科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会ライフサイエンス委員会(第 35 回)議事録 1.日 時 平成 18 年 6 月 28 日(水) 15:00~17:30 2.場 所 東京商工会議所 4 階 「特別会議室 A」 3.出席者 (委 員)金澤主査、磯貝委員、岩柳委員、甲斐委員、鎌谷委員、郷委員、小原委員、末松委員、 竹市委員、田中委員、丹治委員、野本委員、垣生委員、南委員、横山委員 (説明者)豊島タンパク質研究整備戦略作業部会主査、 山本タンパク質研究整備戦略作業部会主査代理、 篠崎ゲノム・遺伝子発現戦略作業部会委員、星野情報課学術研究企画官 (事務局)藤田審議官、松尾ライフサイエンス課長、池田先端医科学研究企画官、 呉ゲノム研究企画調整官、松尾生命科学専門官、坂下ライフサイエンス課長補佐 4.議 事 (1)タンパク質研究戦略推進作業部会報告書(案)について (2)ゲノム・遺伝子発現研究戦略作業部会報告書(案)について (3)バイオリソース整備戦略作業部会報告書(案)について (4)先端医科学研究の臨床への応用の推進に関する懇談会検討報告書(案)について (5)ライフサイエンスに関する研究開発の推進方策(案)について (6)ライフサイエンス委員会におけるライフサイエンス関係事業の評価の進め方について (7)その他 ・最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用「次世代生命体統合シミュレーション ソフトウエアの研究開発」の研究開発拠点の公募について ・ライフサイエンス関係プロジェクト横断型共同研究経過報告 ・がん対策基本法について ・「タンパク3000」+「ゲノムネットワーク」合同フォーラムについて ・ライフサイエンス委員会の今後のスケジュール 5.議事概要 (○…主査・委員及び科学官の発言、 △…事務局の発言、◇…説明者の発言) ○… それでは、定刻になりましたので、第35回になりますが、ライフサイエンス委員会を開 きたいと思います。それでは、事務局から資料の確認をお願いいたします。 △… (資料の確認) ○… 最初の議題(1) 、タンパク質研究戦略推進作業部会報告書(案)について。 これは、前回この会議で議論していただきましたライフサイエンス分野の分野別推進方策 をライフサイエンス委員会として決定することの、それが本日の一番大事なポイントなんで すが、決定するに当たりまして、今まで進んでいた作業部会の取りまとめができてきており ますので、その内容を本日伺う第1弾でございまして、まずはタンパク質研究戦略推進作業 1 部会からのご報告をいただくことになります。ご説明は、タンパク質研究戦略推進作業部会 の主査と、主査代理のお二人からお願いします。 ◇… この報告書をつくるに当たりまして、中心的役割をしていただきました主査代理に報告し ていただいて、その後ご質問がありましたら、主査の私も一緒にお答えさせていただきたい と存じます。よろしくお願いします。 ◇… このタンパク質研究戦略推進作業部会の報告書は、実は昨年もこの委員会、多分ライフサ イエンス委員会だと思うのですけれども、春から夏にかけてタンパク質研究戦略推進作業部 会というのがありまして、そこで検討されたものがたたき台になっているというか、土台に あります。そこでの議論、それから今年に入ってからこのタンパク質研究戦略推進作業部会、 それから実施委員会というところでかなり議論をしてきて、近未来というか、次期のタンパ ク質研究についての方策を練ってきたということで、その報告をまとめたいと思います。 生命科学分野においてポストゲノムの研究の主役の大事なものとして、タンパク質の構造 と機能の解析というのがあることは、これは皆さんご異論のないところであると思いますし、 昨年の検討会でも、またさまざまな場所でそれは強調されております。我が国だけではなく て、海外においてもタンパク質研究の重要性というのは非常にあちこちで言われているとこ ろでございまして、研究が進められているところです。タンパク質研究が生命の理解に必要 であるということだけでなくて、単に理解するだけでなくて、その研究成果が創薬とか、あ るいは人類の、人々の健康あるいは福祉に貢献するという視点でもって、このタンパク質研 究戦略推進部会では我が国のタンパク質研究のあり方を検討してきたわけです。 先ほど言いましたように、昨年度の議論の上に立ちまして、再度タンパク質研究の必要性 と世界の状況、それから我が国の現状を分析してきました。私の話の内容は大体この概要の 1枚の絵に載っているところですけれども、今、その重要性とか世界の現状、我が国の現状 というところを検討してきたわけですが、その中でも特によく議論されましたのは、今後ど うやっていくかということですけれども、タンパク3000プロジェクトで、これはまだ研 究期間が終わっていませんけれども、十分、研究期間終了までには目標の構造解析は終える ことができるだろうと。その成果の一部については、この報告書の7ページに書かれていま す。幾つかのタンパク質の構造解析をしたよということだけでなくて、機器の整備、あるい は、例えばSPring-8とか、フォトンファクトリーの整備に貢献している、あるいは 大学の研究機関に多くの構造解析の装置を整備してきたという、そういうふうなことでも、 タンパク3000プロジェクトの成果というのは、我が国のタンパク構造解析の基盤を底上 げしたという意味で非常に大きな貢献があったと思います。 ただ、その基盤の上に立ってまだまだ必要なことがありまして、というのは、ご存じのよ うに、医学、薬学、健康科学のニーズに対応するためには、より複雑なタンパク質、難度の 高いタンパク質、例えばGPCRのような膜タンパク質、あるいはタンパク質複合体とか、 あるいはタンパク質リン酸化、糖鎖の修飾とか、さまざまな複雑なタンパク質の構造解析と、 2 タンパク質の産生あるいは解析技術、それからその解析技術に必要な、解析した後の産業界 への応用に向けたタンパク質制御のシステム、そういうものがこれからさらに充実化してい く必要があるだろう。 そういうことで、ここの第2章に書いてありますような、この黄色のところの、生産と解 析と制御というところがさらに向上する必要があるだろう。具体的に、例えば極めて小さな 結晶しかできないような高次な複雑なタンパク質、そういうものを超高輝度マイクロフォー カスビームラインとか、そういうものを開発しながら解析していくとか、複雑なタンパク質 を in vitro で合成して生産ラインに乗せるとか、そういうところはまだまだ技術開発が必要で あります。さらに、先ほどいいましたように、化合物を用いてタンパク質の機能を見ると同 時に、その構造を照らして創薬に結びつけるというような、そういうふうなところはまだま だ日本のアカデミアで足らないところがございますので、そこを充実していくということが 必要であるということで、今後の研究の進め方として、生産、解析、制御というものが大事 であるということがまず議論されました。かつ、そういうふうな3つの解析技術、研究開発 で出てきた成果、情報をちゃんと統合しておくという情報プラットフォームも大事であろう と。さらに議論されたのは、個別のタンパクによっては本当に新しい方法論を開発する必要 があろう。個別のタンパクに対する生産と解析、制御というものが一体となった独自の研究 スタイルも必要じゃないかということも議論されてきました。いずれにしてもこの3つの分 野、研究開発と情報プラットフォームが重要であろうと。 それに加えて、単に構造解析をするのではなくて、本当に医学・薬学あるいは食品・環境 とか、あるいは生命の理解にとって必要なタンパク質、それが必要になればなるほど複雑な タンパクとなってきて、構造解析が難しくなるのですけれども、そういうタンパク質の研究 と機能解析と、こういう高度な技術開発が一体となって研究を進める仕組みが必要であろう ということが、どういう仕組みをつくったらそういったことが研究できるのだろうかという ところがもう1つの大事なポイントでありました。 そのポイントを、どういうふうに戦略を進める上でまとめ上げるかということで、プロジ ェクトの組織というものが、研究体制、そういうものが議論されてきましたが、この1枚の 紙に書いてあるプロジェクトの組織というところを見ていただきますと、開発研究拠点、共 同研究グループ、研究支援拠点、情報プラットフォーム、このあたりが、ちょうど報告書の 22ページから23ページあたりに書かれています。このところで、こういう研究組織、こ ういう研究体制で、今言ったような技術開発も進み、それらを相互に連携させるような情報 プラットフォームをつくり、さらに機能面との連携ができるだろう、そういうことが考えら れてきたわけです。そういう組織体制をつくって、これからほんとうにより高次な難しいタ ンパク質の解析をして、将来の医薬開発、健康等に貢献していくというのが、このタンパク 解析プロジェクトの方向性であります。 大体それだけですけれども、この推進委員会においては、さらに研究組織、今言った研究 を実施する組織と同時に、研究を管理するというか、評価するというか、そういう組織もき ちっとつくってこの研究を進めていこうという、そういうふうなことであります。 3 将来の展望というところが最後に書いてありますけれども、先ほど言いましたように、他 分野との連携をしながら医薬への応用、それから産業化への展望というところを見ていきた いというふうに考えております。それをまとめたのがこの報告書であります。 ○… ただいま、コンパクトにご説明がございましたが、ただいまのタンパク質研究戦略推進作 業部会のご報告について何かご意見ございますでしょうか。 では1つ。ゲノムの解析と違って、これは一つずつ結果が出るたびにそれは非常に意味の あるものの可能性が高いですよね。そういうものの開示というのは、前にもちょっと問題に なったかもしれませんが、どういうふうに考えられているんですか、今のところは。 ◇… 知財を担保すると同時にオープンにしていくというところ、そこはこれから仕組みを考え なくちゃいけないと思っております。もちろん、これまでゲノムネットワークとか、幾つか のプログラムが動いていますから、それを参考にしながら、しかしやはり、いつも特許、知 財を守るということと公開というのはものすごく難しいところがありますので、そこは慎重 に考えながら、より良い方法を考えていきたいと思います。多分、そういうものは知財委員 会というものがこの中にできて、組織を管理する、研究を評価するというところでつくられ ていくと私は考えています。 ○… これからできるのですか。 ◇… ええ。そこをきちっとどうするかということはまだ考えていません。 ◇… 最近の新聞でも出たと思うのですけれども、理研のSPring-8が、今度はほんとう にオープンシステムをつくって、間に会社をかませて、非常にきれいに守秘義務がかかった 中での解析をしてあげましょうというシステムを開いたわけですね。あれは、お考えいただ いたらわかりますように、SPring-8ができて、そしてそれが公開されて、それだけ の時間を経てやっと実現になったことで、こういうシステムを国の費用がこれだけ出ている いきなりからというのは非常に難しいと思いますけれども、できるだけその方向でやるよう にということは考えに入っていますし、それから、タンパク3000では、例えば理研のN MRは、あれは理研で購入したもので、タンパク3000で購入したものじゃないのですけ れども、これの外部ウエアの応用というのは、理研の研究とかむ部分での外部応用というこ とに今まではなっていたわけですね。ところが、これをどういうふうにこれからもっと一般 のアプライしてきた方々に応用していただくかということも検討するようにということは理 研のほうに申し入れてありますし、多分、その方向で検討が進んでいると思います。 ○… タンパク3000の場合というのは、主としてタンパク質の構造科学者の専門領域のよう な形のプロジェクトだったのですけれども、今後のプロジェクトがどういうふうに展開され 4 るのか、よくわからないのですけれども、できるだけ何らかの形で、いわゆる生物学者と構 造学がうまく連携していくような仕組みをつくっていただけると大変ありがたいと思います。 ◇… そこのところは非常によく議論されまして、ちょうどここに、この1枚のもので黄色く書 かれている、先生が言われた生物学者というほうは、多分、下のほうの3つのターゲットと なるタンパク質のところを研究している先生方は、ここは機能面ですけれども、生命機能あ るいは疾患の解明というところの機能解析ですけれども、ここのニーズをちゃんと解析のと ころに組み込むという、そういう解析と一体となってやるという、機能研究と開発研究が一 体となってやるという、そこはもうしっかりと議論されていまして、そこの仕組みがどうし たらうまくできるかというところで、幾つかの仕組みを考えているというところです。 ○… 今後、医療とか医学と結びつけるためには、特にアミノ酸が変化したときに立体構造はど う変化するかとか、そういうのが非常に重要だと思うのですよね。例えば、一般的な人の中 でも多型があるとアミノ酸配列は1個じゃないし、あるいは病気になると変わってくるので すけれども、そういうことに関しての研究はどういうふうに済んでいますか。 ◇… それも議論されました。実はこれはこの1つ前の委員会で議論されたことなんですけれど も、1つのタンパク質の構造を決めたからと終わってしまうのではなくて、そのタンパク質 が多様な変異を持ったときにどういうふうな形で活性が変わるのかというとき、その活性が 変わるときのタンパク質の構造も、1つのタンパク質でも幾つかの形での変異体の解析をす る必要があるということは議論されています。ただ、規模も大きくなるとどれだけかかるの かわかりませんけれども、そういうことは十分に視野に入れた研究をしなくちゃいけないと いうことは議論されています。 ○… 組織のところなんですけれども、拠点といっても幾つか想定されているのかなと思うので すけれども、どのぐらいの数の拠点と共同研究グループとかを考えていらっしゃるのかとい うのと、あと、研究支援拠点というのは、具体的にはどういうようなことをするものを考え ていらっしゃるのでしょうか。 ◇… まず、すべて開発拠点も、共同研究グループも、研究支援拠点も、公募制でやりますので、 たくさんいい公募が来れば、数はちょっと増えるかもしれません。あと、どれだけ予算があ るかによって数が決まると思いますけれども、現実に、具体的に幾つということは考えてお りませんで、ここで書いてあるような生産・解析・制御、それからターゲットのタンパク質 の解析がうまくできるような数の拠点を公募の中から選んでいきたいというふうに考えてい ます。 それから、研究支援拠点ですけれども、その一部は、例えば23ページの下から3行目を 見ていただくとわかりますように、新しいプロジェクトが立ち上がると同時に、 「そのような」 5 というのは、これまでタンパク3000で開発してきたようなNMRなどの機器とか資材、 そういうものを持っている研究機関が新しい事業に自分たちの資材、技術を提供する、その とき、提供する相手というのは、多分、ターゲットとなるタンパク質を持っている人たちと うまく組んで資材を有効に利用するという、そういうプログラムを提供できる人が研究支援 拠点になるというふうに私は思っています。それでよろしいですか。 △… 1点だけ補足させていただきますと、今先生の方からありましたように、研究開発拠点と いうのは、まさに生産・解析・制御、それぞれが幾つかずつ多分入ってくるでありましょう し、共同研究グループというのは、まさにそのターゲットを、今、ターゲットタンパクをプ ロファイリングして、これをやろうといったときに、いろいろなところから解析の先生、制 御の先生、一緒に共同開発をしてもらうようなものを公募する。あと、研究支援につきまし ては、今国会で、例えば共用法という、いろいろなオープンにするような、一緒にみんなが 共用できるような施設については共用法というのができまして、それで施設をオープンに開 示するというようなこともございましたので、その精神にものっとって既存のSPring -8、あるいはNMRのようなものを公開するというものについては、そこに支援経費をつ けてはどうかというような思想でございます。 あとは、もう1つ情報プラットフォームというのは、まさにここで書いてある情報プラッ トフォームを情報集積するというようなことで考えてございまして、まさに研究費といいま すか、予算との関係もございますので、幾つかというのはまだなかなかあれでございますけ れども、そういった形で公募させていただくということです。 ○… これに関連しまして、インターナショナル・ストラクチュラル・ジェノミクス・オーガニ ゼーションという国際機関をつくっております。そこのアドバイザーには、ファンディング・ エージェンシーの視点も入れて、大型のこういう構造生物学のプロジェクトがどうあるべき かという検討は2年に一遍やっておりまして、本年、秋に北京であります。そこの中で先ほ ど主査からご質問のあったデータの公開とかというものに関しても、今までずっと議論を積 み重ねてきておりまして、そこの中で、大型のプロジェクトが構造を決めた後、何年も隠し てといいますか、自分たちの研究のためだけに使っていくというのは、ライフサイエンスの 進展に関しては非常に問題であるということがありまして、グレースピリオドとして6カ月 という期間の間には発表しなさいというようなことを決めたり、あるいは、ライフサイエン スにかかわるタンパク質というのにも、重要なものにもある意味では限りがあるので、それ について大型のところが、ほかの小規模な構造生物学の研究者のことを考えずにやってしま うというのはやはり問題があるということで、大きなところでは何をやるかという目標をあ る程度示す。その上で、小さなところとの協力といいますか、うまく双方的に機能するよう な工夫ができるような仕組みをウェブサイトを通じてやるとかいうようなことも工夫してお りますし、そういう中で、今、日本で、世界で多分一番大きなプロジェクトの1つが動いて おりますので、その運用の仕方に関しても世界のお手本になるような形でやっていただきた 6 いというふうに思っております。 ○… 大体ご意見は出たかなと思いますが、よろしいでしょうか。 それでは、ただいまのご意見によりまして多少の修正が加わるかもしれませんけれども、 これを本委員会の報告書で了承したということにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。 それでは、次の議題、ゲノム・遺伝子発現研究戦略作業部会報告書(案)でございます。 ご説明につきましては、この部会の主査及び主査代理のご都合がつかないということで、本 日、作業部会の委員においでいただいております。ご説明をお願いいたします。 ◇… 資料は、資料2-1概念図とサマリーになります。それから資料2-2が実際の報告書で ございます。 最初に資料2-2の一番最後の35ページを見ていただきますと、作業部会の委員の名前 があります。それから37ページを見ていただきますと、この委員会は非常に活発に、10 回の委員会を行いまして、最終的にこの広範なゲノム・遺伝子発現の内容についての取りま とめを行いました。 では、資料は主に2-1に基づいてご報告したいと思います。最初に、サマリーの絵のほ うで基本的に説明します。 この背景は、平成15年にヒトゲノムの解読が完了しましたように、ゲノムシーケンスが いろいろな生物で決まりました。その後、DNA・RNAタンパク、それから代謝産物、そ れから表現形という形で、いわゆるオミックスの研究、統合化したゲノムの研究というもの が各国で推進されています。日本でもポストゲノム戦略の推進ということで、この背景に書 いてありますけれども、ゲノムネットワークプロジェクト、それからタンパク3000プロ ジェクト、それから個人の遺伝情報に基づいた医療の実現プロジェクトということで、SN IPsの解析などが進んできています。欧米では、ENCODE計画、あるいはゲノムシー ケンスの高速化ということを目的にした1000ドルゲノム。あるいは医療あるいは農業を 考えたリシーケンスのプロジェクト等が進んできています。本プロジェクトでは、本部会で は、この基本的考え方、その右側になりますけれども、 (1)として、ゲノムという設計図を もとにした生命の本質の深い理解ということでまず検討しました。もう1つは、ゲノム研究 の成果を医療・産業を通して社会に還元するという、この2点を基本にして検討を進めたわ けです。その第1点に関しましては、ゲノムの基本要素の全貌を明らかにするとともに、そ れらを動かす作動原理の解明ということで、要素から機能解明あるいはネットワークの解明 ということです。それからもう1つの、実際の社会に還元するということに関しては、ここ に3つ点がありますけれども、遺伝子と疾患との関係に基づく病態解明と治療薬の開発。そ れから個人の遺伝情報に基づいた医療の確立、それから植物や環境微生物等の機能解明によ る育種・食料・食品の質的向上や環境問題への貢献という形での応用分野を想定しています。 この委員会を開いている間に総合科学技術会議の第3次科学技術基本計画が検討されまし て、その中で、この黄色で囲ってあるところですけれども、生命プログラムの再現科学技術 7 という形で、次期計画の主要な柱の1つとして、戦略重点課題として取り上げられました。 この考え方の中には、ゲノムからシステムあるいは細胞、免疫等の高次機能に至る統合的な 生命の理解とその再現ということが1つの大きな目標です。それから、同じコンセプトです けれども、ゲノム研究の成果が活用される分野の重要性ということで、がん、免疫アレルギ ーなどの疾患、それから安全な食料の安定した供給、あるいは微生物・動植物を活用した有 用物質生産という応用面が強調されています。あるいはまた、このゲノムに基づいた統合デ ータベース等の整備の重要性ということがうたわれているわけです。 その右側の四角に移りますけれども、今後の研究戦略として4点考えています。新しい流 れとして、大量のノンコーディングRNAが我が国で発見されました。RNAの新機能の解 明というものが我が国は優位性があるということで、この機能の解明を推進しよう、それが 第1点です。これに関しましては、後で申しますように、今年度から予算化が進んでいます。 それから大量・多様なデータを扱うバイオインフォマティクスの強化と、数学、制御工学を 駆使して新しい方法論との連携推進ということで、システムバイオロジー、あるいはバイオ インフォマティクス、あるいは数学などを取り入れたゲノム研究が必要であろう。 それから3番目は、やはりシーケンスの技術が非常に高速化しています。超高速DNAシ ーケンシング技術等の技術開発が今後の1つの大きな流れになりますので、それに基づいた 新しい研究の推進ということになります。 それから4番目は、異分野の協働による新しい技術体系の開発ということで、違う分野と の連携が今後のゲノム研究の推進に必要であるという基本的な考えです。 本研究部会では、ここにブルーで書かれていますけれども、7つの課題に関しまして、そ れぞれの専門家を呼んでセミナーをしていただいて、その方を中心にしてそれぞれのテーマ に関しての取りまとめを行いました。その項目は、ここに書いてありますように7項目あり ますけれども、メタゲノム解析を含む比較ゲノム、それからRNA新機能の解明、それから システムバイオロジー、それからケミカルバイオロジー、それからメタボローム解析、それ から機能性食品とニュートリゲノミクス、それからゲノム医学・医療ということで、非常に 広範にわたっています。 簡単にご紹介しますと、まず、メタゲノム解析を含む比較ゲノムですけれども、これは先 ほど申しましたDNAシーケンサーの技術の非常に急速な進展があります。それに基づいて、 これはアメリカの1000ドルゲノムプロジェクトによっていろいろな新しいシーケンス原 理が開発されて、それに伴って非常に高速のシーケンス技術が進んでいるということが言え ます。 メタゲノムの場合ですと、いろいろな環境中の微生物をそのままとってきて、それを全部 シーケンスをする。そういうことによって新しい未知の微生物の遺伝子が見つけられるとい う利点があるわけですね。そういったメタゲノムが今後非常に重要な役割を果たすだろう、 それに伴って新規の遺伝子が見つけられるというふうに考えられます。 それからその次のRNA新機能の解明ですけれども、これは先ほど言いましたように、大 量のノンコーディングRNAが発見されまして、RNAの新機能というものが期待されてい 8 ます。その解明がまず当面非常に重要であると。それから、未知のRNAを探索するという ことが今後の重要課題になっています。それに伴っていろいろな情報が出てきますので、デ ータの構築あるいは研究資源を確立する。それから、そういった機能を解析するための解析 技術あるいは実用化技術の開発・研究ということが1つの大きな流れになります。 それからシステムバイオロジーですけれども、これは日本では北野先生なんかが非常に早 くシステムバイオロジーを提唱されています。これはいわゆる計算機科学あるいは制御工学 の進歩によって、ゲノム情報をもとにしてそれをシミュレーションしていくという流れにな ってくると思います。これに関しましては、何回も委員会で検討したのですけれども、やは り幅広い生物学的知見と広範な技術の統合のもとで推進する必要があるだろうということで、 かなり長期的に考える必要がある。それから、これを進めるための技術的基盤の形成が必要 であろうということが検討されました。 それからその次のケミカルバイオロジーですけれども、これはいわゆる化学的な視点から、 あるいは化学的手法を用いて生命現象を解明しようということで、特に低分子化合物をツー ルにした機能解析手段の提供ということになります。それで、特に応用として関係するのは、 創薬の観点からの医療産業への応用。これに関係しまして、今年度からは公的な化合物ライ ブラリーの構築を目指した研究が開始されています。これはタンパク3000関連のプロジ ェクトとして進んでおりまして、今後、低分子化合物とタンパク質のインタラクションとい うことで、タンパク質関連プロジェクトとの連携が必要であろうということです。 それからメタボローム解析ですけれども、このメタボローム解析は、細胞中の低分子化合 物を網羅的あるいは包括的に解析するという新しい技術の開発になりますので、主に代謝産 物の解析技術、それからそれらの非常に複雑なオミックスの連携に関係するバイオインフォ マティクスの統合が必要であろうということで、ここで2つ書いてありますけれども、メタ ボローム解析技術の開発、あるいはスタンダードになるような機器開発が必要であろうとい うことになっています。 それから機能性食品とニュートリゲノミクスですけれども、この機能性食品のコンセプト に関しましては、これも日本で機能性食品というコンセプトが出されましたけれども、この 機能性食品をゲノム的な手法に基づいて新しい光を当てるというのがニュートリゲノミクス になると思います。ニュートリゲノミクスには、いわゆる物質科学あるいは生態科学、ゲノ ム情報科学の有機的な連携が必要でして、従来の栄養科学を超えるような内容が求められて います。具体的に進んでいますのは、DNAチップ等の最新技術を活用した機能性食品の評 価ということでして、こういった流れから、新しいいわゆる栄養ゲノム学、ニュートリゲノ ミクスが進んでくる。特にこれは健康との関係で、現在、応用分野でも注目されている分野 です。 それからその右のゲノム医学・医療ですけれども、これはいわゆる疾患発症の分子基盤と してのゲノム多様性の研究がなされていますし、それからSNIPs解析で遺伝子疾患の疾 患遺伝子の発見、あるいは多因子の遺伝子疾患の研究に進んできています。日本も中村先生 を中心にしてHapMapプロジェクトに参加しまして、大きな貢献をしているという状況 9 です。これに関しましては、やはり疾患関連遺伝子との関係が非常に重要でして、ゲノム多 様性あるいはいろいろな生理現象、それから疾患の原因と結びついたゲノム解析が必要であ ろう。