紀行文

高知学芸高校関東支部「高尾山トレッキング」紀行
平成 26 年 7 月 26 日(土) #1國見昌宏
今日のトレックは年間250万人の人々が訪れる高尾山(標高 599 メートル)、東京の
近くにもかかわらず自然が多く残され、平成 19 年にミシュラン旅行ガイド 3 星に登録さ
れた明治の森国定公園。参加者は男性 6 人、女性 3 人の精鋭、代行世話人代表宇賀
君の全般統制のもと、登山コース選定・案内等を岡田さん、新宿での打上げ担当を岡
崎君と 3 期生の皆さんが総力で担当。
22 日に梅雨明けを迎えた 26 日、東京の天気は晴、気温 35 度、湿度65%、太平洋
高気圧に覆われ 4 日連続の猛暑日を記録。外での激しい運動は避けるようにと注意
が出されている。27 日付読売新聞朝刊によると全国で「猛暑地点」今年最多。熱中症
で 11 人死亡、重症 15 人、病院への搬送者 1889 人。
午前 9 時半少し過ぎに参加者全員が京王線高尾山口駅前に集合。岡田さんを中心
に点呼を終えたところで住友君が世田谷から自転車を漕いで約 50kmを見送りに来
てくれ、一同感激の記念写真。
今日のコース、登りは 6 号路(高尾山の南側を西から東に向かって流れる川に沿っ
て山頂まで約 3.3km、90 分のルート)、下りは 4 号路(山頂から少し下った所から、吊
り橋「みやま橋」を渡って浄心門まで約 1.5km、1 号路の北側に避難路として整備され
た高尾山北面ルート)を行く。
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住友君と別れて駅前の渓流に沿って登山開始。ヤマメや手製蒟蒻、自家製野菜な
どを売る土産物屋や軽食店の間を抜けて舗装道を 5 分ほど歩くとケーブルカー清滝
山麓駅に到着。
右手に高尾山薬王院と書かれた大きな石碑があり、上の本堂までの表参道・舗装
路(1 号路)が列なっている。
高尾山薬王院は、天平 16 年(744 年)聖武天皇の勅命による東国鎮護の祈願寺、
本尊を薬師如来とし行基菩薩により開山と伝えられ、その後 1370 年代後半に京都の
醍醐寺から俊源大徳が入り、飯縄権現を守護神としたことから修験道の道場として繁
栄、真言宗智山派の大本山として今日に至っている。
ケーブルカー清滝駅の乗り場左脇舗装道、左下に渓流を見ながらなだらかな上り勾
配の道が続く。暫らく行くと右手岩場の上に七福神や不動明王、十一面観音など赤い
前掛け姿の石仏が並んでいる。道路左手の個人駐車場を過ぎると右奥に白い 7 階建
てのビル、ほとんど人影がない東京高尾病院が見える。ここが 6 号路分岐。舗装道を
終わり渓流右岸の登山道へ入る。
ここから頂上近くまで要所々々に 14 の看板があり、高尾山の植物や動物、小鳥、樹
木、昆虫、水生動物など自然観察のポイントを教えてくれる。暫らくは右下に渓流を見
ながら緩やかな上り勾配が続く。二番目くらいの看板にシャガーの効用について質問
がありました。
塩飴を 舌に転がす 夏登山 (国見 作)
岡田さん選定の 6 号路は、渓流と樹木の木陰のお陰で都心の暑さは届いて来ない
最高のコースだが、休憩に入ると全員が水やお茶を補給、汗がどっと噴き出てくる。
休憩していると老若男女、時には 4 歳ほどの幼い子供を連れた両親など多くの登山
者が追い越して行く。さすがミシュラン旅行ガイド 3 星の山。
濃緑の 高尾路歩む 母子連れ (石川君 作)
所々で岡田さんが薄紫の花をつけた岩タバコ、赤白の花茎を伸ばした水引草、まだ
丸い蕾の多い玉紫陽花、薄紫のヌスビトハギ(盗人萩)などを見つけては教えてくれ
る。今日のトレックで一番きれいな花はイワタバコと岡田さん。
沢道に 可憐に咲くや イワタバコ (岡崎君 作)
小ぶりなる タマアジサイの 色涼し (岡崎君 作)
