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海と 地 球の 情報 誌
ISSN 1346-0811
2013年11月発行
隔月年6回発行
第25巻 第5号
(通巻127号)
127
Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology
地球シミュレ ータで
Blue Earthをめぐる
沈 み込むプレ ート の行方
横 浜 高 校 サイエンス・パートナーシップ・プログラム
カ クレ クマノミ
海と地球の情報誌
地 球 シ ミュレ ー タ で
127
Blue Earth
を めぐ る
スーパーコンピュ ータ「地 球シミ ュレ ータ」は、
こ れまで見ることのできな かった“Blue Earth ”
地球の姿を
特集
地 球シミュレ ータで
Blue Earth をめぐる
コンピ ュ ータのなか に描き出してきた 。
地球シミュレ ータで再現さ れたBlue Earth を
めぐる 旅に出よう。
Aquarium Gallery
長 高水族 館
めぐる命 の つ な が り
カ クレ クマ ノミ
研究の現場から
JAMSTEC で地学と出会った
横 浜 高 校 サイエ ンス・ パ ートナ ーシップ・ プロ グラム
Marine Science Seminar
沈 み込 むプレ ートの行方
大林政行
地 球 内 部 ダイ ナミ クス 領 域 地 球 深 部 活 動研 究 プ ロ グラ ム
地 球 深 部 構造 研 究 チ ー ム 主 任 研究 員
BE Room
編集後記
『Blue Earth 』定 期 購 読 のご案 内
JAMSTEC
メール マガジンのご 案 内
裏表紙
Blue Earthをめぐる
世 界 で2 番目 に深 いホ ライソン 海 淵 へ
南太平洋・トンガ海溝
表紙
NICAM により 再 現さ れ た全球の 雲
画 像提供 :地 球環境変 動領 域 大 内和良 、
地 球シミ ュレータ セン ター 松岡大 祐
撮影 :藤牧徹 也
海がBlue Earth の
気候を左右する
世界 各地 の気 候・気象を 左右する 大きな要 因 の
1つ が 海 水 温 の変 化 だ 。た と え ば 台 風 が
生 ・発 達
す る に は 、 海 面 水 温 がお お む ね28 ℃ 以 上 で あ る こ
と が 必 要 とい わ れ てい る 。 異 常 気
も た らす エ ル
ニ ー ニ ョも 、 太 平 洋 熱 帯 域 の 海 水 温 の 分 布 が 変 化
す る 現 象 だ 。JAMSTEC
OFES
で は、 海 洋 大 循 環 モ デ ル
を 使 用 し て 、地 球 全 体
さまざまな海域の海
。
流 や 海 水 温を 再 現す る 研 究 が 進 め ら れ てい る
海洋 最 大の渦 、
アガ ラ スリ ン グ
膨 大な 熱を 輸 送し 大 気と の
熱 交 換を 通じ て気 候 に 影響
を 及 ぼす 海 洋循 環 は、気 候
変 動を 理 解 する 鍵 だ。海 洋
表 層 では、 暖 かい 海 水が イ
ン ド洋 から ア フリ カ 南 端を
経 由 し、大 西 洋の 暖 かい メ
キ シ コ湾 流と なる 。 アフ リ
カ 大 陸の 南 端で は、 アガ ラ
ス リン グと い う渦 が 暖か い
海 水 を 大 量に 輸 送 し て い る 。
色 は海水 温(赤 は暖かく 、
青は冷たい)を示 す
画 像提供 : 地球 シミ ュレ ータ セ
ン タ ー 佐 々 木英 治 ・ 木 田 新一
郎・ 松岡 大祐
Data SIO NOAA, U.S. Navy NGA. GEBCO
Image Landsat
黒潮 と親 潮
東シ ナ海を北上 して 日本列 島南岸に 沿って 流れる黒 潮
と、干 島列島 に沿って 南下 して日本 の東側 まで流 れる
親潮を 強調し て表 現している 。親潮と 黒潮 がぶつ かる
混合域で形成さ れる 渦も再現さ れている 。
色 は海水 温(赤は 暖かく 、青は冷 たい)を 示し 、色
の明る さは 流れの 速さ (明る いとこ ろは速く 、暗いと
ころは遅い)を 表す
画像 提供 :地球 シミ ュレー タセン ター 佐 々木 英治 ・松岡大 祐
地球温暖化を予測する
温 暖 化 は ど こ まで 進 む のか 。 そ れ を 予 測 する こ と
が、 地 球 シ ミ ュレ ー タ の大 き な 使 命 だ 。こ の 画 像 は 、
1900 年 の 気 温 を 基 準 (0 ℃ )に 、2100 年 に お ける
2100 年 まで に 地 球 の平 均 気 温 は5 ℃ 上 昇し た 。
る 植物分 布の 変化は、 光合成 による二 酸化 炭素 の
分 布 を 見る と、 気 温 上 昇 は 均 一 で は なく 、 地 域 に
吸 収 量 や気 候に も 影 響 を 与 える は ず だ 。そ の よう な
よっ て 大 き く 異 なる こ と が 分 かる 。 全 般 に 海 上 より
さ まざ ま な 影 響 を 気 候 モ デ ル に 組 み 込 ん で 温 暖 化
2100
10 ℃ 以 上 の 気 温 上 昇 を 示 す白 い 領 域 が 北 極 域 に 広 が っ て い る 。 北 極 海 は 現 在 、夏
気 温 変化 を 示 し た も の 。
「 経 済 成 長 優 先 で グロ ー バ
陸 上 で 上 昇 が 大 きく 、 北 半 球 の 高 緯 度 域 全 域 の 上
の 予 測 精 度を 向 上 さ せ るこ と 、 そ して 温 暖化 し た 地
ル化 が進 み、化石 燃 料と新技 術を バラン スよく用
昇 が 著 しい こ と が 見 て 取 れる 。 し かし 、こ の 気 候 モ
球 で 気 候 がど のよう に 変 化 す る の か 、 具 体 的 に 描き
い る 社 会 」 を 想 定し て 計 算 し た 結 果 、1900 年 か ら
デ ル は、 まだ 開発 の 途 上だ 。 た と えば 、 温 暖 化 に よ
出 す 研 究 が 行 わ れて いる。
年 の気 温上 昇
で も 海 氷 に 覆 わ れ てい る が 、 そ の 面 積 は 急 速 に 減 少 し て いる 。 こ の ま ま温 暖 化 が 進
め ば 、21 世 紀 中 ご ろ に は 夏 季 の 北 極 海 の 海 氷 は 消 滅 す る と い う 予 測 も あ る 。 海 氷
が 減 少 す る と 、太 陽 光を 反 射 せ ず 、 熱 を 海 が よ り 多 く 吸 収 し て 温 暖 化 が さ ら に 進 む
画像 提供: 人・自 然・ 地球共生 プロ ジェ クトK1 (AORI/NIES/JAMSTEC/MEXT
)
温暖化予測に重要な全 球の雲を再現する
NICAM
に よ り 再 現 さ れ た雲 の 分 布 と 降 水 量
梅 雨前線
地 球 温 暖 化 に よ り巨 大 台 風 や 集 中 豪 雨 は 増 え る
と 、 地 表 の 熱 を 閉じ 込 め て 温 暖 化 を 促 進 する 「 温 室
度 よく 再 現 する 必 要 があ る 。 し かし 、 従 来 モ デ ル で
効 果 」 があ る が 、 そ の 効 果 は 雲 の 高 度 によ っ て 異な
は 解 像 度 が 粗く 、 雲 をう まく 再 現 する こ と がで き な
る 。 雲を 詳 細 に 再 現 で きるNICAM
か っ た 。全 球 雲 解 像 度 モ デ ルNICAM
測 精 度 の向 上 に 役 立 て ら れ てい る 。
は 、3.5km 四
マ ッ デ ン ・ジ ュ リ ア ン 振 動 (MJO
)
雲 には、 太 陽 光を 遮り 温 暖 化 を 抑 える「日 傘 効 果 」
の か? そ のような予測 を行うには、全 球 の雲を精
方 ご と に 計 算を 行う こ と で、 台 風 や集 中 豪 雨 を も た
台風
は、温暖化 の予
画像提供 :地 球環境 変動 領域 大内和 良、
地 球シミ ュレ ータセ ンタ ー 松岡 大祐
ら す 梅雨 前 線な ど を 再 現 す るこ と が で きる 。
熱 帯の巨 大な 積乱雲 群と相 互作用 する 大気の 流 れの分
布 が約1 ~2 ヵ月か けて東向 きに 地球 を一周 する 現象
NICAM によ り再現さ れた2004 年6 月1 日 の全球
の雲 (濃い白 )と大気下流の流 れ(薄い白の筋)
雲の精密なシミュレーションに挑む
雲 の 発生 ・発 達 過 程 の 再 現 は 、さ まざ まな 気 象 シ
ミ ュレ ーシ ョン のな か で も 難 易 度 が 高い 。
て 地 表 へ 降り 注 ぐ 。そ の 過 程 はと て も 複 雑 だ 。また 。
1m3 あ たり 約10 億 個 含 ま れ る 水 滴1個 ず つ を く ま な
エ ア ロゾ ルと 呼ば れる 大 気 中 の 微 細 なご み に、 水
く 計 算 す る こと は、 計 算 量 が 膨 大 な も のと な り 、事
蒸 気 が凝結し て微小 な水 滴 ができる。そ れらが集
実 上 不 可 能 であ る 。 そ こ で 、 雲を 効 率 よ く 精密 に再
ま っ て 雲 が 発 生 す る 。 雲 を つ く る 水 滴 は1 μm ~
現する「 超水 滴法」 や「ビン 法」を用い た研 究が
1mm
進め ら れ てい る 。
と1,000 倍 の サ イ ズ の 違 い が あ り 、 そ れ ら が
衝 突 を 繰り 返 し な が ら成 長し て 、 大 き な 雨 粒 と なっ
海 上 で発 達する 積 雲
大 気 海 洋 結 合 モ デ ルMSSG
と、
水 滴 の 大 きさ を 考 慮 した ビ ン 法
に よ る シ ミ ュ レ ーシ ョ ン 。 海 上
での 雲の 発生・成 長過 程を 再
現 する と と も に、 水 滴 の 大き さ
に 応じ た光 の散 乱を 計算 する
こ と で 、 雲 や 虹 の見 え 方 も 忠 実
に 表 現 し て いる
画像 提供 :地 球シミ ュレ ータセン
タ ー 大西 領
積 雲の 発生 ・ 成 長・ 衰 退 過程
膨 大な 数 の 水 滴 の 振る 舞 い を 効 率 的 に 計 算 する 超 水 滴 法 を 用い る こ と で 、 海 上 の 積 雲 の発 生 から
成 長 、衰 退 ま で を 物 理 法 則 に 基づ きシ ミ ュレ ー シ ョン し た 。 また 、 光 の 複 雑 な 散 乱 を 計 算し て 写 実 的 に 雲 を 表 現 する こ と で 、 従 来の 手 法 で
は 捉 える こと ので き な か っ た雲 の 特 徴 を 見 い だ す こと が で き る
積 雲 の立 体視 画像
霧 の発生 予測
右目 で 左 図、 左目 で 右 図を 見 る
2008 年12 月 の 朝5 時 ご ろ 、 南
交 差 法 に よる 裸 眼 立 体 視 を 行
