︶ エンシュア・リキッドÑ(250kcal/250mL) 4/21〜26 400〜500kcal 5/5〜17 長 期歩 療行 養訓 型 病練 棟開 へ始 退 院 ↓ ↓ 全粥・極々軟飯(1,200kcal) エンシュアÑH(375kcal/250mL) 6/4〜7 210kcal 210〜840kcal Hb(g/dL) TP(g/dL) Alb(g/dL) 7 14 6 12 5 10 4 8 3 6 0 平成14年 4月6日 0 20日 5月4日 18日 Fe(μg/dL) 6月1日 26 15日 Zn(μg/dL) 図1 29日 7月13日 27日 8月10日 24日 28 9月7日 21日 10月5日 72 60 75 87 臨床経過 図2 図3 ポケットを形成した褥瘡 しかし,高齢者は複数の疾患や症状を併せ持っている 褥瘡の治癒 Hの利用が推奨される。 ことが多く,しかも食欲がない,少食のために十分な栄 実際,本症例においても,褥瘡部の局所環境の整え 養補給ができないなど,栄養管理においてさまざまな問 (ケア)や局所治療,エンシュア・リキッドÑを使用した 題を有している。本症例のように,経口摂取可能な患者 栄養管理を積極的に実施したところ,肉芽の盛り上がり であっても,摂取状況によっては,経腸栄養剤を補食と は良好であったがポケットを残したまま上皮化し治癒の して投与することでかろうじて必要な摂取カロリーやビ 遷延がみられた。このため,まずポケット形成による創 タミン,微量元素を補給・維持することが可能となるケ 面の接着阻害を解除することを目的に褥瘡部切開開窓術 ースも少なからずある。したがって,高齢者の栄養管理 を施行した。また,肉芽組織で線維芽細胞がコラーゲン では,個々の病態や摂取状況にあわせて,食事や経腸栄 を産生するときに必要な亜鉛が不足していることから, 養剤,濃厚流動食をうまく選択・利用することが重要で 亜鉛の補給強化(目標値:70〜150μg/dL,1日目標摂取 ある。褥瘡の予防・治療のためには,十分なビタミンや 量:15mg) を目的にエンシュアÑ・Hを使用したところ, 微量元素が添加された医薬品である経腸栄養剤(エンシ 創傷治癒の著しい促進が得られ,上皮形成が始まり,創 Ñ ュア・リキッド など) が望ましい。また,本症例のよう の閉鎖へ至った。以上から,経口摂取カロリーが不足し に少食のため,経腸栄養剤の投与容量依存性に腹部膨満 がちな高齢褥瘡患者の創傷治癒促進にエンシュアÑ・H 感を訴える場合は,単位量あたりのカロリーが1.5倍と は有用と思われた。 Ñ 高く,ビタミンや微量元素の含有量が多いエンシュア ・ 15 EVIDENCE BASED NUTRITION エンシュアÑ・H併用療法によりQOL改善を認めた 腹痛+便秘型過敏性腸症候群の治療経験 東京警察病院消化器センター内科 医幹,*部長 鈴木 剛,平野 正憲* 現病歴:18歳時より便秘に伴う強い腹痛を認める。その 緒言 後症状の増悪・寛解を繰り返し,市販薬 (緩下剤など) に て対処していた。就職後より前記症状は増悪し,腹痛が 半消化態栄養剤(low residue diet;LRD)は,主とし 1) 悪化したときには度々休暇をとり自宅にて自己管理して て長期食事摂取困難な患者に対する栄養管理 ,上部消 化管・口腔領域術後患者の栄養状態改善 2)3) いた。しかし,平成14年7月中旬よりきわめて強い腹痛 を目的に投 与されている。今回われわれは,長期にわたり腹痛+便 を認め7月17日当院受診,緊急入院となった。 秘型過敏性腸症候群 (irritable bowel syndrome;IBS) の 入院・退院後経過 (図1) :入院後より絶食・点滴にて経 ため緊急入院となった患者に,医薬品で唯一の濃縮タイ 過観察とした。各種検査・現病歴よりRomeⅡ基準4)を プであるエンシュア Ñ・H(1.5kcal/mL)を追加投与し, 満たしIBS(腹痛+便秘型)と診断した。入院直後の排便 その症状改善に寄与したと考えられた症例を経験したの 状態はブリストル便性状5)はタイプ1であった。第3病 で,ここに報告する。エンシュアÑ・Hは,IBS患者の栄 日より酸化マグネシウム3g,アローゼン1g,大建中 養状態を維持し,内服薬剤の効果に影響を与えずQOL 湯(TJ-100)15g/日を投与し,食事は流動食(第7病日よ を改善することが期待された。 り五分粥食)で様子観察したところ図1のごとく腹痛 VAS(visual analogue scale)6)は50mmまで改善し (便性 状もタイプ4に変化) ,第9病日退院となった。退院後, 症例 前記薬剤内服下ではあったが会社勤務再開し,また食事 28歳,女性。 