高尾路に 玉アジサイや そこここに (石川君 作)
渓流に 玉紫陽花の 高尾山 (国見 作)
数回の休憩の後、渓流を挟んだ右下にお堂、その奥に滝が見えてきた。
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滝の音が琵琶の音のように美しいと言われる琵琶滝です。滝を右下に見ながら奥
に進む。登山道は崖の縁をコンクリートで覆う狭い道になり、両側の斜面には杉の巨
木などが茂っている。後から来た登山者のため少し山道に余裕があるところに立ち止
まって道を譲ります。緩やかな勾配の木陰、処々にベンチを設置した休憩所もあり幾
組かのグループで憩っています。
せせらぎの 音を涼みつ 高尾道 (岡崎君 作)
更に上ると木造の小さい橋、大山橋を渡ると杉の巨木の下が少し広くなりベンチが
ある。この付近の杉には季節によって風蘭の花が咲き見事だそうです。
大山橋以降、登山道は渓流の左岸になる。ここから山道は幾分急になり、更に道幅
が狭くなり木の根が表面に縦横に張っています。
渓流の幅が狭くなり登山道は渓流を中心に左右の斜面を縫うように登る。少し上っ
た看板によると、このあたりに猪や狸、ハクビシンが生息しているとのこと。
ムササビの 渡る大杉 夏の風 (国見 作)
暫らく進むと水が流れる渓流の中を道路標識が 6 号路と示す場所に出ました。「飛
び石」です。水流を避け飛び飛びにある石を渡るように登ります。「飛び石」を上り終え
右にトラバースした山道で水分補給。下を見ると登山者の列が延々と続いています。
後続の隊列が休憩中の私達の前を途切れることなく過ぎてゆく。この分では頂上は
銀座や秋葉原の歩行者天国のように混雑していないか心配になります。
隊列の 途切れず続く 夏の沢 (岡崎君 作)
こんにちは 挨拶疲れ 高尾山 (石川君 作)
休憩を終えて歩き始めるとよく整備された木道の傾斜が一気に急になります。途中
で水分補給をしながら木道を100mほど上りきると勾配が緩やかになり、木の根が縦
横に張る道を進むと杉木立の下の広場です。少し登ると右手に数億円と言われるウ
オッシュレット付の立派なトイレがあり、小休止。
急坂の あと嬉しくも 緑陰は (国見 作)
1 号路と交わる舗装道を数10m登ったところが高尾山頂上。関十一州を望むことが
出来る景勝地ですが今日は霞んで眺望がききません。2 号水準点脇の関十一州石碑
をバックに記念撮影。空いている日陰を探して昼食休憩、一人だけ蕎麦屋で昼食・顔
が赤くなった人が居ました。地面では蟻が忙しそうに走り回っています。
茶店近くでは紫陽花の花が残り、山百合があちこちに咲いています。
梅雨明けの 関十一州は 靄の中 (国見 作)
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昼食を摂りながらにふと前を見ると、カメラを持った外国人に混じってホットパンツに
臍出しルック、サングラスを額に掛けた若い女性が歩いて来ます。高尾山は電車とケ
ーブルカーを乗り継げば難なく登れる都心近くの行楽地であることを実感します。
昼食時の水分補給で2リットルのペットボトルが空になり、汗と消えました。身体に溜
まった老廃物も、きっと汗と一緒に排出されたことでしょう。
ヘソ出しの ギャルも出没 高雄山 (川柳・国見 作)
昼食休憩後に頂上を時計廻りに歩きながら 4 号路の降り口、トイレ近くで小休止。頂
上近くの道路脇で岡田さんが大葉ギボス、ウバユリなどを指差し、若い大葉ギボスの
葉は美味しいと言う。
4 号路を少し下ると臨時の高尾ビジターセンターがあり、窓口の女性が、ムササビに
ついて説明してくれました。ムササビは近くの杉の巨木の古い穴に潜み夜間に活動
するとのこと。ムササビの食事はブナの小枝を食いちぎり、葉脈を手で挟んで葉の部