それから医学生物学、それから遺伝統計学から臨床医学に及ぶ広範な研究の展開が必 要ということで、これに関しましても幅広い検討が必要ということになっています。 最後にもう1つ述べさせていただきますと、ピンクで書かれましたゲノムネットワークプ ロジェクトに関する検討です。これに関しましては、ちょっとサマリーのほうを見ていただ きたいのですけれども、2ページ目のところをまとめとして読ませていただきます。6のと ころですけれども、ゲノムネットワークプロジェクトにおける当面の課題。ゲノムネットワ ークプロジェクトは、転写制御のネットワークの解明を目標としている。現在、転写制御の 分子ネットワークに焦点を当てて成果を上げつつあるので、当面は、このプロジェクトの成 果を活用しつつ、転写から細胞システムの解明へと研究を推進・発展させることが適当であ る。そのためには、燐酸化や核内移行などのタンパク質の動態解析技術や動的なデータを解 析する計算機科学あるいは数理科学の方法論の導入が必要となることから、システムバイオ ロジー的方法論を導入することにより、生命のシステム的理解へ向けた研究が一段と大きな 発展を遂げることが期待される。また、そのデータの解釈や体系化には、対象となる生命現 象に深い洞察力を持った生物学・医学研究者の協力が不可欠であるということで、いわゆる 転写のネットワークからシステムバイオロジーの方法を入れた、より複雑な細胞システムの 解明ということに発展させていこうということがまとめとしてあります。以上がサマリーで すが、詳しくは報告書をごらんいただければと思います。 ○… やはりゲノムとかいろいろなプロテオームとかいろいろな情報を得て、情報の数がものす ごく増えますよね。そうするとどうなるかというと、やはり不安と期待ばかりが増殖する可 能性があると思うのですよね。ここに書かれていることは、情報の数をどんどん増やすとい うことだと思うのですけれども、それを医療のためとか人々の健康のためとかに使うには、 情報の数を増やすだけじゃなくて、それを押さえる非常に強い論理が必要だと思うのですね。 ぜひそういう方向、例えば統計とかそうだと思うのですけれども、そういう方向も力を入れ ていただきたいと思います。 ◇… そうですね、実際にこの検討会でも、システムバイオロジーを中心にしていわゆる統合化 をどうするかという議論をかなりしたのですけれども、やはりそこがかなり難しいところで、 いわゆる要素の解析はどんどん進むのですけれども、それを実際に統合化して理解していく ということは、かなり新しい方法論なり、いわゆる計算機科学的な開発が必要じゃないかと いうのが、まあ……。実際にこのシステムバイオロジーのところが非常に漠然と書いてあり ますよね。それがちょっとこの委員会での残念な点なんですけれども、もうちょっと明確な 方向性を出せればよかったのですけれども、実際はなかなか難しいと思います。 ○… 私もこれを拝見していて、いろいろなところにバイオインフォマティクスが必要とか、シ 10 ステムバイオロジーが必要と出てくるわけですが、例えばさっきご説明になった2ページの 転写ネットワークからシステム的理解へというところで、システムバイオロジー的方法論を 導入するということを書かれているわけですけれども、じゃ、そういう方法論が確立したも のがあるかという、そこの問題を抜きにして、あたかもそういうものがあるからそれを導入 すればいいということではない問題だというところですね。バイオインフォマティクスもそ うですし、言葉としてもバイオインフォマティクスが古いというのは、それはシステムバイ オロジーのほうが必要だというのではなくて、先ほどある先生がおっしゃったように、やは り新しい分野を育てないといけないということがあるわけです。その点はやはり非常に重要 なことで、先生方がそれぞれの分野で下についてくれる人を探すというのでは、多分もう限 界がある。だから、もっと横断的なところでこういう人たちをどうやって育てるかというこ とを、国としてちゃんと考えていかなきゃいけないと思います。 ここら辺は、やはり今、理科離れということがありますけれども、一方では、新しい分野 に変わっていける可能性のある人もいるわけです。ポスドクのポジションもないとか、ある いはポスドクを何年もやっているとか、いろいろなアンバランスな状況の人がいるので、や はりそういうところも視野に入れながら、どういう形でこの発展を進めていくかというのを ぜひお考えいただきたいと思っています。 △… 今先生から言われたように、新しい分野あるいは新しい人材をどう育成していくかという ことですが、これはライフサイエンスに限らずそういうことが言われておりまして、ライフ サイエンスでも特にそこは今回の第3期でも強調されております。したがって、ライフサイ エンスをやられた方だけが生命というものを取り扱っていてほんとうにいいのだろうかとい うことで、今回のライフサイエンス委員会にも推進方策というのを後ろに添付させていただ いておりまして、これには安全とライフサイエンスの関係であるとか、ライフサイエンスを 進めるに当たっての医理工の連携ということで、先ほど他の先生の方から言われました数学、 統計学とどう組み合わせてライフサイエンス、要するに生命というものを物理、数学、科学、 そして従来の生命科学をやっていた人たちが一緒になって取り組むということで、まさに今 回のゲノムのこの報告書でも、数学、生命工学をということで、そういった医理工連携した 形で新しい人材、新しい人材を切り開いていくということにある程度注目をする。ただ、ま だまだそこは発展途上ということでありますので、そこはどういった形でうまく仕組みをつ くれるかというのは、今後の施策をつくるに当たって念頭に置いて、第3期の計画でもそこ が中心になっていますので、やらせていただきたいというふうには思っている次第でござい ます。 ○… 1つ、先ほどのシステムバイオロジーのところで指摘をしたいことがあります。おそらく、 遺伝子の情報だけじゃなくて、このプロテオミクスの情報、それからメタボロミクスの情報 をどんどん網羅的に集めていくという記載がずっとありますけれども、それが何となく何か が欠けているなという記載に見える理由は、おそらく、いくら情報を網羅的に集めるにして 11 も、基本的にはターゲットドリブンの非常にいい個別研究で、しかも細胞生物学がしっかり とリンクしたような研究にこういう技術が応用されていくかどうかというところが非常に重 要になるのではと考えます。ちょっと各論的なところで申しわけないのですけれども、この 報告書の記載では、メタボロミクスというのが、単なる低分子の構造決定ということでとま っていますけれども、実は、この技術は質量標識をしたものを細胞の中でそれがどういうふ うに変わっていくかというダイナミクスを調べる方法でもあります。それが結果としてどの 酵素の機能が変わったかということを拾う非常に重要な方法論になっています。そういう実 験というのは、単に物をつぶして全部はかるというのではなくて、やはり非常にいい目的志 向型の細胞生物学の研究があって、こういう技術やリソースが使われていくということが非 常に重要であって、そういう個別の研究をどういうふうに国の施策として育成していくかと いうことが私は非常に重要なポイントではないかというふうに思いました。 ◇… 今の点は、やはりこの部会でも議論になりまして、やはり微生物の場合は全部つぶしても いいですけれども、高等生物の場合は、器官とか細胞が重要ですので、そこをどうやってマ イクロな技術を開発して代謝を見られるかということを今後検討する必要がある。ただ、ま だそこまで技術が進んでいませんので、要するに微量で高精度の機器開発は、今後やはり重 要であろうという結論です。 ○… ちょっと補足でいいですか。今の点は、おっしゃったように議論になりまして、特にゲノ ムネットワークの追加がありましたけれども、これを今後発展していくときに、ここには大 ざっぱにしか書いてありませんが、かなり我が国が得意とする、しかも高等生物なんだけれ ども、細胞、免疫反応とか、あのあたりに絞ってやっていくのがいいんじゃないかという議 論は随分行って、具体的ターゲットと目的を絞ってやっていくべきだという議論は進んでお ります。 ○… 実は私もちょっと似たようなことを考えていて、これはたくさんありますね、7項目ある わけですね。これを全部100%やろうとすると、すごい予算になるので、そこを変なこと にならないように、どうぞ頑張ってやってください。 △… 今、主査からも言われたとおりに膨大で、ゲノムの生物学全部になりますので、今、とり あえずゲノムで動いているのがゲノムネットワークプロジェクトでありまして、この中で書 いてあるところでございます。多分、そこを中心に、それでまたケミカルバイオロジーにつ いては、これはもうほんとうに学問全体でありまして、例えばタンパク3000、あるいは タンパクの、今、18年度お認めいただいたもので一部とか、そういった形で、ちょっとス トレスを置いた形で予算には反映させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願 いします。 12 ○… かつて、比較ゲノムのことがちょっと話題になったことがあるのだけれども、何かターゲ ットが決まっているのですか、今のところ。そうでもないんですか。 △… 比較ゲノムは、昨年度もご議論いただきまして、平成18年度予算で要求させていただき まして、若干残念な結果ではございました。これを今後どう予算に反映させていただくかと いうのは、これからあと二、三カ月かけて、また新しいのでいくのか、既存のものに埋め込 んでいくのか、そこはちょっとこれからご議論させていただきたいというふうに思います。 ○… 先ほどの教育の問題にちょっと戻るのですけれども、とにかく新しい分野を推進するため には人材養成が必須であって、じゃ、どう人材養成するかということについては、そう具体 的には語られないわけですけれども、基本的には大学院生レベルによい教育をするというの が一番の具体的な方式で、しかしそのためには、それを教える教官が要るということで、大 抵そういう能力のある教官は非常に少ないからうまくいかないというので、おくれおくれに なっていくわけですね。だから、何かそういうことを、常に外国には先に進んで行って、結 局はポスドクで行って習うというようなことじゃなくて、日本で常に先端的なことを先導的 に何か教育するシステムをつくるということも、このライフサイエンス委員会の範疇ではな いのかもしれないのだけれども、待っていても何もできないから、例えばある大学が、例え ばシステムバイオロジーの教育に関して新しいプログラムをつくるようなことをエンカレッ ジして、そういうものの提案があったらそれを何かサポートするとか、要するにそれは人事 です、人事の段階から、あるポジションがあいたらどういう人をそこに採用するかについて、 新しい若手のそういうことができる人を採用するとか、そういうことをやっていかないと、 なかなかうまくいかないかなという感じがしましたので、ちょっと一言。 △… 今、先生から言われたように、肝に銘じていきたいと思いますが、以前、もう既に、振興 調整費で人材養成プログラムというのがございまして、これはまさにバイオインフォマティ クスとか、それをやっていたのですが、そういったプログラム、若干、今はもう切れてはい るのですけれども、そういったものをまた内部で、いろいろなところでそういう問題意識を 持って施策に反映させていくようにしたいと思います。 ○… 具体例を言うと、例えば今までCOEというのがあって、COEという看板があると一生 懸命みんないろいろ考えて、実際にお金をもらって具体的なことをやってきたわけですね。 ああいうようなことが必要かなと思うのですけれどもね。 ○… 大変大事なご指摘をいただいたと思います。COEに関係している方もいらっしゃるよう ですので、どうぞよろしくお願いします。私もそうなんですけれども。 それでは、次の3番目の議題。バイオリソース整備戦略作業部会の報告であります。これ は作業部会の主査よりよろしく。 13 ◇… 資料の3-1と3-2がございまして、3-2のほうが報告書の案でございます。後ろに ちょっと表がありますけれども、表の24ページに作業部会の名簿が載ってございます。こ れだけのメンバーでやりました。 その次の25ページに審議の過程が書いてございますけれども、実はこれは随分前から審 議を始めておりまして、それは、現在のNBRP、ナショナル・バイオリソース・プロジェ クトの推進委員会というのがございまして、そこでかなりの議論を重ねてまいりました。そ れを引き継ぐ形で、今年度に入りましてこの部会をつくりまして、検討して、本日報告書を 作成した次第でございます。では、資料の3-1のポンチ絵でご説明させていただきます。 バイオリソースというのは非常に重要であるというと、確かにそうだというふうに言って いただけると思うのですが、その意義、整備の必要性ということから始めまして、今後の体 制のことに関しての報告書でございます。 研究を進めていく上で、リソースはいろいろな意味で必要でありますし、それがちゃんと もつということが重要であります。ただ、バイオリソースの場合だけは、生き物であります ので、継続的に保存して共有できることが非常に必要である。これに対して、欧米の調査も 行ったわけですけれども、やはり網羅的、戦略的、特にリソース・グラントということをつ くりまして、積極的にやっております。また、研究プロジェクトの5%とか10%程度をリ ソースに充てるというようなこともやっておりまして、研究と一体となったことをやってい る。我が国も先端的な研究を進めていくのであれば、まずバイオリソースの戦略的な確保、 それから先導的なものをつくることが必要であろうということでございます。現在、NBR Pというのが2002年度から始まっておりまして、ことし5年目に入っております。した がって、5年プロジェクトでありますので、終了するわけでして、それが1つの背景でござ います。