最先端技術と次世代エレクトロニクス製品

e
YOUR ELECTRONICS MAGAZINE ISSUE 9
最先端技術と次世代エレクトロニクス製品
rswww.co.jp/electronics 045-335-8888
テストベンチを、もっと便利に
複雑な設計の面倒なデバックをより簡単に
NEW
デバックは非常に手間のかかる作業ですので、せめてテスト機材の操作くらいはシンプルに済ませたいものです。テクトロニクスのテスト機器には、共
通ファンクションボタンからUSBポートへの保存まで、あなたがオシロスコープに追い求めていた使い易さがあります。同梱のNational Instruments
社の自動評価ツール「LaVIEW SignalExpress(TM)」を使えば、あなたのPCからTektronix機器のコントロールが行えます。これにより複数機器にま
たがる計測・分析、およびその結果報告が自動で行え、あなたの手間を大幅に簡素化します。複雑で手間のかかるテストベンチが非常に効果的に行
えるようになります。
ベーシックオシロスコープ
ハンドヘルドオシロスコープNEW!
■ 最大25種類の自動測定機能
■ 絶縁チャンネル
■ 1 / 2チャンネルモード
■ 40 MHz∼500 MHz の帯域幅
■ バッテリ駆動対応*
*一部モデルのみ。
ベンチオシロスコープ
■ 100 MHz∼1 GHzの帯域幅
■ 最大20MBのレコード長
■ アナログは最大4チャンネル、デジタルは16
■ 100 MHz∼200 MHzの帯域幅
任意波形 / ファンクションジェネレータ
■ 最大240 MHzの帯域幅
■ CAT III 600 V安全定格
■ 12種類の標準波形(任意波形含む)
デジタルマルチメータ
電源装置NEW拡張レンジ!
■ デュアルディスプレイ
■ 最大0.5 mV / 0.1 mAの分解能
■ 5.5桁 / 6.5桁の分解能
■ 統計、ヒストグラム、
トレンドモード
チャンネル
■ パラレル / シリアル・バス解析
■ Wave Inspector ®でデータの高速ナビゲーシ
ョンを実現
■ 最大72 Vの出力範囲
■ シングル、デュアル、
トリプル出力
タイマ / カウンタ / アナライザ
■ 12桁/sの周波数分解能
■ 50psの時間分解能
■ 測定統計、ヒストグラム、
トレンドプロット
www.rs-components.com/tektronix
© 2009 Tektronix, Inc. All rights reserved. Tektronix製品は米国特許 / 外国特許を取得済み、又は特許出願中です。TEKTRONIX、TektronixロゴはNational Instrumentsの登録商標であり、LabVIEW SignalExpressは同社の商標です。
現在、エレクトロニクス産業は最も研究や開発の進んでいる産業の一つと
考えられ、マスコミなどではエレクトロニクス技術の絶え間ない改良や開発
を「最先端技術」などといった言葉で紹介をしています。先端技術専門の
メディアの影響か、それらの技術はハイテクを好む技術者の間では「おしゃ
れ」なものとして受け取られ、一部の製品やブランドは、まるでファッション
の一部のように実装されるようにまでなっています。
このようなハイテク産業の最先端を追い続けることは、我々にとっても大変
刺激的でやりがいのあることです。
しかしながら、その一方でこれらの高度
な新技術が、実は先端技術とはほど遠い、昔ながらの基本的なパーツ・装置
やツール、またロジック・手法で支えられていることも少なくありません。
そこで本号では、あえて様々なエレクトロニクスの設計に共通して使用され
る基本的な部品や技術に焦点を当てました。極めて単純な部品・ツール・電
源装置・安全装置・テスト測定装置など、このような基本的な構成部品は、あ
らゆる実験やテスト環境、また開発現場で必需品とされています。進化し続
けるエレクトロニクス分野では、このような基本的なアイテムでさえ日々改
良され続けているのです。
それでは、本号のeTechをお楽しみください。
Glenn Jarrett (グレン・ジャレット)
Head of Electronics Marketing
twitter.com/RSJapanMK
諸条件: 販売の取引条件は、本号発行時の
RSカタログで提示されているものです。
本号は、2012年1月から2012年3月ま
で有効です。
発行元: RS Components Limited.
登録事務所:
Birchington Road, Weldon,
Corby, Northamptonshire
NN17 9RS。登録番号 1002091。
RS Components Ltd 2011. RSは
RSはRS Components Limited. の
商標です。電子部品会社。
ELE_0034_0112
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RSニュースライン
業界ニュース
汎用マイコンのコアの集束
製品ニュース
開発ボード
省エネ化でエコに貢献
メモリの未来
日本のディスプレイ産業
RSは”embedded world
2012”に出展します。
詳細は、次のページをご覧ください。
www.embedded-world.de
部品ライブラリ
DESIGNチップ: 低コストヘッドホンアンプ
スタンダードコネクタの絶え間ない進化 - MOLEX
ELECTRONICS EXTRAS
GOOGLE ADK
コネクタテクノロジー
タブレット版
DESIGNSPARK.COM
iSAY
eTech - 第9号
03
RS
ニュースライン
ラボの精度。生産ラインの速度。
幅広い選択肢。
Agilent
34405A
エコノミーモデル
Agilent
34401A
業界標準モデル
Agilent
34411A
最先端モデル
優れた速度と精度で革新を推進
Agilentデジタルマルチメータは、R&Dや製造試験の迅
速化と効率化に貢献する数多くの機能を搭載していま
す。卓越したバリューとパフォーマンスを発揮するデジ
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© 2011 Agilent Technologies, Inc.
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東海大ソーラーカーチーム
ワールド・ソーラー・チャレンジ 2011で2連覇達成
RSが支援した東海大学チームは、世界最大級のソーラーカーレースで優勝。
RS コンポーネンツがスポンサーとなっている東海大学
のソーラーカーチームが、オーストラリアで開催されたソ
ーラーカーレースの世界大会「ワールドソーラーチャレ
ンジ(WSC)」で、昨年に続き2連覇を達成しました。
同大会は、2011年10月16日から23日に開催され、オースト
ラリア北部のダーウィンからアデレードまでの3,000 kmを
走行するものです。5番手からスタートした東海チャレンジャ
ーは、その後順調に走行し、10月20日の午後1時22分、スタ
ートから32時間45分でトップでゴールを駆け抜けました。
この東海チャレンジャーには、日本発の様々な最先端技術が
搭載されていました。動力源としては高性能なエネルギー変
換率を誇るHIT太陽電池が使用されています。また高容量リ
チウムイオン電池もパナソニックから提供されています。さ
らにボディには、東レ製の炭素繊維素材を使用することで、車
体重量を140 kgに軽量化することを実現できました。
チームを指導した東海大学の木村英樹教授は、
「日本の技術を結集
して世界に挑戦した結果です。チームを支援してくれた企業の皆
様、大学関係、学生に感謝します」と述べました。このような素晴ら
しい偉業に敬服すると同時に、熱意溢れる有意義なチャレンジを多
少ともサポートできたことを、RSとしても喜ばしく思っています。
スイスのRSオンライン、スイス
フラン通貨が利用可能に。
主要メーカーの550,000点を超える製品を、スイスフランを
使用してオンラインで購入できるようになりました。
今月、スイスのお客様がこれまでよりも簡単にオンライン購入できるよ
う、スイス向けWebサイトを変更します。主要メーカーの550,000
点を超える電子、オートメーション、メンテナンス製品を、スイスフ
ランを使用してオンラインで購入できるようになりました。
2010年に開設したスイスのRSオンラインを便利に利用していただいて
いるお客様が多数いらっしゃることが、最近実施したアンケートにより判明
しました。スイスフランでの購入を可能にするなど、RSではオンライン購
入を強化するなど、今後もスイス市場への取り組みを継続していきます。
スイスのRSオンラインへは、
www.rsonline.chからアクセスできます。
eTech - 第9号
05
ファクトリーオートメーション
業界
ニュース
ビルオートメーション
医療
照明を媒介としたデータ転送
エネルギー
自動車
Isolde Rötzer氏
可視光通信(VLC:visible light
communication)では、少数のコンポ
ーネントを追加するだけで通常のLED
を照明無線LA Nに変換できます。照明
無線LA NとなったLEDは、単なる照明
装置の他に、データ転送装置としても機
能します。HD品質の映画を、品質を落
とすことなく、迅速かつ安全にiPhone
やノートパソコンに転送できます。
例
えば、4人の人間が部屋でくつろいでい
る様子を想像してみてください。4人は
それぞれのノートパソコンを使用して、HD品
質の映画をインターネット経由で見ることがで
きます。これを可能にするのが照明無線LAN
です。LED照明の光が転送媒介として機能し
ます。これは、これまで長い間、未来の技術と
考えられてきました。しかし、ベルリン(ドイツ)
にあるハインリヒヘルツ研究所(HHI)、フラウ
ンホーファー通信研究所の科学者が、EUの
OMEGAプロジェクトで映像データの新しい
転送技術を開発したことで、近い将来、現実
世界での実装も可能になります。一昨年5月
末、この研究チームはフランスのレンヌでこ
の素晴らしい研究成果を発表しました。それ
は、10平方メートル以上を照らす天井
のLED照明を使用して、データ損失を
一切発生させることなく、100 mbps
の速度でデータを転送することに成功
したというものでした。しかもこの受
信機は、この10平方メートルの範囲内
(現時点での最大範囲)であればどこに
でも置くことができたのです。
「つま
り、4つのHD品質の映像を4つの異な
るノートパソコンに同時に転送すること
に成功したということです」と HHIの
Anagnostis Paraskevopoulos
博士は述べています。
「業界パートナーのSiemensとFrance
Telecom Orange Labsと協力して可視光
通信(VLC)の基礎を築きました」HHIでは、チ
ームプロジェクトマネージャのKlaus-Dieter
Langer氏がさらに新しい技術の開発を進め
ています。
「VLCでは、光源(この場合は白色
LED)は、部屋の照明になるだけでなく、情報
を転送するための媒介となります。変調器と
いう特別なコンポーネントを使用して、LED
のオン/オフを高速で連続的に切り替えて、情
報を1と0として転送します。光の変調は、人
間の目では認識できません。ノートパソコンに
搭載された単純なフォトダイオードが受信機と
して機能します。Klaus-Dieter Langer氏
は次のように説明します。
「ダイオードが光を
受信し、電子機器が情報をデコードし、それを
電気インパルス、つまり機械言語に変換しま
す」これの利点は、少数のコンポーネントを使
用してLEDを転送媒介として機能させること
ができる点です。欠点は、光とフォトダイオー
ドの間に障害物があると(ダイオードの上に手
をかざした場合など)、転送障害が発生するこ
とです。ノートパソコン、PDA、携帯電話など
を端末機器として使用できるようになります。
VLCは通常の無 LAN、PowerLAN、
UMTSを置き換える技術ではないと研究
チームは強調しています。無線転送ネット
ワークが望ましくない、または利用できない
場所で、屋内に新たなケーブルや装置を設
置せずにデータを転送するための代替手段
として最適であると考えています。照明無
線LANを一方向に、PowerLanをリター
ンチャネルに使用するなど、組み合わせて
使用することもできます。この方法により、
映画をコンピュータに転送して再生したり、
別のコンピュータに転送したりできます。
この新しい転送技術は、無線転送が許可され
ていない病院などでの利用に最適です。専
門家によると、高いデータ速度で、損失を発
06
eTech - 第9号
Omron
生させることなく、そして圧縮することなく、
転送する必要があります。手術室の照明を介
して一部の通信を行うことができれば、ワイ
ヤレスの手術用ロボットを制御したり、
レント
ゲン画像を転送したりすることが可能になり
ます。飛行機では、飛行機製造会社が数マイ
ルものケーブルを用意することなく、乗客一
人一人がそれぞれのディスプレイでエンター
テインメントコンテンツを観賞できます。こ
の技術のその他の活用方法としては、無線転
送が製造プロセスに干渉してしまうような製
造施設での使用も挙げることができます。
現在、研究チームはシステムのビットレートを
上げるための開発を進めています。KlausDieter Langer氏は「研究室では、赤色、青
色、緑色、白色LEDを使用して800 Mbps
の伝送に成功しました」と述べています。
Switch Solutions
オムロンは、品質の高精度マイクロスイッチをはじめ、タクタイルスイッチ、ディップスイ
ッチなどあらゆる用途に対応できるスイッチをご提供しています