アフ リカ・西 ケ ープ 州にあ る
う こ と で 、 積 雲の 三 次 元 的 な 分
テ ーブ ル マウ ン テ ン にお け る 霧
布 を把 握 する こと が でき る
の発 生を、 大気 海洋 結合 モデ
画像 提供 :地 球シ ミュレ ータセン
ルMSSG
タ ー 松田景 吾
し たも の 。 良 質 の ブ ドウ の 育 成
でシ ミュレ ーシ ョン
に は 、霧 が 欠 か せ ない 。 霧の 発
生 シ ミ ュレ ー シ ョン を 用 い て 最
適な 栽培 地や 栽培方 法を 探る
研 究 が 進 めら れて い る
画像 提供 :地 球シミュレ ータセン
ター 高 橋桂子
画像提供 :地球シミュレータセン ター 荒 木文明
観測とシミュレ ーションで現象を解明する
左 の画 像 は 、メ キ シ コ 湾 流 が大 気 に 生 み 出 す 巨
れを 引 き 起 こ し た 。 シミ ュレ ーシ ョ ン で は 、 台 風 が
大 上 昇 流 が高 度1 万m に 達 し てい る 様 子 を 描 い て い
紀伊 半 島 付 近 にと ど まり 多 量 の雨 を 降 らせ た 様 子 は
る。 そ れ に より 、 遠 方 の 気 候 に も 影 響 を 及 ぼ し てい
再 現 でき た が 、と ど まっ て い た 期 間は 実 際 より も 短
るこ と が 分 か っ た 。こ れは 衛 星 観 測 デ ー タと シ ミ ュ
く な っ た 。そ れ は、 シ ミ ュレ ーシ ョン に 用い た 観 測
レ ーシ ョン を 組 み 合 わ せ る こ と で 発 見 さ れ た 現 象
デ ー タ が100km
だ。
原 因 だ と 考 えら れる 。
四方ごとと 精度 が粗かったことが
右 の2 枚 の 画 像 は 、2011 年 台 風12 号 を 再 現 し た
さ まざ ま な 現 象 の メカ ニ ズ ム を 解 明 し て予 測 する
もの 。こ の台 風 は、 紀 伊 半 島 にと ど まっ て 集 中 豪 雨
に は 、 観 測 と シ ミ ュレ ー ショ ン の 精 度を 共 に向 上 さ
をも た ら し 、 深 層 崩 壊 と 呼 ば れ る 大 規 模 な 土 砂 崩
せ る 必 要 があ る 。
メキ シコ湾 流 か大 気に生 み出す 巨大 上昇 流
深層崩壊をもたらした2011 年今風12 号
北 大 西 洋 を 北 上 す る メ キシ コ 湾 流 が 、熱 帯 から 大 量の 熱 を 中 緯 度 域 へ 運 ん で 大 気 中 へ 放 出 す る こ と で 、巨 大な 上 昇 流 が 生 じ てい る 。大 気
大気海洋結合モデルMSSG
海 洋 結 合 モ デルCFES
1時から9月2 日8時までの積算降水量を示す。紀伊 半島の赤 色の地域で積算降水量が特に多かったことが分かる
の シ ミ ュレ ーシ ョ ン に より 、 年 平 均 した 大 気 の 上 昇 風 速 と 水 平 海 流 速 度 (い ず れも 赤 い ほど 速い )を 示 し てい る
画像提供 :地球シ ミュレ ータセンタ ー 吉 田 聡・荒木 文明・川原 慎太郎
によるシミュレ ーション。上画像の白色が発達中の台風の雲分 布、下 画像の海上 および陸上のカラ ーは、2011 年8月31 日
画像 提供 :地球 シミュレ ータセンタ ー 高 橋桂子
シミュレーションの成果を社会に発信する
大 型 台風
2007 年7 月14 日の 台 風4 号と 梅 雨 前 線 の 様子 を 大 気 海 洋 結 合 モ デ ルMSSG
で 再 現 し たも の 。 こ の台 風は 、 最 大 瞬 間 風 速 が56.3m と7 月 に 発 生
し た 台 風と し て は 観 測 史 上 最 強を 記 録 。梅 雨 前 線 が 活 発化 し て 沖 縄 か ら東 北 に かけ て 記 録 的 な 大 雨 を 降 ら せ 、大 き な 被 害 を も たら し た 。こ の
画 像 は 、台 風や 梅 雨 前 線 の構 造 を 捉 え る た めに 、 濃 い 雲 の 領 域 を 強 調 する と とも に 、 高 さ方 向 の 構 造を5 倍 に拡 大 し て 表 示 して い る
画像提供 :地球シ ミュレ ータセンタ ー 高橋桂子
シ ミ ュレ ーシ ョン の成 果 を 、さ ま ざ ま な 分 野 の 研
ている。可視化技法とGoogle Earth TM のリアルな
究 や ビ ジ ネ ス 、防 災、 都 市 設 計 な ど に 役 立 てる には 、
景 観 を 組 み合 わ せる こ と に より 、 シ ミ ュレ ーシ ョン
分 かり や すい 表 現 で 情 報 発 信 を 行うこ と が必 要だ 。
の世 界を 縦 横 無 尽 に飛 び 回る よう に 観 察 する こ とを
地 球 シ ミ ュ レ ー タ セ ン タ ー で は 、Web
「EXTRAWING
ヒ ート アイ ランド 現 象
2005 年8 月5 日15 時 ご ろ の 東
京駅 付近の風の流れと気温を
大 気 海 洋 結 合 モ デ ルMSSG
で 予 測 し た も の。 緑 色 が
32 ℃ 、 赤 が35 ℃ に 相 当 する 。
都 市 部の 気 温が 郊 外に 比
べ て 高 く なる ヒ ー ト ア イ ラ ン
ド 現 象 の 日中 に お け る 要 因と
して、①ビルから の冷房の排
熱 が 多い こと 、 ②ビ ル や ア ス
フ ァ ル ト 表 面 は 日 射 で 暖 まり
や すい こ と、 ③ビ ル に よ り 風
の流 れが悪いこと、が挙げら
れ る 。 そ れら3 つ の 要 因 を 考
慮 し て 気 温 を予 測し た 。
こ の よ う な シ ミ ュ レ ーシ ョ
ン に より 、 熱 が た ま り や す い
原 因を 分 析 し て 、ビ ル の 配 置
変更や 緑や水辺空間を増や す
こ と で 気 温 がど の 程 度 下 が る
か を 予 測 し、 都 市 設 計 に 役 立
て る こと が でき る
画 像 提 供:地 球 シミ ュレ ータ セ
ンタ ー 高 橋桂 子
サイト
( エ ク スト ラ ウ ィン グ )」を 運 営し
可能にした。
http://www.jamstec.go.jp/esc/extrawing/index.html
シミュレーションを防災に役立てる
東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 の 発 生 から2 日 後 、 地 震 の
強 い 揺 れと 津 波 をシ ミ ュ レ ーシ ョ ン に より 再 現し た
動 画 がテ レビ で 全 国 放 映さ れ た 。そ れに より 私た ち
2011 年 東 北地方 太平 洋沖 地 震の 地震 の揺 れと
津波 の同 時 シミ ュレ ーショ ン
は 、 マ グ ニ チ ュ ー ド (M )9.0 と い う 超 巨 大 地 震 の
地 震による 地殻変 動で太平 洋岸の海 岸線が沈 降、そこ に
発 生で日 本列島 周辺に 何か 起きた のかを理 解する
こ とに な った 。
津波 が押し寄せた。地震 発生から30 分後には、太平洋 沿
岸の広い 地域に津波が到 達したことが 分かる
画 像提供 :東京大 学大学 院情報 学環 総合 防災情 報研 究センタ ー
近 い 将来 、南 海ト ラ フ で も巨 大 地 震 が 起 きる 可 能
性 が高 い 。最 大 でM9.1 の 規 模 の地 震と 、30m
古 村孝志、 東京大学地 震研究 所 前田 拓人
を超
え る 大 津 波 が 発 生 す る 可 能 性 も指 摘さ れて い る 。 国
の 被 害 想 定 に よ れば 、今 後 、何 も 対 策 を 取 ら な かっ
た 最 悪 のケ ー ス で 死 者 が32 万 人 に 上 る と い う 。 そ
の よう な 最 大 規 模 の地 震 ・津 波 に 備 え 、 災害 を 確 実
に 減 ら す た め に 、地 球シ ミ ュレ ー タに よ る 予 測 研 究
が 進 め ら れ てい る 。
南 海 トラフ 巨大 地震 の津 波シ ミュレ ー ショ ン
南 海 ト ラフ で 発 生 する 最 大 規 模 の 地 震を 想 定 し 、 そ れ に よる 津 波 を シ ミ ュレ ー シ ョン し
た 。 震 源 域 の 駿 河 湾 か ら 日 向 灘 の 周 囲 の 広 い 範囲 に 大 津 波 が 到 達 する 。 震 源 域 が 陸 地
に 近 い た め 、 早い と こ ろ では5 ~10 分 で 沿 岸 に 津 波 が 到 達 する
画 像提供 :東 京大学 大学院情 報学環 総 合防災 情報研究 センター 古村 孝志、
東 京大学地 震研究 所 前田拓人
地震発生10 分後
地震発生30 分後
超巨大地震の波が全 球表面と内部へ伝 わる
2011 年3 月11 日 に 起 き た 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 。
マ グ ニ チ ュ ー ド9.0 と い う 超 巨 大 地 震 の 地 震 波 は 、
全 球 表 面と 内 部 へ 伝 わっ た 。こ の 画 像 は 、そ の地 震
り方は同 心円に近い(左 )
。 震 源 の反 対 側 で は 、同
心 円 か ら わ ず か に ず れた 形 で地 震 波 が 集 まる 。
こ のよ う な シ ミ ュレ ー シ ョン と 観 測 デ ー タを 照 合
波 伝 搬 の 様 子 を 、 地 球 上 のさ まざ ま な 場 所 で 観 測
する こ と で 、地 震 の発 生 メ カ ニ ズ ム や地 球 内 部 の 様
さ れた デ ー タと 震 源 で 起 き た 破 壊 を モ デ ル 化 し てシ
子 を 詳 しく 探 るこ と が で きる 。
ミ ュレ ーシ ョン し た も の 。 震 源 か ら の 地 震 波 の 広 が
東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 の 地震 波 伝 搬 シ ミ ュレ ー シ ョ ン
地 震 波 の 上 下 変 動 を 強 調し 、 変 異 が 特 に 大き い と ころ は赤 色 で 表 示 し てい る
画像 提供 :地 球情報 研究 セン ター/地 球内部ダイ ナミクス 領域 坪井誠 司、地 球内部ダイ ナミクス 領域 古市幹 人、
地震 津波・防 災研究プロ ジェクト 中村 武史
地球中心部の核から宇宙へ
マント ル 層 の下 に ある 地 球 中 心 部 に は 、主 に 鉄 か
が可 能に な った と 考 え ら れ てい る 。
ら 成る 核 ( コア ) があ る 。核 は 液 体 の 外 核と 固 体 の
た だ し 、 外 核 で 液 体 鉄 がど のよう に 対 流し て 、地