も普通食とした。しかし,再度症状が増悪し外来日(8 職業:会社員。 月12日)にはVAS80mmであった。そこで他薬剤と併用 既往歴:特記すべきことなし。 し普通食中1食分をエンシュアÑ・H 250mL (375kcal) に 嗜好:アルコール 機会飲酒,喫煙 なし。 変更し観察した。併用3日目ほどより完全消失は認めな 入 7月17日 19日 絶食・点滴 エンシュアÑ・H 375kcal/日+普通食 院 23日25日 流動食 五 分 粥 8月12日 18日 普通食 普通食 酸化マグネシウム3g, アローゼン1g, 大建中湯 15g /日 (mm) 100 VAS (腹痛) 12日 80 60 40 20 0 7月17日 図1 16 臨床経過 24日 31日 8月7日 14日 21日 28日 いものの腹痛は退院時程度まで改善を認め,勤務可能と アÑ・H代替投与はIBS症状の奏効に寄与したものと考え なった。7日分の処方であったためエンシュアÑ・Hよ られた。さらに栄養の側面からみてもエンシュア Ñ・H り普通食に戻したところ再度症状は増悪し,患者側の希 は1.5kcal/mLと高濃度であることから,普通食のカロリ 望もありエンシュアÑ・H再処方とし軽快,便性状もタ ーに近似した摂取量を確保できることも代替の大きなメ イプ4のまま持続しており外来経過観察中である。 リットといえる。 いずれにしても1症例の経験ではあるが,経過上on 考察 IBSはQOLに障害を与える機能性腸疾患である。特に 重度の症例では,普通食 (固形食) 摂取により腹痛などを demand的なエンシュア Ñ・Hの併用療法が便通を改善 し,腹痛も軽快するなどQOL改善に関与したと推察さ れる。腹痛+便秘型IBSの治療上示唆に富む症例と考え, ここに報告した。 悪化させ,食事摂取量の減少,栄養不良,さらには体重 減少にまで陥る危険性がある。今回われわれは10年来腹 痛+便秘型IBSにて苦しみ,勤務困難となり入院まで至 った症例を経験した。入院後より絶食・補液療法を施行 し第3病日より酸化マグネシウム3g,アローゼン1g, 大建中湯(TJ-100)15g/日を投与し改善,退院となった。 しかし退院後症状が増悪し,前記した各種薬剤に加えエ ンシュアÑ・H(375kcal/1缶/日,1食分)を投与したと ころVASの改善を認めた。LRDは栄養改善目的のため さまざまな投与報告がある7)8)。われわれは器質的疾患 を認めないがQOLに対し影響を与えるIBSに対してエン シュア Ñ・Hを併用し,その効果を観察することができ た。LRDはIBSの治療薬として明確には挙げられてはい ないものの9),栄養状態を維持しつつ病態改善に関与し た可能性が考えられた。すなわち各種薬剤を内服しつつ も普通食(固形食)摂取では排便状況(便性状,排便回数 など)の悪化を認め,この状態に流動性が高い液体であ るLRDが摂取通過することにより排便が促され腸内圧 の減圧がなされ,伸展刺激によって誘発される腹痛が改 善した可能性が1つ推測される。 今回患者側と相談し3食のうち1食をLRDに置き換 文 献 1)山中千恵, 島 健:脳神経外科領域におけるPEGと高濃度経 腸栄養剤の有用性について. JJPEN 22 : 727-731, 1999 2)平松義文, 早坂 滉, 江端俊彰, 他:上部消化器術後における経 腸栄養剤DA-8902の臨床効果. 基礎と臨 24 : 913-924, 1990 3)鈴木 円, 下山哲夫, 那須大介, 他:口腔外科疾患患者に対する 経腸栄養剤の投与時間短縮に関する臨床的検討. 栄評治 16 : 159-162, 1999 4)Thompson WG, Longstreth GF, Drossman DA, et al : Functional bowel disorders and functional abdominal pain. Gut 45 (Suppl.Ⅱ) :Ⅱ43-47, 1999 5)Probert CJ, Emmett PM, Heaton KW : Intestinal transit time in the population calculated from self made observations of defecation. J Epidemiol Community Health 47 : 331-333, 1993 6)Ohnhaus EE, Adler R : Methodological problems in the measurement of pain ; A comparison between the verbal rating scale and the visual