マイクロスイッチには、一般形、軽トルクシール形スイッチをはじめ、各種業界に特有のモデルが
あります。
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V は、10A から 21A タイプまで揃えた信頼性・安全性を追求した小形基本スイッチです。長寿命スイ
ッチが必要な用途で広く使用されています。
D3SH は、独自の接点機構で高接触信頼性と優れた動作位置制度を実現した超小形、超薄型のサー
フェスマウントスイッチです。
タクタイルスイッチには、標準タイプ、照光タイプ、シールタイプ、タクタイルスイッチ用キートップ、
ドームアレイタイプなど幅広い製品があります。
B3D は、異物に強いオムロン独自の円状線接触(サークルタッチ)を採用した超薄形ドームキーです。
B3W-9 は、LED 2灯の小形照光スイッチです。
B3AL は、過酷な用途に適した小形ロングストロークスイッチです。
ディップスイッチの製品には、ロータリーディップスイッチ、ピアノディップスイッチ、スライドディッ
プスイッチがあります。ディップスイッチ製品群に新しい製品が追加されました。
A6SN は、接触圧力を高くすることで接触信頼性が向上された業界最先端のスイッチです。シールテー
プ無しで洗浄が可能です。
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汎用マイコンのコアの集束
Marketing Engineer、Dave Pike氏
用マイクロコントローラ(MCU)はいまやコモディティ製品である、と
汎
いったら言い過ぎかもしれません。しかし、
「共通」または「オープン」
なアーキテクチャを共有するプロセッサコアを使用する傾向が高まってい
ることは、この事実の大きな裏付けの1つとなっています。現在でも数多く
のMCUベンダーが存在していますが、32ビットMCUの多くのロードマッ
プは、ARMが開発したプロセッサコアをベースにしているようです。
08
eTech - 第9号
1970年代初頭に発明及び初めて製造され
て以来、MCUは数多くの半導体企業によって
設計及び製造されてきましたが、これらの企業
は、MCU製品ラインを主に独自アーキテクチャ
をベースに開発してきました。とりわけ、ルネサ
スのH8、STMicroelectronicsのST6/7
、MicrochipのPICなどがある8ビットの市場
や、ルネサスのR32/SuperH、Freescaleの
Power Architecture、TexasInstruments
のC28xなどがある32ビットの市場
ではその傾向が顕著でした。
・Texas Instruments (TI) Stellarisなど、複
数の主要半導体メーカーが採用しています。これ
らの主要メーカーは、現在でもASICやASSPの
開発プログラムのメンテナンスを続けているもの
の、ハイエンド製品でのARMコア(Cortex-A8
やA9など)の採用が進んでおり、汎用MCUのロ
ードマップもCortex-Mコアをベースにしたもの
が増えています。興味深いことに、2011年半
ば、TIは自社独自のC28xコアとCortex-M3の
両方を統合して周辺装置を制御するデュアルコ
ア32ビットMCUシリーズをリリースしました。
しかしここ10年間では、独自の占有コアを開発
ではなく、コアのアーキテクチャのライセンスを
ARMやMIPSなどのIP企業から取得する傾向が
シリコンベンダーの間で高まっています。ARMと
MIPSは、PCマイクロプロセッサソケットを除く、
さまざまな組み込み市場及びアプリケーション向
けの高度なマイクロプロセッサ、ASIC、ASSPの
主要設計をめぐって真っ向から競ってきました。
その他のCortexファミリであるM0とM4を採用
した新ファミリも増えています。M0はARMがリリ
ースした最も小さくて、コードがコンパクトで、エネ
ルギー効率の高いコアです。M4はM3のDSP機
能を拡張したものです。NXP、ST、Freescale
は、ここ1年の間に、M4ベースのKinetisファミリ
を発表しました。
また、NXPとSTはCortex-M0
バージョンもリリースまたは発表しました。ARM
によると、Cortex-Mファミリ(M0、M3、M4
プロセッサコアを含む)の合計ライセンス数は、
現時点で3桁に迫る数字となっています。
ARMへの集中
現在は、ARMがリードしており、プロセッサコア
市場の最大のシェアを獲得しています。特にモバ
イルワイヤレス設計においては大きくリードして
います。
これは、ARMのアーキテクチャが業界
をリードする低消費電力を誇り、優れたコンパイ
ル済みコード密度が得られるためです。ARMの
Thumb命令セットは、ARM7TDMIコアに初め
て導入され、必要となるメモリを大幅に削減する
ことに成功しました。現在製造されている事実上
すべての携帯電話またはスマートフォンにARM
コアが搭載されています。また、ARMアーキテ
クチャは産業・PC・コンシューマー向けのASIC、
更にはASSPでも急速に普及しています。
Cortex-Mファミリ
汎用MCU市場では、ここ5年間で急速に統合が
進み、マイクロプロセッサコアを提供するベンダ
ーとしてはARMが首位に躍り出ました。複数の
ベンダーがARM7TDMIをベースにしたMCUフ
ァミリをリリースし、その中の一部のベンダーはそ
の後ARM9TDMIをベースにした製品をリリース
しています。しかし、飛躍的進歩をもたらしたのは
Cortex-Mファミリ、特にCortex-M3でした。
2004年にリリースされたCortex-M3コア
は、MCUへの実装を目的としており、業界をリ
ードする汎用32ビットMCUプロセッサとして、
非常に広範囲の市場で使用されています。
今日ではNXP (LPC1x00)
・STMICROELECTRONICS (ST) STM32
しかし例外もあるようで、少なくとも主要MCUベ
ンダーであるMicrochipは、32ビットPIC MCU
ロードマップをMIPS M4K32ビットプロセッサ
コアをベースにしています。PICは(特にユニッ
ト数においては)、依然として8ビットでの主要な
アーキテクチャとなっています。大学の工学部で
はPIC MCUが一般的に採用されているため、
半導体業界に就職する学生の多くがPIC MCU
に慣れ親しんでいます。
このことは間違いなく
Microchipにとってアドバンテージになります。
8ビット市場への侵食
8ビット市場もいずれは高パフォーマンスで低コス
トの32ビットデバイスに侵食されると考えられて
きました。しかし、データ幅の小さい製品に対する
需要も依然として高く、消費者製品、家庭用製品、
医療機器などで電子機器が使われる機会が継続
的に増加しているため、8ビットデバイスの新しい
用途も出現しています。ただし、32ビットデバイ
スがより高度な分野にまで進出しているため、8ビ
ット及び16ビットのMCU市場は縮小しています。
最新の32ビットMCUは、チップあたり1ドル以下
という低コストで、機能が大幅に強化されており、
さまざまなオンチップ周辺装置を備えています。
10ページに続く >
eTech - 第9号
09
< 9ページからの続き
共通アーキテクチャへの移行
MCUベンダーが独自アーキテクチャから共通ア
ーキテクチャに移行するには、当然考慮すべき
課題や問題が数多くあります。ハードウェア、ソ
フトウェア、開発ツールに対する長年の投資を放
棄することは簡単ではありません。また、特定の
MCUアーキテクチャ向けに開発されたロードマ
ップやレガシーコードを採用す
るお客様に対して、オープンア
ーキテクチャへの移行を提案
するのも簡単ではありません。
とはいえオープンアーキテク
チャによりお客様は多数の恩
恵(ベンダーの選択肢増加・コス
ト・パフォーマンス・対応周辺機
器の柔軟性)を受けることがで
きます。例えば、Cortex-M3
ベースのMCUがすべて同
一となるわけではありません
が、別のベンダーへの移行は
簡単とまではいえないもの
の、大幅に異なる専有アーキ
テクチャ間での移行よりは簡
単になるはずです。また、厳
しい経済状況の中、ここ数年の間にMCUベン
ダーの大規模な統合もありました。特に産業
市場においては、お客様は今後10~15年以
上使用できるプロセッサを必要としています。
したがって、共通アーキテクチャは陳腐化に
対する強力な保護となる可能性があります。
現在製造されているほぼす
べての携帯電話やスマートフ
ォンにARMコアが搭載され
ています。ARMアーキテク
チャは、産業向けのASICと
ASSP、コンピュータ及びコ
ンシューマアプリケーション
で急速に成長しています。
もう1つの利点は、使用できるソフトウェアライ
ブラリが豊富に用意されているため、製品化に
要する時間を短縮できる点です。ARMの共通
アーキテクチャに移行すれば、主なサードパーテ
ィツールベンダーが提供するARMベースのさ
まざまな開発/デバッグツールも使用できます。
周辺装置に基づく選択
ARMの「非専有アーキテクチャ」または「オー
プンアーキテクチャ」をベースに製品ポートフ
ォリオを構築する傾向が主流になれば、MCU
ベンダーは他の方法により自社製品を差別化
しなければなりません。MCUを選択する際に
は、マイクロプロセッサコア、速度、メモリ、周
辺装置の選択、価格、開発ツール、オペレーテ
ィングシステム、ソフトウェアのサポートなど、
さまざまな要因が基準となります。どのプロセ
ッサコアを選ぶかが、その他のオプションを決
定(もしくは少なくとも影響)するはずです。
しかし市場の動向を見る限りでは、MCUのコ
ア機能よりも、周辺装置の選択の方が重要な決
10
eTech - 第9号
定要因となっているようです。周辺装置は、特
定の用途においては間違いなく重要な選択基
準となります。ARM Cortexファミリへの「集
中」(プロセッサコアの共通化)を受けて、さまざ
まな周辺装置を備えた「多様」なソリューション
が提供されるニッチ市場が形成されるかもしれ
ません。そのニッチ市場では、主なMCU市場
(I2S出力が必須となる高品質オーディオ市場
など)ごとに、2~3社の主要ベンダーが製品を
提供することになります。そして、メインストリ
ーム市場で似たようなメモリ、I/O、ワイヤレス
オプションを提供する大多数のベンダーが価格
競争を繰り広げることになります。これが、数年
後のMCU市場の状況となるかもしれません。
顧客の差別化
半導体ベンダーがどれだけ顧客による自社製
品の差別化を容易にするかによって、その後の
市場の状況が決まるかも知れません。たとえば
NXPは、mbedボードをベースにした低コスト
の開発を行っています。つまりNXPでは、大勢
のエンジニアが、さまざまな周辺装置のドライ
バとなるアプリケーションコードやプロトコルス
タックを大量に開発しています。その結果、顧
客は下位レベルのドライバやプロトコルスタッ
クについて心配することなく、製品を差別化す
るソフトウェアに集中できます。このような例
はNXPだけではありません。Freescaleには
Kinetis Towerのコミュニティがあり、TIに
はBeagleBoardのコミュニティがあります。
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RS online rswww.co.jp
製品
ニュース
STMICROELECTRONICS
STM32F4ディスカバリキット
M4 cortex高性能評価ボード。
STM32F4ディスカバリキットは、32ビ
ットARM Cortex-M4コア搭載の新しい
STM32F4シリーズのマイクロコントローラ
を使用したアプリケーションの設計をすばやく
安価に開始することができます。キットには、
速やかなデバッグ及びプログラミングを可能に
するST-LINK/V2組み込みツール、MEMS
モーションセンサ、MEMSデジタルマイクとク
ラスDスピーカドライバ内蔵オーディオDAC、
インジケータLED、プッシュボタン、及びUSB
OTGマイクロABコネクタが含まれています。
RSオンライン検索ワード:
STM32F4DISCOVERY
NXP LPC11XXシリーズ
M0 CORTEXプロセッサ
製品
ニュース
パナソニックEEUFR1シリーズ
最も低い有効電力と優れたコード密度
のCortex-M0マイクロコントローラ。
ラジアルリード形アルミニ
ウム電解コンデンサ。
Cortex-M0アーキテクチャをベースに
した、最も小さく、最も消費電力が低く、最
もエネルギー効率の高いARMコアです。
これらのマイクロコントローラは、従来の
8 / 16ビットアプリケーションの多くで
低コストな代替品として使用できます。デ
バイスでは、高性能、低消費電力、簡単な
命令セット及びメモリアドレッシングに加
え、8 / 16ビットアーキテクチャと比べて
小さいコードサイズが実現されています。
RSオンライン検索ワード: LPC1111
パナソニックの最新のEEU-FR1シリーズ
コンデンサは、先端の材料技術を採用した
ことで超低ESR及び長寿命(最大10,000
時間 @ 105 °
C)を実現しました。スイッチ
ングモードアダプタ、ラインノイズ除去、長寿
命が求められるその他の製品に適していま
す。RSオンライン検索ワード: EEUFR1C
HARTING HARAX
円形コネクタ
M12-Lシールド付き2103シリーズ。
n Hartingのモジュラ型RJイーサネットコ
ネクタシステムは、産業用途や過酷な環境
で信頼性の高いデータ接続を実現します。
22AWGケーブルを接続可能な最小型の
RJ45イーサネットケーブルの1つをベース
にしていて、現場で1分以内に迅速に組み
立てることができます。
RSオンライン検索ワード: 2103 281
MICROCHIP PIC32MX
オーディオ開発ボード