内 核 に 分 か れ てい る 。 外 核 の 液 体 鉄 は 、 温 度 の 高
球磁 場 が 生 み出 さ れて いる の か、 よく 分 か っ てい な
い 内 核 に 暖 め ら れ て 対 流 し てい る 。そ れに より 、 地
い 。 外 核 の液 体 鉄 は 、 水 の よう に さ らさ らし た 状 態
球 磁 場 が生 み出 さ れてい る 。
で 、 小 さ な 渦 が た くさ ん で き てい る は ず だ 。そ れを
地 球磁 場は、地 球を取り 巻くように 分布 してお
再 現 する に は、 非 常 に 高い 解 像 度 で 膨 大な 量 の 計算
り 、宇 宙 空 間を 飛 び 交う 宇 宙 線 や 太 陽 風な ど の高 エ
を 行 う 必 要 があ り 、 現 在 の ス ー パ ー コン ピ ュー タで
ネ ル ギ ー粒 子 から 地 球 を 守 る バ リ ア の 役目 をし て い
も 、そ の 実 現 は難 しい 。
る 。そ の バリ ア のお かけ で、 地 球 に は 厚 い 大 気 が存
在 し 続 け 、 海 の表 層 や 陸上 で も 生 物 が 生 息 す るこ と
地 球シミ ュレ ー タにより、 外 核 の対 流と地 球磁 場 の
発生 を精 度 よく 再 現する 研 究 が進 めら れてい る。BE
外 核の 赤道 面上 にお ける 流体 鉄の 流 れ
流 体 鉄 の 流 れ が 、赤 は 速い 場 所 、 青 は遅 い 場 所 。非 常 に 細 い ジ ェ ット 状 の 構 造 が対 流 運 動 の 基 本 構 造
に な っ てい る こ と が 、 従来 よりも 高い 解 像 度の シ ミ ュレ ー シ ョン で 初 め て 明ら か に な っ た
画 像提供 :地 球内部ダ イナミクス 領域 宮腰 剛広、神 戸大 学 陰山 聡
オーロ ラ のシミ ュレ ー ション
太陽 風 は 、 秒 速 数 百km の 速さ で 地 球 へ 吹 き 付 ける プ ラ ズ マ ( イ オン と 電 子 の 塊) で ある 。
そ の一 部 は 地 球 磁 気 圏 に 侵 入 し 、 電 子 が 超 高 速 に加 速さ れ て 大気 中 の 窒 素 分 子 や 酸 素 分
了 と 衝 突 し て 発 光 を引 き 起こ す 。 そ れ が オ ーロ ラ だ 。 オ ーロラ を 再 現 する に は 、 太 陽 風 の
100 万ト ン の プラ ズ マ の 流 れ と 、オ ーロ ラ を 引 き 起こ す1 個 ずつ の 電 子 の 運 動を 、 同 時 に 計
算 する 必 要が あ る 。 そ の 計 算 量 は 膨 大 な も のと な り 、 地 球シ ミ ュレ ー タを も って し て も 事
実上 、 計 算 は 不 可 能 だ 。 そこ で 、 プ ラ ズ マの な か か ら オ ーロ ラ を引 き 起こ す 電 子 が 加 速 さ
れる 場 所 と 時 間を 探 し 出 し、 そ の 部 分 の 電 子 の 運 動を 追 跡 し て 、そ の 結 果 を プ ラ ズ マ 全 体
の 動 き に 連 動さ せ る 「 連 結 階層 シ ミュ レ ーシ ョ ン」 に より 、 オ ーロ ラを 忠 実 に 再 現 した
画像提供 :兵庫県立 大学 大野 暢亮、地 球シミュレータセン ター 杉山 徹、神戸大 学 陰山 聡
太 陽フ レ アの シミ ュレ ーショ ン
太 陽 表 面 で 起き る 巨 大 な 爆 発 現 象 で ある 太 陽 フ レ アに よっ て 、地 球 にも 影 響 を 与 え る 激 しい 太 陽 風 の 乱 れ が 発 生 す る 。 太 陽フ レ ア の 発 生 原 因を 探 る 研 究 も 、地 球 シミ ュ レ ー
タを 駆 使 し て 進め ら れ て い る 。緑 色 の ラ イ ン は磁 力 線 、 赤 は 高 温 プ ラ ズ マ の加 熱 部 分
画 像提供:シス テム地球 ラボ 草 野完也
長高 水族館
■Information:
めぐ る 命のつながり ─ カクレ クマノミ
長高水 族館
〒799-3401
愛媛県大洲市長浜甲480-1 愛 媛県 立長浜高等学 校
TEL 0893-52-1251
URL http://www.geocities.jp/nagakou_aquarium/
Facebook http://www.facebook.com/nagako.aquarium
水 族 館 部 に は 、 ク マ ノミ 類 の 繁 殖 に 関 わる 班 、お 客さ ま へ の 解 説 の 充 実 化 や イ
ベ ント を 企 画 す る 班 、 生 き も の の 研 究 を 行う 班 があ り 、 そ れ ぞ れ 活 発 に 活 動 を
l, てい る
産卵し たカ クレ クマ ノミ。 卵は
初め オレン ジ 色をし てい て、次
第に 黒っぽく な る。カ クレ クマ
ノミ は な ぜ イ ソ ギ ン チ ャ ク に 刺
さ れないの か? 素朴な 研究テー
マ で 挑 ん だ2011
年の日本学生科
学賞 では、 見事に 環境 大臣賞 を
受 賞し た。 写真 は、そ のとき に
ペ アとし て 実験 に参 加した カク
レ ク マノミ 。右 が雌。 長高 水族
館 発 足 当 時 か ら10 年 以 上 繁 殖 研
究で 活躍し 、受賞 の 翌日、そ れ
を 見 届 け る か の よう に 、2 個 体 と
ち 一 緒 に 亡く な っ た
県立高校の一角に、月に一度、第3土曜日にだけ開館する
ひ と きわ 大 き い 。 カ ク レ ク マ ノミ は 性 転 換 を する 魚 で 、 生
と
ま れ な がら に 両 性 の 生 殖 腺 を 持 つ が、1 つ の グ ル ープ で 成 熟
性 のな か で 、 す べて が育 ま れ てい く 。
国で初めて水族館が誕生した町である。水族館は町のシンボ
、
ル であ っ た が 老 朽 化 の た め 、1986 年 に 惜 し ま れな がら 取 り
す る の は2 個 体 だ け で あ る 。 つ ま り、 最 も 大 き な 個 体 が 雌 に 、
で スタ ート し た が 、い ま で は 水 族 館 部 と 名 を 変 え20 名 ほ ど で
2 番目 に 大 き な 個 体 が 雄 に な る 。 も し、 こ の グ ル ープ の 雌 が い
活 動 し て い る 。150 種2000 個 体 以 上 の 生 き も の の 管 理 や 、 一
壊さ れ た 。し かし 町 民 の 水 族 館 復 活 へ の思 い は 強 く 、1998 年 、
なく な れば、 順 位 が 繰 り 上 がり、 雄 は 雌 に 性 転 換 し、 そ の 次
般 公 開 時 は 来 館 者 へ の 生 き も の の 解 説 を 行う 。 新 入 生 の と き
町 全 体 を 水 族 館 に し よ う と いう 運 動 が 起 き た 。 そ の 中 核 と し
に大きな個体が雄となる。
に は た ど たど し か っ た 生 徒 が 、日 ご と に たく ま し く 変 わ っ て
水族館がある。長高水族館。愛媛県大洲市長浜町は、実は四
て 誕 生 し た の が 、日 本 初 の 高 校 生 が 運 営 す る 水 族 館 、「長 高 水
水 族 館 運 営 の す べて を 生 徒 が 行う 。 発 足 当 時 は 自 然 科 学 部
ペ ア は1 回 の 産卵 で 数 百 個 程 度 の卵 を 産 み 、卵 は8 日目 に は
いく 。 命 に日 々 触 れ 、 そ の 環 境 に つ い て 考 え 、 月 に1 度 の 一 般
ふ 化 する 。 ど れ ほ ど の 数 が ふ 化 し て 成 魚 に ま で 成 長 で き る か
公 開 で 人 と の コミ ュ ニ ケ ーシ ョ ン を 学 ぶ 。 そ れ が 社 会 で 生 き
長 高 水 族 館 は そ れ 以 来、 地 道 に 活 動 を 続 け て い る 。 自 慢 は
は、 餌 に よ る と こ ろ が 大 き い 。 淡 水 魚 に 比 べ 、 小 さ な 身 体 で
て い く 力 と な る 。 日 々 の 行 動 が 生 き も の たち を 輝 か せ 、 人 を
数 百 匹 の カ ク レ ク マ ノ ミ 。 映 画 『フ ァ イ ン デ ィ ン グ ・ ニ モ 』
生 ま れ てく る 海 水 魚 は、 ど れだ け 丈 夫 な 身 体 を 親 た ち の 段 階
喜 ば せ る 。 そ の 実 感 が 、生 徒 たち の 顔 つ き を 変 え て いく 。 小
で 一 躍 有 名 に な っ た カ ク レ ク マ ノミ は 、 丈 夫 で 比 較 的 飼 い や
か ら つ く っ てあ げ ら れ る か が 重 要 だ 。 水 族 館 で は 、 親 や 稚 魚
さ な 生 き も の たち の 命 のつ な が り の な か で 、 人 も 大 き く 羽 ば
す いこ と から 、 海 水 魚 を 飼う と き の 第 一 の 選択 肢 と な る 。
の 餌 に な る 動 物 プ ラ ン クト ン の シ オミ ズ ツ ボ ワ ム シ は も ち ろ
た い て いく 。
長 高 水 族 館 で は 、 カ ク レ ク マ ノミ の 繁 殖 ペ ア が 発 足 当 時 か
ん 、 そ の 餌 に な る 植 物 プ ラ ン クト ン の ク ロ レ ラ ( ナ ン ノ クロ
取 材 協 力 :重 松 洋 、 門 田 将 和 / 長 高 水 族 館 ・愛 媛 県 立 長 浜 高 等 学 校 理 科 教 諭 ・
ら 飼 育 さ れ て い て 、 繁 殖 や 研 究 を 支 え 続 け た。 こ の ペ ア の 子
ロプ シ ス)から育 てている。クロレラ の飼育 は温度管 理が 難
孫 たち が 、 い ま で は 水 族 館 の 水 槽 を 飾 っ て い る 。多 く が 体 長
し い 。 そ の ク ロ レ ラ の で き 次 第 で 、 ワ ムシ の で き が 変 わ る 。
4 ~5cm
ワ ム シ 次 第 で カ ク レ ク マ ノ ミ の 生 存 率 が 変 わる 。 めぐ る 関 係
族館」だ。
同 じ 時 期 に 生 ま れ た カ ク レ ク マ ノ ミ 。産 卵 後 、
卵 だけ を 別 の 水 槽 に 移し て ふ 化 さ せる 。 稚 魚
はあ ま り に 小 さ く て ふ 化 後 の 回 収 は 難 し く 、
ま た 成 魚 に 食 べ ら れ てし まう た め だ 。 稚 魚 は
吸い 込 ま れ て し ま う た め 、 フ ィ ル タ ーを 使 用
せ す 、 エ アレ ー シ ョ ン の み の 小 さ な 水 槽 で 育
て、 餌と し て 、 シ オミ ズ ツ ボ ワ ム シ を ク ロ レ
ラととも に与える
の な か。 ペ ア の 雌の 大 き ざ は9.2cm 、 雄 が7cm
ほど
水族館部 顧問