一方、第3期の科学技術基本計画におきましても、2010年に世界最高水準を目 指して重点整備を進めるべしと。これは現在のNBRPもその2010年を目指して、まず 第1期ということで進めてまいりました。非常に成果が上がっていると思いますけれども、 「よくできました、ご苦労さん」では、これは困りますので、これはぜひ第2期に向けて続 けていくべきであるということを得ましたので、その場合、どういうふうにすればいいかと いうことをここで審議をいたしました。 第2章では、国内外の現状と動向ということを調査も含めて記述いたしました。我が国に おけるリソースの現状でございますけれども、これはたくさんございますが、最も中心、特 に基礎基盤研究分野におきましては、文部科学省におけるナショナル・バイオリソース・プ ロジェクトが最も大きい。現在、24の中核機関と情報センターを中心にして、有用なバイ オリソースを整備しております。もちろん、他の府省におきましても、それぞれミッション がございますけれども、目的に沿ったリソース事業が展開されてございます。その間の連携 といいますか、連絡はやっております。 海外では、先ほど申しましたように、リサーチ・グラントとは別のリソース・グラント、 あるいはリサーチ・グラントの中の一定割合をリソースに使う、そういう連携体制が非常に 14 意識されて進んでおります。額の比較は結構難しゅうございまして、単純な比較はできませ んけれども、やはり我が国の5倍程度、二、三百億のお金が使われておりますので、それを 参考にすべきかなというふうに思います。 第3章は、今後に向けた課題と方向性ということでまとめさせていただきました。基本的 な考え方でございますけれども、(1)、(2)、(3)、(4)と。(2)のバイオリソース事業 の継続性の確保、これが最も大事でございます。いくら何をやっても途中で終わってしまえ ば、これは水の泡となりますので、確保が大事である。ただ一方、 (1)に書きましたけれど も、研究開発を支え、先導するバイオリソースがやはり重要であろうということでございま す。ちなみに、現在のNBRPは、マウスのごく一部の重要なものを除きまして、基本的に 新しいリソースをつくるというところにはそれを援助していただきたい、現在あるものを収 集・保存・提供する体制をつくっていただきたいというところにあえて特化している。しか し、それでかなりの体制は整いましたけれども、それに加えて、ぜひ、第2期があるとすれ ば、そこに研究開発を加えて先導的なバイオリソースの確保にも向かうべしと。しかしなが ら、これは予算の関係もございますし、いろいろなことがありますので、慎重に考えないと いけないということでございます。 あと、事業の質の向上、それから母体の機関からの支援が必要であるということで、その あたりのブレークダウンはその次からの2、3で書いてございます。 事業の今後の方向性ですけれども、収集・保存・提供、これがリソース事業の根幹でござ いまして、ただ、むやみに集めていくということでもむだもありますので、時代に即したバ イオリソースの整備が必要でございます。また、効率的なことも必要でございますけれども、 動物愛護の観点等も当然配慮しないといけない。それから保存技術の開発でありますとか、 後にもありますが、考慮した数量の設定も必要であろう。 それから開発事業に関しましては、例えば今、保存法と言いましたけれども、リソースの 中には非常に上手な保存法、凍結法とかございまして、そういうものができれば非常に安く、 あるいは楽にできるわけであります。そういった収集・保存・提供に関する基盤的な技術開 発、あるいはリソースそのものの特性、これはどういうミューテーションがあるかとか、ど ういう性質があるかという基本的な情報をとるということが、これがリソース事業の根幹で ありますので、そういったものには開発事業はぜひやっていただきたい。それから、競争的 資金で作製されましたようなもの、これは現在たくさんのプロジェクトが発しておりますの で、そういうところと連携して非常にすぐれたリソースをきちっと寄託していただく、こう いうことをすべきであろう。 それからもう1つは、「国家戦略上、」以下ありますが、優先度の高いものに限定しては、 ほんとうはこれは競争的資金、あるいは別のリサーチ・グラントで行うべきでありますけれ ども、リソースの質を格段に高めるためには、そして我が国発のすぐれた研究リソースをつ くるという意味では、これは避けて通れない。そういうリソース・グラントがない状態では、 十分配慮、検討した上で、積極的に新しいものもつくっていくべきであるという考えでござ います。 15 その次は、情報でございます。これはどのプロジェクトでもそうでありますが、既に中核 センターとして情報のセンターを設けて、そこからワンストップ・ショップですべて見える という形にしております。さらに多少のリソースセンターともリンクを張っております。そ れを今後とも続けていく。一方、各個別のバイオリソース機関においては、その数がどんど ん増えてまいりますし、そこで書きましたような特性情報とか、さまざまなものが増えてま いりますので、それぞれがそこで充実をしていくべきであろう。その上に情報センターのデ ータベース、バイオリソースの統合データベースと言っていいと思いますが、それをきちん と充実させていくことが必要であろうというふうに考えております。 あと、資金の継続的な確保、これはもうほとんど不可能かもしれませんが、長期的な視点 から、リソース・グラント、海外もリソース・グラントを設けておりますが、これも競争的 資金でありまして、5年ごとの見直しはやっておりますので、競争的、しかしいわゆるリサ ーチ・グラントではないというものが必要であろう。この原資はなかなか難しくて、やはり 消費税かなという感じもいたします。それは、研究費の一定割合がこういうところに使われ るということも必要であろうという、そういう意味の消費税でございますが、それが何とか ならないだろうかということでございます。 それから人材養成、これはどこでもそうですけれども、特にリソースの事業におきまして は、研究とは少し違ったタイプの方を育てていかないといけない。キャリアパス、それから ポジションに関しましても研究者とは違った評価をもとに進めていく必要があるということ で、これは前からの宿題でありますけれども、今後とも必要であろうということでございま す。 それから国際貢献、国際戦略、これは特に生物多様性条約の問題があって、簡単には外国 から来たものを持ち込めない、持ち出せないということがありますので、そういう中で外国 と協調あるいは競争して、我が国として必要なものをいかにして確保するかということを戦 略的に考えるべしということでございます。そういう意味の窓口は開いておくべきと。 そういう基本的な考え方に基づきまして、今後の運営体制でございますけれども、ぜひ第 2期のNBRPを立ち上げていただいて、それを引き続き、プラス先導的なバイオリソース の確保というところにつなげていっていただきたい。 その際、3.ですが、集中型と分散型ということが、これは非常に悩ましい問題ではありま すが、必ずございます。一般的には、効率化を考えれば集中化をしていくべきでありますし、 その方向で現在も進んでおりますけれども、バイオリソースによりましては、担当する人の 問題とか資質の問題で、ある程度分散的に進めざるを得ないものもいまだにございます。そ ういうものはリソースの特性等の状況に応じて決定すべきである。 それからあとは、中核機関の設立母体の支援でございますけれども、これは今のNBRP もそうですけれども、委託経費ではございますけれども、受託の中核となる機関が責任を持 ってやっていただきたい。5年のプロジェクトで申しわけないことではありますけれども、 長期的なことを考えてやっていただきたいということでございます。これは、ないものねだ りではあるのですけれども、それができるように、中核機関ができるようなインセンティブ 16 を付与することも今後必要になってくるのではないか。例えば、間接経費とか、そういうも のが考えられますけれども、何らかの、中核機関がそれをすることで利益を得るという形に しないと、やはり長期的にはもたない可能性がある。そういうことができる機関をつくると いうことがもう1つございます。 それからあとは研究コミュニティとの連携ということ、これは当然でございますが、例え ば、これを長期的に長続きさせるためには、この事業は確かに役に立っているということを 数的にも証明しないといけないわけですが、要するに、論文を発表するときにきちっとアク ナリッジをするとか、そういう追跡調査も現在進めておるのですけれども、そういうことの 協力もしていただかないといけない。そういう意味の研究コミュニティの意識の改革も必要 であるということでございます。 それからオールジャパンの体制。これは、地震国でありますので、積極的に他省とも連携 をとってバックアップなどやりましょうということで、これは現在既に一部進んでおります。 こういう基本的なことを考えまして、今後ぜひ推進していただきたいけれども、その際の 視点といいますか、分類といいますか、この4つぐらいの視点で整備をしていったらどうか。 1つは、先進的なバイオリソース、例えばマウスとかそういうものであります。これは随分 進んでおって、収集・保存・提供体制も整っておりますし、これをますます発展させるべき でありますし、さらに新規開発でも着手すべきであろう。それからもう1つは、発展途上、 ちょっと言葉があれですけれども、それにはまだ及ばないけれども、研究者コミュニティが どんどん大きくなっていって、そこに至る過程にあるようなもの、これは引き続き収集・保 存・提供の体制を整備するということでございます。 それから発展が見込まれるもの、これは現在、24のリソースでやっておりますけれども、 これ以外にも当然これから新しく出てくるものもございますし、現在既に、小さいけれども ぜひやるべきというものもございますでしょうし、そういうものに関しては、余り大きな規 模ではないけれども、きちっとした収集・保存・提供体制をつくるべしということでござい ます。 それから4番目には、維持の必要なリソース。研究コミュニティは小さいかもしれないけ れども、例えば我が国独自のものであって、これはやはり残さざるを得ないというものに関 して、最小限の経費でもって保存・提供するという形のものを何とかつくってほしいという、 こういう4段階程度に分けて整備をしていくのが望ましいのではないかという結論でござい ます。 ○… ありがとうございました。ご説明いただきましたが、いかがでしょうか。 本文の13ページに動物愛護というのが出てくるのですね。これは本物を見ますと、 「数値 設定において動物愛護の観点」と書いてあるのだけれども、これは具体的にどういうことな のかしら。 △… バイオリソースを整備するということで、整備していくのはいいのですけれども、生物で 17 すので、それをやみくもにどんどん拡張していくだけ、そしてそれを使うか使わないかはっ きりしないままに増やしていく、もしくは、それは使わなくなったら直ちに廃棄する、そう いう無計画性があってはいけない。そういう意味ではどのくらいの規模が必要なのかという ことも見極めながら整備していく必要があるだろうということでここに入れさせていただき ました。 ○… わかりました。計画性という言葉のほうがいいように思いますね、入れたほうが。これ、 ちょっとここだけ浮いているような気がするな。 ○… バイオリソースといってもいろいろあって、非常に現在アクティブに使われているものか ら、ともかく保存しておくことが大事というものまであって、ハエとかマウスとかとにかく みんなが今使っているものというのは割と相対的に簡単ですよね、こういうものが競争的資 金で認められて。しかし、ほとんどだれも使わないけれども、遺伝子としてはぜひとも保存 したいものについて、私もこの評価員をやらせていただいて見ていると、そういうものは多 分、競争から負けてどうにかなってしまうという可能性もあるんですよね。 ◇… いや、だから、競争に負けるからこのカテゴリーをつくって、しかし提案がきちっとして いないと、やはりそれは採択はされないと思いますけれども。 ○… そこのところをうまくどう保護するかをよく考える必要があるかなと。例えば僕、植物な んかで、これはかなり個別的なことなんですけれども、多分アサガオがどうのとかというよ うなことで、余り研究には使われていないけれども、しかし大事というような。じゃ、どう いう施設が望ましいかということについて、かなり具体的な話で、例えば植物園みたいなも の、大学付属の植物園とか、ああいうのが余り活用されていないのではないかと。ああいう ところにこういうリソースを保存するというような仕事を持たせて、例えば資金を投入して やってもらうというのは、僕は、現在ある組織をうまく、しかも継続的にやっていくという ことでは意味があろうかと思っておりまして、それは動物園がどうかは知りませんけれども。 ◇… この中でも、いわゆるマッチングファンド的なものをとってくるというのも重要でありま して、アサガオとかそういうものは見ばえがありますから、多分それはあり得るんじゃない かと思います。 ○… いやところが、小石川植物園の方が、そんな予算がないから無理と言っておられたから、 そういうことがないようにすればうまくいくんじゃないかと。 ◇… ええ、ですから、予算というのも開発とかいろいろな研究まで含めるとすごくかかります けれども、きちっと持って守るというところだけであれば、比較的……。 18 ○… そうです。使命感を持っていただければずっと行けると。 ◇… ええ、そういうことですね。そういう工夫はあるんじゃないかと。 ○… この事業の重要性はもう極めて大きいと思うのですよね。特に先ほどのゲノムのお話が出 てきましたけれども、その研究の発展の先を見ますと、付加価値を持った動物の開発、そし てそれの供給体制をつくる、そういう意味で非常に重要だと思うのですね。