【平成17年度・第4回「環境NPO助成」活動概要報告③】 活動名 「バイオ方式空気浄化システム(バイオ脱臭装置)の研究・開発」 特定非営利活動法人 信州松本アルプスの風 バイオマス・リサイクル研究会長 下 平 利 和 1.活動の目的 (1)社会的背景 〔屋内対応〕不況といわれる中で脱臭・消臭関連の商品は市場を拡大している。さらに今後は、高齢化 社会から生まれるニーズも吸収し、2010年には100億円を超える市場と予測されている。一方、高齢者福 祉施設や病院、飲食店など多くの市場でニオイに悩み、対策に苦慮しているのが現状である。 〔屋外対応〕環境問題への関心の高まりと共に、国、自治体、企業は環境負荷の低減を目的とした政策 及び対策を打ち出し、積極的な環境改善に向けた取り組みを強化している。一方、悪臭に係わる苦情件 数は悪臭防止法が施行されてからも増加の一途をたどり(平成16年度調べ)、悪臭対策に対するニーズも 年々増加、多様化している。特に農村部では、畜産や堆肥施設を発生源とする悪臭の苦情が多い上、有 効な対策がなく、社会問題となっている。 (2)活動の目的 本活動の動機は上述の社会的な背景に鑑みてのものであり、目的とするところは、以下のa、b、c の効果を有し、運転、維持管理が易しく、イニシャル・ランニングコストが安価なバイオ方式空気浄化 システム(脱臭装置)を研究・開発し、これを屋内・外の空気浄化(脱臭)市場に提供し、多様化する 汚染空気(悪臭)対策に対する社会的要請に応えることにある。 a. 常時発生する臭気や低濃度から高濃度の広範囲の臭気に対しても安定した脱臭効果がある。 b.多くの種類の悪臭成分にも高い脱臭効果がある。 c.悪臭物質の他、シックハウス汚染物質、タバコの煙、ディーゼル排ガス、カビ、雑菌など、有害 な粒子状、ガス状の物質にも除去効果がある。 2.当該空気浄化システムの機能・原理 当該空気浄化システム(バイオ脱臭装置)の機能・原理を図.1に示す。 3.当該空気浄化システムの特徴 当該空気浄化システム(バイオ脱臭装置)の新規性の高い技術的要素として、以下の特徴を有する。 ① 充てん塔式生物脱臭法、土壌脱臭法、植栽脱臭法の3つの脱臭法を組み合わせて採用する。 ② 充てん塔式生物脱臭層の上方に土壌脱臭層を設け、土壌脱臭層を通過した養分を含む水を充てん 塔式生物脱臭層に散水する。 ③ 散水により充てん塔式生物脱臭層を通過し、通過時に微生物により水質浄化された水を循環して、 再び土壌脱臭層に散水する。但し、循環水の水質浄化が不十分な場合は、水質浄化専用の生物ろ 過層等を設ける。 ④ 屋内対応としての当該空気浄化システムには、充てん塔式生物脱臭層に生物活性炭、土壌脱臭層 に土臭やカビ臭等の原因となる悪い微生物を取り除いた清潔な人工土壌(ハイドロカルチャー) を使用する。 ⑤ 屋外対応としての当該空気浄化システムには、散水に使用する水に残留塩素を含まない雨水や融 雪水を、土壌脱臭層に人工土壌や培養土等を使用する。 4.期待される効果 当該空気浄化システムは、従来の多くの脱臭方法の中でイニシャル・ランニングコストが最も安価な 土壌脱臭法と、濃度変動の大きい臭気や高濃度の臭気に対しても脱臭効果が安定性に富み、土壌脱臭法 同様イニシャル・ランニングコストが安価で経済性に優れ、実績のある充てん塔式生物脱臭法とを組み 合わせて採用し、併せて低濃度の多くの種類の悪臭成分に脱臭効果のある植栽脱臭法を用いた、等によ り、以下①~⑦の効果を有し、運転、維持管理が易しく、イニシャル・ランニングコストが安価なバイ オ方式空気浄化システム(バイオ脱臭装置)を屋内・外の空気浄化(脱臭)市場に提供することが可能 となり、多様化する汚染空気(悪臭)対策に対する社会的要請に応えることができる。 ① 常時発生する臭気や低濃度から高濃度の広範囲の臭気に対しても安定した脱臭効果がある。 ② 多くの種類の悪臭成分にも高い脱臭効果がある。 ③ 悪臭物質の他、シックハウス汚染物質、タバコの煙、ディーゼル排ガス、カビ、雑菌など、有害 な粒子状、ガス状の物質にも除去効果がある。 ④ 特に、植物の根を中心に生息するVA菌根菌(土壌改良材の微生物資材としてH9.3 農水省政令指 定)等により、従来の空気浄化装置では除去することができなかった窒素酸化物、りん酸化合物、 一酸化炭素、硫黄酸化物等に対しても除去効果がある。 ⑤ 井戸水や地中は夏冷たく、冬暖かいことは昔より良く知られている。これと同様に当該空気浄化 システムの排気と散水は、地熱(土壌と生物担体)と生体熱(植栽と微生物)により夏冷たく、 冬暖かいため、夏の冷気効果、冬の暖気効果があり、夏場のヒートアイランド対策、冬場の融雪 対策、地表凍結防止対策に有効である。〔特に屋外〕 ⑥ 環気中が乾燥状態の場合は、連続散水と通気状態にすれば加湿効果があり、環気中が著しく湿潤 状態の場合は、散水を止め通気状態にすれば除湿効果(結露防止効果)があり、自然の一定の湿 度を連続的に確保することが可能である。〔特に屋内〕 ⑦ その他にマイナスイオン放出効果、植栽のフィトケミカル放出によるカビや浮遊微生物の抑制効 果、観賞用植栽と噴水や水音(水琴窟等)による癒しの効果を容易に演出することが可能である。 5.活動内容 当該空気浄化システムの1号機、2号機を設計・製作し、これを使って実証実験をし、空気浄化(脱 臭)効果、イニシャル・ランニングコスト、維持管理の容易さ等について検証した。 活動内容の一例を記録写真(1/2)、 (2/2)に示す。 6.活動結果 当該空気浄化システムは、生物活性炭脱臭、人工土壌脱臭、植栽脱臭を連動して行い、各々の相乗(相 加)作用で循環水を含めた生態系が活性化され、各々の脱臭効果が高まることが考えられる。今回の実 証実験では、タバコの煙(粒子状物質) 、自動車排ガス、生ごみ臭、し尿臭、アンモニア臭、酢酸(酪酸、 吉草酸)臭を用いて、当該空気浄化システムの空気浄化効果を調査した。その結果、従来の技術にはな かった空気浄化効果を確認することができた。特に生ごみ臭やし尿臭などの有機質の臭気に有効であり、 10 秒以下のきわめて短い接触時間でも 90%以上の除去効果があることが確認された。 詳細は【平成17年度・第 4 回「環境NPO助成」事業報告】に掲載。 なお、当研究会では、当該空気浄化システムを「21 世紀の空気調和(浄化)システム」の原型として捉 え、加湿・除湿効果やヒートアイランド対策の有効性等についても、引き続き研究・開発中である。 以上 生物環境模擬 270 人体模擬 浄化空気 雨水(散水) 散水 50 植 栽 100 落水 土壌脱臭槽 人工土壌 口・鼻 (排気) 森 林 浸透 (ハイドロカルチャー) 250 地 表 土 壌 肺(空気浄化) 土壌中 空隙 口・鼻(吸気) 充てん塔式 生物活性炭槽 750 吸気ファン 汚染空気 プリナムチャンバー 175 循環水処理 生物ろ床 生物膜フィルター 175 貯水タンク 貯水タンク 地下 土壌 地下水 水中ポンプ 単位:mm 図.1 バイオ方式空気浄化システム(バイオ脱臭装置) 腎臓・肝臓 (水質浄化) 心臓(水中ポンプ) 血液(水) 記録写真(1/2) 2 号 機 実証実験 生態系 馴養 実証実験 生態系 馴養 実証実験 生態系 馴養 実証実験 生態系 馴養 実証実験 排気側 空気測定(ガス) 実証実験 排気側 空気測定(粒子状物質) 記録写真(2/2) 1 号 機 人工土壌槽 散水実験 人工土壌槽 散水実験 人工土壌槽 散水実験 実証実験 生態系 馴養 人工土壌・植栽 実験 1号機 改良前 手で水やり 実証実験 生態系 馴養 生物脱臭槽 担体 実験 人工土壌・植栽 実験
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