World of chocolate - part 1 - Australian Macadamia Consumer

イノベーションが続く チョコレートの甘い世界 Part 1
2015年9月
イノベーションが続く チョコレートの甘い世界 Part 1
チョコレート業界のグローバルにおける最新情報を、二部構成でお送りします。最新トレンド、革新的商品、
成長機運など、今回のパート1は主にオーストラリアの情報、次回パート2では、主に日本と欧州メーカー
動向をお届けします。
世界経済が大きく揺れ動いた近年、チョコレート業界も浮き沈
みはありましたが、今後の見通しはとても明るいものです。新
興市場国とアメリカの景 気回復に後押しされ、メーカーは次々
と革新的な商品や消費者が求める商品を生み出しています。五
感を満たし、贅沢を感じながらお財布にも優しい商品や、自宅
で気軽に食べられ、心を満たしてくれる商品など、様々です。
データモニターが 2014 年に発表した報告書1によると、消費者
は日常の中から少しだけ逃避するために、チョコレートのような
手軽で、さほど高価ではない商品を好むようです。チョコレート
は「手頃な贅沢」と言え、ストレスや不安を感じる時に心を落ち
着かせてくれる、最高の「コンフォートフード(安らぎを与えてく
れる食べ物)
」
と言えるでしょう。毎日、
10 億人もの人がチョコレー
トに手を伸ばす現状は3、人々はチョコレートが大好きであるこ
とに変わりなく、その中にも、様々な紆余曲折があり、幅広い様々
世界のトレンド
2013 年における全世界のチョコレートへの支出は 907 億ドル、
そのうち米国が 180 億ドルで支出額1位、また国民一人あたり
の支出額1位の国はスイスでした。オーストラリアはそれぞれの
ランキングで 9 位に入っています。1
米国では成人の 85% がチョコレートに出費していますが、ミンテ
ルの報告書によると 2013 年から 2014 年は 3% の伸びに留まり
ました。しかしながら、2019 年までには、米国の市場は 250 億
ドルに達すると予想されています。2
年間支出額国別トップ 10(2013 年) 一人当たりの年間支出額国別
単位:10 億ドル
トップ 10(2013 年)単位:ドル
米国
18.35
ドイツ
スイス
176.03
8.25
ノルウェー
171.77
英国
7.87
アイルランド
159.63
日本
6.22
オーストリア
142.37
メーカーはほかの食 材や飲み物からヒントを得た製品を続々と
ブラジル
6.15
フィンランド
130.95
投 入しており、その結果、ビールやベーコン、スパイスから紅
ロシア
5.13
デンマーク
130.94
茶まで幅広い食材をチョコレートと組み合わせています。また、
フランス
4.73
英国
127.32
より風 味 の良いチョコレートが 好まれていることから、チョコ
イタリア
3.40
スウェーデン
122.01
オーストラリア
2.45
オーストラリア
100.54
ポーランド
2.02
ドイツ
なトレンドが産まれています。
レートとワインを組み合わせた製品も増えています。
ここまで幅広く、かつ、相反するようなトレンドがダイナミック
に起こっている現在、いち早くトレンドを掴みイノベーションを
起こすメーカーが未来を握るといっても過言ではありません。
97.12
出典:データモニター消費者レポート2014年
データモニターによると、この成長は従 来 型チョコレートでは
なく、ノベルティーチョコレートによって牽引されるとのこと。
また、今後はノベルティーチョコレートが好まれるヨーロッパお
よびアジア諸国において成長が見込まれると報告しています。
オーストラリアでは、プレミアムチョコレートの分野が年平均成
長率 4.7% で、全体を主導しています。3
2013 年 -2018 年のカテゴリー別成長率(年平均成長率)
ノベルティー
3.75%
箱入り
その他
成形バー
3.48%
3.42%
2.50%
ストレートライン
2.31%
カウントライン
2.31%
出典:データモニター消費者レポート2014年
写真はハイグス・チョコレートのご厚意により掲載許可をいただいています。
PAGE 1
イノベーションが続く チョコレートの甘い世界 Part 1
ダッククリークマカダミア:革新的なチョコレートを生み出す秘訣とは
高級食品メーカーであるダッククリークマカダミアは、年々成長
する高級チョコレート市場には革新が不可欠であることを、十分
に理解しています。
オーストラリア、バイロンベイの内陸に拠点をもつダッククリーク
は、80 年代後半からチョコレート製 造に携わっています。当時
のオーナーが自身の農場で高級品質のマカダミアナッツを栽培
しており、チョコレートと組み合わせることで価値を高めようと、