analogue scale. Pain 1 : 379-384, 1975 7)飯田三雄, 平川克哉, 寺本房子:クローン病に対する経腸栄養 療法の実際―活動期および緩解期クローン病に対する半消化 態栄養剤の治療効果―. Nutrition Support Journal 1 : 16-19, 2000 8)松本主之, 黒木文敏, 飯田三雄, 他:炎症性腸疾患における経腸 栄養剤の治療効果;臨床および基礎的見地から. Digestion & Absorption 18 : 59-64, 1995 9)Horwitz BJ, Fisher RS : The irritable bowel syndrome. N Engl J Med 344 : 1846-1850, 2001 えて投与した。本例に関しては1日1回のこのエンシュ 17 EVIDENCE BASED NUTRITION 慢性呼吸不全患者における栄養管理 ―プルモケアÑのPEG下24時間持続注入の有用性― 国家公務員共済組合連合会 高松病院内科 粟井 一哉 現病歴:5ヵ月間で6kgの体重減少(45kg→39kg)に加 はじめに え,咳,膿性痰を認め,平成11年6月,当院入院。痰培 慢性呼吸不全患者では,呼吸機能の低下に伴いエネル 養より緑膿菌,MRSA検出。精査の結果,陳旧性肺結核 ギーの消費量が増加するのに対して,食事摂取が酸素消 と気管支拡張症による慢性Ⅱ型呼吸不全および慢性気道 費量の増大,腹圧の上昇,横隔膜の圧迫を介して呼吸困 感染症と,それによる栄養障害・体重減少と診断された。 難を惹起するため,必要エネルギー量に見合うだけの食 以後,気道感染による入退院を繰り返し,呼吸機能およ 事摂取をできず,栄養障害・るいそうをきたす症例が多 び全身状態が徐々に悪化していった。平成13年4月,在 い。また,この摂取エネルギー不足を代償するために, 宅酸素療法導入。平成13年12月,右大腿骨頸部骨折にて 筋たん白質の消費,呼吸筋の消耗が起こり,その結果, 入院。手術療法により回復し平成14年3月退院するも, 呼吸機能,QOL,あるいは原疾患の予後がさらに悪化 平成14年5月16日,体力の低下により再び自宅で転倒し するという悪循環に陥ることがしばしばである。したが 左大腿骨頸部骨折で入院となった。全身状態が悪く,左 って,慢性呼吸不全患者に対する栄養管理は大変重要で, 大腿骨頸部骨折は保存的治療とされた。慢性呼吸不全の 必要カロリー量を摂取できるように高カロリー補助食品 改善をめざして包括的呼吸リハビリテーションが実施さ の利用を含め,食事を工夫することが大切である。経口 れるとともに,主治医よりNSTに栄養管理の依頼があ からの摂取量が不十分な患者に対しては,その一部ある った。 いは全部を静脈栄養法や経腸栄養法で補うことが必要に 入院時診断:陳旧性肺結核,気管支拡張症,慢性呼吸不 なる。 全,栄養障害,左大腿骨頸部骨折。 ただし,静脈栄養法や経腸栄養法実施にあたり,慢性 入院時身体測定値:身長148cm,体重28kg(3年半で 呼吸不全患者は肺性心を合併していることが多々あるた 17kgの体重減少) 。 め,過剰な水分負荷による右心不全の惹起にも注意しな 臨床経過:入院時より,1日1,500kcal程度の軟飯(老人 ければならない。また,経腸栄養剤は,動脈血炭酸ガス 食)を提供していたが,摂取カロリーモニタリングの結 (PaCO2)を上昇させず,呼吸機能に悪影響を及ぼさない 果,実際の摂取量は約700kcal/日にすぎなかった。そこ 成分組成であることが求められる。欧米では,以前から で,患者の嗜好に合致した高カロリーゼリー300kcal/日 慢性呼吸不全患者に対して,その病態に合致した高脂 を毎食添付したが,摂取量が徐々に低下し,摂取カロリ 肪・低炭水化物調整の高カロリー経腸栄養剤,プルモケ ーは高カロリーゼリーを含め700kcal/日に満たなくなっ Ñ ア が頻用されてきた。わが国においても平成14年9月 たため,脂肪乳剤併用で末梢中カロリー輸液約400kcal に臨床応用されるに至った。 を投与した。なお,日中帯を食事と肺理学療法に有効利 そこで今回,われわれNST (Nutrition Support Team) は,低栄養慢性呼吸不全患者の栄養管理において,胃瘻 Ñ からのプルモケア 24時間持続注入 (30mL/時間) により, 用するために,約3時間かかる点滴は夕食後〜就寝前後 に実施した。 しかし,平成14年7月時点で体重は24kgまで減少し, 栄養状態の改善に加え,呼吸機能の安定が得られた症例 るいそう・全身衰弱著明でコミュニケーションにも支障 を経験したので報告する。 を来し始めたため,栄養状態を再評価した (表1) 。