研究 の現場 から
取 材協 力
辻井 典 子
横浜高校 教諭
海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域
JAMSTEC で地学と
出会った
仲西 理子
技術研究副主任
山 下幹 也
技術研究副主任
桑野
研究員
木 村純一
チームリーダー
柳 澤孝 寿
主任研究員
田中
主任研究員
藤江
技術研究副主幹
修
剛
聡
海洋研究開発機構 地球深部探査センター
小 俣 珠乃
技術主任
横浜高校 サイエンス・パート ナーシップ ・プログラム
2013 年7月29 日、横浜高校の生徒18 人が、
海洋研究開発機構(JAMSTEC)
横浜研究所を訪れた。
サイエンス・パートナーシップ・プログラム(SPP)
とで 、 海 底 下 の 構 造 を 探 る 技 術 で あ る 。 説 明 の 後 、 こ の 日 の
特別講座「深海コアと丹沢付加体から見える
ため に考 案し た地震 波 探査 の実 験 装 置を用 い て実 習を 行っ
岩石サイクル~海溝型巨大地震のメカニズム~」の
始まりだ。ホンモノを体験したい生徒と
地学の面白さを知ってほしい研究者。
2つの思いが出会った5日間を紹介する。
た。 か た さ の 異 な る2 層 の 寒 天 を 偏 光 板 で 挟 み、 背 後 か ら 光
を 当 て る。寒 天 の上 面 を 小 さ な ハ ン マ ー で た た く と、そ の 振 動 、
すな わ ち地 震 波 が 寒 天 を 伝 わっ てい く。 偏 光 板 を 使 うこ と で 、
寒 天 の ひ ず み が し ま模 様 と な っ て見 る こ と が で き る。 地 震 波
が伝わる様子を高 速度ビ デオカメラで 撮影し画像 を解析し た
波 形 を 使 っ て、 寒 天 を 伝 わ る 地 震 波 の 速 度 と、 上 の 層 の 厚さ
・ 横 浜 高 校 とJAMSTEC
の連 携
を 求 め よ、 と い う の が 課 題 だ 。4 班 に 分 か れ 、 生 徒 た ち は 波
「 学 校 で 配 布 さ れ た 特 別 講 座 の 案 内 を 見 て、 こ ん な 貴 重 な
形 や 数 式 と格 闘 。 寒 天 の 厚 さ を 実 測 し て 答 え 合 わ せ を し て 、
体験が できるのならば 参加しな ければいけない と思い、旅 行
解 説 。 そ し て 、「 海 域 で の 地 震 波 探 査 に よ る 地 下 構 造 解 析 」
の 予 定 を キ ャ ン セ ル し て来 まし た 」「父 が 地 学 関 係 の仕 事 をし
に つ い て の 講 義 が 行 わ れた 。 実 習 で 学 ん だ 方 法 が 最 先 端 の研
て い ま す 。 父 が ど の よ うな こ と を 学 び、 そ れ を 仕 事 にし た の
究 につ な がっ て い る こ とが 紹 介 さ れ、1 日 目 を 終 了 し た。
か を 理 解 で き た ら と思 っ て い ま す 」「東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震
2 日 目 は、JAMSTEC
の 横 須 賀 本 部 に て 実 施 。「 日 本 列 島 の
寒 天を 用い た 地 震 波 探 査 実 習 の ひと こ ま ( 撮 影 : 藤 牧 徹 也 )
班 ご と に 発 表 の 準 備 を 行っ た 。 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン ソ フ ト ウ
部 で す 。 地 震 研 究 の 現 状 とJAMSTEC
の 研 究 活 動 を もっ と 複
ェ アを 使 い 、 撮 影 し た 写 真 や 資 料 を 取 り 込 ん で ス ラ イド を つ
合 的 に 見 せ る こ と が で き な い か と 考 え ま し た。 そ こ で 注 目 し
くっ てい く。 就 寝 が12 時 を 過 ぎ た 班 も あっ た。
た のが 、 地 震 波 探 査 で し た」 と小 俣 さ ん 。「地 震 波 探 査 は 地 震
の よ うな 規 模 の 地 震 が 起 きた と き に 自 分 の 身 を 守 れ る よ う に、
形 成 」 と 「 海 洋 プ レ ー ト 沈 み込 み に 伴 う 海 溝 型 地 震 研 究 」 に
地 震 につ い て の 知 識 を 少 し で も 付 け た い と思 い 、 参 加 し まし
つ い て の 講 義 の後 、 地 震 計 や 観 測 波 形 を 見 な が ら地 震 計 の原
た」「 理 科 の 辻 井 先 生 に 誘 われ て
理 を 学 ん だ 。 そ の後 、 海 底 地 震 計 の 整 備 風 景 を 見 学 。 海 底 地
緊 張 し つ つ も 発 表 を 行 っ て い っ た。 参 観 に来 た 教 諭 か ら の 鋭
の理 科 や高 校 の 地 学 の 教 科 書 で はほ とん ど 扱 われ て い ま せ ん 。
震 計 の 装 置 に 触 り な が ら 、 そ の仕 組 み につ い て 説 明 を受 け た 。
い 質 問 に た じ ろ ぐ 場 面 も あ っ た が、 自 分 た ち な り の 言 葉 で 切
こ の探 査 方 法 と 研 究 内 容 に つ い て多 く の 人 に 知 っ て も ら う こ
り 抜 け た。 最 後 に 横 浜 高 校 とJAMSTEC
とは、JAMSTEC
」
講 義 に 入 る 前 に 参 加 動 機 を 聞 く と、 さ ま ざ ま な 答 え が 返 っ
て き た 。 参 加 生 徒 は1 年5 人、2 年9 人 、3 年4 人 。 文 系 の 生 徒
も い る 。 共 通 し て い る のは 、 普 段 で きな い 体 験 を し た い 、 新
し い こ とを 知 り た い 、 と い う好 奇 心、 探 究 心 で あ る。
サ イ エ ン ス・ パ ート ナ ー シ ップ ・プ ロ グ ラ ム(SPP ) と は 、
科 学 技術 振 興 機 構(JST)
・地質学実習-丹沢巡検
そし て 最 終 日 。各 班、工 夫 を 凝 ら し た ス ラ イド を 使 い な が ら、
の担 当者 がそれ ぞれ
あ い さ つ を し、5 日 間 の特 別 講 座 が 無 事 終 了 し た 。
3 日目 は 丹 沢 巡 検 へ 。 巡 検 と は、 地 表 に出 てい る 地 層 や 岩 体
を 見 に 行 く 野 外 実 習 の こ とで あ る 。 ユ ー ラ シ アプ レ ート とフ ィ
の 発 生 メ カ ニ ズ ム の解 明 研 究 な ど に 重 要 な 技 術 で す が、 中 学
に とっ て も重 要 だ と 考 え た ので す」
小 俣 さ ん は 、 海 域 で の 地 震 波 探 査 に よ る地 下 構 造 解 析 を 専
門 と す る 地 球 内 部 ダ イ ナ ミ ク ス 領 域(IFREE)
・ 世 界初 。 寒 天を 使 っ た 地 震 波 探 査 の 実 験 装 置
ん に相 談。「最 初 はJAMSTEC
で 高 校 生 向 け の サ マ ー キ ャン プ
が 理 科 教 育 を 推 進 す るた め に 運 営
リ ピ ン 海 プ レ ート の 境 界 の 一 部 で は な い か と考 え ら れ て い る
し てい る 事 業 で あ る 。 小 ・ 中 ・ 高 校 が 、 大 学 や 研 究 機 関 と連
神 縄 断 層 に お い て 、 断 層 を 挟 ん で 分 布 し て い る、 堆 積 岩 か ら
は 、「120%
携 し て 講 座 を 企 画 し て 応 募 す る。 採 択 さ れ る と、JST か ら 経
成 る足 柄 層 群 と、 火 山 活 動 に 伴 っ て で き た 凝 灰 岩 か ら 成 る丹
を 実 施 す る の は2011 年 度 に 次 い で2 回 目 だ 。 辻 井 教 諭 は、
地 震 計 で 記 録 し 、 デ ー タを 持 ち 帰っ て 解 析 す る と い う も の で
費 が 支 援 さ れ る。 今 回 の 特 別 講 座 は、 横 浜 高 校 とJAMSTEC
沢 層 群 の地 層 を 観 察 。 そ の後 、 中 川 温 泉 や 西 丹 沢 自 然 公 園 で
2013 年 度 の 応 募 に あ た っ て、JAMSTEC
と連 携 し て地 震 を
す 。 で も せ っ か く の 機 会 な の で、 も う 少 し 直 感 的 に 地 震 波 が
が 企 画 し、2013 年 度 のSPP に採 択 さ れ、 実 施 に 至 っ た も の だ 。
丹 沢 結 晶 片 岩 や 丹 沢 深 成 岩 体、 ト ー ナ ル 岩 を 観 察 。 中 川 温 泉
テ ー マ に し た 講 座 が で き な い か と、 地 球 深 部 探 査 セ ン タ ー
伝 わる様子を 生徒 に見せ たいと考え 直しました。そこで、 ミ
で は、 酒 匂 川 の 河 原 に下 りて 砂 や 鉱 物 の採 取 を 行っ た。
・ 地震波 探査実習
寒 天を 用い た 地 震 波 探 査 実 験
SPP 特 別 講 座 「 深 海 コ ア と 丹 沢 付 加 体 か ら 見 え る 岩 石 サ イ
4 日 目 は、 横 浜 高 校 の 理 科 室 に て 実 施 。 前 日 の 巡 検 ル ート
(CDEX
の 成 功 」 とい う。 横 浜 高 校 がSPP とし て 特 別 講 座
) の 小 俣 珠 乃 さ ん に相 談 を 持 ち 掛 け た。2012 年 の 年
末 ご ろ の こ とだ 。
で も 行っ て い る 屋 外 で の 地 震 波 探 査 実 習 を や ろ う か と 思 い ま
し た。 ハ ン マ ー で 地 面 を た た く こ とで 生 じ る 地 震 波 を 複 数 の
ニ チ ュ ア 版 の 地 震 波 探 査 実 習 を や ろ う と 決 めた の で す 」 と仲
西 さ ん 。 と ころ が、 壁 に ぶ つ かっ た。「 岩 石 や 木 材、 プ ラ ス チ ッ
小 俣 さ ん は、 河 川 や 海 岸 で 砂 を 採 集 し 、 そ の 地 域 の地 質 の
クな どを 使 っ て 実 験 し て も、 地 震 波 の 伝 わ る 速 度 が 速 過 ぎ て
ク ル ~ 海 溝 型 巨大 地 震 の メ カ ニ ズ ム~ 」 は、1 ・2 日 目 の 地 震
地 質 図 を 作 成 し た。 そ し て 、 酒 匂 川 の 河 原 で 採 取 し た砂 や 鉱
成 り 立 ちを 知 る と と も に 世 界 中 の 砂 の デ ー タ ベ ー ス 作 成 を 目
実 感 で き な い の で す。 地 震 が 伝 わ る 速 度 が 遅 い 物 質 は な い か