高品質な24ビットオーディオアプリケ
ーション製作用の32ビットマイクロコ
ントローラベースの開発キットです。
STMICROELECTRONICS
STM32F4 ARM CORTEX
M4コアマイクロプロセッサ
168 MHz ARM Cortex-M4、
DSP及びFPU装備。
STM32F4マイクロコントローラファ
ミリは、高度な信号処理能力と、浮動小
数点演算装置(FPU)を装備したARM
Cortex-M4プロセッサのパワーとのシナ
ジーを活用することで、デジタルシグナル
コントローラ(DSC)市場への応用範囲を広
げることができます。デバイスは、POS、
オートメーション、輸送、テスト / 測定、医
療、セキュリティ、コンシューマ製品、通信な
どの演算処理の多い用途に適しています。
RSオンライン検索ワード: STM32F4
n Microchipのオーディオ開発ボード
は、80 MIPS PIC32 MCU、24ビット
Wolfsono-dexioコーデック、2インチカ
ラーLCD、USBインターフェイス、オンボ
ードマイクで構成されています。キットは、
オーディオ録音 / 再生製品開発用の柔軟性
の高いプラットフォームを提供し、USBデジ
タルオーディオ、MP3デコード、及びサンプ
ルレート変換などの機能を備えています。
RSオンライン検索ワード: DM320011
BOURNS CRM2512
シリーズ、パルス抵
抗電源抵抗器
非常にワイドな抵抗範囲
CRM2512シリーズは、標準的な2512
チップ形式の定格2Wの大電力厚膜抵抗
器です。この製品の抵抗範囲は非常に幅
広いため、電流検出や突入電流制限など、
電源回路での用途に適しています。RS
オンライン検索ワード: CRM2512
AGILENT DC電源
U8031A (2x 30 V / 6 A、5 V / 3 A)、
U8032A (2x 60 V / 3 A、5 V / 3 A)。
TE Connectivity DPL12シリーズ
Agilent TechnologiesのU803XAは、高出力の操作電
源です。高出力を提供する2つの可変チャンネルと1つの固
定チャンネルで構成されています。フロントパネルのアナログ
式プログラミング機能により、電力設定を事前に調整したり、1
つのボタンで簡単に実行することができます。電子製品の製
造、教育、電気製品の製造現場向けに開発されていて、電圧及
び電流用のデュアルチャネルLCD、優れた負荷調整(0.01 %
±2 mV)、≤1 mVrmsの低出力ノイズ(0.5 mVrms標準)
、50 usec未満の過渡応答などの特長を備えています。
RSオンライン検索ワード: U8031A、U8032A
12
eTech - 第9号
豊富なオプションを取り揃えた12 mm水平型
ロータリLEDエンコーダシリーズです。
電源、インバータ、サーボシステムなどの用途向けのシリーズで、LEDの色、
スナップインタイプと基板実装タイプ、ローレット加工または平型プラスチック
シャフトタイプ、コンタクトは100 mohm (最大) @ 定格0.5 mA 5 VDC、
定格10 mA 5 Vdcのオプションの押しボタンスイッチ、スイッチなしのシ
ングルLEDタイプとスイッチありのデュアルLEDタイプを選択可能です。
RSオンライン検索ワード: DPL12SH
詳細はオンラインで - 毎月5,000点以上の新製品が
rswww.co.jp/electronicsに追加されています。
eTech - 第9号
13
開発ボード
初心者向けの
組み込みオープンソースコミュニティのために
William Marshall氏
Central Content Editor
門者向けのオープンソース組み込み開発コミュニティ
入
の優位性は、マイクロコントローラ(MCU)ベンダーが
構築するオンラインコミュニティによって決まります。それで
は、最も広く採用されている入門者向けのオープンソース開
発ボードはどれなのでしょうか? いずれの開発ボードも、採
用するコミュニティが増加していますが、どれを採用するかに
は、MCUメーカーやボードメーカーの影響が低下し、顧客の
影響が高まっているようです。現在調査している4つのボー
ド(Kinetis、mbed、Arduino、BeagleBoard)は、機能も
価格もそれぞれ異なります。
Kinetis
KinetisボードはFreescale
Semiconductorの32ビットARM
Cortex-M4ベースのMCUファミリに基づ
いており、幅広い組み込みアプリケーショ
ンを対象とした汎用開発システムです。ス
タンドアロンのプロセッサモジュールとして
や、キットの一部として入手可能で、シリア
ル接続(USB・イーサネットRS232/485)
・802.11b WiFi・メモリ・液晶モジュールな
ど、さまざまな周辺ボードと組み合わせて使用
できます。KinetisボードはFreescaleの
Tower Systemプラットフォームとの完全な
互換性を備えているため、追加のバックプレー
ン「エレベータ」ボードを介して周辺モジュー
ルをメインプロセッサボードに接続できます。
たとえばTWR-K60N512モジュールは、ス
タンドアロンツールとして使用したり、周辺モ
ジュールに接続したりできるコントローラモジ
14
eTech - 第9号
ュールです。Kinetis K60 32ビット低消費
電力Cortex-M4ベースのMCUを搭載して
います。オンボードのminiUSBコネクタ経由
でシステムに電力を供給でき、オンボードのオ
ープンソースJTAG (OSJTAG) ICのデバッ
グインターフェイスにもなります。基本コント
ローラモジュールパッケージには、IDEソフト
ウェアとトレーニング教材も含まれています。
このプラットフォームは、適度に強力で柔軟
性・拡張性に優れた開発システムを低コスト
で獲得したいというユーザに最適です。モ
ジュール構造を採用しているため、入門者レ
ベルユーザはもちろん、極めて高度なMCU
開発を低コストで行う必要のある小規模企
業まで、幅広いニーズに対応できます。ま
た、新しいMCUがリリースされるたびに、シ
ステム全体を交換する必要もありません。
このプラットフォームは、大手半導体ベン
ダーが提供しているためユーザサポートが
充実しており、サードパーティのARMエコ
システムを通じてさまざまなリソースが提
供されています。このプラットフォームに
は、数多くのユーザが参加するオンライン
コミュニティがあり(www.towergeeks.
orgからアクセス可能)、マニュアルやユ
ーザフォーラムにアクセスできます。
Arduino
Arduinoは、さまざまな面において、低コストのオープンソース開発の
先駆的存在となっています。元々はホビイスト市場向けの製品でした
が、非常にコンパクトで低コストのArduinoボードのメーカーである
Smart Projectsがコネクタの標準を考案し、シールドと呼ばれるさま
ざまな周辺ボード(モータシールドなど)をメインArduinoボード上に取
り付けることを可能にしました。
これにより、DCモータ、読み取りエンコ
ーダ、イーサネットシールドの接続性を制御できるようになりました。
Arduinoは世界中に普及し、現在ではシールドをプラグインできるよ
うに同じコネクタレイアウトを採用した独自のArduino互換ボードを
多くの小規模企業が開発しています。Arduinoのサポートはメーカ
ーではなく、ユーザやフォーラム(arduino.cc)によって提供されてい
ます。サポートするアプリケーションが非常に少ないため、Arduino
ボードが大規模企業で使用される可能性はほとんどありません。
ArduinoはシンプルなAtmel 8ビットAVRファミリのMCUをベースとし
ているため、基本的な制御機能は実行できるものの、メモリが少ないため
機能も限られています。Arduino UnoボードはATmega328 MCUを
ベースとしています。MCUをサポートするために必要なものをすべて備
えており、USB・バッテリや外部電源アダプタ経由で電力供給ができます。
開発環境としては、MS-Windows・Macintosh OSX・Linuxと
各オペレーティングシステムで実行可能なオープンソースIDEを、
無料でダウンロードすることができます。Arduinoは、4つのボード
の中で唯一ARMベースのMCUではないプラットフォームです。
eTech - 第9号
15
mbed
ARMが設計、
リリース、及び継続的にサポートするmbedは、
小型で低価格のオープンソースソフトウェアをベースとするモ
ジュールです。高速MCUプロトタイピング用に設計されていま
す。このモジュールにより、通常は高コストとなる教育及びそ
の他の入門者向けのARMコア処理を迅速かつ簡単に導入で
きます。初めて 組み込み開発を経験するユーザから、プロの
組み込みエンジニアまで、幅広いニーズに対応しています。
BeagleBoard
BeagleBoardもオープンソースコミュニティ向けに
設計されたものです。Texas Instrumentsは当初、
オープンソースのハードウェアやソフトウェアの機能に
ついて学生が学べるよう、教育機関向けにこのボード
を設計しました。しかし、その後の進化により、現在で
は高い性能と拡張性を備えたトップエンド製品となっ
ており、それに応じて価格も高額となっています。
現在のmbedボードは、NXP LPC1768 ARM Cortex-M3 MCU
をベースとしており、イーサネット、USB、CAN、SPI、I2Cなどのイン
ターフェイスを備えています。40ピンDIPモジュールとなっており、
ボードサイズはわずか44 mm x 26 mmで、オプションによりUSB
ポート経由で電力を供給できます。MBEDは、強力なCortex-M3
コアを搭載した高性能モジュールです。Cortex-M3コアは近年、汎
用MCU向けのローレンジからミッドレンジコアの業界標準として急
速に認知されるようになっています。モジュール自体には、さまざまな
周辺装置を接続するためのインターフェイス機能はなく、基本的には
PCへのUSBインターフェイスを備えたプロセッサとなっています。
新しいBeagleBoard-xM SystemはTI DaVinci™
DM3730デジタルメディアプロセッサをベースとしてお
り、TIのAM37x Sitara ARMベースのマイクロプロセッ
サとの互換性を備えています。DM3730には、ハイエンド
の1GHzスーパースケーラARM Cortex-A8コアと高性
能のオーディオ/ビデオアクセラレータサブシステムが統合
されており、800 MHz VLIW TMS320C64x+ DSP
とビデオハードウェアアクセラレータをベースとしていま
す。3Dグラフィックスアクセラレータと十分なメモリも備え
ています。プロセッサのすべての機能をBeagleBoard
で使用できるわけではありませんが、システムを拡張し
て機能やインターフィエスを追加することができます。
mbedのユニークな要素としては、事実上無料で使用できる「クラ
ウド」ベースの開発ツールが挙げられます。ユーザコードの記述やコ
ンパイルはオンラインベースのIDE(integrated development
environment: 統合開発環境)で行われます。 ユーザはキットを
購入し、mbed.orgに登録し、プログラムをWebサイト上に保管
できます。Webサイトにはブログ、フォーラム、ユーザ提供のプロ
グラムライブラリ、及びその他の開発リソースがあります。また、
インターネットに接続された任意のコンピュータにmbedを接続す
ることにより、PCソフトウェアを一切インストールすることなく、プ
ログラムのダウンロードや編集を行えるという利点もあります。
ただし、開発した貴重なソフトウェアをインターネット上に保存しなけれ
ばならないという欠点もあります。したがって、重大な製品開発(特に
開発の最終局面)での使用には不向きとなります。
また、ハイエンドのプ
ロフェッショナルソフトウェアやデバッギングツールも必要となります。
BeagleBoardは、オプションによりUSB OTG経
由で電力を供給でき、4ポートの高速USB 2.0ハ
ブ、10/100イーサネット接続、複数のマルチメディ
アインターフェイス及びコネクタ(デジタルコンピュー
タモニタやHDテレビ用のDVI-D、Sビデオ(テレビ出
力)、ステレオオーディオI/Oなど)を備えています。
BeagleBoardは完全な組み込み開発プラットフォームと
して開発されたわけではありません。BeagleBoardのプ
ロセッサの性能をユーザに体験させること、そして設計者の
コミュニティを拡大することを目的に設計されています。し
かし高い性能を誇る高度なボードであり、特にオーディオ/
ビデオの処理性能が高いため、入門者ユーザだけでなく、
ローエンドの産業アプリケーション開発にも使用できます。
Kentics Towerと同様、大手のチップベンダーが
提供するプラットフォームであるため、ユーザサポー
トが充実しており、ARMエコシステムを通じてリソ
ースを入手できます。オンラインコミュニティは、
beagleboard.orgからアクセスできます。
省エネ化でエコに貢献
iQモータ
欧州最大のモータ/ファンメーカーが開発し
たiQモータは、65~90 %の省エネを実現
しており、迅速かつコスト効率の高い方法で
設置して、Qモータからアップグレードできま
す。見た目の上ではiQモータとQモータの
間に違いはありません。
しかし内容には大き
な違いがあります。 iQモータには、効率性
に優れたオープン及びクローズドループ制
御方式の省エネECモータなど、最先端の技
術が使用されています。iQモータは、旧式の
Qモータに代わる製品として最適です。 永
久磁石モータと直流(DC)モータを使用する
