モルタル塗壁の内部結露発生に関する研究 宮坂 和樹 指導教員 三森 敏司 1.はじめに 寒冷地において壁体内の結露を防止し、断熱性能及び木 材等の耐久性を維持するため、外壁における通気措置を行 うことが重要である。 表1 地域区分別室内・屋外条件 次世代省エネルギー基準の地域区分 室内条件(冬期) 地域の区分 都道府県名 本研究は横浜市にある F 社の、 『通断防』工法を仕様とし Ⅰ地域 北海道 -19.8 たモルタル塗壁の共同研究で、壁体内結露の発生の有無を Ⅱ地域 青森県 岩手県 秋田県 -8.2 確認する。なお一般的なモルタル塗壁の仕様である直張り 工法・通気工法と比較検討を行うものである。 温度 相対湿度 室外条件(冬期) 温度 相対湿度 宮城県 山形県 福島県 Ⅲ地域 -6 栃木県 新潟県 長野県 2.試験概要 茨城県 千葉県 東京都 2.1 試験体 15℃ 直張り工法、通気工法は一般的なモルタル塗壁(各n=1) 70% 70% 岐阜県 滋賀県 京都府 Ⅳ地域 -4.7 兵庫県 広島県 徳島県 の仕様とし、 『通断防』工法は壁内部の断熱材をロックウー 高知県 福岡県 等 ルと硬質ウレタンフォーム(アクアフォーム)の 2 種類(各 n=2)とした。図1に通断防工法 A(ロックウール)を示 Ⅴ地域 宮崎県 鹿児島県 1 す。 Ⅵ地域 沖縄県 11.8 2.2 試験方法 図 1 に示す試験体を環境試験室の開口部横長方向に設置 して試験を行う。試験の条件を表 1 に示す。冬期の室内条 件を 15℃、70%RH の一定条件とし、室外条件をⅠ の 6 地域のうち氷点下となるⅠ Ⅵ地域 Ⅳ地域の 4 地域に限定し て試験を行う。 図 2 に結露確認試験の流れを示す。試験体を設置したの ちファンを作動させ、試験体内部の温湿度が平衡状態にな るまで測定を継続する。平衡状態(5 日間温湿度が一定にな った状態)で内部結露が発生していないと考えられる場合 は、ファンを停止し測定を継続する。この状態でも内部結 露が発生していないと考えられる場合は、地域条件をⅢ地 ラスモル 15mm モルタル表層グラスファイバーネット 域に変更し測定し(ファンは作動させ、内部結露が発生し ない場合はファンを停止し測定する)、この繰り返しをⅠ地 域まで行う 試験体:①通断防工法 A(気密フィルム無し+ロックウール断熱材) :②通気工法 (気密フィルム無し+ロックウール断熱材) 図 1. 『通断防』工法 A:立面図 O.K 地域条件:Ⅳ地域 .ファン:作動 O.K 地域条件:Ⅳ地域 .ファン:停止 O.K 地域条件:Ⅲ地域 .ファン:作動 O.K 地域条件:Ⅲ地域 .ファン:停止 図 2. 結露確認試験の流れ 3.試験結果および考察 内部結露発生確認試験における結果を表 2 に示す。現段 階では、Ⅰ地域 Ⅳ地域すべてにおいて内部結露の発生は 認められなかった。 今回、自然換気と強制換気の二種類を行った。温湿度分 布図をみると換気方法による差はほとんどなかったが、湿 度は強制換気のほうが自然換気に比べると概ね低下する傾 向であった。 特に通気層部分は、自然換気に比べ湿度が 10%程度減少し 表 2. ており、強制換気による通気層内の湿気除去効果がはっき りと出ていた。 .. 試験結果 地域条件 換気方法 断熱材 各部材の湿度分布図の一例を図 3、図 4 に示す。断熱材に よる影響を受ける部分(合板裏 せっこうボード裏)でロ 結露発生 強制換気 内部結露なし 自然換気 内部結露なし 強制換気 内部結露なし 自然換気 内部結露なし 強制換気 内部結露なし 自然換気 内部結露なし 強制換気 内部結露なし 自然換気 内部結露なし Ⅳ地域 ロックウール ックウールの湿度が約 24%→約 62%まで上昇したのに対し、 断熱材 Ⅰ地域 充填発泡ウレタンは約 33%→約 46%となり、ロックウール に比べ湿度上昇を抑えていることが分かる。 今回使用されたロックウールと発泡ウレタンの温度分布 試験結果 Ⅳ地域 充填発泡ウレ から両者の差はほとんどなく、このことから断熱性能にお タン断熱材 いては両者の差はほとんどないと考えられる。しかし、発 Ⅰ地域 泡ウレタンはロックウールより湿度の上昇を抑えており、 このことからロックウールより充填発泡ウレタンのほうが 防湿性能は高いことが分かる。 一方、発泡プラスチック系断熱材は一般的に水や湿気を 通さないといわれているが、実際には吸湿性や透湿性があ 湿 度 % るので、正しい施工が行われなければ結露は発生する可能 性が大きい。また、隙間ができやすい性質があり、経年形 状変化などによっても隙間が発生することがある。このよ うな隙間から、また材料そのものの透湿性により湿気が侵 入してしまい、材料特性上排出が行われず結露してしまう ことがある。 4.まとめ 『通断防』工法においてロックウール断熱材、充填発泡 ウレタン断熱材を内部に充填した2種類の試験体で地域条 件Ⅳ(関東地域)から地域条件Ⅰ(北海道地域)で結露試 図 3. Ⅳ地域湿度分布/強制換気(ロックウール) 時間h 験を行った結果、現段階では試験体内部で湿度 90%を上回 る事はなく、内部結露の発生は認められない。また、試験 体のモルタルおよびせっこうボード表面にも結露の発生は 認められなかった。 湿 度 % 5.今後の課題 現在行っている通断防工法の二種(ロックウール・発泡 ウレタン)の試験が終了次第、直ばり工法と通気工法のパ ネルを環境試験室に設置し、試験を継続する。今後は防水 層を外し、結露が発生する条件で試験を行う予定である。 なお、現在ものづくり住宅の壁体に、今回使用した試験 体と同一のものを施行しているので、データを測定し今回 の実験室の試験の結果と比較検討することを期待したい。 また、全試験終了後に4体のパネルを組み合わせた屋外 実暴露を行う予定である。 図 4. Ⅳ地域湿度分布/強制換気(発泡ウレタン) 時間h
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