内科 福本 まりこ みなさんは、橋本病という病気のことを聞かれたことが

住吉市民病院だより
2015 年 12 月号(No,98)
大阪市住之江区東加賀屋1-2-16 TEL(06)6681-1000
URL(http://www.osakacity-hp.or.jp/sumiyoshi/)
編集・発行
内科
住吉市民病院広報委員会
福本 まりこ
み な さ ん は 、橋 本 病 と い う 病 気 の こ と を 聞 か れ た こ と が あ り ま す か ? 橋 本 病 は 日
本 人 の 橋 本 博 士 が 1912 年 に 発 見 し た 病 気 で す 。 聞 き な れ な い 病 気 か も し れ ま せ
ん が 、 比 較 的 女 性 に 多 い 病 気 で 中 年 女 性 の 10 人 に 1 人 く ら い の 割 合 で み ら れ る
といわれています。
橋 本 病 は 、甲 状 腺 に 慢 性 の 炎 症 が 起 き て い る 病 気 で す 。甲 状 腺 は の ど の 前 側 で 、
ハート型に似た形をした臓器です。普段は甲状腺ホルモンを作っています。甲状
腺 ホ ル モ ン は 全 身 の 血 圧・脈 拍・代 謝・体 温 な ど を 正 常 に 保 つ 働 き を し て い ま す 。
甲状腺に慢性の炎症がおきる原因は、自己免疫というものです。免疫とは、本来
なら外敵から自分の体を守る働きを持つものですが、それが逆に自分の体に反応
してしまっている状態を自己免疫と言います。橋本病の場合は、自分の免疫系が
自分の甲状腺に反応してしまい、その結果、甲状腺に炎症が起きている状態なの
です。
橋本病の場合、甲状腺に炎症があるだけでは、特に問題はありません。ほとん
どの橋本病の患者さんは、ただ甲状腺が腫れているだけで、甲状腺機能は正常で
す。ただし、炎症が進むと甲状腺の働きが低下してきて、甲状腺機能低下症(=
ホルモンが不足した状態)になることもあります。また、特に妊娠中は少しの低
下であっても、流産や早産、低出生体重児のリスクが上がることがわかってきて
おり、妊娠中だけ甲状腺ホルモンの錠剤を内服する治療が必要となる方も多いで
す。妊娠中には流早産のリスクを早期に発見するために、妊娠初期には一度検査
を受けてみましょう(当院では妊娠初期に必ず測定することになっていますので
ご安心ください)。甲状腺機能低下症の症状には「皮膚がかさかさする」「顔や
手がむくむ」「寒がり」「便秘」「あまり食べないのに太る」「髪の毛が抜ける」
「生理の量が多い」「物忘れしやすい」などがあり、中年以降の女性にはよくあ
る症状ですので、これらの症状があっても甲状腺機能低下症とは限りませんが、
妊婦さん以外でも一度、甲状腺機能の検査を受けられたほうが良いでしょう。
橋本病のような自己免疫疾患はある程度遺伝しや
す い も の で す が 、遺 伝 子 が 全 く 同 じ 一 卵 性 双 生 児 の
調 査 で も 約 35%の 発 症 率 で す の で 、 親 子 や 親 せ き
に甲状腺疾患があるという方ではもっと低い確
率だといえます。発症には遺伝以外にも何らか
の環境因子が関与していると考えられています。
発 症 の 誘 因 と し て よ く 見 ら れ る の は 、出 産 や 大 き
なストレスのほか、ヨードの過剰摂取があります
の で 、ヨ ー ド を 多 く 含 む 食 品( 昆 布 、わ か め 、の り
(佃 煮 な ど の 加 工 品 含 む )、ひ じ き 、寒 天 、ヨ ー ド 卵 )
の取りすぎにも注意しましょう!
感染管理認定看護師
山本 紀子
インフルエンザは、ワクチン(予防接種)で
予防できる病気です。インフルエンザは、1m
以内の咳やくしゃみなどの飛沫や、ヒトの手や
物品を介して、ヒトからヒトに感染します。通
常、冬の始めから春先にかけて毎年流行します。
ほとんどが自然に治る病気ですが、肺炎、気管
支炎のほか、子どもでは脳症を起こす場合があ
り、重症になることもあります。
インフルエンザワクチンは、不活化ワクチンといって、ウィルスを殺して毒
性をなくしたものです。ワクチンは生後6カ月の赤ちゃんから接種することが
できます。また胎児に影響を与えるとは考えにくいため、妊婦さん(妊娠初期
を避ける)も接種することができます。授乳中の女性でも同様です。接種する
時期は、産婦人科の医師と相談しましょう。
インフルエンザウィルスは、毎年のように変異しながら、冬に流行を繰り返
しています。そのため毎年ワクチンを受けることが必要となります。
また、インフルエンザワクチンの発症予防効果は、接種後2週間からおよそ
5カ月程度といわれています。効果的な接種の時期は、少なくとも12月中旬
までが良いでしょう。
インフルエンザワクチンは、鶏卵を原材料としています。近年は高度に精製さ
れていますが、ごく微量の鶏卵由来成分が残り、これによりアレルギー症状が
まれに起こることがあります。過去にインフルエンザワクチンを接種して具合
が悪くなり、接種を見合わせることになった方は、流行時の体調管理を心がけ
ます。特に高齢の方や慢性疾患のある方、疲れ気味、睡眠不足の方は、人混み
や繁華街への外出を控えましょう。帰宅時のうが
い、手洗いも有効です。空気が乾燥するとインフ
ルエンザにかかりやすくなるため、外出時にはマ
スクを着用したり、室内では適度な湿度を保つこ
とも、インフルエンザの予防には効果的です。咳
やくしゃみが出るときは、周囲の人にかからない
よう顔をそらして、ティッシュなどで口と鼻を覆
い、咳エチケットをおこないましょう。
ひ
ま
つ