iQは、Qの同期(AC)モータよりも効率性に
優れ、平均で70 %の省エネを実現します。
RSオンライン検索ワード: 714-2139
小型軸流ファン
ebm-papstが新しい2200Fファンをリリー
スしました。2200Fファンは、サーバ、スイッ
チキャビネット、及びドライブ内に設置された従
来のファンと比較して、冷却能力を65 %向上
し、ノイズレベルを軽減し、電力消費量を削減
します。 新しい2200F小型軸流ファンは、ま
ったく新しいファン技術を用いて開発されてい
るため、冷却問題を解決できます。2200Fは
旧バージョンのファンと比較して性能の向上と
ノイズの軽減を実現しており、より小型のパッ
ケージに収容されています。ebm-papstは
ファンの小型化及び薄型化により、冷却能力を
65 %向上させることに成功しました。 また、
この小型化により性能も30 %向上していま
す。 流体力学モデリングを用いて2200F用
の新しいインペラを開発することにより、性能
の向上、ノイズレベルの軽減(8デシベル)、エ
アフローの向上(30 %)、及び省エネ化を実現
しました。 このインペラに合わせて、独自の角
度を持つ斜めスロットを備えた新しいモータと
通信ソフトウェアを開発しました。
これにより、
モータノイズの軽減、電力消費量の削減、及び
モータ効率の85 %の向上を実現しています。
i-maxxシリーズACi
i-maxx AC小型ファンは、従来のAC小型フ
ァンの代わりとなる画期的な製品です。制御キ
ャビネット、冷蔵技術、フィルタファンで使用で
きます。 i-maxxは、従来のAC小型ファンと
比較して最大77 %の省エネ、70 %のサー
ビス寿命の延長、最大8デシベルのノイズレベ
ル軽減、そしておよそ50 %の軽量化を実現
しています。この新しいi-maxxシリーズACi
4400は、旧式の120 mm AC小型ファンと
の完全な機械的互換性を備えた初の省エネ型
ファンであり、同等のパフォーマンスと機能を
備えています。 この製品は、モータのセンサ
レス通信の最適化と新設計エレクトロニクス
の使用により、
トランスのドライブエレクトロニ
クスがモータのハブに完全に統合されていま
す。高度な空気力学の活用と新しいi-maxxフ
ァン内のモータの最適化により、従来のACフ
ァンと比較して性能が向上しています。
また、
鎌型のブレードとウイングを使用することで、ノ
イズの軽減と効率性の向上が実現しています。
RSオンライン検索ワード: 740-6389
RSオンライン検索ワード: 740-6376
製品に関して:
コミュニティボードについて詳しくは、
以下のページをご覧ください。
www.rs-components.com/
development-kits
ご意見募集中
www.designspark.com/ja/etech
16
eTech - 第9号
製品に関して:
www.rs-components.com/ebmpapst
eTech - 第9号
17
メモリの未来
半導体業界の未来を占う
…タブレットやスマートフォ
ンなどの携帯情報端末で使用
する高速で低消費電力なメモ
リに対する需要増がメモリ市
場全体の成長を力強く牽引
Mark Cundle氏 Technical Marketing Manager
半
導体分野で共通化している製品があるとすれば、それ
はメモリです。半導体分野で最も話題性が高いのもメ
モリであることは間違いありません。多くの場合、そのとき最
も需要の高いDRAMチップの平均販売価格の上昇または下
落が、半導体市場全体の指標として引き合いに出されます。
市場とメーカー
商業的な側面に目を向けると、現在の半導体市場規模は年間およそ3000億ドルであ
り、その多くの部分をメモリチップが占めています。ただし、そのシェアは年によって大
きく変動します。メーカーが半導体市場にとどまるためには高いコストが必要となり、利
幅は年々狭くなっており、多くの場合、市場リーダーでもない限り、収益を上げられるの
はよい年だけです。半導体業界では主要メーカー(5 %以上の市場シェアを持つ企業)
の数は減少しており、過去10年間ではメモリサプライヤの大規模な合併が複数件発生
しています。主要メーカーの数はまずDRAMメーカーの間で減少し、ここ数年では不
揮発性メモリ(多くの場合はフラッシュメモリ)の主要メーカーの数も減少しています。
プロセス、アーキテクチャ、インターコネクト
技術的な側面に目を向けると、メモリチップ開発における大きな課題としては、高性
能化するマイクロプロセッサに後れを取ることなく、より高速で低消費電力メモリ
を提供しなければならない点が挙げられます。厳しさが増す中、メモリメーカー
はアーキテクチャの改善と、より小型のプロセスノードへの移行を余儀なくさ
れています。シリコンプロセス開発において、真っ先に改善を迫られるのは、
これまでも常にメモリでした。製品の小型化需要に対応するため、DRAM
の主要メーカーはいまや30 nmプロセスノードで製造をしており、一部の
メーカーは25 nmプロセスでのサンプル出荷を始めています。SSD(ソ
リッドステートドライブ)、USBフラッシュドライブ、及びマルチメディアメ
モリカードへのデータストレージで最も一般的に使用されるフラッシュ
メモリであるNANDフラッシュについては、主要メーカーは、20~30
nmのプロセス技術を使用して64 Gbitメモリの製造を開始しています。
3次元メモリ技術の重要性が増す中、メモリのアーキテクチャや構
造に関しても技術革新が求められています。技術プロセスレベルで
は、3次元構造のDRAMメモリセルが構築されており、シリコンダイ
レベルでは、TSV(Through-Silicon-Via: シリコン貫通ビア)接続
によりDRAMダイが積層化され、高密度を実現しています。優れた
耐久性と信頼性を備えた、垂直ゲート構造の3次元NANDフラッシュメ
モリの高度な開発が、来年あたり実現する可能性が高まっています。
半導体業界が直面するもう1つの課題としては、次世代型の高スループ
ットのインターコネクトの規格が挙げられます。2011年初め、JEDEC
がユニバーサルフラッシュストレージ(UFS)に関する規格を発表しまし
た。
この規格は、組み込み型及びリムーバブル型のフラッシュベースのメ
モリストレージに関する最も高度な仕様となるよう作成されています。
18
eTech - 第9号
この規格は、高性能及び低消費電力を必要とする
モバイルアプリケーション及びコンピューティン
グシステム向けに特別に作成されています。
現在、半導体市場規模は
およそ3000億ドルです
フラッシュ - 成長及び代替製品
現在、タブレットやスマートフォンなどのスマートモバイ
ルコンシューマデバイスで使用する高速かつ低消費電力
メモリに対する需要増が主因となり、フラッシュ市場は堅
調に成長しています。市場調査会社IHS iSuppliが発
表した2010年のデータによると、今後数年間はNAND
フラッシュがモバイルアプリケーションにおける主要な
メモリ技術となります。2011年のモバイル製品のメモ
リ収益全体の約半分をNANDフラッシュが占め、約1/3
をDRAMが占め、残りをNORフラッシュメモリが占め
ると予測されていました。それでも、かつてないほど高
密度のストレージ容量を実現している従来のハードディ
スクドライブの役割が軽減することはありません。
また、
ポータブルコンピューティング、サーバ、またはモバイル
コンシューマ市場から撤退する予定も当分ありません。
フラッシュは現在でも拡張し続けているため、今すぐに他
の製品にとって代わられる可能性は低いですが、現在開
発されているメモリ技術の中で最も興味深いのは、遠い
将来スタンドアロン及び組み込みアプリケーション向け
フラッシュの代わりとなり得る各種製品でしょう。主要メ
ーカーは、書き込み/読み取り時間が100倍速くなること
や、書き込みサイクルの耐久性が大幅に強化されるなど、
フラッシュに対する優位性をいくつか主張しています。
相変化メモリ(PCM)では、PCM内のガラスに似
た材料にさまざまなレベルの電流を流すと、材料
の物理的構造が結晶相とアモルファス相の間を行
き来し、データが生成されます。さまざまなレベル
の電流を流すことができるため、PCMではセル
当たり1ビット以上のデータを保存できます。
強誘電体ランダムアクセスメモリ(FeRAMまたは
FRAM)は、DRAMと同様の機能を持ちます。つまり、
読み取りと書き込みの両方の操作で各ビットにランダム
アクセスできます。強誘電体材料を使用するセルコンデ
ンサを持ち、電界を与えることで材料を分極できます。
磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)及びSTTMRAM(スピン注入トルクMRAM)と呼ばれる第2世
代MRAMは磁気記憶素子を使用します。MRAMは
フラッシュメモリだけでなく、DRAMメモリやSRAM
メモリにとって代わる技術となる可能性があります。
抵抗RAM (RRAM)技術は、抵抗素子を2つの安定
した抵抗状態(低/高)の間で切り替える電気スイッチ
ング(電流または電圧誘起)に基づいています。調査
機関のIMECは、11 nmの積層構造のRRAMが市
場投入される可能性があると予測しています。IMEC
は、17 nm及び14 nmノードのSONOS (シリコン-酸
化膜-窒化膜-酸化膜-シリコン)フラッシュを経て、フラ
ッシュが20 nmにまで拡張すると考えています。
製品に関して:
www.rs-components.com/memory
ご意見募集中
www.designspark.com/ja/etech
日本のディスプレイ産業が
小型LCD中心にシフト
坂詰 秀昭氏
ス
マートフォンやタブレットなどのスマートモバ
イル製品向けの中・小型高精細ディスプレイ
に対する需要増を受けて、日本のLCDパネルメー
カーは事業のターゲットを大型ディスプレイパネ
ルから小型ディスプレイにシフトしています。
大型LCDパネルの収益性が低下
日本のLCDパネルメーカーは事業戦略の転換を余儀なくされていま
す。21世紀に入ってから、高機能携帯電話、ビデオカメラ、デジタル
スチルカメラ、衛星ナビゲーション製品、PDAなどのための中・小型
LCDパネルに対する需要が高まっていたにもかかわらず、液晶の世
界市場ではテレビ用の大型パネルの生産が中心でした。21世紀に
入って10年以上が経過した今、これらの大型パネルは、韓国や台湾
メーカーが市場を牽引するようになりました。中国も内需に対応する
ために生産を開始しており、2011年には国内消費の39 %を国内
生産で賄っており、2013年には100 %を超える見込みです。世界
中でこれだけ大量に生産されると、当然の結果として、この分野のメ
ーカーの収益性が減少することになります。成長も頭打ちとなってお
り、40インチ以下のテレビ用LCDの価格はすでに下落しています。
これとは対照的に、スマートフォン、タブレット、3Dディスプレイ、
電子ペーパーなどのための中・小型高精細ディスプレイに対する
需要は急増しています。例えば、スマートフォンLCDやタブレッ
トディスプレイの市場は、年間当たりそれぞれ51 %及び33 %
ずつ成長しています。2012年におけるAppleのiPadの生産
量は8000万~1億台に上ると予測されています。
これも、中・
小型LCD市場の好調を支える1つの要因になっています。
事業強化を図るシャープ、新会社を設立する競合会社
こうした市場変化を最も敏感に受け止めているのは日本のパ
20
eTech - 第9号
ネルメーカーです。具体的な対応策として大型パネルから中・
小型パネルへのビジネスシフトが顕著になっています。
日本の主要なLCDパネルメーカーであるシャープは、あらゆる
サイズのパネルを生産していましたが、かつて大型テレビ用パネ
ルを生産していた亀山第1工場と第2工場では、現在、中・小型パ
ネルの生産に切り替えています。第1工場で使用していた大型
パネル生産設備はすでに中国のメーカーに売却しています。シ
ャープの片山幹雄社長は、同社の構造改革発表会の記者会見で
次のように述べています。
「我々の液晶事業を成長率の高い事業
分野へとシフトする。”勝っても赤字”の市場では戦わない」
一方、中・小型LCDパネル市場のリーダーとなっている東芝モバイルデ
ィスプレイ、日立ディスプレイズ、ソニーモバイルディスプレイ、及びパナ
ソニックの4社は事業を統合し、中・小型ディスプレイに特化した
『ジャパ
ンディスプレイ
(Japan Display K.K.)
:(仮称)』
という新会社を設立
する予定です。この事業統合は2012年第2四半期に完了します。ジャ
パンディスプレイは、2016年度(2016年3月末)までに7500億円の
売上目標の達成を目指しています。この 前述 3社の2010年の業績を
合計すると、世界市場シェアの22 %(金額ベース)を占めることになるた
め、ジャパンディスプレイは事実上、世界最大の中・小型LCDパネルメー
カーとなります。産業革新機構(INCJ)もこの統合に関与しています。
INCJは2010年に官民出資により設立されました。政府が820億
円、民間企業16社が85億円出資しています。ジャパンディスプレ
イの社長は、ソニー、東芝、日立の3社以外から招へいし、
「議決権
付株式」の70 %はINCJが保有することになります。したがって、
この統合は国家的な政策措置に近いものとなります。この種の統
合については、日本の主要な半導体メーカーがすでに前例を作っ
ています。例えば、エルピーダメモリ株式会社はNEC、日立、三菱
のDRAM事業を統合して設立されました。
また、半導体メーカーの
ルネサスエレクトロニクスもこの3社によって設立されています。
22ページに続く >
eTech - 第9号
21
新登場!
3倍に強化されたDC/DC電源
- 最大10 kVDCの絶縁性能!