実験的に会社を始めました。
25 年経 過した現在、ダッククリークの製品はオーストラリアの
高級食料品店、ギフトショップ、雑貨店、独立系スーパーマーケッ
トなどで販売されています。12 月からは全国展開をするスーパー
マーケットにも商品を卸すことが予定されており、中東やアジア
への輸出も好調です。
ダッククリークの今日までの成功の秘訣は何だったのでしょうか。
営業マーケティング マネージャーの
ジェーン・ダフ氏によると、ポジショ
ニングを理 解し、自分たちらしさを
貫くこと、とのこと。
「私たちは、プ
レミアム価 格で販 売しています。例
えば、チョコレートでコーティングし
たマカダミアは約 20 ドルの小売 価
格ですが、市場ではもっと廉価な製
品が あることも承知しています。で
すが、決して弱気になることはあり
ダッククリークの高級チョコレート
ません。私たちの製品は素晴らしい スナック「イッツザダックスナッツ」
ものであり、この価格は、消費者が
体験する品質を反映していると思い
ます。」
ダッククリークのチョコレートは、マカダミアを全面に押し出し
ていることが、15 年以 上も高級ギフト市場において高い評価を
得ている理由です。ダフ氏はこう続けます。
「マカダミアは、す
でに高級製品としての地位を獲得しています。消費者はマカダミ
アの独特な口当たりと、なめらかでバターのような味が大好きで
す。最高のナッツと最高のチョコレートを組み合わせることによっ
て、人々が 贈り物として送りたくなるような美しいお菓子を作り
ました。質の良い、大きめのカーネルを使用することで、五感を
満足させる素晴らしい体験ができるのです。」
チョコレートとマカダミアの人気ある組み合わせのほか、ダック
クリークはさらに、ミント、オレンジ、ローズ、ジンジャー、モカ
といった天然素材を加え、味覚の世界を広げ ています。中でも
ベストセラー製品は、マカダミアをハニーローストしてから、チョ
コレートで包んだものです。
「創造 力に富んだ 商品を作ることは、大 変重要です。プレミア
ムギフト市場は競争が激しく、常に新鮮な商品を開発する必要
があります。」ダフ氏は、生 産と製 造 工程、それに創造 力が 組
み合わさり、初めて効率性の高い製品と素晴らしい味が生まれ
ると信じています。
「私たちの主力製品は高い価格帯で展開して
います。イノベーションによってコストを下げることができれば、
利益が増大することを意味します。」
ダッククリークは創業以来、加工は外部の会社に委託していま
したが、最 近、チョコレートパニングを含む全行程を自社で行
う英断を下しました。価格面と効率化が大きな要因ではありま
したが、同時に製品開発に力を入れるのも、大きな狙いです。
ダフ氏によると、新体制になったことで、味や形 状など、より
実験的な試みができるようになったそうです。
「自社生産に切り
替えたことで、以前よりも新製品のアイディアを試すのが容易に
なりました。また、製品化が決 定してから発売までの時間も短
縮でき、常に市場に新しい製品を投入することが できるように
なりました」とダフ氏は語ります。
また、最近、ブランドの刷新とパッケージのリニューアルを行い、
次の成長ステップへの準備も整いました。
「わが 社のプレミアム
チョコレートは、心をこめた贈り物としてぴったりです。小さな
お礼の印や、自分用に衝動買いするものとは一線を画しています。
新パッケージは、これをより強化したデザインとなっており、す
でにラッピングされているような体裁です。」新デザインは、ダッ
ククリークの原 点である農 場が モチーフであり、ユーモアと茶
目っ気も感じられます。新規の取引先に納品する際には、必ず
サンプリング 用の商品を同封しており、
「一度 試 食したお客 様
は、品質を認めてくれるためプレミアム価格でも購入してくれる
ようになります。セルインが成 功する要因の 90% は、サンプ
リングにあると言っても過言ではありません。」と、ダフ氏は語
ります。
今後の商品展開は、カスタマイゼーションが大きな可能性を秘
めているとダフ氏は考えます。
「個人の好みに特化した製品を求
める消費者が増えてきています。長年に渡って自社製品の箱詰
めを自分たちで行ったり、
スペシャルフレーバーの限定生産など、
独自のノウハウがあるので、カスタマイズ 製品の受注は可能だ
と思います。例えば、お客様がご自分で選んだフレーバーだけ
を詰めたボックスを発 送するといったサービスが できるでしょ
う。競合他社にはない、遊び心のある製品を作ることができる
のです。」
ダッククリークの高級ギフト用チョコレート「オブセッションズ」シリーズ
PAGE 2
イノベーションが続く チョコレートの甘い世界 Part 1
チョコホリックとはどんな人たち?