波 探 査 実 習 と、3 ・4 日 目 の 地 質 学 実 習 、5 日 目 の 生 徒 発 表 か
物 を 顕 微 鏡 で 観 察 。 さ ら に、 相 模 湾 の深 海 底 か ら採 取 さ れ た
指 すプ ロ グ ラ ム 「Sand for Students 」 を 担 当 し 、 中 高 生 を 対
と、 周 り の 人 に 相 談 し て 回 り ま し た 。 そ ん な と き 、 桑 野 修 さ
ら成 る。 簡 単 に 内 容 を 紹 介 し よ う 。
コ ア( 堆 積 物 の円 柱 試 料 ) を 肉 眼 で 観 察 し た 。 観 察 結 果 と地
象 にし た アウト リ ー チ 活 動 の 経 験 が 豊 富 だ 「
。 SPP とし て
『Sand
ん が『寒天を使ったらどうか? 横波の伝播 速度が遅いし、波
層 の成 り立 ち につ い て 考 察 を 行っ た後 、
「日本列島の歴史 」に
for Students 』 を 実 施 し た こ と が あ り 、 そ の と き と 同 じ 内 容
が 伝わる様 子が見 えます よ』と教えてくれた のです。まさ に
つ い て の 講 義を 行 い 、4 日 目 を 終 了 。
を 提 案 す るこ とも 不 可 能 で は あ り ませ ん 。 し か し 、 そ のプ ロ
救 わ れ た気 分 でし た 」
1 日 目 はJAMSTEC
の横浜研究所 で行った。まず、地震波探
査 に つ い て 説 明。 地 震 波 探 査 と は、 人 工 的 に地 震 を 起 こし て
地 下 の地 層 の 境 界 を 伝 わ っ て 返 っ て き た 地 震 波 を 観 測 す る こ
を 地図で 確認 し、採 取し た試 料の確 認・ ラベリン グを 行い、
5 日 間 を 振 り 返 り、 横 浜 高 校 の 担 当 者 で あ る辻 井 典 子 教 諭
の仲西 理子さ
翌 日 の 発 表 に 備 え、 生 徒 は 校 内 の 学 習 セ ン タ ー に 宿 泊 し 、
グ ラ ムで 伝 え ら れ るこ とは 、 地 震 研 究 の 取 り 組 み の ほ ん の 一
桑 野 さ ん の 専門 は 実 験 地 震 学 で 、 さ まざ ま な 実 験 装 置 を 考
サイエン ス・パ ート ナーシップ ・プログラム(SPP) 特別 講座
3日目
「深海コアと丹沢付加体から見える岩石サイクル ~海溝型巨大地震のメカニズム~」
2013 年7 月29 日 ~8 月2 日
1 日目
地質 学実習(丹沢)
・神 縄 断 層 の 観 察
波形を並べた画像を印刷し、地
震波の速度と 層の厚みを求め
る。線を引くのもとても慎重だ
・足 柄 層 群 と 貝 化 石 な ど の 観 察
・中 川 温 泉 に て 丹 沢 結 晶 片 岩と
丹 沢深成岩体境界層の観 察
地震波探査実 習
(JAMSTEC 横浜研究所)
・砂 と 重 鉱 物 の 採 取
・西 丹 沢 自 然 公 園 に て ト ーナ ル 岩
・地震波探査 実習
・ 講 義 「海 域 で の 地 震 波 探 査
の観 察
による地下構造 解析」
河原 で椀 掛 け。 比 重の 大き い鉱 物 だけ を 取り 出す 。
最後 に 記念 撮 影
みん な夢 中 だ
寒 天 の 上 の面 を ハ ンマ ー で た たく 。
た たき 方で 波 の かたち が 変わ って し
地層 を 確か めな がら 進 んで いく
まう の で、 緊 張する 一 瞬だ 。 左は 実
1秒 間 に1,000 枚 撮影 で きる 高 速度ビ デ オカ メラ で
験 装置 を 考案 した 桑野 修さ ん
撮 影し 、 波形を 記 録 する
4日目
地 質 学 実 習 ( 横 浜 高 校)
・採 取 試 料 の 確 認 ・ ラ ベ リ ン グ
・ 実習 場 所 の 地 質 図 作 成
・採 取 し た 重 鉱 物 の 顕 微 鏡 観 察
波が 伝 わる 様子 がし ま模 様と し て肉 眼でも 見 える 。下 の 層は 寒天 が かたく 、 波の 伝播 速 度が 速い 。 波は 層の 境 界で 屈折 して 返 ってく る
2日目
班ごと に研究者
から の助言を受
けながら 解析を
進める。奥は柳
澤孝寿さ んと仲
西理子さ ん
・深 海 底 か ら 採 取 し た コ アの
肉 眼観 察
・講 義 「 日 本 列 島 の 歴 史 」
丹 沢巡 検 で採 取し た 石を 確 認。 左 は小 俣珠 乃さ ん
地 震波 探査実習
(JAMSTEC 横須賀 本部)
コ ンピ ュ ータ 室 で遅 く まで 、明 日 の発 表 の た め の
ス ライ ドづ くり
5日目
・講 義 「 日 本 列 島 の 形 成 」
生徒 発表(横浜高校)
採 取し た 石を 実体 顕 微鏡 で観 察
・講 義 「 海 洋 プ レ ート 沈 み 込 み
に 伴う 海 溝 型 地 震 研 究 」
・施 設 見 学
● 特 別 講 座 の フ ォト レ ポ ート をweb
で公開中 !
http://www.jamstec・go・jp/j/pr/ssh_spp/
仲 西さ んに よる 講 義 風景
地 震計 の 仕 組み につ いて 振り 子を 使 って 学 習中。
海底 地 震計 の整 備 場を 見 学
左 は田 中 聡さ ん
案し て い るア イデ アマ ン だ。「私 は、 寒 天 と 偏 光 板 を 使 っ て 、
班ご と に緊 張し な がら の発 表
(TA ) と し て 各 班 に 加 わ り、 助 言 を し た 。 専 門 用 語 が 多 いTA
(1 日 目 の 写 真 撮 影 : 藤 牧 徹 也)
き く変 わり まし た 。 生 徒 同 士 の距 離 が 近 くな り、積 極 的 にな っ
科 の授業 で もで きるだけ 実 習を取 り入 れてい ます。し かし、
断 層 の 破 壊 の 速 度 を 調 べ る実 験 を や っ て い ま し た 。 波 と同 じ
の 説 明 を 理 解 で き ず に、 生 徒 が ぽ か ん とし て い る場 面 も あ っ
た よ う に感 じ ます 」 とい う。 生 徒 発表 で は 、「丹 沢 の実 習 は 歩
学 校 で 提 供 で き る体 験 に は 限 界 が あ り ます 。 今 回、JAMSTEC
くら い の 速 度 の 破 壊 を 観 察 し て い た の で 、 寒 天 を た た け ば 波
た 。 そ れ に つ い て辻 井 教 諭 は 、「研 究 者 の 雰 囲 気 を 肌 で 感 じ 取
い て 疲 れ まし た が 、 身 近 に断 層 が あっ て 驚 き まし た 」「 砂 か ら
と連 携 さ せ て い た だ い た こ と で 、 生 徒 た ち に と っ て 、 ま さ に
が 伝 わ る様 子 も見 え る は ず だ、 と ひ ら め い た の で す 。 か た さ
る こ と が で き て 、 と て も よ か っ た と 思 い ます 。 甘 や か し て は
重 鉱 物 だ け を よ り 分 け る 椀 掛 け が と て も 面 白 く、 は まっ て し
人 生 を 変 え る よ う な 体 験 と な っ た こ と で し ょ う。 参 加 し た 生
を 変 え て 地 震 波 速 度 が 異 な る2 層 に す れ ば 波 は 境 界 で 屈 折
駄 目 で 、 難 し い 言 葉 を 聞い た と き に 自 分 な り に 考 え て 理 解 す
ま い まし た 。 ま た 行 き たい で す」 とい う コメ ント も あ っ た 。 巡
徒 たち が ど うい う進 路 を 選 ぶ の か、 楽 し みで す 」 と述 べた 。
し 、 地 震 波 探 査 で 地 下 構 造 を 調 べ るの と同 じ こ と が で き る は
る 力 を 付 け るこ と が 必 要 で す 。 生 徒 にとっ て、よい 刺 激 にな っ
検 は 、 十 分 な 安 全 対 策 な ど が 必 要 で 、 一 般 の 方 を 対 象 に実 施
ずで す 」と桑 野 さ ん 。
「 い ろい ろ な か た さ の 寒 天 をつ くっ た り 、
た と思 い ま す 」 と い う。 最 終 日 の 生 徒 発 表 で は、「 寒 天 を3 層
す る場 合 、JAMSTEC
側 に も 大 き な 負 荷 が か か る。 し か し 小
若 い 世 代 の人 た ち に は 、 地 震 が 起 き る地 下 の 構 造 に つ い て 関
壊 さ ず に 寒 天 を 立 て る技 を 磨 い た り、 波 が よく 観 察 で き るた
や4 層 に し た ら ど うな る の か な ど 、 い ろ い ろ な 実 験 を し て みた
俣 さ ん は、 こ う語 る。「実 際 に 歩 い て 地 層 や 岩 体 を 見 て、 砂 を
心 を 持 ち 、 必 要 な 知 識 を 身 に 付 け て ほ し い と思 い ま す 。 こ れ
た き 方 を 検 証 し た り、 解 析 プ ロ グ ラ ム を つ く っ た り、 試 行 錯
い 」 とい うコ メ ント も あっ た。 実 は 、 桑 野さ ん も 同じ こと を 考
採 取 し 、 そ れ を 観 察 す るこ と で 、 大 地 の 大 き さ、 地 球 の 営 み
ま で も 私 の 専 門 で あ る 海 域 で の地 下 構 造 探 査 につ い て、 機 会
誤 の 結 果 、 寒 天 を 使 っ た 地 震 波 探 査 の 実 験 装 置 が 完 成 し まし
え て い る とい う。 ラ イバ ル 出 現 だ。
を感じ てほしいのです。万 全 の準備をし た上で、今 回の よう
を見 つけて 講義をし てきました。分 かりやすく工夫 して いる
な 講 座 に 巡 検 を 取 り入 れ て い き たい で す ね。 実 は 今 年 の地 学
つ も りで す が 、 講 義 だ け で は 限 界 が あ り ま す 。 今 回 、 実 習 が
オ リン ピ ッ ク の 国内 研 修 の 巡 検 も 丹 沢 で 行 い まし た 」
い か に 重 要 か が 分 か り まし た。 こ れ か ら も 、 身 近 な 材 料 で 手
た。 も ち ろん 世 界 初 で す 」
生 徒 た ち の反 応 は 想 像 以 上 だ っ た。「実 は、 こ の 実 習 は 大
・ 大 地 の 大 き さ 、 地 球 の 営 みを 感じ て ほ し い
「地 震 災 害 と隣 り 合 わせ の日 本 に住 ん で い る か ら こ そ、 特 に
学4 年 生 が 行 う 内 容 な ん で す 。 で も、 難 し い 計 算 を 投 げ 出 す
小 俣 さ ん は、 地 震 波 探 査 とも う1 つ、 ど うし て も こ の 特 別 講
こと な く取 り組 ん で い ま し た ね。答 え 合 わせ を す ると、『違 う!