医療機器に適した高絶縁と低漏洩電流を実現するコンバータ:
< 21ページからの続き
技術的優位性の活用
INCJのCEO、能見公一氏は次のように述べます。
「中・小型ディスプレイでは、高解像度、広視野角、
低消費電力などの付加価値をもたらす技術が成長
のカギとなります。これは、日本のメーカーが持つ
世界水準の技術力を生かすチャンスとなります」
日本のメーカーが持つ中・小型ディスプレイに関す
る独自の最先端技術を活用して、この市場で優位
に立てるかどうかが最大の焦点となります。LCD
パネルで重要となる技術には大きく分けて2つあり
ます。1つ目はディスプレイ自体に関する技術で、2
つ目はディスプレイを駆動する薄膜トランジスタ
(TFT)に関する技術です。
まず、ディスプレイ自体に関する技術に関しては、
日立が開発したIPS (In-Plane Switching)技
術が重要と考えられています。IPS方式では、電
界と基板が平行になるように駆動トランジスタが
取り付けられており、液晶自体も水平方向に配向
しているため、光を透過するガラス基板には電極
が必要ありません。TN (Twisted-Nematic)
ディスプレイやVA (Vertical-Alignment)ディ
スプレイとは異なり、IPSディスプレイでは液晶分
子がガラス基板に対して垂直方向に配列されませ
ん。その結果、優れた光配向特性を持つパネルが
実現し、見る角度が変わっても輝度や色度がほと
んど変わりません。IPSディスプレイは圧力に対
する耐久性も高いため、タッチパネル画面として
も使用できます。周知の通り、Apple iPhone 4
ではRetinaディスプレイと呼ばれるIPSパネルが
使用されています。ただし、液晶素子の水平配向
は日本メーカー独自の技術というわけではなく、台
湾企業のHydisが使用するFFS (Fringe Field
Switching)など、同様の技術が存在します。
その他の有力なパネル技術には有機EL (OLED)
があります。しかし有機ELの実用化に関しては、
韓国のサムスンなどが日本企業をリードしていま
す。
2つ目の重要な技術は、薄膜トランジスタ(TFT)に
関する技術です。おそらく最も重要となるのが、低
温ポリシリコン(LTPS)に関するさまざまな技術で
しょう。現在、中・小型ディスプレイのほとんどがア
モルファスシリコンTFTを採用しています。しか
し、スマートフォンなどの高解像度を必要とする製
品に対しては、LTPSディスプレイの方が有利とな
り、収益性が高まります。これは、アモルファスシ
リコンよりもポリシリコンの方が電荷移動度がはる
かに高いためです。したがって、TFT事業は縮小
する可能性があります。ちなみに、
「低温ポリシリ
コン」の「低温」とは、液晶ガラス基板の変形温度
である650 °
C未満の温度でTFTを形成できるこ
22
eTech - 第9号
とを指しています。これにより、TFTを基板上に形
成して、より高い解像度を実現できます。ただし繰
り返しになりますが、LTPSは日本メーカー独自の
技術というわけではありません。
TFTに関して注目すべき点としては、材料関連の
技術の進歩が挙げられます。その典型的な例が、
透明アモルファス酸化物半導体(TAOS)です。
たとえばシャープは、第8世代(2160 x 2460
mm)のIGZOパネルを生産するための技術を開
発しました。同社によると、このパネルはタブレッ
トPC向けに供給されるとのことです。IGZOは
TAOSの一種であり、インジウム、ガリウム、亜鉛
が主な構成元素となっています。IGZOは電荷移
動度が高いだけでなく、薄膜は可視光を透過させ
るため、ほぼ透明の膜を作ることができます。
シャープが放つ第2の矢は、連続粒界結晶シリコ
ン(CGS)技術です。CGSでは、LTPSのシリコン
結晶が規則的に並ぶため、電荷移動度がアモルフ
ァスシリコンの約600倍、LTPSの約4倍となり、
単結晶シリコンとほぼ同程度となります。CGSを
使用して、他の回路も液晶基板上に実装できます。
この技術には、集積ディスプレイの「システムオン
チップ」を開発するための大きな可能性があるとい
って間違いありません。シャープは先日、スマート
フォンのディスプレイにCGSを使用する意向を表
明しました。
これらの事実に目を向けると、日本のディスプレ
イメーカーは、中・小型LCDパネルを生産するた
めの最先端技術を数多く保有しているといえま
す。ただし、国際的な競争の中で日本の企業が圧
倒できるほど、これらの技術が日本に独自のもの
であるとは必ずしもいえません。周辺技術も重要
な役割を果たします。周辺技術とは、ガラスなど
の材料に関連する技術、製造装置、
リソグラフィー
などの手法、及びテストや評価のための技術を指
します。事業戦略を中・小型LCDパネル重視に転
換した日本のメーカーは、これらの要素をすべて
考慮したうえで将来の予測を立てる必要がありま
す。決して順風満帆な航海とはならないでしょう。
製品に関して:
www.rs-components.com/displays
基本機能:
3倍に強化された絶縁 - 最
大10 kVDC / 5 kVAC
超コンパクト設計
- 1 & 2 W - SIP7パッケージ
- 3.5 & 6 W - DIP24パッケージ
最大効率86 %
EN、CSA、UL認定
低スタンバイ電流(1 mA)
超コンパクトなDIP24パッケー
ジのREC6シリーズは、最大10
kVDCの絶縁を達成しています。
RECOMは、3倍に強化された絶縁をコ
ンパクトな筐体サイズに設置するとい
う難題を解決しました。 標準のSIP7 /
DIP24パッケージに設置される革新的
な3倍強化技術により、8 kVDC / 10
kVDC絶縁をついに実現しています。
30 %小型化されたトランスフォーマカ
ップリング静電容量により、このドライ
バは医療機器の一般的な要件である非常
に低い漏洩電流も実現しています。 独
自の技術をお求めやすい価格で!
基板CAD用部品ライブラリの
統一規格に向けて
Marketing Engineer、Ian Bromley氏
コ
ンポーネントライブラリ(電子部品の特性デ
ータのライブラリ)はCAD PCB設計ツール
の中核的な重要要素です。コンポーネントライブ
ラリのない設計ツールは、燃料のない自動車のよ
うなものです。陳腐な例えかもしれませんが、次の
ような疑問につながります。誰がライブラリ作成の
責任を負うのか? 簡単にいってしまえば、エンドユ
ーザです。電子機器設計ツールに関しては、今も
昔も責任を負うのは常にエンドユーザなのです。
推定するのは難しいですが、世界中のプリント基板(PCB)設計チー
ムが、それぞれが使用するCADツール向けに同一の部品のライブ
ラリを作成し直しているとすれば、同じような作業が重複して行われ
ていることになり、間違いなく業界全体で高いコストが発生している
ことになります。メーカーが新しいコンポーネントをリリースするた
びに、数百または数千もの企業がそれぞれ異なる方法でそのコンポ
ーネントをライブラリに追加します。競争上の優位性が重要なのは
当然ですが、エンドユーザ企業の立場から見ると、専有コンポーネ
ントのデータライブラリを作成することで本当に念願の競争力を獲
得できるのかは疑問です。特に、創造的な設計をすることによってい
くらでも差別化を図れることを考えるとなおさら疑わしく感じます。
業界標準を求めて
異なる基盤CADの間でデータライブラリを簡単に交換できるよ
う、業界標準が定められる可能性はあるのでしょうか。更には、世
界共通で使用できる既製の部品ライブラリが作成される可能性は
あるのでしょうか。 コンポーネントのすべてのピン情報及びサイ
ズ(レイアウトツールへの入力のため)を定義する、広く普及した業
界標準がないため、PCBの設計及び製造プロセスの自動化を推
し進めることができません。設計ツールコミュニティ、コンポーネ
ントメーカー、及びPCB設計に関わる企業は、それぞれ異なる利
益を追求していると考えられています。コンポーネントメーカーは
定期的にパッケージタイプを変更し、各製品固有のパッケージング
を選択する傾向があります。競合他社を排除して、唯一の供給源
になることを目指しているためです。また、メーカーは自社のデー
タをさまざまなCADツール形式で提供する利点をいまだ見つけら
れずにいます。CADベンダーもまた、標準ライブラリ形式のサポ
ートに対して否定的です。充実したライブラリを自社開発すれば他
社との差別化が図れるからです。さらに、世界の大手の設計及び
製造企業の多くも、ライブラリを差別化要因として捉えており、ラ
イブラリ管理コストをかけるだけの価値があると考えています。
です。この規格に基づいて、ランドパターンの計算装置や生
成装置を提供するさまざまなベンダーからソフトウェアツー
ルを入手して、新しい部品ライブラリを作成できます。ただ
し、この規格は決して広く普及しているとはいえません。こ
れまでに、IPC規格に代わるさまざまな規格が提案されて
きましたが、これまでのところ普及には至っていません。
規格が定められるとすれば、小規模な設計会社が急
増し、それらの会社が、世界的な電子機器販売業者
のWebサイトにあるコンポーネント検索エンジンを
積極的に使用するようになった場合でしょう。
Ultra Librarianソリューション
今、Accelerated Designsのソリューションが急速に
注目を集めています。同社が提供するUltra Librarian
(UL)というツールでは、フットプリントや回路図記号のデー
タをベンダーに依存しない形式で保存できるだけでなく、業
界で認められたパッド配列の計算またはベンダー指定のパ
ッド配列も保存できます。Accelerated Designsによる
と、Ultra Librarianは多くのCADメーカーの協力を得て開
発されているため、最も有効な形式でデータをエクスポートで
き、主要半導体メーカーの多くがすでにこのツールを使用して
フットプリントや回路図記号を提供しているとのことです。
Ultra LibrarianツールセットのサブセットであるUL Reader
は無料でダウンロードでき、事実上あらゆるPCB回路図レイ
アウトパッケージのコンポーネントとその属性を、ベンダーに
依存しない「bxl」ファイルで生成、インポート、エクスポート
できます。UL Readerで生成されたデバイスフットプリント
は、IPC-7351規格に準拠しています。さらに、Ultra Librarian
スイートへのアップグレードを購入すれば、コンポーネントの回
路図記号とフットプリントを作成する際に使用した規格をエンド
ユーザが変更して、自社の規格と一致させることができます。
あらゆる当事者が協力すれば…
PCB設計エコシステムに関わるさまざまな当事者が、部品デー
タの流れについて足並みを揃える必要があります。その際に極
めて重要となるのが、半導体メーカーがコンポーネントデータを
オープンな交換形式で提供する意思があるかどうかです。提供
されれば、主要な電子コンポーネント販売業者から、CADツール
用の基本部品データを簡単に入手できるようになります。一例と
して、人気の高いDesignSpark PCB設計ツールをサポートす
るDesignSpark Webサイトでは、STMicroelectronicsや
Microchipなどの主要メーカーのライブラリをbxl形式で提供し
ています。これが実現すれば、世界的な販売業者のWebサイトが、
設計エンジニアにとっての重要なライブラリリソースとなります。
多くのエンドユーザは標準ライブラリを希望していますが、CAD
ベンダーはそれぞれ異なる方法でライブラリを実装するため困難
となっています。したがって、各企業やユーザは何度もライブラリ
を作成しなければならず、データの変換に苦しめられています。
過去の提案
実はこれまでにも、IPC-SM-782 (表面実装設計とランドパターン
規格)など、いくつかの規格が提案及び導入されてきました。IPCSM-782は、1980年代及び1990年代前半にIPCが定めた規
格です。IPC (www.IPC.org)は、PCBの設計、製造、組立、テ
ストに関わるおよそ3000社の電子機器企業が参加する世界的な
業界団体です。IPC-SM-782の最新の後継規格はIPC-7351B
24
eTech - 第9号
ダウンロードは以下より。
DesignSpark PCBのダウンロードページ
www.designspark.com/ja/pcb
eTech - 第9号
25
共同開発
DEsiGn
チップ
DEsiGn
チップ
低価格ヘッドホンアンプ
音楽を楽しみましょう
質を得るために、両方のトランジスタに
同じコレクタ電流が流れるようにしま
す。これは、回路図のテストポイントF
及びGの電圧で確認でき、これらはほ
ぼ同じです。R1の両端の入力オフセ
ットは、T1に流れるベース電流によっ
て生じます。これによりポイントAの電
圧(V(A))がわずかにマイナスになりま
す。プロトタイプを簡易測定したとこ
ろ、T1へのベース電流は約3 μAを示
しました。トリムポットP2が提供してい
るオフセット補正なしの場合、出力オフ
セット電圧Vosは0.2 Vを超えます。
Stefan Dellemann氏
こ
れまでにも、評判の高いものとそうでないもの、
シンプルなものと精巧なものなど、さまざまなヘ
ッドホンアンプの設計がありましたが、ここでは、実
績豊富な部品でそこそこの音質を実現する、シンプ
ルなヘッドホンアンプの設計について紹介します。
Vos = (1 + R6/R5) x V(A)
Vos = (1 + 10/1.5) x
0.028 = 0.215 V
わずかに非対称に動作するように
差動アンプを設定することで、オフ
セットを取り除くことができます。音
質を考えた場合、これは最適な方
法ではありませんが、回路を大幅に
シンプルにすることができます。
仕様 (出力負荷: 33 Ω、供給電圧: ±9 V)
• 入力インピーダンス(P1なし)
10 kΩ
• 帯域幅
3.4 Hz → 2.4 MHz
• THD + ノイズ(1 kHz、1 mW/33 Ω)
0.005 % (B = 22 kHz)
• THD + ノイズ(20 Hz - 20 kHz、1 mW/33 Ω)
• S/N比(基準1 mW/33 Ω)
0.01 % (B = 80 kHz)
89 dB (B = 22 kHz)
92 dBA
• 最大 電圧(33 Ωへ供給)
3.3 V (THD+N = 0.1 %)
• 最大 入力電圧
0.57 V (P1が最大ボリューム時)
