第8回 インターナル・ブランディングの視点からの人材マネジメント

12 January 2011
SHANGHAI
JIJI News Bulletin
時 事速報
第8回
インターナル・ブランディングの視点からの人材マネジメント
インターナル・ブランディングの視点からの人材マネジメント
野村総研(上海)諮詢有限公司
企業ブランドは、通常、顧客や社会に向けた対外的意味と、従業員に向けた対内的意味の両面があ
る。最終的に顧客に接するのは従業員であり、対内的なブランド浸透ができていないと、対外的に形
成されたブランドイメージと従業員から提供しているサービスとの間にギャップが生じ顧客に混乱を
与えてしまう。対内的な企業ブランドの伝達活動をインターナル・ブランディング(Internal Branding)
と言い、従業員に企業の価値観を共有させ、個々の従業員が同じ方向に向けて行動させていくことを
目的にしている。
伝統的なインターナル・ブランディングの方法としては、企業理念を表現するスローガンが書か
れたポスターを社内に貼り出したり、
ブランド冊子や社内報を製作して社員に配布したり、経営トッ
プからの説明会などを定期的に行うなど、一方通行型の情報発信が挙げられる。また、社内イント
ラネットの普及に伴い、
電子メール、
ブログ、
掲示板などのツールを通じた経営側と従業員側での「双
方向」
、従業員の間での「多方向」の交流活動もある。また、そもそも「業務での上司・同僚・部下
との会話」
「部会」
、
「合宿研修」
、
「ワークショップ」
、
といった場での活動も重要な役割を担っている。
最近では、経営のグローバル化、多国籍化に伴い、異なる文化や価値観を持つ従業員、部門、事業
会社の企業文化の統合の必要性に迫られるケースが増えている。そこで、インターナル・ブランディン
グを通じて従業員の一体感や融和などを醸成し、人材の持つ能力を最大化することで企業の競争力
を向上させる必要性がますます高まってきている。
日本でも、インターナル・ブランディング活動を積極的に展開する企業は少なくない。しかし、海外
では、文化や価値観が違うことで、経営理念を従業員に丁寧に説明しても共感してくれないと感じて
いないだろうか。あるいは、参入時に一時的にインターナル・ブランディングに力を入れることはあっ
ても、長期的に、体系的にブランド浸透に向けた施策がとられているだろうか。
ここで家電大手の海爾(ハイアール)を事例として紹介したい。海爾の集団本部の下に、
「企業文
化センター」という部署が設置され、
専門的に企業ブランドの浸透を図っている。
「企業文化センター」
では、海爾の経営理念を漫画やストーリーの形で表現し、漫画集や事例集を編集して定期的に発表
している。これらの漫画やストーリーは、
すべて普通の社員が自分の企業の経営理念に対する理解を
描いたもの、または企業理念に沿った行動例を集めたものである。
例えば、新卒で実習中の肖金亭は工場で効率が悪い原因を発見し、作業改良の提案をしたところ、
すぐ技術部門に採用されたというストーリーがあった。これによって「才能あればすべて人材」という
人材活用の理念を伝えている。中には、一部海外拠点の海爾社員が描いた漫画や主人公になった行
動例も収録している。固いスローガンや長い説明文より、漫画やストーリーのほうが、言葉の壁を乗り
越え、分かりやすく伝えることができたという。
また、
「6S大足跡」という話も有名である。当初、海爾青島の工場には、
「6S大足跡」という名前のチー
ム会議が設けられていた。工場管理の6S(整理、整頓、清掃、清潔、素養、安全)を徹底させるには、毎
日仕事が終わった後、チーム全員が集まり、整理整頓がうまくできていない人が地面に画いてある「大きな
足跡」というマークの上に立って反省点を語る。これで自己管理に刺激を与えるのを目的としていた。だが、
最初にアメリカの工場で同じ施策を導入しようとした時には、
「人より劣ることで指摘を受けるのが人格的
な侮辱だ」
と反対の声が多かった。そこで、
管理者は「6S大足跡」の展開方法を、
人の前で自分の経験をシェ
アしてもらうように変えた。その後、海外の工場で同じやり方で展開してみたら反応が良かったため、中国
の工場でも反省会ではなく「褒める会」に変えたという。
時事通信社
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