ますます重要に なると思うのですけれども、その点につきまして、今、中核機関の問題がちょっと言及され たのですけれども、この中核機関の受け手がなかなか負担が大きいということで、将来的に 問題を生ずる可能性があると思いますので、ぜひその支援ということをお考えいただきたい というふうに思います。 ◇… それは単にプロジェクトの支援がお金があるだけじゃなくて、受け手にとってメリットが あるような形ですよね。 ○… はい、そうです。 ◇… それは、議論はしておりますが、それは制度は向こうの方にお任せしたいと思います。 ○… このバイオリソースの問題は、今、竹市先生もおっしゃいましたけれども、ものすごく広 くて、かつて、もう10年以上前ですが、具体的なものを出していいのかな、千葉に真菌、 カビの研究所があって、そこが、キープのために何とかお金をと言われて、競争的資金で、 大変重要なことはわかるのだけれども、負けちゃうんですよね、競争いたしますと。これは まずいなと思っていたら、こういう現状の状態になっているんですけれども、これはやはり、 ちょうど審議会にいらっしゃらなくなっちゃったんだけれども、私は、全省というか、文科 省は当然ながら全体。ほかの省も含めて全省的に、あるいは政策的にも考えてもらいたいこ とですね、これは。国際的に明らかに負けますよ、ここを力を入れていないと。具体的にさ っき小原先生が5%とか、10%とおっしゃったのだけれども、それはちょっと多過ぎるん じゃないかと思うのだけれども、やはりそれぐらいの数字を出すぐらいの議論をしてほしい ですね、全体で。これは何回もこういうところで出てくるわけなんだけれども、さっぱりい い話が聞けないのは、やはり全省的あるいはほかの省も含めての議論がないためだと思うの ですが、どうでしょう。あるんですよ、個々には。だけれども、つながらないんですね。ぜ ひ考えていただきたい。 △… 多分、なかなか研究費と一緒くたに議論すると、研究費に食われてしまう、食われるとい う言い方はあれですけれども、いってしまうということなので、ただ、研究のためにはやは 19 りリソースは必要だということでこういうプロジェクトをうちでも立てています。内閣府で まさに連携の場がありますので、そういったところにもちょっと提起をさせていただいて、 その中でも第3期の計画は基盤をつくるということで、バイオリソースがきちんと位置づけ られていますので、各省庁がうまく連携できるような形で……。 ○… あ、そうなんですか。 △… ええ、第3期の……。 ○… それは競争的資金じゃないですか。 △… 競争的になると思います。 ○… でしょう、そういうことじゃないんだよね、僕が言っているのは。 △… そうなんですね。だから本当は継続的な、例えば運営費交付金みたいなもので、これはお そらくデータベースとかバイオリソースとか、そういった基盤のものというのはまさにそう なんだと思うのですが、どうしても運営費交付金となるとそっちにお金が行かなくなっちゃ うということもありますもので、どうしても今、競争的資金といいますか、公募というのが 大前提になっているので、ただ、先ほど小原先生からも言われましたように、公募なんだけ れども、その公募の経費が続くような形にする。そして公募の中ではなかなか注目を浴びな いようなものも第4カテゴリーという形で入れていくというようなことで何とかやっていき たいということなので、ちょっと各省連携のその場にも提起をさせていただきたいと思いま す。 ○… ぜひ頑張ってください。 ○… 今後はバイオリソースとして霊長類なんかも大変重要になってくると思うのですが、こち らの方面の考えは何かあるでしょうか。 ◇… ニホンザルは今NBRPでやっております。それからチンパンジーも、実はフィージビリ ティースタディーはあったわけですよね。結局、お金の問題と、それから時間のファクター があって、霊長類は寿命が長いですよね。だから、5年なんていうプロジェクトじゃとても もたないんですね。そこはかなり慎重に考えないと、それを一緒くたに考えますとほかのも のがだめになっちゃうので、今のところはニホンザルのみが入っておりますけれども、それ 以外は少しペンディングというか、どうなっているんでしたっけね。フィージビリティーが あったけれども、その後は置いてあるという状態で、まあ、厚生労働省でカニクイザルはや 20 っておりますし、その2つで最小限のことはカバーできるというか、サポートの最低限はで きているのかなというところですが。それ以上の大きな霊長類を全部集めろと言われると、 そもそも難しいですし、お金もかかるし、時間もかかるので、頭の痛いところです。 ○… 例えば医科研にはありますよね。だからそういうところにサポートを頼むとか。 ○… 最近、ワシントン条約で自由に行き来ができなくなっているんですね。ですから、研究用 に使いたいサルで日本にわずかにいて、それは全く研究者の自助努力によってほかの経費で、 一生懸命研究に関係があるといって育てているものはいるんですよね。そういうものに対す るサポートは、今全くないというか、突然何かに使うからこれの飼育費をくれというような 競争的資金へのアプライをしても、多分通らないんですよね。 ◇… そのサルはどういうサルですか。 ○… ボリビア産のリスザルとか、それからうちは、何だっけ……。 ○… マーモセット。 ○… マーモセットはもちろんですけれども、メガネザルじゃなくて何とかザル……。 ○… タイワンザル。ミドリザルは違うか。 ○… いいえ、タイワンザルやミドリザル、そういう一般にいるサルじゃないんです。ある種の 病原体にセンシティブだけれども、ほかでは一切得られない。もうもちろんワシントン条約 がありますから、南米にはいるとか、アフリカにはいるけれども、入れることはできない。 でも前に日本の研究者が持っていたために、わずかだけれども生息しているというのがある んですね。そういうのを引き受けて何とか飼育しているんですけれども、そのサポートは全 くないんですよ。いろいろな理由をつけて、ほかの研究に使うからといって飼育費を出した りとか、すごい苦労しているんですが、とても苦しいところではあります。 ◇… リソースプロジェクトでは、ある程度の研究職ニーズの大きさがあるとか、使われる数が あるとかということが前提ですので、全くお一人、お二人だけだと、やはり研究費でやらざ るを得ないという。 ○… いや、それは、例えばマラリアの研究がこれからだんだん重要になってくると思いますけ れども、ヒトのマラリアに感受性のあるサルというのは、今、うちの群にしかいないんです よ。ほんのわずかです。それは、やっている研究者が欲しいと言ってくるのですけれども、 21 それを上げちゃったら終わっちゃうので、上げられないんです。でもそれはもうどこでも手 に入れられないです。外国と共同研究して外国に行かない限りできないと思います。うちは コロニーを増やしていって、いつか使えるようにしたいと思うのですけれども、それは今こ の場で数人しか研究者がいなくても、絶対上がってくると思うのですよ、そういう研究とい うのは。そういうためにせっかくいるようなサル、それからあと、マウスにしか感受性がな いけれども、いい研究材料であったというサルがいて、そのサルは、その研究者たちがもう お金がない、もう競争的資金が得られないので買えないと言ってきたのですね。それで、う ちは将来のことを考えて、同様の研究、少し広いプロジェクトにすれば何とか飼育できるか らと言って引き受けたのですけれども、そういうようなことで、全く自助努力なんですよね。 それは大事なバイオリソースだと思うのですけれども。それをフリーズして置いておけるほ どのテクニックはまだないし、開発もできないしという、そういう苦しい状態です。だから、 少し広い視点で考えていただけるとありがたいです。 ○… 大学関係だと、京都大学のウイルス研にあるんですね。カニクイですか、あれは。だから、 施設があるけれども、お金がないとそこを維持できない。そこは、京都のウイルス研の人た ちだけが使っているわけではなくて、審査を経た上で全国のだれでもそこを使えるというよ うな形で今まで使っているわけですから、そういうところだったら資格はあるんじゃないか なと思うのですね。 ○… このバイオリソースに関して、今のサルはわかりやすい例だと思うのですけれども、民間 で既に大きなリソースを持っていて、それを国の施策としてサポートするような仕組みとい うのは何か考えておられるのかどうか。全部このバイオリソースプロジェクトの範疇で国の 機関を利用して押さえていくのか、それとも民間をよりよく活用するのか? 例えば先ほどのコ モンマーモセットの遺伝背景のそろった最も大きなコロニーというのは、民間の機関に非常 にいいものがあるようです。一方では、他の国にはなかなかそれがないという現状もありま すので、その辺をどういうふうにお考えになっているのか、ちょっとお聞かせいただきたい のですけれども。 ◇… 何といいますかね、アウトソーシングができるものはどんどんやっていったらいいし、マ ッチングファンドでいけるものであれば、マッチングファンドのほうがむしろよくなるのだ ったら、それを使えばいい、そのぐらいの立場なんですが、それ以外のリソースでも結構商 業化したほうができるというのもございまして、それはかなり幅広に考えていくべきである というふうに議論は進んでおります。 ○… いろいろな観点からご議論いただきましたけれども、大事であるということに関しては全 く変わりがないわけでありまして、いい方向にもっていっていただきたいと思います。 それでは、議題(4)に移らせていただきたいと思います。先端医科学研究の臨床への応 22 用の推進に関する懇談会検討報告書(案)です。これは中間報告を以前いただきましたので すが、きょうの午前中に懇談会が行われまして、取りまとめの報告書が議論されたというこ とですので、懇談会の座長からご説明いただきたいと思います。 ◇… 先般のこの委員会でTR推進のための懇談会の中間取りまとめをしまして、その取りまと めをした指摘事項に基づいて、ハードルを乗り越えるためにはどのような方向性が考えられ るか、さらには具体策はどうかということを検討するための作業班を立ち上げまして、作業 班のメンバーは、資料4-2の一番最後に委員の名簿を載せていますが、数回の検討をしま して、 「具体的環境整備のあり方」ということで決定いたしました。それを受けて、今朝、懇 談会を開いて最終報告書を(案)として提出した次第であります。 何度も申しますが、このTRの推進に関する懇談会におきましては、TRの定義というの が非常に重要であるということで、定義については、資料4-1に示しますように、大学等 において、アカデミアが主導して、基礎研究の成果についてシーズの発掘から人への応用を 目指した前臨床研究、人を対象に行う臨床研究の一部など、最終的には実際の医療に用いる ことを目指し、製薬企業等が研究開発に参画するなど、実用化の見通しが立つまでの橋渡し 研究、こういうまずしっかりした定義を置きまして、こういう橋渡し研究には、基礎から前 臨床研究、それからさらに早期の臨床研究、それから薬事法に基づく治験、高度先進、ある いは事業化、こういうイグジットを考える一連のプロセスの中で、いろいろなバリアがある という認識で進めました。本日は、特にこの作業班の最終的な「具体的環境整備のあり方」 という点について報告したいと思います。資料は4-2の10ページからでございます。ま た、ポンチ絵は4-1の2ページ目にございます。 まず(1)にTRを支援する機関の充実強化というので、方向性としては、それぞれ機関 の長の役割が大きいと同時に、この機関そのものが研究開発の重要性を認識して研究者のシ ーズを実用化に向けて開発するために、戦略的な支援をする機関を整備するという、機関そ のものの意識改革。それから、機関につきましても、他の機関への支援を視野に入れている 機関を数カ所、我が国でも重点的に配備、整備することが望ましい。それからこの重点的に 配備された施設は、一応の整備じゃなくて、それぞれ役割、特色を持つ、そういう重点的な 機関であることが望ましい。そしてさらには、この機関はいろいろな国全体のTR推進のた めの支援を促進する機能も持つべきであろう。 こういう方向性のもとに、具体的に支援する機関が果たすべき役割ということについては、 候補試験物に合わせた開発戦略の策定の支援、戦略的な知的財産の確保・活用の支援、研究 開発の進捗管理、企業との連携を進めるための事務機能、臨床研究実施医療機関の支援、デ ータセンター機能、非臨床試験、試験物製造等の支援、人材育成機能、それから基礎研究者・ 臨床研究者・理工系研究者・医薬品の審査担当者のようなTRに関する人材が情報交換する 場の設置、TRに対する国民の理解を高めるための普及・啓発活動、こういうものをTRを 支援する機関の具体的な整備すべき事項として答申いたしました。 それから人材の育成についてですが、人材の育成は、TRを推進するための人材と、人材 23 育成の機能の充実、この2つが考えられるわけですが、やはりシーズの開発の経験が豊富な 企業や、あるいは開発部門や医薬品の審査部門と大学等との間の人材の流動性を促進する必 要があるであろう。 具体的にはどのような人材かということですが、実際は、医薬品等開発及び事業化に精通 した人材、それから医学研究倫理に精通した人材、ライフサイエンス分野の知的財産の確保・ 活用及びその事業化に精通した人材、こういうことが考えられまして、そこに具体的に人材 を示しています。 それから育成機能の充実というのも非常に重要であるという認識であります。この人材を 育成するには、やはり臨床開発研究に必要な知識を系統的かつ効率的に学習させることに加 えて、オン・ザ・ジョブトレーニング、OJTとして学習させることが重要であるという認 識であります。こういう人材を登用するには、それなりの処遇が必要であるので、この機関 については、この処遇を含めて考える必要がある。 それからTRに必要な研究費の確保ですが、これまで、プロジェクトにかかわる費用に関 しては社会的重要性が非常に高かったんですが、十分な研究費を確保できないこともありま した。しかし、実際これを推進するとしますと、患者の安全性の担保や、あるいは臨床開発 研究が進むためには、GLP基準による非臨床試験やGMP基準での試験物製造等が必須で あります。