• 電流消費量
19 mA
26
eTech - 第9号
昨今、量販店でヘッドホンアンプ単体を見
つけることは簡単ではありません。確か
に存在し、特にハイファイ仕様のものは出
回っていますが、それなりの価格で販売さ
れています。ここで紹介している設計は、
これらのハイエンド回路よりも多少性能は
劣りますが、簡単に入手可能なコンポーネ
ントを使用して組み立てることができ、比
較的良好な音質を得ることができます。
回路
回路は、独立したコンポーネントで組み立
てられたパワーアンプの一種として表すこ
とができます(図1を参照)。入力にはボリ
ュームコントロール(P1、ヘッダを介して接
続)とカップリングコンデンサ(C1)があり、
その先に差動アンプ(T1、T2)、エミッタ分
岐に定電流ソース(T3)があります。T1と
T2 (P2)間のプリセットは、対称性を設定、
つまりアースに対して出力電圧を0ボルト
DCに設定するのに使用します。最高の音
定電流設定
エミッタ分岐(T3)の電流ソースは、ダ
イオードD1、D2及び抵抗R4によって
約3 mAに設定されており、この結果
T4は可能な限り線形に動作します。
その後、オーディオ信号はドライバステ
ージT4に流れ、これにより強力な出力
トランジスタ(T6とT7)が動作します。
より大きな内部ゲインを提供するよう
にC4を追加しています。出力ステー
ジの零入力電流は、T5とR9によって
約5 mAに設定しています。出力トラ
ンジスタのゲイン(hFE)が50であると
仮定すると、5 mAの場合、理論的には
線形な0.005 A x 50 x 32 Ω = 8
Vpeakが32 Ωに流れます。ただし、
定電流ソースT5と、T7のベース-エ
ミッタジャンクション間の電圧降下(約
1.5 V)によりいくつの制限が生じます。
R11及びR12 (R10及びR12)の周
りにある電圧デバイダも計算に入れる
必要があります。負荷(RL)の両端の最
大電圧Vmaxは、次のようになります。
Vmax = RL / (RL + R11
+ R12) x (9 - 1.5)
Vmax = 4.6 Vpeak
これは測定した約3.26 Vrmsに対
応し、仕様と一致します。これは回
路が(3.262/32) = 330 mWを
32 Ωに流すことができることを意味
し、ほとんどのポップミュージックや
ロックを楽しむのに十分な値です。
出力ステージの前にある抵抗R12
は、出力電流を制限し、ヘッドホンの
長いシールドケーブルなどの容量性
負荷が接続されたときに回路を安定
的に保ちます。これにより、短絡した
場合に出力トランジスタが過熱するの
を防止できます。R10とR11は対称
性を保ちます。フィードバック回路の
C2の値にかかわらず、帯域幅はオー
ディオ帯域幅よりも大幅に大きくなり
ます(仕様を参照のこと)。入力で低コ
ーナー周波数を得られるように、C1
に4.7 μFを使用しました。2.2 μFの
コンデンサ(容易に入手可能)でも、7
Hz (-0.6 dB @ 20 Hz)の許容コー
ナー周波数を得ることができます。
プロトタイプの測定値を回路図に示し
ます。これらの値は、正確な要件値と
してではなく、ガイドライン値とみなし
てください。PNジャンクションとトラ
ンジスタのゲインは、メーカーによっ
て異なります(このことは、仕様に示し
ている電流消費量にも該当します)。
R2
R3
1k
4u7
63V
10k
100u
25V
T6
C3
R7
R10
I
J
10R
R5
B
100R
D3
10k
10R
K
2x
1N4148 D4
0
T5
D1
D2
C
270R
2x 1N4148
T7
R9
E
10R
R11
1k5
T3
R4
A = - 28mV
B = - 33mV
C = 0.73V
D = 0.71V
E = 1.37V
F = 1.31V
G = 1.37V
H = 0.71V
I = 1.4V
J = 83.5mV
K = 80.5mV
R12
R6
P2
10k
C2
10p
6p8
4k7
T2
T1
R1
150R
+ C5
H
T4
A
P1
6..10V
R8
C4
100u
16V
1k
T1,T2,T3,T5 = BC550C
T4 = BC560C
T6 = BD139
T7 = BD140
C1
+
G
F
150R
D
+ C6
100u
25V
100701 - 11
6..10V
図1. 容易に入手可能なコンポーネントを使用した、シンプルなヘッ
ドホンアンプ用回路
(1つのチャンネルを図示)。
実験
多少のノイズ(ほとんどのヘッドホンで
は聞こえないほどのノイズ)が気にな
らない場合は、フィードバックループ
のインピーダンスを約10 kΩに上げ
ることができます。このようにするに
は、並列回路のR5とR6を10 kΩに
上げます。この場合、T1及びT2の
ベース電流は互いに補正し合います。
R5を12 kΩの抵抗で置き換え、R6
を68 kΩの抵抗で置き換えて、さら
に実験することもできます(完璧にす
るには、E96シリーズの11.5 kΩと
76.8 kΩを使用してください)。これ
により音質が向上することはありませ
んが、オフセットが小さくなります。
構造
この回路用の小型の基板を設計しま
した(図2を参照)。
これは[1]から注
文できます。また、ここから基板のレ
イアウトをPDF形式でダウンロード
できます。コンポーネントのレイアウ
トを図3に示します。一般的なことで
すが、最も高さの低いコンポーネント(
抵抗、ダイオード)をはんだ付けしてか
ら、高いコンポーネント(コンデンサ、
図2. 多数のSMDが実装されているにもか
かわらずコンパクトな完成した回路
28ページに続く >
eTech - 第9号
27
DEsiGn
チップ
コンポーネントリスト
抵抗器
R1、R6 = 10 kΩ
R2、R3 = 1 kΩ
R4 = 270 Ω
R5 = 1.5 kΩ
R7 = 4.7 kΩ
R8、R9 = 150 Ω
R10、R11、R12 = 10 Ω
P1 = 10 kΩ
P2 = 100 Ωトリムポット
コンデンサ
C1 = 4.7 μF、
リードピッチ5 mmまたは7.5 mm
C2 = 6.8 pF、
リードピッチ5 mm
C3 = 10pF、
リードピッチ5 mm
C4、C5、C6 = 100 μF 16 Vラジアル
半導体
D1、D2、D3、D4 = 1N4148
T1、T2、T3、T5 = BC550C
T4 = BC560C
T6 = BD139
T7 = BD140
その他
RS品番
707-8300
707-8221
707-8189
707-8246
707-8280
707-8167
707-8063
コネクタP1を参照
652-4502
RS品番
483-3955
495-622
538-1360
707-5809
RS品番
544-3480
545-2254
545-2484
314-1823
314-1817
RS品番
P1の接続 = 3ピンピンヘッダ、
リードピッチ0.1インチ
251-8092
P1の接続 = 3極ソケットストリップ、
リードピッチ0.1インチ
251-8503
7個入り、Φ1.3 mm はんだピン
631-9574
基板# 100701、[1]を参照。
PCB、注文コード090190-1 www.elektor.com/090190
図4. ProjectCaseに組み込むことで、独特のデ
ザインに仕上げることができます。
< 37ページからの続き
トランジスタ、接続ピン)をはんだ付
けするほうが楽に作業を行えます。
ステレオにするには、2つのボード
が必要です。
この場合、両方のチャ
ンネルのボリュームを同時に調節
できるように、P1をステレオポテン
ショメータで置き換える必要があり
ます。オーディオソースにボリュー
ムコントロールがある場合は、P1
を省くことができます(ヘッダにジャ
ンパを取り付けるか、基板上にワイ
ヤリンクをはんだ付けすることでヘ
ッダのピン1とピン2部(実際のヘッ
ダではありません)を接続します)。
この回路(P1を含む回路)の入力イ
ンピーダンスの最小値は5 kΩ(P1
が最大ボリューム時)です。最近の
ほとんどのオーディオソースでこれ
は問題になりません。デカップリン
グコンデンサC1のピン間隔を書き
とめてください。基板は5 mm及び
7.5 mmタイプに対応しています。
電源には、2個の9 V電池を使用し
ご意見募集中
ます。または、2 x 6 V、5 VAトラ
ンスと供給線路あたり1.5 Aブリ
ッジ整流器と8200 μF/16 Vを
使用することもできます。この場
合は、1対の電圧レギュレータで補
足することもできます。出力トラン
ジスタ(T6とT7)にヒートシンクは
必要ないと思われますが、小型の
ヒートシンクを取り付けることで短
絡耐性を高めることができます。
この回路をElektor ProjectCase
[2]に組み込むことにしました。非常
に簡単に組み込むことができ、電子
回路が見える独特のデザインに仕上
げることができます(図4を参照)。
(100701)
インターネットリンク
[1] www.elektor.com/100701
[2] www.elektor.com/100500
www.designspark.com/ja/etech
賞金総額100万円!
電子工作コンテスト
「CHIPKIT CALLENGE」
開催中
Microchip社製 Arduino互換ボードと
DesignSpark PCBを使って、独創的な省エネ
ソリューションを提案してください。
挑戦されない方も、
既にエントリーされている作品への投票やコメントで
ご参加ください。素晴らしいアイデアには「いいね」
をお伝えてください。
chipKIT Challengeの詳細はこちら。
www.chipkitchallenge.com
みなさんの参加・投票をお待ちしています。
協賛企業:
図3. 実質本位のヘッドホンアンプのコンポーネントレイアウト。
28
マイクロチップ社の名称とMicrochip ロゴ及びchipKITは、米国およびその他の国におけるマイクロチップ・テクノロジー社の登録商標です。Digilent社の名称とDigilentロゴ、及びMax32は、Digilent社の登録商標です。記載されているその他すべての商標はそれぞれの商標所有者に帰属するものあり、マイクロチップ・テクノロジー社またはDigilent社とは一切関係
ありません、
また、chipKITのサポートは提供していません。© 2011, Microchip Technology Incorporated. All Rights Reserved.
eTech - 第9号
スマートに節約できるインテリジェントファン
スタンダードコネクタの絶え間ない進化
コネクタのトップメーカーであり続けるための、
スタンダード品の進化の方法について。
Steve Keep氏 (MolexのEuropean
Distribution Marketing Manager)
1990年代の有名な政治スローガにたとえるなら「it’
s price,
stupid (馬鹿げているもの、それは価格だ)」と言えます。特
にスタンダード品に関しては、低価格化により営業利益の
産出が難しくなっていくことは明らかです。また、幅広い
製品領域に対応できるようにスタンダード品の
適用範囲の拡大が重要です。
近年、ヘッダやソケットなどの標準コネクタ製品を生産する会社が
大幅に増え、結果として価格競争が激化しています。この市場で
勝ち残るためのMolexの戦略は、革新的な新製品を投入して、
使いやすくなる新機能を追加して標準製品を進化させ、新たなカ
スタマによって新たな用途に組み込めるようにすることです。高
い定格温度の製品を提供したり、信頼性を高めて挿抜回数を向上
させるためにめっきオプションを変更することで、弊社製品を差
別化して価格以外でも勝ち残ることができるようになります。
例えば、圧着端子に「絡まり防止機能」を追加しました。
これにより、
大きな袋で端子を納入した場合も、端子が絡まることがありませ
ん。小さな改良ですが、弊社製品を差別化することが可能なこの
ような機能は重要です。競争相手は黙って見ていることはなく、間
違いなく真似することを考えます。また、標準品の 使用 範囲が広
がるにつれて、USB、HDMI、及びFFC / FPCタイプの接続も対
象となります。これらの技術は何年も前から存在しますが、Molex
は一歩先を歩み続けることができるように改良し続けています。
Molexがマーケットリーダーとしての地位を保ち続けられるもう一つ
の要因は、世界各国に製造拠点を持っていることです。市況の変動
が激しい場合、生産配分が重要になり、Molexが経験したいくつか
の競争でもこのことが影響しました。しかしながら、Molexは世界各
国にある生産機械を活用することができるため、継続的かつ信頼性
の高い供給を提供でき、市場に対して安定した価格を維持すること
ができ、標準品の大幅値上げの可能性を回避することができます。
標準コネクタは金属価格の変動の影響を大きく受けるため、金属
市場も重要な役割を果たします。銅や金などの金属は、コネクタ
のコストの大部分を占めているため、製品価格に大きな影響を
与えます。Molexでは、パラジウムなどの価格変動の少ない金
属を積極的に使用しています。パラジウムは、金の代替金属とし
て使用されます。Molexは、PicoFlexシリーズ及び一部のモ
ジュラジャックとプラグに使用するパラジウム製のコンタクトを
開発しています。パラジウムは、大きな価格変動の影響を受け
30
eTech - 第9号
幅広い製品領域に対応
できるように標準品の
使用範囲が拡大しています
ず、導電率などの電気的特性や耐久性も同等の性能を有しています。
市場シェアを維持及び拡大するには、現在提供している製
品を絶えず進化及び改良していくことが重要です。
77 %
節約
製品に関して:
www.rs-components.com/molex
ご意見募集中
www.designspark.com/ja/etech
中規模の工場では、
エアフィルタ付きコント
ロールボックスを50台設置して連続稼動さ
せています。こうした従来のACファンと入れ
替えることで、年間6.5 MWhの電力を節約
できます。導入コストはわずか4∼6か月で
例: ACi 4400アキシャルコ
回収できます。
ンパクトファン
制御キャビネットや冷凍テクノロジ、
フィルタリングファンでは、従来型のACコンパクトファンがいまだに多くの現場で採用されています。新型
i-maxxは、
