配付資料

各国の大学改革
の現状
アメリカ・ヨーロッパ・アジア
山形大学
2005年12月16日
桜美林大学 特任教授 潮木守一
ヨーロッパで
何が起きているか?
1
フランスでの若年失業者の暴動(2005年11月発生)
フランス都市郊外での暴動発生
起こるべくして起きたこと
z 若年失業者
z 移民家庭の若者
z 高校中退者
z 職もなければ、通うべき学校もない
z 青年の marginalisation
z
2
ministere-interieur
Nicolas Sarkozy
(フランス内務大臣)
サルコジ内相の
「社会のくず」発言
z Nicolas
Sarkozy
z 移民家庭生まれ
z 1955年生まれ
z 1978年私法で学士課程修了
z 1981年政治学で修士号取得(DEA)
z 弁護士から政界へ
3
内相と暴徒の対立が意味すること
z 先進福祉国家におきた象徴的な事件
z 社会的公平政策の予期せざる結果
z 両極分解現象
z 先進国共通の傾向
1960、70年代の世界的動
向
z なかなかいけない学校を、でき
るだけ多くの若者に
z 経済成長の成果を教育に
z 人材育成を通じて、将来の展
望を
z 中等教育・高等教育の拡大
4
先進国共通の拡大
z 第2次世界大戦後の高等教育拡
大
z それ以前、アメリカ以外は同一年
齢層の5%以下しか就学せず
z 現在では30−50%
1960年当時の大学進学者
(同一年齢層に占める割合)
35
35
30
25
20
14.1
15
11
10
5
7.2
5.5
3.2
3
6.4
3.7
4.2
オーストリア
ベルギー
デンマーク
フランス
ドイツ(西)
スエーデン
イギリス
カナダ
アメリカ
日本
0
5
先進国では6割以上の若者が、高等教育を
受けるようになった。
高等教育入学率(同一年齢層に対する)
80
70
60
50
長期高等教育
短期高等教育
40
30
20
10
メ
ア
イ
ギ
リ
リ
カ
ス
本
日
ツ
イ
ド
ン
ラ
フ
フ
ィン
ラ
ン
ス
ド
0
1960∼2000年の
高等教育の規模拡大
z
z
z
z
z
イギリス= 16倍
フランス= 7倍
ドイツ
日本
=4倍
アメリカ
6
アメリカでの高等教育の拡大は
誰によって担われたか
大学生の公私割合(アメリカ。2年制を
含む)
20000
15000
私立
公立
10000
5000
0
1960
2000
日本での高等教育の拡大は誰によって
担われたか
大学・短大の拡張(日本)
4,000,000
3,000,000
2,000,000
1,000,000
0
私立
国公立
1960
2000
7
z大学拡大の背後にあっ
たものは何だったの
か?
脱産業社会の宿命
z 生産性の向上
z 労働時間の短縮
z それほど多くの労働力は不要となった
z グローバル化
z 生産拠点の海外流出
z 雇用機会の減少
8
高校・大学の拡大
z 家計水準の向上
z 労働から解放された青年期の登場
z 教育年限の延長
z 不本意進学の増加
z 学校・大学に閉じ込められた若者
若年失業の増加
z 通うべき働き場がない
z 高校にはいける
z 大学へもいける
z 増える高校・大学中退者
9
第1図:若年失業率(15歳∼24歳)
30
25
20
フランス
ドイツ
イギリス
日本
15
10
5
0
73 79 83 90 96 00
福祉路線の見直し
z 限界にきた公的負担
z 人口老齢化→福祉医療費の増加
recovery の登場
z 無償制への見直し
z Cost
10
目隠しされたフンボルト
そんな予算カットは聞こえない
アメリカで何が
起きているのか?
学歴社会アメリカ?
11
アメリカでの資格別年収
120000
101375
100000
85675
80000
63592
60000
50623
40000
26795
20000
0
高卒
学部卒
修士卒
博士卒
専門職卒
年間学位取得数(アメリカ)
140
(1,000)
120
準学士
学士
修士
博士
専門職学位
100
80
60
40
20
0
1981 1985 1990 1995 2000
12
アメリカの大学生の年齢構成
2001
61
1980
63
0
20
22
17
24
40
18−24歳
60
25−34歳
80
11
100
35歳∼
新規市場の開拓
z 中・高年齢層市場
z 投資に値する教育
z 新規事業開拓のための資金源
13
アメリカの大学の収入源
51
公立大学
私立大学
12
私立研究大学
15
0
19
24
14
25
31
13 12
40
20
60
40
51
公的資金
授業料
個人寄付
基本財産収入
その他
20
20
80
100
120
学生一人当たり
資産運用収益・寄付(年額・万円)
600
511
500
400
慶応
オックスフォード
ケンブリッジ
ハーバード
300
200
100
21
44
32
0
14
アジアで何が
起きているのか?
欧米豪の大学のアジア進出
z
z
z
z
z
巨大なアジア市場
豪本国への留学生13万人
「海外キャンパス」での外国人学生約4万4千人
(2004年度の統計)
豪へ留学しなくとも、豪の大学の学位がとれる
輸出産業としての英語教育
15
中国へのイギリスの大学進出
z四川大学での「英国高等教
育学歴プロジェクト」
z中国内で3年間、英国で1年
z英国の学位取得
海外大学進出の背景
z 国際語となった英語
z 留学よりも安い経費で学位取得可能
z 英大学法人の高い機動性
z 資金源多様化の必要性高まる
z 政府資金が頼れなくなった
16
日本にとって何を意味
しているのか?
国境を越えた大学生市場の出現
国境を越える労働力の移動
z 国境を越えて通用する知識・スキルへの
需要
z 資格に求められる国際的通用性
z 日本にとってはチャンス、それとも脅威?
z
17
日本の大学にとっての危機
z
z
z
z
z
z
アメリカの州立大学では州民家庭には安い授業
料
ヨーロッパでは、70年代、大学の無償化が進む
日本の高等教育を支えたのは「健気な親達」
「健気な親達」の消滅
18歳人口減は危機ではない
「健気な親」の消滅こそ危機
なぜ「健気な親」が消滅しつつある
のか
z
z
z
z
z
z
z
親が不人情になったわけではない
生涯設計の変化
頼りにならない年金制度
子供に依存できる時代ではない
自衛策が必要
強まる消費者意識
消費者の期待に応えられない大学は消滅するし
かない
18
何を学びたいのか:
何が求めれられているのか
z 避けられないカリキュラム改革
z 何を学生に与えたらよいのか
z カリキュラム改革には既存の学
部・学科の再編が不可欠
改革論議が見落としている問題点
z もはや「大学」をひとくくりにはできない
z それぞれの大学には、その大学なり
のミッションがある
z その明確化が必要
z 構成員間での分有が必要
z Pigeon Box Theory が示唆するも
の
19
クラーク・カー総長の嘆き
カリフォルニア大学総長
z 「Multi-versity] の著者
z すべての教員にとっての共通関心事は「駐
車場問題」だけ
z 各学部間を繋いでいるのは、暖房用のパ
イプラインだけ
z
大学に求められること
z 共通解はない
z 外部環境分析と内部環境分析
Identityの明確化
z アカデミック・ヴァイタリティの維持・強
化
z University
20