KPMG が発表した「未来の味:チョコレート産業のトレンド」という報告書 3 によると、景気が回復した現在、チョコレート消費者を
カテゴリー別に分類するのは以前よりも難しくなっている中、現在この分野において最も影響力のある消費者として下記 3 つのタイプ
を挙げています。
バリューコンシューマー
ラグジュアリー追求派
ハイブリッドタイプ
•バリュー商品を求める層:
•ラグジュアリー層:
•バリューコンシューマーとラグジュア
チョコレートカテゴリーの最大多数
最も成長のスピードが速い層
リー追求派の混合
•経 済 低 迷 の 中 で 消 費 行 動 が 変 化し、
•
「単なる製品」以上の物を求めている
•少々矛盾した行動:
安価な製品やバリューラインにスイッチ
ングした消費者
食料品は節約したいと思いつつも、
•日常の中の贅沢、すなわち「至福の喜
プレミアムチョコレートのような日常
びをもたらしてくれる 1 分間」を追求し
•小分けパックやプライベートブランド
を好む
の中の贅沢品で、人生に喜びを感じた
ている
いと願っている
•シ ン グ ル オリジ ン・チョコレ ート の
•しかしながら、決して質の悪い製品を
人気の高まり。高品質、自然素材、健康
受け入れる準備があるわけではない
をイメージさせるため
•予想:
今後、消費者支出にミレニアム世代が
占める割合が増えるにつれ、この層が
•米 国 で は、 高 級 製 品 を 安 い 価 格 で
次第に優勢になり影響力を持ってくる
求める消費者によって成長が 牽引され
ている
チョコレート界のトレンド
味と栄養
消費 者がチョコレートを購入する際に重 視する項目のトップは
若者対年長者
味で 41%、次に栄養が 35% です。
少なくとも月に数回チョコレートを消費しています。若い消費者
ですが、このような快 楽も健 康への興味に追従されています。
データモニターの報告書によると、世界中の典型的な消費者は、
は、新しいチョコレート製品に手を伸ばすことにためらいはあり
ません。プレミアムチョコレートを購入する割合は低いですが、
全体の中では最も冒険的で、
「手の届く贅沢」とポジショニング
された、今までにない味や材料のチョコレートも進んで受け入
れます。だからといって年長の消費者を無視していいということ
ではありません。年長の消費者は、それまでの購入習慣を変え
ることに抵抗を持つ人が多いですが、それでも時にはいつもと
違った商品を購入したいという気持ちはあります。実際、世界
の消費者の 60% が新しく珍しいフレーバーのチョコレートを魅
力的だと思っています。1
つまり人々は味 覚の快 感を求めてチョコレートを購入するわけ
カカオには抗酸化作用があり、健康に良い影響をもたらすとの
調査結果を認知している消費者は増加傾向にあります。
ほんの少しだけ…
健康およびダイエットの分野ではポーション管理が話題となって
います。チョコレートの世界でも、次々と人気の製品が一口サイズ
のミニパッケージを発売しており、人気の高まりを感じさせます。
ミニサイズ製品はポーション管理だけでなく、罪悪感を軽減させ
るのにも役立ち、これはスイーツ消費において重要な影響力を持
ちます。1
世界の消費者が食品や飲料を購入する際の優先順位(2013 年)
味
栄養情報
他との価格差
材料一覧表
メーカーもしくはブランドへの信頼と親近感
天然やオーガニックかどうか
遺伝子組換えしているか
原産国
メーカーやブランドの社会的評判や環境に対する配慮
第三者の認定や承認
41%
35%
27%
25%
22%
17%
13%
11%
6%
3%
出典:データモニター消費者レポート2014年
PAGE 3
イノベーションが続く チョコレートの甘い世界 Part 1
大 き くて 再 密 封 が 可 能 な パッ ク に、 一 口 サ イ ズ の 製 品 が
データモニターがメーカーのイノベーションを推奨する理由は、
入ってい る商 品 は バリューを 重 視 する買 い 物 客 に 人 気 で す。
イノベーションがカテゴリー全体の成長を促すだけでなく、消費
英 国 で は 2009 年 から 2013 年 の 間 に一 口 サイズ の 菓 子 は
者が新しい味や食感を求めてアイスクリームや冷たいデザートへ
40% の 伸 び ました。モンデレスに
と流出するのを防ぐためです。
とっては一口サイズ 戦 略が あまりに
現 在 イノベーションの 勢 い の 先 頭 を 切ってい る の は 欧 州 で、
成功したため、今では同社が 掲げる
昨年世界で発売された新製品のうち半数以上が欧州発でした。
「グローバル・イノベーションのため
の4つのプラットフォーム」のうちの
1つと位置付けられています。3
次がアジアで 21% を占めており、残りの地域が27% です。
写真引用元:データモニター2014
地域別新製品発売(2014 年)
ダークチョコレート
中東・アフリカ
健 康に気を 使う消 費 者によって 2013 年から 2014 年にかけ、
ラテンアメリカ
ダークチョコレートは著しい 伸び を 見せ、同 期 間に 新 発 売さ
6%
9%
れたダークチョコレート製 品は前 年 の 193% にもなりました。
現在、米国チョコレート市場の 20% がダークチョコレートで占
められています。抗酸化作用との関連で多くの消費者がダーク
北アメリカ
チョコレートをチョコレート界 の 赤ワインだと思っています。1
12%
米国ではハーシーがダークチョコレートの消費を「生活様式を改善
