5.仕事と家庭の両立

5.仕事と家庭の両立
少子化の背景のひとつに、家庭よりも仕事を優先するという昔ながらの風潮があると考
えられます。特に男性においてはこの傾向が顕著であり、子育ては母親がするといった考
えを持っている人がまだ多く見られます。男性を含めた働き方の見直しや、企業における
子育て支援等、仕事と家庭の両立を支援していくことが必要です。
(1)男性を含めた働き方の見直し
① 事業主への啓発
・事業主を対象に子育て支援に対する意識の向上を図る
琴浦町には、約853の企業がありますが、従業員数が10人を超える事業所は約12
0社のみで、ほとんどが中小企業です。そして、このところの景気の低迷により、企業を
取り巻く環境はいっそう厳しさを増しているのが現状です。このような環境の下では、
少々無理をしても自分の職場を守るため、仕事が優先されがちです。
このような現状ではありますが、男性を含めたすべての労働者の働き方の見直しを推進
するためには、まず事業主が子育てをしやすい職場環境を整備することの必要性を理解す
る必要があります。そのためには、事業主に対し、子育て支援に対する意識の向上、各種
制度の固定を図るための啓発が必要です。
具体的には、事業所内保育園の整備や育児休暇・看護休暇等の取得、子育て期間におけ
る残業時間の縮減等、子育てをしやすい職場環境づくりの啓発を行います。
このように、企業が次世代育成支援対策を推進することは、将来的な労働力の再生産に
寄与し、社会の持続的な発展や企業の競争力の向上にもつながるとともに、個々の企業に
とっても、当該企業のイメージ・アップや優秀な人材の確保、定着等具体的なメリットが
期待できます。このようなことを事業主に理解してもらい、主体的に取り組んでもらう必
要があります。
② 労働者への啓発
・労働者の意識改革の推進
・子育てに関する制度の広報
男性を含めたすべての労働者の働き方
の見直しを推進するためには、環境を整備
するだけではなく、個々の労働者の意識改
革を推進する必要があります。
具体的には、育児休暇や子どもの看護休
暇等の取得を促す呼びかけや広報活動を
行うとともに、特に男性が子育てに関わる
必要性を理解してもらうような講演会等
を開催して意識の向上を図っていきます。
「これなにかな~?」(浦安保育園)
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(2)仕事と子育ての両立支援
保護者の仕事上の立場、仕事における目標と将来像を常に検証しながら家庭がどうある
べきかを考え、その視点にたち、子どもの発達段階に応じた子育てが仕事とバランスよく
行え、子どもたちの幸せにつながるような環境を築かなければなりません。単に、仕事を
しているから保育園に預けるというのではなく、常に子どもの視点に立って、それが子ど
もにとって幸せなことなのかどうかということを考えながら行動することが必要です。
このことを企業ばかりでなく、住民一人ひとりが認識して行動できる社会をつくるため
の啓発活動を行う必要があります。
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6.子ども等の安全の確保
(1)乳幼児の不慮の事故防止への取り組み
① 事故予防のための啓発
・年齢による事故の違い
・不慮の事故に遭わないための方法の啓発
乳幼児は危険を自分で避けることができず、保護者を中心とする周囲の大人の注意が必
要です。年齢・発達段階により起こりうる事故の内容が異なるため、保護者等は子どもの
成長にあわせた対応が必要です。乳幼児健康診査や家庭訪問の中でこれまでの事故や小さ
なケガ等の確認をしながら、さらに子育てひろば、保護者会等乳幼児のいる保護者等が集
まる機会を利用し、不慮の事故に遭わないための方法等の啓発を行います。
② 事故発生時の応急処置方法の啓発
・万一、事故に遭ったときの応急処置の方法の啓発、講習会の開催
万一、子どもが事故に遭ってしまった場合、その近くにいる大人の対処の仕方が重要で
す。あらかじめ、病気を含め、事故の形態ごとの応急処置の方法がわかっていれば、落ち
着いた対応ができ、被害の拡大を防ぐこともできます。
このため、琴浦町では、保護者や地域の住民が子どもの不慮の事故に対して冷静な対応
ができるよう、パンフレット等による啓発を行い、専門の職員による救急法の講習会等を
開催していきます。
(2)交通安全の確保
① 交通安全教育の推進
・関係機関との連帯による参加・体験型の教育の実施
・職員の指導力の向上と民間の指導者の養成
現在は車社会であり、道路の整備も進んできたことから、交通事故への危険性はますま
す高まる一方です。
このため、琴浦町では交通事故を防止するため、小学校、保育園、幼稚園等で警察署員
等による参加・体験型の交通安全教育を行うとともに、交通安全母の会(うさちゃんクラ
ブ)が街頭指導を行う等、交通安全に対する指導・啓発を行っています。
また、子どもに関係する職員一人ひとりが子どもの命を守るという意識を持ち、研修等
を通じて交通安全の指導力をつけるとともに、交通安全指導員を養成し、地域全体で交通
安全について取り組む体制を整えます。
② チャイルドシートの正しい使用の普及啓発
・着用率向上に向けての講習会や啓発活動の実施
チャイルドシートの着用は、万一交通事故にあった場合、子どもの命に関わる大変重要