この状況を一変させます。従来のシェードポール型モータでは、取り込んだエネルギーの約70 %が熱に変換されて放出されます。
また、比較的単純なブレード形状により、
さらにエネルギーを浪費します。ebm-papst i-maxxコンパクトファンシリーズは、
あらゆる用途での
こうしたエネルギーの浪費を解消します。i-maxxシリーズの新型ACi 4400は、最高のエネルギー効率を達成しながら、従来の120 mm ACコ
ンパクトファンと機械的に完全な互換性を確保しています。性能と機能はAC製品と同等ですが、省エネ性は従来品を大きく超えています。
RS品番740-6389
詳細については弊社Webサイトをご覧ください。
www.rs-components.com/ebmpapst
eTech - 第9号
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Electronics
Extras
保護メガネ
低綿ぼこり手袋
密着フィットデザインとソフトな
フレーム素材が採用されていて、
優れた視界を確保できます。
RSオンライン検索ワード: 689-9617
指先の感覚を保って細かい作業が
行えるようにきつめのフィッティング
で、手の甲側には装着性と通気性に
優れた素材が採用されています。
RSオンライン検索ワード:“polyflex 白”
Bolle Safety製の軽量なメガネです。
Agilent 34401A
6.5桁ベンチマルチメータ。
Electronics
Extras
電子回路の組み立て及び検査用です。
優れた分解能、精度、及び速度により、迅速
で正確なベンチテスト及びシステムテストが
可能です。
RSオンライン検索ワード: 501-354
5ピースESDドライバセット
静電気に敏感なコンポーネント
での使用に最適です。
セットの内容: 3 x 100 mmマイナス、4 x 100 mm
マイナス、PH0 x 60 mmプラス、PH1 x 80 mmプ
ラス、PH2 x 100 mmプラスドライバ。
RSオンライン検索ワード: 469-7096
データロガー
湿度、温度、露点を高精度
で測定可能です。
設定及びデータのダウンロード用のシンプ
ルなUSBインターフェイスを装備していま
す。環境試験器の性能やその他の長期間の
温度関連試験の監視に最適です。
RSオンライン検索ワード: 666-8166
48引出し収納キャビネット
小型のコンポーネント部品の収納に
最適なシンプルなキャビネットです。
キャビネットを結合して収納容量を増や
すことができ、自立型または壁取り付け型
として使用可能です。引出しには間仕切
りがあります。
また、引出しに全開時の落
下防止用の安全リムが付いています。
RSオンライン検索ワード: 556-020
黄銅製固定キット
一連の黄銅製のなべ頭マイナ
スねじ、ワッシャ、ナットが収納
ケースに収められています。
Panelpilotスマートグ
ラフィックディスプレイ
プラグアンドプレイ対応のプログラミング
可能なパネルメータの収納ケースです。
M2~M6のサイズのねじ類が
2,000点以上含まれています。
RSオンライン検索ワード: 100-282
USB経由でソフトウェアをプログラミング可能な3.5イ
ンチTFTフルカラーディスプレイで、あらかじめ設定さ
れている30個の縦向きまたは横向きのメータスタイルか
ら選択することも、独自のメータスタイルを設計すること
もできます。Panelpilotシリーズは、デュアル0 → 40
Vdc測定入力、I2Cインターフェイス、タッチスクリーン
機能、フル入力スケール機能を備えていて、設計に独自
のメータを追加するための費用対効果の高い方法です。
RSオンライン検索ワード: 704-8131
32
eTech - 第9号
詳細はオンラインで - 毎月5,000点以上の新製品が
rswww.co.jp/electronicsに追加されています。
eTech - 第9号
33
Google ADK:
オープンソースアーキテクチャーで
ハードウェア市場に切り込むGooglの挑戦
SolderPad共同創設者、Andrew Back氏
年前、Googleがマイクロコントローラプラット
1
ホームに関心を示しているなんて、誰が想像で
きたでしょう。2011年5月、Googleは同社の I/
Oカンファレンスの基調講演で、Arduinoベースの
Androidアクセサリ開発キットを発表しました。なぜ
Googleはマイクロコントローラの開発に手を伸ば
し、そしてなぜArduinoを選択したのでしょうか? こ
の記事では、ADKの詳細について説明すると共に、
オープンソースハードウェアの幅広いチャンスについ
て述べたいと思います。
Androidアクセサリ開発用装置
Google Accessory Development Kit (ADK)
は、AndroidデバイスにUSB接続できるアクセサリ製品
を開発するための開発キットです。これは、低電力マイクロ
コントローラベースのアクセサリ
開発のプラットフォームとしてだ
けでなく、Androidデバイスとア
クセサリ間の相互通信プロトコル
を実装する際のリファレンスとし
ても使用することができます。
オープンソース
世界中の情報を整理し、
世界中の人々がアクセスでき、
そして使えるようにすること
34
eTech - 第9号
このADKは、AndroidにUSB
接続できるハードウェア部とサポ
Googleのミッション
ートソフトの2つで構成されてい
ます。ハードウェア部は、USB
ホストコントローラを統合できるよう拡張されたArduino
Mega 2560と独自のArduinoシールドで構成されて
います。Androidデバイスの大半がUSBホスト機能を
サポートしていないため、USBホスト機能は必須です。
ArduinoシールドをADKメインボードに接続することで、
ジョイスティック、LED、温度及びライトセンサなどのさま
ざまな基本的な入出力機能を使用することができます。
デバイスとADKボード間の通信は、Android Accessory
Protocolによって処理されます。これのライブラリとUSB
ホストドライバがADK用に提供され、Arduino開発環境
に簡単に組み込むことができます。Android自体はバー
ジョン3.1からサポートするようになり、バージョン2.3.4
にも移植されました。ソフトウェア開発は、Eclipse統合開
発環境(IDE)などを使用して構築されたソフトウェア開発キ
ット(SDK)とADKボードファームウェア用Arduino IDE
により、Androidアプリケーション間で分割されました。
Arduinoのメリット
Arduinoを採用した理由として、コスト・コミュニティ・次世
代育成能力[1]、及び各種組織との協業を挙げることがで
きます。Arduino技術は低コストで、熱狂的で発明心
旺盛な大規模なコミュニティを持っています。プラッ
トホーム化とライセンシングアプローチは発展性
があるとみなすことができ、派生的に永続的な協
調体制やハードウェア・ソフトウェアの互換性を生み
出してきました。締結すべきライセンシング契約、パー
トナーシップ契約、非開示契約は存在せず、料金を支払
う必要もなく、共有に関する根強い文化が存在します。
体収益で占める割合はほんのわずかです。Googleは「世界
中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるよ
うにすること」を社是として掲げています。これを実現する
ために、Googleは、GoogleのサービスとデータがGoogle
を通じて利用されるようにすることに関して最善を尽くす
必要があります。Androidプラットフォームは、デバイスの
販売によって収益を上げるためのものではなく、Google
のオンラインサービスビジネスへのアクセスを広げるため
に存在しています。ADKはAndroid計画を強化し、プラッ
トホームにホームオートメーション機能を追加する将来の
Android @ Homeフレームワークの実現を可能にします。
Arduinoを選択することで、法的拘束力のない技術を簡
単に使用できるとともに、ハードウェア・ソフトウェアの各
種協調体制を、Googleは利用することができました。
デバイスとデバイスプラットホームは目標を達
成するための1つの手段で、情報を収集し、整理
し、それを利用可能にするための戦略を確固た
るものにすることで価値を創造しています。
採用の加速
Googleが発表したADKハードウェアは約
240ポンドで、Arduinoベースのものとし
ては高価でした。しかしながら、Google
がハードウェアのすべての設計情報を提
供し、自由に利用することが許諾されたラ
イセンスの下でそれらを発行したため、
互換性のあるクローンが登場するまでに
時間はかかりませんでした。約1か月後
には、カスタムArduinoシールドを装備
したものがおよそ50ポンドで登場しまし
た。その数か月後、オープンソースハード
ウェア(OSHW)サイクルが完了したと思わ
れたときに、Arduinoプラットホームの創
作者は独自のADK製品を発表しました。
クローンボードと派生ボードもADKファーム
ウェアと互換性があり、結果としてAndroid
とも互換性があるため、Googleが期待し
たとおりの結果なったと考えることができ
ます。厳しい条件下で技術がライセンス供
与されていた場合、ADK互換製品はこの
ように急速に 増殖しなかったでしょう。
すべて情報にかかっています。
ここで1つはっきりさせておきましょ
う。Googleはハードウェア会社ではあ
りません。Googleはカスタムデータ
センタテクノロジ上でサービスを実行
し、Googleブランドのコンシューマデバ
イスも存在しますが、Googleが出荷す
るハードウェアの量は比較的少なく、全
多方面に及ぶチャンス
ADKの開発でArduinoを採用したGoogleの動機
は明確です。しかしながら、OSHWのチャンスが、
開発キットやオンラインサービスに対する付加物とし
て限られていないことを認識するのは重要です。
フリーソフトウェア/オープンソースソフトウェア(F/OSS)
からの重要な教訓は、ビジネスチャンスは多方面に及んで
いて、明白ではないということです。例えば、オープンソー
スを使用して、サービス市場を開拓したり、実装主導の規格
を推進したり、ユーザの革新能力を向上させることができ
ます。おそらく唯一これを使用して、新しいテクノロジプラ
ットホームの開発に伴うコストを大幅に削減したり、市場シ
ェアを確保したり、既存の体制を変革することができます。
オープンビジネスモデルの出現により、何かを作って、それ
を販売して利益を得て、関連する知的財産を保護するとい
う単純な構図ではなくなりました。この従来のモデルは明
らかにまだ機能していますが、現在はより多くの選択肢が
存在し、そしてこれらのいくつかを使用して、単純な手法を
採用している競合他社よりも優位に立つことができます。
コンシューマ向けのオープンなテクノロジ
Googleは、コンシューマ分野にOSHWテクノロジ
を適用することを認識した最初の会社ではありませ
ん。2009年に「スマートな家をどのようにゼロか
ら設計できるかに関する研究プロジェクト」である
Homesenseプロジェクトが開始されました。
36ページに続く >
eTech - 第9号
35
< 35ページからの続き
このプロジェクトでは、ヨーロッパの厳選された家
電メーカーと連携して、Arduino互換電子ビルテ
ィングブロックのキット、マニュアル、現地のテクニ
カルエキスパートとの人脈を提供しました。
2008年にBug Labsは、
「デバイス構築用のモジュー
ル式のオープンソースシステム」であるBug System
を発表しました。システムの核を成すデバイスは
Bugbaseで、これはLinuxが動作する小型のARM
アーキテクチャ採用コンピュータで、一連のハードウェ
アモジュールで拡張でき、ソフトウェア開発用にJava
Open Services Gateway initiative (OSGi)フ
レームワークとEclipse IDEをサポートしています。
Bug SystemはAccentureやOrangeなどの企業によ
ってモバイルテクノロジのプロトタイピングで使用されまし
た。2011年9月にBug LabsとFordは「車両内接続性の革
新を推進」することが可能なツールを開発及び提供すること
に関して共同発表を行いました。OpenXCというこの新しい
プラットホームはBugシステムをベースにしていて、
「開発者
コミュニティが完全にアクセスすることができ、地域市場のニ
ーズをすばやく取り込んで革新的なソリューションを手頃な価
格で提供することが可能なプラットホームを作成する」ことを
目的としているとFordは説明しています。これにより、車両
が、交換可能なプラグアンドプレイハードウェア及びソフトウ
ェアのドッキングステーションになり、車両内接続性に関する
機能及びサービスの高度なカスタマイズが可能になります。
まとめ
2011年に、GoogleがADKに関してOSHWを採用
し、FacebookがOpen Computeに関してOSHW
を採用し、そしてFordがBug Systemの使用に関して
OSHWを採用したことにより、これはすでにニッチ現象
ではなくなりました。財源が豊富な組織は、そのような
動向を単に利他主義の行為かリスクの高いギャンブルと
みなすことがありますが、これは大きな間違いです。
OSHWがもたらす社会的メリットは明確ですが、これが帰
結点ではありません。著者で研究員であるDoc Searls
氏が「理由効果」と呼んでいるものに、重要なビジネスチ
ャンスが存在します。同氏は「理由効果」とは、
「何らかに
よってではなく、何らかの理由によって多くの収益を上げ
られること」であると解説しています。何かを与えるとい
う概念を超えて考えて、概観的にチャンスを捉えることは
重要です。これはGoogleがオンライン検索に関して迅
速に認識したことで、これは明らかに成功を収めました。
脚注
[1]“Generativity is a system’
s capacity to produce
unanticipated change through unfiltered
contributions from broad and varied audiences.”—
J.Zittrain, The Future of The Internet
and How to Stop It, pp. 70.