分を食べること、食べた後の葉型は丸みを帯び小枝は齧られているので見分けが付
くと、今朝拾った小枝と葉を見せて説明してくれます。
ムササビの 住処やいずこ 夏の森 (国見 作)
臨時高尾ビジターセンターを後に 4 号路を下り始める。最初は杉の巨木、少し下が
るとブナ林の木陰道、緩やかな下り勾配が続く。途中イヌブナ林の中、整備された木
の階段を下る。羽を広げると3~4センチの小さな蝶が舞っている。木道に作られた木
の手摺に止まって我々の横で羽を休める。可愛いこの生き物が住む自然を大事にし
たいとの気持ちが湧いてきます。
いろはの森分岐の広場で休憩、背の高いブナの枝に止まるカラスも嘴を開けて息を
しているように見える。案内板によるとオオルリなど多くの野鳥が生息していると言う
に、今日はおしゃべりヒヨドリが一声鳴いただけ。それでも通り抜ける風が心地良い。
この大暑 森の小鳥に 声もなし (岡崎君 作)
いろはの森分岐を過ぎた辺りから下り斜面がややきつくなる。広葉樹が広がるルー
トは秋の紅葉が美しいと言う。斜面を右に曲がって下っていくと「みやま橋」が見えてく
る。数人の女性グループが吊り橋を背景に写真を撮っている。吊り橋は高さ4~50m
か、結構な高さがあるが谷の水量は僅か、グループで渡ると結構揺れる。
「みやま橋」の下の渓流下流に「蛇滝」があると岡田さんの説明。
「みやま橋」を渡って緩やかな山道を進むと、突然前方に薬王院表参道の中腹にあ
る浄心門前の舗装路が広がり、1 号路に合流。登山客で賑わっている。浄心門には
「霊気満山」と書かれている。杉木立に囲まれた 1 号路、多くの登山客の頭上を黒ア
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ゲハが我が物顔に舞っている。ここからケーブルカー山頂駅までの間は舗装の 1 号
路を行く。途中、右手に巨大な杉の木がある。樹齢 450 年、幹周り約6mで根元に根
が幾重にも巻きついていることからタコ杉といわれている。
少し下ると右手にお茶屋とサル園・野草園がある高尾自然動植物園、更に少し下る
と左手がケーブルカー山頂駅。急に人が多くなる。
万緑を 我が物顔に 黒アゲハ (国見 作)
ケーブルカー山頂駅から舗装道を逸れて右下の琵琶滝までの登山道に入る。案内
板には上級者コースとあるが名称は失念(不詳?)。岩石の多い急なくだり坂、何度
か右に左にトラバースを繰り返しつつ途中で水分補給。途中何箇所かの赤褐色の斜
面の道路脇にリュウノヒゲに似た植物があり、白に近い薄紫の花をつけている。イメ
ージはまるで海中の藻の中に産みつけられた魚の卵のような感じ。岡田さんもこの植
物の名は判らないとのこと。
更に下った鞍部、前方に平らな広場が広がり左右に赤い前掛けの結構大きな石仏
が並んでいる。ここで小休止、仏様が描かれた石版を見ると、四国八十八箇所の寺
院の一つの納札場らしい。
納札場を右に下って少しばかり急坂を進む。途中から斜面が緩くなり、ぬかるんだ
道を行くと前方から水音が聞こえてくる。岡田さんが「琵琶滝」に到着と言う。ここでは
修験の水行修行が可能。希望者は薬王院を通じ、右の不動明王が祭られているお堂
に参拝、お経を唱え、蝋燭に火を燈し、塩で身を清めたのち滝に入り、お経を叫び続
けるという。注連縄の奥、塀の向こうから時折、修行者の発する鋭いお経の声が聞こ
えて来る。
あな涼し 岩屋の水に 衣ぬらす (宇賀君 作)
琵琶滝を後に、最初に登った 6 号路に出てケーブルカー清滝山麓駅に下る。途中の
登山道、渓流沿いに藪ミョウガが茎の先端に白い花を咲かせている。
ケーブルカー清滝駅と京王線高雄山口駅の中間あたり、道路左上にある店で足湯
につかる人々を外国人が珍しそうにカメラに収めていた。
ケーブルカー清滝山麓駅や京王線高雄山口駅で汗のシャツを着替えてさっぱり。