ヨーロッパ
52%
するための選択肢」としてポジショニングしようと試みています。
3
アジア
パシフィック
また、ほかのメーカー数社は苦味の少ないフラバノールの開発
21%
に投資しており、もし成功すれば、ダークチョコレートの魅力は
今以上のものとなるでしょう。3
出典:ConfectioneryNews.com
信頼問題がプレミアム化を牽引
加 工 食 品 に 対 する 不 信 感 の
影 響もあり、チョコレートに
オール・ナチュラルを謳った製品:
も 天 然 材 料 を求める声が 高
スーパーマーケットで見かけるワクワクするような新製品はイノ
まってきています。消費 者の
ベーションの大きな成果です。しかし、チョコレート界のイノベー
34% が 自然 食 材を 使ってい
ションはもっと幅 広く奥行きもあり、味、食 感、顧客体 験、健
る製 品は 10% 価 格が 高くと
康と機能性、季節イベント、材料調達、持続性など、それぞれ
も 妥 当だと思っているため、
のプラットフォームで革新が起きています。
メーカー側にとってはプレミ
アム化へ の 近 道となります。
こ の 戦 略 の 主 軸 として、
メーカーが 取り入れる自 然
米国のホールフー
ズ「 ペ ア ア ンド
アーモンド・ダー
クチョコレート」
ロシアのブラウ
ン ア ンド ヘ イ リ ー
「カシューロカ」
イノベーション・プラットフォーム
その1:味と食感
一般的に消費者には新しい味を試し
食材はナッツとフルーツが多
たいという欲 求が あります。慣れ 親
いようです。1
しんだ味は安心できますが、飽きて
プライベートブランドの台頭
プライベートブランドの製品が 以前よりも人々を引きつけてい
ます。以前よりも品質が大幅に改善されているため、バリューコ
ンシューマーにとって魅力的な選択 肢となっています。反対に、
プレミアム価格を謳っているブランドは、品質の良さを証明する
必要がありプレッシャーを感じています。本当に高品質な材料
と製造工程でブランド価値を高める必要があるからです。1
イノベーション・プラットフォーム
現在チョコレートカテゴリーではイノベーションの波が 起こって
おり、ミンテルの報告書によると 2013 年から 2014 年の間に
新しく発売された製品は18% 増加しました。
しまうこともあるため、メーカー側も
消費者の欲求に応えようと努力をし
ています。モンデリーズ は 2015 年
6 月にオーストラリア市場でベジマイ
ト・キャドバリーを新発売して話題を
さらいました。ブ ロック状 のこの 製
写真引用元:
キャドバリーおよびオーストラリ
アツイッター
品は、同社でおなじみのミルクチョ
コレートに オーストラリア でポ ピュ
ラーな塩味のペーストを組み合わせたものです。
ミンテル・フード・アンド・ドリンクのディレクター、マルシア・
モゲロンスキー氏は「近年の新製品開発はとても想像力豊かで、
従来の甘味以外の味や食感を探求する動きがあります」と述べ
ています。
PAGE 4
イノベーションが続く チョコレートの甘い世界 Part 1
100 周年を迎えた老舗プレミアムチョコレートブランド、ハイグス
プレミアム市場で勝ち残る秘訣を知り尽くしてい
豊富な商品群には、フルーツ、ナッツ、リキュール、紅茶、
る企 業といえば、オーストラリアで 最古のチョコ
スパイスが使われています。また、チョコレートの形
レートメーカー、ハイグ ス・チョコレートが 真っ
状も粒、ブロック、バー、ボックス入りアソート、チョ
先に浮かび ます。家 族 経営の 同 社は 2015 年に
コレート菓子と豊富に揃っていますが、どの形状にも
100 周年を迎えますが、とても創業 100 年とは
マカダミアが 主役のチョコレートがあります。マカダ
思えないほどの新鮮さとエネルギーに満ちていま
ミアはミルクとダークどちらにも合い、またココナッツ
す。250 種類におよぶ商品、14 店舗、大人気の
やタフィーとの組み合わせも絶妙です。ハイグスでは
オンラインストア。ハイグスは、常に最新トレンド
10 年以上も前からマカダミアの商品を発売しており、
をうまく取り入れ、移り変わる消費者の心を掴ん
マカダミアはハイグスのブランド・イメージともマッチ
でいます。
ハイグ スのチョコレートを食べ たことが あるか、
ハイグスの店舗でチョコレートを買ったことがあ
写 真は ハイグス・チョコレートの
ご厚意により掲載許可をいただい
ています。
れば 誰でも、これぞ プレミアムチョコレートの極
みだと答えるでしょう。アシスタント・マーケティング・マネージャー
のカイル・テューレ氏は、ビジネスのあらゆる側面で品質にこだ
わる社風がプレミアムチョコレート業界で長年に渡って安定した
業績をあげてきた秘訣だと語ってくれました。
「細部へのこだわり
は原材料から始まります。カカオビーンズをはじめナッツやフルー
ツに至るまで使用する材料の基準には徹底的にこだわっていま
す。これに素晴らしいショコラティエたちの経験と職人技が加わ
ります。私たちはすべての商品に愛と思いやりを込めて生産して
おり、消費者はチョコレートの中にそれが感じられるのだと思い
しているそうです。
「マカダミアはプレミアムナッツな
ので、私たちのようなプレミアムブランドにはぴったり
のナッツです」と語ります。
ハイグスのラインアップには従来からのベストセラーも少なくあ
りませんが(なんと 1925 年当時から作られているものもあり
ます!)