したがって、こういうような分野に研究を継続的に支援する必要がある。では、 実際、研究費はどういうものに具体的に考えられるかということですが、これはGLP基準 での非臨床試験やGMP基準での試験物の製造が必要な開発研究への当該試験・製造、品質 管理にかかわる研究費、大学等における既存の試験物を製造する組織等の活用にかかわる経 費。GLP基準での非臨床試験やGMP基準での試験物の製造の品質管理の手法等の確立に 関する研究費がこの当該の研究費になる。 それから臨床研究の推進というのも大事で、大学機関として引き続きこの臨床研究に取り 組むことができる人材、それからノウハウを育てることが重要である、こういう方向性でも って取り組むべきであるというところであります。 その他、 「おわりに」は、TRの推進に関するいろいろな問題が出されましたが、ここの終 わりのところに具体的に深く踏み込めなかったこと、例えば1つの例を挙げますと、有害事 象が生じた場合の被験者への保険等、補償問題の検討、これはこの作業部会では少しまた別 の場が要るであろう、こういうものが終わりのところに列挙されています。 以上、この環境整備のあり方の具体的方向性と具体策を盛り込んで、この検討の報告書に したいという案でございます。 ○… 非常によくまとめられていると思いますけれども、私もたくさん治験をやってきたのです けれども、やはりこの報告書だと、やはり業務とか資金とかそういうところに余り多すぎる んじゃないかと私は思うのですね。もちろん大事なんだけれども、やはりサイエンスの部分 というのをもうちょっと打ち出したほうがいいと思うのですね。治験とかそういう薬物開発 というのはもう十分なサイエンスで、サイエンスというのはやはり動物実験とかメディカル 24 サイエンスだけじゃなくて、結局問題になるのは2つしかなくて、実は患者の安全性と薬の 有効性の2つしかないんですよ。これがよければいい薬なんですね。だから薬物開発という のは患者さんに安全か、有効かというのを予測する学問だと思うのです。その部分を予測力 は何があるかということになるわけですね。例えば動物実験が予測力あるかというと、最近、 アメリカの薬では黒人にきく薬とかいうのが出されているんですね。とすると、やはり動物 における結果がほんとうに患者さんの効果とか安全性を予測できるかということはなかなか 難しいと。じゃ、どういうふうにして予測していくかという問題で、やはりそこら辺に対し ては、統計とか疫学の問題が非常に大きいと思うのです。報告書の中に統計という部分はあ るんですけれども、2カ所ぐらいで、あと、疫学という言葉がないのが非常に残念なんです けれども、やはり数理統計だけじゃなくて、ほんとうに患者さんを一人一人見て、クオリテ ィーのいいデータをとって、それを十分なサンプルサイズで洗練された統計解析をやるとい うふうなことが非常に大事だと思います。実際、アメリカなんかで何でうまくいくかという と、アメリカの臨床医というのは、相当な人たちはマスター・オブ・パブリックヘルスとい う教育を受けているんですね。それはもう完全な疫学統計の教育で、その人たちが、多分こ こに書いてある Lancet とか New England Journal of Medicine みたいなそういう資格を持っ ている人が多いと思うのですけれども、それは臨床医の教育も問題で、日本ではいろいろ構 造とか教えて、一生懸命患者さんが治るように医学医療をやらなければいけないというけれ ども、実際やったあと客観的に本当に治っているのかどうかということを完全に徹底的に客 観的に調べるという手法の教育がやはり余りなされていないと思うのですね。やはり、臨床 医がそういうふうな考え方を持つように教育の仕方を変えるというのも大事だし、実際にデ ータの中からほんとうに患者さんにいい薬とは何かということを考えながらやっていくとい うことが大事だと思うのですけれども、ちょっと言い過ぎましたけれども、そういう臨床サ イエンスの部分というのをもうちょっと強調していただきたいと思います。これを見ると、 やはり手続とか資金の流れとか、業務とか、そういうことがちょっと多過ぎるように思いま す。 ○… 今のサイエンスの部分を入れるということを含めた安全とか有効性というので、ことしの 初めに起こりましたイギリスの抗体を使った実験なんかも考えてみますのに、やはり種を越 えたものの違いというのは非常に大切かと思いまして、例えばヒト型のモデル動物を作成す るというようなのも、ここの環境整備に入れて今後展開していただくというのはいかがかと 思います。 ◇… この作業部会でも改めてそこのところも議論しまして、具体的には入れてないのですが、 やはりGLP基準のところとか、ヒトモデル化、そういう動物の基盤となる部門がやはり非 常に重要であるという認識は皆さん強調されていました。 ただ、実際これをやっている場合には、国全体の施策が、厚労省あるいは文科省あるいは 経産省、そういうところで、ある一定のうまい連携をしてないと、TRというのは安全性で 25 もありリスクを伴うところでもありますし、そういう推進をするためには、やはり全体の各 省庁を超えての連携も非常に重要ではないかと思います。 ○… 民間側からなんですが、臨床統計の先生のデータセンターといいますか、運営の支援をさ せていただいて、間接的に医師主導の治験のお手伝いをさせていただいた経験から申します と、このいわゆるトランスレーショナル・リサーチの分野って、ものすごく日本は、支援機 関というものも人材もやはり足りないんじゃないかと非常に痛切に実感した覚えがございま す。ぜひ、省庁を越えて強化していただけたら、ありがたいというふうに思います。 それからあと、アメリカのベンチャーとかかわっている経験からいいますと、こういう研 究があるものですから、アメリカは非常に、種を見つけてから臨床に入るまでが、先生方が かなりボランティア的に動物試験から臨床のフェーズ1までの仕組みをやっていただけるも のですから、そういう先生方がいらっしゃるものなので、早くいくと。この記述に、6ペー ジに、ベンチャーが手を出さないというふうに書いてありますが、実は種が出ると、まさに このTRの定義に書いてあるような橋渡し研究をなりわいとする先生方がボランティア的に 前へ進めていただけるというものですから、早く進むというような仕組みがあるように思い ます。そういう意味でも、今の先生のご発言のサイエンスという面も含めて、こういう研究 を日本で充実させていくことは非常に重要なんじゃないかと考えていますので、ぜひよろし くお願いいたします。 ○… 今、省庁を越えてというお話がありましたけれども、これも……。 △… 今まさに省庁を越えてということで、今朝もそういう議論がございました。机上にこうい う資料を配付させていただいておりますが、その中で、赤のタグをつけているところがござ いまして、これは3月につくらせていただきました分野別推進計画でございます。そこをち ょっと見ていただければと思いますが、その部分の19ページ、これはライフサイエンスの 省庁を越えた、内閣でつくりました分野別推進計画の19ページに推進方策ということで、 これから戦略重点を推進するに当たっての留意事項が書いてあるところでございますが、そ この(2)、これが大部分、この部分の多くのページを割いてトランスレーショナル・リサー チについて言及したところでございます。これはまさに内閣府のほうで、省庁を越えて、シ ームレスにTRをやっていこうということでありますので、これも先ほど申し上げましたが、 19年度以降の予算をつくる前に、ある程度厚労省、経産省、それから関係省庁とタッグを 組んでやるというような仕組みは、今できてきたばかり、これまで残念ながら予算といいま すと、省を出てからいろいろな連携施策であるとか、やっていたわけですけれども、まさに こういう動きがあるということで我々もここに向けて努力をしていきたいというふうに思っ ていますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○… しかるべきところできちんと議論はされている。あとはその効果を見せていただくという 26 ことですね。ありがとうございました。ほかにご議論ございませんでしょうか。 それでは、大分時間も過ぎてしまいまして、議題の5番目に移りたいと思います。ライフ サイエンスに関する研究開発の推進方策についてということでございまして、これは今まで 各委員の先生方からいただきましたコメントを反映したものとしてつくらせていただいたも のを、きのう、親委員会といいましょうか、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会と いうのがありまして、そこで一応私が説明をさせていただいたものであります。 それでは、事務局のほうから修正などをよろしく。 △… 本年3月に内閣府のほうで第3期の計画、それから分野別推進計画ができたところでござ います。それを受けまして、文科省版の分野別推進計画をつくるべしということで、科学技 術・学術審議会研究計画・評価部会のほうからご指示をいただいたところでございます。前 回の5月17日のライフサイエンス委員会で一度ご審議をいただきまして、そのコメントを 踏まえまして、昨日、金澤主査のほうから中間報告として部会のほうにご報告させていただ いたものでございます。資料といたしましては、資料5-1が概要版、5-2が本文、机上 配布で資料5-2(参考)と書いたものが、前回のものから先生方のコメントをいただいて どのように修正したかというようなものを机上で配布させていただいております。 若干の構成を踏まえまして簡単にもう一度おさらいを、数分いただいてご説明をさせてい ただきたいと思います。資料の5-2をごらんいただければと思います。 これは昨年の1月にライフサイエンス委員会のほうで第3期に向けた方向性をお示しいた だきました。これを元にして内閣府のほうにご提言をさせていただきまして、昨年末から内 閣府のほうで分野別推進計画、それから第3期の計画の策定作業に入ったわけでございます。 内閣府と本ライフサイエンス委員会も2度ほどやりとりをさせていただきまして、中間的に 内閣府のほうの分野別推進計画もご報告、それからコメントをいただいたところでございま す。したがいまして、今回の文部科学省版ライフサイエンスに関する推進方策でございます が、昨年1月の方向性、それから内閣府の分野別推進計画をある程度踏まえた形で、それを 盛り込んで記述をするというような構成にさせていただいております。 まず、ページをめくっていただきまして2ページ目に「はじめに」ということでその経緯 を記載させていただいております。 3ページ目以降でございますが、 「第1章基本的考え方」ということで、近年の変化、それ から研究開発動向について記載をさせていただいておるところでございます。「(2)本推進 方策の基本姿勢」ということで、一番最後のところに、重点的な投資、それからページをめ くっていただきまして、それを支える基礎基盤研究、それから体制の充実、そして、ちょっ と数行置いて、内閣府のほうの基本理念であります生命現象の統合的全体像の理解、それか ら研究成果の実用化のための橋渡しというものを強くうたうということをあわせ記述させて いただいております。 4ページ目の中段に文科省としての役割、取り組み。そしてその後、(4)として方向性、 環境の整備ということで、まず1点、基礎研究の推進ということで、これは基礎研究の推進 27 につきましては、第3期の計画でも強くうたっておりまして、そのポイントは、4ページ目 の下にございます萌芽的な研究、これはまさに研究者の萌芽的な研究をする基礎研究と、② といたしまして、政策に基づいた基礎研究を明確に分離をしたというのがこのポイントでご ざいます。 そして重点領域といたしまして記載をさせていただいております、その重点領域の推進方 策として5ページ目の中段に、融合研究、学際的な研究、それから異分野交流というような ことをうたっております。先ほど、鎌谷先生のほうからも、いろいろなところからのアプロ ーチ、それから人材養成ということもございましたが、学際的、融合的な研究、それから戦 略重点科学技術の連携というのもここでうたわせていただいたところでございます。そして 研究開発を支える環境の整備ということで記載をしてございます。 ページをおめくりいただきまして7ページでございますが、2章といたしまして、それを 受けて研究開発の計画、推進方策ということで、 (1)、 (2)は、まさにその内閣府の計画を 引用させていただいておりまして、41の重要な研究開発課題といたしまして、41をその まま列記させていただいております。ページをめくっていただきまして8ページでございま すが、内閣府のほうの計画は、重要な研究開発課題、それをさらに絞った重点的投資をする 戦略重点科学技術、この2つ立てになっているわけでございますが、41の重要な研究開発 課題と、ライフサイエンスの場合はその中で7つの戦略重点科学技術、これを内閣府のほう で決めていただいておりますので、それをそれぞれ転記させていただいたのが(1)、(2) でございます。 9ページに、まさにそのうちの戦略重点科学技術に関する部分につきましての文科省の取 り組みを今回記載をさせていただいているというものでございまして、①生命プログラムの 再現科学技術といたしまして、まずはその研究開発の内容、それから既存の取り組み、そし てページをめくっていただきまして、当面行う方針ということで記載をさせていただいてお ります。10ページ目でございますが、本日ご報告させていただきましたゲノムの報告書、 タンパクの報告書を転記しながら、その方向性を記載させていただいているということでご ざいます。また、細胞、器官、個体といった高次レベルの原理の再構築、あるいはそれをや るに当たっての生体生命現象のシミュレーション、あるいは脳、情動についての記載もさせ ていただいているところでございます。