下り来たり 汗に驚く 着替えかな (岡崎君 作)
紅葉頃 復帰はせぬか 宮氏待つ (石川君 作)
あとは一路打上げを待つ新宿へ。
打上げ場所は岡崎君が探してくれた新宿歌舞伎町の磯丸水産 3 階、本日の行動が
諸事スムースだったことから予定を 1 時間繰り上げて貰って乾杯、打上げ開始。
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今日の暑さにもかかわらず、全員元気に往復できたことに感謝。岡崎君お勧めの蟹
味噌甲羅焼きは真に最高の味。刺身、アサリの酒蒸し、ここでも最高の盛り上がり。
なお、会計も担当してくれた岡崎君、領収書で確認すると自腹でお金を多く払ってく
れていたことを知る。申し訳ない。
登山後の 蟹味噌美味し ビール汲む (国見 作)
参加者の印象記 (一部の修正、省略等をお許しください)
#3 代行世話人代表(広報担当) 宇賀康健君
おはようございます。昨日はお疲れさまでした。熱中症が流行しある昨今、9 人(合
計 50 期)の皆さまが元気溌溂新宿駅での解散なされたことを嬉しく思いました。
灼熱の炎天直射を避けた杉木立、渓流沿いの絶妙のコース取りを選択くださり、
道々の可憐な草花の紹介をくださった岡田さん、予定より早く下山したにもかかわら
ず予約を前倒しし、料理内容に気を配ってくださった岡崎さんに厚く御礼申し上げます。
先輩想いの心やさしい住友君の撮影した登山直前の写真を添附します。
松本君も珠玉の作品を「関東支部」「全国版(にひはり会)」に投稿してくれ、いよいよ
この会も「全国区」になると密かに喜んでいます。
#1 岡村君
皆様、昨日の高尾山トレッキングでは、ありがとうございました。代行世話人の宇賀
さん、お世話になり、ありがとうございました。今回の諸準備をしていただいた岡田さ
ん、岡崎さん、ご配慮ありがとうございました。
わざわざ高尾山口駅まで見送りに来て頂いた住友さん、感謝します。
登山者の多さには驚きました。さすがはミシュランガイドで最高ランクの三つ星の観
光地に選出されただけのことはありますね。
気持ち良く大汗を掻きましたが、木陰のコースで助かりました。途中、急坂もあり、私
は急な下りには弱くてゆっくりでしたが、皆さん、難なく上り下りされました。
新宿の「磯丸水産」の蟹味噌甲羅焼きは美味しかった。岡崎さん、感謝です。
#3 岡田さん
先日はこの夏一番の暑さの中、皆様の健脚、根性のおかげで無事に役目を果たす
ことが出来て大変感謝しています。
当日、皆様にエラそうに講釈した「花の名」が間違っていましたのでお詫びします。
途上咲いていた小さい花は「ミソハギ」ではなく「ヌスビトハギ・盗人萩」だと思います
(90%くらい)。琵琶滝への下山コースに咲いていたリュウノヒゲに似た花はいまだ不
明です。ご存知の方は教えてください。
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清滝駅付近の白い花は「ヤブミョウガ」でしょう。「イワタバコ」が一番綺麗でしたね。
俳句は思い浮かびませんが、「紀行文」を楽しみにしています。
宮さんが、自力で歩けるまで回復なさったと聞いて心強く思います。復帰を待ってい
ます。
#3 岡崎君
26日の高尾山トレッキングはお疲れ様でした。
炎暑の一日でしたが、岡田嬢のコース設定が良く、日差しを避けてのいい夏山ハイ
キングとなりました。無理をせず、ぴったりのペース配分でした。
もしかしてと、パソコンを開けたら、案の定、手の早い我がクラスメートの宇賀君から、
仲間への感謝(総括)メールが届いていました。(それも翌日曜、朝出し) 流石の迅
速配慮です。今回も紀行文を楽しみにしております。
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