座 で 行 い た い 実 習 が あ っ た 。 そ れ が 丹 沢 巡 検 だ。「中 ・ 高 校 生
くや し い な あ 』『 計 算 を や り 直 し て み よ う 』
、 そんな言 葉が飛
が 地 学 の 知 識 や思 考 力 を 競 い 合 い 、 日 本 や 世 界 の仲 間 と 交 流
び 交 っ て い ま し た 。 あ ん な に一 生 懸 命 に な る と は 思 い ま せ ん
を 深 め る『 地 学 オ リン ピ ッ ク 』と い う コン テ スト が あ り、
でし た 」 と桑 野 さん 。「高 速 度ビ デ オ カ メ ラ の画 像 を スロ ー再
JAMSTEC
生し て 波 が 伝 わ る 様 子 を 見 て 、『 わ ~ !』『 お ぉ !』 と い う声
号参照)
。 そ の活 動 の な か で、 複 雑 な 計 算 が 得 意 な 生 徒 た ち で
参 加 し た い と思 い ま す 」「地 学 に つ い て 興 味 が よ りい っ そ う 湧
す る こ と を 研 究 し て い ま す 。 そ うし た 現 象 の 仕 組 み を 知 っ て
が 上 が っ て い まし た。 興 味 を 持 っ て も ら う上 で 、 視 覚 的 に 分
も、地 層の問題 の得手 不得 手はまた別、という印象を 持ち ま
き まし た。 もっ と地 学 を 勉 強 し て みた い と 思 い ま す 」「辻 井 先
い る と、 自 然 災 害 が 起 き た と き に 自 分 の 身 を 守 るこ と に も つ
か ると い う効 果 は大 き い で す ね 」 と仲 西 さ ん 。「 そし て 、 一 生
し た 。 地 層 の で き方 を 理 解 す る に は、 教 科 書 で 繰 り 返 し 勉 強
生 のお 誘 い で … … とい う消 極 的 な 参 加 理 由 で し た が 、 誘 っ て
な が り ま す。 私 た ち に は、 研 究 成 果 を 社 会、 特 に 中 高 生 な ど
懸 命 計 算 し た こと が 実 際 の解 析 で は 計 算 機 が 一 瞬 で やっ てし
す るだ け で な く、 実 際 に 見 る の が 一 番 で す 。 そ こ で、 さ ま ざ
い た だ く 価 値 以 上 の も の が あ り ま し た 。 印 象 に 残 っ た の は、
若 い 世 代 に 発信 す る義 務 が あ る の で す 」
と小 俣 さ ん は 語 る。
「今
ま う、と い う こと を 知 っ た とき の、 み ん な のあ ぜ ん とし た 表 情 。
まな 断 層 や 岩 体 を 観 察 で き る丹 沢 巡 検 を 加 え まし た 」 と 小 俣
全 部 で す 」「 将来 に つ な が る よう な も の が 見 つ か り まし た」
回 の よ うなJAMSTEC
申し 訳 な い と 思 い つ つ 、 楽 し ませ てい ただ きま し た」
さん。
実 習 で は、IFREE の 研 究 者 が テ ィ ー チ ン グ ・ ア シ ス タ ント
もその活 動を支援 してい ます(
『Blue Earth 』122
辻 井 教 諭 は 、「3 日 目 の 丹 沢 巡 検 か ら、 生 徒 た ち の 様 子 が 大
軽 に 実 験 が で き るレ シ ピ を つ く り、 ど ん ど ん 情 報 発 信 を し て
・ 人 生 を 変え る よ う な 体 験 を
講 座 終 了 後 の アン ケ ート か ら、 感 想 を い くつ か 紹 介 し よ う。
「初 日 の 計 算 は 頑 張 っ て も で き ず に 悔 し かっ た け れ ど も、 寒 天
の実 験は とて も楽し かった。 またこ のような 機会 があ れば、
辻 井 教諭 は今 回 の 講 座 を 振 り 返 り 、「人 生 を 変 え るよ う な 体
験を中学 や高校時代 にすることが必 要です。横浜 高校で は理
い き た い と 考 え て い ま す 」 と 仲 西 さ ん。 寒 天 を 使 っ た 地 震 波
探 査 の 実 験 装 置 は 現 在 、 特 許 出 願 中 だ。 学 校 の 授 業 な ど で 簡
単 に実 験 が で き る よう に、 キット 化 を 目 指 し て い る。
「JAMSTEC
で は地震 や気 候変 動な ど私た ちの生 活 に関係
な ら で は の 講 座 を で き るだ け多 く実 施 し
た い で す ね。 受 け 入 れ る こ と が で き る件 数 は 限 ら れ て し まい
ます が 、 学 校 か ら の 問 い 合 わせ を お 待 ち し て い ます 」BE
0 410 660 1,000
図1 日本列島周辺の地震波トモグラフィー
地震波
低速度異常域
地表から深さ2,000kmまでの地震P波の伝搬速度異常の断面図。
観測点
暖色系は地震波の低速度領域、寒色系は高速度領域である。沈み
込んだプレートであるスラブは低速度異常として表れる。日本海
Marine S c i e n c e S e m i n a r
2,000km
溝、伊豆・小笠原海溝から斜めに沈み込んだスラブは、深さ
地震
660km付近で横たわっている
図2 日本列島周辺のプレート
北米プレート
内核
図3 地震波トモグラフィー
の原理
地震波の速度は物質の種類
外核
や状態などによって変わる。
さまざまな場所で起きる地震
地震波
高速度異常域
の地震波をたくさんの観測
日 本
海
溝
ユーラシアプレート
1.5% 高速
ラフ
ト
海
南
フィリピン海プレート
沈 み 込 むプレートの 行 方
第162回地球情報館公開セミナー 2013年4月20日開催 地球内部ダイナミクス領域
地球深部活動研究プログラム
地球深部構造研究チーム 主任研究員
大林政行
お おば やし・まさゆき。1966
年、
富山県生まれ。博士(理学)
。
1997年、名古屋大学大学院理
学研究科博士課程修了。東京
大学地震研究所中核的研究機
関研究員、科学技術特別研究
員を経て2001年、JAMSTEC
研究員。2011年、第28回「と
やま賞」受賞
28
Blue Earth 127(2013)
マントル
から、地震波の低速度領域
や高速度領域を描き出す
地震波速度
物質の状態
平均より速い
平均より遅い
太平洋プレート
かたさ
かたい
やわらかい
伊豆・
小笠原海溝
低速 1.5%
点で観測することで、地震
波の経路と到達時間の違い
温度
冷たい
熱い
密度
大きい
小さい
流れ
下降
上昇
日本の下には太平洋プレートやフィリピン海プレートが沈み込んでいます。
沈み込みに伴って蓄積されたひずみが解放されることで、
2011年の東北地方太平洋沖地震のようなプレート境界型地震が起きます。
これらの沈み込んだプレートは、どこへ行くのでしょうか。
CTスキャンで人体の断層画像を撮るように、地震波を使って地球の
内部構造を調べることができます。海洋研究開発機構(JAMSTEC)では
海底に地震計を設置して、地球のなかを詳しく調べようとしています。
沈み込んだプレートがどのような姿になっているかを紹介します。
らいいでしょうか。そこで、
「そうだ、海
に行こう」というわけです。JAMSTEC
では、西太平洋など観測点が少ない海底
に高感度の広帯域地震計を設置して観測
することで、地震波トモグラフィーの解
像度を上げて、地球内部の構造を明らか
にしようとしています。
地震の発生場所は偏っている
。太平洋プレー
めき合っています(図2)
とはありますか。CTは、X線をいろいろ
通ってきた地震波は、そこを通らずに来た
広帯域地震計とは、速い振動から非常
地震が発生した場所を地図にプロット
トが、日本海溝で東北日本を載せた北米
な方向から照射して人体の断面の画像を
地震波より遅れて(早く)観測点に到達し
にゆっくりした振動まで広い周波数の範
していくと、地震は地球上のどこででも
プレートの下に、また伊豆・小笠原海溝
得るものです。人体はX線を通しやすい
ます。さまざまな場所で起きる地震につい
囲の地震動を観測できる地震計です。海
同じように起きているわけではないこと
でフィリピン海プレートの下に沈み込ん
部分と、通しにくい部分があります。人
て、たくさんの観測点で地震波の到達時
底地震計は、深海の大きな圧力に耐える
が分かります。地震が起きる場所は線状
でいます。フィリピン海プレートは、南
体を通過してきたX線の強さをセンサー
間を観測して解析することで、どこに地震
ことができるチタン製の球のなかに地震
に分布し、震源が深い地震のほとんどは
海トラフで南西日本を載せたユーラシア
で捉えてコンピュータで処理することで、
波の低速(高速)度領域があるのか、地
計と記憶装置、バッテリーが入っていま
日本列島周辺を含む環太平洋地域で起き
プレートの下に沈み込んでいます。
人体の内部を見ることができます。
球内部の構造を描き出すことができます。
す。船から海面に下ろし、重りの重さで
自由落下させて海底に設置します。
ています。地震の発生場所に、なぜこの
では、海溝で沈み込んだプレートは、
人体の内部を見るように、地球の内部
ような偏りがあるのでしょうか。
どこに行くのでしょうか。
を見ることができればいいですよね。し
そうだ、海へ行こう
かし、X線は地球を通過できません。そ
しかし、地震波トモグラフィーには大
こで、地震によって発生する地震波を使
きな欠点があります。CTはX線源とセン
れます。観測の終了時期になると、設置
地球上は十数枚のかたいプレートで覆
われています。プレートには海洋プレー
地震波トモグラフィーとは
海底地震計は設置後、1∼2年間観測
し、その間のデータは記録装置に蓄積さ
沈み込んだプレートは「スラブ」と呼
います。地震波は震源から同心円状に広
サーが制御されているため人体をすべて
した海域に再び行き、船から重りの切り
は海底にある海嶺でつくられ、それぞれ
ばれます。地震波トモグラフィーという
がり、地球内部を伝わって地球の裏側に
の方向から均一に観察できます。しかし、
離し信号を送ります。海底地震計の音響