また、②といたしまして、11ページでございます が、トランスレーショナル・リサーチにつきましては、その内容、既存の取り組み、それか ら当面の方針といたしまして12ページに、先ほど田中先生の方からご報告をいただきまし た先端医科学研究の報告書を記載しつつ、その方向性について出させていただいているとい うことでございます。 12ページ、③といたしまして、がんにつきましては、近年の取り組みとして、当面の方 針の中には、後ほどちょっと報告させていただきますが、がん基本法の状況等々について付 記しておるところでございます。 また、感染症につきましては、④といたしまして、現在の動き、それから当面の方針とい たしまして、今、内閣府のほうで連携施策群というところで動いていますので、それを受け 28 た形で今後どう進めていくかということを方向性を記載させていただいているところでござ います。 また、13ページ目以降、これが食料等々でございますが、14ページ目、⑤に食料生産、 植物の取り組み、それから⑥といたしまして環境科学技術等々について記載をしている。 そして15ページに最後の項目といたしまして、世界最高水準のライフサイエンスの基盤 ということで記載をさせていただきまして、当面の方針といたしましては、16ページ目、 本日ご報告させていただいたところのバイオリソースの報告書、また、前回ご報告させてい ただきましたデータベースの報告書をもとにその方向性を記載させていただいているところ でございます。 17ページ目以降が第3章ということで、これも内閣府のほうの分野別推進計画にあるも のでございますが、その推進に当たっての重要事項といたしまして、10項目、生命プログ ラムの再現から知的財産まで10項目についてそれぞれ概要を転載させていただいていると いうところでございます。 また、最後、20ページ目には「終わりに」というところで、 「活きた戦略」というような ことで、これは中段にございますが、随時変更しながら第3期計画について考えていこうと いうようなことを記載させていただいておりまして、前回、同様の報告をさせていただきま して、先生方からコメントいただいておりますので、それをもとにまた改めて修正させてい ただいたものが本バージョンでございます。 また、昨日、金澤主査のほうから計評分科会のほうに報告させていただきました。特段、 分科会のほうからはコメントはございませんでしたが、唯一ありましたのは、内閣府のほう で8つのレポートが出てございます。これはライフサイエンス、IT、環境、ナノテクノロ ジーそれからその他、宇宙等々でございますけれども、その関係性について、例えばライフ サイエンスとITがどういう関係なのか、そこをうまく有機的に組むべきじゃないかという、 そういう大きなマップをつくってほしいということがございましたので、そこだけ計評分科 会のほうで作成をし、全体を示した上でそれぞれの分野が入ってくるという形になろうかと 思います。 あわせて、今後のご予定もご説明させていただきたい思いますが、本日、最終的にこれを ご審議いただきまして、もし可能であれば、7月の終わりにもう一度計評部会がございます ので、最終報告として、そこで報告をさせていただく予定にさせていただきたいと思います。 また、きょうご報告させていただきましたこの資料でございますけれども、ちょっと中途 半端になっておりまして、後ろに普通であれば添付資料がいろいろつくわけでございますが、 可能であれば、先生各位の名簿、それから審議の経過、それから本日お配りさせていただい ております資料5-1、あるいは、中にゲノムの報告書であるとかタンパクの報告書を転載 させていただいていますので、そのポンチ絵を適宜つけさせていただいて、最終提案という 形にさせていただきたいと思います。以上、ご報告申し上げます。 ○… 昨日、報告したといいましても、最終ではありませんで、これからですので、決定してし 29 まったわけじゃありませんから、どうぞご意見ください。さあっと今ごらんになって、ある いはもう既に何回かごらんいただいているとは思いますけれども、改めてどうぞ、ご自由に ご意見いただけませんでしょうか。 ○… 4ページ下のほうなんですが、私はメールでも意見を述べましたが、基礎研究を2つに分 けていますね。研究者の自由な発想に基づく研究というのと、それから重点推進4分野、そ の応用への基礎をやる、その2つの基礎研究が言われていますが、一番最初のほうの自由な 発想に基づく研究というのは、これは元文部省の研究助成課といいますか、そういうことを 述べているんですか。助成課が持っているスタンスと、ライフ課が持っているスタンスとど こがどういうふうに違って。お願いします。 △… こう記載させていただきましたのは、また机上配布のこの資料でございますけれども、こ の中の科学技術基本計画の中に既に記載がございまして、そこの科学技術基本計画の11ペ ージ目をごらんいただければと思います。 ○… 第1期の? △… いいえ、この赤のタグがついている科学技術基本計画ですが、そこの11ページ目をごら んいただければと思うのですが、実は、ここでもう既に基礎研究についてうたっておりまし て、これは科学技術の戦略的重点化を図る上で基礎研究が重要だということを書いている部 分でございます。そこに、基礎研究には人文社会科学を含め、研究者の自由な発想に基づく 研究と、政策に基づき将来の応用を目指す基礎研究があるということに分けてございます。 前者は、まさに今先生が言われましたように、科研費のようなイメージでございます。後者 は、まさに国がある程度方針を決めて、それについて行うプロジェクト研究でございます。 その中にもやはり基礎研究があるだろう。今まではこれが若干一緒くたになっていたので、 そこをある程度明確にする。したがって、どちらも公募でやるわけなのですけれども、ほん とうに萌芽的な、研究者発の基礎研究と、それからある程度社会ニーズ、政策を念頭に置い た、応用を念頭に置いた基礎研究、それを分けて考えるというような発想でございます。 ○… よくわかりました。ただ、この中にライフサイエンス委員会として書くと、これはみんな ライフ課が考えているものというふうに思われないでしょうか。実際にこの後はほとんど重 点の推進分野のことばかりですよね。 △… この構成もそうなんですが、多分、おそらく後者以降は、②はおそらく含める。①につい ては科研費のような資金で基礎研究を行っていただくというようなことですので、そこは若 干、じゃ、ちょっとわかるような形で。 30 ○… それに関連して、この2つの、個人の発想に基づく研究の資金と、それからライフ課のほ うに主におりてくる重点の推進のための資金というのは一体どこで分かれるのですか。国の 予算配分の中でどこで分かれるのですか。 △… 場所ですか? ○… はい。 △… 財務省で分かれるのか、内閣府で分かれるのかということですか? ○… ええ。総合科学技術会議が書いている第3期基本計画というのは、国全体の話ですから、 これは両方書いてあって当然なんですが、研究費としてはどこかで分かれるわけですよね。 △… はい。 ○… だから、もし、重点推進のための基礎研究というのを、これは研究助成課に任せようとい う形で向こうに持っていっちゃうことも可能なわけですね。 △… いいえ、内閣府のほうの第3期の計画も、科研費について戦略を持たせるということを言 っているわけではないのです。科研費はあくまでも、極端なことを言うと、ちょっと語弊が ありますが、戦略なしというか、とにかく研究者の自由な発想でやってもらう。戦略を持っ たものについては、基礎研究も応用研究も開発研究もあるんだけれども、その戦略を持った ものについてはこの重点戦略課題であるとか、重要な研究開発課題として位置づけて、そこ に戦略的に重点投資をしましょうと。ただ、一方で、じゃ、萌芽的な研究について伸ばさな いのかというと、そうではなくて、きちんと明確に分けた上でそこもしっかりと投資をし、 そしてこっちについては戦略重点課題というようなことでその部分は位置づけて、5年間で 重点投資をしましょうというようなことです。 どこで分かれるかというと、ここはこれまでの予算の配分であるとかというところで決ま ってくるというようなことで、省の中等々で決まってくるというようなことです。 ○… 省の中ですよね。いいですか。この文章が入ったのは比較的最近なんですよね。つまり、 このライフサイエンス委員会ができた最初のころはこの辺がよく理解できませんでして、総 合科学技術会議も基礎研究が大事だと言いながら、我々のこのライフサイエンス委員会で思 っているような基礎研究、当時思っていたのは、全くこの自由な発想のほうを考えていたわ けですけれども、そういうことがなかなか現実にならないような気がして、みんなフラスト レイテッドだったのです。ところが、このように基礎研究という言葉を、ほんとうに我々と したら自由な発想のほうばかりを考えているんですが、いわゆる目標達成型の中にだって基 31 礎研究はあるじゃないのというのがだんだん明確になってきて、目標達成型の資金の中で、 クオーテーションマークつきの基礎研究をやるということも現実にたくさん出てきたわけで、 それを文章化しただけだと理解しているんですけれどもね、私たちは。ですから、我々が最 初に考えていたような、あるいは先生がおそらく今も考えていらっしゃるような、科研費の 世界をここで述べているのではないと思います、これは。前半のほうは。あ、失礼、前半は 科研費の世界になっちゃう。だけど、それをここで討議することを目標としているのではな いんだろうと思っています。そうすると、この5番目……。 ○… じゃ、この文章は要らないですね、①は。 ○… いや、5ページの3行目以下が、ちょっと明確じゃないんですよ。この辺でちょっと明確 に書いておけば、ライフサイエンス委員会で扱うものはというようなことを書いておけば、 それは割にすっきりすると思うのです、そこは。お金の出どころというか、文科省の中での 区分けは違うのです、明らかに。それがなかなかわからなくて苦労したんだ。 ○… この文章をつくるためだけにもものすごく時間がかかっている。これを今、要らないとい うのでは大変なことになっちゃいますよ。 ○… 首を飛ばしてもらったらいいんですけれどもね……。これは大変大事なことではあるんで す。 ○… そうですね、研究者のスタンスの問題だから、大分違うんだね。 ○… ちょっとまだあいまいな部分があるんですよね、ここは、2番のほうをライフサイエンス 委員会としてはきちんとサポートしていくんだということがうまく出ていないんですよね。 ○… ①と②の比率というのが実はどこにも書いてなくて、それは聞いてもだれも答えていただ けないんですよね。それはしようがないんですけれども。結局、①と②があるのは当然しよ うがないですし、ここが②だというのは構わないのだけれども、じゃ、①は減ってはいない と思うのですが、そこら辺はやはり……。 ○… △… 何かあったでしょう。 ええ。科研費のほうは、基本的に何をもって順調と言うかなんですが、伸びていること は伸びています。じゃ、何割を科研費に充てるかというのは、なかなかこれは議論されてい ないところがございます。現状で申し上げますと、例えばプロジェクトの中でも基礎研究と そうでない部分というのはなかなか分けにくいので、どうかというのはあるんですが、競争 32 的資金全体を見ますと、これは、競争的資金だけを考えますと半分強くらいが科研費でござ います。これは大体比率はほぼ変わっていないか、若干科研費が増えてきているというのが 現状だと思います。これの割合がいいのかどうかというのはなかなか、どこかで議論されて いるかというと、特にライフサイエンスの中で比率というのはちょっとわからないのですけ れども、全体としてはそういう傾向にあるということでございます。 ○… その額を比較すると、例えばJSTのCRESTなんかはどっちのカテゴリーに入れるん ですか。 △… JSTのCRESTは、これは②のほうです。 ○… ②ですか。でも中身は1ですけれどもね、かなり。多少ハイブリッドですね。テーマは② 的に決めて、中身は①的な、みたいな。 △… だから、そこも多分絞り方の違いかと。 △… CRESTについては、対外的には②だというふうな説明をさせていただいております。 そこは科研費ときちっと区別をしないといけない客観情勢になってきているということでご ざいます。 ○… 運営の仕方は割かし①的にやっていることは事実です。 △… そこは研究のやり方とか、そういったところは研究者の方たちのアイデアを最大限に生か すというふうな形での運用をしているということでございます。 ○… かなり根本的なところで。でも、理解は深まったとは思いますが。ほかにいかがですか。 この報告の中で一番ある意味では大事なところだったのですよ、今のは。よろしいですか。 これはまた後でご意見いただけるんでしょう。そういうチャンスがあるんですね。 △… 最終報告が金澤先生の方からまた、親委員会の計評分科会のほうにおそらく7月の終わり でありますので、その前にコメントいただければ、主査とご相談をいたしまして文章を……。 ○… ちょっとさっきのところはやはり少し手を加えたほうがいいかもしれない。それでは、ぜ ひご意見ください。ただ、基本的にはこの骨格でもってこの委員会としてはご了承いただい たということにさせていただいてよろしいでしょうか。前へ進ませていただきます。どうも ありがとうございました。 それでは、最後から1つ手前かな、議題(6)になります。ライフサイエンス委員会にお 33 けるライフサイエンス関係事業の評価の進め方についてなんですが、先ほど申し上げなかっ たですね。最初はわからなかったのですけれども、このライフサイエンス委員会というのは、 本省が、文科省がおつくりになる施策を、あるいは実行しようとしていることを評価するこ とが非常に重要な役割だということなんですね。その一環といたしまして、去年も行いまし たけれども、今年度も評価をしなくちゃいけません。その進め方に関してですが、事務局か らどうぞ。 △… 去年同様、事前の評価、それから中間の評価をお願いしたいというふうなことでございま す。まず1番目でございますけれども、19年度新規ないしは拡充する課題についての事前 評価でございます。