製品検索:
www.rs-components.com/development-kits
ご意見募集中
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36
eTech - 第9号
探せる、
使える、
すぐ手に入る。
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関連コネクタ
あまり知られていない
Harting ATCAコネクタ - 458-452
コネクタテクノロジー
Marketing Engineer、Dave Pike氏
半
導体設計の最新の革新技術と
は異なり、新しいコネクタ技術
が産業界のニュースヘッドラインを飾
ることはあまりありません。しかしな
がら、報道されないからといって革新
が停滞しているわけではありません。
の記事では、以前から提供され
ていたにもかかわらず、その価
値が認識されていなかったコネクタ
の設計及び製品に関する最近の開発
動向について説明します。
こ
新しい終端処理
コネクタを機能させるためには、ワイヤ、
ケーブル、または基板に接続する必要が
あり、多くの場合、これには高価で扱いに
くい工具を使用する必要があります。 多
くのコネクタメーカーが、工具とトレーニ
ングの必要性を低減させることに取り組
み始めています。TE Connectivityの
IDC SSLコネクタシリーズは、特にLED
照明用途向けに設計されていて、すばや
い取り付けを可能にするシンプルな押し
込み式圧接技術を採用してい
ます。その接点は、事前に被
覆を取り除いたりはんだ付け
することなく、ストランドワイ
ヤまたはソリッドワイヤを取
り付けることができるように設
計されていて、コネクタボディ
の丸み帯びた角によりLED用
途での配光に対するコネクタの
影響を最小限に抑えることがで
きます。工具不要な終端処理の
もう一つの例として、Phoenix
Contact製のものがあります。
Combiconの「プラグアンドプ
レイ」技術には、スプリングケー
ジ式終端方式が採用されてい
て、特殊工具を使用することなく
ソリッドワイヤまたはストランド
ワイヤを固定することが可能な
スプリングメタルコンタクトが採
用されています。これにより現
場での終端処理が大幅に簡単
になり、高価な工具や広範なトレ
ーニングが不要になります。同社はこの
技術を、DINレール端子ブロックを含むさ
まざまな製品シリーズに採用しています。
押し込み式コンタクトは何年も前から
採用されていますが、幅広い用途に適
した高仕様な終端方式に進化しまし
た。 押し込み式コンタクトは、テレコム
ラックアプリケーション用の最新の高速
2 mm AdvancedTCA (Advanced
Telecommunications Computing
Architecture)コネクタの確立された
機能となりました。
このコネクタは、従来
のDIN41612バックプレーンコネクタ
の最新製品です。押し込み式終端は、
非常に頑丈であることを証明し、数多く
の用途で使用できるように進化を遂げま
した。その他の終端機構としては、スプ
リング式コンタクトを装備したPRECI-
Souriau UTS - 190-958
DIP製の基板対基板コネクタがあり、優
れた耐振性を示し、頻繁に取り外し及び
取り付けを行う基板に適しています。
小型化 基板対基板接続
電子製品の小型化が進むにつれて、2つ
の平行なメザニンボードの基板対基板接
続が特に注目を集めています。Molex
の基板スタッキングSlimStacktmコネク
タには、頑丈な「ブレードオンビーム」コ
ンタクトが採用されています。
これは、従
来のピンとソケット技術に比べて大幅に
高さを低くすることが可能であり、ポータ
ブル及びモバイルコンシューマ製品の厳
しいスペース制限をクリアするのに最適
です。コネクタは非常に低プロファイル
で、基板間の距離をわずか1.5 mmにす
ることができます。 ヒロセ電機のDF23
コネクタも同様の製品で、振動の多い環
境に適していて、複数の基板が含まれた
ハンドヘルド機器に適しています。
このコ
ネクタの基板間の距離もわずか1.5 mm
です。どちらの製品も非常にピッチが細
かく、コンタクトの間隔は0.5 mmです。
アプリケーションのクロスオーバー
開発した技術が、当初目的とされてい
た以外の用途に応用できることはしば
しばありますが、コネクタにもこれが当
てはまります。メーカーは、当初は軍
事用途向けに開発されたスリムライン
シリーズ製品の開発に力を入れ始めま
した。Glenairシリーズ80 Mighty
Mouse丸形コネクタは、航空宇宙及び
軍事などの高信頼性用途向けの製品で
すが、小型軽量であることが重要である
医療、産業、地球物理学用途に適してい
ることが認められました。このシリーズ
は、MIL-DTL-38999規格の相互接続
と実質的に同等な性能を提供し、同等製
品よりも重量は約70 %軽く、全体サイズは
50 %小型です。また、SouriauのUTSシ
リーズは、非常に評判の高いTrim Trioフ
ァミリの最新製品で、黒色プラスチックハウ
ジングと人間工学に基づいたモールディン
グが採用されています。前世代のコネクタか
ら派生したUTSシリーズは、非常に扱いや
すくデザイン的に優れているとともに、優れ
た堅牢性及び耐水性特性を有し、道路交通
管理、測候所、産業ロボット工学などの用途
で普及が進んでいます。 Amphenolも、小
型で頑丈な丸形プッシュプルコネクタである
Terrapinシリーズで市場に参入していま
す。当初はラジオやGPSユニットなどの「は
んだ付け」用途向けに設計されたTerrapin
は、ギガビットイーサネットに適しているた
め、LANスイッチやルータで幅広く使用され
ています。また、高い気密性により、地上セ
ンサや監視用途での野外使用に最適です。
また、メーカーは、自動車市場向けに開発さ
れたコネクタの派生品も生産しています。こ
れらはロック付きの防水仕様の軽量プラスチ
ック製コネクタで、現在でも自動車向けソリュ
ーションとして販売されています。 圧着コン
タクト、頑丈なハウジング、防水気密性という
特長により、遠隔地下水監視装置やビル制御
システムなどの過酷な環境に最適です。この
多用途技術の主な例として、JSTのJWPF
シリーズ、TE ConnectivityのSSCファミ
リ、DeutschのDTMシリーズがあります。
高速なデータ伝送
高速コネクタ分野では、ATCA規格を満たす
さらに高速な派生製品も開発されています。
この分野の最たる例はFCIのZipLinetmコネ
クタシリーズで、基板対基板またはバックプ
レーン接続で高信号密度と最大12.5ギガビ
ット/秒のデータ通信速度を提供しています。
また、Hartingは、10ギガビット/秒に対応
し、Cat.6aケーブルシステムの高速伝送要
件を満たしている標準的なM12 (12 mm)
コネクタを開発しました。
これは、産業機械ネ
ットワークを主な対象用途としています。コネ
クタは、8極M12コネクタの統一かん合面を
定めている最近のPAS 61076-2-10x規
格に準拠しています。FCIのSFP Plusコネ
クタは、高速ファイバーチャンネルオーバーイ
ーサネット (FCoE)の10ギガビット/秒の帯
域幅に対応できるように設計されています。
eTech - 第9号
Glenair Mighty Mouse - 713-2889
PRECI-DIPスプリング式 - 702-0301
製品に関して:
tm
Molex SlimStack - 668-9371
www.rs-components.com/
connectors
ご意見募集中
www.designspark.com/ja/etech
38
Phoenix Spring Cage - 699-8679
FCI Ziplinetm - 725-6213
eTech - 第9号
39
DESIGNSPARKPCB
POWERED BY
エンジニア向けのオンライリソースと
設計サポートのホーム
Ver3は
こちら。
Pete Wood氏
新たな設計、
開発キットの購入検討、
有効性の確認に最適
DesignSparkの重要な機能は、開発キット及び
評価プラットフォームの独立したレビューのライ
ブラリであり、これは弊社のメンバーによって記
述されます。この機能により、ユーザは、各キット
に対してコメントと星評価を投稿できます。さまざ
まな種類のマイクロコントローラ、マイクロプロセ
ッサ、アナログ、及びFPGA開発キットが対象とさ
れ、定期的に新しいキットが追加されています。
弊社の最も好評なキットに関するメンバーの評判
ARM mbed LPC1768モジュール
RS品番: 703-9238
mbedは、下位レベルのマイクロコントローラの詳
細について作業を行うことなくプロトタイプを作成
可能な迅速なプロトタイピング用ツールです。
Microchip MPLAB ICD 3とExplorer 16マイクロコントローラキット
RS品番: 687-2741
Microchip製マイコン、およびフラッシュデジタル信号コントロー
ラ用の高速エミュレータ。最も費用対効果の高いツールです。
「Microchipの16ビットマイクロコントローラを使用
する際の最適な方法であると思われます」
「このモジュールは芸術的でさえあります。コアは高速
で(96 MHz)、広いバス幅(32ビット)を備えています」
「業務で高速プロトタイピングを行う場合も、電子回路に
興味のある方が趣味で使用する場合も、mbedはシンプ
ルでありながら強力なプロタイピング方法を提供します」
「Microchipを使用する際、特にデバッガと16ビットボ
ードが必要な場合に、非常に優れたキットです」
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eTech - 第9号
主な特徴:
•
Spice Simulationを使用し
て、DesignSpark PCBか
らネットリストをLTSpiceや
TINAなどのシミュレーションツ
ールにエクスポートできます
•
Design Calculatorを使用し
て、設計のインピーダンス、静電容
量、放熱をすばやく計算できます
•
グループ化機能を使用して、設計内
の複数の項目をグループ化して、1
つのユニットとして操作できます
•
3Dビューアで基板レイア
ウトを表示できます
•
1つのプロジェクトでの無制限
の基板レイヤーと無制限のシ
ートをサポートしています
•
ライセンス制約やライセンス
の有効期限はありません
•
業界標準のGerberファイ
ル、Excellon、DXF、IDF
などを生成できます
「PIC 16 / 32ビットを初めて使用する際に必要なすべてのもの
が揃っているため、非常に優れた開発キットだと思います」
「ボードはコンポーネントが両側に配置されて最
大限までパッケージ化されていて、可能な限り小
型化するためにさまざまな工夫が凝らされていま
す。このようなプラグインブロックは小型である
ほうが好ましいため、非常に使いやすいです」
40
DesignSpark PCBは、
世界で非常に高い評価を得
ている無料の基板設計ソフ
トウェア。世界中で10万件
以上ダウンロード頂いてい
ます。
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eTech - 第9号
41
iSAY
EBM -PAPST 社
エレクトロニックデザインエンジニア
(MIET)
「
楽しみにあふれた
エレクトロニクスの世界
」
つくづく電子工作って楽しいものだなと思います。確かに、
小さい黒いチップと何本かのワイヤをいじくり回す作業は、
傍から見れば、非常に奇妙で退屈に見えることでしょう。そ
の上、ゼロ入力電流やぜん動キャパシタンスが楽しいと思
う人は更にいないと思われます。
しかしそれでも我々エン
ジニアにとって、エレクトロニクスとエンジニアリングの世
界は楽しみにあふれ、プロジェクトへのモチベーションの
原動力になっています。ArduinoボードにBlinkyを初め
てダウンロードする際のおもしろさを他人と共有すること
は、大変ではありますが、我々全員が行うべきことです。
昨今、エンジニアリングに興
味を持たない小中学生や、
技術スキルの欠如したエン
ジニアの増加を嘆く話をよ
く耳にします。悲しいことに
これは事実であり、コンピュ
ータサイエンスに強い関心
があるにもかかわらず、優
秀な人材が現場で不足して
います。
ただ 幸いなことに、私は、
皆様が思っているよりも子供達がエンジニアリングとエレクト
ロニクスを楽しんでいる様子を見ています。私は学生時代、
エレクトロニクスクラブに所属していました。そしてebmpapst社のテクニカルディレクタとなり、学生向けに地域の
エンジニアリングソサイエティの活動を行う中で、私はそれ
を悟りました。この世は才能に溢れていて、プロジェクトは非
常に高い水準にある。おそらく問題は私たちにあり、私たち
優秀な人材や、
創造性あふれる作品が
私たちの身近に
いくつも存在してます
のような年長のエンジニアが原点を思い出し、以前のように
日常のエレクトロニクス、つまり555タイマサーキットで作る
ことができる点滅するLEDや騒々しいサイレンなど、エレク
トロニクスを楽しくすることについて話し合うことが重要だと
思います。私は、新しい世代の子供達が私と同じくらいに、こ
のようなプロジェクトに熱心であることがわかりました。数週
間前に、自らを「物造りに向いていない」と語っていた生徒が
ebm-papstを訪問し、はんだ付けを学んでいるときに古い
部品を使って人物の線画を描いていました。新しいエンジニ
アがエレクトロニクスについて学んだり手掛けてみたりする
ために、我々に必要なことは、創造性と簡単な仕組みです。
幸いなことに、意識せずにこれを行っている方々はたくさ
んいます。オープンソースハードウェア(OSHW)が成長し
ていることは、専業エンジニアだけではなく、趣味で行って
いる方々が、使いやすい開発 / プロトタイピングボードを設
計及び公開していることを意味します。Arduinoプログラ
ミングのような使い易いインターフェイスを使用して32ビ
ットマイクロコントローラで遊んだり、FPGAの複雑な回路
を学習することは、以前ではとても考えられませんでした。
経験豊富なエンジニアであるか、初心者であるかを問わず、
これらの新しいキットをぜひ試し、点滅するLEDプロジェク
トをダウンロードし、なぜエンジニアリングが好きであるか
を思い出し、日常のエレクトロニクスを楽しんでください。
製品に関して:
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42
eTech - 第9号
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• 200 MHz、400 MHz、600 MHz、
1 GHzの帯域幅
• 最大10 GS/sのサンプルレート
• 16Mポイント 標準メモリ
• 18 / 36デジタルチャンネルオプション
豊富な機能セット
• WaveStream™高速アップデートモ
ード
• WaveScan™サーチ / 検索
• LabNotebook™ドキュメント / レポー
トジェネレータ
www.rs-components.com/lecroy
シリアルデータツールのウィジェットレンジ
• I2C、SPI、UART
• CAN、LIN、FlexRay™
• USB
• オーディオ(I2S、LJ、RJ、TDM)
• MIL-STD-1553、ARINC 429
• MIPI D-PHY、DigRF 3G、DigRF v4
AMPLIMITE Dサブミニチュアコネクタファミリ
Dサブミニチュアコネクタは、
通信、
コ
ンピュータ、
産業用装置、
計装機器な
ど、
新旧のさまざまな用途の入出力
規格として使用され続けています。
TE Connectivityは、
Dサブミニチュアスタ
イルの標準 / 高密度バージョンコネクタ
で最も幅広く最も汎用性の高い製品シリ
ーズを提供しています。基板取り付け製
品は、
はんだ終端 / 圧入終端ともにさまざ
まなフットプリントと構成に対応していま
す。ケーブル製品は圧着、
はんだ、
IDC 終
端に適しており、
さまざまな製品状況に対
応する用途別ツールでサポートされます。
Amplimiteファミリは、
あらゆるニーズを網
羅する補助アクセサリとハードウェアとと
もに、
すべての用途を満たす理想的なソ
リューションとしてご利用いただけます。
www.rs-components.com/teconnectivity
AMP、AMPLIMITE、TE Connectivity、TE connectivity の名称およびロゴは登録商標です。