の方向に1年に数cmの速度で移動してい
技術を使うと、地球の内部構造、そして
。地震波の速度は、物
も届きます(図3)
地震波トモグラフィーの場合、X線源に
受信機がその信号を受け取ると、切り離
ます。プレート同士が接するところでは、
スラブの様子を見ることができます。
質の種類や状態などによって変わります。
対応する地震が発生する場所には、地域
し装置が駆動して重りが切り離され、浮
擦れ違ったり、沈み込んだりしています。
トモグラフィー(tomography)とは、
また、異なる物質の境界では屈折したり
的な偏りがあります。また、センサーに
上してきます。海面に出ると、点滅装置
大きな地震はそのようなプレート境界で、
断面という意味のギリシャ語「tomos」
反射したりします。地震波トモグラフィ
対応する観測点が設置されている場所は
とラジオ・ビーコンで自分の位置を船に
また深い地震はプレートが沈み込んでい
と、イメージ法という意味のギリシャ語
ーは、こうした地震波の特徴を利用して
陸地、しかも先進国が中心で、分布に偏
知らせます。船はそれを見つけて回収し、
る場所で発生します。だから、地震の発
「graphy」を組み合わせた造語です。病
地球の内部構造を見る技術です。
りがあります。これでは、地球の内部構
データを取り出して解析します。
トと大陸プレートがあり、海洋プレート
生場所には偏りがあるのです。
院でCT(Computed Tomography:コ
周りより地震波の速度が遅い(速い)
造を詳しく見ることができません。
深海底は風による波の影響もなく、と
日本列島周辺は4つのプレートがひし
ンピュータ断層撮影法)検査を受けたこ
。そこを
領域があったとしましょう(図3)
この欠点をカバーするには、どうした
ても穏やかだと思われるかもしれません。
Blue Earth 127(2013)
29
20°
20°
110°
Marine S c i e n c e S e m i n a r
しかし実は、潮汐などによって毎秒数cm
色系の色で表します。一般に温度が低い
ほどの流れがあります。それがチタン球
と密度が大きくなり、温度が高いと密度
を揺らし、観測データの雑音となること
が小さくなるので、地震波速度の速い場
が問題になっていました。
所は下降、遅い場所は上昇の流れがある
そこで、第2世代の海底地震計も活躍
と考えることができます。
。この海底地震計は、
しています( 図4)
図1は、地震波トモグラフィーで見た日
チタン球を船から自由落下させる点は同
本列島の下の構造です。北から南まで10
じですが、地震計のセンサー部分がチタ
枚の断面図で示しています。青で示され
ン球の外に出ていて海底の堆積物に突き
た地震波の高速度領域が目を引きます。
刺さって安定するようになっています。
これが、沈み込んだ太平洋プレートです。
さらに、海底地震計が着底した場所に無
太平洋プレートは東太平洋中央海嶺で生
人探査機を潜航させて、船上でビデオカ
まれ、1年に約10cmの速度で移動して1
メラの映像を見ながら無人探査機のマニ
億5000万年ほどかけて日本海溝までやっ
ピュレータを操作し、記録装置やバッテ
て来ます。その間に冷やされるため周囲
従来型は地震計がチタン球のなかに入って
リーが入ったチタン球をセンサー部分か
より温度が低く、地震波が速くなるので
いたが、第2世代では地震計が海底の堆積
ら分離し、離れた場所に設置します。セ
す。日本海溝、伊豆・小笠原海溝から斜
図4 第2世代高感度広帯域海底地震計
物に突き刺さる形状になっている。無人探
査機を使って地震計とチタン球を分離して
設置することで、海水の流れによる雑音が
軽減される。東京大学地震研究所開発
ンサーとチタン球をつなぐケーブルも埋
150°
160°
110°
120°
130°
140°
150°
160°
110°
120°
130°
140°
150°
160°
f 550 - 630 km
e 480 - 550 km
60°
60°
60°
60°
50°
50°
50°
50°
40°
40°
40°
40°
30°
30°
30°
30°
20°
110°
120°
130°
140°
150°
160°
110°
120°
130°
140°
150°
160°
110°
120°
130°
140°
150°
20°
20°
160° 110°
20°
120°
130°
140°
150°
160°
slow 1.5%
f 550 - 630 km
d 410 - 480 km
e 480 - 550 km
60°
図6 日本列島の下で発見されたスラブの裂け目
60°
寒色系は地震波の高速度領域で、スラブに対応している。紫点は震源。深さ300∼
110°
120°
130°
140°
150°
日本海溝
圧縮場
160°
110°
120°
130°
140°
150°
160°
1.5% fast
伊豆・小笠原海溝
張力場
700kmにわたってスラブに隙間がある(矢印)
。これは、くの字に曲がっているスラ
50°
50°
ブが横たわるためにできた裂け目だと考えられている(右図)
40°
40°
30°
スラブの進行方向
30°
地球は半径が約6,400kmで、層構造
グラフィーで、深さごとに示しています。
20°
20°
になっています。表面を覆っている地殻
110°
120°
130°
140°
150°
160°
110°
120°
130°
140°
150°
160°
slow 1.5%
青がスラブです。図6(b)を見ると、青い
110°
120°
130°
140°
150°
160°
1.5% fast
るのと同じように、スラブは深さ660km
付近に横たわります。そして、やがて下
めに沈み込んだプレートは、深さ500km
は、厚さが数∼数十kmです。地殻の下
領域に隙間が見えます。隙間は、近畿地
へ落ち始めます。千島海溝の地震波トモ
方の下にあたる深さ300kmから黄海の下
グラフィーを見ると、スラブの一部が深
設します。これで雑音を大幅に抑えるこ
くらいで横向きになり、深さ660km付近
とができるようになりました。この海底地
に横たわっています。
ントル、深さ約2,900kmまでを下部マン
にあたる深さ700kmにわたってありま
さ660kmより下に伸びている様子が見え
震計は、回収にも無人探査機を使います。
ほかのプレート沈み込み帯も見てみま
トルと呼びます。そして、中心に核があ
す。これは何でしょうか。
。これは、スラブが高圧相に
ます(図5)
しょう。図5は、左側に深さ660kmより上
ります。地殻とマントルは岩石でできて
太平洋プレートは、日本海溝で北米プ
転じて密度が大きくなり、落下している
レートの下に、伊豆・小笠原海溝でフィ
ところではないかと考えています。
で横たわるスラブ、右側に深さ1,000km
います。核は金属でできていて、中心側
地震波トモグラフィーによって見えてき
付近で横たわっているスラブをまとめたも
の内核は固体、外核は液体です。
リピン海プレートの下に沈み込んでいま
海 溝 で 沈 み 込んだプレートは 深さ
たスラブの姿を紹介しましょう。地震波ト
のです。たとえば、伊豆・小笠原海溝で
地球内部は、深くなるほど圧力と温度
。その会合点は「く」の字に曲
す(図2)
660km付近に滞留し、やがて落下してい
モグラフィーでは、地震波速度のわずか
は深さ660km付近に横たわっています
が高くなります。深さ660kmでは約24万
がっています。そのまま沈み込んでいく
くのです。2006年に公開された映画『日
な違いを検出して地球の内部構造を画像
が、その南のマリアナ海溝では垂直に沈
気圧、約1,800Kに達していると考えられ
のであればいいのですが、沈み込んだプ
本沈没』は、滞留したスラブ(メガリス)
化します。地震波速度は、物質の種類や
み込んで深さ660∼1,000kmくらいにた
ています。マントルの主な岩石はかんら
レートは深さ660km付近で横たわりま
の崩落に伴って日本列島が引きずり込ま
状態などによって変わります。かたい場
まっています。千島海溝では、南側はス
ん石と輝石ですが、この圧力・温度にな
す。くの字に曲がったプレートは、その
れるというものでした。実際は日本列島
合、冷たい場合は地震波速度が速くなり、
ラブが深さ660km付近に横たわっていま
ると、かんらん石は2つの物質に分解さ
ままでは横たわることができません。横
が載っている大陸地殻はとても軽いので、
やわらかい場合、熱い場合は地震波速度
す。北側は深さ1,000kmまで達していま
れる相分解を起こし、輝石は結晶構造が
たわるためには、裂けて隙間をつくる必
スラブの崩落に伴って地球内部に引きず
搬速度異常の断面図。左は、深さ660km
。地震波速度が平
が遅くなります(図3)
すが、深い部分は水平に曲がっているよ
変わる相転移を起こします。この現象は
要があります。スラブのなかでは深発地
り込まれてしまうことはありません。しか
の上に横たわるスラブが見られる例。右
均より速い領域は寒色系、遅い領域は暖
うに見えます。インドネシアのジャワ海溝
高温高圧実験によって確かめられていま
震が発生していますが、地震波トモグラ
し、スラブの崩落はプレートの動きに影
や南太平洋のトンガ海溝・ケルマデック
す。マントルの物質は、上部マントルと
フィーで見えた隙間の領域は地震の空白
響を与えると考えられています。
海溝、南米のチリ海溝・ペルー海溝でも、
下部マントルの境界である深さ660kmを
域に一致しています。そうした理由から、
太平洋プレートは、中生代には北に向
深さ660km付近で横たわっているところ、
境に相分解・相転移によって低圧相から
地震波トモグラフィーで見えた隙間は、
かって移動していました。現在は北西に
横たわりながら深さ1,000kmくらいまで
高圧相に転じ、密度が大きくなるのです。
スラブの裂け目だと考えています。
向かって動いています。その変 化は、
沈み込んでいるところなどがあります。
スラブは、周りのマントルと比べると
スラブのなかで発生する地震を詳しく
5000万∼4000万年前という比較的短期
深さ660kmで
何が起きている?