本日、また前回いろいろな報告書をご審議いただきまして、それをもと にいたしまして19年度要求を省として考えていきたいということでございます。予算につ きましては、骨太の方針、それからシーリングというのが若干今おくれていまして、7月の 上旬くらいにある程度の国全体としての予算、それから要求のシーリングというのが決まる というふうに伺っておりまして、それをもとに予算の作業に入らせていただきたいと思って います。19年度の新規拡充につきましては、次回、ライフサイエンス委員会のほうにお諮 りをさせていただきまして、そしてご意見いただきまして、8月に成案を受けて、そして9 月に概算要求をさせていただきたいということで、事前の評価をお願いしたいというもので ございます。 2番目でございますけれども、これは中間評価でございます。リーディングプロジェクト につきましては、これは平成15年度から開始したものでございまして、実は昨年も一回、 3年目を迎えるプロジェクトについては中間評価をしていただきました。昨年いただいたの は、テーラーメード医療、再生医療、生体シミュレーション、それから光ということで、4 つの課題について中間評価をいただいたのですが、今年度につきましては、16年度に開始 したプロジェクト、2課題ございます。これは1枚めくっていただきますと、ゲノムネット ワークプロジェクト、それから革新的ながん治療法等の確立に向けたがんTRのプロジェク トでございますが、これにつきまして中間評価をお願いしたいということでございます。こ れはライフ課の方で事前の自己評価をさせていただきまして、そして次回ないしは次々会に お諮りをさせていただきたいというものでございます。 ○… 何かご質問ございましょうか。2度目ですので、おわかりかと思いますが。もしもご異論 がなければ、7月31日に開かれます次回のライフサイエンス委員会で評価を……。それだ けじゃないですね、その次のやつも含めて2回ぐらいにわたって評価をお願いしたいと思い ます。よろしくお願いします。 さて次は、議題(7)その他でありまして、最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの 開発利用の研究開発拠点の公募についてなど、どうぞ。 ◇… それでは、文部科学省情報課の星野でございます。 34 お手元に資料7-1をご用意くださいませ。大変読みにくいプロジェクト名で恐縮でござ いますけれども、最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用のプロジェクトとい う形で、私ども、今年の7月1日、もう間もなくですけれども、その7月から次世代のスー パーコンピュータの開発そのものを本格的に開始するところでございます。この関連で、ス ーパーコンピュータをハードだけつくってもしようがないわけでございまして、実際、その アプリケーションの開発に向けても同時に動き出そうとしているところでございます。この ライフサイエンス委員会との関係から申し上げますと、資料7-1にございますような次世 代生命体統合シミュレーションソフトウエアの研究開発の研究開発拠点の公募といったよう なことでご紹介させていただきたいというふうに思います。 この公募は、重要なポイントは、拠点の公募ということでございます。研究開発の課題を 公募するのではなくて、拠点を公募するということでございます。これは先ほどのライフサ イエンス分野の推進方策の中でも議論がございましたけれども、目標達成型という形でこの 次世代スーパーコンピュータのプロジェクトは進めてございます。その中でも位置づけがち ょっと特殊でございまして、国家基幹技術という特別な位置づけを持って、ビッグサイエン スとして進めていくという位置づけでございます。その中で、アプリケーションの開発につ いても、拠点型で進めていくということを考えてございまして、そういったことで、今回の 次世代スーパーコンピュータのプロジェクトの中でも大きく2つの領域がアプリケーション のターゲットとして重要な領域であると考えておりますが、そのうち1つがライフサイエン ス分野、もう1つは実はナノテクノロジーの分野でございます。そのライフサイエンスの分 野の拠点の公募ということでございます。 また、資料7-1の2.のところで、どういうところが拠点の要件なのか等々を書いてござ いますけれども、これは公募をして、そして審査をして決定するという手続をとります。し たがいまして、詳細な公募要領つきましては文部科学省のウェブサイトを見ていただきます と、それを見ることができます。 なお、拠点公募ということでございますので、めくっていただきまして、3.対象というと ころでございますが、これはやはり実施する者が相当ハイレベルで責任を持っていただく必 要があるということで、機関の長に申請をしていただくということを条件としてございます。 まさに現在公募の最中でございまして、7月14日に締め切りをいたしまして、その後、な るべく早い段階で文部科学省の中に審査検討会を設置し、その審査を経た上で事業を8月中 には開始できるようにしたいというふうに考えているところでございます。 ○… これは、サイズはどれぐらいなんですか。 ◇… 拠点を公募しておきながら恐縮でございますけれども、年間の予算は、平成18年度は初 年度で半年予算ということもございますが、平成18年度は1.5億円でございます。ただ、 19年度以降は、これからまた財務省とよく相談をしていくわけでございますけれども、初 年度は1.5億円ということでございます。 35 ○… はい、わかりました。何かご質問。これは報告ですね。 ◇… はい、報告でございます。 ○… いつも私言うのですけれども、ライフサイエンスにおける高速コンピューティングという のは、私はシミュレーションとかシステムバイオロジーだけではないと思うのですね。日本 では確かにそれだけだから、そういうことをご存じない方がこういうふうに言っているのだ と思うけれども、やはり、データ解析において世界的にはものすごく高速のコンピューティ ングが必要なので、ぜひそういうことが応募されても排除されないようにお願いしたいと思 います。 ◇… はい、十分に留意させていただきたいと思います。 ○… ほかにご意見。よろしいですか。 それでは次は、ライフサイエンス関係プロジェクト横断型共同研究経過報告です。 △… 続けて3つ、4つご報告させていただきます。 まず1点目でございますが、資料7-2でございます。3月にライフサイエンス課といい ますか、ライフサイエンス委員会のほうでいろいろ評価をしていただきまして、12のプロ ジェクトについて合同のシンポジウムをさせていただいたわけでございます。その成果とい たしまして、各プロジェクト間でどんな融合のプログラムができるかということで、前回の 5月のライフサイエンス委員会のほうで、何がしかの融合プログラムについて公募をしたい ということでご審議いただきまして、了解をいただいたところでございます。そのための公 募要領ができましたので、それを参考までに配布させていただいたところでございます。6 月中旬に公募要領を作成いたしまして、資料7-2(参考)というもので、各研究者のほう にお配りさせていただいております。今回は、あくまでもプロジェクトに参画いただいてい る研究者の間でプロジェクト間の融合を図るというようなことで、プロジェクトに参画いた だいている先生方からの提案ということでお願いをしたいということで、公募を決めてござ います。公募期間といたしましては、6月16日に公募を開始いたしまして、約1カ月ほど で公募締め切りということで、その後、前回のライフ委員会のほうで小原先生を中心に選定 をしていただくということでございましたので、小原先生、それから各プロジェクトの推進 委員の先生にも入っていただいて、これとこれを融合させてはどうかというようなご審議を いただき、決定をさせていただきたいというふうに思っている次第でございます。 続きまして、資料7-3でございます。これは最近のライフサイエンスといいますか、い ろいろな動きをご紹介させていただきたいと思いまして、がん対策基本法についての概要で ございます。がん対策基本法は、民主党、それから特に公明党が昨年からいろいろな勉強会 36 をして、この4月ないしは5月に民主党それから与党の間でそれぞれ議員立法という形でが ん基本法が国会に提出をされたわけでございます。そして最終的に6月13日及び6月16 日に衆議院、参議院を通ったわけでございます。 その内容だけ簡単にご説明させていただきますと、第1の総則として、基本理念というこ とで、がんに関する専門的、学際的、総合的な研究を推進する。そしてまた、2番目の○と して、均てん化を図るというようなことが基本理念としてうたわれてございます。そして第 2項目として、基本計画を策定するということでございます。法律はあくまでも大まかな方 針を立てて、具体的な策定は計画の中にということで、政府は、がん対策推進基本計画を策 定する、そしてそれを受けた形で都道府県が都道府県のがん対策推進計画を策定するという ことがうたわれてございます。基本的な施策として、がんの予防、早期発見、それから均て ん化、1枚めくっていただきまして、がん研究の推進、その中には医薬品、医療機器の早期 承認に資する環境整備の施策を講ずるということがうたわれてございます。また、新たなも のとして、がん対策推進協議会といたしまして、厚生省の中に、がん患者、ご家族、または 遺族を代表する方々、それから医療従事者等々から成るがん対策推進協議会を設けて、これ らの意見を聞きながら計画を策定するということでございます。 なお、今回のがん対策基本法制定に当たりまして、参議院のほうで附帯決議がついてござ いまして、大きなポイントだけ一、二点申し上げますと、放射線療法あるいは化学療法につ いての人材が不足しているということで、そういった専門医をしっかりと要請をしてほしい というようなことが強く公明党を中心に言われて、附帯決議となってございます。その他、 実は附帯決議は19項目くらいございまして、これは法律よりも長い附帯決議でございまし て、そういうのを付記しながら基本計画を策定するということで、来年4月までに策定をす るということでございます。これは医療関係、それから研究を推進している方々のある程度 がんについての指針になるということで、今回ご紹介をさせていただいた次第でございます。 続きまして、こういう大きなカラー刷りのものがございます。本年3月に合同シンポジウ ムを開かせていただいたわけでございますけれども、具体的に我が社で持っておりますタン パク3000とゲノムネットワークをもうちょっとうまく融合できないだろうかということ で、研究者の方々からご提案をいただきまして、本年7月18日にタンパク3000及びゲ ノムネットワークの合同フォーラムを開かせていただきたいということで、企画させていた だいております。 テーマといたしましては、基調講演を笹月先生に、それから招待講演として門脇先生、そ れからテーマとして、生命科学、感染症・免疫、がんという3つをテーマとしてパネルディ スカッションをさせていただくということで、先生方にもまたご案内をさせていただきたい と思いますので、ぜひお聞きいただければと思います。 あと1点だけご報告させていただきたいと思いますが、前回、動物実験指針のご報告をさ せていただきました。動物実験につきましては、昨年の6月に動物愛護管理法が改正されま して、これはまさにペットであるとかいったものでございます。まさに動物実験と実験動物 をきっちりと分離をして、そして動物実験については自主管理をするというようなことが明 37 記されたわけでございます。ただ、学術会議を初めといたしまして、自主管理といっても、 国としてある程度の指針をということで、この場でも議論させていただき、基本的な指針に ついては前回ご審議、ご了承いただいたわけでございます。その後、日本学術会議のほうで、 金澤第2部長のもとで学術会議のほうでモデルとなる詳細な指針もご決定いただきまして、 6月1日に動愛法の施行とともに公布をさせていただいた次第でございます。大学関係、我 が社は3,500ございましたので、我々の策定いたしました基本的な指針、それから日本学 術会議の定めていただきましたモデルとなるガイドライン、それから動愛法を含めて3,50 0の機関にこの6月に配布させていただきましたので、この場をもってご報告、それから改 めて感謝を申し上げたいと思います。本当にどうもありがとうございました。 ○… ライフサイエンス関係のプロジェクトの横断型のもの、あるいはがん対策基本法とか、あ るいは今のゲノムネットワークとタンパク3000の共同の合同フォーラムだとか、その辺 に関して何かご質問ありませんか。 がん対策基本法ができたということによって、これまで10年ごとに少し言葉を変えなが らがん対策のことをやってきた、いわゆる中曽根さんの対がん10か年その他、あれはこれ に移行したということで考えていいのですか。 △… 恐らくそうなろうかと思います。ただ、それは完全になくなってこっちに移行するのかと いうのは、まだちょっとあるわけですけれども……。 ○… 両方やるのは贅沢だよね。 △… もちろん、対がん10か年を受けて基本計画を定めることになりますので、これは包括さ れるというようなご理解でよろしいかと思います。 ○… 他にどうですか。よろしいですか。では、今後のスケジュールだそうです。 △… 今後のスケジュールでございますけれども、次回は7月31日に開かせていただきまして、 先ほどございました事前評価あるいは中間評価についてと思ってございます。 ○… ヒアリングがあるんですね。 △… はい、またそこは調整いたします。場所につきましては、また後日ご連絡をさせていただ きます。 ○… それでは、何か全体を通じてご質問、ご意見ございませんか、委員の方々から。よろしい ですか。それでは、本日の第35回ライフサイエンス委員会はこれで終了とさせていただき 38 ます。どうもありがとうございました。 ── 39 了 ──
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