検査室 耳より 情報 関節液の検査 関節液とは 結晶成分の鑑別 「関節包」の内部にある「関節液」は「滑膜」 により作られ、関節の滑らかな動きを助けてい ます。 健康な人の膝関節 健 康 な 人 の 関 節 液の量は数㎖程度 で す。と こ ろ が 関 節に強い炎症がお こると関節液が多 く作り出され数十 ㎖と過剰に溜まる ようになります。 膝関節全体を包む「関節包」の内 関 節 液 が 過 剰 に 側は「滑膜」で裏打ちされており、 溜まると滑膜を圧 関節液を分泌・吸収している。 迫 し、さ ら に 炎 症 を悪化させてしまうため関節液を抜く治療を行 います。 関節液が再び溜まらないように炎症の原因を 探るため抜いた関節液で色々な検査を行います。 関節液中の結晶によって誘発 される急性関節炎には痛風や偽 痛風があります。 痛風は高尿酸血症が原因で関 節液中に尿酸が増えて結晶がで き、関 節 に 沈 着 し ま す。尿 酸 結 晶(MSU 結晶)を白血球が溶かそうと攻撃する ため、痛風発作が起こります。多くは足の親指 の付け根の関節に起こりますが、くるぶし、ひざ、 手首などの関節に発症することもあります。 偽痛風は痛風によく似た症状を起こしますが、 尿酸結晶ではなくピロリン酸カルシウム結晶 (CPPD 結晶 ) が沈着して起こります。特に膝関 節に発症します。 この 2 つの鑑別をするため関節液を簡易偏光 装置を付けた顕微鏡で観察して検査します。 ほう かつまく ピロリン酸カルシウム結晶 尿酸結晶 関節液の検査・外観(色調・性状) 赤色系が混ざると出血が示唆され、混濁があ ると細胞結晶、細菌の混入が考えられます。 通常は強い粘性を示しますが、 炎症が強くなるに従い粘性は弱 くなります。 細胞数から非炎症性、炎症性、 化膿性などに分類されます。 ・針状に見えるものが多いが 長方形もある ・長いものが多い ・結晶が束状になりやすい ・長方形や棒状 ・尖った針状にならない ・結晶は様々な方向を向く 関節液の分類 量 外 観 炎 症 性 化 膿 性 3.5 ㎖以上 3.5 ㎖以上 高 高 低 多様 色 調 無色∼淡黄色 淡黄色 黄色 多様 透明度 清澄 清澄 半透明∼混濁 混濁 200 以下 200∼2,000 2000∼100,000 100,000 以上 25 以下 25 以下 50 以上 75 以下 μL 多核白血球 % 主な疾患 非炎症性 3.5 ㎖以上 粘 性 細胞数 培 養 正 常 3.5 ㎖以下 陰性 陰性 陰性 しばしば陽性 変形性膝関節症 痛風 偽痛風 細菌性関節炎 外傷 骨軟骨症 関節リウマチ SLE リウマチ熱 平 成 2 4 年7月 1日 第1 5 2 号 3
© Copyright 2024 Paperzz