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なことです。そして、チャイルドシートを着用させ、子どもの命を守るのは保護者の義務
でもあります。
しかし事故に対して、意識の低い保護者もかなりあります。また、チャイルドシートを
使用していても、その使用方法が適切でなければ、その機能を発揮することができません。
このため、琴浦町では保育園、幼稚園等を通じて、警察署員による装着講習会等を開催
し、チャイルドシートの正しい使用の普及啓発を行います。
(3)子どもを犯罪等の被害から守るための活動の推進
・ネットワークを活用し、犯罪等に関する情報を速やかに提供
・PTA やボランティアによるパトロール活動の実施
・声かけ運動の実施
・「子ども110番の家」の拡充
現在、学校等は地域に開かれたものを目指していかなければならない一方で、侵入者に
より、子どもが被害に遭う事件が起こっています。
このため、学校等は危機管理マニュアルを作成し、犯罪が起こった場合の職員の対処法
を周知するとともに、防犯訓練等の実施により、迅速な対応ができる体制を整えています。
また、地域においては、PTA や青少年育成協議会と連携を図り、パトロール活動を実施
し、犯罪の防止に努めていきます。そして、日ごろから声かけ運動を行い、非行や犯罪が
起こりにくい環境をつくっていきます。万一、犯罪等が発生した場合、「琴浦町まちづくり
推進会議」等を活用し、犯罪情報の提供等を行い被害の拡大防止を図ります。
また、子どもを犯罪の被害から守るため、「こどもSOS連絡所」「子ども110番の家」
の増設を図ります。
(4)被害に遭った子どもの保護の推進
・カウンセリング体制の確立
犯罪等の被害に遭った子どもにとって事件は恐怖体験そのものであり、想像以上に心に
深い傷を負っています。そのため、被害に遭った子どもが一日でも早く元気な心を取り戻
すためには、まわりの温かい態度と気配りが必要です。
また、カウンセリングが必要な子どもについて、いつでも対応ができるよう、
子ども関係職員等は研修等で知識を深め、精神科医等とも連携して、カウンセ
リング体制を整える必要があります。
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7.要保護児童への対応
(1)児童虐待防止策の充実
児童虐待を考えるうえで大切なのは、その行為が、子どもの心身ともに安全で健やかに
育つ権利を侵しているかどうかということです。しつけであるとか、良い子にするためと
いう保護者の意図とは関わりなく、子どもにとって有害であるか、子ども自身が苦痛を感
じているかどうかという視点から判断する必要があります。いくら保護者が子どもをかわ
いいと思い、一生懸命子どものためにやっていることであっても、それが子どもにとって
有害な行為であれば虐待といえます。虐待は次の4つに分類することができます。
ⅰ)身体的虐待・・・児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
ⅱ)性的虐待・・・・・児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさ
せること。
ⅲ)ネグレクト・・・児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置
その他保護者としての監護を著しく怠ること。
ⅳ)心理的虐待・・・児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
児童虐待の背景は多岐にわたることから、児童虐待を防止し、すべての児童の健全な心
身の成長、ひいては社会的自立を促していくためには、発生予防から早期発見・早期対応、
保護・支援・アフターケアに至るまでの切れ目のない総合的な支援が必要です。そのために
は、児童福祉の関係者だけではなく、医療、保健、教育、警察等の地域における関係機関
の協力体制の構築が必要です。
具体的には、まず、発生予防として、日常的な育児相談機能の強化や、養育者が精神的
にも肉体的にも最も支援を必要とする出産後間もない時期を中心とした支援、次に、虐待
の早期発見・早期対応として、民生児童委員、地域のNPOやボランティア団体等との連
携、そして、保護・支援等として虐待の進行防止、家族の養育機能の再生を目指した支援
が必要です。
①虐待の発生予防
・出産後間もない時期の支援の充実(育児支援家庭訪問事業)
出産後間もない時期の子育ては、精神的にも肉体的にも過重な負担がかかり、そのスト
レスにより児童虐待にまで至ってしまうことがあることから、この時期に子育てOB(経
験者)やヘルパー等が家庭を訪問し、育児や家事を援助したり、保健師や保育士等により
育児支援に関する技術指導を行えるような体制づくりを検討していきます。
② 相談体制の充実
・関係機関の職員の虐待に関する研修への参加による資質の向上
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最近、児童虐待が深刻な社会問題になっています。本町での虐待の発生を未然に防止す
るため、子育て支援センター職員、保育士、保健師、民生児童委員等の福祉・保健業務に
携わる関係者は研修等に参加して、児童虐待の発生予防、早期発見に努めます。また、虐
待が予測される場合は、早期に対応し、子育てに対し精神的・肉体的ケアが必要な親子を
