会長 大嶋 謙嗣 意志が全て 「ライフ イズ ビューティフル」

2015/08/01
関係各位
Far East Group
会長
大嶋 謙嗣
意志が全て
「ライフ イズ ビューティフル」
1997 年
ロベルト・ベニーニ監督
冷夏という予想をさらっと裏切り、今年も暑い夏がやってきた。
今月は 69 回目の終戦日を迎える。「平和は大切だ」「命は尊い」と叫ぶ前に、
「なぜ
戦争が起こったか」を後世に伝えるべきかもしれない。
戦争については、こんな見方を「ワイルドオリーブの冠」の中でラスキンが述べてい
る。
「私が、戦争はすべての技術の基礎だというのは、戦争が人間のあらゆる高い徳と
能力の礎だという意味でもある。この発見は非常に恐ろしいことだったが、否定できな
い事実に思えた。・・・簡単に言えば、偉大な国民は皆、その言葉と真実と思想の力を戦
争で学ぶこと、戦争に養われ平和で消耗させられること、戦争に教えられ平和に欺かれ
ること、戦争に鍛えられ平和に裏切られること、要するに、戦争で生まれ平和で息を引
き取ることがわかったのだ・・・」
。
また、ドイツの思想家レッシングはこう述べている。
「戦闘というものは本来、攻撃
的であるにせよ防御的であるにせよ、残忍で間違った行為かもしれない。しかし、我々
は大いなる間違いの中からでも、美徳が湧き出ることを知っている」。
戦争の悲惨さから、我々は平和を望み、命を叫ぶ。しかし、平和な時代になると、か
えって心が退化し、命の尊さ疑うような事件も続発するのは皮肉なことだ。物事は多面
的。裏も表もあるのだから、片側だけから見て良し悪しを言うべきじゃないのだろう。
21 世紀の今日、70 億人の人類の叡智をもってしてもこの地上から戦争を無くすこ
とはできていない。どうすれば戦争を止められるのだろう。人間への信頼はあるのだろ
うか。何が道理で、何が公正で、慈悲はあるか・・・という視点からも、問題解決の方法
を探るべきかも。嘆くことより、希望を持って行動・挑戦し続けることは、いつの世で
も必要不可欠なことだろう。
前置きが長くなった。さて、今月の映画は第二次大戦下で起こった人類の蛮行、ユダ
ヤ人迫害(ホロコースト)をユダヤ系イタリア人親子の視点から描いた作品。
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La vita e bella. 人生は美しい・・・という信念を持つ男が、強制収容所という極限の状
況下で、どうやって戦い、家族を守り、そして何を残したか・・・。そろそろストーリー
を紹介する。
主人公グイド(ロベルト・ベニーニ)はユダヤ系イタリア人。1939 年、彼は友人
とふたり、叔父を頼りに北イタリアの田舎町アレッツオにやってきた。
「姫さま、こんにちは!」
。アレッツオにやってきた日、グイドは納屋の二階から落
ちてきた小学校の教師ドーラと出会う。ドーラを抱きとめたグイドは、彼女に一目惚れ。
彼は、彼女と出会う偶然を何度もの必然に変えていく、グイドが彼女に仕掛ける沢山の
素敵な魔法。「人生は美しい」という信念を持った、陽気なグイドの武器は機転とユー
モアとイマジネーション。
アレッツオで彼は、ウエイターの仕事に就く。叔父はグイドに、おじぎの仕方から教
える。「おじぎは、花がこうべを垂れるように。でも垂れ過ぎたら枯れ花だ。給仕は従
者ではない。奉仕者なのだ。神は人間に奉仕するが、人間の従者ではないのだよ」
。機
転とユーモアで、彼は次々と仕事をこなしていく。
ドーラとグイドとの関係はその後、急展開。
「空から降ってきたり、自転車でぶつか
ったり、学校に行っても会ったり、夢の中でも会う。・・・すっかり私に惚れたね。降参、
君の勝ちだ」。そして駆け落ち同然で彼女と結婚。やがて一人息子のジョズエをもうけ
る。グイドの夢だった本屋も開業にこぎつけ、家族で幸せな日々を過ごす。ハッピーエ
ンド。めでたしめでたし。・・・映画が前半で終われば、そう言えた。
