ドラム缶の塗装

工場ルポ No.303 ドラム缶の塗装
株式会社 山本工作所
〒805-8514
福岡県北九州市八幡東区大字枝光 1950 番地の 10
TEL(093)681-2431 / FAX(093)681-0345
1.会社の概要
今回の工場ルポは、1964 年の創業以来、主力製品のドラム缶を中心に、バグフィルター,チューブラ
コンベヤーなどの製造・販売を手がけ、永年の技術の伝承と革新を貫いてきた、株式会社山本工作所の
本社・工場を取材して、紹介する。
全国区で、有名なテーマパーク、北九州市の“スペースワールド”のすぐ隣に、本社・工場を構えて
いる。
ドラム缶の製造・販売で多くの実績を誇る同社は、その用途に合わせて 10ℓから 200ℓまで数多くの
バリエーションを誇る(第 1 表参照)。
製造工程においてもドラム缶の容量により、プロセスが異なる。当然、塗装工程においても複数の
ラインで塗装が行われており、塗装スタイルも設備もさまざまである。
本号では、小型の 10~20ℓタイプのドラム缶の製造プロセスと塗装ラインを紹介する。
(1) 製造プロセス
素材は、スチールと亜鉛メッキ鋼板(約 90%)。
一般的なドラム缶の製造工程は
「胴板」→鋼板→シーム溶接→胴成型
「天板・地板」→天板・地板→口金圧入・刻印
の工程を経る。
この後に、「胴板」「天板・地板」は、表面処理,組み立て工程に移行し、組み立て後に塗装ライン
へと移載される。
(2) 塗装工程
小型ドラム缶の塗装工程を以下に紹介する。
前処理(脱脂装置・簡易防錆)→水切り乾燥炉→組み立て→洗浄ステーション→水切り乾燥(120℃×
4min)ここまでは、ローラーコンベヤー。
この後に、オーバーヘッドコンベヤーの塗装ラインに移載される。
着荷→水洗塗装ブース(静電塗装システム・1 レシプロ 2 ガン(胴板塗装用)+追従ガン 3 基(天板
塗装用 2 基・地板塗装用 1 基)の 5 ガンが設置されている(旭サナック㈱)。
レシプロは、
サンベル(ESA120
が装着されている)→焼き付け乾燥(160℃×20min)→脱荷
(3) 塗装データ
小型ドラム缶の塗装ラインのコンベヤーは、全長:140m。運行速度は、3~3.5m。
塗料は、アクリル,メラミン焼き付けタイプなど。膜厚は、15µ。小型ドラム缶の塗色は主要 10 色。
天板・地板と胴板の色が違うものは、エアレス塗装を行っている(200ℓドラム)。
塗色は、全ドラム缶で約 100 色が取り扱われている。
(4) 塗装の特徴
小型ドラム缶の塗装ラインに静電塗装システムを導入したのは、自動化の推進と品質の向上に
あった。自動化は、作業環境の改善に寄与している。さらに、コンベヤーに工夫が施されており、
ゴミの付着防止に対処したダスカバリー方式を採用。
塗装ブースの天井を高くしたことも大きな特徴。このため、メンテナンスが容易になり、作業性の
向上につながっている。
品質管理においては、サンベル(ESA120)を装着した静電塗装システムの導入により
①
均一な粒子分布のスプレーパターンが得られたため、高品位な仕上がりが得られる。
②
乱流の少ないエアの流れにより、高い塗着効率が得られる。
など、塗装環境が大幅に改善されたことと、ラインの自動化が推進されたのは大きなメリットである。
2.品質検査
検査工程においては、ヘリウムテスターによる気密検査が行われている(200ℓドラム)。
ドラム缶は流通容器として、危険物や特殊薬品などの代表的な保管容器として重要な役割を担って
いる。内容物も液体のほか固体,粉体へと用途が拡大されている。
このため、検査工程には設備の充実を図り、漏えいなどのチェックが徹底して実践されている。
ドラム缶は、洗浄して繰り返し使用されるだけでなく、スクラップとして再生されるなど無限の
可能性を秘めている。
同社においても、新缶の製造はもとより、使用されたドラム缶を回収,洗浄後に再塗装して、再生缶
として出荷している。
企業ポリシーは、常に新しい視点での新技術,新製品の開発と品質の向上を目指して、地域社会との
連携。環境対応を重視した経営姿勢には、今後の業態が大いに注目されよう。
(野)
▲水洗塗装ブース(外面塗装)
1 レシプロ 2 ガン(胴板部塗装)+追従ガン 3 基
(天板塗装用:2 基・地板塗装用:1 基)の計 5 基
▲塗料供給ポンプ
▲ギアポンプ
▲塗装制御盤