低温で密度が大きいため深く沈み込みま
解析すると、どのような力が働いている
間で起きたようです。それは、スラブの
す。しかし、深さ660kmまで達すると低
かを知ることができます。その結果、ス
崩落によって引き起こされたのではない
温であるがために相分解・相転移を起こ
ラブには沈み込む方向に平行な圧縮する
かという説もあります。
すことができず、低圧相の物質のままで
力が働いていますが、深さ350kmの亀裂
地震波トモグラフィーによって、スラ
地表から深さ2,000kmまでの地震P波の伝
は、深さ約1,000km付近で滞留しているス
ラブの例
0 0 410 660 410 660 1,000km
1,000km
地震波トモグラフィーからスラブの姿
30
140°
d 410 - 480 km
c 350 - 410 km
b 290 -350 km
130°
がマントルで、深さ660kmまでを上部マ
沈み込んだプレートが見えた
図5 さまざまなプレート沈み込み帯の
地震波トモグラフィー
a 240-290 km
120°
Blue Earth 127(2013)
は場所によってさまざまであることが分か
す。高圧相になった周りより密度が小さ
の先端付近では水平方向の引っ張る力が
ブは深さ660km付近で変形しながら、ま
りました。しかし、深さ660km付近で横
くなってしまうため、さらに沈み込むこと
。こ
働いていることが分かりました(図6)
たそのために、ときには裂けながら沈み
たわる傾向にあるようです。深さ660km
を妨げられます。だから、スラブは深さ
れは、現在もスラブの亀裂が進行してい
込むという地球内部の複雑なダイナミク
で何が起きているのでしょうか。
660km付近に横たわるのです。
ることを意味しています。
スが明らかになってきました。地球内部
スラブの裂け目が見えた
スラブの崩落とプレート運動
西太平洋などに海底地震計を設置した
高温高圧実験から明らかになった相転
現象を理解する上で重要です。地震波ト
ことで地震波トモグラフィーの解像度が
移・相分解による密度変化などを取り入
モグラフィーの解像度を高めていくこと
向上し、スラブの詳細な姿も見えてきま
れてコンピュータ・シミュレーションを行
で、沈み込んだプレートの行方、複雑な
した。図6は日本列島周辺の地震波トモ
うと、地震波トモグラフィーで見えてい
姿を追っていきたいと思っています。 BE
のダイナミクスを知ることは、過去・現
在・未来のプレート運動とそれに伴う諸
Blue Earth 127(2013)
31
BE Room
『Blue Earth』定期購読のご案内
編集後記
URL http://www.jamstec.go.jp/j/pr/publication/index.html
特集「地球シミュレータでBlue Earthをめぐる」は、いかがだったで
しょうか? アガラスリングや黒潮などのシミュレーション結果を示すカ
ラフルなグラフィックが印象的だったと思います。
「地球シミュレータ」の生みの親である初代地球シミュレータセンター
はじめ
長の三好 甫 先生(2001年没)は、昔から海洋研究開発機構(JAMSTEC)
のような海洋の研究機関にこそ超大型スーパーコンピュータ(スパコン)
が必要であることを熱心に説かれていました。その理由の1つは、広大な
海洋の大きさに比べて観測点があまりに少ないことにあります。海洋で
最も観測点が多いとされるARGOシステムでさえ、せいぜい100km四方
に1点です。このような、空間や時間的にスカスカ(離散的)な観測点を
使って広大な海洋と大気との相互作用のような連続的な現象を理解する
④ TEL・FAX・Eメールアドレス ⑤ Blue Earthの定期購読申し込み
お申し込み後、振込案内をお送り致しますので、案内に従って当機構
大成功を収め10月6日に無事閉幕しました。編集部としては、このよう
な大きなイベントに協力するだけでなく、今後も地道に『Blue Earth』
などを通して読者の方々に海洋・地球科学に対する理解をより深めてい
編集人 満澤巨彦 独立行政法人海洋研究開発機構 広報部 広報課
Blue Earth 編集委員会
制作・編集協力 有限会社フォトンクリエイト
取材・執筆・編集 立山 晃(p1-21)/鈴木志乃(p24-31、裏表紙)/
■ お問い合わせ・申込先
〒236-0001 神奈川県横浜市金沢区昭和町3173-25
坂元志歩(p22-23)
デザイン 株式会社デザインコンビビア
海洋研究開発機構 横浜研究所 広報部 広報課
(AD 堀木一男/岡野祐三/飛鳥井羊右)
TEL.045-778-5378 FAX.045-778-5498 Eメール [email protected]
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ホームページにも定期購読のご案内があります。上記URLをご覧くだ
さい。
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せていただきます。
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し、独立行政法人海洋研究開発機構個人情報保護管理規程に基づき安全か
つ適正に取り扱います。
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株式会社コンポン研究所
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古野電気株式会社
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株式会社マックスラジアン
株式会社 IHI
32
発行人 鷲尾幸久 独立行政法人海洋研究開発機構 広報部
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海─挑戦の歩みと驚異の生きものたち─」は、入場者数約60万人という
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日本無線株式会社
郵船ナブテック株式会社
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京浜急行電鉄株式会社
一般社団法人信託協会
洞海マリンシステムズ株式会社
日本郵船株式会社
ヨコハマゴム・マリン&エアロスペース株式会社
有限会社エルシャンテ追浜
鉱研工業株式会社
新日鉄住金エンジニアリング株式会社
東京海上日動火災保険株式会社
濱中製鎖工業株式会社
株式会社OCC
株式会社構造計画研究所
須賀工業株式会社
東京製綱繊維ロープ株式会社
東日本タグボート株式会社
沖電気工業株式会社
神戸ペイント株式会社
鈴鹿建設株式会社
株式会社東京チタニウム
株式会社日立製作所
オフショアエンジニアリング株式会社
広和株式会社
スプリングエイトサービス株式会社
東北環境科学サービス株式会社
日立造船株式会社
Blue Earth 127(2013)
Blue Earth
第25巻 第5号(通巻127号)2013年11月発行
JAMSTECの2代目のスパコン導入の責任者でした。当時の小さなスパ
さて、 3ヵ月間にわたって国立科学博物館で開催されていた特別展「深
海と地球の情報誌
■ 支払い方法
計算機資源が必要とされるのです。編集子は 1990年代の終わりごろ、
レータセンターのスタッフの方々に敬意を表したいと思います。
日と25日(休日の場合はその次の平日)にお届けします。登録は無料
です。登録方法など詳細については上記URLをご覧ください。
*購読には、1冊300円+送料が必要となります。
平日10時∼17時に限り、横浜研究所地球情報館受付にて、直接お支払
いいただくこともできます。なお、年末年始などの休館日は受け付け
きな結果を出すために日々不断の努力を重ねてこられている地球シミュ
JAMSTECでは、ご登録いただいた方を対象に「JAMSTECメールマ
ださい。
① 郵便番号・住所 ② 氏名 ③ 所属機関名(学生の方は学年)
重要とされています。そのために、「地球シミュレータ」のような大きな
た。現在の「地球シミュレータ」の規模を考えると、研究者を支えて大
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ガジン」を配信しております。イベント情報や最新情報などを毎月10
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だきます)。ご入金を確認次第、商品をお送り致します。
コンですら円滑に計算資源を運用していくために研究者との綿密な調整
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1年度あたり6号発行の『Blue Earth』を定期的にお届けします。
ためには、数学的な手法によるコンピュータシミュレーションが非常に
が必要でしたし、セキュリティーなども万全にすることが求められまし
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Blue Earth
世界で2番目に深いホライゾン海淵ヘ-南太平洋・トンガ海溝
を めぐ る
2013 年10 月7 ~20 日 、 有 人 潜 水 調 査 船 「し ん か い6500 」 と 支 援 母
船 「 よ こ す か 」 は 南 太平 洋 ト ン ガ 海 溝 に お け る 調 査 を 実 施 。 こ れ は 、
2013 年1 月 か ら 行 っ て い る 世 界 一 周 航 海 「QUELLE 2013
」の 最終
ステ ー ジ で あ る 。
ト ン ガ 海 溝 の ホ ラ イ ゾ ン 海 淵 の 最 深 部 は 、 水 深1 万850m
。 世界
第2 位 の 深 さ で あ る 。 こ の 海 域 に お け る 有 人 潜 水 船 に よ る 調 査 は 世
界 初 だ。 今 回 の 調 査 で は 無 人 の ラ ン ダ ー を 用 い て 、 ホ ラ イ ゾ ン 海 淵
の 水 深1 万805m
と6,250m
で、底 生生 物の採 取、 堆積 物 の採泥 、堆
積 物 中 の 溶 存 酸 素 量 の 測 定 、ハ イビ ジ ョン カ メ ラ 撮 影 な ど に も 成 功 。
深 さ が 世 界1 位 の マ リ ア ナ 海 溝 チ ャ レ ン ジ ャ ー 海 淵 でJAMSTEC
が
繰 り 返 し 行 っ て き た調 査 結 果 と 比 較 す る こ と で 、 超 深 海 の 環 境 や 生
物 が 場 所 に よっ て 異 な っ て い る の かを 検 証 し て い く。
「し ん か い6500 」 は11 月 初 旬 に 南 太 平 洋 ケ ル マ デ ィ ッ ク 海 溝 の 調
査 を 終 了 し 、12 月 上 旬 に 帰 国 す る 予 定 だ。 約1 年 間 に 及 ん だ
「QUELLE 2013
「QUELLE 2013
」 が 幕 を 閉 じ る。
」 特 設ペ ー ジ
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