、ブランドの成長のためにイノベーションは欠かせませ
ん。ハイグスは毎年 3 〜 6 種類の新製品を発表します。
「季節
の行事、例えばイースター、クリスマス、母の日、父の日はとて
も大切で、毎年違うテーマを設定します。定番商品を補足する
ような新しいフレーバーを投入することによって、新鮮でワクワ
クするようなラインアップを保つと同時にお客様を喜ばせたり驚
かせたりできます。例えば、今年は母の日コレクションとしてお
茶シリーズのダークジャスミングリーンティーとミルクアールグ
ます。
」
レーティーガナッシュを発売し好評でした。」
ハイグ スは全 製 品を自社 内で 製 造しており、その 製 法は何代
ハイグスのイノベーションはあくまでも消費者の要望に沿ってい
にも渡って受け継がれてきたものです。そのため、フレーバー
や 独 特 の 食 感に一貫して 高い 品 質を 保てると、テューレ氏 は
言います。細 心の注 意をもって作られるチョコレートには、場
合によって手作りの工程も含まれますが、それも高い品質を守
るためだと言います。
「どうしても機械では人間よりも劣ってし
まう作業があり、決して妥協を許さないため、ほとんどの製品
は仕上げの一部分を手作業で行っています。浸し塗りか飾りつ
けの場合もありますし、パッキングのこともあります。」
またハイグスは店舗にもこだわり、プレミアムなのは味だけで
はないように気をつけています。
「お客様がハイグスの店舗に足
を踏み入れた瞬間から、世界有数のチョコレート体験を味わって
欲しいと思っています。私たちはプレミアムブランドですが、同
時にお店ではお客様にくつろいでいただきたいと思っています。
製品数も豊富に揃えているので、贈り物にもご自分へのご 褒美
にも、必ず気に入っていただける商品があると思います。お店の
スタッフも昔ながらの心のこもった接客をするよう教育していま
す。製品にもお客様にも、細心の注意と最大の敬意を払ってい
ます」とテューレ氏は語ります。店内にはプレミアムブランドな
らではの細やかな気配りが感じられます。
「誇りを持って満足の
ます。
「私たちは顧客からのフィードバックを大歓迎しています。
いただいたコメントは必ず製品開発チームに送られ内容が検討
されます。」テューレ氏は、現在の消費 者は非常に情 報 通だと
感じています。
「チョコレートについてとても詳しくなっています。
高カカオには健康上のメリットがあることも熟知しており、その
ような商品を求めます。また、チョコレート素材にも興味を持っ
ており、産地や製法について興味を示します。シングル・オリジ
ンが人 気なのも良い例で、消費者はシングル・オリジンが意味
することをきちんと理解しているのです。」
今後の方向性についてはどうでしょうか。テューレ氏によると、
海外でのトレンドが 国内に影 響を与えることも多いため、米国
や欧州のトレンドにも気を配っています。そうです。
「ライム・ア
ンド・チリ・グレナダ・シングル・オリジンなどのように、かな
り冒険的なフレーバーでも売上が良いのは嬉しい驚きです。実
験とイノベーションはハイグスの文化でもあり、今後も発展を続
けるために重要な要素だと思います。」
今年からハイグスの新しい 100 年が始まりますが、未来は眩い
ものになりそうです。
いく顧客体験を実現するために、スタッフの教育には大きな投
資をしています。全 員がきちんと整ったハイグスの制服に身を
包み、製品に触れる時も必ず白い手袋を着用します。どんな購
入でも喜んで贈答用のラッピングを施し、お客様の期待を裏切
りません。カカオ豆からお客様の口に入るまで、すべてにおいて
プレミアム品質が保たれていることが重要なのです。」
PAGE 5
イノベーションが続く チョコレートの甘い世界 Part 1
米国の調査によると、市場拡大にはイノベーションは欠かせません。
2013 年から 2014 年にはプレーンチョコレートやフレーバーな
しの製品の売上は大幅に減少しました。逆にナッツ入りやナッツ
風味の製品の売上は増加しています。また、米国の 71% の消
費者はプレーンもしくはフレーバーなしの製品よりも、ミックス
タイプの製品を好むとの調査結果もあります。
2
ミンテルによると、現在世界のチョコレート界でトレンドとなっ
ている味と食感には以下のようなものがあります。
• ナッツ:チョコレートとナッツだけの組み合わせのほか、スパ
イス、チリ、種などの材料と組み合わせたタイプ。よく使わ
れるナッツのトップ 3 はヘーゼルナッツ、アーモンド、ピーナッ
ツですが、ここ数年はピスタチオも増えてきています。
• シトラスフルーツ:オレンジ以 外のフレーバーを実 験するの