支えていくことができるよう、関係職員の資質の向上を図ります。
③ 虐待防止ネットワークの設置
・医療機関との連携→早期発見、
・関係機関へのスムーズな連絡、連携→早期対応
虐待が発生する要因としては、地域の子育て力の低下という環境要因に加え、家庭が抱
える夫婦関係の不和、就労や経済的問題、保護者や子どもの健康問題、近隣からの孤立等、
多くの課題が複合的、連鎖的に作用していることが指摘されています。複合的課題を抱え、
虐待が発生している家庭に対しては、単独の機関の限られた機能では効果的な支援を行う
ことは困難です。その家庭が抱える複合的な課題について、複数の支援機関が連携するこ
とが求められています。効果的な機関の連携には、関係機関がそれぞれの機能を十分理解
し、課題に対する認識や支援目標を共有化することが重要です。その上で、支援の主たる
援助者や役割分担を定める等、各関係機関が共通の支援目標に向けて、それぞれの役割を
果たしていくことが必要です。
このため、本町では、町民生活課を中心に健康福祉課、各保育園、幼稚園、小・中学校、
児童館等の関係機関で構成する児童虐待防止ネットワークを設置し、速やかに対応ができ
るように努めます。
(2)ひとり親家庭等の自立支援の推進
① 相談体制の充実
・民生児童委員等、身近な相談者による相談体制の充実
離婚の急増等で、ひとり親家庭が増えています。ひとり親家庭等の子育て、生活、就労
(仕事と家庭の両立)等の相談に的確に対応し、自立に対する手助けができるよう民生児
童委員をはじめ、母子・福祉担当等の職員が研修を受け、相談体制の充実に努めます。
② 生活支援事業の拡充
・支援内容の広報、支援体制の充実
国や県、町が行なっている各種手当ての支給についての内容や、必要なときに利用でき
る保育サービスについて、民生児童委員や広報での周知に努めます。
また、支援体制について、保育や教育の面だけでなくひとり親家庭の親が病気等で日常
生活に支障をきたす場合等の生活支援についても早期の対応に努めます。
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(3)障がい児施策の充実
① 幼児健康診査後事業の充実
・個々の状態に応じた相談体制の充実(学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(A
DHD)、自閉症等)
琴浦町では、6ヵ月、1歳6ヵ月、3歳、5歳の時点で健康診査を行っています。その
時点で精神や言語の発達が心配される幼児は、保健師によって相談やケア等を行なってい
ます。具体的には精密検査をすすめたり、必要に応じてケース検診を開始し、関係機関と
連携をとって支援しています。
さらに、保育士や保育園保護者会から小学校入学前の5歳時点での健康診査の要望があ
り、平成17年度から行っていきます。軽度の障害がこの時点で見つかった場合、教育委
員会・学校において教育的支援の実行を図っていくこととします。
② 障がい児保育の拡充
・障がいのある子どもとない子どもと一緒に生活する
保育園や学校でのノーマライゼーションが進んでいます。町内保育園では必要に応じて
保育士の加配を行う等して、障がい児を受け入れています。
時として、子どもの集団では障がい児に対する疑問や表現が子どもを傷つける場合もあ
ります。しかしながら、保育士が疑問に対して事実をきちんと伝えると子どもは子どもな
りに事実を理解して受け入れ、思いやりの気持ちも育っています。
今後も、保育園へ入園を希望する障害のある子どもについての受け入れ体制を整え、障
害のあるなしに関わらず、琴浦町で健やかに育つことができるよう努めます。
③ 在宅サービスの充実
・支援費制度におけるサービスの拡充
町内で、障害者支援費制度の事業所指定を受けているサービスはホームヘルプサービス
のみで、デイサービス、短期入所等の居宅支援サービスを提供する事業所がないことから、
近隣市町村の施設を利用しなければならない状況にあります。このため、本町において支
援事業所の拡大を推進するとともに、県に対し、広域的総合サービス提供を行なう事業所
が整備されるよう支援体制の充実を要請していきます。
また、支援費制度には介護保険の介護支援専門員(ケアマネージャー)が行うようなサ
ービスが盛り込まれていません。このため、サービス利用の相談窓口は健康福祉課で行っ
ています。今後は、行政側の相談体制を充実させるとともに、NPO 等による地域生活支援
センターの運営等も検討していきます。
更に、各種サービス提供における人材育成の推進を図り、障がい児やその家族の生活を
支援するための体制づくりについても努めていきます。
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④ 障がい児家庭の交流への支援
・同じ障害をもつ家庭同志の交流
障がい児のいる家庭の多くは、様々な悩みや不安を抱えていると思われます。この悩み
等を家族だけで抱え込むのではなく、同じ障害をもつ家族同士が集い、交流することによ
り、その悩みを共有し、解決の糸口を見出すこともできると考えられます。
琴浦町には、障がい児親の会としてつぼみ会、手をつなぐ育成会、肢体不自由児父母の
会等、個々の活動は行われていますが、これからはお互いに連携を図りながら、支援して
いく必要があります。
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