が、戦時色は徐々に濃くなり、ユダヤ人に対する理不尽な差別や迫害がひどくなって
くる。そして、グイド一家はナチス・ドイツにより強制収容所へと送られることになる。
・・・ここから、家族を守るためのグイドの戦いが本格化する。
強制収容所行きの列車に不安がる息子のジョズエに、
「お前の誕生日に計画していた
サプライズ旅行だ。行き先は言わない。その方が楽しいから」と父グイドは話す。やが
て収容所に到着。母ドーラと別れたジョズエは不安で仕方ない。ここでグイドは、ドイ
ツ語がジョズエに通じないことを逆手にとり、皆の前でナチス・ドイツ軍の通訳をかっ
てでる。彼は収容所でのルール説明を、全員参加のゲームの話にすり替えてしまう。
「こ
れからゲームを始める!全員が参加者だ!1,000 点まで取ったら一等賞で商品はホン
モノの戦車だ!我々は悪人の役だから、怒鳴る!怖がったら減点だ!減点になるのは、
まず泣く者!ママに会いたがる者!おやつを欲しがる者!・・・分かったか!」
。父の通訳
を聞いて、ワクワクした表情を取り戻すジョズエ・・・。収容所で「思ったとおりだ。素
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敵なところだね」とジョズエに語ったグイドの言葉は、人間の残酷さや理不尽さから我
が子の心を守る戦いへの「宣戦布告」だ。
収容所での日々を、グイドは持ち前の機転とユーモア、イマジネーションを武器に戦
い始める。日々の強制労働の合間に、ナチスの目を盗んでドーラとの思い出の曲を宵闇
へ向けて流したり、
「こんにちはお姫様。昨夜は君の夢を見たよ。・・・君だけを想ってい
るよ」と、マイクでドーラに向けて話しかけたりして、息子と自分は大丈夫だと伝え続
ける。ある日、以前グイドが給仕をしていたホテルの馴染み客だったドイツの従軍医師
と偶然出会い、収容所から逃げる方法を相談する。彼から「大事な話がある」と言われ、
しかし思い切り肩透かしを食らって失望するグイドは、機転とユーモアでは乗り越えら
れない現実を目の当たりにする。しかし、彼には「どんな状況下でも、人生は生きるに
値するほど美しい」という信念と、守るべき大切な家族がある。戦いを途中で止めるこ
とはない。
やがて、戦争は終局に向かう。収容所のドイツ軍も連合国軍に対して最後の抵抗を試
みる。
「ジョズエ、皆がお前を捜してる。明日の朝、ゲームは終わるんだ。今夜見つからな
ければ 60 点だ。今 940 点!エラーをするなよ。あの箱の中に入っていろ。もしパパ
の帰りがすごく遅くても、絶対に出てくるなよ。外に出ていいのはすごく静かになって、
誰もいなくなってからだ」
。そう言って、ジョズエを建物の隅にある大きな箱の中に隠
し、グイドは女装してドーラを助けに行く。が、ドーラを見つける前にドイツ軍に見つ
かってしまい、背後から銃を突きつけられ連行されるグイド。途中、ジョズエを隠した
箱の前を通る。ジョズエは箱の中から父グイドと目が合う。グイドはそっとウインクし
て、ジョズエの前をおどけて行進するように歩いてみせる。ジョズエは笑い声が外に漏
れないように手で口を塞ぎ、箱の中で笑いをこらえている。・・・やがてジョズエの視界
から消えていく父グイド。そして・・・轟く銃声。
どれくらい時間が経っただろうか。静寂の広がる収容所内の広場に、ジョズエがひと
り立ち尽くしている。彼は周りを見渡す。そこに連合国軍の戦車がやってくる・・・。
ジョズエは連合国軍の兵士に抱かれ、戦車で凱旋。途中で母ドーラと再会。
「勝った
よ!1,000 点取ったんだ!すごいよ!」。
ジョズエが後に回想する・・・これが私の物語。父が命を捧げて伝えてくれた「ライフ・
イズ・ビューティフル」・・・私への贈り物だ。
La vita e bella. 人生は美しい。今夜は、人生に・・・乾杯。
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