が人 気です。レモンを使 用したチョコレートは 2013 年から
2014 年に倍増し、レモン単独以外にもヨーグルトやペッパー
と組み合わせた製品も登場しました。
• デザート味のチョコレート:いまやデザートそのものがチョコ
レートの材料です。クリームブリュレやティラミスといった味
が続々と登場しています。
• 野菜:アジアで人気のトレンドですが、枝豆、スィートポテト、
ポテトチップスをチョコレートで覆った製品が登場しています。
• 珍しいフル ーツ:従 来 からあるストロベリー、ラズベリー、
チェリーに加えて、ポーランドではピーチ味のチョコレート
が人 気となっています。
• シリアル:新し い 食 感 を 追 求 する 材 料 としてグ ラノー ラ、
ミューズリー、キヌアなどが使用されています。
目覚めた消費者のために。チャクラ・チョコレート
1990 年代 後半、ヨガ教師
としてサンフランシスコから
オーストラリアに渡ったダニ
エル・パーセル氏は、オー
ストラリアで自分 のチョコ
レートが 発売になるとは全
く想像していませんでした。
しかし、事はまさにこの通
りに 進 み、2015 年 4 月に
パーセル氏がプロデュースしたチャクラ・チョコレートが発売にな
りました。
地元の 100% オーガニックの材料から作られたチャクラは、オレ
ンジエッセンスが注入されたプレミアムダークチョコレートの中に
様々なナッツとフルーツが入っており、それぞれのフルーツやナッ
ツは身体のエネルギーセンターであるチャクラを代表しています。
現在チャクラ・チョコレートはプレミアム食材店や健康食品店、
もしくはオーストラリアの一部でしか展開していないスーパーマー
ケットなどでしか扱われていませんが、高級スパ、ヨガスタジオ、
高級デリからの引き合いも多く、オーストラリア中で手に入る日
も近いかもしれません。
パーセル氏は 1999 年にチャクラ・チョコレートのアイディアを思
いつきましたが、当初は手作りで数回試作品を作ってみただけで
した。しかしそれから 14 年後、バイロンベイのヨガクラスでマカ
ダミア・フレッシュのグレッグ・リーヴス氏と出会ったことで、こ
のコンセプトを一気に商品化することになったのです。
パーセル氏はこのタイミングを神からの贈り物だと思っています。
「市場がこのような商品を受け入れる準備ができたのはつい最近
のことです。食べ物によって身体と心にエネルギーを送るという
考え方が、以前よりも一般的に受け入れられるようになってきま
した。
」
パーセル氏はこのチョコレートのターゲットは「新たに目覚めた消
費者」だと言います。
「特定の年齢層やデモグラフィックには絞
れないと思っています。ヨガを発見したのはベビーブーマーですし、
スーパーフードに興味があるのは若い消費者たちです。消費に関
して意識が高く、栄養への理解を深めたいと思っている層が対象
になると思います。
彼らは新しくほかとは違ったものを求めており、
魂と物語がある商品が欲しいのです。
」
身体のチャクラにはそれぞれ色があります。パーセル氏はその色
に合うフルーツやナッツを選びました。例えば喉の青いチャクラ
にはブルーベリー、心臓の緑色のチャクラにはピスタチオと言っ
た具合です。白い色のマカダミアナッツは頭頂のクラウン・チャ
クラ用に選ばれました。マカダミアはナッツの女王と呼ばれてい
るのでぴったりです。
「どのチョコレートも評判が良いですが、特
にマカダミアの人気は特別です。
」とパーセル氏は語ります。
「誰
でもマカダミアとチョコレートの組み合わせは好きですが、オレ
ンジエッセンスが少量入っているので、より特別な味なのです。
」
マカダミアを加えたことでギフト用チョコレートの市場にも喜ば
れる商品になったと思っています。
「マカダミアは特別な品質を備
えています。普通のナッツとは違い、食べることが自体が喜びで
あり、贅沢なのです。
」
パーセル氏は「クリーンでシンプル、持続性があり、小さいけど
地球に貢献できる」
商品作りを目指しました。チャクラ・チョコレー
トは美しいながらも再生可能なパッケージに入っており、製品情
報の紙はそのまま本の栞にもなります。糊は使われておらず、す
べてがリサイクル可能です。
チャクラ・チョコレートは発売からあまり時間が経っていませんが、
消費者や業界から素晴らしい評価を得ています。
「消費者はプレ
ゼントとして贈るのも受け取るのも楽しんでいるようです。瓶の
開け口が大きいので、手に一杯取って食べられると人気です。小
売店もこのコンセプトを気に入っており、ワインテイスティングの
場にもぴったりです。
」
今後ますます流通が増えそうなチャクラ・チョコレートですが、