現在 の食事+点滴による摂取エネルギー量では必要量を満た 症例 視鏡的胃瘻造設術)下経管栄養の必要性と安全性および 77歳,女性。 危険性を十分に説明し,承諾を得たうえで7月30日に 主訴:腰痛,体重減少。 PEGを施行した。 既往歴:20歳頃 肺結核。 18 さないことが明らかとなり,患者と家族にPEG(経皮内 家族歴:特記すべきことなし。 8月2日より,食事摂取に加え,当院で標準的に使用 している経腸栄養剤CZ-Hi 200kcal/200mLの注入を開始 した。食事摂取可能であることを重視し,経管栄養は食 下していることより,BCAAが強化されているヘパス 事摂取量の不足を補助するものと位置づけ,食事摂取や 200kcal/200mLを追加した。 肺理学療法の実施に影響がないように,また深夜の飢餓 特別食とPEGからの経腸栄養剤の夜間注入で必要エネ 状態を改善するために就寝前に投与した。しかし,全身 ルギー量を摂取できるようになり,栄養状態,全身状態 状態の悪化のためか高カロリーゼリーはすべて嚥下でき が改善しはじめた。PEG施行2ヵ月後の9月には,5 るが,通常の食事ではすべてを嚥下できず,数時間後ま kgの体重増加 (24kg→29kg) がみられた。しかし一方で, で食塊が口腔内に残存していた。そこで,患者と食事内 投 与 カ ロ リ ー の 増 量 の た め か P a C O 2 は 上 昇( 約 8 0 〜 容について相談し,毎食,高カロリーゼリー300kcal+ 100mmHg)し,夜間NPPVの導入にもかかわらずコント お吸い物50kcalの特別食を提供することにした(1食約 ロール不良な状態が続いていた。そこで,9月30日に, 350kcal,1日約1,050kcal)。なお,経腸栄養剤は,CRP 注入内容を日本でも臨床応用可能となった呼吸不全用の が常に7〜8前後と慢性気道感染を呈していたので,免 経腸栄養剤であるプルモケアÑ375kcal/250mLに変更し 疫 栄 養 の 面 か ら 8 月 8 日 よ り イ ン パ ク ト Ñ2 5 3 k c a l / た。また,徐々に胃内容物の逆流誤嚥を繰り返すように 250mLに変更,さらにFisher比が2.36(通常:>2.6)と低 なり,通常の経腸栄養が困難となりつつあった。そこで, 10月8日より,経口からの摂取は毎食高カロリーゼリー 表1 のみ(摂取量は自由)とし,ポンプを用いてプルモケアÑ 栄養評価(平成14年7月時点) 1,125kcal/750mLの24時間持続注入(30mL/時間)を開始 身長148cm 体重24kg 標準体重48.2kg BMI11.0 上腕三頭筋皮下脂肪厚 (TSF) 4mm 上腕周囲長 (AC) 15.1cm 上腕筋周囲長 (AMC) 13.9cm %AMC 58.0% 血清アルブミン (Alb) 3.2 g /dL 末梢血リンパ球実数 1348/μL BEE (基礎代謝エネルギー量) 補正BEE エネルギー必要量 補正エネルギー必要量 【活動係数 (寝たきり) 1.0 した。その結果逆流誤嚥はなくなり,気道感染症を発症 することなく,全身状態の顕著な改善が得られた。11月 11日以降,病状は全く安定し,12月9日の動脈血液ガス 分 析( O 2 0.75経 鼻 下 酸 素 吸 入 )は pH 7.4, PaCO 2 66mmHg,PaO2 68mmHgと呼吸機能の改善も得られ, 現在に至る (図1) 。 785kcal 1,017kcal 1,020kcal 1,322kcal 考察 傷害係数 (慢性呼吸不全) 1.3】 慢性呼吸不全患者では,肺拡張のため横隔膜が胃を圧 10/8 CZ-Hi 200kcal(200mL) 9/30 8/16 ヘパス200kcal(200mL) 8/7 8/2 インパクトÑ 253kcal(250mL) 375kcal(250mL) 経腸栄養 経口食 特別食 1,050kcal プルモケアÑ 1,125kcal(750mL) 高カロリーゼリー 450kcal PaCO2 (mmHg) 120 Alb 体重 (g/dL) (kg) 100 3.0 30 80 2.0 25 60 40 9/24 20 経腸栄養剤投与法 0 平成14年 7月1日 15日 図1 8/2 10/8 就寝前投与 徐々に逆流誤嚥による感染症頻度up 29日 8月12日 26日 9月9日 夜間NPPV 1.0 20 24時間持続注入 23日 10月7日 21日 11月4日 18日 12月2日 16日 30日 0 0 平成15年 1月13日 臨床経過 19
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