パー
セル氏は、
それぞれの種類だけが入ったナッツ・バージョンとフルー
ツ・バージョンも企画中で、いずれは輸出もしたいと考えています。
チャクラ・チョコレートの今後の動向が気になりますが、その売上に
はきっとチャクラの普遍的なエネルギーの恩恵があることでしょう。
PAGE 6
イノベーションが続く チョコレートの甘い世界 Part 1
• こだ わりカカオ:ワイン同 様、繊 細な味 の 違いを求める消
費者のために最高級カカオや珍しいカカオを使用したチョコ
レートが発売されています。
• ホワイトチョコレート:様々な味や詰め物が入ったホワイト
チョコレートの新製品が増えています。
• フレーバーレイヤー:ビール、赤ワイン、BBQ 味のポテトチッ
プス、ベーコンなど、チョコレートをベースにした一風変わっ
た味のコンビネーションが増えています。
イノベーション・プラットフォームその3:機能性と健康
近年肥満の割合が増え、健康への懸念が上昇するにつれ、消費者
の習慣にも変化が見られるようになりました。多くの消費者にとっ
て健康状態を改善し健康を保つことは大きな関心事であり、チョ
コレートメーカーも何らかの役割を果たしたいと思っています。
イノバの報 告によると、2012 年から 2013 年の間に健 康に関
連するメッセージを発信したチョコレートメーカーおよびココア
メーカーは 43% 増加しました。3 メーカーは、不健康な材料を
• フローラル:まだトレンドの黎明期ですが、ワイルド・オフィー
リアはオール・ナチュラル・サザン・ハイビスカス・ピーチ・ミ
ルク・チョコレートという製品を発売しています。
に変 更 )
、ポーションサイズを変 更したり、マーケティングメッ
イノベーション・プラットフォームその2:顧客体験
のニーズに応えようとしています。3
今 日 の 消 費 者 は 体 験 を 重 視 する 考 え 方 に 移 行して い ま す。
そのためメーカーは製品そのものの枠を超え、いかにして消費
者の五感に響く体験が作り出せるか、を考える必要があります。
1
実 際に世 界 の 消 費 者 の 73% が 新しい
がチョコレートとワインのペアリングで、
またクロアチアのサプリメントブランドであるミルシングは、プ
ロバイオティクスの商品には錠剤やカプセルよりもチョコレート
います。英 国で 最 近グリーン・アンド・
英国のグリーン・アンド・ブラッ
ク「コノサー・コレクション」
写真引用元:
データモニター消費者レポート
2014
「チョコレートファンがワインとのペアリ
ングと楽しむためのガイド」となっています。1
また日本では、ネスレが世界 初となる「キットカットショコラト
リー」ショップを 2014 年に東京でオープン。日本人のショコラ
ティエが作り出した様々なバリエーションのキットカットが楽し
めるため1、行列ができています。コンセプトもさることながら、
日常的に誰もが購入するチョコレートブランドをプレミアム化し
たという点でユニークな試みです。
設 立者のポール・フランテルッツィ氏は、
「チョコレートは機能
た名前が並んでいます。3
いくつかのメーカー側が実験的に行って
され、
「消費者のコノサー体験を補完し」
、
連の 便 益をアピールするのに適した商品だと認 識しています。
イミュニティ、
ウエイトロス・マンダリン・ダークチョコレートといっ
最近トレンドとして新たに発生しているの
レシピ、テイスティングホイールが 同封
米国のメーカーであるグッドカカオは、チョコレートを健 康関
製品のラインアップにはココナッツ・オメガ3、レモンジンジャー・
ると答えています。1
ンには、ペアリング 用のガイドブック、
セージの中で健 康に関連した材料をアピールしたりして消費者
性をもたせるのに大変優れた商品です」と述べており、同社の
経 験をすることが生 活の満足 感に繋が
ブラックが発表したコノサー・コレクショ
より健 康と結びつく材料に差し替えたり(例:砂 糖をステビ ア
が適していると主張しています。同社はチョコワイズというプロ
バイオティクス・チョコレートを発売しており、同様の商品をプ
ライベートブランド向けにも製造しています。また同社は機能性
チョコレートとしてほかにもカフェイン入りやビタミン B を強化
した製品を販売しています。
イノベーション・プラットフォームその4:季節イベント
季節イベントはどの国にとってもチョコレートの売上を押し上げ
る絶好のチャンスです。米国のチョコレートメーカーはイースター
とハロウィン商 品 の 発 売 時 期
をどんどん長くしており、春と
秋 の 間 中、この2つ の 行 事 の
商品が展開されるようになって
きました。ヨーロッパでもハロ
ウィンは市場開拓の余地のある
イベントとして、多くの国で 強
くプッシュされています。また
米国の M&M’ s パンプキン・スパイス
写真引用元:
データモニター消費者レポート 2014
スーパーボウルやサッカー W 杯などの大きなスポーツイベント
も大勢で商品を分け合うきっかけとなるので重要な販売チャン
スです。日本ではバレンタインデーとホワイトデーに売上が急増
します。3
メーカーは新興国においても、その国独自の祝い事を利用して
売上を伸ばそうとしています。中国では秋のムーン・フェスティ
バル(中秋祭)に合わせた特別なギフト商品やシェア商品が 販
売されており、一方インドではヒンズー教の光のフェスティバル、
ディワリの時に従来贈られていたジュエリーやスイーツに変わっ
てチョコレートが 売上を伸ばしています。4
東京のキットカットショコラトリー
写真引用元:whysojapan.com
PAGE 7
イノベーションが続く チョコレートの甘い世界 Part 1
イノベーション・プラットフォームその5:材料調達と持続性
チョコレートの人 気が増すにつれ、チョコレート業 界はカカオ
の需要と供給のバランスが崩れるという事態に直面しています。
マーズも「2020 年には 100 万平方トンのカカオの供給不足が
起きる」と懸念を示しています。3 メーカーはイノベーションを通
じてこの危機を打開しようとしており、収穫 量の多い豆の開発
や持続可能な農法に投資をすると共に、これらを実践する農家
と密接な関係を築く努力をしています。3
これらのプログラムの思わぬ副産物として、魅力的かつ信頼の
おけるストーリーが 誕生したことで、倫理的で持続可能な商品
を求める消費者の欲求を満たす結果となりました。
KPMG によると消費 者は自分が 購入するブランドを信 頼した
いと思っています。つまりメーカーはイノベーションを 通じて
持 続可能 なサプライチェーンを構 築し、消 費 者に対し透 明 性
を保つことでブランド価 値も上げることになります。ダックク
リークが 良い事例でしょう。彼らはオーストラリア国内にある
自 社 農 場で 栽 培したマカダ ミアをアピールしており、バイロ
ン 地 方に 尊 敬 の 念 を 抱 いている国 内 市 場 に 好 意 的 に 受 け入
れられています。また海 外においてもオーストラリアのクリー
ン で グリーン な 国というイメージ が 売 上に貢 献しています。
Coming soon: PART 2
パート 2 では、新興国のチョコレート事情、日本やヨーロッ
パのメーカー事例、そしてチョコレートの今後の展望につ
いてお送りします。どうぞお楽しみに!
1 Datamonitor Consumer, Consumer and Innovation Trends in Chocolate 2014, Boxed chocolate, countlines, straightlines, molded bars, novelties, and other chocolate,
August 2014
2 Bruce, A, Beer flavoured chocolate on its way, says Mintel, confectionerynews.com, 13/04/2015
3 KPMG International, A taste of the future - the trends that could transform the chocolate industry, June 2014
4 Langley, S, Chocolate innovation takes off globally despite sales growth slow down, ausfoodnews.com.au, 15/04/2015
5 Mogelonsky, M, Chocolate Innovation: The Top 10 Trends Driving the Global Chocolate Confectionery Market, Mintel.com, 25/04/2014
6 Nieburg, O, Probiotics more stable in chocolate than pills, says Milsing, confectionerynews.com, 02/06/2015
この記事に関するお問い合わせ先:ハバス ワールドワイド ジャパン内 オーストラリア・マカダミア協会 日本代理 望月 英子
[email protected] 03-6438-1355
PAGE 8